説明

物品搬送装置

【解決課題】略扁平形状の物品を、より確実に寝姿勢に矯正することのできる物品搬送装置を提供する。
【解決手段】物品搬送装置1は、物品100を保持可能なポケット部15が、周方向に列状をなして設けられた搬送手段10と、物品100を、ポケット部15に供給する供給手段と、ポケット部15において起立姿勢になっている物品100と接触し得る接触面65が外周に設けられた回転体61を有する姿勢矯正部50と、を備える。姿勢矯正部50の回転体61は、展開平面視でポケット部15の列線Lと斜め交差し、且つ駆動軸11との直交面11aから傾けて配設されており、回転体61の接触面65が、回転体61の回転に伴って、起立姿勢になっている物品100と接触することで、物品100に所定の倒伏力が及ぼされて、物品100が寝姿勢に矯正される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品搬送装置に関し、より詳細には、略扁平形状の物品を寝姿勢にして搬送するための物品搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術として、例えば特許文献1に記載される装置がある。上記装置は、多数個の錠剤を収容するホッパーと、ホッパーから受け取った錠剤を吸引保持するポケットを有する搬送ドラムと、ポケット内の余分な錠剤を排除する傾斜ゴムローラユニットと、錠剤表面を押圧する押えローラと、を備えて構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−125000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される上記装置においては、傾斜ゴムローラユニットを通過した錠剤に対して、ポケットから圧縮空気を吹き出し、錠剤を浮上させることで、錠剤の位置調整がおこなわれる。
ところが、上記装置によれば、傾斜ゴムローラユニットを通過した錠剤が、起立姿勢等になっていると、それを確実に適正な姿勢(寝姿勢)に矯正することは難しく、特に錠剤が、丸錠やレンズ錠以外の平面視非円形状のものであったり、いわゆるオブロング錠の形状等である場合には、確実性が一層低下するおそれがあった。
【0005】
そこで本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主な目的とするところは、略扁平形状の物品を、より確実に寝姿勢に矯正することのできる物品搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る物品搬送装置は、略扁平形状の物品を、寝姿勢にして搬送するための物品搬送装置であって、駆動軸廻りを回転駆動され、該物品を保持可能なポケット部が、周方向に列状をなして設けられた搬送手段と、蓄えられた該物品を、該搬送手段の該ポケット部に供給する供給手段と、該搬送手段の該ポケット部において起立姿勢になっている該物品と接触し得る接触面が外周に設けられた回転体を有する姿勢矯正部と、を備え、該姿勢矯正部の該回転体が、展開平面視で該ポケット部の列線と斜め交差し、且つ該駆動軸との直交面から傾けて配設されており、該回転体の該接触面が、該回転体の回転に伴って、起立姿勢になっている該物品と接触することで、該物品に所定の倒伏力が及ぼされて、該物品が寝姿勢に矯正されるように構成される。
【0007】
本発明に係る物品搬送装置は好ましくは、該回転体の該接触面が、起立姿勢になっている該物品の一側面における接触領域と接触するように設けられる。
【0008】
本発明に係る物品搬送装置はさらに好ましくは、略扁平形状の該物品が、フラット面が形成された帯状部を有する基体部と、該基体部の表裏両面に設けられる膨出部と、を備え、該膨出部が、起立姿勢になっている該物品の側面を形成するように構成される。
【0009】
本発明に係る物品搬送装置はさらに好ましくは、該回転体が、該搬送手段の頂上位置に配設され、該物品が該搬送手段の頂上付近を通過する際に、該ポケット部における該物品の保持が一時的に解除されるように構成される。
【0010】
本発明に係る物品搬送装置はさらに好ましくは、該回転体が、ばね手段を介して、該搬送手段と接近・離反方向に揺動可能に設けられ、該回転体の該接触面が、起立姿勢になっている該物品と弾力的に接触し得るように構成される。
【0011】
本発明に係る物品搬送装置はさらに好ましくは、該回転体が、該ポケット部の列線に対応して複数配置されるとともに、互いに他の揺動に追従しないように設けられる。
【0012】
本発明に係る物品搬送装置はさらに好ましくは、該回転体の該接触面が、テーパ状に形成される。
【0013】
本発明に係る物品搬送装置はさらに好ましくは、該回転体が、駆動手段により自発的に回転されるように構成される。
