説明

特に車両用のマルチクラッチ動力伝達装置のクラッチ駆動用の流体駆動装置

【課題】車両用のマルチクラッチ動力伝達装置におけるクラッチ駆動用の低コストで効率を改善した流体駆動装置。
【解決手段】マルチクラッチ動力伝達装置のクラッチ12,12’駆動用の流体駆動装置10において、ポンプドライブMを有するマルチ回路ポンプ14、ポンプに接続された少なくとも二つの圧力回路16,16’、流体がポンプによって圧力回路に送られる作動流体用の貯槽18を備える。ポンプからスタートする各圧力回路は、ポンプ方向を閉鎖する逆止弁20,20’、これによって各圧力回路が定められたように流体を貯槽に向けて開放する電磁駆動の比例スロットルバルブ22,22’と、クラッチに作用的に接続された流出側の従動シリンダー24,24’と、を備える。ポンプドライブ及び比例スロットルバルブは、制御ユニットECUに電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチを駆動させる流体駆動装置に関する。本発明は、特に、全部で車両用のマルチクラッチ動力伝達装置に用いられるような駆動装置に関する。
【先行技術】
【0002】
自動変速ギアボックス(ASG)用クラッチ、ツインクラッチまたはマルチクラッチ動力伝達装置(TCT)は、分離可能なパワードライバ動力伝達装置、及びトランスアクシルとともに、乾式または湿式クラッチとして構成される。これらの駆動は、電気機械的または流体的のいずれかで行われ、流体駆動はアクチュエータの高出力密度により動力伝達装置での物理的設計において有利である。したがって、クラッチは(いわゆる中心係合装置[central engager]または非係合装置[disengager]によって)直接駆動でき、機械運動の動力伝達装置機構等の追加摩擦損失が回避される。動力伝達装置内あるいはモーターと動力伝達装置間の配置は、しばしば動力伝達装置のシルエットを超えて突出し車両内への取付けを妨げる電気機械駆動システムと比較して、収容の点での有利性ももたらす。
【0003】
既知の流体駆動装置(例えば、DE A−43 09 901の図1、DE−A−196 37 001の図27、DE−A−199 50 443の図11Fを参照)は、通常、圧力発生ユニットまたはポンプ、蓄電ユニット(いわゆる「パワーパック」)、流体エネルギーを個々のアクチュエータに分配するためのいくつかの電磁駆動バルブを有するバルブブロック、流体を導くための経路、アクチュエータまたはシリンダ、によって構成され、設置要素の位置検出をする統合センサシステムを任意に有する。自動車両用のマルチクラッチ動力伝達装置における流体駆動装置の駆動は、通常、動力伝達装置制御ユニットまたは上位の車両コンピュータ経由で行われる。
【0004】
蓄電ユニットを備えるその種の流体駆動装置の不利は、要求された量を取り除いた後にもまだ必要な作動圧の供給を可能とするために、蓄電ユニットの充電用の圧力媒体、すなわち作動流体[hydraulic fluid]が、アクチュエータにおいて要求される圧力の最大のはるかに上の圧力レベルまで汲み上げられる必要があることである。これはエネルギーの点で不利であり、装置の効率を著しく低減する。さらに、主としてスライドバルブとして構築される電磁バルブは、密に許容されたギャップのために流体の高レベルの清浄性を要求し、しばしばフィルタリング測定を必要とする。しかしながら、適用されたスライドバルブには、微弱ではない漏れがある。相当期間を超える漏れは、蓄電ユニットの完全な放電を導き、結果として蓄電ユニットのチャージ用の時間の分最初の駆動を遅らせることになる。また、チャージギアを用いずに駆動する場合、例えば道路において一定の間隔で蓄電ユニットの再チャージが必要となり、エネルギーの点でも不利である。最後に、電磁弁を備えたバルブブロックは、動力伝達装置における相当量の設置スペースを占め、前述の駆動装置の最大のコスト要因を表す。
【目的】
【0005】
本発明は、上述の不利を回避し、概説した先行技術と比較して上述の総合的な効率の著しい改善を低コストでもたらす、特に車両用のマルチクラッチ動力伝達装置におけるクラッチ駆動用の流体駆動装置を提供する目的を有する。
【発明の実施例】
【0006】
この目的は請求項1で示された特徴によって果たされる。発明の有利または好都合な発展は請求項2−4の課題である。
【0007】
