説明

特に建物を断熱するための水分適応性蒸気バリア、および蒸気バリアの製造方法

本発明は、特定的には建物の断熱を行うための水分適応性蒸気バリアに関する。蒸気バリアは、45%から58%の湿度において2mから5mの拡散等価空気層厚さのSd値の範囲内の横ばい状態のSd値曲線を有する材料から製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段部分に係る水分適応性蒸気バリア、および蒸気バリアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水分適応性蒸気バリアには、蒸気バリアの水蒸気拡散抵抗が湿度に応じて変化するという特徴がある。このため、蒸気バリア周辺の湿度が高まると、水蒸気拡散抵抗が低下する。水蒸気拡散抵抗は、通常はDIN EN ISO 12572:2001に準じて測定される。
【0003】
このタイプの蒸気バリアは、主に建物に気密性をもたらすために使用される。このため、蒸気バリアは主に建物の断熱システムと組み合わせられる。建物の断熱、特に屋根の断熱のために、通常は拡散開放型下張材がタイル屋根の下に使用される。その下には、天然ウールからなる断熱層、および最終的に蒸気バリアが設けられる。その下には、上張り材が設けられる。蒸気バリアを使用する目的は、主に2つある。一方では、冷たい外気が建物の内部に入り込むことを防止し、かつ温かい室内の空気が建物の外に出ていくことを防止するために、屋根の気密性を高めなければならない。これにより、熱エネルギーの損失と、建物に被害を与え得る対流による水分の取り込みとを防止する。他方では、蒸気バリアは、建物の構造内への不所望な水分の取り込みを防止するために、水蒸気の拡散に対する特定のバリア効果を有さなければならない。
【0004】
通常はフォイルとして設けられる、いわゆる水分適応性蒸気バリアを使用することによって、冬場の低湿度な状態において蒸気バリアが実質的に閉じるというこのタイプのフォイルの水分適応特性を利用し、冬の間の水分の入り込みが防止される。熱放射が強い夏場であって、冬場よりも湿度の高い状態において、水分は、例えば屋根などの木材構造から抜け出る。蒸気バリアフォイルは、蒸気バリア周辺の湿度が比較的高くなると反応し、水蒸気拡散抵抗の低下によって水蒸気バリアが言わば開いた状態となる。このため、乾燥した状態が得られる。
【0005】
ポリアミドは、通常は水分適応性蒸気バリアフォイルの材料として使用される(ドイツ特許第19514420号C1を参照)。このフォイルにおいて、水蒸気拡散抵抗は、平均周囲湿度の上昇に伴って低下する。このため、蒸気バリア周辺の空気の平均周囲湿度が30%から50%の場合には、蒸気バリアが2mから5mの拡散等価空気層厚さの水蒸気拡散抵抗(S値)を有し、周囲湿度が60%から80%の範囲内の場合には、1mより小さい水蒸気拡散抵抗(S値)を有するように、この既知のフォイル蒸気バリアの水分適応特性が調整される。この結果として、通常は乾燥した状態であって、蒸気バリア周辺の空気の相対湿度が実質的に30%から50%の範囲内となる冬の時期において、比較的高い水蒸気拡散抵抗がもたらされる結果として、蒸気バリアが閉じ、少量の水蒸気のみがフォイルを介して拡散されることから、このタイプの蒸気バリアはバリア効果を有する。これにより、かなりの湿気が建物の内部からフォイルを介して外に移動することが妨げられ、例えば、建物の屋根および/または壁の木材構造に入り込む。その後、湿気の凝結が起こり、最終的に腐食および白カビの発生を引き起こし得る。
【0006】
湿潤な状態は特に夏場の時期に多くなるが、湿気の拡散は、拡散抵抗の低下によって促される。その結果、湿気を木材構造から除去することができ、乾燥が促される。このため、木材構造への被害を防止することができる。
【0007】
多層構成と水分適応特性とを有するさらなる蒸気バリアフォイルが知られている(ドイツ実用新案第DE202004019654号U1、またはドイツ特許出願公開第DE10111319号A1)。この蒸気バリアフォイルは、相対周囲湿度が30%から50%の場合には、5m以上の拡散等価空気層厚さの水蒸気拡散抵抗Sを有し、相対周囲湿度が60%から80%の場合には、0.5mより小さい拡散等価空気層厚さの水蒸気拡散抵抗Sを有する。このタイプの既知の湿度適応性蒸気バリアフォイルにおいて、平均湿度または相対湿度に対するグラフ化された水蒸気拡散抵抗は、S字曲線となり、湿度が低い状態において水蒸気拡散抵抗値が高い入りS字アームから始まり、蒸気バリア周辺の湿度が高い状態において水蒸気拡散抵抗値が低い外方S字アームに向かう。
