説明

物品吊持用バランサ

【課題】ピストン部を省略し、直径の異なるロッド部の断面積差を介して付勢力を発生させるようにしたガススプリングを有する物品吊持用バランサであって、物品を吊持した状態で圧縮ガスを最適圧力に充填可能な物品吊持用バランサを提供する。
【解決手段】 前記プル型ガススプリング11は、シリンダ部材12と、シリンダ部材12の内部のガス収容室13及びこのガス収容室13に充填された圧縮ガスG と、第1ロッド孔20と、第1ロッド孔20よりも大径に形成された第2ロッド孔21と、第1ロッド孔20にガス密に挿通された第1ロッド部14a と、第2ロッド孔21にガス密に挿入され且つ第1ロッド部14a と一体的に連結された第2ロッド部14b を有するロッド部材14とを備え、第1,第2ロッド部14a,14b の断面積の断面積差と圧縮ガスのガス圧によってロッド部材14をシリンダ部材12に退入する方向へ付勢する付勢力を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークや工具等の物品(吊持対象物)を吊持可能な付勢力を発生するガススプリングを備えた物品吊持用バランサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大重量のワーク、製品、工具を加工したり、取り扱ったりする工場等において、ワークや工具等の物品を持ち上げて移動させる際に天井クレーン等のフックに連結して物体を吊持する物品吊持用バランサであって、容易に着脱することができ且つ物品を搬送して所定位置に位置決めする際に人手により物品の位置を容易に微調整することができる物品吊持用バランサが種々の文献に提案されている。
【0003】
ここで、上記のバランサは物品の重量と等しい付勢力を発生させるバランサ本体部と、フック等に連結される上下1対の吊りピース等を備えており、この種のバランサでは、圧縮ガスや加圧エアや油圧により付勢力を発生させるように構成されている。
【0004】
例えば、特許文献1のバランサ装置においては、外部の装置から供給される流体圧(加圧エア又は油圧)が導入される複動型の伸縮シリンダによりバランス用の付勢力を発生させ、伸縮シリンダの外筒に対するピストンロッドの伸長動作を禁止するロック手段を、伸縮シリンダを覆うテレスコピック形のケース部材に設け、伸長動作を禁止した状態で重量物を安全に搬送移動させ、搬送移動後にロック手段によるロックを解除し、バランサ装置を機能させるように構成してある。
【0005】
特許文献2に記載の重量自動感知バランス吊上装置においては、物品を吊持可能な複動型のエアシリンダと、このエアシリンダのエア作動室のエア圧を調節する調圧弁を含むエア回路を設け、物品の重量に応じたエア圧となるようにエア作動室のエア圧を調節し、物品の重量にバランスする付勢力を発生させる。特許文献3のエアバランサも、特許文献2のバランス吊上装置とほぼ同様の構成のものである。
【0006】
特許文献4に記載のガススプリング式バランサにおいては、プル型ガススプリングをケース内に収容し、ガススプリングのロッド部材の外端部と、ケースの端部に吊りピースを設けてある。ガススプリングに、ピストン部と、このピストン部から外部へ延びるロッドと、ピストン部からロッドと反対側へ延びる延長部であってピストン部よりも小径の延長部とを設け、ガススプリング本体内の環状のガス収容室に高圧の圧縮ガスを充填した。
【0007】
【特許文献1】特開平8−165100号公報
【特許文献2】特開平7−101700号公報
【特許文献3】特開平11−228100号公報
【特許文献4】実用新案登録第3133267号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載のバランサ装置においては、外部のエア供給源や油圧供給源から伸縮シリンダにエアや油圧供給用のホース等を接続し、伸縮シリンダに供給される加圧エアや油圧を調節することで付勢力を調節するため装置が大型化する。さらに、ホース等を接続した状態でバランサ装置を使用することになり、ホースを処理するホースハンドリングが面倒になる。特許文献2,3のバランサ装置の場合も、上記の問題が残されている。
