説明

物干しロープ収納体

【課題】物干しロープを両壁面間にピンと張った状態において、ブレーキ装置を稼働させ、重い洗濯物を吊設した場合等に生じる僅かな弛みを矯正できる物干しロープ収納体を提供すること。
【解決手段】ロープ11の基端を固定すると共に巻取りロープを収納するロープ収納部と常時巻き取り方向に付勢するぜんまいバネとを有するリール4と、リール4の巻き出し方向への回転を停止させる第1ロック手段6と、張設され且つ第1ロック手段6によりロックされたロープ11を、張設方向とは異なる方向に迂回状に屈曲させ且つ固定することで、張設されたロープを更に引っ張る第2ロック手段7と、を備えた物干しロープ収納体10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風呂場や室内において、両壁面間に掛け渡しで使用される物干しロープを巻き出し、巻き戻して収納すると共に、掛け渡しロープに張力を与えることができる壁面設置用の物干しロープ収納体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
風呂場や室内において、両壁面間に掛け渡しで使用される物干しロープを巻き出し、巻き戻して収納する壁面設置用の物干しロープ収納体としては、種々のものが知られている。
【0003】
例えば、特開2000−140487号公報には、浴室1内の左壁2と右壁3との間に掛け渡す物干ロープにおいて、前記左壁2には所望の高さ位置にロープ収納部7を前記右壁3にはロープ止め具8を夫々固着し、前記ロープ収納部7には、外周にロープ15の巻取枠20を、内側に常時巻き取り方向に付勢するぜんまいバネ22を夫々設けたリール体11を設け、該リール体11に回転停止させるブレーキ装置12を設けた物干ロープが開示されている。
【0004】
特開2000−140487号公報に記載の物干ロープによれば、コマ33を持ってぜんまいバネ22の弾力に抗してロープ15を引き伸ばし、コマ33の鍔34をロープ止め具8の係合溝32に係合させるため、ロープ15はぜんまいバネ22の弾力で強く張られる。次いで、操作部26を仮線の位置から実線の位置に回動させると、係合部25を歯車24に係合し、ロープ15はそのまま固定されるので、重い洗濯物でも吊設できる。すなわち、図8の(A)のように、物干しロープを両壁面間にピンと張った状態において、ブレーキ装置12を稼働させるため、重い洗濯物でも吊設できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案公報第3057990号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の物干しロープは、図8の(A)のように、物干しロープ11を両壁面200間にピンと張った状態において、ブレーキ装置12を稼働させ、重い洗濯物を吊設した場合、実際には、図8(B)のように、物干しロープ11は大きい弛みではないが、弛んでしまう。従って、ブレーキ装置を作動させた後の物干しロープの緩みを解消できる物干しロープの開発が望まれていた。
【0007】
従って、本発明の目的は、物干しロープを両壁面間にピンと張った状態において、ブレーキ装置を稼働させ、重い洗濯物を吊設した場合等に生じる僅かな弛みを矯正できる物干しロープ収納体を提供することにある。
【0008】
かかる実情において、本発明者は鋭意検討を行った結果、従来の物干しロープのブレーキ装置と同様の第1ロック手段を設けると共に、張設され且つ該第1ロック手段によりロックされたロープを、張設方向とは異なる方向に迂回状に屈曲させ且つ固定することで、張設されたロープを更に引っ張る第2ロック手段を設ければ、重い洗濯物を吊設した場合等に生じる僅かな弛みを矯正できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、ロープの基端を固定すると共に巻取りロープを収納するロープ収納部と常時巻き取り方向に付勢するぜんまいバネとを有するリールと、該リールの巻き出し方向への回転を停止させる第1ロック手段と、張設され且つ該第1ロック手段によりロックされたロープを、張設方向とは異なる方向に迂回状に屈曲させ且つ固定することで、張設されたロープを更に引っ張る第2ロック手段と、を備えたことを特徴とする物干しロープ収納体を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、張設され且つ第1ロック手段によりロックされたロープを、第2ロック手段により、張設方向とは異なる方向に迂回状に屈曲させ且つ固定するため、張設されたロープの概ね迂回状に屈曲させた長さ相当分が、リール側に引っ張られる。このため、張設され重い洗濯物を吊設したロープの僅かな弛みを矯正できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態における物干しロープ収納体の斜視図である。
