説明

物質作用配合解析データ保存抽出機構

【課題】 特性や材料といった複数の項目を扱え、かつシミュレーション結果の保存と抽出ならびに計算と多様な条件と結果をリンクさせることができる、物質作用配合解析データ保存抽出機構を提供する。
【解決手段】それぞれが多要素・多成分の性質を持つ物質を組み合わせ配合して新しい物質を生成する場合において使用に不明な物質が存在する場合に、過去のシミュレーションや実験から候補となる物質情報をユーザに提供でき、また過去の実験や物質ごとのコストや入手容易性などを保存し、それらを計算に反映させる手法を具備し、それにより配合された物質が検索できる物質作用配合解析データ保存抽出機構。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最適材料候補選択に基づく材料設計等を支援する物質作用配合解析データ保存抽出機構(材料開発解析装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、材料開発には、複雑な工程を含む場合が多く、そのため開発が実現困難な場合が多く存在する。一方、現場からのニーズは多様化してきており、材料特性の可能性が極めて広範囲になるよう開発することを求められている。
【0003】
例えば、半導体パッケージの分野では、小型、薄型の表面実装型パッケージの比率が高くなってきており、チップを多段に積み重ねたスタックドMCP(Multi−Chip Package)が急増している。このように半導体チップを多段積層することで、パッケージの外形は同じでも記憶容量を数倍にも増やすことができるため、フラッシュメモリーなどの用途で多用されている。このようなパッケージの製作においては、多種多様な材料を配合することで要求を効率的に満たす半導体パッケージ特性を開発可能である。
【0004】
これらのチップ多段積層構造では、チップ/基板間、チップ/チップ間、ワイヤ充填など多様なダイボンディングフィルムのラインナップが求められており、各フィルムへの要求特性もそれぞれ異なる。また、半導体パッケージの製造工程はダイシング、ピックアップ、ダイボンド、封止などの多くの工程から成り立っており、各工程でのフィルムへの要求項目も多岐にわたる。特に新規パッケージの開発当初は材料の必要特性が不明確であることが多く、実際には、異なる特性の材料を試しながら、摺り合わせを行うことが多い。しかしながら、必要特性は多岐にわたり、熱硬化性材料の場合は特に硬化前、硬化後それぞれに必要特性があるので、より材料設計、開発を難しくしている。
【0005】
以上のように、材料への要求特性は多岐にわたるので、開発に含まれる工程はより複雑化する。また、配合する材料の量や工程の順序のみが着目されがちであるが、極めて多く存在する候補のうちどの材料を選び配合するかが要求を効果的に満たす製品の開発につながり、半導体実装、ひいては電子機器産業の発展のネックになりつつある。上記では一例を挙げたが、半導体だけでなく、自動車、通信、電力、衣料、食品等々様々な業界で材料開発がネックになりつつある。
【0006】
また、過去の経験や勘に頼る方法や、試行錯誤の実験に頼る方法では、目的とする特性を持つ材料の設計にかかる時間が未知数であり、人的、設備的な充実により多数の実験を行うことが考えられるが、配合の可能性と材料の選び方は無数にあるため効率的であるとはいえない。また、材料によってはコストに関連する使用上の制限と制約があるため、このような方法での材料設計は好ましくない。
【0007】
特に、失敗例を示すと、例えば、特性A、B、Cがあるとき、Aのみが不足でB、Cはちょうど良い場合がある。この場合Aを大きくすることですべての特性を目標値範囲にすることができる。特性Aを変更することは難しい場合、容易な場合、いずれの場合もあるが、配合技術により調整が可能である場合が多い。検討の結果、特性Aを大きくできた場合でも、B、Cまで連動して変化してしまい、今度は、そちらを調整する必要がでる場合が多い。そこで、Bを変更すると今度はAが変化して目標値からはずれてしまうというように、堂々巡りになってしまい、配合調整ができなくなることが往々にしてある。
【0008】
また、このような課題に対して、定量的な計算手法が提案されているおり、最適解の探索が困難な最適化問題に関する手法及びシステムとして、飛行経路を対象にしたものが特開2005−316614号公報にある。これは、飛行経路を対象としたものであり、材料設計を対象としたものではない。また、パラメータ間におけるトレード・オフの関係を保持しつつ、最適解を求める手法及びシステムとして、遺伝的アルゴリズムを用いたものが特開2003−85526号公報にある。いずれも、最適値を効率よく計算するアルゴリズムに関するものである。