【0014】
本発明に係る物品搬送装置はさらに好ましくは、該供給手段により供給された該物品を、該搬送手段の該ポケット部に所定姿勢で1個ずつ保持させるとともに、起立姿勢になっている該物品の起立向きを揃える調整手段と、該調整手段と該姿勢矯正部との間に配設され、ブラシ部を有する押え手段と、を備えて構成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る物品搬送装置によれば、略扁平形状の物品を、より確実に寝姿勢に矯正することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係る物品搬送装置を示す全体側面図である。
【図2】実施形態に係る物品搬送装置を示す一部展開平面図である。
【図3】実施形態に係る物品搬送装置を示す一部展開平面図である。
【図4】実施形態に係る物品搬送装置を示す一部正面図である。
【図5】実施形態に係る物品搬送装置による姿勢矯正状況を示す拡大断面図である。
【図6】実施形態に係る物品の姿勢矯正状況の説明図である。
【図7】実施形態に係る物品を示す図である。
【図8】実施形態に係る物品の保持状況を示す図である。
【図9】変形例を示す図である。
【図10】他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、図1〜図8を参照して説明する。図1〜図4は実施形態に係る物品搬送装置1を示しており、図1は全体側面図、図2および図3は一部展開平面図、図4は一部正面図である。図5(a)〜(c)は物品搬送装置1による物品(錠剤100)の姿勢矯正状況を示しており、図3におけるV−V線拡大断面図である。図6は物品(錠剤100)の姿勢矯正状況の説明図であり、図6(a)は平面図、図6(b)は正面図、図6(c)は側面図である。図7は実施形態に係る物品(錠剤100)を示しており、図7(a)は平面図、図7(b)は正面図、図7(c)は側面図である。図8(a)〜(d)は物品(錠剤100)の保持状況を示し、それぞれ平面図、正面断面図、側面断面図をあらわしている。
【0018】
図1に示すように、物品搬送装置1は主として、搬送手段10と、供給手段20と、調整手段30と、押え手段40と、姿勢矯正部50と、を備える。物品搬送装置1は、略扁平形状の物品としての錠剤100を搬送する。供給手段20から供給された錠剤100は、搬送手段10により一定の回転方向Rに搬送される。搬送手段10の外周に沿って調整手段30、押え手段40、姿勢矯正部50が順に配設されており、これらを介して、搬送中の錠剤100が所定の適正姿勢(寝姿勢)にされる。物品搬送装置1は、この錠剤100に各種処理を施すための適宜の機構を備える。物品搬送装置1では、図1に示すように、錠剤100の表面における異物の付着有無を検査する異物検査機構4、錠剤100の表面に文字・記号・図形等を印刷してその良否を検査する印刷機構5および印刷検査機構6、錠剤100を次工程に引き渡す引き渡し機構7、検査結果に応じて不良品を排出する排出機構8等が付設されている。
【0019】
錠剤100は、図7に示すように、いわゆるオブロング錠の形状で、やや厚みのある基体部101と、基体部101の表裏両面に対称に設けられる膨出部102、103と、を備える。基体部101は、平面視略小判形状をなし、周囲に帯状部105を有する。帯状部105は、フラット面106および湾曲面107によって形成される。フラット面106は、完全にフラットなものの他、ごく僅かに反り返った(湾曲した)ものであってもよい。錠剤100は全体として、幅A、長さB、厚みCを備える。実施形態では、幅A:長さB:厚みCの比率が概ね3:6:2に構成されている。「略扁平形状」とは、物品(錠剤100)の厚みCが、少なくとも幅Aまたは長さBよりも小さい形状を指し、完全な扁平の他、錠剤100のように膨出部102、103等が形成されたものを含む。
また、「寝姿勢」とは、錠剤100が、搬送手段10のポケット部15(後述)に対して平伏した姿勢を指す。実施形態では、錠剤100の膨出部102または103が、ポケット部15の底部に載置された姿勢である(図8(a)参照)。「起立姿勢」とは、錠剤100が、ポケット部15に対して直立した姿勢を指す。実施形態では、錠剤100のフラット面106が、ポケット部15の底部に載置された姿勢である(図8(b)参照)。
【0020】
搬送手段10は、図1に示すように、駆動軸11廻りを回転駆動される搬送ドラム13により構成される。搬送ドラム13は大径の円筒形状をなし、中心部に駆動軸11が設けられる。駆動軸11は、略水平に支持されるとともに、モータ等の駆動源(図示せず)に連結されており、これにより搬送ドラム13が、回転方向Rに回転される。