【図2】図1の物干しロープ収納体の一部の分解斜視図である。
【図3】図1の物干しロープ収納体の分解斜視図である。
【図4】図1の物干しロープ収納体のリールのロープ収納部で破断した断面図である。
【図5】図1の物干しロープ収納体の第2ロック手段の内部構造を示す図である。
【図6】図1の物干しロープ収納体の突起構造体の構造を示す図であり、(A)が斜視図であり、(B)が一部を破断した斜視図である。
【図7】図1の物干しロープ収納体の第2ロック手段の作動状況を説明する図であり、(A)が第2ロック手段アンロックの場合、(B)が第2ロック手段のロック初期の場合、(C)が第2ロック手段ロックの場合を示す。
【図8】図1の物干しロープ収納体の使用方法を説明する図であり、(A)は第1ロック手段ロック、第2ロック手段アンロックで重量物の吊設なし、(B)は第1ロック手段ロック、第2ロック手段アンロックで重量物の吊設あり、(C)は第1ロック手段ロック、第2ロック手段ロックで重量物の吊設ありである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
物干しロープ収納体10は、ロープ11の基端を固定すると共に巻取りロープを収納するロープ収納部43と常時巻き取り方向に付勢するぜんまいバネ41とを有するリール4と、リール4の巻き出し方向への回転を停止させる第1ロック手段6と、張設され且つ第1ロック手段6によりロックされたロープ11を、張設方向とは異なる方向に迂回状に屈曲させ且つ固定することで、張設されたロープを更に引っ張る第2ロック手段7と、を備えるものである。
【0013】
物干しロープ収納体10は、外観的には、所定厚みの箱状物であって、箱状物の一部、本例では箱状物の角に開口251を設け、この開口251から先端にロープ係止部8を有するロープ11が延出している。図1ではロープ11が少し出ているが、実際には、ぜんまいバネ41の弾発力により、ロープ11は容器内に収納されている。
【0014】
物干しロープ収納体10は、風呂場や室内の壁に固定する固定基板1と、固定基板1に固定されると共に、リール4、第1ロック手段6及び第2ロック手段7等を固設するベース板12と、リール4、第1ロック手段6及び第2ロック手段7及びカバー部材2を有する。
【0015】
固定基板1は、任意の構成要素であり、本例では、ベース板12と嵌合する輪郭形状の板状本体部13に壁面固定用の螺子が通る貫通孔14と、ベース板12と係合する係止片15が設けられている。
【0016】
ベース板12は、固定基板1と嵌合する輪郭形状の本体部に、ぜんまいバネ41の基端412を固定する突起121、カバー2を固定するボルト孔、ダンパーカバーを固定するボルト孔、第1ロック手段及び第2ロック手段を固定するボルト孔、ロープ11の移動軌道を安定させる案内ピン128等が設けられている。
【0017】
リール4は、ぜんまいバネ41を介してベース板12に固定される。リール4は、内部にぜんまいバネ41が収納される内部空間を有する円筒体であって、円筒体の外周面には、固定基板1側から順に、歯車部42、ぜんまいバネ41の他端411が接続される係止部46を有する円筒部45及び溝状のロープ収納部43が形成され、円筒体の天面には、ダンパー本体部51が収納される凹部44が形成され、凹部44内の円筒体の径方向の中央には、突起121が嵌る貫通孔45が形成されている。
【0018】
ダンパー5は任意の構成要素であり、巻き出されたロープ11が、第1ロック手段6及び第2ロック手段7が解除され、且つロープ11の係止等の外力が除かれた状態において、ぜんまいバネ41の弾発力でロープ11が勢いよく、巻き戻されることを抑制するものであり、市販のものが使用できる。ダンパー5は、作動油とオリフィスを内蔵するものであり、リール4の天面に形成された凹部44に嵌め込まれるダンパー本体部51と、ダンパー本体部51と嵌合する共に、ベース板12に固定されるダンパーカバー52とからなる。すなわち、ダンパーカバー52は、コ字状側面形状であって、一対の脚部521の先端がベース板12に螺子止めされ、天板522の嵌合孔523にダンパー本体部51が嵌合するようになっている。
