説明

物質計測装置および物質計測方法

【課題】流通ガスに含まれる種々の測定対象物質の濃度、量等を高い応答性で高精度に計測すること。
【解決手段】計測領域にプラズマを発生させるプラズマ発生手段と、計測領域にプラズマによって励起された測定対象物質の励起波長を含むレーザ光を照射するレーザ照射手段と、計測領域で発生するプラズマに起因する電気的特性を電流で検出する電流検出手段と、電流検出手段で検出した電流値に基づいて流通ガスに含まれる測定対象物質を検出する解析装置とプラズマ発生手段、レーザ照射手段および解析装置の動作を制御する制御装置と、を有し、計測領域に設定した強度のプラズマが発生しており、かつ、プラズマによって励起された測定対象物質の励起波長のレーザ光が照射されている状態で電流検出手段が検出した電流値と、それ以外の状態で電流検出手段が検出した電流値とを比較して、流通ガスに含まれる測定対象物質を検出すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管路内を流れる流通ガスに含まれる測定対象物質を計測する物質計測装置および物質計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、内燃機関、焼却炉等の燃焼機関から排出されるガスは、種々の物質(ガス状物質、粒子状物質等)が混合した混合ガスとなっている。このように混合ガスに含まれる物質には、種々の物質が含まれるため、混合ガスに有毒な物質が含まれているかを検知したい場合がある。また、試験、評価等のために、混合ガスに含まれる特定物質の濃度、量を検出したい場合もある。これに対して、複数のガス状物質で構成されている混合ガスの中から特定の物質の濃度、量を計測する種々の装置が提案されている。
【0003】
例えば、本件出願人が出願した特許文献1には、管路内を流れるガス(主に流通ガス)に含まれる特定物質の濃度計測方法として、管路の所定経路に、レーザ光を通過させ、その入出力から測定対象の特定物質の濃度を計測する方法が記載されている。具体的には、測定対象とされるガス状物質に固有な吸収波長のレーザ光を発振する光源と、この光源から発振されるレーザ光の発振波長を少なくとも2つの異なる周波数で変調する手段と、この変調手段により変調されたレーザ光をガス状物質が存在する測定領域に導く手段と、この測定領域において透過または反射または散乱したレーザ光を受光する受光手段と、この受光手段で受光した信号の中から変調された信号を周波数毎に順次それぞれ復調する複数の位相敏感検波器と、を具備することを特徴とするガス濃度計測装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3342446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の装置は、高い応答性で測定対象の特定物質(測定対象物質)を計測することができる。しかしながら、特許文献1に記載の装置は、測定対象の特定物質が近赤外域に吸収波長のある物質である必要があり、また、測定対象の特定物質の吸収波長のレーザ光を出力する光源が必要となる。そのため、測定対象とすることができる物質が限られてしまう。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、流通ガスに含まれる種々の物質を測定対象物質とすることができ、測定対象物質の濃度、量等を高い応答性で高精度に計測することが可能である物質計測装置および物質計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、流通ガスに含まれる測定対象物質を計測する物質計測装置であって、前記流通ガスが流れる計測セルユニットと、前記計測セルユニットの前記計測領域にプラズマを発生させるプラズマ発生手段と、前記計測セルユニットの前記計測領域に前記プラズマによって励起された前記測定対象物質の励起波長を含むレーザ光を照射するレーザ光照射手段と、前記計測領域で発生する前記プラズマに起因する電気的特性を電流で検出する電流検出手段と、前記電流検出手段で検出した電流値に基づいて流通ガスに含まれる前記測定対象物質を検出する解析装置と、前記プラズマ発生手段、前記レーザ照射手段および解析装置の動作を制御する制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記レーザ照射手段から出力するレーザ光の波長、前記レーザ照射手段から出力するレーザ光の出力強度および前記プラズマ発生手段で発生させるプラズマの強度の少なくとも1つを変化させ、前記解析装置は、前記計測領域に設定した強度の前記プラズマが発生しており、かつ、前記プラズマによって励起された前記測定対象物質の励起波長のレーザ光が照射されている状態で前記電流検出手段が検出した電流値と、それ以外の状態で前記電流検出手段が検出した電流値とを比較して、流通ガスに含まれる前記測定対象物質を検出することを特徴とする。
【0008】
ここで、前記制御装置は、前記プラズマ発生手段により、前記計測領域で前記プラズマを発生させる状態と、前記計測領域で前記プラズマを発生させない状態とを周期的に切り換えることが好ましい。
【0009】
また、前記制御装置は、前記プラズマ発生手段により、前記計測領域で発生させる前記プラズマの強度を第1強度と第2強度とに周期的に切り換えさせることが好ましい。
【0010】
また、前記電流検出手段は、前記プラズマ発生手段が前記プラズマを周期的に変化させる変調信号を参照信号として、前記計測領域で発生する電流の検出値から前記参照信号の位相に対応する位相関係を備える成分を抽出する位相敏感検出器を有し、前記位相敏感検出器で抽出した検出値に基づいて、前記電流検出手段で検出した電流値を検出することが好ましい。
【0011】
また、前記制御装置は、前記レーザ照射手段により、出力するレーザ光の波長を前記プラズマによって励起された前記測定対象物質の励起波長を中心として設定した周波数幅で周期的に変調させることが好ましい。
【0012】
また、前記制御装置は、前記レーザ照射手段により、出力するレーザ光の波長を前記プラズマによって励起された前記測定対象物質の励起波長を中心として設定した周波数幅で周期的に変調させ、さらに、前記測定対象物質の励起波長を中心として設定した周波数幅よりも短い周波数幅でかつ前記測定対象物質の励起波長を中心として設定した周波数幅で周期的に変調させる周波数よりも短い周波数で変調させることが好ましい。
【0013】
また、前記制御装置は、前記レーザ照射手段により、レーザ光を出力する状態と、レーザ光を出力しない状態とを周期的に切り換えることが好ましい。
【0014】
また、前記レーザ照射手段が出力するレーザ光を周期的に変化させる変調信号を参照信号として、前記計測領域で発生する電流の検出値から前記参照信号の位相に対応する位相関係を備える成分を抽出する前記位相敏感検出器を、前記レーザ光を周期的に変化させる変調信号の周波数成分毎に有し、抽出する周波数成分の周波数が大きい前記位相敏感検出器から順に前記計測領域で発生する電流の検出値に対して抽出処理を行い、抽出した検出値に基づいて、前記電流検出手段で検出した電流値を検出することが好ましい。
【0015】
また、前記計測領域を通過したレーザ光の強度を検出するレーザ強度検出手段を、さらに有し、前記解析装置は、前記前記レーザ強度検出手段で検出したレーザ光強度に基づいて、前記電流検出手段で検出した電流値に含まれる前記レーザ光強度の影響を補正して測定対象物質を検出することが好ましい。
【0016】
また、前記レーザ強度検出手段は、前記計測領域を通過したレーザ光を受光する第1受光装置と、前記計測セルユニットの前記計測領域の周囲を通過する背景光を受光する第2受光装置と、前記第1受光装置で検出した光の検出値から前記第2受光装置で受光した光の検出値を減算する差分検出器と、前記差分検出器で検出した検出値からレーザ光の検出成分を抽出する信号処理装置と、を有し、前記差分検出器で検出した値に基づいてレーザ光の強度を検出することが好ましい。
【0017】
また、前記レーザ強度検出手段は、前記計測領域を通過したレーザ光を受光する受光装置と、前記受光装置で検出した検出値からレーザ光の検出成分を抽出する信号処理装置と、を有することが好ましい。
【0018】
また、前記計測セルユニットは、前記計測領域と前記受光装置の間に配置されている窓部を有し、前記窓部は、前記レーザ光が通過する領域の周りが光を透過しない部材で形成されていることが好ましい。
【0019】
また、前記信号処理装置は、前記レーザ照射手段から出力するレーザ光の波長、前記レーザ照射手段から出力するレーザ光の出力強度および前記プラズマ発生手段で発生させるプラズマの強度の少なくとも1つを変調させる場合の全ての変調周波数の成分を低減するローパスフィルタであることが好ましい。
【0020】
また、前記解析装置は、前記流通ガスに含まれる前記測定対象物質の濃度を検出することが好ましい。
【0021】
また、前記測定対象物質は、重金属であることが好ましい。
【0022】
また、前記測定対象物質は、水銀、鉛、クロム、コバルト、カドミウム、砒素の少なくとも1つであることが好ましい。
【0023】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、流通ガスに含まれる測定対象物質を計測する物質計測方法であって、計測セルユニットに前記流通ガスを流すステップと、前記計測セルユニットの計測領域にプラズマを発生させ、前記計測セルユニットの前記計測領域に前記プラズマによって励起された前記測定対象物質の励起波長を含むレーザ光を照射する第1計測ステップと、前記第1計測ステップで前記計測領域に発生する前記プラズマに起因する電気的特性を電流で検出する第1電流計測ステップと、前記第1計測ステップで出力するレーザ光の波長、前記第1計測ステップで出力するレーザ光の出力強度および前記第1計測ステップで発生させるプラズマの強度の少なくとも1つを変化させる第2計測ステップと、前記第2計測ステップで前記計測領域に発生するプラズマに起因する電気的特性を電流で検出する第2電流計測ステップと、前記第1電流計測ステップで検出した検出値と、前記第2電流計測検出ステップで検出した電流値とを比較して、前記流通ガスに含まれる前記測定対象物質を検出する物質検出ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、流通ガスに含まれる種々の物質を測定対象物質とすることができ、測定対象物質の濃度、量等を高い応答性で高精度に計測することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、濃度計測装置の一実施形態の概略構成を示す模式図である。