【0008】
湿気適応性蒸気バリアの湿度に対してグラフ化された拡散抵抗の曲線が、S=D×μの式によって調整できることは周知である。Dは蒸気バリアの厚さを表わし、μは蒸気バリアの材料依存パラメータを表わす。このため、蒸気バリアの水分適応特性は、厚さを調整することによって変化する。蒸気バリアフォイルの厚さが適宜に増加または減少されるが、S字曲線のパターンは変わらず、縦座標に沿ってS字曲線が移動するのみとなる。これにより、蒸気バリアの厚さを増加させると、冬場の乾燥状況下および夏場の湿潤状況下においてS値が増加し、結果として夏場の状況などの場合において乾燥特性が低下することによって、蒸気バリアの特性が劣化する。しかし、蒸気バリアフォイルの厚さの減少には限度があり、強度および安定性を理由に、厚さ範囲が通常は20μmから80μmに設定される。
【0009】
既知の蒸気バリアフォイルは、正常な状態においては良好に作用するが、これらの正常な状況とは、通常はオフィスなどにおいてもたらされる特定の乾燥した周囲状態や、住居用の建物などにおいてもたらされる正常な周囲状態であって、既知の蒸気バリアの特性は、湿気負荷が高い状態、特に寒い気候状態において、非常に問題がある。特に、大きなキッチンやカフェテリアなどの部屋だけでなく、多くの植物および/または水槽などが配置された住居用の部屋およびオフィス部屋においても、湿気負荷が高くなる。特に、新しい建物、およびモルタルやスクリードによって改築された古い建物においても水分負荷は高くなる。近代の建築材料および新しい建築方法により、このタイプの建築は、より寒い季節に行われることが多くなり、特に、このような正常な状態において蒸気バリアフォイルが閉じる乾燥値に周囲湿度が到達する時期である10月から3月にかけて行われる。水分負荷が発生した場合、特に、建物の測定が寒い季節に行われた場合、従来の蒸気バリアでは、蒸気バリアフォイルにおける所定の周囲湿度によって、フォイルが開く。このため、実質的に妨げることのできない蒸気バリアフォイルを介した木材構造への湿気の入り込みが起こる。これは、特定の程度においては非常に危機的であり、白カビの発生などによって木材構造に被害を与え得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、蒸気バリア、および蒸気バリアの製造方法を提供することであり、特に寒い季節に起こり得る上記の状態を考慮に入れ、この手段は高い水分負荷がかかる状況下において蒸気バリアフォイルを介して湿気が大幅に放出されることを実質的に防止する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、請求項1の特徴部分に含まれる方策によって実現し、本発明の有用な実施例は、従属請求項に含まれる特徴によって特徴付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明によれば、好ましくはフォイルとして設けられる蒸気バリアは、3つの部分の湿度プロファイルを有する材料からなる。すなわち、平均相対湿度が75%、好ましくは70%より高く、1mより小さい、好ましくは0.8mより小さい拡散等価空気層厚さのS値より大きい場合、および平均湿度が減少して45%から58%、好ましくは40%から58%の範囲内の場合、実質的に横ばい状態、または略横ばい状態のS値の曲線となる。この範囲を超えると、2mの下方S値と5mの上方S値を超えず、下方S値と上方S値との差は、この範囲において1mを超えない。湿度が20%から30%の範囲、好ましくは20%から35%の範囲までさらに下げられた場合、蒸気バリアは、横ばい状態の中間部分において、実上方S値より少なくとも0.5m高いS値を有する。
【0014】
このため、蒸気バリアフォイルは、75%より大きい平均湿度の範囲内においてはバリア効果が小さい。特に、75%の平均湿度は、構成上の物理的視点から必須である。これは、夏場において乾燥特性が高まることを意味する。これに加え、特に蒸気バリアフォイルは、特に大きなキッチンや食堂など、または、寒い季節での建築時において、所定量の湿気が湿気負荷の高い状況下で放出されながらも従来の蒸気バリアよりも水分の放出が減少するという基準を満たす。このため、このような状況において、木材構造などへの危機的な湿気の入り込みが防止される。