【0019】
第1ロック手段6は、リール4のロープ巻き出し方向への回転を停止させるものである。これにより、張設されたロープ11に洗濯物等の重量物が吊り下げられても、ロープ11は大きく弛むことはない。第1ロック手段6は、図4に示すように、リール4の歯車部42に係止する係止片部61〜63と、係止片部に作用するハンドル部64〜69とからなる。係止片部は、トーションバネ62が装着された軸支構造であり、鋭角な先端形状を有する係止部61と、係止部61とは軸に対して反対側にある突起63からなる。すなわち、係止片部は、トーションバネ62の弾発力により、図4に示すような、軸に対して、係止部61の先端が左向きに、突起63の延出方向が右向きとなるような、常に非係止状態である。
【0020】
ハンドル部は、上下方向において離間状態にある2つの軸部66、64と、軸部66、64間に介在するバネ67とからなる。下方の軸部64は、軸を中心に回転する軸支部であり、軸支部の下側に下方に延出するハンドル65と、2つの軸中心を結ぶ線より左側に位置して且つやや斜め左上方に延びる突起69と、2つの軸中心を結ぶ線より右側に位置して且つやや斜め右上方に延びるバネ係止用突起68とを備える。上方の軸部66は、固定軸部であり、バネ67の一端を支える。このようなハンドル部は、図4に示す状態が、非係止状態であり、バネ67の弾発力により、時計回り方向に回転力が作用するものの、ハンドル65がカバー2に当接しているため、ハンドル65が下方に延出する状態で安定している。そして、ハンドル65をバネ67の弾発力に抗して、反時計回りに回すと、バネ67の下方端は2つの軸中心を結ぶ線より左側に移動してハンドル65を反時計回りにカバー部材2に当たるまで90度回転する。そして、突起69が係止片部の突起63に当たり、係止部61が時計回りに回転してリール4の歯車部42の歯に係止する。この状態は、バネ67の付勢力を上回る外力がハンドル65に作用しない限り、ハンドル65は回転せず安定である。
【0021】
第2ロック手段7は、ロープ出口部25とリール4間に設置されるものであり、張設されたロープ11に対して直角方向に延びる突起711を有する固定側の突起構造体71と、突起構造体71の外側に嵌合する可動側の円筒部材78とからなる。突起711は、本例では、円柱部材714の径方向に貫通する高さHの貫通孔715の径方向における中心に形成され、円柱部材714の頂部側にロープ11が通る開口712を有する高さHより低い高さHのものであり、両側には、突起構造体71と円筒部材78が嵌合した際、ロープ11が迂回状に屈曲して通る側方隙間が形成される切り欠き713を設けたものである。これにより、突起構造体71と円筒部材78が嵌合した際、ロープ11は、突起711の形状に沿って屈曲するため略M字形状又は略W字形状となる。すなわち、ロープ11は、張設方向とは異なる方向に迂回状に屈曲されて固定されることになる。張設方向とは、図6(A)中、符号Xで示すような、第2ロック手段内におけるロープ11が延出する方向を言う。
【0022】
突起711の内部には、底面から途中まで延びる螺子孔716が形成されており、突起構造体71を、ベース板2に螺子止めできるようになっている。突起構造体71は、突起構造体71の座部となる突起構造体基部73の中央部に形成されるものである。突起構造体基部73の両側には、円形状の凹部731が形成されている。円形状の凹部731には、バネ部材721が装着されたピン72の先端(ボス)74が嵌るようになっている。バネ部材が装着されたピン72は、円筒部材78の位置決めと円筒部材78の出入りを安定して案内する機能を奏するものである。
【0023】
円筒部材78は、突起構造体71と協働して、ロープ11を開放するアンロック(第2ロック手段のアンロック)またはロープ11をリール4側に所定寸法引き戻すロック(第2ロック手段のロック)を行うものである。円筒部材78は、突起構造体71の円柱部714の外径より少し大きな内径の貫通孔76を有する。また、貫通孔76の内周面には螺子79が形成されている。
【0024】