【図2】図2は、RF制御装置で生成されるRF制御信号の一例を示す波形図である。
【図3】図3は、半導体レーザ制御装置で生成されるレーザ光の発振信号の一例を示す波形図である。
【図4】図4は、濃度計測装置の動作を説明するフロー図である。
【図5】図5は、濃度計測装置の動作を説明するフロー図である。
【図6】図6は、濃度計測装置の他の実施形態の概略構成を示す模式図である。
【図7】図7は、濃度計測装置の他の実施形態の概略構成を示す模式図である。
【図8】図8は、RF制御装置で生成されるRF制御信号の一例を示す波形図である。
【図9】図9は、濃度計測装置の他の実施形態の概略構成を示す模式図である。
【図10】図10は、半導体レーザ制御装置で生成されるレーザ光の発振信号の一例を示す波形図である。
【図11】図11は、濃度計測装置の他の実施形態の概略構成を示す模式図である。
【図12】図12は、濃度計測装置の他の実施形態の概略構成を示す模式図である。
【図13】図13は、半導体レーザ制御装置で生成されるレーザ光の発振信号の一例を示す波形図である。
【図14】図14は、濃度計測装置の他の実施形態の概略構成を示す模式図である。
【図15】図15は、半導体レーザ制御装置で生成されるレーザ光の発振信号の一例を示す波形図である。
【図16】図16は、図15に示すレーザ光の発振信号の一部を拡大して示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明にかかる物質計測装置および物質計測方法の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。例えば、本実施形態では、物質計測装置および物質計測方法として、流通ガスに含まれる測定対象物質の濃度を計測するが、本発明はこれに限定されず、ガスに含まれる測定対象物質の量を計測してもよい。物質計測装置および物質計測方法は、管路を流れる種々のガスを流通ガスとすることができる。例えば、物質計測装置をディーゼルエンジンに取付、ディーゼルエンジンから排出される排ガスを流通ガスとし、流通ガスに含まれる測定対象物質を計測することができる。なお、排ガスを排出する機関、つまり測定対象のガスを排出(供給)する装置は、これに限定されず、ガソリンエンジンや、ガスタービン等種々の内燃機関に用いることができる。また、内燃機関を有する装置としては、車両、船舶、発電機等種々の装置が例示される。さらに、ゴミ焼却炉から排出されるガスを流通ガスとして、流通ガスに含まれる種々の物質を測定対象物質として計測することもできる。
【0027】
[実施形態1]
図1は、本発明の濃度計測装置の一実施形態の概略構成を示す模式図である。濃度計測装置10は、計測対象配管8を流れる流通ガスの一部を採取(サンプリング)して、流通ガスに含まれる測定対象物質の濃度を計測する物質計測装置である。濃度計測装置10は、図1に示すように、計測セルユニット12と、プラズマ発生手段13と、レーザ光照射手段14と、レーザ強度検出手段16と、電流検出手段20と、解析装置22と、制御装置24と、を有する。
【0028】
計測セルユニット12は、計測対象配管8と接続されており流通ガスGを案内する経路および流通ガス含まれる測定対象物質を計測する計測領域を構成する。計測セルユニット12は、計測セル32と、流入管34と、排出管36と、ポンプ42と、を有する。
【0029】
計測セル32は、筒形状の部材であり、内部に流通ガスGが流れる。計測セル32の筒形状の一方の端部(図1中左側、上面)には窓38が配置され、他方の端部(図1中右側、下面)には窓40が配置されている。つまり、計測セル32は、筒形状の上面と下面が、それぞれ窓38、窓40に塞がれた形状となっている。なお、窓38、40は、光を透過する部材、例えば、透明なガラス、樹脂等で構成されている。これにより、計測セル32は、窓38、40が設けられている両端部が、空気が流通しない状態で、かつ、光が透過できる状態となる。つまり、計測セル32の外部から内部に光を入射させ、計測セル32の内部から外部に光を射出させることができる。
【0030】
流入管(サンプリング配管)34は、計測対象配管8と接続し、計測対象配管8を流れる流通ガスGの一部を捕集する配管である。流入管34は、一方の端部(流通ガスGの流れ方向において上流側の端部)が計測対象配管8の内部に配置されており、他方の端部(流通ガスGの流れ方向において下流側の端部)が、計測対象配管8の外部に配置されている。また、流入管34は、他方の端部が計測セル32の側面(周面)の窓38側に接続されている。流入管34は、一方の端部の開口面が流通ガスGの流れ方向に対して、直交または、直交方向よりも下流側に向けた向きで配置されている。これにより流入管34は、捕集した流通ガスGに含まれる煤塵等を少なくすることができる。
【0031】
排出管36は、一方の端部が、計測セル32の側面(周面)の窓40側に接続され、他方の端部が、より下流側の配管(ポンプ42が配置されている配管)と接続されている。ポンプ42は、流通ガスGの流れ方向において、計測セル32の下流側となる排出管36に配置されている。ポンプ42は、流通ガスGが流入管34から計測セル32に向けて流れる向きに、空気を吸引する。
【0032】
計測セルユニット12は、計測対象配管8を流れる流通ガスGの一部を流入管34で捕集し、流入管34から計測セル32に供給する。また、計測セルユニット12は、計測セル32を流れた流通ガスGを排出管36から外部に排出する。このようにして計測セルユニット12は、計測対象配管8を流れる流通ガスGの一部を流入管34、計測セル32、排出管36の順で流す流路を形成する。また、計測セルユニット12は、ポンプ42で流通ガスGを吸引することで、流通ガスGが流入管34、計測セル32、排出管36の順で流れる流量を適宜調整することができる。
【0033】
プラズマ発生手段13は、計測セル32の内部にプラズマを発生させる機構であり、RF(高周波、Radio Frequency)発振器44と、銅リング46、47と、RF制御装置48と、を有する。RF発振器44は、高周波の電圧を発生させる発振器である。RF発振器44は、発生させた高周波の電圧を銅リング46と銅リング47とに印加する。銅リング46と銅リング47とは、計測セル32の外周に配置されている。銅リング46と銅リング47とは、所定の間隔で離れた位置に配置されている。RF制御装置48は、RF制御信号を生成し、RF発振器44に送る。RF制御信号は、RF発振器44で発生させる高周波の電圧の周波数や電圧値を制御する信号である。また、本実施形態のRF制御装置48は、RF発振器44で発生させる高周波の電圧値が周期的に変化する制御信号を生成する。また、RF制御装置48は、RF発振器44に供給するRF制御信号と同期した制御信号であるRF制御参照信号を電流検出手段20の後述する第2位相敏感検出器84に送る。
【0034】
図2は、RF制御装置で生成されるRF制御信号の一例を示す波形図である。図2に示すグラフは、縦軸を出力の指数とし、横軸を時間とする。縦軸の出力の指数は、模式的な数値である。本実施形態の出力値=0は、計測領域でプラズマを発生させない電圧を印加する信号である。出力値=1は、計測領域でプラズマを発生させる所定の高周波の電圧を印加する信号である。本実施形態のRF制御装置48は、図2に示すように一波長92が出力0と出力1が交互に切り換る方形波形状となり、当該一波長92が周波数500Hzの周期で繰り返す信号をRF制御信号、RF制御参照信号として出力する。
【0035】
プラズマ発生手段13は、以上のような構成であり、RF発振器44は、RF制御装置48から供給されるRF制御信号に基づいて銅リング46と銅リング47とに高周波の電圧を印加する。プラズマ発生手段13は、銅リング46と銅リング47とに高周波の電圧を印加することで、銅リング46と銅リング47との間にプラズマPを発生させる。
【0036】
レーザ光照射手段14は、半導体レーザ発振装置50と、光ファイバ52と、半導体レーザ制御装置54と、を有する。
【0037】
半導体レーザ発振装置50は、測定対象物質がプラズマで励起された状態の励起準位に相当する波長のレーザ光を出力する。半導体レーザ発振装置50は、発光素子として半導体レーザ(レーザーダイオード、LD)を有する。なお、本実施形態では、レーザ光を出力する発光装置として、発光素子に半導体レーザを用いた半導体レーザ発振装置50を用いたが、発光装置はこれに限定されない。発光装置は、レーザ光を出力する機構であればよい。半導体レーザ発振装置50は、入力される信号に基づいて出力するレーザ光の波長や強度を調整することができる。
【0038】
光ファイバ52は、一方の端部が半導体レーザ発振装置50に連結され、他方の端部が窓38に連結されている。光ファイバ52は、他方の端部の先端が計測セル32の内部に露出している。光ファイバ52は、半導体レーザ発振装置50から出力されるレーザ光Lを計測セル32内に案内する。
【0039】
半導体レーザ制御装置54は、レーザ制御信号を生成し、半導体レーザ発振装置50に送る。レーザ制御信号は、半導体レーザ発振装置50から出力するレーザ光の波長や強度を制御する信号である。半導体レーザ発振装置50は、レーザ光の波長および強度の少なくとも一方を周期的に変化させるレーザ制御信号を生成する。また、半導体レーザ制御装置54は、半導体レーザ発振装置50に供給するレーザ制御信号と同期した制御信号であるレーザ制御参照信号を電流検出手段20の後述する第1位相敏感検出器82に送る。
【0040】
ここで、図3は、半導体レーザ制御装置で生成されるレーザ光の発振信号の一例を示す波形図である。図3に示すグラフは、縦軸をレーザ光の波長(出力)の指数とし、横軸を時間とする。縦軸の波長(出力)の指数は、模式的な数値である。本実施形態の出力値=0は、基準となる波長(プラズマによって励起された測定対象物質の励起波長)である。出力値=1、−1は、プラズマによって励起された測定対象物質の励起波長から一定波長離れた波長である。本実施形態の半導体レーザ制御装置54は、図3に示すように一波長94がsin波となり、当該一波長94が周波数10kHzの周期で繰り返す信号をレーザ制御信号、レーザ制御参照信号として出力する。これにより、半導体レーザ発振装置50は、出力するレーザ光の波長が、所定の波長幅(指数−1から1に対する波長幅)で正弦波の波形となるように周波数10kHzの周期で時間変化する。
【0041】
レーザ光照射手段14は、以上のような構成であり、半導体レーザ制御装置54から半導体レーザ発振装置50にレーザ制御信号が送信される。半導体レーザ発振装置50は、レーザ制御信号に基づいてレーザ光Lを出力し、出力したレーザ光Lを光ファイバ52に入射させる。光ファイバ52は、入射されたレーザ光Lを案内して、計測セル32内に入射させる。