【0009】
多要素・多成分である物質から任意の種類・量を組み合わせ、新たに生成される物質の各特性において、過去のシミュレーションや実験例から得られた個々の材料の材料特性に着目しつつ条件に合致する可能性のある候補を選び出し、シミュレーションや実験において候補となる材料を配合した際に配合量の変化による材料特性の変化を求め、そのなかから最も目的に合致する候補の順にそれぞれの材料の種類と配合量を出力する手法を具備した、材料設計開発のための装置は存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−316614号公報
【特許文献2】特開2003−85526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特に扱う項目の増加に伴い、計算式が複雑化することを考慮すれば、より容易に計算が行え、また、情報が不足していた場合に、過去の実験データやその他各種情報より望ましい材料の候補とある程度の動向が予測可能である材料設計計算シミュレーションの導入が望ましい。すなわち本発明の目的は、材料特性記憶装置に格納されている特性や材料といった複数の項目を扱え、ユーザが求めるべき特性に合致した材料を検索し、実験の為のデータの抽出が容易に行え、かつ計算をより容易に行える、物質作用配合解析データ保存抽出機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は以下の通りである。
(1) 物質の特性、コスト、希少性、入手容易性、環境負荷、環境適合性、毒性、炭酸ガス排出量及び前記以外の物質ごとに特定されるパラメータから選択される1または複数の情報を実験結果とリンクさせ保存し、それらを呼び出しでき、シミュレーションの際には、条件の入力でそれらの情報を条件および条件の強さとして入力可能で、かつシミュレーション結果においては、条件を反映させることができ、条件を満たす度合いの強いものの順に情報を出力でき、かつそれらの結果をまとめてシミュレーション結果として格納されている情報に付加可能な物質作用解析データ保存抽出装置。
(2) それぞれが多要素・多成分の性質を持つ物質を組み合わせ配合して新しい物質を生成する場合において、多要素・多成分である物質から任意の種類・量を組み合わせ、新たに生成される物質の各特性において、生成者が求める物質の特性の候補および満足する組み合わせに関する全ての種類のデータをシミュレーション結果保存装置に保存できる機能を具備し、それらを必要な場合に呼び出しでき、表示できる物質作用配合解析データ保存抽出機構。
(3) それぞれが多要素・多成分の性質を持つ作用を組み合わせ新しい作用を生成する場合において、多要素・多成分である作用から任意の種類・量を組み合わせ、新たに生成される作用の各特性において、解析装置で行ったシミュレーション結果とともに、実際の実験結果のうちすべてまたは一部をセットとしてシミュレーション結果保存装置に保存できる機能を具備し、それらを自動的に比較し、合致度が高い順にソートでき、また必要に応じてシミュレーションデータおよび実際の実験結果の全て、一部または特定のデータ集合を呼び出しでき、表示できる物質作用配合解析データ保存抽出機構。
(4) それぞれの物質、作用の特性値を数値化して入力し、生成される物質、作用の目標値および目標範囲を与え、仮に物質の種類や量が不明な場合においても、シミュレーション結果保存装置から条件に合致する材料のデータと候補を抽出でき、その際に生成される物質、作用の目標範囲を満たす物質、作用の配合量の組み合わせおよび生成される物質、作用の各特性値を出力する事により、組み合わせ実験を仮想的に行うためのプログラム群とそれを実現するための機械装置から構成される前記の物質作用配合解析データ保存抽出機構。
(5) 使用または考慮する物質、作用について、上限値および下限値および目標値を与え、不要な計算を省略する事により、計算時間を短縮することが可能で、また不明または曖昧な要素が含まれる場合に、シミュレーション結果保存装置に格納されている過去のデータより変化を解析するとともに、過去の実験との類似度、解析プログラム群を具備する前記の物質作用配合解析データ保存抽出機構。
(6) 複数の物質、作用から構成され、複数の特性を持つ化合物の生成における、目標特性値を満足する物質に関するシミュレーション結果保存装置からのデータの抽出、およびそれに基づいた作用の設計を効率的に行う計算装置を具備する前記の物質作用配合解析データ保存抽出機構。
