説明

特に歯垢付着防止のための、抗微生物性が付与された歯科材料

歯科材料が、無機粒子又は有機ポリマービーズに施与された少なくとも1種の抗微生物性作用物質を備え、当該物質は、前記粒子又は前記ポリマービーズに共有結合では結合されていない。これにより、歯垢の付着を防止する歯科材料が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗微生物性が付与された歯科材料、とりわけ歯垢付着防止用の前記歯科材料に関する。
【0002】
口の中に入れて継続的に存在し続けるポリマー製歯科材料、特にアクリレート/メタクリレートベースのものは、口腔衛生が不足すると、材質表面に歯垢が堆積する。
【0003】
歯垢は、様々な細菌及び酵母から構成され、この歯垢はタンパク質及び炭化水素によって、歯又は歯科材質のような表面に強固に固定される。そうするとこの最初の細菌層にさらなる細菌がたまり、これにより三次元的なコロニーが形成される。細菌が放出する特定の物質によって、この「菌膜」は、抗生剤に対してほぼ無敵になる。
【0004】
衛生的な観点の他に、歯垢は近年の研究によれば、激しい着色にもつながり、このため美観的な問題も引き起こす。
【0005】
従来技術
歯科材質での歯垢堆積を避けるため、様々な可能性が考慮される:殺菌剤の使用、例えばポリ(エチレングリコール)ベースのタンパク質拒絶性表面、又は細菌の材料への付着を困難にする、歯科材質の疎水性被覆である。
【0006】
第四級アンモニウム塩を、抗微生物性添加剤として用いることは、以前から公知である。よって例えば、官能基として第四級アンモニウム基を有するシランが、Microbeshield社から製造されており、フィルター、テキスタイル、及び包帯に抗細菌性を付与するために市販されている。GB 1433303 Aには、プラスチック用の充填粒子が記載されているが、当該粒子はシラン化されており、かつ第四級アンモニウム塩で被覆されたものである。このように処理された珪藻土又は熱分解法ケイ酸は、例えば木材被覆、封止材料、カテーテル、又はテキスタイル繊維で用いることが提案されている。
【0007】
さらに、カチオン性オリゴマーがベースの添加剤(Akacid(登録商標)、PoC社)、並びに銀含有添加剤(銀含有ガラス、塩、ゼオライト(US 6,436,422 B1))は、公知である。このような被覆をナノメーター範囲で充填材粒子(歯科材質に慣用のもの)に塗布すれば、咀嚼による栄養摂取時に、自然なプロセスに比較して、摩擦安定性が低い材料が生じる。このため、こうして作製された歯科用塗料又は穴埋め材料は、繰り返し塗布するか、又はタンパク質拒絶層としては通常用いられない。ミクロスケール又はナノスケールで金属の銀を用いる場合には、歯肉イミテーション、充填物、見かけ、若しくは人工歯用材料自体によって、自然な着色が保証されない。銀含有材料は使用される貴金属の粒径によって、黄色〜灰色っぽく着色される。
【0008】
JP 10025218 Aは、抗微生物性基含有ポリマー層で被覆された無機充填材を記載している。この層は、ホスホニウム基又は第四級アンモニウム基を有する適切な(メタ)アクリレートモノマーを重合させることにより得られる。
【0009】
DE 10 2005 042 078 A1によれば、歯科用充填体を、抗微生物性に作用する多糖類で被覆する。多糖類で被覆されたこのような充填体は、さらなるポリマーで包み込まれる(4p、段落0034)。多糖類のキトサンには、ポリマーへの重合導入を可能にするため、さらにC−C二重結合が1つ導入される(p4、段落0037)。これに応じてキトサンは、充填体に共有結合で結合される(p5、段落0047)。
【0010】
課題の設定
本発明の課題は、歯科材料の製品特性に否定的な影響を与えることなく、歯科材質への歯垢の付着を持続的に防止若しくは遅らせる方法を提供することである。
【0011】
ここでは、以下の中心的な要求が重要となり、これらのうち、複数が満たされるべきであった:
・バルク材料中、及び材料表面での作用物質の均質な分配が保証されるべきであった。つまり、点状の分布がないということである。
・材質は、作用物質放出後に、小孔や大孔を有してはならない。このことは、美観的な理由からも重要である。なぜならば、あらゆる隙間の形成は、歯垢の新たな堆積の出発点だからである。
・表面での作用物質の不活性化が、困難になっているべきである。このことは、バルク材料から作用物質が事後的に拡散することにより、適切に達成される。
・典型的な口腔病原菌に対して、作用範囲が幅広いこと(グラム陽性細菌にも、グラム陰性細菌に対しても殺細菌性)。
・場合により、さらなる殺真菌特性。
・作用物質は、徐放性であるべきである。
・作用物質は、着色も香りもないのが望ましい。
・作用物質は、抗微生物性がもたらされるが、毒性又は刺激/知覚可能な作用が現れないほどの放出速度を有するのが望ましい。