【0042】
レーザ強度検出手段16は、受光装置60と、信号処理装置62と、を有する。受光装置60は、計測セル32の内部を通過し、窓40から出力されたレーザ光を受光する受光部である。なお、受光装置60は、例えば、フォトダイオード(PD、Photodiode)等の光検出器を備え、光検出器によってレーザ光を受光し、その光の強度を検出する。受光装置60は、受光したレーザ光の強度を信号として、信号処理装置62に送る。信号処理装置62は、受光装置60が受信した信号からノイズ成分を除去し、計測セル32を通過したレーザ光Lのレーザ強度を示すレーザ強度信号を生成する。信号処理装置62は、信号の高周波成分を低減するローパスフィルタや、所定の周波数成分のみを抽出するロックインアンプ(位相敏感検出器)等で構成される。信号処理装置62は、生成したレーザ強度信号を解析装置22に送る。
【0043】
電流検出手段20は、電流検出部80と、第1位相敏感検出器82と、第2位相敏感検出器84と、を有する。
【0044】
電流検出部80は、計測セル32の銅リング46と銅リング47との間のプラズマPが発生する領域(計測領域)に発生するプラズマPに起因する電気的特性を電流で検出する機構である。電流検出部80は、計測セル32の銅リング46と銅リング47と挟まれた領域の外周にまきつけられたコイルと、コイルに流れた電流を電流値の信号として検出する回路と、を有する。電流検出部80は、計測領域で発生したプラズマPによってコイルに流れる電流を検出する。また、電流検出部80は、計測領域で発生したプラズマPの状態に応じて、流れる電流が変化する。
【0045】
第1位相敏感検出器82は、参照信号を用い、処理対象の信号から参照信号の位相に対応する位相関係を備える成分を抽出する機器である。第1位相敏感検出器82は、半導体レーザ制御装置54から送られたレーザ制御参照信号を参照信号として、電流検出部80から送られた電流値信号から、レーザ制御参照信号の位相に対応する成分を抽出する。つまり、第1位相敏感検出器82は、電流値信号からレーザ制御参照信号の位相に対応して変化する成分(同一の周波数で変化する成分)を抽出する。第1位相敏感検出器82は、参照信号であるsin波のレーザ制御参照信号に基づいて一波長において同一波長となる2つの位相の成分を検出するいわゆる2f検波(参照周波数の2倍の周波数)で成分を抽出する。第1位相敏感検出器82は、検出した信号を第2位相敏感検出器84に送る。なお、第1位相敏感検出器82は、半導体レーザ制御装置54から送られたレーザ制御参照信号を参照信号として、電流検出部80から送られた電流値信号に対してロックイン処理を行う、つまり、処理対象の信号に含まれる参照信号の周波数の成分以外の成分を低減させる処理を行ういわゆるロックイン処理を行うロックインアンプを用いてもよい。
【0046】
第2位相敏感検出器84は、参照信号を用い、処理対象の信号から参照信号の位相に対応する位相関係を備える成分を抽出する機器である。第2位相敏感検出器84は、RF制御装置48から送られたRF制御参照信号を参照信号として、第1位相敏感検出器82から送られた電流値信号から、RF制御参照信号の位相に対応する成分を抽出する。第2位相敏感検出器84は、参照信号である方形波のRF制御参照信号に基づいて一波長において1つの位相の成分を検出するいわゆる1f検波で成分を抽出する。第2位相敏感検出器84は、検出した信号を解析装置22に送る。なお、電流検出手段20は、第1位相敏感検出器82と第2位相敏感検出器84のように、複数の位相敏感検出器で処理を行う場合、参照信号の周波数が高い方の位相敏感検出器での処理を先に実行する。本実施形態は、RF制御参照信号が500Hzであり、レーザ制御参照信号の周波数が10kHzであるため、電流検出手段20は、レーザ制御参照信号を参照信号として信号を処理する第1位相敏感検出器82による処理を行った後、第2位相敏感検出器84による処理を行う。
【0047】
解析装置22は、電流検出手段20で検出したプラズマに起因して発生する電流値に基づいて流通ガスGに含まれる測定対象物質濃度を計測する。また、解析装置22は、レーザ強度信号に基づいて、電流検出手段20で検出したプラズマに起因して発生する電流値に含まれるレーザ強度の影響を補正し、流通ガスGに含まれる測定対象物質濃度を算出する。
【0048】
解析装置22は、電流検出手段20で検出したプラズマに起因して発生する電流値に基づいて、計測セル32内の計測領域にプラズマが発生しておりかつ計測領域にプラズマによって励起された測定対象物質の励起波長を含むレーザ光を照射している状態で電流検出手段20により検出した電流値と、それ以外の状態(本実施形態では計測セル32にプラズマが発生していない状態)で電流検出手段20により検出した電流値とを比較して、流通ガスGに含まれる測定対象物質の濃度を検出する。なお、本実施形態の濃度計測装置10は、電流検出手段20が第1位相敏感検出器82と、第2位相敏感検出器84により、電流値信号に含まれる各種成分のうち、レーザ制御参照信号とRF制御参照信号とに対応する信号成分を抽出している。これにより、濃度計測装置10は、電流検出手段20で検出された信号として、上述した比較した結果の少なくとも一部を実行した信号を取得することができ、解析装置22での演算を低減することができる。
【0049】
制御装置24は、RF制御装置48、半導体レーザ制御装置54、解析装置22の動作を制御する制御機能を有し、必要に応じて各部の動作を制御する。具体的には、制御装置24は、RF制御装置48および半導体レーザ制御装置54で生成する制御信号の周波数、強度、出力タイミング等を制御する。また、制御装置24は、解析装置22に解析に必要な条件の設定も実行する。濃度計測装置10は、以上のような構成である。
【0050】
次に、図4および図5を用いて、濃度計測装置10の動作を説明する。図4および図5は、それぞれ濃度計測装置の動作を説明するフロー図である。
【0051】
濃度計測装置10の制御装置24は、ステップS12として流通ガスの流通を開始する。具体的には、制御装置24は、計測対象配管8に流通ガスが流れている状態で、測定が開始の指示が入力されると、ポンプ42を駆動させ、計測対象配管8に流れている流通ガスを流入管34から吸引する。
【0052】
制御装置24は、ステップS12で流通ガスの流通を開始したら、ステップS14として、プラズマ発生手段13を駆動し、計測セル32の計測領域にプラズマPを発生させる。ここで、プラズマ発生手段13は、図2で上述したように、周波数500Hzの方形波の信号に基づいてプラズマPを発生させる。つまり、プラズマ発生手段13は、高周波電圧を印加する状態と高周波電圧を印加しない状態とを一定間隔で切り換えて、高周波電圧の印加をON/OFFする。これにより、計測領域は、プラズマが発生している状態とプラズマが発生していない状態とが周波数500Hzで繰り返される。
【0053】
制御装置24は、ステップS14でプラズマ発生手段13を駆動したら、ステップS16として、レーザ光照射手段14を駆動し、計測領域にレーザ光Lを照射する。ここで、レーザ光照射手段14は、図3で上述したように、周波数10kHzのsin波の信号に基づいてレーザ光Lを発生させる。つまり、レーザ光照射手段14は、プラズマによって励起された測定対象物質の励起波長を中心波長として、一定の波長幅で波長をsin波の時間変調させたレーザ光Lを照射する。これにより、計測領域に入射するレーザ光Lは、時間により波長が周期的に変化する。なお、制御装置24は、ステップS12からステップS16の処理の順番は特に限定されない。
【0054】
制御装置24は、ステップS16でレーザ光照射手段14を駆動したら、ステップS18として、電流の検出を行う。具体的には、上述したように電流検出手段20により計測セル32に発生するプラズマに起因する特性を計測セル32の周囲に巻いたコイルで電流として検出する。
【0055】
制御装置24は、ステップS18で電流を検出したら、ステップS20としてレーザ強度(レーザ光の強度)を検出する。具体的には、計測セル32の計測領域を通過し窓40を通過したレーザ光Lを受光装置60で検出し、受光装置60で検出したレーザ光Lに含まれるノイズ等を信号処理装置62で除去することで、計測領域を通過したレーザ光Lの強度を検出する。なお、制御装置24は、ステップS18の処理とステップS20の処理の順番を逆にしてもよい。
【0056】
制御装置24は、ステップS20でレーザ光の強度を検出したら、ステップS22として濃度を検出する。制御装置24は、解析装置22により、ステップS18とステップS20の結果を用いて計測領域を流れる流通ガスGに含まれる測定対象物質の濃度を検出する。なお、検出方法は後述する。
【0057】
制御装置24は、ステップS22で濃度を検出したら、ステップS24で検出処理終了か(測定対象物質の濃度の検出を終了するか)を判定する。制御装置24は、ステップS24で処理終了ではない(No)と判定した場合、ステップS18に進み、ステップS18からステップS22を実行する。また、制御装置24は、ステップS24で処理終了である(Yes)と判定した場合、本処理を終了する。
【0058】
以下、図5を用いて濃度検出の一例について説明する。解析装置22は、ステップS30として第1条件での電流を検出する。ここで、第1条件とは、計測セル32内の計測領域にプラズマが発生しておりかつ計測領域にプラズマによって励起された測定対象物質の励起波長を含むレーザ光を照射している状態である。本実施形態では、プラズマ発生手段13でプラズマがON(図2のグラフの信号の出力=1)で、レーザ光Lの波長がプラズマによって励起された測定対象物質の励起波長(図3のグラフで波長=0)の場合が第1条件となる。本実施形態では、RF制御信号(RF制御参照信号)の周波数が500Hzであり、レーザ制御信号(レーザ制御参照信号)の周波数が10kHzであるため、プラズマ発生手段13で1回プラズマがONになっている間、レーザ光Lの波長が複数回プラズマによって励起された測定対象物質の励起波長となる。
【0059】
解析装置22は、ステップS30で第1条件での電流を検出したら、ステップS32として、第2条件での電流を検出する。ここで、第2条件とは、第1条件以外の条件、計測セル32内の計測領域にプラズマが発生していないまたは計測領域にプラズマによって励起された測定対象物質の励起波長を含むレーザ光を照射していない状態である。本実施形態では計測セル32にプラズマが発生していない状態で計測領域にプラズマによって励起された測定対象物質の励起波長を含むレーザ光を照射している状態である。本実施形態では、プラズマ発生手段13でプラズマがOFF(図2のグラフの信号の出力=0)で、レーザ光Lの波長がプラズマによって励起された測定対象物質の励起波長(図3のグラフで波長=0)の場合が第2条件となる実施形態も、プラズマがOFFになっている間に複数回第2条件を満たす状態となる。また、本実施形態では、計測セル32にプラズマが発生している状態で計測領域にプラズマによって励起された測定対象物質の励起波長を含むレーザ光を照射していない状態も第2条件とする。