(7) 与えられた目標特性値に対して、逆計算を行うことで配合前のそれぞれの物質、作用の配合割合および配合量を計算し、シミュレーション結果保存装置に格納されたデータの中で可能性のある物質の組合せのうちあらかじめ与えられた条件に合致する順にソートされて出力され、またそれらを選び計算を直ちに実施できる機構とそれを実現するプログラム群を具備した前記の物質作用配合解析データ保存抽出機構。
(8) すべての計算結果をキーワードごとに管理して保存でき、また、実際の実験および抽出後のシミュレーションでの全データについてもキーワードで管理でき、キーワードと条件を検索として与えることにより、望ましい物質の候補および配合の量を提示でき、それらは手動の検索だけではなく、物質作用配合の解析において自動的に機能することを特徴とする計算装置を具備する前記の物質作用配合解析データ保存抽出機構。
【発明の効果】
【0013】
本発明の物質作用配合解析データ保存抽出機構(材料開発解析装置)を用いることにより、シミュレーションや実験の結果を保存できるとともに、配合する物質が不明な場合においても、過去のシミュレーションおよび実験を抽出でき、複数の特性を持つ事柄の目標特性値を満足する組み合わせ選択において、各特性値を数値化し、目標範囲を満たす場合における適当な組み合わせと条件に合致する複数の物質の候補を導きだすことにより、効率的な組み合わせ選択の指標とすることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る物質作用配合解析データ保存抽出機構(装置)を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の物質作用配合解析データ保存抽出機構は、物質配合解析装置、作用配合解析装置、物質配合解析機構あるいは作用配合解析機構と表すこともできる。
よって、本発明において、物質作用配合解析データ保存抽出機構は、シミュレーション結果の全データまたは一部のデータをシミュレーション結果保存装置に格納でき、または呼び出しが出来るとともに、呼び出す際に条件に合致したデータ群を抽出およびソート可能であり、そのデータを用いることにより、それぞれが多要素・多成分の性質を持つ物質を組み合わせ配合して新しい物質を生成する場合において、多要素・多成分である物質から任意の種類・量を組み合わせ、新たに生成される物質の各特性において、生成者が求める物質の特性の候補および満足する組み合わせを見いだす手法を具備し、それにより配合された物質が検索できる。
また、物質作用配合解析データ保存抽出機構は、それぞれが多要素・多成分の性質を持つ作用を組み合わせ新しい作用を生成する場合において、多要素・多成分である作用から任意の種類・量を組み合わせ、新たに生成される作用の各特性において、シミュレーション結果保存装置に格納されているデータを利用して生成者が求める作用の特性の候補および満足する組み合わせを見いだす手法を具備し、それにより配合された作用が検索できるとともに、そこでの全結果または一部を再びシミュレーション結果保存装置に格納することが可能である。
【0016】
また、物質作用配合解析データ保存抽出機構は、それぞれの物質、作用の特性値を数値化して入力し、生成される物質、作用の目標値および目標範囲を与え、生成される物質、作用の目標範囲を満たす物質、作用の配合量の組み合わせおよびその際に生成される物質、作用の各特性値を出力でき、それらのデータをシミュレーション結果保存装置に保存できるとともに、それらのデータを呼び出した組み合わせ実験を仮想的に行うためのプログラム群とそれを実現するための機械装置から構成される。
さらには、物質作用配合解析データ保存抽出機構は、実際の実験におけるデータとシミュレーション結果でのデータの乖離度を比較計算し、その乖離度もまとめて保存でき、条件に合致する物質の候補を呼び出す際の指標として用いることができ、また複数の物質の候補が存在する際には、物質を組み合わせた際に、その作用や量および特性に関して、候補ごとに結果を比較できる解析プログラム群を具備する。
【0017】
また、物質作用配合解析データ保存抽出機構は、すべての計算結果をキーワードごとに管理して保存でき、また、実際の実験および抽出後のシミュレーションでの全データについてもキーワードで管理でき、キーワードと条件を検索として与えることにより、望ましい物質の候補および配合の量を提示でき、それらは手動の検索だけではなく、物質作用配合の解析において自動的に機能することを特徴とする計算装置を具備する。
【0018】
また、物質作用配合解析データ保存抽出機構は、過去に行ったシミュレーションとの材料の類似度を計算でき、その類似度に基づいて候補となる物質を提示でき、あるいは類似度が完全に合致する場合は、再実験を行うこと無くシミュレーション結果保存装置に格納されているデータを提示することで計算時間を削減できることを特徴とする。