【0009】
特許文献4のガススプリング式バランサの場合、バランサの使用時に外部のガス供給源に接続しないため前記ホースは不要であるが、この種のバランサの場合、ガススプリングによる付勢力が、吊持対象の物品の重量と均衡することが必要であり、圧縮ガスのガス圧が高過ぎるとバランサとしての機能が得られない。圧縮ガスのガス圧が僅かに低い場合には、物品を吊持した際にガス収容室の収縮によりガス圧が増大してバランスすることもあるが、圧縮ガスのガス圧が低すぎる場合にも、バランサとしての機能が得られない。
【0010】
特許文献4のバランサでは、物品を吊持した状態においては圧縮ガスを充填できない構造になっているため、吊持対象の物品の重量に適した圧力の圧縮ガスを充填することが非常に難しい。しかし、ピストン部の外周部に設けたシール部材が、ガススプリング本体の内面に摺接する構造になっているため、バランサの製作段階において、ガススプリング本体の内面を鏡面に研磨加工する必要があるため、製作費が非常に高価になる。
【0011】
本発明の目的は、ガススプリングのピストン部を省略し、直径の異なるロッド部の断面積差を介して付勢力を発生させるようにした物品吊持用バランサを提供すること、物品を吊持した状態で圧縮ガスを最適圧力に充填可能な物品吊持用バランサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の物品吊持用バランサは、ワークや工具等の物品を吊持可能な付勢力を発生するプル型ガススプリングを備えた物品吊持用バランサにおいて、前記プル型ガススプリングは、シリンダ本体とそのロッド側端部を塞ぐロッド側端壁部材とを含むシリンダ部材と、前記シリンダ部材の内部のガス収容室及びこのガス収容室に充填された圧縮ガスと、前記ロッド側端壁部材に形成された第1ロッド孔と、前記シリンダ部材のうちの前記第1ロッド孔に対向する対向壁部に前記第1ロッド孔と同心状に且つ第1ロッド孔よりも大径に形成された第2ロッド孔と、前記第1ロッド孔にガス密に挿通された第1ロッド部と、前記第2ロッド孔にガス密に挿入され且つ第1ロッド部と一体的に連結された第2ロッド部を有するロッド部材とを備え、前記第2ロッド部の断面積と第1ロッド部の断面積との断面積差と圧縮ガスのガス圧によってロッド部材をシリンダ部材に退入する方向へ付勢することを特徴としている。
【0013】
請求項2の物品吊持用バランサは、請求項1の発明において、前記ロッド部材の第1,第2ロッド部の境界部に形成されたフランジ部と、前記ロッド側端壁部材に形成された圧縮ガス充填口と、この圧縮ガス充填口に装着された圧縮ガス充填用バルブであって、ロッド部材が最大進出位置にあるときに前記フランジ部で操作されて開弁し且つロッド部材が最大進出位置よりも退入した状態のときに閉弁するように構成された圧縮ガス充填用バルブとを備えたことを特徴としている。
【0014】
請求項3の物品吊持用バランサは、請求項1又は2の発明において、前記ロッド側端壁部材に圧縮ガス排出路を形成し、この圧縮ガス排出路に接続され且つガス収容室内の圧縮ガスの一部を外界へ放出させる為のガス放出操作手段を設けたことを特徴としている。
【0015】
請求項4の物品吊持用バランサは、請求項1〜3の何れかの発明において、前記対向壁部は、シリンダ本体内に装着された対向壁部形成部材で構成されたことを特徴としている。請求項5の物品吊持用バランサは、請求項1〜4の何れかの発明において、前記ロッド部材の第1ロッド部の先端部にアイボルトを連結し、前記シリンダ部材の対向壁部側の端部にシャクルを設けたことを特徴としている。
【0016】