【0021】
搬送ドラム13の周面14には、図1〜図4に示すように、錠剤100を保持可能なポケット部15が多数設けられる。ポケット部15は、周面14の周方向(=回転方向R)に沿って適宜間隔で配置されるとともに、周面14の幅方向に対して複数の列状をなして設けられる。実施形態では、ポケット部15は、回転方向Rに平行する列線Lに沿って計5列設けられている。
ポケット部15は、寝姿勢の錠剤100をちょうど1個収容できる形状に形成される(図8(a)参照)。ポケット部15は、寝姿勢の錠剤100よりも僅かに大きく開口され、所定の深さを有する。ポケット部15の底部は、錠剤100の膨出部103(102)に対応した形状をなす。実施形態では、錠剤100に印刷処理等を施すため、収容された錠剤100の膨出部102(103)が、搬送ドラム13の周面14から突出するように、ポケット部15の深さが設定される。ポケット部15は、平面視で、錠剤100の長さBの方向(図7参照)の中心線が列線Lに一致するようにして錠剤100を収容する。
【0022】
ポケット部15の底部中央には、図1に示すように、錠剤100を吸着可能な吸着孔16が設けられる。吸着孔16は通気路17に連通され、公知の開閉構造18を介して、図示しない真空ポンプ等の吸引源と接続される。開閉構造18は、錠剤100の搬送位置に応じて、通気路17を選択的に開閉し、ポケット部15における吸引と吸引解除とを切り替える。物品搬送装置1では、錠剤100が搬送手段10の頂上付近(搬送位置10a)を通過する際に、ポケット部15における吸引が一時的に解除されるようになっている。さらに、錠剤100の搬送位置に応じて、ポケット部15における吸引力を適宜変更したり、吸着孔16から圧縮空気を吹き出し可能な構成としてもよい。
【0023】
供給手段20は、搬送手段10のポケット部15に錠剤100を供給する。供給手段20は、図1に示すように、多数の錠剤100が蓄えられた一次ホッパー21と、搬送手段10の周面14を頂上に向かって覆う二次ホッパー22と、から構成される。二次ホッパー22は、供給通路24および供給スロープ25を備え、供給スロープ25の先端が、搬送ドラム13の周面14に臨んで配設される。一次ホッパー21から供給通路24を介して自然落下された錠剤100が、供給スロープ25により、搬送ドラム13にランダムな状態で案内される。搬送ドラム13の回転に伴って、この錠剤100が順次ポケット部15に吸着保持される。二次ホッパー22の適宜位置には、図1に示すように、錠剤100を撹拌等するための空気ノズル27が付設される。空気ノズル27により、錠剤100のポケット部15への誘導をおこない易くなり、周面14に付着した余分な錠剤100の滑落等を促すことができる。
【0024】
調整手段30は、供給手段20により供給された錠剤100を、搬送手段10のポケット部15に所定姿勢で1個ずつ保持させる。調整手段30は、図1〜図2に示すように、一対の調整部31、31から構成される。各調整部31は、固定軸33と、固定軸33により回転自在に支持される調整ローラ34、34・・・と、を備える。固定軸33は、搬送手段10の駆動軸11と略平行し、搬送ドラム13の周面14上方を横断するように設けられる。調整ローラ34は、固定軸33の軸方向に沿って漸次拡径される略円錐台形状をなし、遊びを持たせて固定軸33に貫通されている。調整ローラ34は、拡径部が搬送ドラム13の周面14から所定距離を隔てた高さに設けられる。調整ローラ34は、ポケット部15と略等幅に形成され、複数の調整ローラ34、34・・・が、ポケット部15の各列線L上の位置に設けられる。各調整ローラ34は、固定軸33に固着されるリング材35、35によって位置決めされている。
調整ローラ34の向き(拡径部の向き)は、錠剤100の大きさ・形状等に応じて、適宜設定され得る。一対の調整部31、31は、互いに同一構成でなくてもよい。また、調整部31、31の何れか一方または両方において、調整ローラ34に拡径部を設けない構成とすることもできる。調整手段30では通常、調整部31が複数設けられるが、調整部31を一つだけ設ける構成としてもよい。
【0025】
押え手段40は、図1〜図2に示すように、調整手段30と姿勢矯正部50との間に配設され、押えブラシ41により構成される。押えブラシ41は、本体部43と、本体部43に植設されるブラシ部44と、を備える。本体部43は、搬送ドラム13の周面14上方を横断し、周面14から所定距離を隔てた高さに固定支持されている。ブラシ部44は、合成樹脂等の比較的柔軟な可撓性線材の束からなり、好ましくは、先端が搬送ドラム13の周面14に略摺接するように本体部43からの突出長さが設定される。本体部43を、搬送ドラム13の周面14に沿った湾曲形状として、各ブラシ部44の突出長さを一定に形成するようにしてもよい。実施形態のブラシ部44、44・・・は、図2に示すように、展開平面視でポケット部15の列線Lと斜め交差するように配設されている。各ブラシ部44は、互いに適宜間隔をあけず連続的に設けられていてもよい。図示しないが、押え手段40を、ブラシ部44が周設されたローラ形状の押えブラシによって構成したり、このローラ形状の押えブラシを、適宜の駆動手段により自発的に回転させる構成とすることもできる。