【0019】
なお、本発明の物質作用配合解析データ保存抽出機構は、データ比較や再利用の手法の特色により、工業材料など、求められる目標値が客観的で明確である場合に極めて有効であるが、一方、求められる目標値が主観的であっても、また、数値等で表すことが難しい、やや不明確である場合にも有効である。そのような適用例としては、料理、香水の調合、ウイスキーの調合、香辛料の調合、衣料などのファッション分野、インテリアなどの配色、漢方薬や合成薬品などの医薬品などにも適用可能である。
【0020】
また、対象とするものは物質だけでなく、製造条件、例えば、温度、湿度、速度等、または、色、光、音、振動、感触、臭いなど、多要素・多成分の性質を持つのであれば、物質以外のものであってもよい。なお、本発明では、これらを表す用語として、作用という言葉を用いている。物質、作用は切り分けることは難しく、物質と作用を組み合わせて使用することが応用範囲を広げるために必要である。
【0021】
例えば、自動車の運転中のいすの使用感、エンジン音、車体の振動、ハンドルの感触等をすべて統合して運転者の満足度を高めるための解析などを行うことができる。また、同じく自動車を例にとると、環境適合性に関わる燃費、加速性などの客観的数値と音、振動、感触などの主観的数値を同時に解析し、満足度を高めることができる。
【0022】
物質の具体的な例としては、半導体用ダイボンドフィルムの場合、以下のような物質が挙げられる。半導体用ダイボンドフィルムを構成する物質として、高分子量成分、熱硬化性成分、無機フィラー、硬化促進剤、触媒、カップリング剤、添加剤等が挙げられる。
高分子量成分として、具体的には、ポリイミド、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ブタジエンゴム、アクリルゴム、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノキシ樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート及びそれらの混合物等が挙げられる。官能性モノマを含む重量平均分子量が10万以上である高分子量成分、例えば、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレート等の官能性モノマを含有し、かつ重量平均分子量が10万以上であるエポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体等が挙げられる。エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体としては、例えば、(メタ)アクリルエステル共重合体、アクリルゴム等が挙げられる。アクリルゴムは、アクリル酸エステルを主成分とし、主として、ブチルアクリレートとアクリロニトリル等の共重合体や、エチルアクリレートとアクリロニトリル等の共重合体等からなるゴムである。
【0023】
また、熱硬化性成分としてはエポキシ樹脂、シアネート樹脂、フェノール樹脂及びその硬化剤等があるが、耐熱性が高い点で、エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂は、硬化して接着作用を有するものであれば特に限定されない。ビスフェノールA型エポキシ等の二官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。また、多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂又は脂環式エポキシ樹脂等、一般に知られているものを適用することができる。
【0024】
さらに無機フィラーが挙げられる。無機フィラーとしては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミウイスカ、窒化ホウ素、結晶性シリカ、非晶性シリカ、アンチモン酸化物等が挙げられる。熱伝導性向上のためには、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、結晶性シリカ、非晶性シリカ等が挙げられる。溶融粘度の調整やチクソトロピック性の付与の目的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、結晶性シリカ、非晶性シリカ等が挙げられる。また、耐湿性を向上させるためにはアルミナ、シリカ、水酸化アルミニウム、アンチモン酸化物が挙げられる。
