説明

物理量の局所分解測定のための方法および装置

【課題】 物理量の局所分解測定のための装置を提供する。
【解決手段】 装置は、第1の周波数を有する第1の電気信号6および第2の周波数であって、第1の周波数から差周波数だけ異なる第2の周波数を有する第2の電気信号7を発生させるための手段と、第1の周波数で変調された光学信号であって、測定対象と相互作用して変調可能な光学信号を発生させるための光学ビーム源と、光学信号を変換した結果生じた電気信号10を第2の信号7と混合可能なミキサ11と、少なくとも1つの混合された信号12をデジタル化するためのAD変換器13と、さらに、第3の周波数であって、差周波数の倍数に相当する第3の周波数を有する電気信号8を発生させるための、特にDDSシステム3として形成される手段であって、AD変換器13が、デジタル化のために、第3の周波数を有する混合信号12をサンプリングすることが可能である、手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に従った物理量の局所分解測定のための方法、および請求項7の上位概念に従った、物理量の局所分解測定のための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
定義:周波波領域後方散乱測定法は、英語の名称Optical Frequency Domain Reflectometry(OFDR)でも公知のことであるが、以下OFDR法と呼ぶ。ダイレクトデジタル合成(DDS)の実行に適した装置または集積回路またはシステムは、以下DDSシステムと呼ぶ。以下で光、光学ビームまたは光学信号といった概念が使われたときは、光スペクトル分野の電磁波、特に極紫外線(XUV)から遠赤外線(FIR)までを意味しているものとする。
【0003】
OFDR法を用いたグラスファイバ内の分布温度測定(DTS)や、数々のその他の応用において、光学信号もしくは電気信号の振幅および位相を素早く、ノイズの少ない状態で測定するという課題がある。これは、分布温度測定の時間および温度分解能にとっては重要である。
【0004】
非特許文献1から、冒頭で述べたタイプの方法および装置は公知である。そこに記述されている装置は、信号周波数と、信号周波数から固定的な差周波数だけ異なる、局所発振器周波数とを発生させるための周波数発生器を有する。レーザの光学ビームは、信号周波数と周波数変調され、光ファイバにインカップリングされる。ラマン効果に基づいて散乱したこれらの光学ビームの部分は、ファイバからアウトカップリングされ、光電子増倍管によって電気信号に変換される。これらは局所発振器周波数と混合されて、アナログフィルタリングされる。その後、それはデジタル化されて局所領域においてフーリエ変換される。ラマン効果に基づいて生じた信号のこうして得られた散乱外形は、温度算出の基礎をなす。
【0005】
このような測定システムは、固定的な差周波数を作り出すために、信号周波数を局所発振器周波数と混合する、いわゆるヘテロダイン受信器である。これは、狭帯域増幅されフィルタリングされている。アナログシステムの場合、フィルタリングは、しかしながら、部品の許容差および部品のドリフトによって制限される。その上、狭帯域フィルタは、より長い応答時間を要し、応答時間が長い場合、振幅および位相はフィルタによって影響を受ける。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】FibroLaser IIのシステム仕様書、シーメンスケルベロス部門W458e,バージョン1.2e,1999年1月
【発明の概要】
【0007】
本発明の基礎となる課題は、より速いおよび/またはノイズのより少ない物理量の測定を可能とする、冒頭で述べたタイプの方法と装置を提供することである。
【0008】
これは、発明に従えば、方法については、請求項1の特徴を有する冒頭に述べたタイプの方法によって、また、装置については、請求項7の特徴を有する冒頭に述べたタイプの装置によって達成される。下位の請求項は本発明の好ましい実施形態に関する。
【0009】
請求項1に従えば、差周波数に相当する、または差周波数の倍数に相当する第3の周波数を有する電気信号が発生され、デジタル化のために、第3の周波数を有する混合信号がサンプリングされる。請求項7に従えば、差周波数に相当する、または差周波数の倍数に相当する第3の周波数を有する第3の電気信号を発生させるための手段をさらに含み、デジタル化のために、アナログ/デジタル変換器が、第3の周波数を有する少なくとも1つの混合信号をサンプリングすることが可能である。このような方法でアナログフィルタの代わりにデジタルフィルタを用いることが可能となり、したがって、ノイズを一層低下させることが可能となり、および/または光学信号の振幅および位相を速やかに測定することが可能である。