【0026】
姿勢矯正部50は、起立姿勢になっている錠剤100を寝姿勢に矯正する。姿勢矯正部50は、図1および図3〜図4に示すように、固定軸51と、固定軸51により揺動可能に支持される揺動アーム52、52・・・と、各揺動アーム52により回転自在に支持される回転体61、61・・・と、を備えて構成される。固定軸51は、搬送手段10の駆動軸11と略平行し、搬送ドラム13の周面14上方を横断するように設けられる。揺動アーム52は細長の板状で、前半部に屈曲部54が形成される。屈曲部54の前端に回転体61が軸着され、揺動アーム52が固定軸51廻りを正逆回動することで、回転体61が、搬送手段10と接近・離反方向に揺動される。回転体61は、図1に示すように側面視で、搬送手段10(搬送ドラム13)のちょうど頂上位置に配設され、揺動アーム52により、錠剤100が搬送されてくる側の斜め上方から支持されている。
【0027】
回転体61は、図3〜図4に示すように、本体部62と、本体部62周囲の周設部63と、からなり、全体として円板形状を呈する。周設部63には、起立姿勢になっている錠剤100と接触し得る接触面65が外周に設けられ、接触面65は好ましくは、ウレタンやシリコン等の合成樹脂材によって構成される。回転体61は、接触面65が搬送ドラム13の周面14に略対向し得るように配設される。回転体61は、ポケット部15と略等幅の一定厚に形成され、複数の回転体61、61・・・が、ポケット部15の各列線Lに対応して配置される。より詳細には、回転体61は、図3に示すように展開平面視で、回転体61の前後方向直径61aと、ポケット部15の列線Lと、が斜め交差角度αをなして斜め交差するように配設される。また、回転体61は、図4に示すように、回転体61の上下方向直径61bが、駆動軸11との直交面11aから、傾斜角度βをなして傾けられるように配設される。これにより回転体61は、所定の(搬送手段10の駆動軸11と平行でなく且つ直交しない)回転軸67廻りを回転自在とされる。図中66は、接触面65の傾けられた側の周縁部である。回転体61は、接触面65の周縁部66が、搬送ドラム13の周面14から所定距離を隔てた高さとなるように配設される。
【0028】
揺動アーム52は、図3〜図4に示すように、中間で固定軸51に貫通され、揺動アーム52の貫通部周囲には鞘管55が固着される。固定軸51の所定位置には、フランジ56、56が固着されており、揺動アーム52、52・・・が、鞘管55、55・・・を介して、フランジ56、56間に隣接して配置される。これにより揺動アーム52は、固定軸51の軸方向に沿って位置決めされた状態で、互いに他の揺動に追従しないように設けられる。このような構成によれば、複数列のポケット部15により大量の錠剤100を搬送しながら、各列線Lごとの錠剤100の状況に応じて、回転体61をきめ細やかに動作させることができる。
【0029】
姿勢矯正部50は、図1および図3〜図4に示すように、回転体61ごとに規制手段72およびばね手段73を備える。固定軸51よりも上方に、固定軸51と略平行する固定ロッド71が配設されており、規制手段72は、この固定ロッド71と、固定ロッド71を貫通する規制ねじ75と、によって構成される。規制ねじ75は、揺動アーム52と略直交する方向に固定ロッド71を貫通し、先端76が揺動アーム52の後半部上面に当接するようにして駐止される。規制手段72により、揺動アーム52の回動(図1で反時計廻りの回動)が規制され、回転体61と搬送ドラム13の周面14との距離を適切に保つことができる。また、規制ねじ75の先端76を、揺動アーム52に対して進退させることで、上記距離を微調節することが可能となる。
ばね手段73は、コイルばね78によって構成される。コイルばね78は、固定ロッド71と揺動アーム52の後端近傍とを連結する。コイルばね78が略自然長の状態ないし若干圧縮された状態で、規制ねじ75の先端76が、揺動アーム52の後半部上面に当接するように構成されている。ばね手段73により、回転体61の接触面65を、起立姿勢になっている錠剤100と弾力的に接触させることができる。
【0030】
次に、上記構成の物品搬送装置1の動作について説明する。
【0031】