請求項6の物品吊持用バランサは、請求項2の発明において、前記圧縮ガス充填用バルブとフランジ部を介して、前記ガス収容室に充填される圧縮ガスのガス圧は、前記吊持対象物の重量に等しい付勢力を発生させる大きさに自動的に設定可能であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、ロッド側端壁部材に形成された第1ロッド孔と、この第1ロッド孔に対向する対向壁部に形成され第1ロッド孔よりも大径の第2ロッド孔を設け、第1ロッド孔にガス密に挿通された第1ロッド部と、この第1ロッド部に一体的に連結され第2ロッド孔にガス密に挿入された第2ロッド部とを備え、第2ロッド部の断面積と第1ロッド部の断面積との断面積差と圧縮ガスのガス圧によってロッド部材をシリンダ部材に退入する方向へ付勢するように構成したため、ガススプリングのピストン部と、そのピストン部がガス密に摺接するシリンダ孔を省略することができるため、シリンダ孔の研磨加工を省略できるため、ガススプリングの製作費を低減することができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、ロッド部材の第1,第2ロッド部の境界部に形成されたフランジ部と、ロッド側端壁部材に形成された圧縮ガス充填口と、この圧縮ガス充填口に装着された圧縮ガス充填用バルブとを有し、この圧縮ガス充填用バルブは、ロッド部材が最大進出位置にあるときにフランジ部で操作されて開弁し且つロッド部材が最大進出位置よりも退入した状態のときに閉弁するように構成されているため、次のようにして圧縮ガスを充填することができる。
【0019】
圧縮ガス充填前からバランサを介して物品を吊持し、ロッド部材が最大限伸長し、フランジ部で圧縮ガス充填用バルブを開弁させた状態において、圧縮ガスをガス収容室に充填していき、圧縮ガスの圧力が物品の重量にバランスする付勢力を発揮する圧力以上に昇圧すると、ロッド部材がシリンダ本体へ退入移動するため、圧縮ガス充填用バルブが閉弁状態となるから、その時点で、圧縮ガスの充填が終了する。このように、物品の重量にバランスする付勢力を発揮する圧力となるように、圧縮ガスを確実に充填することができるため、バランサの使い勝手が良くなり、圧縮ガス充填の作業能率を高めることができる。
【0020】
請求項3の発明によれば、前記ロッド側端壁部材に圧縮ガス排出路を形成し、この圧縮ガス排出路に接続され且つガス収容室内の圧縮ガスの一部を外界へ放出させる為のガス放出操作手段を設けたため、バランサにより吊持する物品の重量が変更された場合など、ガス放出操作手段を操作してガス収容室内の圧縮ガスの一部を外界へ放出させることができる。
【0021】
請求項4の発明によれば、前記対向壁部は、シリンダ本体内に装着された対向壁部形成部材で構成されたため、シリンダ部材の構造が簡単化する。
。請求項5の発明によれば、前記ロッド部材の第1ロッド部の先端部にアイボルトを連結し、前記シリンダ部材の対向壁部側の端部にシャクルを設けたため、クレーン等の吊持手段の吊具と、吊持対象の物品との間にバランサを介装するのに便利である。
【0022】
請求項6の発明によれば、前記ガス収容室に充填される圧縮ガスのガス圧は、前記圧縮ガス充填用バルブとフランジ部を介して、前記吊持対象物の重量に等しい付勢力を発生させる大きさに自動的に設定可能であるため、圧縮ガスの圧力を調整する作業を短時間で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0024】
図1に示すように、建物の天井側に設置される天井クレーン1は、運転部2と本体3とトロリ4とワイヤー5とフック6等を有し、トロリ4から下方へ延びるワイヤー5の下端に上側フック6が設けられ、ワークや工具等の大重量の物品9はロープ8で支持され、ロープ8の上端に下側フック7が設けられ、上側フック6と下側フック7の間にプル型ガススプリングを備えた物品吊持用バランサ10が介装される。天井クレーン1により、物品吊持用バランサ10を介して、物品9が吊持された状態では、ガススプリングの圧縮ガスにより物品9の重量と等しい付勢力が発生するまで、物品吊持用バランサ10のロッド部材13が僅かに進出して圧縮ガスのガス圧が自動的に調整され、上記付勢力と物品9の重量がバランス状態になる。
【0025】
次に、物品吊持用バランサ10について詳しく説明する。