【0010】
第1の、および/または第2の、および/または第3の電気信号はダイレクトデジタル合成を介して発生されるように構成されてもよい。第1の電気信号を発生させるための手段は第1のDDSシステムであり、第2の信号を発生させるための手段は第2のDDSシステムであり、および/または第3の信号を発生させるための手段は第3のDDSシステムであるように構成してもよい。3つの電気信号を発生させるためにDDSシステムを利用することによって、デジタル技術への移行が行われる。
【0011】
その場合好ましくは、第1の、および/または第2の、および/または第3の電気信号のダイレクトデジタル合成のために、クロック信号が使用され、特に、第1および第2および第3の電気信号のダイレクトデジタル合成のためにそれらのクロック信号が利用される。本装置はさらにまたクロック発生器を有し、第1のDDSおよび/または第2のDDSシステムおよび/または第3のDDSシステムにクロック信号を与えることが可能であるように構成してもよい。3つの全てのDDSシステムを同じクロック信号につなぎ合わせることによって、たとえば、デジタル化されるべき信号の、0.12HzのDDS解像度の範囲における、精密なデジタルサンプリングに導かれる。この場合、好ましいことには、周波数計算はデジタル語に基づき、したがって、実数からの変換による丸め誤差を生じない。クロック信号のドリフトは、3つのDDSシステムすべてに同様に作用し、したがって、常に正確なサンプリング周波数が得られる。
【0012】
このような周波数の発生および周波数のサンプリングの理論によって、新たなデジタルフィルタ技術の利用が可能となる。
【0013】
デジタルフィルタは応答時間を必要としない。その構成において狭帯域アナログフィルタを不要にすることが可能である。精密なサンプリングによって、アナログ技術よりも狭帯域の検出によってより大きな差周波数が実現可能である。
【0014】
さらに詳しくは、本発明は、時間で変動する第1の周波数(fRF(t))を有する第1の電気信号(6)を発生させる工程と、
時間で変動する第2の周波数(fLO(t))であって、第1の周波数(fRF(t))から差周波数(fZF)だけ異なる第2の周波数(fLO(t))を有する第2の電気信号(7)を発生させる工程と、
光学信号(17)を発生させ、第1の周波数(fRF(t))で変調する工程と、
光学信号(17)を測定対象との相互作用によって変調する工程であって、この場合変調は、局所分解測定されるべき物理量についての情報を含む工程と、
変調された光学信号(20a,20b,20c,20d)を、少なくとも1つの電気信号(10,10a,10b,10c)に変換する工程であって、
その場合、変調された光学信号(20a,20b,20c,20d)は、変換の前に第2の周波数(fLO(t))で変調されるか、
変調された光学信号(20a,20b,20c,20d)は、変換の前に第2の周波数(fLO(t))で変調された電気信号(25)と混合されるか、または
少なくとも1つの電気信号(10,10a,10b,10c)は、第2の信号(7)と混合されるか、のいずれかである工程と、
混合された信号(12,12a,12b,12c,12d)をデジタル化する工程と、
デジタル化されたデータから測定されるべき物理量を局所分解的に決定する工程と、
を有する、物理量の局所分解測定のための方法において、
第3の周波数であって、差周波数(fZF)に相当する、または差周波数(fZF)の倍数に相当する第3の周波数を有する電気信号が発生され、
デジタル化のために、第3の周波数を有する混合信号がサンプリングされることを特徴とする方法である。
【0015】
本発明において、第3の周波数は、差周波数(fZF)と係数2との積に相当し、この場合N=0,1,2,・・・であることを特徴とする。
【0016】
また本発明において、第1の、および/または第2の、および/または第3の電気信号(6,7,8)は、ダイレクトデジタル合成によって発生させることを特徴とする。
【0017】
また本発明において、第1の、および/または第2の、および/または第3の電気信号(6,7,8)のダイレクトデジタル合成のために、クロック信号(5)が使用され、特に第1および第2および第3の電気信号(6,7,8)のダイレクトデジタル合成のために同じクロック信号(5)が使用されることを特徴とする。