・作用物質は、生成物の重合を妨害しないべきであり、材質特性に否定的な影響を与えてはならず、相分離(可塑化作用)を起こしてはならない。
・作用物質は、典型的な口腔病原菌に対して、ほとんど抵抗させない。
・成層及び硬化反応の間に、モノマー、充填材、開始剤、安定剤、着色剤との化学反応を起こしてはならない。
【0012】
上記課題は、請求項1に記載の構成によって解決される。さらなる実施態様は、請求項2〜14から読み取ることができる。
【0013】
好ましい作用物質は、以下のものである:
出典:Majic-Todt, Ante, Dissertation 2003,「Pruefung von Lavasept(R) auf antiseptische Aktivitaet und Plaquehemmung」
【表1】

【0014】
本発明の構成は、充填複合材、美観用複合材、義歯材質、人工歯、成形材料、保護塗料、穴埋め材料、象牙質接合剤といったものの中で、又はこれらものとして使用するのに、また獣医学における蹄材料に適している。
【0015】
本発明による抗細菌性が付与された材料を製造するためには、目的に応じて、作用物質を適切な溶剤に溶解させ、この溶液を無機充填物質若しくは有機ポリマーと混合し、それから残分が無いように溶剤を除去する。
【0016】
本発明による歯科用複合材では特に、メタクリレート及びアクリレートの群から選択される、ラジカル重合可能なモノマーを使用する:
歯科材料に適切な粘稠性樹脂/モノマーとして知られているのは、ポリウレタンジメタクリレート(PUDMA)、ジウレタンジメタクリレート(DUDMA)、及び/又はポリカーボネートジメタクリレート(PCDMA、2部のヒドロキシアルキルメタクリレートと、1部のビス(クロロホルメート)とから得られる縮合生成物、例えばUS 5,276,068及び 5,444,104に記載のもの)、さらにエトキシ化されたビスフェノールAジメタクリレート(EBPDMA、例えば6,013,694に記載のもの)、及び特にビス−GMA(Bowen Monomer)である。
【0017】
希釈モノマーは、粘稠性低下のため、また濡れ性に影響を与えるために使用される。適切な例は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート;エチレングリコール単位含有(メタ)アクリレート、例えばエチレングリコールメタクリレート、ジエチレングリコールメアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、及びテトラエチレングリコールジメタクリレート;ジオール−ジメタクリレート、例えば1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、及び1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、なかでも、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート(HDDMA)が特に適切である。さらなる適切なモノマーは、例えばポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート;グリセロールジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート;ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート;フェニルグリシジルエーテルの(メタ)アクリレートである。トリ(エチレングリコール)ジメタクリレート(TEGDMA)が、特に好ましい。
【0018】
希釈モノマーの使用量、及び粘稠性樹脂の使用量は、広い範囲で変動し、歯科材料に対して1〜70質量%で変わり得る。
【0019】
架橋剤は例えば、最終強度を向上させるために添加する:
二官能性(メタ)アクリレート架橋剤としてはとりわけ、架橋性の二官能性若しくは多官能性アクリレート又はメタクリレート、例えばビスフェノールA−ジ(メタ)アクリレート、ビス−GMA(メタクリル酸と、ビスフェノールA−ジグリシジルエーテルとから得られる付加生成物)、UDMA(2−ヒドロキシエチルメタクリレートと、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート)、ジ−、トリ−、若しくはテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリットテトラ(メタ)アクリレート、並びに1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、又は1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレートである。