円筒部材78の嵌合側には、フランジ75が形成され、フランジ75にはピン72の外径より大きく、バネ部材721の外径より小さな内径を有する貫通孔77が形成されている。これにより、円筒部材78と突起構造体71は、円筒部材78の貫通孔76と略円柱形状の突起構造体71が、バネ部材721のバネ付勢に抗して、互いに嵌合することになる。なお、本例では、円筒部材78とフランジ75は別部材であるが、一体化物であってもよい。
【0025】
物干しロープ収納体10は、ケース2からロープ11の取り出し方向を案内するロープ出口部25を有している。ロープ出口部25は、ロープ11の太さより少し大きな内径を有する斜め下方に延びる貫通孔252と、貫通孔252の外側に位置するロープ係止部8を収容する凹部251を有している。ロープ11を張設するには、ロープ出口部25から出たロープ11を略90度屈曲させて他の壁面に向かって引き延ばすことになる。
【0026】
物干しロープ収納体10は、円筒部材78を突起構造体71側に移動させるテンション調節体31を有している。テンション調節体31は、円筒部材78の内周面に形成された螺子79に螺合する螺子34が形成された螺子部312と、回転操作を容易にする円筒状の操作部311とを有する略T字断面形状のものである。円筒部材78側の螺子79と螺子部312側の螺子34との関係は、操作部311を時計回りに回転することで、円筒部材78と突起構造体71の嵌合が深くなる場合、すなわち、第2ロック手段をロックとする場合、逆ネジであり、操作部311を反時計回りに回転することで、円筒部材78と突起構造体71の嵌合が深くなる場合、すなわち、第2ロック手段をロックとする場合、正ネジである。
【0027】
テンション調節体31は、中心に貫通孔321を有する円柱状の調節体補助部材32と一体となって、螺合安定性を高めている。すなわち、調節体補助部材32は、テンション調節体31に螺子止めされる。これにより、テンション調節体31の螺子部外周面と調節体補助部材32間には円筒部材78が通る隙間が形成され、テンション調節体31の進退移動が安定する。
【0028】
次に、物干しロープ収納体10の作用及び使用方法について説明する。物干しロープ収納体10は、浴室あるいは室内の壁面に固定される。すなわち、固体基板1は、螺子により、浴室あるいは室内の壁面に螺子止めにより固定され、リール4等を備えたベース板12は、固定基板1に嵌合により固定されている。未使用時の物干しロープ収納体10は、図4及び図7(A)で示されるものである。但し、図7(A)はロープ11を未使用時から、Lだけ巻き出した状態を示す。すなわち、未使用時の物干しロープ収納体10は、ロープ11がぜんまいバネ41の弾発力により、巻き戻され、リール4のロープ収納部43に収納され、先端のロープ係止部8がロープ出口部25の凹部251に概ね収納される。また、第1ロック手段6及び第2ロック手段7は、アンロック状態である。第1ロック手段6のアンロックは、図4に示すように、ハンドル65が下方に延出しており、係止部61は寝た状態で、係止部61と歯車部42の歯とは係止していない。また、第2ロック手段7のアンロックは、図7(A)に示すように、円筒部材78と突起構造体71が嵌合していない状態あるいは嵌合していても、円筒部材78の反操作部311側の端(先端)がロープ11が通る開口712の手前に位置している状態である。この状態において、操作部31の螺子34と円筒部材78の内周面に形成された螺子79とは大部分が螺合している。なお、図7(A)のロープのL長さは、簡略記載であり、実際には壁面間の距離であり、長いものである。
【0029】
次に、リール4のロープ収納部43に収納されたロープ11を巻き出し、物干しロープ収納体10を固定した壁面に対峙する他方の壁面に固定された係止体(不図示)にロープ11の先端に形成されたロープ係止部8を係止する。これにより、ロープ11は、ぜんまいバネ41の弾発力により所定の張力で引っ張られる(図8(A))。このため、ロープ11は、両壁面にピンと張った状態で張設される。
【0030】
次いで、第1ロック手段6を作用させる。先ず、図4の状態にあるハンドル65を、バネ67の弾発力に抗して、反時計回りに90度回転させ、ハンドル65の延出方向が右向き水平方向となるようする。これにより、突起69が係止片部の突起63に当たり、係止部61が時計回りに回転してリール4の歯車部42の歯に係止する。これにより、リール4の巻き出し方向への回転は停止する。この状態は、バネ67の付勢力を上回る外力がハンドル65に作用しない限り、ハンドル65は回転せずリール4は停止したまま安定である。これにより、洗濯物等を吊り下げる準備が整い、ロープ11に洗濯物等の重量物が吊り下げられる(図8(B))。