【0018】
また本発明において、第3の周波数は、差周波数(fZF)の倍数に相当することを特徴とする。
【0019】
また本発明において、周波数領域法、特にOptical Frequency Domain Reflectometry(OFDR)法であることを特徴とする。
【0020】
また本発明は、物理量の局所分解測定のための、特に、請求項1〜6のいずれか1項に従った方法の実施に適した装置であって、
時間で変動する第1の周波数(fRF(t))を有する第1の電気信号(6)を発生させるための手段と、
時間で変動する第2の周波数(fLO(t))であって、第1の周波数(fRF(t))から差周波数(fZF)だけ異なる第2の周波数(fLO(t))を有する第2の電気信号(7)を発生させるための手段と、
光学信号(17)を発生させるための光学ビーム源、特にレーザであって、第1の周波数(fRF(t))で変調された光学信号(17)が発生されるように、制御可能な、またはそのようにその出力信号を変調可能な光学ビーム源と、
光学信号(17)を測定対象と相互作用させることを可能にするための手段(19)であって、光学信号(17)を、局所分解測定されるべき物理量についての情報との相互作用によって変調することが可能である手段(19)と、
変調された光学信号(20a,20b,20c,20d)を、少なくとも1つの電気信号(10,10a,10b,10c)に変換することが可能である変換手段(21a,21b,21c,21d)と、
混合および/または変調手段であって、
変調された光学信号(20a,20b,20c,20d)を、変換の前に第2の周波数(fLO(t))で変調可能であるか、
変調された光学信号(20a,20b,20c,20d)を、変換の前に第2の周波数(fLO(t))で変調された電気信号(25)と混合することが可能であるか、または
少なくとも1つの、変換の結果生じた電気信号(10,10a,10b,10c)を、第2の信号(7)と混合することが可能であるか、のいずれかである混合および/または変調手段と、
少なくとも1つの混合された信号(12,12a,12b,12c,12d)をデジタル化するためのアナログ/デジタル変換器(13,13a,13b,13c)と、
デジタル化されたデータから測定されるべき物理量を局所分解的に決定するための評価手段(15)と、
を有する、物理量の局所分解測定のための装置において、
第3の周波数であって、差周波数(fZF)に相当する、または差周波数(fZF)の倍数に相当する第3の周波数を有する電気信号(8)を発生させるための手段であって、アナログ/デジタル変換器(13,13a,13b,13c,13d)が、デジタル化のために、第3の周波数を有する、少なくとも1つの混合信号(12,12a,12b,12c)をサンプリングすることが可能である、手段をさらに有することを特徴とする装置である。
【0021】
また本発明において、第1の電気信号(6)の発生のための手段は第1のDDSシステム(1)であり、および/または第2の電気信号(7)の発生のための手段は第2のDDSシステム(2)であり、および/または第3の電気信号(8)の発生のための手段は第3のDDSシステム(3)であることを特徴とする。
【0022】
また本発明において、クロック発生器(4)であって、第1のDDSシステム(1)および/または第2のDDSシステム(2)および/または第3のDDSシステム(3)にクロック信号(5)を与えることが可能である、クロック発生器(4)をさらに有することを特徴とする。
【0023】
また本発明において、測定対象は光ファイバ(18)であり、好ましくは、該装置に含まれ、粗場合、特に局所分解測定されるべき物理量は、光ファイバ(18)の局所温度であることを特徴とする。
【0024】
本発明の更なる特徴および利点は、添付の図面を参照して、好適な実施形態についての以下の詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】発明に従った装置の第1の実施形態を概略的に示す図である。
【図2】発明に従った装置の第2の実施形態を概略的に示す図である。
【図3】発明に従った装置の第3の実施形態を概略的に示す図である。
【図4】発明に従った装置の第4の実施形態を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図において、同一のまたは機能的に同一の信号、要素もしくはユニットには同一の参照符号を付す。