湿気負荷が高い状況下において、蒸気バリアフォイルは、45%から58%、または40%から58%の範囲において湿度が増加するに伴って開くが、この水分範囲内におけるS値の変化は、従来の蒸気バリアフォイルよりも程度が小さい。このため、蒸気バリアフォイルのS値の変化を保持する特定の段階が上記の範囲内に設けられ、蒸気バリアフォイルのS値はこの範囲において徐々に変化する。この範囲においては、S値はほぼ一定または略一定の状態となる。好ましくは、45%から58%、好ましくは40%から58%の範囲内の湿度におけるS値の曲線は、実質的に横ばい状態の構成を有する。これは、この範囲におけるS値の変化が、湿気負荷の増加によって定められる長時間に渡って低く保持されることを意味する。このため、一方で蒸気バリアフォイルの特定の望ましい遮断効果が維持され、過剰な湿気の取り込みに関しても同様に、このタイプの湿気負荷の状況下における通常の蒸気バリアフォイルの場合のように、危機的な水分放出に至ることなく特定の湿度の拡散が可能である。
【0015】
従来の蒸気バリアフォイルのS値と湿度値とを示す典型的な図は、実質的にS字曲線で表され、本発明に係る蒸気バリアフォイルの曲線は二重のS字曲線であるのが好ましい。乾燥範囲におけるS字曲線の外方部分は、湿潤範囲のS字曲線の入り値と一致する。45%から58%、または40%から58%の湿度範囲において、曲線図はほぼ一定、または実質的に横ばい状態となる。これは、S値の変化が小さいことを意味する。本発明の有利な実施例において、曲線図は、実質的に横ばい状態の部分内において、45%の湿度にさしかかった時のS値と58%の湿度において曲線が出る際のS値との間の、最大で0.6m、好ましくは最大で0.4mの拡散等価空気層厚さの差に対応するS微分値の分だけ変化する。これは、蒸気バリアフォイルのS値がこの範囲内においては徐々に変化し、保持段階に到達し、蒸気バリアフォイルがほぼ遮断しながらも上記のパラメータ内において特定の水分放出を促進することを意味する。好ましくは、湿度を超えるSd値の横ばい状態の曲線図は、3mから5mの拡散等価空気層厚さの範囲内にある。
【0016】
本発明の有利な実施例によれば、蒸気バリアの水分適応性を定める材料は、単一の層に設けられる。この単一の層は、全体的に、互いの頂部に配置された複数層の蒸気バリアフォイルによって水分適応性が定められる従来の蒸気バリアフォイルの材料とは異なる材料からなる。
【0017】
値の図において横ばい状態の曲線、または45%から58%もしくは40%から58%の湿度範囲においてS値の変化が小さい蒸気の保持段階は、蒸気バリアの基材に添加剤を加えることによって得られる。添加量は、蒸気バリアフォイルの残りの材料に対して10重量%から20重量%、好ましくは15重量%から20重量%である。蒸気バリアフォイルの基材は、ポリアミドであるのが好ましい。改質ポリオレフィン、より特定的にはグラフトポリエチレン共重合体が好ましい添加剤として使用される。このようなグラフトポリエチレン共重合体は、様々な製造者によって提供される。DuPont社によってBynel(登録商標)のトレードネームで販売されるタイプは、特に適していることが実証されている。他の好ましい添加剤は、ポリエチレンポリアクリル酸共重合体であり、これもまた様々な製造者によって提供される。DuPont社によってSurlyn(登録商標)のトレードネームで販売されるタイプも、特に適していることが実証されている。
【0018】
蒸気バリアフォイルの水分適応性の大部分を担う層は、粒状形態で付与されるポリアミドの化合物と、粒状混合物を融解させることによって粒状形態で付与される添加剤とを化学的に混合することによって実質的にもたらされる均質層構造と、によって特徴付けられる。粒状物は、ポリアミドと添加剤とを含む融解物内で形成される。その後、蒸気バリアフォイルは、これらの材料から押し出される、または吹き込み法によってもたらされる。ナノ粒子の形態の添加剤を添加剤のベース粒状物内において付与されると有利である。
【0019】
本発明の一実施例によれば、蒸気バリアフォイルは、特に40μmから80μm、好ましくは50μmから70μmの厚さ範囲内で、上記の水分適応性を有して製造することができる。水分適応特性に対するこの一層蒸気バリアフォイルに、さらなる適切な層を加えることは、本発明の範囲に属する。これらの層は、フォイルを補強するため、または、用途に応じて蒸気バリアフォイルの他の特性に影響を与えるために設けられる。
【0020】