【0020】
また、収縮性が低い公知のラジカル開環重合可能なモノマー、例えば単官能性若しくは多官能性のビニルシクロプロパン又は二環式のシクロプロパンアクリレート誘導体(DE 196 16 183 C2若しくはEP 03 022 855参照)、又は環式のアリルスルフィド(US 6,043,361又はUS 6,344,556参照)を添加混合するのが有利なことがあり、これらはさらに、上述のジ(メタ)アクリレート架橋剤との組み合わせでも使用できる。開環重合可能なモノマーとして好ましいのは、ビニルシクロプロパン、例えば1,1−ジ(エトキシカルボニル)−2−ビニルシクロプロパン若しくは1,1−ジ(メトキシカルボニル)−2−ビニルシクロプロパン、又は、1−エトキシカルボニル−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸若しくは1−メトキシカルボニル−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸と、エチレングリコール、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,4−シクロヘキサンジオール、又はレゾルシンとのエステルである。好ましい二環式シクロプロパン誘導体は、2−(ビシクロ[3.1.0]ヘキシ−1−イル)アクリル酸メチルエステル若しくはそのエチルエステル、又はこれらの3位での置換生成物、例えば(3,3−ビス(エトキシカルボニル)ビシクロ[3.1.0]ヘキシ−1−イル)アクリル酸メチルエステル、若しくはそのエチルエステルである。好ましい環式アリルスルフィドはとりわけ、2−(ヒドロキシメチル)−6−メチレン−1,4−ジチエパン又は7−ヒドロキシ−3−メチレン−1,5−ジチアシクロオクタンと、2,2,4−トリメチルヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート又は不斉ヘキサメチレンジイソシアネート三量体のDesmodur(登録商標)VP IS 2294(Bayer AG)との付加生成物である。
【0021】
適切なのはまた、例えばDE102007035734A1に記載されているような、一般式(I)に相応するカチオン重合可能なカリックスアレーンである。
【0022】
収縮が少ないカチオン性開環重合可能なモノマーは例えば、グリシジルエーテル、又は脂環式エポキシド、環式ケテンアセタール、スピロオルトカーボネート、オキセタン、又は二環式オルトエステルである。
【0023】
その例は、2−メチレン−1,4,6−トリオキサスピロ[2.2]ノナン、3,9−ジメチレン−1,5,7,11−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2−メチレン−1,3−ジオキセパン、2−フェニル−4−メチレン−1,3−ジオキソラン、ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテル、3,4−エポキシ−シクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジオキシド、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,10−デカンジイルービス−(オキシメチレン)−ビス−(3−エチルオキセタン)、又は3,3−(4−キシリレンジオキシ)−ビス−(メチル−3−エチルオキセタン)、若しくはEP 0 879 257 B1で挙げられたさらなるエポキシドである。カチオン重合可能なマトリックス系として適しているのはまた、ケイ酸ポリ縮合体であって、例えばシランの加水分解縮合によりカチオン重合可能な基、好ましくは例えばエポキシド基、オキセタン基、若しくはスピロオルトエステル基を有するものである。このようなケイ酸ポリ縮合体は例えば、DE 41 33 494 C2又はUS 6,096,903に記載されている。
【0024】
ラジカル重合可能なモノマーをベースとする本発明による歯科材料は、公知のラジカル開始剤と、重合させることができる(Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, Vol. 13, Wiley-Intersci. Pub., New York etc. 1988, 754pp参照)。
【0025】