【0027】
図1に示された実施形態は、電気信号を発生させる手段として、第1のDDSシステム1と、第2のDDSシステム2と、第3のDDSシステム3とを有する。この装置はさらに、クロック信号(CLK)5を出力するクロック発生器4を有する。3つのDDSシステム1,2,3はそれぞれ同じクロック信号5を利用する。
【0028】
第1のDDSシステム1は、時間で変動する第1の周波数fRF(t)を有する、時間で変動する第1の電気信号6を発生させる。第2のDDSシステム2は、時間で変動する第2の周波数fLO(t)を有する、時間で変動する第2の電気信号7を発生させる。第2の周波数fLO(t)は、固定した、時間で変動しない差周波数fZFだけ第1の周波数fRF(t)から異なる。
【0029】
第3のDDSシステム3は、時間で変動する第3の周波数を有する、時間で変動する第3の電気信号8を発生させ、該第3の周波数は、差周波数fZFと係数2との積である。ここで、N=0,1,2,・・・である。たとえば、好ましいNの値は2、3、4、または5であり、したがって、第3の周波数は差周波数fZFの4倍、8倍、16倍、または32倍である。
【0030】
好都合なことに、ここで3つの周波数fRF(t),fLO(t),fZFの計算は、デジタル語に基づき、したがって、実数からの変換による丸め誤差を生じない。クロック信号5のドリフトは、3つのDDSシステム1,2,3すべてに同様に作用し、すなわち、相対的周波数変化が同じになる。
【0031】
単独で概略的に示された測定装置の一部が参照符号9で示されており、この測定装置は、光学信号を発生させる光学ビーム源とともに、たとえば光ファイバおよび光検知器などの測定対象を含む。光学信号は、第1の信号6によって振幅変調または周波数変調される。変調は、たとえば、ここではレーザとして形成される光学ビーム源の対応する制御によって達成することができる。これに代えて、光学ビーム源から発した光学信号は、光変調器で変調可能である。
【0032】
変調された光学信号は、測定対象にインカップリングされ、測定対象との相互作用の後にここからアウトカップリングされる。相互作用を可能にする対応する手段は、たとえば、インカプラ、アウトカプラ、ビームスプリッタおよびフィルタを含んでもよい。そこにおいて、その後、相互作用に基づいて変調された光学信号は、光検知器において、少なくとも電気信号10に変換される。そのために使用される変換手段は、ここではたとえば、光電子増倍管、フォトダイオードまたは他のセンサ手段として形成されてもよい。
【0033】
測定装置9から発した電気信号10は、ミキサ11で第2の信号7と混合される。それによって、混合信号12は差周波数fZFを正確に有し、測定対象との相互作用に起因する測定情報が、混合された信号12の振幅および位相に含まれる。
【0034】
混合信号12はアナログ/デジタル(AD)変換器13でデジタル化される。その際、混合信号12は第3の電気信号8の第3の周波数でサンプリングされる。3つのDDSシステム1,2,3のそれぞれに繋がる同じクロック信号5に基づいて、常に正確な、所望のサンプリング周波数が得られる。
【0035】
デジタル化された信号は、デジタルフィルタ14でフィルタリングされる。これに続く分析手段15において、フィルタリングされたデータが分析されてもよく、したがって、把握されるべき物理量の局所分解測定データが決定され得る。
【0036】
図2に従う、発明に従った装置の第2の実施形態では、OFDR法を用いた光ファイバ内の分布温度測定(DTS)が明示的に実現される。
【0037】
図2では、特に測定装置が詳細に示されている。これは、第1の電気信号6の第1の周波数で周波変調または振幅変調されたレーザ16を有している。変調はここではたとえば、レーザ16の対応する制御によって達成することができる。これに代えて、レーザ16から発した光学信号17を、光変調器で変調することもできる。
【0038】
レーザ16の代わりに、スーパールミネセンスダイオードのような他の光学ビーム源を用いる可能性がある。
【0039】
測定対象として光ファイバ18が用いられ、特に温度が局所分解的に把握されなければならない。光ファイバ18と相互作用させることを可能にする手段が参照符号19で示されている。この手段19は、たとえばインカプラ、アウトカプラ、ビームスプリッタおよびフィルタを含むことができる。
【0040】