【0060】
解析装置22は、ステップS32で第2条件での電流を検出したら、ステップS34として、差分を検出する。具体的には、第1条件で算出した電流値と第2条件で算出した電流値との差分を算出する。これにより、プラズマが発生していない状態の電流値とプラズマが発生している状態の電流値の差分を検する。また、プラズマが発生している状態でレーザ光の波長が励起波長である場合の電流値と、励起波長ではない場合の電流値と、の差分を検出する。解析装置22は、第1条件と第2条件との差分を検出することで、プラズマによって励起された測定対象物質に励起波長のレーザ光を照射することで発生する電流の変化値を検出する。なお、本実施形態では、上述したように電流検出手段20の第1位相敏感検出器82と第2位相敏感検出器84とで所定の位相成分を抽出することで、電流値の一部の差分を検出する。
【0061】
解析装置22は、ステップS34で差分を検出したら、ステップS36として補正処理を行う。解析装置22は、ステップS34で検出した電流値の差分を、レーザ光の強度に基づいて補正する。つまり、レーザ光の強度を加味することで、算出した電流値の差分を濃度に比例する電流値とする。
【0062】
解析装置22は、ステップS36で補正処理を行ったら、ステップS38として濃度を算出する。具体的には、ステップS36で補正した差分の電流値に基づいて、測定対象物質の濃度を算出する。解析装置22は、ステップS38の処理を行ったら本処理を終了する。
【0063】
濃度計測装置10は、以上のように、計測セル32にプラズマを発生させ、測定対象物質を励起状態とし、プラズマによって励起された測定対象物質の励起波長のレーザ光を照射し、測定対象物質をさらに励起させ、当該励起状態の変化により生じるプラズマの状態の変化を電流で計測することで、測定対象の物質の濃度を計測することができる。
【0064】
また、プラズマによって励起された測定対象物質の励起波長のレーザ光を照射することで発生するプラズマ状態の変化を検出することで、短時間で、かつ、高い精度で濃度を計測することができる。つまり、プラズマの発生状態とレーザ光の波長は、短い周期で(高い周波数)で変調することができるため、短時間で計測することができる。
【0065】
また、濃度計測装置10は、測定対象物質をプラズマで励起することで、種々の物質を測定対象とすることができる。例えば、測定対象の吸収波長の近赤外の波長域のレーザ光を照射し、レーザ光の吸収を計測するTDLAS法では計測することができない物質も計測することができる。
【0066】
濃度計測装置10は、プラズマの発生状態およびレーザ光の波長を周期的に変化させることで、第1条件と第2条件との差分、つまり測定対象物質を励起状態とし、プラズマによって励起された測定対象物質の励起波長のレーザ光を照射し、測定対象物質をさらに励起させた状態と、それ以外の状態との差分を計測することができる。これにより、それ以外の状態を基準として、測定対象物質を励起状態とし、プラズマによって励起された測定対象物質の励起波長のレーザ光を照射し、測定対象物質をさらに励起させた状態で生じるプラズマの変化を好適に検出することができ、測定対象物質の濃度をより高い精度で計測することが可能となる。なお、濃度計測装置10は、それ以外の状態として基準とする状態を、プラズマの発生強度、レーザ光の波長、レーザ光の出力強度の少なくとも1つを変調させることで生じる状態とすることが好ましい。また、プラズマの発生強度、レーザ光の波長、レーザ光の出力強度のうち2つを変調させることが好ましく、3つ全てを変調させることがさらに好ましい。
【0067】
また、本実施形態のように、レーザ光を、励起波長を中心として一定波長幅で変調させることで、計測時の状態により励起波長が変化したり、印加する電圧、電流とレーザ光から出力される波長との関係が変化したりしても、励起波長を中心として一定波長幅で変調させた波長範囲の中で、測定対象物質を励起できる波長のレーザ光を照射することができる。これにより、計測の環境によらず(励起波長がずれた場合でも)、レーザ光で測定対象物質を励起させることができる。つまり、計測結果のピーク値を検出することでレーザ光により測定対象物質を最も励起できている状態を検出することができる。これにより、計測精度をより高くすることができる。
【0068】
ここで、濃度計測装置10は、装置を調整することで、流通ガスに含まれる種々の物質を測定対象物質とすることができる。また、測定対象物質としては、流通ガスに含まれる種々の物質を対象とすることができる。測定対象物質は、流通ガス中に浮遊粒子状物質(SPM、Suspended Particulate Matter)、粒子状物質(PM、Particulate Matter、Particulate)やガス状物質等として存在する。また、測定対象物質としては、レーザ光で出力可能な波長範囲にプラズマによって励起された状態でさらに励起される励起波長を備える各種物質を用いることができる。
【0069】
ここで、測定対象物質としては、重金属に含まれる物質を用いることが好ましい。重金属(Heavy Metals)とは、一般的に比重が4〜5以上の金属元素で鉄以上の比重を持つ金属の総称である。測定対象物質として重金属を選定する場合、人体に有害な物質、排出が厳しく制限されている物質を対象にすることがより好ましい。具体的には、水銀(Hg)、鉛(Pb)、カドミウム(Cd)、砒素(As)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ウラン(U)、プルトニウム(Pu)等の中から少なくとも1つを選定することが好ましい。水銀、鉛、カドミウム、砒素、クロム等は、プラズマ状態に励起して、さらにレーザ光で励起することで、濃度を好適に測定することができる。また、水銀、鉛、カドミウム、砒素、クロム等は、環境に与える影響が大きく、また各種機器から排出される流通ガスに含まれやすい物質であり、かつ、規制の対象物質であるため、これらを測定対象物質とすることで、装置をより有用に用いることができる。また、本発明の濃度計測装置は、これらの物質を計測する際、従来技術では前処理等で必要とされてきた硫酸、硝酸、水酸化ナトリウム等の劇毒物を用いることなく実行することができ、計測もより簡単に行うことができる。
【0070】
ここで、レーザ光は、近赤外波長域のレーザ光を用いることが好ましい。具体的には、測定対象物質が水銀の場合は励起波長として1014nm、鉛の場合は励起波長として723nm、カドミウムの場合は励起波長として644nm、砒素の場合は励起波長として963nm、クロムの場合は励起波長として688nmを用いることが好ましい。これにより、流通ガスに測定対象物質以外の成分が混在した状態であっても、測定対象物質の濃度を適切に測ることができる。つまり、測定対象物質以外の成分がノイズとなりにくくすることができる。これにより、フィルタや、除湿の工程をなくすまたは少なくすることができ、計測対象配管8から流通ガスを吸引してから、計測を行い、計測結果を算出するまでの時間を短時間にすることができる。つまり、計測の時間遅れを少なくすることができる。これにより、応答性を高くすることができる。
【0071】
濃度計測装置10は、本実施形態のように第1位相敏感検出器82、第2位相敏感検出器84を設けることで電流検出部80が検出した電流値の含まれるノイズを好適に低減することができる。また、第2位相敏感検出器84を設けることで、プラズマのON/OFFでの検出値の変化の差分を抽出することができる。なお、濃度計測装置10は、上述したように、プラズマによって励起された測定対象物質の励起波長のレーザ光を照射し、励起させることで生じるプラズマの変化を電流で検出し、その電流で濃度を検出すればよく、プラズマの制御やレーザ光の制御はこれに限定されない。また、濃度計測装置10は、プラズマやレーザ光を周期的に調整することで、より具体的には、レーザ光照射手段14から出力するレーザ光の波長、レーザ光照射手段14から出力するレーザ光の出力強度およびプラズマ発生手段13で発生させるプラズマの強度の少なくとも1つを周期的に変化させることで、上述した第1条件と第2条件との差分を好適に抽出することができる。
【0072】
また、濃度計測装置10は、ポンプ42を設けることで、計測対象配管8を流れる流通ガスを適切に流入管34から吸引することができる。なお、ポンプ42は設けることが好ましいが、計測セルユニット12の構成や、計測対象配管8を流れる流通ガスの圧力等により、計測セルユニット12に一定流量以上の流通ガスが流れる場合は、ポンプ42は設けなくてもよい。
【0073】
ここで、濃度計測装置は、上記実施形態に限定されず、種々の実施形態とすることができる。以下、図6から図16を用いて、他の実施形態について説明する。
【0074】
[実施形態2]
図6は、濃度計測装置の他の実施形態の概略構成を示す模式図である。図6に示す濃度計測装置100は、計測セルユニット102と、プラズマ発生手段13と、レーザ光照射手段14と、レーザ強度検出手段103と、電流検出手段20と、解析装置22と、制御装置24と、を有する。ここで、濃度計測装置100は、計測セルユニット102とレーザ強度検出手段103の構成を除いて、他の構成は濃度計測装置10と同様である。濃度計測装置100の構成のうち濃度計測装置10と同様の構成については説明を省略する。
【0075】
計測セルユニット102は、計測セル32の排出管36側の端面に配置された窓40に代えて窓104を備える点が計測セルユニット12とは異なる。窓104は、光を透過する透明部106と、光を遮蔽する遮光部108と、を有する。
【0076】
透明部106は、光を透過する材料で形成されており、窓104に到達するレーザ光が通過する領域に配置されている。なお透明部106の大きさは、窓104に到達するレーザ光Lの領域と略同じか当該領域よりも若干大きい形状である。遮光部108は、光を遮蔽する(遮る)材料で形成されており、レーザ光Lを中心として透明部106よりも外側の領域に配置されている。窓104は、透明部106と遮光部108とで計測セル32の下面を塞いでいる。
【0077】