【0031】
図8の(A)のように、物干しロープ11を両壁面200間にピンと張った状態において、第1ロック手段6を作動させ、重い洗濯物Aを吊設した場合、実際には、図8(B)のように、物干しロープ11は大きい弛みではないが、弛んでしまう。これにより、吊設した洗濯物Aが中央に寄ってしまうという問題が発生する。これは、リール4は第1ロック手段6により停止しているものの、リール4に巻かれている残存するロープに緩みがあるため、洗濯物の重量により、ロープは僅かながら、巻き出し方向に引き出されるためである。この状態において、第2ロック手段7をロック状態に作動させる。
【0032】
第2ロック手段7をアンロック状態からロック状態にするには、テンション調節体31を、円筒部材78が突起構造体71側に移動するように回動させる。すなわち、円筒部材78側の螺子79と螺子部312側の螺子34が逆ネジの場合、テンション調節体31を時計回りに回転させる。これにより、円筒部材78がバネ72の付勢に抗して突起構造体71側に移動する。
【0033】
円筒部材78が突起構造体71側に移動すると、突起構造体71と円筒部材78が嵌合し、突起構造体71の開口712にピンと張った状態で通されたロープ11は、張設方向の直角方向に迂回状に屈曲する。この場合、リール4側に巻かれたロープ内における僅かな弛み分が迂回状に屈曲する側に引っ張られると共に、反リール4側におけるほとんどの弛み分が迂回状に屈曲する側に引っ張られる。すなわち、図7(A)の状態から図7(B)の状態となる場合で、巻き延ばし側の寸法は、(L−L)分、リール4側に引っ張られる。更に、円筒部材78を突起構造体71側に移動させると、ロープ11は突起711の形状に沿って更に屈曲し、突起構造体71と円筒部材78の隙間に入り込み、略M字形状又は略W字形状に屈曲する。これにより、第2ロック手段7はロック状態となる。ロック状態はテンション調節体31を回さない限り、維持される。第2ロック手段7のロック状態は、アンロック状態に比べて、(L−L)分、リール4側に引っ張られたことになる。これにより、ロープ11を両壁面間にピンと張った状態において、第1ロック手段6を作動させ、重い洗濯物Aを吊設した場合等に生じる僅かな弛みを、ピンと張ったロープ状態に矯正できる(図8(C))。
【0034】
次に、物干しロープ収納体10を使用状態から不使用状態とする操作の一例について説明する。先ず、洗濯物A類を取り込む。次いで、第2ロック手段7のロックを解除する。すなわち、第2ロック手段7のロックの解除手順は、ロック手順の逆手順で行なえばよい。先ず、テンション調節体31を、円筒部材78が反突起構造体71側に移動するように回動させる。すなわち、円筒部材78側の螺子79と螺子部312側の螺子34が逆ネジの場合、テンション調節体31を反時計回りに回転させる。これにより、円筒部材78が除々に且つバネ72の付勢により安定して突起構造体71側に移動する。
【0035】
円筒部材78が反突起構造体71側に移動すると、突起構造体71と円筒部材78の嵌合が除々に外れ、遂には、略M字形状又は略W字形状に屈曲したロープ11は、突起構造体71の開口712を通ってピンと張った状態となる。次いで、第1ロック手段6のロックを解除する。先ず、右向き水平方向となっているハンドル65を、バネ67の弾発力に抗して、時計回りに概ね80度回転させ、ハンドル65が下向き鉛直方向となるようする。これにより、係止片部の突起63と突起69の係止が外れる。これにより、トーションバネ611の作用により、係止部61が反時計回りに回転してリール4の歯車部42の歯との係止が解除される。次いで、ロープ11の先端のロープ係止部8と壁面に形成された係止体との係止状態を解除すると、ロープ11は、ぜんまいバネ41のバネ付勢により、リール4に巻き戻される。この際、ダンパー5が作用し、巻き戻し力を弱めるため、ロープ11は概ねゆっくりとリール4に巻き戻される。なお、第1ロック手段6がロック状態であっても、リール4が巻き戻し方向に回転する際、リール4の歯車部42の歯と係止部61の歯とは噛み合わない形状となっているため、張設されたロープ11をリールに巻き戻すことは可能である。
【0036】