手段19は光学信号20a,20b,20cの3つの出口を有する。3つよりも多くの出口を設ける可能性があり、ここで第4の出口がたとえば後方散乱光ビームのレイリー部分のために用いることができる。第1の信号20aはレーザ16から発した一次光学信号17に相当し、これからビームスプリッタを通って分岐される。
【0041】
第2の光学信号20bは、光ファイバとのラマン相互作用によって、光の波長に関して変調され、後方散乱光ビームのストークス部分に相当する。これらのストークス部分の分岐のために、手段19は対応するフィルタを有している。
【0042】
第3の光学信号20cは、同様に、光ファイバとのラマン相互作用によって、光の波長に関して変調され、後方散乱光ビームの非ストークス部分に相当する。同様に、これらの非ストークス部分の分岐のために、手段19は対応するフィルタを有している。
【0043】
光学信号20a,20b,20cは、適した変換手段21a,21b,21cで電気信号10a,10b,10cに変換される。そのために、変換手段21a,21b,21cは、たとえば光電子増倍管、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオードまたは他の適当なセンサ手段、および、必要に応じて、電気増幅器を含むことができる。
【0044】
変換手段21a,21b,21cから発した電気信号10a,10b,10cはそれぞれミキサ11a,11b,11cで第2の信号7と混合される。混合することで生じた混合信号12aは、この時、差周波数fZFに相当する周波数を有する。混合することで生じた混合信号12b,12cは、ここで差周波数fZFを正確に有し、測定対象とのラマン相互作用によって生じた情報を、信号の振幅および位相に含んでいる。
【0045】
混合信号12a,12b,12cはそれぞれAD変換器13a,13b,13cでデジタル化される。その際、それぞれの混合信号12a,12b,12cは第3の電気信号8の第3の周波数でサンプリングされる。3つのDDSシステム1,2,3のそれぞれに繋がる同じのクロック信号5に基づいて、常に正確な、所望のサンプリング周波数が得られる。
【0046】
フィルタリングは第1の実施形態のデジタルフィルタ14に相当する、共通に下流側に接続されたデジタルフィルタ14においてなされる。これに接続された分析手段15で、フィルタリングされたデータが分析されてもよく、したがって、把握されるべき物理量の局所分解測定データが決定され得る。
【0047】
図3に従う、発明に従った装置の第3の実施形態では、根本的に図2が示す実施形態とは、レーザ16が直接に第1の電気信号6の第1の周波数fRF(t)で変調されていないが、レーザ16から発した光学ビーム23を変調するための第1の光変調器22が用いられる点で異なっている。第1の光変調器22から発した光学信号17は、手段19を通して光ファイバ18にインカップリングされている。
【0048】
3つの、図2に関して既に記述した、手段19から発した光学信号20a,20b,20cに加え、第3の実施形態ではさらに光学信号20dが手段19から発せられる。たとえば、光学ビームの後方散乱レイリー部分がこの信号に関わる。
【0049】
第3の実施形態においても、3つの発した光学信号20a,20b,20cだけを設ける可能性がある。さらに、第2の実施形態においても第4の発した信号20dが把握されることが意図され得る。
【0050】
さらに、第2の光変調器24が意図され、そこでレーザ16の光学ビーム23の一部が第2の周波数fLO(t)で変調される。第2の光変調器24から発した光学信号25は、光学信号20a,20b,20c,20dと光学的に混合され、もしくはこれらにインカップリングされる。
【0051】
これらの混合された光学信号26a,26b,26c,26dは、適した変換手段21a,21b,21c,21dで、電気信号12a,12b,12c,12dに変換される。第2の実施形態と同様に、信号12aは差周波数fZFに相当する周波数を有する。さらに、ここでも信号21b,21c,21dは差周波数fZFを正確に有し、測定対象とのラマン相互作用によって生じた情報を、信号の振幅および位相に含んでいる。
【0052】
第2の実施形態と同様に、混合信号12a,12b,12c,12dはそれぞれAD変換器13a,13b,13c,13dでデジタル化される。その際、それぞれの混合信号12a,12b,12c,12dは第3の電気信号8の第3の周波数でサンプリングされる。3つのDDSシステム1、2、3のそれぞれに繋がる同じクロック信号5に基づいて、常に正確な、所望のサンプリング周波数が得られる。
【0053】