このほかにも、硬化促進剤、触媒、添加剤、カップリング剤等が挙げられる。
【0025】
さらに作用としては、フィルム製造時の温度、湿度、速度等、硬化時の温度、時間、フィルムの厚さ、幅、厚さばらつき、色など種々のものがある。
また、特性としては、耐熱性、接着力、弾性率、粘度、熱膨張係数、破断強度などの物理的特性のほか、材料費、非石油系材料の比率、毒性、リサイクル率、リサイクル可能性、材料調達に関わる輸送距離、使用する熱量、製造に関わる炭酸ガス排出量などのコスト、環境関連の特性が挙げられる。
【実施例】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
図1は、本発明に係る物質作用配合解析データ保存抽出機構の一実施例を示すブロック図である。まず、ユーザが端末より使用する素材、特性に関して条件を入力する。図1においてユーザが入力した情報は、端末16を介して条件設定部10へと送信される。ここで送信される素材、特性に関する情報は、材料の種類、特性の種類、使用する材料、使用する特性、各材料の特性値、各材料の最大使用量、各材料の最低使用量、生成される化合物の各特性の目標値、生成される化合物の最大目標値、最低目標値、ならびに配合するにあたり不明な物質およびキーワードおよびその特性などである。
【0027】
図1においてユーザが入力した、各材料の特性値や使用量等の情報は、使用材料、使用特性等の条件のうち、不明な物質を除いた条件がシミュレーション結果保存装置17に格納されている過去のシミュレーション結果や実験結果と合致するかどうかを類似度判定部12により計算される。類似度が完全である場合、図1においてユーザが入力した各材料およびその特性値や使用量等以外で、入力した不明な物質と過去のシミュレーションまたは実験結果で明らかとされている物質を対応させて、データ呼出部11でデータを呼び出し、データ抽出部13で候補となる物質のデータを抽出し、その物質と使用量を物質作用配合解析部14で計算し、結果提示部15で条件合致度が高い順にソートし、結果をユーザの端末16上に提示する。その際に、シミュレーション結果保存装置17にここでのシミュレーションの全結果を保存する。
【0028】
また、上記の類似度が完全でない場合は、入力された不明な物質に対応する物質の特性に類似した物質群に対応する過去の実験で用いた物質の抽出と計算を上記と同様の手法により実施するほか、仮想的な物質を見立てておき先に物質作用配合解析部14で計算し、その実験結果が過去のシミュレーションまたは実験結果と類似するものをデータ抽出部13で抽出し、物質作用配合解析部14で計算し、結果提示部15で条件合致度が高い順にソートし、結果をユーザの端末16上に提示する。その際に、シミュレーション結果保存装置17にここでのシミュレーションの全結果を保存する。
【0029】
また、手動または自動で実験結果を検索することも可能であり、実験で用いる物質や材料のキーワード、特性、使用量をデータ検索条件/実験結果入力部18に入力することで、結果提示部15によりユーザに検索結果を提示できる。この際に、提示部は条件に合致する度合いの高いものをアンド検索、オア検索、またはノット検索を含めて合致度の高い順にソートして端末16上に提示できる。
【0030】
また、ユーザがシミュレーションでの結果に対応させて、実際の実験の結果を入力し保存したい場合、データ検索条件/実験結果入力部18において、上記手法によりシミュレーション例を検索し、それに対応させて実験結果を保存できる。実際の実験結果の入力後直ちに結果乖離度判定部20によりシミュレーションと実際の実験結果の乖離度が計算され、関連性を実験結果データ処理部19により乖離度分析結果が相互に対応するシミュレーションおよび実験結果とともにシミュレーション結果保存装置17に保存される。
【0031】
材料や物質のコスト、希少性および入手容易性ならびに様々な条件をデータ検索条件/実験結果入力部18からあらかじめ入力、および重要度を定義しておきそれらはシミュレーションおよび実験ごとの使用材料に対応させる。上記全てにおける物質の候補提示の際に、上記の条件も加味したデータ抽出をデータ抽出部13で行い、解析の結果を、結果提示部15を経てユーザの端末16に表示できる。ただし、これらの条件をどの程度データ抽出で加味するかは、ユーザがシミュレーションの条件を設定する条件設定部10にて入力できる。
【符号の説明】
【0032】