図2に示すように、この物品吊持用バランサ10は、ワークや工具等の物品を吊持可能な付勢力を発生するプル型ガススプリング11を備えたバランサである。このプル型ガススプリング11は、シリンダ部材12と、このシリンダ部材12の内部のガス収容室13に充填される高圧(例えば、7〜10MPa)の圧縮窒素ガスGと、ロッド部材14と、、ポート形成部材15などを備えている。
【0026】
シリンダ部材12は、円筒体からなるシリンダ本体16と、そのロッド側端部を塞ぐロッド側端壁部材17と、ロッド側端壁部材17に対向する対向壁部18aを形成する対向壁部形成部材18と、対向壁部形成部材18の下端を塞ぐ蓋部材19とを有する。ロッド側端壁部材17は、シリンダ本体16の上端部分に内嵌してストップリング17aにより抜け止めされて固定されている。シリンダ本体16とロッド側端壁部材17の間はシール部材17bで封止されている。
【0027】
前記対向壁部形成部材18は、シリンダ本体16の下端側部分に内嵌してストップリング18bにより抜け止めされて固定されている。シリンダ本体16と対向壁部形成部材18の間はシール部材18cで封止されている。蓋部材19は、複数のボルトで対向壁部形成部材18に固定されている。
【0028】
前記ロッド側端壁部材17の上端にポート形成部材15が当接され、このポート形成部材15は図示外の複数のボルトによりロッド側端壁部材17に固定されている。ロッド部材14は、上半部をなす第1ロッド部14aと、下半部をなし且つ第1ロッド部14aよりも大径の第2ロッド部14bと、第1,第2ロッド部14a,14bの境界部に形成されたフランジ部14cとを有する。
【0029】
第1ロッド部14aは、ロッド側端壁部材17とポート形成部材15に形成された第1ロッド孔20にガス密に挿通されてシリンダ部材12の外部まで突出している。対向壁部形成部材18には、第1ロッド孔20に対向し且つ第1ロッド孔20と同心状で第1ロッド孔20よりも大径の第2ロッド孔21と、この第2ロッド孔21の下端に連通し且つ第2ロッド孔21よりも大径の逃し孔22とが形成されている。第2ロッド部14bが、第2ロッド孔21にガス密に挿入されている。第1ロッド孔20の周面部には、シール部材23とブッシュ24とスクレーパ25が装着されている。第2ロッド孔22の周面部には、シール部材26とブッシュ27が装着されている。逃し孔22は呼吸孔22aにより大気開放されている。
【0030】
ガス収容室13はシリンダ部材12の内部にロッド部材14の外周側に環状に形成され、このガス収容室13に圧縮ガスGが後述のようにして充填される。
前記第2ロッド部14bの断面積と第1ロッド部14aの断面積との断面積差と圧縮ガスGのガス圧によってロッド部材14をシリンダ部材12に退入させる方向へ付勢する付勢力が発生する。
【0031】
ロッド側端壁部材17とポート形成部材15には、圧縮ガス充填ポート30と、圧縮ガス充填口31とが形成されている。この圧縮ガス充填口31には圧縮ガス充填用バルブ32が装着されている。この圧縮ガス充填用バルブ32は、ロッド部材14が最大進出位置(図2に図示の位置)にあるときにそのピン部材32aがフランジ部14cで操作されて開弁し且つロッド部材14が最大進出位置よりも退入した状態のときに閉弁するように構成されている。
【0032】
ロッド部材14にはフランジ部14cの上側に位置する硬質ゴム製の環状ストッパ34が外嵌され、この環状ストッパ34によりフランジ部14cを受け止めた状態で最大進出位置となる。圧縮ガス充填ポート30には、クイックカプラの雄カプラ部材33が付設され、この雄カプラ部材33に圧縮ガス供給手段のホースの先端の雌カプラ部材を接続した状態で、圧縮ガス供給手段からガス収容室13内へ圧縮ガスを供給可能に構成されている。
【0033】
ロッド側端壁部材17と、ポート形成部材15には、圧縮ガス排出ポート35と圧縮ガス排出路36が形成され、圧縮ガス排出ポート35には、ガス放出操作手段としてのガス放出弁37が装着されている。ガス放出弁37は内部にニードル弁を有し、操作ノブ38を回してガス放出弁37を開弁操作することでガス収容室13内の圧縮ガスの一部を外界へ微小量ずつ放出することができる。