UV線又は可視波長に特に適した光開始剤(J. P. Fouassier, J. F. Rabek (Hrsg.), Radiation Curing in Polymer Science and Technology, Vol. II, Elsevier Applied Science, London and New York 1993参照)、例えばベンゾインエーテル、ジアルキルベンジルケタール、ジアルコキシアセトフェノン、アシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、α−ジケトン、例えば9,10−フェナントレンキノン、ジアセチル、フリル、アニシル、4,4’−ジクロロベンジル、及び4,4’−ジアルコキシベンジル、並びにカンファーキノンが適している。
【0026】
さらにまた、アゾ化合物、例えば2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、若しくはアゾビス−(4−シアン吉草酸)、又は過酸化物、例えば過酸化ジベンゾイル、過酸化ジラウロイル、tert−ブチルペルオクトエート、tert−ブチルペルベンゾエート又はジ(tert−ブチル)ペルオキシドも使用できる。熱硬化用の開始剤として、ベンゾピナコール、及び2,2’−ジアルキルベンゾピナコールが適している。
【0027】
過酸化剤又はα−ジケトンによる開始を加速させるためにしばしば、これらと芳香族アミンを組み合わせる。既に言及したレドックス系:ベンゾイルペルオキシド又はカンファーキノンと、アミン、例えばN,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、p−ジメチルアミノコハク酸エチルエステル、又は構造的に近縁の系との組み合わせ。さらにはまた、過酸化物、及び還元剤(例えばアスコルビン酸、バルビツール酸系、又はスルフィン酸)とから成るレドックス系が適している。
【0028】
カチオン重合可能なモノマーがベースの本発明による歯科材料は、公知のカチオン性光開始剤によって、特にジアリールヨードニウム塩、又はトリアリールスルホニウム塩によって、適宜、適切な増感剤(例えばカンファーキノン)の存在下で、硬化させることができる。可視光範囲での増感剤としてのカンファーキノン又はチオキサントンとともに使用可能な適切なジアリールヨードニウム塩の例は、市販で慣用の4−オクチルオキシ−フェニル−フェニル−ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、又はイソプロピルフェニル−メチルフェニル−ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。
【0029】
本発明による歯科材料はさらに、1種又は数種の充填材を含有することができ、この充填材は好適には、有機又は無機の微粒子状充填材である。好ましい無機微粒子状充填材は、酸化物をベースとする非晶質の球形ナノ粒子状充填材、例えば熱分解法ケイ酸、又は沈降ケイ酸、ZrO2、及びTiO2、又は、平均粒子直径が10〜200nmの、SiO2、ZrO2、及び/又はTiO2とからの混合酸化物、ミニフィラー、例えば平均粒子直径が0.2〜5[mu]mの、石英粉末、ガラスセラミック粉末、又はガラス粉末、並びにレントゲン不透性の充填材、例えばフッ化イッテルビウム、又はナノ粒子状のタンタル(V)酸化物若しくは硫酸バリウムである。さらにはまた、繊維状の充填材、例えばガラス繊維、ポリアミド繊維、又は炭素繊維が使用できる。
【0030】
最後に、本発明による歯科材料には、必要であればさらなる添加剤を添加することができ、その例は例えば、安定剤、UV吸収材、着色剤、又は顔料、並びに溶剤、例えば水、エタノール、アセトン、若しくは酢酸エチル、又は潤滑剤である。
【0031】
ここで本発明による歯科材料は、使用目的に応じて、好適には以下の成分から構成されている。
【0032】
本発明による歯科用セメントは好ましくは、以下の(a)〜(e)を含む:
(a)式(I)に記載の重合可能な少なくとも1種のカリックスアレーンを、0.5〜30質量%、特に好ましくは0.5〜20質量%、
(b)開始剤を0.01〜2質量%、特に好適には0.01〜1.5質量%、
(c)少なくとも1種のさらなるカチオン重合及び/又はラジカル重合可能なモノマー、及び/又は1種の開環重合可能なさらなるモノマー、好ましくは多価官能性(メタ)アクリレートを1〜30質量%、好ましくは5〜20質量%、
(d)充填材を5〜70質量%、特に好ましくは10〜60質量%、
(e)添加剤を0.01〜5質量%、好ましくは0.01〜2質量%、特に好ましくは0.01〜1質量%、
ここで各成分の合計は、常に100%となる。
【0033】
本発明による充填複合材は好ましくは、以下の(a)〜(e)を含む:
(a)式(I)に記載の重合可能な少なくとも1種のカリックスアレーンを、0.5〜30質量%、特に好ましくは0.5〜20質量%、
(b)開始剤を0.01〜5質量%、好ましくは0.01〜2質量%、特に好ましくは0.01〜1.5質量%、