このタイプの蒸気バリアフォイルを製造するための有利な方法は、ポリアミドからなる粒状物と、粒状形態の添加剤、特にポリエチレンとに基づき、混合物が混合によって形成される点に特徴がある。粒状形態の原材料からなるこの混合物は、適切な混合比で押出機内で融解され、上記の基材から均質融液を得る目的で、例えばホモジナイザのような追加の添加剤が選択的に加えられる。混合された粒状物は、均質融液から製造される。混合された粒状物は、押し出し法または吹き込み法による独立した処理工程で処理され、本発明に係る単層蒸気バリアフォイルまたは単一フォイルが形成される。これによって製造された蒸気バリアフォイルは、実質的に均質な構造によって特徴付けられる。代わりに、基材は、直接的に適切な押出機においてさらに処理して単一フォイルを形成することができる。代替的な方法は、事前の調合を必要としないため、経済的な点において好ましいが、望ましい程度の融液の均質化を実際の製造環境において得ることは難しい。
【0021】
この方法によって製造される単一フォイルは、特にその機械的特性を向上させるために、追加の層を使用した既知のラミネート法によってもたらされる。追加層の層は、単一フォイルによって定められる本発明に係るフォイルの湿度適応特性に対して影響を及ぼさないのが好ましい。
【0022】
ポリアミドと添加剤との混合比は、望ましい適応湿度特性を考慮して調整される。このため、ポリアミド溶液に加えられる個別の添加剤に応じて、7%から25%の量の添加剤をポリアミド溶液に添加することが有利であり、本発明の望ましい適応湿度特性ならびにフォイルの製造性を得ることができることが実用試験で明らかとなった。添加剤の材料を10%から20%、特に14%から18%の範囲として添加剤混合を行うことが特に好ましく、15%から18%の範囲内で添加剤を混合することで、非常に良好な結果が得られる。添加剤の添加剤混合の上限は、20重量%から25重量%の範囲内である。本発明に係るフォイルの製造性に鑑み、25重量%の閾値は超えてはならず、フォイルの製造性は、上限の閾値を20%またはそれより低くすればするほど、より良好となる。
【0023】
続いて、本発明に係る4つの蒸気バリアフォイルのS値と、蒸気バリアフォイル周囲の平均湿度を表わす平均相対湿度とに関連付けられた曲線図を表わす単一の図面を参照して、本発明の好ましい実施例が記載される。
【0024】
曲線図K1、K2、K3、およびK4は、ポリアミドからなる単一の層を有する4つの蒸気バリアフォイルを示す。ここでは、添加剤Bynel(登録商標)4157を20重量%含み、40μm(K1:40μm/20%/B)の厚さを有するフォイル、Bynel(登録商標)添加剤の含有量が15重量%であり、70μm(K2:70μm/15%/B)の層厚さを有するフォイル、Surlyn(登録商標)1605添加剤の含有量が18重量%であり、60μm(K3:60μm/18%/S)の層厚さを有するフォイル、またはEVOH型H171Bの添加剤(製造者:EVALヨーロッパ)が15重量%であり、50μm(K4:50μm/15%/EVOH)の層厚さを有するフォイルが示される。
【0025】
製造性の簡易化に関連し、Bynel4157の上限は約22重量%であり、Surlyn1605は約20重量%であり、EVOH型171Bは約20重量%である。
【0026】
蒸気バリアの水分適応性は、それぞれが矩形フレームを規定する3つの部分によって明示的に定められる。75%の湿度から始まり、1mの拡散等価空気層厚さより小さいS値を有する矩形部分Iが定められる。45%から58%の湿度範囲において、2mから4.3mの拡散均等空気厚さの範囲内のS値が事前に定められ、これが部分IIを定める矩形となる。この部分IIにおいて、第2の矩形が定められ、この矩形は、実下方値と実上方値との間における最大で1mの拡散均等空気厚さの差を表わす。20%から30%の乾燥した低湿度環境において、蒸気バリアフォイルのS値は、上方向に開いた斜線矩形部分IIIを定める領域IIにおける実上方値よりも下方値が少なくとも0.5mより大きいSd値範囲にある。
【0027】
曲線Kの湿度プロファイルは、横座標に分布する測定点によって定められる。測定は、DIN EN ISO 12572:2001に準じて行われる。幾度かの実験によって明らかとなった事は、移行部分における特定の測定点を正確に定めるために、蒸気バリアの両面に付与される湿度の勾配の調整は小さくとどめるべきである。これは、単一のS字曲線図を有する既知の水分適応性蒸気バリアにおいて平均湿度が約35%から65%で曲線図が急勾配となる場合、蒸気バリアの両面に付与される2つの湿度の間に小さな勾配が設けられるべきであり、この勾配から平均湿度が平均化によって定められることを意味する。勾配が大きすぎると、測定値が崩れる。この測定値の崩れは、S値が非常に小さくなることで表れる。通常、湿度は塩または水分によって事前に定められ、他方は制御可能な気候室の調整によって定められる。