【0034】
ロッド部材14の第1ロッド部14aの先端部にアイボルト40が連結されている。対向壁部形成部材18に固定された蓋部材19には下方へ突出する突出片19eが一体形成され、この突出片18eにシャクル41が連結されている。
【0035】
次に、以上説明した物品吊持用バランサ10の作用、効果について説明する。
ガススプリング11のガス収容室13に圧縮ガスを充填する場合、まず、図1に示すように、バランサ10を介して物品9を吊持した状態にする。
次に、圧縮ガス供給手段から圧縮ガス充填ポート30と圧縮ガス充填口31と圧縮ガス充填バルブ32を介してガス収容室13に圧縮ガスを徐々に充填していく。
当初、ガス収容室13内のガス圧が低いうちは、ロッド部材14を退入駆動する付勢力は小さいためフランジ部14cが圧縮ガス充填バルブ32のピン部材32aを押圧して開弁状態に維持するため、圧縮ガスがガス収容室13内へ充填される。
【0036】
圧縮ガスの充填が進行し、ガス収容室13内の圧縮ガスのガス圧が上昇し、ガススプリング11により物品9の重量と等しい付勢力が発生し始めると、図3に示すように、ロッド部材14が退入するため、吊持された物品9が無重力状態に近い浮揚状態になる。すると、ロッド部材14のフランジ部14cがピン部材32aから離れるため、圧縮ガス充填バルブ32が閉弁状態になる。こうして、ガス収容室13に充填される圧縮ガスのガス圧が、前記吊持対象物の重量に等しい付勢力を発生させる大きさに自動的に設定される。そのため、ガス収容室13に充填する圧縮ガスの圧力調整の作業を短時間に能率的に行うことができる。
【0037】
第1ロッド部14aと第2ロッド部14bの直径の差を小さく設定することも可能であり、その場合ガススプリング11による付勢力を小さくすることができるため、比較的小さな重量の物品の吊持にも適用可能になり、汎用性に優れたものとなる。尚、この場合、ガス圧に対する感度が鈍いため、ガス圧を大きくすることも可能である。
【0038】
一方、物品吊持用バランサ10を介して吊持する物品9の重量が大きくなる場合には、前記と同様に、当初フランジ部14cにより圧縮ガス充填バルブ32を開弁状態にして圧縮ガスを充填し、その後、物品9の重量に等しい付勢力を発生する大きさのガス圧になるまで圧縮ガスを充填してから、圧縮ガス充填バルブ32を閉弁状態に切換えればよい。
他方、物品吊持用バランサ10を介して吊持する物品9の重量が小さくなる場合には、ガス放出弁37を操作して圧縮ガスを外界へ放出し、その後、前記と同様にして、物品9の重量に等しい付勢力を発生する大きさの圧力になるまで圧縮ガスを充填すればよい。
【0039】
このバランサ10に組み込んだプル型ガススプリング11にはロッド部材14に連結されたピストン部が存在しないから、シリンダ本体16の内面を鏡面状に研磨する必要がなく、第1,第2ロッド部14a,14bの表面のみを鏡面状に研磨すればよい。そのため、バランサ10の製作費を低減することができ、バランサ10の耐久性を高めることができる。
【0040】
対向壁部18aを、シリンダ本体16内に装着した対向壁部形成部材18で構成したため、シリンダ部材12の構造が簡単化する。ロッド部材14の第1ロッド部14aの先端部にアイボルト40を連結し、シリンダ部材12の対向壁部18a側の端部にシャクル41を設けたため、クレーン等の吊持手段の吊具と、吊持対象の物品9との間にバランサ10を介装するのに便利である。
【0041】
次に、前記実施例を部分的に変更する例について説明する。
1]本実施例のバランサ10では昇降ストロークが小さいため、物品の小ストロークの移動に好適である。しかし、昇降ストロークの大きなバランサに構成することも可能である。2]本実施例のバランサ10では第1ロッド部14aと第2ロッド部14bの直径の差を小さく設定してあるが、第1ロッド部14aと第2ロッド部14bの直径の差を大きく設定して、大重量の物品を吊持するのに好適のバランサに構成することもできる。