本発明によれば、特に車両用マルチクラッチ動力伝達装置におけるクラッチ駆動用の流体駆動装置は、電気ポンプドライブを有するマルチ回路ポンプと、流体的にポンプに接続される少なくとも2つの圧力回路と、そこからポンプによって圧力回路に作動流体が搬送可能な作動流体用の貯槽と、を備える。各圧力回路は、ポンプからスタートし、ポンプ方向を閉鎖する逆止弁と、各圧力回路を定められたように流体を貯槽に向けて開放させる電磁駆動可能な比例スロットルバルブとを、出口側またはパワー搬送側にありクラッチに作用的に接続された従動シリンダーとともに備える。ポンプドライブ及び比例スロットルバルブは、ポンプドライブ及び比例スロットルバルブの電気駆動を調整する制御ユニットに電気的に接続されている。
【0008】
クラッチのうちの1つが始動されることになっている場合、このクラッチに関して、以下に簡単に述べる調整が可能である:制御ユニットによって対応する圧力回路の比例スロットルバルブが電磁的に駆動され、ポンプドライブが開始され、それからこの圧力回路で生じる圧力が各従動シリンダーに流体的に作用し、交互にクラッチを駆動する。対応する圧力回路における所望の圧力が達成されると、ポンプドライブは停止され、この場合にこの圧力回路における逆止弁及び比例スロットルバルブ間の圧力は適正にロックされたまま、それぞれの従動シリンダーで作用し続ける。この比例スロットルバルブは、制御ユニットによって、各駆動要求に対応して駆動され、対応する圧力回路及び各従動シリンダーは、定められたように貯槽に向けて流体的に解放される。クラッチはさらに、一定の場合には同時に、類似の方法で更なる圧力回路を介して駆動される。
【0009】
したがって、技術的な機械設備における比較的低い支出、すなわち低コストで、概念的に単純な方法で、特に自動車用マルチクラッチ動力伝達装置の複数のクラッチを、その目的で要求される蓄電ユニット、または高レベルのオイルの清浄性を要するスライドバルブを用いずに、駆動することが可能である。クラッチが駆動される際のみに1つのポンプドライブのみに電流が供され、それぞれの従動シリンダーにおいて移動を発生させるために対応する圧力回路で要求されるだけの作用圧力が必要とされるため、エネルギーバランスは上述の先行技術に比べてよい。
【0010】
原則として、制御ユニットによる計算モデルのみによる作動用のポンプドライブ及びスロットルバルブあるいはバルブの電流条件の調整において、(特に)一方ではポンプドライブの電流条件、及びポンプの回転スピード及び発生する体積流れ、他方では圧力回路の流体影響領域及びそれぞれのクラッチに適用される力との間の既知の従属関係を、考慮に入れることができる。しかしながら、各圧力回路は、圧力センサを有し、各従動シリンダーにおける実際の圧力が検出可能であって制御ユニットに供されることが望ましく、それゆえに対応する比例スロットルバルブ及び一定の場合におけるポンプドライブが適正に駆動される。
【0011】
好ましくは、非駆動状態における各比例スロットルバルブは、通過流ゼロ設定に切り替えられ、したがって各圧力回路においてバルブへの電流の適用なしに圧力は作られない。各従動シリンダーで移動を開始するために各場合で2つの要素(ポンプドライブ及び比例スロットルバルブ)が駆動される必要があるため、間違った駆動に対する信頼性が大きく増大する。
【0012】
最後に、好ましくは、第1のクラッチ冷却ユニットが第1の圧力回路のスロットルバルブ出口と貯槽との間で接続され、第2の圧力回路の従動シリンダーに作用的に接続されたクラッチと関連するとともに、第2のクラッチ冷却装置は第2の圧力回路のスロットルバルブの出口と貯槽との間で接続され、第1の圧力回路の従動シリンダーと作用的に接続されたクラッチと関連し、第1の圧力回路からの作動流体は第1のクラッチ冷却装置によって第2の圧力回路におけるクラッチの冷却に供されるとともに、第2の圧力回路からの作動流体は第2のクラッチ冷却装置によって第1の圧力回路におけるクラッチの冷却に供される。したがって、適正に駆動されたクラッチは、電流的に駆動されていないクラッチに対応する圧力回路から流出する作動流体によって、実質的にその比例スロットルバルブによる圧力を用いることなく、有効に冷却されることができる。
【0013】
この冷却原理は明らかに問題なく2つを超えるクラッチを備えたシステムに転換することができる。3つのクラッチを備えた場合には、例えば駆動装置は、その出口に第1のクラッチ冷却装置が接続される第1の比例スロットルバルブを有する第1のクラッチ駆動用の第1の圧力回路と、その出口に第2のクラッチ冷却装置が接続される第2の比例スロットルバルブを有する第2のクラッチ駆動用の第2の圧力回路と、その出口に第3のクラッチ冷却装置が接続される第3の比例スロットルバルブを有する第3のクラッチ駆動用の第3の圧力回路とを備え、第1のクラッチ冷却装置は第2のクラッチに対応し、第2のクラッチ冷却装置は第3のクラッチに、最後に第3のクラッチ冷却装置は第1のクラッチに、対応するであろう。その手順は3を超えるクラッチでも類似するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の更なる詳細は、好ましい実施形態に基づいて、添付の概略図を参照して以下に説明される。そこで、同じ符号(一定の場合には1つのアポストロフィー(’)あるいは2つのアポストロフィー(’’)で補足される)は、同じまたは対応する部分を特徴づける。