図1に示すように、搬送手段10の搬送ドラム13が、駆動軸11廻りを回転方向Rに連続して回転駆動されている。搬送ドラム13の回転に伴って、供給部20により、搬送手段10のポケット部15に対して錠剤100が順次供給される。ポケット部15の吸着孔16には、通気路17および開閉構造18を介して吸引力が作用しており、供給手段20の供給スロープ25を案内された錠剤100は、ポケット部15に吸着保持される。ポケット部15に吸着保持された錠剤100は、搬送ドラム13により、回転方向Rに搬送される。
【0032】
錠剤100は、供給手段20からランダムな状態で供給されるため、図8(a)〜(d)に示すように、様々な姿勢でポケット部15に吸着保持されている。図8(a)に示す錠剤100は、適正な姿勢(寝姿勢)であり、図8(b)に示す錠剤100は、起立姿勢である。図8(c)に示す錠剤100は、寝姿勢に近いが、斜めに傾いて収まりの悪い姿勢(斜め姿勢)である。図8(d)に示す錠剤100は、ポケット部15の縁に引っ掛かって位置ずれした姿勢(位置ずれ姿勢)である。また、これらの他に、一のポケット部15に複数の錠剤100が吸着保持された場合等も生じ得る。
【0033】
調整手段30は、このように様々な姿勢で保持された錠剤100を、寝姿勢または起立姿勢の何れかに調整する機能を有する。調整手段30の調整ローラ34は、主として斜め姿勢や位置ずれ姿勢の錠剤100に作用し、錠剤100を所定姿勢にする。また、ポケット部15に複数の錠剤100が保持されていれば、調整ローラ34が、余分な錠剤100を弾き飛ばし、ポケット部15に錠剤100を所定姿勢で1個だけ保持させる(図2の100a参照)。また、起立姿勢になっている錠剤100の起立向きが一定しない場合には、調整ローラ34により、起立向きが列線Lに沿って揃えられる(図2の100b、100d参照)。調整ローラ34は、寝姿勢の錠剤100に対しては接触しない高さに設けられており、既に寝姿勢になっている錠剤100には作用しない。
【0034】
押え手段40は、調整手段30の機能を助成し、主として調整手段30を経てもなお僅かに斜め姿勢になっている錠剤100に作用する。押え手段40のブラシ部44により、斜め姿勢の錠剤100が押え付けられることで、寝姿勢にされる(図2の100c、100e参照)。実施形態のブラシ部44は、展開平面視でポケット部15の列線Lと斜め交差する所定構成であるため、錠剤100を寝姿勢にしてポケット部15に収容し易い。
調整手段30、押え手段40により、姿勢矯正部50の効率をより向上させることができる。なお、錠剤100に替えて、丸錠やレンズ錠等に物品搬送装置1を適用する場合には、これらの調整手段30と押え手段40で、大半を寝姿勢にすることも可能である。物品搬送装置1を、錠剤100のような特定形状の錠剤と、丸錠やレンズ錠等と、で兼用するようにしてもよい。この場合、大きな段取り替えが不要であり、操作性・作業性を良好にできる。
【0035】
調整手段30、押え手段40を通過した錠剤100は、搬送手段10のポケット部15において、寝姿勢または起立姿勢になっている。姿勢矯正部50では、起立姿勢になっている錠剤100が、寝姿勢に矯正される。姿勢矯正部50の回転体61は、寝姿勢の錠剤100に対しては接触しない高さに設けられており、既に寝姿勢になっている錠剤100は、そのまま姿勢矯正部50を通過する。
【0036】
起立姿勢になっている錠剤100が搬送手段10の頂上付近に到達すると、図5(a)に示すように、起立姿勢になっている錠剤100は、回転体61と当接して回転体61との接触を開始する。実施形態では、回転体61の接触面65ないし接触面65の周縁部66が、錠剤100における所定の当接部68と当接する。当接部68は好ましくは、図6に示すように、基体部101の前端(湾曲面107)と、膨出部102と、の境界近辺であって、基体部101の上面(フラット面106)よりも少し下方に位置する。回転体61は、接触面65ないし接触面65の周縁部66がこの当接部68と当接可能に配設される。
【0037】
起立姿勢になっている錠剤100は、回転体61と当接後も回転方向Rに搬送され、これにより回転体61は、回転軸67廻りを、搬送手段10の回転方向Rとは反対廻りの回転方向rに僅かな回転角度だけ回転される。このとき回転体61が、所定の斜め交差角度α(図3参照)、傾斜角度β(図4参照)をなして配設されていることから、図5(b)に示すように、回転体61の接触面65ないし接触面65の周縁部66が、回転体61の回転に伴って、錠剤100と接触することで、錠剤100に所定の倒伏力Pが及ぼされる。錠剤100は、回転体61とポケット部15の底部との間に転倒可能に挟持された状態で、倒伏力Pにより膨出部103の側に倒伏される。錠剤100は、この倒伏力Pにより、若干捻られるようにして膨出部103の側に倒伏される。即ち倒伏力Pは、錠剤100を平面視でごく僅かに回転させながら倒伏させようとする力成分(捻り力成分)を含む。このような倒伏力Pにより、起立姿勢になっている所定形状の錠剤100を確実に倒伏させることができる。しかも、回転体61が回転軸67廻りを回転方向rに回転されるため、錠剤100に不自然な力や無理な負荷がかかり難く、きわめてスムーズに錠剤100を倒伏させることができる。