3]その他、当業者であれば、前記実施例を部分的に変更して実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施例に係る物品吊持用バランサと天井クレーンの概略正面図である。
【図2】物品吊持用バランサ(充填バルブ開弁状態)の断面図である。
【図3】物品吊持用バランサ(充填バルブ閉弁状態)の断面図である。
【符号の説明】
【0043】
9 物品
10 物品吊持用バランサ
11 プル型ガススプリング
12 シリンダ部材
13 ガス収容室
14 ロッド部材
14a 第1ロッド部
14b 第2ロッド部
14c フランジ部
16 シリンダ本体
17 ロッド側端壁部材
18 対向壁部形成部材
18a 対向壁部
20 第1ロッド孔
21 第2ロッド孔
31 圧縮ガス充填口
32 圧縮ガス充填用バルブ
36 圧縮ガス排出路
37 ガス放出弁(ガス放出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークや工具等の物品を吊持可能な付勢力を発生するプル型ガススプリングを備えた物品吊持用バランサにおいて、
前記プル型ガススプリングは、
シリンダ本体とそのロッド側端部を塞ぐロッド側端壁部材とを含むシリンダ部材と、 前記シリンダ部材の内部のガス収容室及びこのガス収容室に充填された圧縮ガスと、
前記ロッド側端壁部材に形成された第1ロッド孔と、
前記シリンダ部材のうちの前記第1ロッド孔に対向する対向壁部に前記第1ロッド孔と同心状に且つ第1ロッド孔よりも大径に形成された第2ロッド孔と、
前記第1ロッド孔にガス密に挿通された第1ロッド部と、前記第2ロッド孔にガス密に挿入され且つ第1ロッド部と一体的に連結された第2ロッド部を有するロッド部材とを備え、
前記第2ロッド部の断面積と第1ロッド部の断面積との断面積差と圧縮ガスのガス圧によってロッド部材をシリンダ部材に退入する方向へ付勢することを特徴とする物品吊持用バランサ。
【請求項2】
前記ロッド部材の第1,第2ロッド部の境界部に形成されたフランジ部と、
前記ロッド側端壁部材に形成された圧縮ガス充填口と、
この圧縮ガス充填口に装着された圧縮ガス充填用バルブであって、ロッド部材が最大進出位置にあるときに前記フランジ部で操作されて開弁し且つロッド部材が最大進出位置よりも退入した状態のときに閉弁するように構成された圧縮ガス充填用バルブとを備えたことを特徴とする請求項1に記載の物品吊持用バランサ。
【請求項3】
前記ロッド側端壁部材に圧縮ガス排出路を形成し、この圧縮ガス排出路に接続され且つガス収容室内の圧縮ガスの一部を外界へ放出させる為のガス放出操作手段を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の物品吊持用バランサ。
【請求項4】
前記対向壁部は、シリンダ本体内に装着された対向壁部形成部材で構成されたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の物品吊持用バランサ。
【請求項5】
前記ロッド部材の第1ロッド部の先端部にアイボルトを連結し、前記シリンダ部材の対向壁部側の端部にシャクルを設けたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の物品吊持用バランサ。
【請求項6】
前記ガス収容室に充填される圧縮ガスのガス圧は、前記圧縮ガス充填用バルブとフランジ部を介して、前記吊持対象物の重量に等しい付勢力を発生させる大きさに自動的に設定可能であることを特徴とする請求項2に記載の物品吊持用バランサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−95335(P2010−95335A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267103(P2008−267103)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(596037194)パスカルエンジニアリング株式会社 (106)
【Fターム(参考)】