レーザ強度検出手段103は、受光装置60とローパスフィルタ124とを有する。受光装置60は、上述したレーザ強度検出手段16の受光装置60と同様である。ローパスフィルタ124は、上述した信号処理装置62と同様に受光装置60が受信した信号からノイズ成分を除去し、計測セル32を通過したレーザ光Lのレーザ強度を示すレーザ強度信号を生成する装置である。ローパスフィルタ124は、受光装置60が受信した信号に含まれる成分のうち、しきい値周波数以上の成分を低減し、しきい値周波数未満の成分をそのまま通過させるフィルタである。ローパスフィルタ124は、RF制御信号に含まれる変調周波数とレーザ制御信号に含まれる変調周波数のいずれよりも低い周波数をしきい値周波数とする。これにより、ローパスフィルタ124は、プラズマと、レーザ光とに起因して生じるレーザ光の変化の影響を除去、低減することができる。なお、上記実施形態では、ローパスフィルタ124は、500Hz以下の周波数、例えば、100Hzをしきい値周波数とすればよい。
【0078】
濃度計測装置100は、窓104のレーザ光Lが通過しない領域は遮光部108とすることで、計測セル32から窓104に到達する周囲光が受光装置60に入ることを抑制することができる。これによりレーザ光Lの強度をより高い精度で計測することができる。
【0079】
[実施形態3]
図7は、濃度計測装置の他の実施形態の概略構成を示す模式図である。図7に示す濃度計測装置150は、計測セルユニット12と、プラズマ発生手段13と、レーザ光照射手段14と、レーザ強度検出手段152と、電流検出手段20と、解析装置22と、制御装置24と、を有する。ここで、濃度計測装置150は、レーザ強度検出手段152の構成を除いて、他の構成は濃度計測装置10と同様である。濃度計測装置150の構成のうち濃度計測装置10と同様の構成については説明を省略する。
【0080】
レーザ強度検出手段152は、第1受光装置162と第2受光装置164と差分検出器166とローパスフィルタ168とを有する。第1受光装置162と第2受光装置164は、上述したレーザ強度検出手段16の受光装置60と同様に、窓40から出力されたレーザ光を受光する受光部である。なお、第1受光装置162と第2受光装置164は、例えば、フォトダイオード(PD、Photodiode)等の光検出器を備え、光検出器によってレーザ光を受光し、その光の強度を検出する。第1受光装置162は、光を受光する受光面(検出面)が窓40に到達するレーザ光が通過する領域の少なくとも一部に配置されている。光を受光する受光面(検出面)の大きさは、レーザ光Lの領域と略同じか当該領域よりも若干大きくすることが好ましい。第2受光装置164は、レーザ光Lを中心として透明部106よりも外側の領域に配置されている。第2受光装置164は、窓40を通過する光のうちレーザ光L以外の光である周辺光Laを受光し、その光の強度を検出する。第2受光装置164は、第1受光装置162と同一の大きさの受光面を備えることが好ましい。また、第1受光装置162と第2受光装置164とは、受光面の距離を5mm以上離すことが好ましい。これにより、第2受光装置164は、好適に周辺光Laを検出することができる。第1受光装置162と第2受光装置164とは、受光した光の強度を信号として、差分検出器166に送る。
【0081】
差分検出器166は、信号の差分を検出する機構であり、第1受光装置162から送られてきた光の強度の信号から、第2受光装置164から送られてきた光の強度の信号を減算する。つまり差分検出器166は、第1受光装置162が検出したレーザ光の強度の信号に含まれる周辺光Laの成分を第2受光装置164が検出した周辺光の強度の信号を用いて除去、低減する。差分検出器166は、レーザ光とは関係のない成分の光を用いて光の強度を規格化して減算することが好ましい。差分検出器166は、第1受光装置162から送られてきた光の強度の信号と第2受光装置164から送られてきた光の強度の信号とを同一基準とした後、差分を検出することで第1受光装置162が検出した信号から周辺光の成分を適切に取り除くことができる。差分検出器166は、処理を行った信号をローパスフィルタ168に送る。
【0082】
ローパスフィルタ168は、差分検出器166を通過した信号に含まれる成分のうち、しきい値周波数以上の成分を低減し、しきい値周波数未満の成分をそのまま通過させるフィルタである。ローパスフィルタ168は、RF制御信号に含まれる変調周波数とレーザ制御信号に含まれる変調周波数のいずれよりも低い周波数をしきい値周波数とする。これにより、ローパスフィルタ168は、プラズマと、レーザ光とに起因して生じるレーザ光の変化の影響を除去、低減することができる。
【0083】
濃度計測装置150は、周辺光Laを検出する第2受光装置164を設け、差分検出器166で第1受光装置162での検出結果から第2受光装置164で検出した周辺光Laの成分を除去することで、第1受光装置162の検出結果に含まれる計測セル32から窓40に到達する周辺光Laの成分を除去することができる。これによりレーザ光Lの強度をより高い精度で計測することができる。また、本実施形態の濃度計測装置150は、第1受光装置162が検出した結果に含まれる周辺光Laの成分も除去できるため、レーザ光Lの強度をより好適に検出することができる。
【0084】
[実施形態4]
図8は、RF制御装置で生成されるRF制御信号の一例を示す波形図である。図8に示すグラフは、図2と同様に、縦軸を出力の指数とし、横軸を時間とする。縦軸の出力の指数は、模式的な数値である。本実施形態の出力値=0は、計測領域でプラズマを発生させない電圧を印加する信号である。出力値=1は、計測領域でプラズマを発生させる所定の高周波の電圧を印加する信号である。第4実施形態は、RF制御装置で生成するRF制御信号、RF参照制御信号の波形が異なるのみで、装置構成は、上記実施形態、後述する実施形態のいずれの構成でもよい。
【0085】
RF制御装置48は、上述した実施形態ではRF制御信号を出力0と出力1とに切り換えられる方形波形状としたが、これに限定されない。RF制御装置48は、RF制御信号として、図8に示すように、一波長192が出力0.5と出力1が交互に切り換る方形波形状となり、当該一波長192が周波数500Hzの周期で繰り返す信号をRF制御信号として出力する。RF制御装置48は、図8に示すRF制御信号と同様の信号をRF制御参照信号として出力する。
【0086】
本実施形態の濃度計測装置のRF制御装置48は、RF制御信号として、図8に示すように、出力0.5と出力1で交互に切り換る信号を用いることで、計測セル32の計測領域内で発生するプラズマの特性(強度)を2段階に切り換えることができる。また、計測セル32の計測領域内で常にプラズマが発生した状態とすることができる。
【0087】
これにより、出力0と出力1を交互に切り換えた場合と同様に、プラズマの状態が周期的に変化するため、一方の状態を基準として、他方の状態との差分を検出することで、測定対象物質に励起波長のレーザ光が照射されることで生じるプラズマ状態の変化を電流で検出することができる。また、出力0.5と出力1とを交互に切り換えることで、常にプラズマを発生させた状態とすることができる。これにより、プラズマが発生していない状態からプラズマが発生した状態に切り換る際に生じる変動を抑制することができ、ノイズの発生を好適に抑制することができる。なお、本実施形態では、出力を0.5と1との2段階としたが、切り換える2段階の出力のバランスはこれに限定されない。例えば、出力を0.2と1とで切り換えてもよいし、0.3と0.8とで切り替えてもよい。
【0088】
[実施形態5]
図9は、濃度計測装置の他の実施形態の概略構成を示す模式図である。図10は、半導体レーザ制御装置で生成されるレーザ光の発振信号の一例を示す波形図である。図9に示す濃度計測装置200は、計測セルユニット12と、プラズマ発生手段13と、レーザ光照射手段14と、レーザ強度検出手段152と、電流検出手段202と、解析装置22と、制御装置24と、を有する。ここで、濃度計測装置200は、電流検出手段202の構成を除いて、他の構成は濃度計測装置150と同様である。濃度計測装置200の構成のうち濃度計測装置150と同様の構成については説明を省略する。
【0089】
ここで、本実施形態の半導体レーザ制御装置54は、レーザ制御信号として図10に示す波形の信号を出力する。図10に示すグラフは、縦軸をレーザ光の出力(波形)の指数とし、横軸を時間とする。縦軸の波長(出力)の指数は、模式的な数値である。本実施形態の出力値=0は、出力0でありレーザ光を出力しない状態である。また、出力値=1は、基準となる波長(プラズマによって励起された測定対象物質の励起波長)である。本実施形態の半導体レーザ制御装置54は、図10に示すように一波長232が出力値=0と出力値=1とで交互に切り換る方形波であり、当該一波長232が周波数10kHzの周期で繰り返す信号に、一波長236がsin波となり、当該一波長236が周波数200kHzの周期で繰り返す信号を重畳した信号をレーザ制御信号として出力する。なお、一波長236の振幅は、出力値=0と出力値=1との間隔よりも短い出力の変化であり、当該変化は、出力するレーザの波長が所定の波長幅で正弦波の波形となるように時間変化させることで生じる出力の変化である。これにより、半導体レーザ発振装置50は、出力するレーザ光の波長が、所定の波長幅で正弦波の波形となるように周波数200kHzの周期で時間変化し、さらに、周波数10kHzでレーザ光が出力される状態とレーザ光が出力されない状態とが切り換えられる。なお、図10に示す波形では、出力値=0の場合も、出力値=1の場合と同様に200kHzで信号が時間変化するが、装置の設定により出力値=0の近傍で信号の出力が変化している状態では、レーザ光を出力しないようにすることができる。
【0090】
本実施形態の半導体レーザ制御装置54は、レーザ制御信号に対応した参照信号として、第1レーザ制御参照信号と、第2レーザ制御参照信号と、を生成する。第1レーザ制御参照信号と第2レーザ制御参照信号とは、レーザ制御信号の変調周波数をそれぞれ抽出した信号である。第1レーザ制御参照信号は、上述した一波長236で変調する信号であり、200kHzで変調されるsin波である。第2レーザ制御参照信号は、上述した一波長232で変調する信号であり、10kHzで変調される方形波(On/Off)である。半導体レーザ制御装置54は、第1レーザ制御参照信号を電流検出手段202の第1位相敏感検出器82に送り、第2レーザ制御参照信号を電流検出手段202の後述する第3位相敏感検出器212に送る。
【0091】
電流検出手段202は、電流検出部80と、第1位相敏感検出器82と、第2位相敏感検出器84と、第3位相敏感検出器212と、を有する。電流検出部80は、上述した濃度検出装置150の電流検出部80と同様の構成であるので、説明を省略する。電流検出部80は、検出した電流値信号を第1位相敏感検出器82に送る。
【0092】