【0038】
回転体61の斜め交差角度α、傾斜角度βの最適な値は、錠剤100の形状等によっても変化するが、α=5°〜45°程度、β=5°〜45°程度が好ましく、α=10°〜30°程度、β=10°〜30°程度がより好ましい。αやβの値が小さくなり過ぎると、効果的な倒伏力Pを及ぼせないおそれがあり、逆にαやβの値が大きくなり過ぎると、回転体61と錠剤100との当接による衝撃や倒伏力Pの捻り力成分が増大し、錠剤100の収まり不良やポケット部15からの飛び出し等を招来するおそれがある。
【0039】
実施形態では、回転体61の接触面65ないし接触面65の周縁部66が、回転体61の回転に伴って、図6に示すように、起立姿勢になっている錠剤100の一側面(膨出部102)における接触領域69と略面的に接触するように設けられている。接触領域69は、当接部68を始端として膨出部102の略上半部に形成され、一定の領域面積を有する。接触領域69の形状は、錠剤100の形状等によって異なり得るが、錠剤100が膨出部102(103)を備えたものである場合には、接触領域69の領域面積を確保し易くなる。
回転体61の接触面65ないし接触面65の周縁部66が、接触領域69に沿って、錠剤100の膨出部102と順次接触することで、錠剤100と当接してからも暫く継続して、錠剤100に倒伏力Pを及ぼすことができる。また、回転体61の接触面65ないし接触面65の周縁部66が、一定の領域面積を有する接触領域69と略面的に接触することで、錠剤100を安定的に倒伏させることができる。よって、錠剤100を確実かつ正確にポケット部15に収容することが可能となる。しかも、実施形態では、所定のばね手段73により、回転体61の接触面65ないし接触面65の周縁部66と、接触領域69との接触を非常に保ち易いものとなっている。
【0040】
起立姿勢になっている錠剤100は、倒伏力Pにより倒伏されるとともに、回転方向Rに搬送されていることから、やがて回転体61との接触を解放されるが、図5(c)に示すように、錠剤100は自重等により倒伏を進め、ポケット部15に寝姿勢で収容される。錠剤100は、膨出部103がポケット部15の底部に摺接するようにして転倒される。このため、ポケット部15の底部を、膨出部103の形状に沿った滑らかな湾曲面に形成しておくことで、吸着孔16に作用する吸引力とも相俟って、錠剤100をポケット部15に正確に収容し易くなる。
【0041】
このように、起立姿勢になっている錠剤100の倒伏は、錠剤100が回転方向Rに搬送されつつ、回転体61が回転方向rに回転されて、おこなわれる。よって錠剤100が搬送手段10の頂上付近に到達してから、ごく短い時間で錠剤100の寝姿勢への矯正を完了できる。
物品搬送装置1は好ましくは、回転体61と錠剤100との接触が開始されるのと略同時にポケット部15の吸引が解除され、回転体61と錠剤100との接触が解放されるのと略同時にポケット部15の吸引が再開されるように構成される。このような構成によれば、回転体61の接触面65ないし接触面65の周縁部66が、錠剤100の接触領域69と接触する間、吸引が解除されていることから、錠剤100を倒伏させ易い。また、所定タイミングで作用する吸引力により、倒伏力Pが捻り力成分等を含んだものであっても、錠剤100をポケット部15に正確に収容し易くなる。また、吸引の解除は、ごく短い時間で足り、しかも搬送手段10の頂上付近(搬送位置10a:図1参照)でおこなわれるため、錠剤100を倒伏させる間に、錠剤100がポケット部15から誤って脱落等するおそれがきわめて低い。さらに、供給手段20(二次ホッパー22)や異物検査機構4等によって、搬送手段10外周の空きスペースが限られている場合であっても、姿勢矯正部50を所定位置に省スペースで設置できる。
【0042】
姿勢矯正部50を通過した錠剤100は、図1に示すように、引き続き搬送手段10により回転方向Rに搬送される。錠剤100は、搬送手段10のポケット部15に寝姿勢で保持されている。実施形態の物品搬送装置1では、この寝姿勢で保持された錠剤100に、異物検査機構4、印刷機構5、印刷検査機構6等により所定の処理が施され、引き渡し機構7を介して、錠剤100が次工程に引き渡される。異物検査機構4や印刷検査機構6による検査の結果、不良品となったものは、排出機構8により排出される。