本発明の物干しロープ収納体10は、上記実施の形態例に限定されず、種々の変形例を採ることができる。第2ロック手段において、突起構造体は、上記形態のように、円筒部材中に開口が形成されたもの以外に、例えば、単なる棒状の突起であってもよい。棒状の突起と円筒部材間にロープを介在させれば、棒状の突起と円筒部材の嵌合により、張設方向とは異なる方向に迂回状にロープを屈曲させることができる。本発明において、張設方向とは異なる方向は、上記張設方向と直角方向に限定されず、張設方向に対してあらゆる角度の方向であってもよい。ロープを迂回状に屈曲させることができるからである。
【0037】
第2ロック手段において、突起構造体と円筒部材の嵌合を安定にするバネ部材721が装着されたピン72はなくてもよい。ピン72がなくともロープを迂回状に屈曲させることができる。第2ロック手段において、円筒部材78と一体的に作用するフランジ75はなくともよい。ピン72がなくともロープを迂回状に屈曲させることができる。第2ロック手段において、押し込み部材は、円筒部材78に限定されず、ロープ11を屈曲できるピン部材であってもよい。この場合、ピンはロープ11の一点を押し込むことになる。また、この場合、ピンの先端は平板とすることが、ロープを安定して押し込むことができる。また、第2ロック手段において、円筒部材の押し込みは、螺子の締め込み以外に、例えば、単に押し込む方法であってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 固定基板
2 カバー
4 リール
5 ダンパー
6 第1ロック手段
7 第2ロック手段
8 ロープ係止部
10 物干しロープ収納体
11 ロープ
12 ベース板
41 ぜんまいバネ
43 ロープ収納部
51 ダンパー本体部
52 ダンパーカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープの基端を固定すると共に巻取りロープを収納するロープ収納部と常時巻き取り方向に付勢するぜんまいバネとを有するリールと、
該リールの巻き出し方向への回転を停止させる第1ロック手段と、
張設され且つ該第1ロック手段によりロックされたロープを、張設方向とは異なる方向に迂回状に屈曲させ且つ固定することで、張設されたロープを更に引っ張る第2ロック手段と、を備えたことを特徴とする物干しロープ収納体。
【請求項2】
張設方向の直角方向に迂回状に屈曲させることを特徴とする請求項1記載の物干しロープ収納体。
【請求項3】
該第2ロック手段は、張設されたロープに対して直角方向に延びる突起を有する固定側の突起構造体と、該突起構造体の外側に嵌合する可動側の円筒部材とからなり、該ロープを該突起と該円筒部材間に介在させ、該円筒部材を該突起構造体側に移動させることで、該ロープを略M字形状又は略W字形状に屈曲させることを特徴とする請求項1または2記載の物干しロープ収納体。
【請求項4】
該突起は、円柱部材の径方向に貫通する高さHの貫通孔の中心に形成され、円柱部材の頂部側にロープが通る開口を有する高さHより低い高さHのものであり、両側には、該突起構造体と該円筒部材が嵌合した際、ロープが迂回状に屈曲して通る側方隙間が形成される切り欠きを設けたものであることを特徴とする請求項3記載の物干しロープ収納体。
【請求項5】
該円筒部材は、内周面に螺子が形成されたものであることを特徴とする請求項3記載の物干しロープ収納体。
【請求項6】
該円筒部材を該突起構造体側に移動させる手段が、外周面に螺子が形成された螺子部を有する操作部材を更に設け、該操作部材の螺子と該円筒部材の内周面に形成された螺子との螺合により行うことを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の物干しロープ収納体。
【請求項7】
該ロープが引き出されるロープ出口部を有し、該第2ロック手段は、該ロープ出口部と該リール間に設置されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の物干しロープ収納体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−205622(P2012−205622A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71549(P2011−71549)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(394016874)河淳株式会社 (61)
【Fターム(参考)】