第1位相敏感検出器82は、参照信号を用い、処理対象の信号から参照信号の位相に対応する位相関係を備える成分を抽出する機器である。第1位相敏感検出器82は、半導体レーザ制御装置54から送られた第1レーザ制御参照信号(200kHzのsin波)を参照信号として、電流検出部80から送られた電流値信号から、第1レーザ制御参照信号の位相に対応する成分を抽出する。つまり、第1位相敏感検出器82は、電流値信号から第1レーザ制御参照信号の位相に対応して変化する成分(同一の周波数で変化する成分)を抽出する。第1位相敏感検出器82は、参照信号である200kHzのsin波の第1レーザ制御参照信号に基づいて一波長において同一波長となる2つの位相の成分を検出するいわゆる2f検波(参照周波数の2倍の周波数)で成分を抽出する。第1位相敏感検出器82は、検出した信号を第3位相敏感検出器212に送る。なお、第1位相敏感検出器82は、半導体レーザ制御装置54から送られた第1レーザ制御参照信号を参照信号として、電流検出部80から送られた電流値信号に対してロックイン処理を行う、つまり、処理対象の信号に含まれる参照信号の周波数の成分以外の成分を低減させる処理を行ういわゆるロックイン処理を行うロックインアンプを用いてもよい。
【0093】
第3位相敏感検出器212は、参照信号を用い、処理対象の信号から参照信号の位相に対応する位相関係を備える成分を抽出する機器である。第3位相敏感検出器212は、半導体レーザ制御装置54から送られた第2レーザ制御参照信号(10kHzの方形波)を参照信号として、第1位相敏感検出器82から送られた電流値信号(第1位相敏感検出器82で特定の成分を抽出した信号)から第2レーザ制御参照信号の位相に対応して変化する成分(同一の周波数で変化する成分)を抽出する。第3位相敏感検出器212は、参照信号である10kHzの方形波の第2レーザ制御参照信号に基づいて一波長において1つの位相の成分を検出するいわゆる1f検波で成分を抽出する。第3位相敏感検出器212は、検出した信号を第2位相敏感検出器84に送る。なお、第3位相敏感検出器212は、半導体レーザ制御装置54から送られたレーザ制御参照信号を参照信号として、第1位相敏感検出器82から送られた電流値信号に対してロックイン処理を行う、つまり、処理対象の信号に含まれる参照信号の周波数の成分以外の成分を低減させる処理を行ういわゆるロックイン処理を行うロックインアンプを用いてもよい。
【0094】
第2位相敏感検出器84は、参照信号を用い、処理対象の信号から参照信号の位相に対応する位相関係を備える成分を抽出する機器である。第2位相敏感検出器84は、RF制御装置48から送られたRF制御参照信号を参照信号として、第3位相敏感検出器212から送られた電流値信号(第1位相敏感検出器82および第3位相敏感検出器212で特定の成分を抽出した信号)から、RF制御参照信号の位相に対応する成分を抽出する。第2位相敏感検出器84は、検出した信号を解析装置22に送る。
【0095】
なお、電流検出手段202は、上述した電流検出手段20と同様に、参照信号の周波数が高い方の位相敏感検出器での処理を先に実行するため、第1位相敏感検出器82による処理を行った後、第3位相敏感検出器212による処理を行い、さらに、第2位相敏感検出器84による処理を行う。
【0096】
濃度計測装置200は、レーザ光を制御する制御信号を図10に示す波形とすることで、10kHzの方形波でレーザ光の出力のOn/Offを切り換え、200kHzのsin波でレーザ光の波長を変調することができる。これにより、濃度計測装置200は、レーザ光を出力している状態とレーザ光を出力していない状態とを切り換えることができ、さらにレーザ光を出力している間は、励起波長を中心として波長を変調することができる。このように、レーザ光をOn/Offと出力波長の2つで変調できることで、計測領域の状態をより多くの状態で計測することができる。つまり、第2条件として検出できる条件をより増やすことができる。具体的には、濃度計測装置150と比べて、レーザ光が照射されてない状態でプラズマが発生している場合の電流値、レーザ光が照射されていない状態でプラズマが発生していない場合の電流値を計測することができる。これにより、濃度計測時の比較対象をより増やすことができ、計測精度をより高くすることができる。
【0097】
濃度計測装置200は、第3位相敏感検出器212でレーザ光のOn/Offで生じる差分を抽出することで、演算処理をより簡単にすることができる。
【0098】
[実施形態6]
図11は、濃度計測装置の他の実施形態の概略構成を示す模式図である。図11に示す濃度計測装置250は、計測セルユニット12と、プラズマ発生手段13と、レーザ光照射手段14と、レーザ強度検出手段252と、電流検出手段202と、解析装置22と、制御装置24と、を有する。ここで、濃度計測装置250は、レーザ強度検出手段252の構成を除いて、他の構成は濃度計測装置200と同様である。濃度計測装置250の構成のうち濃度計測装置200と同様の構成については説明を省略する。
【0099】
ここで、本実施形態の半導体レーザ制御装置54は、RF制御信号に対応した参照信号のRF制御参照信号をレーザ強度検出手段252の後述する第5位相敏感検出器264にも送る。また、本実施形態の半導体レーザ制御装置54は、レーザ制御信号に対応した参照信号の第2レーザ制御参照信号をレーザ強度検出手段252の後述する第4位相敏感検出器262にも送る。
【0100】
レーザ強度検出手段252は、受光装置60と、第4位相敏感検出器262と、第5位相敏感検出器264と、を有する。受光装置60は、上述した濃度検出装置10の受光装置60と同様の構成であるので、説明を省略する。受光装置60は、検出した信号を第4位相敏感検出器262に送る。
【0101】
第4位相敏感検出器262は、参照信号を用い、処理対象の信号から参照信号の位相に対応する位相関係を備える成分を抽出する機器である。第4位相敏感検出器262は、半導体レーザ制御装置54から送られた第2レーザ制御参照信号(10kHzの方形波)を参照信号として、受光装置60から送られた信号から第2レーザ制御参照信号の位相に対応して変化する成分(同一の周波数で変化する成分)を抽出する。第4位相敏感検出器262は、参照信号である10kHzの方形波の第2レーザ制御参照信号に基づいて一波長において1つの位相の成分を検出するいわゆる1f検波で成分を抽出する。第4位相敏感検出器262は、半導体レーザ制御装置54から送られた第2レーザ制御参照信号を参照信号として、受光装置60から送られた信号に対してロックイン処理を行う、つまり、処理対象の信号に含まれる参照信号の周波数の成分以外の成分を低減させる処理を行ういわゆるロックイン処理を行うロックインアンプを用いてもよい。
【0102】
第5位相敏感検出器264は、参照信号を用い、処理対象の信号から参照信号の位相に対応する位相関係を備える成分を抽出する機器である。第5位相敏感検出器264は、RF制御装置48から送られたRF制御参照信号を参照信号として、第4位相敏感検出器262から送られた電流値信号(第4位相敏感検出器262で特定の成分を抽出した信号)から、RF制御参照信号の位相に対応する成分を抽出する。第5位相敏感検出器264は、参照信号である方形波のRF制御参照信号に基づいて一波長において1つの位相の成分を検出するいわゆる1f検波で成分を抽出する。第5位相敏感検出器264は、検出した信号を解析装置22に送る。
【0103】
なお、レーザ強度検出手段252は、上述した電流検出手段20と同様に、複数の位相敏感検出器を用いる場合、参照信号の周波数が高い方の位相敏感検出器での処理を先に実行するため、第2レーザ制御参照信号を参照信号として信号を処理する第4位相敏感検出器262による処理を行った後、第5位相敏感検出器264による処理を行う。
【0104】
濃度計測装置250は、レーザ強度検出手段252の受光装置60を処理する信号処理装置として、電流検出手段202と同様に位相敏感検出器を用いることができる。このように、位相敏感検出器を用いて、各変調成分に対応する成分を抽出することで、ノイズによる影響をより適切に除去することができ、レーザ光の強度を高い精度で検出することができる。レーザ光の強度を高い精度で検出できることで、解析装置で実行する補正処理の精度を向上させることができ、計測精度をより向上させることができる。
【0105】
[実施形態7]
図12は、濃度計測装置の他の実施形態の概略構成を示す模式図である。図13は、半導体レーザ制御装置で生成されるレーザ光の発振信号の一例を示す波形図である。図12に示す濃度計測装置300は、計測セルユニット12と、プラズマ発生手段13と、レーザ光照射手段14と、レーザ強度検出手段302と、電流検出手段304と、解析装置22と、制御装置24と、を有する。ここで、濃度計測装置300は、レーザ強度検出手段302と、電流検出手段304の構成を除いて、他の構成は濃度計測装置250と同様である。濃度計測装置300の構成のうち濃度計測装置250と同様の構成については説明を省略する。
【0106】
ここで、本実施形態の半導体レーザ制御装置54は、レーザ制御信号として図13に示す波形の信号を出力する。図13に示すグラフは、縦軸をレーザ光の出力(波形)の指数とし、横軸を時間とする。縦軸の波長(出力)の指数は、模式的な数値である。本実施形態の出力値=0は、基準となる波長(プラズマによって励起された測定対象物質の励起波長)である。出力値=1、−1は、プラズマによって励起された測定対象物質の励起波長から一定波長離れた波長である。本実施形態の半導体レーザ制御装置54は、図13に示すように一波長392がsin波となり、当該一波長392が周波数10kHzの周期で繰り返し、一波長396がsin波となり、当該一波長396が周波数200kHzの周期で繰り返す信号を重畳した信号をレーザ制御信号として出力する。なお、一波長396の振幅は、出力値=−1と出力値=1との間隔よりも短い出力の変化であり、当該変化は、出力するレーザの波長が所定の波長幅で正弦波の波形となるように時間変化させることで生じる出力の変化である。これにより、半導体レーザ発振装置50は、出力するレーザ光の波長が、所定の波長幅で正弦波の波形となるように周波数200kHzの周期で時間変化し、さらに、周波数10kHzで周波数200kHzの変調の波長幅よりも大きい波長幅で時間変化する。つまり、半導体レーザ発振装置50は、2つの周波数で2重変調したレーザ光を照射する。
【0107】