【0028】
表1は、本発明の実施例K1、K2、K3、およびK4の湿度設定および測定値をまとめたものである。
【0029】
表1:S値の湿度環境およびmで示されるS
【0030】
【表1】

【0031】
曲線図K1、K2、K3、およびK4は、二重S字プロファイルによって定めることができる。部分IIの乾燥した湿度範囲における曲線移行部の外方アームから、より湿潤な部分のS字曲線の入りアームであって、部分IIにおいては、明らかにSd値の段階的減少が小さい。このため、特定の保持段階および横ばい状態の特性を有する準一定の図となり、この湿度範囲において、S値が徐々に変化する。これは、部分IIにおける蒸気バリアフォイルを開口させる傾向が減少することを意味する。二重S字図を確かなものとするために、14%から21%の低い平均湿度の追加的な測定点が実施例K4のために定められる。
【0032】
二重S字曲線は、以下の式によって数学的に定められる。
【0033】
【数1】

【0034】
パラメータA1/A2は、2つの特定的なS字曲線における最大および最小縦座標値の間の広がりを表わし、B1/B2は、移行部の広がりを付与し、これは、S字曲線の傾きを表わし、C1/C2はS字曲線の変曲点の位置を定め、Dは下限閾値を表わす。
【0035】
回帰のための最小二重平均法を使用して、以下が得られる。
【0036】
【数2】

【0037】
代入すると、A1からDまでの曲線パラメータを規定する7つの式が得られる。この連立方程式は、閉鎖解を有さない。
【0038】
【数3】

【0039】
この連立方程式は、閉鎖解を有さない。通常は、適切な開始値で始まる反復法によって演算される。3つの曲線K1、K2、およびK3に関し、以下の数値が「最良適合」として得られる。
【0040】
【表2】

【0041】
実施例から明らかなように、曲線Kの図は、確かに層厚さおよび添加剤の混入に影響される。上記のように、Bynel(登録商標)4157などのBynel(登録商標)、Surlyn(登録商標)1605などのSurlyn、またはH171BなどのEVOHを使用するのが好ましい。
【0042】
蒸気バリアフォイルK1およびK2は、約15%または20%のBynel(登録商標)4157と併せてポリアミドを含む粒状混合物から製造される。この粒状混合物は溶解され、この融液からポリアミドとBynel(登録商標)4157とを含む粒状物が形成される。この粒状物から、70μmまたは40μmの厚さを有する蒸気バリアフォイルが押出機における従来の押出法によって製造される。蒸気バリアフォイルK3の製造は、18%のSurlyn(登録商標)1605を加える類似の方法によって行われる。60μmの厚さを有する生成物が製造される。蒸気バリアフォイルK4は、スロットノズルが接続された押出機において15%のEVOH H171Bを加えたポリアミドの混合から製造される。50μmの生成物厚さがもたらされる。
【0043】
全ての実施例において、ポリアミド6、すなわちタイプB40L(製造者:BASF)が使用される。
【0044】
実用試験は、湿潤な状況下における本発明に係る蒸気バリアフォイルが45%から60%の臨界湿度範囲において望ましいバリア効果を新築または改築の際にもたらし、上記の範囲内で僅かに開くことを示し、これにより、長い期間、実質的に均一な湿気放出が蒸気バリアフォイルによって得られ、蒸気の放出によって木材構造は損害を受けない。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に建物の断熱のための水分適応性蒸気バリアであって、蒸気バリアは、拡散等価空気層厚さ(S値)で示される水蒸気拡散抵抗(S値)を含み、水蒸気拡散抵抗は、蒸気バリア周辺の湿度の減少に伴って増加し、75%、好ましくは70%以上の平均相対湿度から始まる範囲(I)における蒸気バリアは、1mより小さい、好ましくは0.8mより小さいSd値を有し、
45%から58%、好ましくは40%から58%の範囲(II)における平均湿度の蒸気バリアは、実質的に横ばい状態、または略横ばい状態のSd値のグラフ図を有し、この範囲を超えると、2mの下限Sd値は切り下げられず、5mの上限Sd値を超えず、上方および下方実Sd値の間の差は1mを超えず、