(c)少なくとも1種のさらなるカチオン重合及び/又はラジカル重合可能なモノマー、及び/又は少なくとも1種の開環重合可能なさらなるモノマー、特に好ましくは多価官能性(メタ)アクリレートを1〜30質量%、好ましくは5〜20質量%、特に好ましくは5〜15質量%、
(d)充填材を5〜85質量%、特に好ましくは10〜80質量%、
(e)添加剤を0.01〜5質量%、好ましくは0.01〜3質量%、特に好ましくは0.01〜2質量%、
ここで各成分の合計は、常に100%となる。
【0034】
本発明による被覆材料は好ましくは、以下の(a)〜(f)を含む:
(a)式(I)に記載の重合可能な少なくとも1種のカリックスアレーンを、1〜70質量%、特に好ましくは1〜50質量%、
(b)開始剤を0.01〜5質量%、好ましくは0.01〜2質量%、特に好ましくは0.01〜1.5質量%、
(c)少なくとも1種のさらなるカチオン重合及び/又はラジカル重合可能なモノマー、及び/又は少なくとも1種の開環重合可能なさらなるモノマー、特に好ましくは少なくとも1種の多価官能性(メタ)アクリレートを5〜70質量%、好ましくは5〜60質量%、特に好ましくは5〜50質量%、
(d)充填材、好ましくはナノ粒子状充填材を1〜30質量%、特に好ましくは3〜20質量%、特に好ましくは3〜15質量%、
(e)添加剤を0.01〜5質量%、好ましくは0.01〜3質量%、特に好ましくは0.01〜2質量%、極めて特に好ましくは、0.01〜1質量%、
(f)溶剤を0〜70質量%、特に好ましくは0〜30質量%、
ここで各成分の合計は、常に100%となる。
【0035】
本発明による歯科用接着剤は好ましくは、以下の(a)〜(f)を含む:
(a)式(I)に記載の重合可能な少なくとも1種のカリックスアレーンを、0.5〜50質量%、特に好ましくは1.0〜30質量%、
(b)少なくとも1種の開始剤を0.01〜5質量%、特に好ましくは0.01〜2質量%、
(c)少なくとも1種のさらなるカチオン重合及び/又はラジカル重合可能なモノマー、及び/又は少なくとも1種の開環重合可能なさらなるモノマー、特に好ましくは少なくとも1種の多価官能性(メタ)アクリレートを5〜70質量%、好ましくは5〜60質量%、
(d)充填材を0〜30質量%、特に好ましくは3〜20質量%、
(e)添加剤を0.01〜5質量%、好ましくは0.01〜3質量%、
(f)溶剤を、0〜50質量%、特に好ましくは0〜20質量%、
ここで各成分の合計は、常に100%となる。
【0036】
本発明による補綴用ベース材料は好ましくは、メタクリレートベースのものである。補綴用ベース材料に望ましい特性については、例えば高い架橋度によって、又は耐衝撃性改善剤(例えばポリブタジエンポリマー)の添加によって追求されており、例えばEP 1 702 633 A2に記載されている。補綴用ベース材料は、歯肉に似た印象を作り出すための慣用の顔料を含有する。
【0037】
人工歯のための材料は、上記充填材料によく似た要求の下にあり、このため同一の成分から成る。
【0038】
蹄用材料は、補綴用ベース材料に似て二成分系の自己硬化性プラスチックであり、これは有蹄動物の蹄欠損修理用に使用されるものである。
【0039】
耳形成に適した材料は、歯科用成形材料にも使用されるものである。これはたいてい、付加架橋性若しくは縮合架橋性のシリコーン材料であり、例えばEP 1 374 915 A2に記載されている。
【0040】
以下の実施例は、本発明をより詳細に説明するものである。部とパーセントの表示は、特に記載がない限り、上記の発明の詳細な説明と同様に、質量に対するものである。
【0041】
実施例1:抗微生物特性を備える粒子
オクテニジン−ジヒドロクロリド3gをエタノール97gに溶解させる。この溶液にアエロジルOX50 8gを加え、室温で激しく撹拌する。約40〜45℃にやや加熱することによって、さらなる撹拌下で、溶剤の大部分を除去する。完全な除去は、減圧下(約1〜10mbar)でやや加熱することによって達成される。
【0042】
実施例2:実施例1に記載の粒子による歯科材料
ビス−GMA及びTEDMAから、やや加熱しながら、かつ軽く撹拌しながら、70/30の混合物を製造する。通常の光開始剤、及び安定剤、並びに粒径が〜1μmの歯科用ガラス65質量%を添加する。レオロジーを調整するために、オクテニジン−ジヒドロクロリドで処理した熱分解法ケイ酸アエロジルOX50を8質量%添加する。さらに、必要に応じて、色調整のために着色顔料を計量供給する。
【0043】
これにより、抗微生物性特性を有する歯科材料が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粒子又は有機ポリマービーズに施与された、少なくとも1種の抗微生物性作用物質を、歯科材料に抗微生物特性を付与するために用いる使用であって、