10:条件設定部、11:データ呼出部、12:類似度判定部、13:データ抽出部、14:物質作用配合解析部、15:結果提示部、16:端末、17:シミュレーション結果保存装置、18:データ検索条件/実験結果入力部、19:実験結果データ処理部、20:結果乖離度判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質の特性、コスト、希少性、入手容易性、環境負荷、環境適合性、毒性、炭酸ガス排出量及び前記以外の物質ごとに特定されるパラメータから選択される1または複数の情報を実験結果とリンクさせ保存し、それらを呼び出しでき、シミュレーションの際には、条件の入力でそれらの情報を条件および条件の強さとして入力可能で、かつシミュレーション結果においては、条件を反映させることができ、条件を満たす度合いの強いものの順に情報を出力でき、かつそれらの結果をまとめてシミュレーション結果として格納されている情報に付加可能な物質作用解析データ保存抽出装置。
【請求項2】
それぞれが多要素・多成分の性質を持つ物質を組み合わせ配合して新しい物質を生成する場合において、多要素・多成分である物質から任意の種類・量を組み合わせ、新たに生成される物質の各特性において、生成者が求める物質の特性の候補および満足する組み合わせに関する全ての種類のデータをシミュレーション結果保存装置に保存できる機能を具備し、それらを必要な場合に呼び出しでき、表示できる物質作用配合解析データ保存抽出機構。
【請求項3】
それぞれが多要素・多成分の性質を持つ作用を組み合わせ新しい作用を生成する場合において、多要素・多成分である作用から任意の種類・量を組み合わせ、新たに生成される作用の各特性において、解析装置で行ったシミュレーション結果とともに、実際の実験結果のうちすべてまたは一部をセットとしてシミュレーション結果保存装置に保存できる機能を具備し、それらを自動的に比較し、合致度が高い順にソートでき、また必要に応じてシミュレーションデータおよび実際の実験結果の全て、一部または特定のデータ集合を呼び出しでき、表示できる物質作用配合解析データ保存抽出機構。
【請求項4】
それぞれの物質、作用の特性値を数値化して入力し、生成される物質、作用の目標値および目標範囲を与え、仮に物質の種類や量が不明な場合においても、シミュレーション結果保存装置から条件に合致する材料のデータと候補を抽出でき、その際に生成される物質、作用の目標範囲を満たす物質、作用の配合量の組み合わせおよび生成される物質、作用の各特性値を出力する事により、組み合わせ実験を仮想的に行うためのプログラム群とそれを実現するための機械装置から構成される請求項1〜3のいずれかに記載の物質作用配合解析データ保存抽出機構。
【請求項5】
使用または考慮する物質、作用について、上限値および下限値および目標値を与え、不要な計算を省略する事により、計算時間を短縮することが可能で、また不明または曖昧な要素が含まれる場合に、シミュレーション結果保存装置に格納されている過去のデータより変化を解析するとともに、過去の実験との類似度、解析プログラム群を具備する請求項1〜3のいずれかに記載の物質作用配合解析データ保存抽出機構。
【請求項6】
複数の物質、作用から構成され、複数の特性を持つ化合物の生成における、目標特性値を満足する物質に関するシミュレーション結果保存装置からのデータの抽出、およびそれに基づいた作用の設計を効率的に行う計算装置を具備する請求項1〜3のいずれかに記載の物質作用配合解析データ保存抽出機構。
【請求項7】
与えられた目標特性値に対して、逆計算を行うことで配合前のそれぞれの物質、作用の配合割合および配合量を計算し、シミュレーション結果保存装置に格納されたデータの中で可能性のある物質の組合せのうちあらかじめ与えられた条件に合致する順にソートされて出力され、またそれらを選び計算を直ちに実施できる機構とそれを実現するプログラム群を具備した請求項1〜3のいずれかに記載の物質作用配合解析データ保存抽出機構。
【請求項8】
すべての計算結果をキーワードごとに管理して保存でき、また、実際の実験および抽出後のシミュレーションでの全データについてもキーワードで管理でき、キーワードと条件を検索として与えることにより、望ましい物質の候補および配合の量を提示でき、それらは手動の検索だけではなく、物質作用配合の解析において自動的に機能することを特徴とする計算装置を具備する請求項1〜3のいずれかに記載の物質作用配合解析データ保存抽出機構。

【図1】
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【公開番号】特開2012−48615(P2012−48615A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192128(P2010−192128)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】