本実施形態の半導体レーザ制御装置54は、レーザ制御信号に対応した参照信号として、第1レーザ制御参照信号と、第2レーザ制御参照信号と、を生成する。第1レーザ制御参照信号と第2レーザ制御参照信号とは、レーザ制御信号の変調周波数をそれぞれ抽出した信号である。第1レーザ制御参照信号は、上述した一波長396で変調する信号であり、200kHzで変調されるsin波である。第2レーザ制御参照信号は、上述した一波長392で変調する信号であり、10kHzで変調されるsin波である。半導体レーザ制御装置54は、第1レーザ制御参照信号を電流検出手段304の第1位相敏感検出器82に送り、第2レーザ制御参照信号を電流検出手段304の後述する第3位相敏感検出器312に送る。
【0108】
レーザ強度検出手段302は、受光装置60と、第5位相敏感検出器264と、を有する。受光装置60は、上述した濃度検出装置10の受光装置60と同様の構成であるので、説明を省略する。受光装置60は、検出した信号を第5位相敏感検出器264に送る。
【0109】
第5位相敏感検出器264は、参照信号を用い、処理対象の信号から参照信号の位相に対応する位相関係を備える成分を抽出する機器である。第5位相敏感検出器264は、RF制御装置48から送られたRF制御参照信号を参照信号として、受光装置60から送られた信号から、RF制御参照信号の位相に対応する成分を抽出する。第5位相敏感検出器264は、検出した信号を解析装置22に送る。レーザ強度検出手段302は、以上のように、第4位相敏感検出器262を備えない点を除いて、レーザ強度検出手段252と同様の構成である。
【0110】
電流検出手段304は、電流検出部80と、第1位相敏感検出器82と、第2位相敏感検出器84と、第3位相敏感検出器312と、を有する。電流検出部80と、第1位相敏感検出器82と、第2位相敏感検出器84とは、上述した濃度検出装置250の電流検出部80と同様の構成であるので、詳細な説明を省略する。電流検出部80は、検出した電流値信号を第1位相敏感検出器82に送る。
【0111】
第1位相敏感検出器82は、半導体レーザ制御装置54から送られた第1レーザ制御参照信号(200kHzのsin波)を参照信号として、電流検出部80から送られた電流値信号から、レーザ制御参照信号の位相に対応する成分を抽出する。
【0112】
第3位相敏感検出器312は、参照信号を用い、処理対象の信号から参照信号の位相に対応する位相関係を備える成分を抽出する機器である。第3位相敏感検出器312は、半導体レーザ制御装置54から送られた第2レーザ制御参照信号(10kHzのsin波)を参照信号として、第1位相敏感検出器82から送られた電流値信号(第1位相敏感検出器82で特定の成分を抽出した信号)から第2レーザ制御参照信号の位相に対応して変化する成分(同一の周波数で変化する成分)を抽出する。第3位相敏感検出器312は、参照信号である10kHzのsin波の第2レーザ制御参照信号に基づいて一波長において2つの位相の成分を検出するいわゆる2f検波で成分を抽出する。第3位相敏感検出器312は、検出した信号を第2位相敏感検出器84に送る。第3位相敏感検出器312は、半導体レーザ制御装置54から送られた第2レーザ制御参照信号を参照信号として、第1位相敏感検出器82から送られた電流値信号に対してロックイン処理を行う、つまり、処理対象の信号に含まれる参照信号の周波数の成分以外の成分を低減させる処理を行ういわゆるロックイン処理を行うロックインアンプを用いてもよい。
【0113】
第2位相敏感検出器84は、RF制御装置48から送られたRF制御参照信号を参照信号として、第3位相敏感検出器312から送られた電流値信号から、RF制御参照信号の位相に対応する成分を抽出する。第2位相敏感検出器84は、検出した信号を解析装置22に送る。
【0114】
なお、電流検出手段304は、上述した電流検出手段20と同様に、参照信号の周波数が高い方の位相敏感検出器での処理を先に実行するため、第1位相敏感検出器82による処理を行った後、第3位相敏感検出器312による処理を行い、さらに、第2位相敏感検出器84による処理を行う。
【0115】
濃度計測装置300は、レーザ光を制御する制御信号を図13に示す波形とすることで、10kHzのsin波でレーザ光の波長を変調し、200kHzのsin波でレーザ光の波長をさらに短い波長幅で変調することができる。これにより、濃度計測装置300は、励起波長を中心として波長をより細かく変調することができ、レーザ光の変調に応じて変化するプラズマの状態をより細かく検出することができる。これにより、濃度の計測精度をより高くすることができる。
【0116】
[実施形態8]
図14は、濃度計測装置の他の実施形態の概略構成を示す模式図である。図15は、半導体レーザ制御装置で生成されるレーザ光の発振信号の一例を示す波形図である。図16は、図15に示すレーザ光の発振信号の一部を拡大して示す波形図である。図14に示す濃度計測装置400は、計測セルユニット12と、プラズマ発生手段13と、レーザ光照射手段14と、レーザ強度検出手段402と、電流検出手段404と、解析装置22と、制御装置24と、を有する。ここで、濃度計測装置400は、レーザ強度検出手段402と、電流検出手段404の構成を除いて、他の構成は濃度計測装置250と同様である。濃度計測装置400の構成のうち濃度計測装置250と同様の構成については説明を省略する。
【0117】
ここで、本実施形態の半導体レーザ制御装置54は、レーザ制御信号として図15および図16に示す波形の信号を出力する。図15および図16に示すグラフは、それぞれ縦軸をレーザ光の出力(波形)の指数とし、横軸を時間とする。縦軸の波長(出力)の指数は、模式的な数値である。本実施形態の出力値=0は、出力0でありレーザ光を出力しない状態である。また、出力値=1は、基準となる波長(プラズマによって励起された測定対象物質の励起波長)である。本実施形態の半導体レーザ制御装置54は、図15および図16に示すように一波長492が出力値=0と出力値=1とで交互に切り換る方形波であり、当該一波長492が周波数10kHzの周期で繰り返す信号に、一波長496がsin波となり、当該一波長496が周波数200kHzの周期で繰り返す信号を重畳し、さらに、一波長498がsin波となり、当該一波長498が周波数4MHzの周期で繰り返す信号を重畳した信号をレーザ制御信号として出力する。なお、一波長496の振幅は、出力値=0と出力値=1との間隔よりも短い出力の変化であり、当該変化は、出力するレーザの波長が所定の波長幅で正弦波の波形となるように時間変化させることで生じる出力の変化である。また、一波長498の振幅は、一波長496の振幅(波長幅)よりも短い振幅(波長幅)の出力の変化であり、当該変化は、出力するレーザの波長が所定の波長幅で正弦波の波形となるように時間変化させることで生じる出力の変化である。これにより、半導体レーザ発振装置50は、出力するレーザ光の波長が、所定の波長幅で正弦波の波形となるように周波数4MHzの周期で時間変化し、所定の波長幅で正弦波の波形となるように周波数200kHzの周期で時間変化し、さらに、周波数10kHzでレーザ光が出力される状態とレーザ光が出力されない状態とが切り換えられる。なお、図15に示す波形では、出力値=0の場合も、出力値=1の場合と同様に200kHzおよび4MHzで信号が時間変化するが、装置の設定により出力値=0の近傍で信号の出力が変化している状態では、レーザ光を出力しないようにすることができる。つまり、半導体レーザ発振装置50は、2つの周波数で2重変調し、さらにON/OFFが切り換えられるレーザ光を照射する。
【0118】
本実施形態の半導体レーザ制御装置54は、レーザ制御信号に対応した参照信号として、第1レーザ制御参照信号と、第2レーザ制御参照信号と、第3レーザ制御参照信号と、を生成する。第1レーザ制御参照信号と第2レーザ制御参照信号と第3レーザ制御参照信号とは、レーザ制御信号の変調周波数をそれぞれ抽出した信号である。第1レーザ制御参照信号は、上述した一波長496で変調する信号であり、200kHzで変調されるsin波である。第2レーザ制御参照信号は、上述した一波長492で変調する信号であり、10kHzで変調されるsin波である。第3レーザ制御参照信号は、上述した一波長498で変調する信号であり、4kHzで変調されるsin波である。半導体レーザ制御装置54は、第1レーザ制御参照信号を電流検出手段404の第1位相敏感検出器422に送り、第2レーザ制御参照信号を電流検出手段404の後述する第3位相敏感検出器426およびレーザ強度検出手段402の第4位相敏感検出器412に送り、第3レーザ制御参照信号を電流検出手段404の後述する第6位相敏感検出器428に送る。
【0119】
レーザ強度検出手段402は、受光装置60と、第4位相敏感検出器412と第5位相敏感検出器414と、を有する。受光装置60は、上述した濃度検出装置10の受光装置60と同様の構成であるので、説明を省略する。また、第4位相敏感検出器412と第5位相敏感検出器414とは、上述した濃度計測装置250の第4位相敏感検出器262と第5位相敏感検出器264と同様の構成である。
【0120】
電流検出手段404は、電流検出部80と、第1位相敏感検出器422と、第2位相敏感検出器424と、第3位相敏感検出器426と、第6位相敏感検出器428と、を有する。電流検出部80は、上述した濃度検出装置250の電流検出部80と同様の構成であるので、詳細な説明を省略する。また、第1位相敏感検出器422と第2位相敏感検出器424と第3位相敏感検出器426とは、上述した第1位相敏感検出器82と第2位相敏感検出器84と第3位相敏感検出器212と同様の構成である。電流検出部80は、検出した電流値信号を第6位相敏感検出器428に送る。
【0121】
第6位相敏感検出器428は、参照信号を用い、処理対象の信号から参照信号の位相に対応する位相関係を備える成分を抽出する機器である。第6位相敏感検出器428は、半導体レーザ制御装置54から送られた第3レーザ制御参照信号(4MHzのsin波)を参照信号として、電流検出部80から送られた電流値信号から第3レーザ制御参照信号の位相に対応して変化する成分(同一の周波数で変化する成分)を抽出する。第6位相敏感検出器428は、参照信号である4MHzのsin波の第3レーザ制御参照信号に基づいて一波長において同一波長となる2つの位相の成分を検出するいわゆる2f検波で成分を抽出する。第6位相敏感検出器428は、検出した信号を第1位相敏感検出器422に送る。第6位相敏感検出器428は、半導体レーザ制御装置54から送られたレーザ制御参照信号を参照信号として、電流検出部80から送られた電流値信号に対してロックイン処理を行う、つまり、処理対象の信号に含まれる参照信号の周波数の成分以外の成分を低減させる処理を行ういわゆるロックイン処理を行うロックインアンプを用いてもよい。
【0122】
濃度計測装置400は、レーザ光を制御する制御信号を図15、16に示す波形とすることで、4MHzのsin波でレーザ光の波長を変調し、200kHzのsin波でレーザ光の波長をさらに短い波長幅で変調することができ、さらに、10kHzでレーザ光のON/OFFを切り換えることができる。これにより、上述した各種実施形態、特に濃度計測装置250と濃度計測装置300の効果を組み合わせた効果を得ることができる。