【0043】
以上説明した物品搬送装置1によれば、略扁平形状の錠剤100を、確実に寝姿勢に矯正することができる。
実施形態の錠剤100は、平面視非円形状をなし、フラット面106が形成された帯状部105を有する基体部101を備えた形状であるため、ポケット部15で起立姿勢になり易く、従来装置では、確実に寝姿勢に矯正することが難しい。これに対して、物品搬送装置1によれば、このような錠剤100を、より確実に寝姿勢に矯正することができる。また、錠剤100は、基体部101の表裏両面に膨出部102、103が設けられた形状であるため、膨出部102、103が設けられていないもの等に比べ、比較的倒伏させ難いが、物品搬送装置1によれば、回転体61の接触面65ないし接触面65の周縁部66が、所定の接触領域69と接触することで、容易に倒伏させることができる。
【0044】
また、物品搬送装置1によれば、搬送手段10により錠剤100が回転方向Rに搬送されるとともに、回転体61が所定の回転軸67廻りを回転方向rに回転されるため、起立姿勢になっている錠剤100と回転体61との当接による衝撃や摩擦抵抗を緩和できる。よって、搬送手段10を高速回転させる場合であっても、錠剤100の破損や摩耗等を防止し易く、錠剤100をポケット部15に確実かつ正確に収容することが可能となる。回転体61を、モータ等の適宜の駆動手段(図示せず)により、自発的に回転させる構成とした場合には、上記衝撃を一層緩和できる。このとき、搬送手段10により搬送される錠剤100の速度と略同一の周速度をもって、回転体61を錠剤100と接触させるようにすれば、両者の摩擦抵抗をきわめて小さいものとできる。また、搬送手段10により搬送される錠剤100の速度よりも速い周速度をもって、回転体61を錠剤100と接触させるようにすれば、さらに短い時間で錠剤100の寝姿勢への矯正を完了できるようになる。
【0045】
また、物品搬送装置1によれば、回転体61が所定形状の構成であるため、接触面65等の加工性が良好であり、回転体61を簡易に低コストで製造できる。なお、回転体61の形状は、錠剤100の形状等に応じて適宜変更され得る。図9は、上記実施形態の変形例について示す図である。図9(a)は、変形例に係る回転体161を示し、図9(b)は、回転体161による物品(錠剤100)の姿勢矯正状況を示している(上記実施形態と共通する構成には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する;以下の図において同じ)。
【0046】
回転体161は、図9(a)に示すように、本体部62と、本体部62周囲の周設部163と、からなる。周設部163の外周には、テーパ状に形成された接触面165が設けられる。この変形例では、回転体161の接触面165において、傾けられる側の周縁部166が縮径部となり、断面視で、この縮径部の径と接触面165の母線とが鈍角θ1をなすように構成されている。
【0047】
回転体161によれば、図9(b)に示すように、回転体161の接触面165ないし接触面165の周縁部166が、回転体161の回転に伴って、錠剤100と接触することで、錠剤100の膨出部102に倒伏力P1を及ぼすことができる。特にこのような回転体161によれば、例えば膨出部102の膨らみが大きい形状のものであっても、接触面165ないし接触面165の周縁部166が、膨出部102との接触を保ち易く、錠剤100に効果的な倒伏力P1を及ぼすことが可能となる。
【0048】
また、図10は、他の変形例について示す図である。図10(a)は、他の変形例に係る回転体261を示し、図10(b)は、回転体261による物品(錠剤100)の姿勢矯正状況を示している。
【0049】
回転体261は、図10(a)に示すように、本体部62と、本体部62周囲の周設部263と、からなる。周設部263の外周には、テーパ状に形成された接触面265が設けられる。この変形例では、接触面265が上記の接触面165とは逆向きのテーパ状に形成されている。即ち、回転体261の接触面265において、傾けられる側の周縁部266が拡径部となり、断面視で、この拡径部の径と接触面265の母線とが鋭角θ2をなすように構成されている。
【0050】
回転体261によっても、図10(b)に示すように、回転体261の接触面265ないし接触面265の周縁部266が、回転体261の回転に伴って、錠剤100と接触することで、錠剤100の膨出部102に倒伏力P2を及ぼすことができる。特にこのような回転体261によれば、例えば膨出部102の膨らみが僅かな形状のものであっても、接触面265ないし接触面265の周縁部266が、膨出部102との接触を保ち易く、錠剤100に効果的な倒伏力P2を及ぼすことが可能となる。