第4の実施形態(図4)は、些細な点でのみ第3の実施形態(図3)と異なっている。第1の光変調器22から発した光学信号17はサーキュレータ27を通って光ファイバ18にインカップリングされる。ファイバ18から発した信号はサーキュレータを通って第2の光変調器24に到達する。そこで、第2の周波数fLO(t)とのさらなる変調が行われて、第2の光変調器24から発した光学信号28は差周波数fZFで変調される。
【0054】
この信号28は、光学ビーム分割およびフィルタリングのための手段29に入り、そこでこの信号はフィルタリングされ、その際にそれぞれの経路に分けられ、したがって、手段29から光学信号26a,26b,26c,26dが発する。これらは、第2および第3の例に記載されたのと同様に続いていく。
【0055】
この実施形態においても、3つの発した光学信号20a,20b,20cだけを設ける可能性がある。また、第2および第3の実施形態においても、対応する要素、たとえばサーキュレータ27が使用されてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1,2,3 DDSシステム
4 クロック発生器
5 クロック信号
6,7,8,10 電気信号
9 測定装置
11,11a,11b,11c ミキサ
12,12a,12b,12c,12d 混合信号
13,13a,13b,13c,13d AD変換器
14 デジタルフィルタ
15 分析手段
16 レーザ
17,20a,20b,20c,20d,25,26a,26b,26c,26d,28 光学信号
18 光ファイバ
19 光ファイバと相互作用させることを可能にする手段
21a,21b,21c,21d 変換手段
22,24 光変調器
23 光学ビーム
27 サーキュレータ
29 光学ビーム分割およびフィルタリングのための手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間で変動する第1の周波数(fRF(t))を有する第1の電気信号(6)を発生させる工程と、
時間で変動する第2の周波数(fLO(t))であって、第1の周波数(fRF(t))から差周波数(fZF)だけ異なる第2の周波数(fLO(t))を有する第2の電気信号(7)を発生させる工程と、
光学信号(17)を発生させ、第1の周波数(fRF(t))で変調する工程と、
光学信号(17)を測定対象との相互作用によって変調する工程であって、この場合変調は、局所分解測定されるべき物理量についての情報を含む工程と、
変調された光学信号(20a,20b,20c,20d)を、少なくとも1つの電気信号(10,10a,10b,10c)に変換する工程であって、
その場合、変調された光学信号(20a,20b,20c,20d)は、変換の前に第2の周波数(fLO(t))で変調されるか、
変調された光学信号(20a,20b,20c,20d)は、変換の前に第2の周波数(fLO(t))で変調された電気信号(25)と混合されるか、または
少なくとも1つの電気信号(10,10a,10b,10c)は、第2の信号(7)と混合されるか、のいずれかである工程と、
混合された信号(12,12a,12b,12c,12d)をデジタル化する工程と、
デジタル化されたデータから測定されるべき物理量を局所分解的に決定する工程と、
を有する、物理量の局所分解測定のための方法において、
第3の周波数であって、差周波数(fZF)に相当する、または差周波数(fZF)の倍数に相当する第3の周波数を有する電気信号が発生され、
デジタル化のために、第3の周波数を有する混合信号がサンプリングされることを特徴とする方法。
【請求項2】
第3の周波数は、差周波数(fZF)と係数2との積に相当し、この場合N=0,1,2,・・・であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の、および/または第2の、および/または第3の電気信号(6,7,8)は、ダイレクトデジタル合成によって発生させることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第1の、および/または第2の、および/または第3の電気信号(6,7,8)のダイレクトデジタル合成のために、クロック信号(5)が使用され、特に第1および第2および第3の電気信号(6,7,8)のダイレクトデジタル合成のために同じクロック信号(5)が使用されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第3の周波数は、差周波数(fZF)の倍数に相当することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