【0123】
なお、上記実施形態では、いずれもプラズマ発生手段でのプラズマ励起方法として、高周波励起法を採用しているがこれに限定されない。プラズマ発生手段としては、レーザ照射による検出に影響を与えない種々のプラズマ励起方法を用いることができ、例えば、並行平板や、誘導結合(ICP)等のプラズマ励起方法を採用することができる。
【0124】
また、濃度計測装置は、計測精度をより高くできるため、上記実施形態のように、レーザ光の強度を検出し、レーザ強度による補正を行うことが好ましいがこれに限定されない。濃度計測装置は、レーザ強度による補正を行わなくてもよいし、レーザ光の強度の検出を行わず設定値を用いて補正を行ってもよい。
【0125】
また、上記実施形態では、いずれも流通ガスに含まれる測定対象物質の濃度を計測したが、本発明はこれに限定されず、測定対象物質の量を算出することもできる。
【符号の説明】
【0126】
8 計測対象配管
10、100、150、200、250、300、400 濃度計測装置
12、102 計測セルユニット
13 プラズマ発生手段
14 レーザ光照射手段
16、103、152、252、302、402 レーザ強度検出手段
20、202、304、404 電流検出手段
22 解析装置
24 制御装置
32 計測セル
34 流入管
36 排出管
38、40、104 窓
42 ポンプ
44 RF発振器
46、47 銅リング
48 RF制御装置
50 半導体レーザ発振装置
52 光ファイバ
54 半導体レーザ制御装置
60 受光装置
62 信号処理装置
80 電流検出部
82、422 第1位相敏感検出器
84、424 第2位相敏感検出器
106 透明部
108 遮光部
124、168 ローパスフィルタ
162 第1受光装置
164 第2受光装置
166 差分検出器
212、312、426 第3位相敏感検出器
262、412 第4位相敏感検出器
264、414 第5位相敏感検出器
428 第6位相敏感検出器
G 流通ガス
L レーザ光
P プラズマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流通ガスに含まれる測定対象物質を計測する物質計測装置であって、
前記流通ガスが流れる計測セルユニットと、
前記計測セルユニットの前記計測領域にプラズマを発生させるプラズマ発生手段と、
前記計測セルユニットの前記計測領域に前記プラズマによって励起された前記測定対象物質の励起波長を含むレーザ光を照射するレーザ光照射手段と、
前記計測領域で発生する前記プラズマに起因する電気的特性を電流で検出する電流検出手段と、
前記電流検出手段で検出した電流値に基づいて流通ガスに含まれる前記測定対象物質を検出する解析装置と、
前記プラズマ発生手段、前記レーザ照射手段および解析装置の動作を制御する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、前記レーザ照射手段から出力するレーザ光の波長、前記レーザ照射手段から出力するレーザ光の出力強度および前記プラズマ発生手段で発生させるプラズマの強度の少なくとも1つを変化させ、
前記解析装置は、前記計測領域に設定した強度の前記プラズマが発生しており、かつ、前記プラズマによって励起された前記測定対象物質の励起波長のレーザ光が照射されている状態で前記電流検出手段が検出した電流値と、それ以外の状態で前記電流検出手段が検出した電流値とを比較して、流通ガスに含まれる前記測定対象物質を検出することを特徴とする物質計測装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記プラズマ発生手段により、前記計測領域で前記プラズマを発生させる状態と、前記計測領域で前記プラズマを発生させない状態とを周期的に切り換えること特徴とする請求項1に記載の物質計測装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記プラズマ発生手段により、前記計測領域で発生させる前記プラズマの強度を第1強度と第2強度とに周期的に切り換えさせること特徴とする請求項1に記載の物質計測装置。
【請求項4】
前記電流検出手段は、前記プラズマ発生手段が前記プラズマを周期的に変化させる変調信号を参照信号として、前記計測領域で発生する電流の検出値から前記参照信号の位相に対応する位相関係を備える成分を抽出する位相敏感検出器を有し、
前記位相敏感検出器で抽出した検出値に基づいて、前記電流検出手段で検出した電流値を検出することを特徴とする請求項2または3に記載の物質計測装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記レーザ照射手段により、出力するレーザ光の波長を前記プラズマによって励起された前記測定対象物質の励起波長を中心として設定した周波数幅で周期的に変調させることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の物質計測装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記レーザ照射手段により、出力するレーザ光の波長を前記プラズマによって励起された前記測定対象物質の励起波長を中心として設定した周波数幅で周期的に変調させ、さらに、前記測定対象物質の励起波長を中心として設定した周波数幅よりも短い周波数幅でかつ前記測定対象物質の励起波長を中心として設定した周波数幅で周期的に変調させる周波数よりも短い周波数で変調させることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の物質計測装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記レーザ照射手段により、レーザ光を出力する状態と、レーザ光を出力しない状態とを周期的に切り換えること特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の物質計測装置。
【請求項8】
前記レーザ照射手段が出力するレーザ光を周期的に変化させる変調信号を参照信号として、前記計測領域で発生する電流の検出値から前記参照信号の位相に対応する位相関係を備える成分を抽出する前記位相敏感検出器を、前記レーザ光を周期的に変化させる変調信号の周波数成分毎に有し、
抽出する周波数成分の周波数が大きい前記位相敏感検出器から順に前記計測領域で発生する電流の検出値に対して抽出処理を行い、抽出した検出値に基づいて、前記電流検出手段で検出した電流値を検出することを特徴とする請求項4から7のいずれか一項に記載の物質計測装置。
【請求項9】
前記計測領域を通過したレーザ光の強度を検出するレーザ強度検出手段を、さらに有し、
前記解析装置は、前記前記レーザ強度検出手段で検出したレーザ光強度に基づいて、前記電流検出手段で検出した電流値に含まれる前記レーザ光強度の影響を補正して測定対象物質を検出することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の物質計測装置。
【請求項10】
前記レーザ強度検出手段は、前記計測領域を通過したレーザ光を受光する第1受光装置と、前記計測セルユニットの前記計測領域の周囲を通過する背景光を受光する第2受光装置と、
前記第1受光装置で検出した光の検出値から前記第2受光装置で受光した光の検出値を減算する差分検出器と、
前記差分検出器で検出した検出値からレーザ光の検出成分を抽出する信号処理装置と、を有し、
前記差分検出器で検出した値に基づいてレーザ光の強度を検出することを特徴とする請求項9に記載の物質計測装置。
【請求項11】
前記レーザ強度検出手段は、前記計測領域を通過したレーザ光を受光する受光装置と、
前記受光装置で検出した検出値からレーザ光の検出成分を抽出する信号処理装置と、を有することを特徴とする請求項9に記載の物質計測装置。
【請求項12】
前記計測セルユニットは、前記計測領域と前記受光装置の間に配置されている窓部を有し、
前記窓部は、前記レーザ光が通過する領域の周りが光を透過しない部材で形成されていることを特徴とする請求項11に記載の物質計測装置。
【請求項13】
前記信号処理装置は、前記レーザ照射手段から出力するレーザ光の波長、前記レーザ照射手段から出力するレーザ光の出力強度および前記プラズマ発生手段で発生させるプラズマの強度の少なくとも1つを変調させる場合の全ての変調周波数の成分を低減するローパスフィルタであることを特徴とする請求項10から12のいずれか一項に記載の物質計測装置。
【請求項14】
前記解析装置は、前記流通ガスに含まれる前記測定対象物質の濃度を検出することを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の物質計測装置。
【請求項15】
前記測定対象物質は、重金属であることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の物質計測装置。
【請求項16】
前記測定対象物質は、水銀、鉛、クロム、コバルト、カドミウム、砒素の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載の物質計測装置。
【請求項17】
流通ガスに含まれる測定対象物質を計測する物質計測方法であって、
計測セルユニットに前記流通ガスを流すステップと、
前記計測セルユニットの計測領域にプラズマを発生させ、前記計測セルユニットの前記計測領域に前記プラズマによって励起された前記測定対象物質の励起波長を含むレーザ光を照射する第1計測ステップと、
前記第1計測ステップで前記計測領域に発生する前記プラズマに起因する電気的特性を電流で検出する第1電流計測ステップと、
前記第1計測ステップで出力するレーザ光の波長、前記第1計測ステップで出力するレーザ光の出力強度および前記第1計測ステップで発生させるプラズマの強度の少なくとも1つを変化させる第2計測ステップと、
前記第2計測ステップで前記計測領域に発生するプラズマに起因する電気的特性を電流で検出する第2電流計測ステップと、
前記第1電流計測ステップで検出した検出値と、前記第2電流計測検出ステップで検出した電流値とを比較して、前記流通ガスに含まれる前記測定対象物質を検出する物質検出ステップと、を有することを特徴とする物質計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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