20%から30%、好ましくは20%から35%の範囲(III)の平均湿度に関しては、蒸気バリアは、横ばい状態部分の中間範囲における実Sd値の上限を少なくとも0.5だけ超えるSd値を有する、蒸気バリア。
【請求項2】
Sd値と湿度との曲線の横ばい状態の図は、3mから5mの拡散等価空気層厚さの範囲(II)内に設けられる、請求項1に記載の蒸気バリア。
【請求項3】
曲線の図は、最大で0.6mのS微分値だけ、好ましくは最大で0.4mの拡散等価空気層厚さだけ実質的に横ばい状態の範囲(II)において変化し、特に湿度の増加に伴って所定の減少率で減少する、請求項1または2に記載の蒸気バリア。
【請求項4】
75%以上、好ましくは70%以上の湿度における蒸気バリアのS値は、0.5mの拡散等価空気層厚さより低い、上記請求項のうちのいずれか1項に記載の蒸気バリア。
【請求項5】
蒸気バリアのS値と湿度との曲線は、実質的に二重S字曲線の形状を有し、横ばい状態の部分は、結合したS字曲線の移行部分に実質的に配置される、上記請求項のうちのいずれか1項に記載の蒸気バリア。
【請求項6】
蒸気バリアの湿度適応性を定める材料は、1つの層、つまりは単一の層に設けられる、上記請求項のうちのいずれか1項に記載の蒸気バリア。
【請求項7】
蒸気バリアの材料は、添加剤が加えられたポリアミドから形成される、請求項5に記載の蒸気バリア。
【請求項8】
層の材料における添加剤の割合は、7重量%から25重量%、好ましくは10重量%から20重量%、特に好ましくは14重量%から18重量%である、請求項7に記載の蒸気バリア。
【請求項9】
添加剤は、改質ポリオレフィン、特にグラフトポリエチレン重合体、好ましくはBynel、またはポリエチレンポリアクリル酸共重合体、好ましくはSurlyn(DuPont社の商標)からなる、請求項7または8に記載の蒸気バリア。
【請求項10】
実質的な均質層構造を形成するための層の材料は、ポリアミド粒状物と粒状形態で設けられる添加剤からなり、混合されたポリアミド粒状物および添加剤は、フォイル層を形成するために押し出される、請求項6から9のいずれか1項に記載の蒸気バリア。
【請求項11】
実質的な均質層構造を形成するための層の材料は、ポリアミド粒状物および粒状形態で設けられる添加剤からなり、混合して混合物とし、混合物を融解した後に、化学的に混合され、ポリアミドと添加剤とを含む粒状物が形成され、最終的にフォイル層に押し出しまたは吹き込みされる、請求項6から9のいずれか1項に記載の蒸気バリア。
【請求項12】
添加剤は、添加剤のベース粒状物内にナノ粒子の形態で設けられる、請求項10または11に記載の蒸気バリア。
【請求項13】
材料層は、40μmから80μmの厚さ、好ましくは50μmから70μmの厚さを有するフォイルから形成される、上記請求項のいずれか1項に記載の蒸気バリア。
【請求項14】
上記の請求項のいずれか1項に記載の湿度適応性蒸気バリアの製造方法であって、ポリアミドを含む粒状物は、特にポリエチレン重合体である添加物を含む粒状物と混合され、この混合物によって、蒸気バリアは押し出しまたは吹き込み法を介して形成される、方法。
【請求項15】
ポリアミドを含む粒状体は、特定的にはポリエチレン重合体である添加剤の粒状体と混合され、化学的混合のために溶解され、混合されたポリアミドと添加剤を含む粒状体は、融解物から形成され、蒸気バリアは押し出しまたは吹き込み法を介して粒状体から形成される、上記請求項のいずれか1項に記載の湿度適応性蒸気バリアの製造方法。
【請求項16】
添加剤は、ナノ粒子サイズの添加剤のベース粒状体に設けられる、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
蒸気バリアはポリアミドと添加剤とを含む均質混合構造を有するフォイルに形成される、請求項14または15に記載の方法。

【公表番号】特表2013−513741(P2013−513741A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542399(P2012−542399)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/007539
【国際公開番号】WO2011/069672
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(501085706)サン−ゴバン・イソベール (46)
【Fターム(参考)】