【0051】
以上の実施形態の記述は、本発明をこれに限定するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の修正や設計変更等が可能である。
【0052】
例えば、搬送手段10、供給手段20、調整手段30、押え手段40、姿勢矯正部50等の具体的な大きさ・形状、配置等は適宜変更することができる。実施形態では、搬送手段10のポケット部15を5列設ける例について示したが、他の複数列や1列の構成であってもよい。また、調整手段30、押え手段40、姿勢矯正部50等は、各部材を適宜交換可能にしたり、各部材の配設位置や配設角度等を適宜調節可能に構成することができる。姿勢矯正部50を、搬送手段10の外周に沿って複数配設するようにしてもよい。
【0053】
また、実施形態では、略扁平形状の物品として、錠剤100を例示したが、本発明は、これ以外の異形錠やオーバル錠、楕円錠、ラグビー錠、フィルムコート錠、糖衣錠、素錠、丸錠、レンズ錠、R錠その他の医薬品、あるいはサプリメント、食品等の様々なものに適用できる。
【符号の説明】
【0054】
1 物品搬送装置
10 搬送手段
11 駆動軸
15 ポケット部
20 供給手段
30 調整手段
34 調整ローラ
40 押え手段
44 ブラシ部
50 姿勢矯正部
61 回転体
65 接触面
69 接触領域
72 規制手段
73 ばね手段
100 錠剤(物品)
101 基体部
102、103 膨出部
105 帯状部
106 フラット面
R 回転方向
L 列線
α 斜め交差角度
β 傾斜角度
r 回転方向
P 倒伏力



【特許請求の範囲】
【請求項1】
略扁平形状の物品を、寝姿勢にして搬送するための物品搬送装置であって、
駆動軸廻りを回転駆動され、該物品を保持可能なポケット部が、周方向に列状をなして設けられた搬送手段と、
蓄えられた該物品を、該搬送手段の該ポケット部に供給する供給手段と、
該搬送手段の該ポケット部において起立姿勢になっている該物品と接触し得る接触面が外周に設けられた回転体を有する姿勢矯正部と、を備え、
該姿勢矯正部の該回転体が、展開平面視で該ポケット部の列線と斜め交差し、且つ該駆動軸との直交面から傾けて配設されており、
該回転体の該接触面が、該回転体の回転に伴って、起立姿勢になっている該物品と接触することで、該物品に所定の倒伏力が及ぼされて、該物品が寝姿勢に矯正されるようにした物品搬送装置。
【請求項2】
該回転体の該接触面が、起立姿勢になっている該物品の一側面における接触領域と接触するように設けられた請求項1に記載の物品搬送装置。
【請求項3】
略扁平形状の該物品が、
フラット面が形成された帯状部を有する基体部と、
該基体部の表裏両面に設けられる膨出部と、を備え、
該膨出部が、起立姿勢になっている該物品の側面を形成する請求項2に記載の物品搬送装置。
【請求項4】
該回転体が、該搬送手段の頂上位置に配設され、
該物品が該搬送手段の頂上付近を通過する際に、該ポケット部における該物品の保持が一時的に解除される請求項1乃至3の何れかに記載の物品搬送装置。
【請求項5】
該回転体が、ばね手段を介して、該搬送手段と接近・離反方向に揺動可能に設けられ、
該回転体の該接触面が、起立姿勢になっている該物品と弾力的に接触し得る請求項1乃至4の何れかに記載の物品搬送装置。
【請求項6】
該回転体が、該ポケット部の列線に対応して複数配置されるとともに、互いに他の揺動に追従しないように設けられた請求項5に記載の物品搬送装置。
【請求項7】
該回転体の該接触面が、テーパ状に形成された請求項1乃至6の何れかに記載の物品搬送装置。
【請求項8】
該回転体が、駆動手段により自発的に回転される請求項1乃至7の何れかに記載の物品搬送装置。
【請求項9】
該供給手段により供給された該物品を、該搬送手段の該ポケット部に所定姿勢で1個ずつ保持させるとともに、起立姿勢になっている該物品の起立向きを揃える調整手段と、
該調整手段と該姿勢矯正部との間に配設され、ブラシ部を有する押え手段と、を備えた請求項1乃至8の何れかに記載の物品搬送装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−193012(P2012−193012A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57755(P2011−57755)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000137904)株式会社ミューチュアル (37)
【出願人】(511068924)株式会社松岡機械工作所 (1)
【Fターム(参考)】