周波数領域法、特にOptical Frequency Domain Reflectometry(OFDR)法であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
物理量の局所分解測定のための、特に、請求項1〜6のいずれか1項に従った方法の実施に適した装置であって、
時間で変動する第1の周波数(fRF(t))を有する第1の電気信号(6)を発生させるための手段と、
時間で変動する第2の周波数(fLO(t))であって、第1の周波数(fRF(t))から差周波数(fZF)だけ異なる第2の周波数(fLO(t))を有する第2の電気信号(7)を発生させるための手段と、
光学信号(17)を発生させるための光学ビーム源、特にレーザであって、第1の周波数(fRF(t))で変調された光学信号(17)が発生されるように、制御可能な、またはそのようにその出力信号を変調可能な光学ビーム源と、
光学信号(17)を測定対象と相互作用させることを可能にするための手段(19)であって、光学信号(17)を、局所分解測定されるべき物理量についての情報との相互作用によって変調することが可能である手段(19)と、
変調された光学信号(20a,20b,20c,20d)を、少なくとも1つの電気信号(10,10a,10b,10c)に変換することが可能である変換手段(21a,21b,21c,21d)と、
混合および/または変調手段であって、
変調された光学信号(20a,20b,20c,20d)を、変換の前に第2の周波数(fLO(t))で変調可能であるか、
変調された光学信号(20a,20b,20c,20d)を、変換の前に第2の周波数(fLO(t))で変調された電気信号(25)と混合することが可能であるか、または
少なくとも1つの、変換の結果生じた電気信号(10,10a,10b,10c)を、第2の信号(7)と混合することが可能であるか、のいずれかである混合および/または変調手段と、
少なくとも1つの混合された信号(12,12a,12b,12c,12d)をデジタル化するためのアナログ/デジタル変換器(13,13a,13b,13c)と、
デジタル化されたデータから測定されるべき物理量を局所分解的に決定するための評価手段(15)と、
を有する、物理量の局所分解測定のための装置において、
第3の周波数であって、差周波数(fZF)に相当する、または差周波数(fZF)の倍数に相当する第3の周波数を有する電気信号(8)を発生させるための手段であって、アナログ/デジタル変換器(13,13a,13b,13c,13d)が、デジタル化のために、第3の周波数を有する、少なくとも1つの混合信号(12,12a,12b,12c)をサンプリングすることが可能である、手段をさらに有することを特徴とする装置。
【請求項8】
第1の電気信号(6)の発生のための手段は第1のDDSシステム(1)であり、および/または第2の電気信号(7)の発生のための手段は第2のDDSシステム(2)であり、および/または第3の電気信号(8)の発生のための手段は第3のDDSシステム(3)であることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
クロック発生器(4)であって、第1のDDSシステム(1)および/または第2のDDSシステム(2)および/または第3のDDSシステム(3)にクロック信号(5)を与えることが可能である、クロック発生器(4)をさらに有することを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
測定対象は光ファイバ(18)であり、好ましくは、該装置に含まれ、粗場合、特に局所分解測定されるべき物理量は、光ファイバ(18)の局所温度であることを特徴とする、請求項7〜9のいずれか1項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−2815(P2012−2815A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135814(P2011−135814)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(511148983)リオス テクノロジー ゲーエムベーハー (1)
【氏名又は名称原語表記】LIOS Technology GmbH
【Fターム(参考)】