前記作用物質は、前記粒子又は前記ポリマービーズに、双極子−双極子の相互作用、双極子−誘起双極子の相互作用、誘起双極子−誘起双極子の相互作用の群から選択されるイオン性相互作用又はファンデルワールス力によって、吸着又は結合されており、
前記歯科材料は、複合材料、補綴用ベース材料、接着剤、塗料、及び封止剤の群から選択される、前記使用。
【請求項2】
前記無機粒子が、歯科用充填材である、請求項1に記載の歯科材料。
【請求項3】
前記歯科用充填材が、バリウム−アルミニウム−ケイ酸塩−ガラス、SiO2、ZrO2、及びYbF3から成る群に属する、請求項2に記載の歯科材料。
【請求項4】
前記作用物質が、イミノピリジニウム誘導体、オクテニジン塩、デカリニウム塩、サンギナリン、及びAkacid(登録商標)から成る群に属することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の歯科材料。
【請求項5】
前記無機担体物質若しくは前記有機担体物質の直径が、50μm未満であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の歯科材料。
【請求項6】
前記無機担体物質若しくは前記有機担体物質の直径が、10μm未満であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の歯科材料。
【請求項7】
前記無機担体物質若しくは前記有機担体物質の直径が、2μm未満であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の歯科材料。
【請求項8】
前記無機担体物質が、SiO2から成ることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の歯科材料。
【請求項9】
前記無機担体物質が、SiO2と、さらなる重金属酸化物、例えばZrO2とから成ることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の歯科材料。
【請求項10】
前記無機担体物質が、歯科用ガラスから成ることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の歯科材料。
【請求項11】
前記担体物質がさらに、可溶化のために官能化された表面を有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の歯科材料。
【請求項12】
前記有機担体物質が、PMMA、又はメタクリレートコポリマーから成ることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の歯科材料。
【請求項13】
添加剤が最大で6質量%、又は最大で3質量%存在することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の歯科材料。
【請求項14】
前記歯科材料中に、さらに別の抗微生物性成分が均質に分配されていることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の歯科材料。
【請求項15】
前記さらなる抗微生物性成分が、モノカチオン性の殺菌剤、ジカチオン性の殺菌剤、オリゴマー若しくはポリマーのカチオン性殺菌剤、及び殺菌性重金属化合物から成る群に属することを特徴とする、請求項14に記載の歯科材料。
【請求項16】
前記歯科材料中に、さらに別の抗微生物性成分が均質に分配されており、ここで特にモノカチオン性の殺菌剤、ジカチオン性の殺菌剤、オリゴマー若しくはポリマーのカチオン性殺菌剤、及び殺菌性重金属化合物が含まれていてよいことを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項に記載の歯科材料。

【公表番号】特表2013−501011(P2013−501011A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523223(P2012−523223)
【出願日】平成22年7月24日(2010.7.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004551
【国際公開番号】WO2011/015293
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(399011900)ヘレーウス クルツァー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (56)
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Kulzer GmbH 
【住所又は居所原語表記】Gruener Weg 11, D−63450 Hanau, Germany
【Fターム(参考)】