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態として、例えば自動車両のツインクラッチ動力伝達装置における、2つのクラッチの流体駆動装置の回路図を示す。ここでは湿式クラッチとして構成された2つのクラッチのクラッチ冷却も提供される。
【図2】図2は、本発明の第2の実施形態として、例えばハイブリッド自動車のハイブリッド駆動車両で用いられるような、乾式クラッチとして構成される3つのクラッチを駆動する流体駆動装置の回路図を示す。ここでは、ガソリンエンジン、非同期式のモーター及びフライホイールといった3つの駆動要素が、それらのパワーを、介在するシャフトによって、3つの乾式クラッチの適切な駆動及び段差のない動力伝達装置を通じて、ハイブリッド自動車のホイールに供給することができる。
【実施形態の詳細な説明】
【0015】
クラッチに作用的に接続される要素、すなわちハイブリッド駆動車両におけるツインクラッチ動力伝達装置の対応する部品、の説明は、図面及び以下の記述によって施される。これらの要素及びこれらの機能はエキスパートに十分に知られているため、これらに関する説明は本発明を理解する上で必要と見られない。
【0016】
図1において、符号10は概して2つの湿式のクラッチ12,12駆動用の流体駆動装置を示す。下記により詳細を示すように、流体駆動装置10は、電磁ポンプドライブMを備えるマルチ回路(ここではツイン回路)ポンプ14、ポンプ14に流体的に接続され、示される実施形態では2つの圧力回路16,16’、及び、そこから作動流体がポンプ14によって圧力回路16,16に搬送可能な作動流体用の貯槽18を備える。圧力回路16,16’は、それぞれポンプ14からスタートし、ポンプ14の方向にブロックする逆止弁20,20’、それによって、各圧力回路16,16’が設定されたように貯槽18へ向かって流体的に解放される電磁駆動の比例スロットルバルブ22,22’とを、出口側にある従動シリンダー24、24’とともに、備える。従動シリンダー24,24’はそれぞれ関係する湿式クラッチ12,12’と作用的に接続される。ポンプドライブM及び比例スロットルバルブ22,22’は電気的に制御ユニットECUに接続される。制御ユニットECUはポンプドライブM及び比例スロットルバルブ22,22’の電気駆動を生じさせ、調整する。
【0017】
ポンプ14はポンプ入口26を備えている。ポンプ入口26は吸入管28によって貯槽18に流体的に接続されている。加えて、ポンプ14は二つのポンプ出口30,30’を備えており、ポンプ出口30,30’は圧力回路16,16の圧力ライン32,32に接続されている。例えばギアホイールポンプ、ローラーセルポンプ、ベーンポンプ、及びラジアルまたはアクシァルピストンポンプ、などのポンプタイプとして使用可能であり、移動要素の並行接続、及び/またはポンプハウジングの好ましいデザイン、例えばダブルストロークベーンポンプの場合には楕円形のステータのストロークリング形状、でそれ自体に知られているように、マルチ回路が保証される。本出願では、ポンプ14が、ポンプドライブMの所定の回転速度において一定の体積流れが提供される定常ポンプとして構築さされれば十分である。ポンプドライブMは、回転速度が任意に制御可能であり、起こりうる圧力変動に対応することが可能であり、また低回転速度において圧力回路16,16’内の作動流体の調整移動をすることが可能である。電流の適用またはポンプドライブMの駆動は、電力供給ケーブル33によって行われる。電力供給ケーブル33は図1において点線で示され、ECUに電気的に接続されている。
【0018】
圧力ライン32,32’は従動シリンダー24,24’とともに、ポンプ出口30,30’に流体的に接続され、逆止弁20,20’の一つは各圧力ライン32,32’に接続されている。逆止弁20,20’はポンプ14の方向を閉鎖する設定にバイアスされ得るが、これは図の中で示されない。
【0019】
従動シリンダー24、24’はそれぞれ、それ自体知られているように、各シリンダハウジング34,34’を備え、この中でピストン36,36’は縦方向に移動可能に案内される。ピストン36,36’は、シリンダハウジング34,34’とともに、圧力接続部40,40’を介して作動流体が負荷される圧力チャンバ38,38’を範囲づける。この目的のために、圧力回路16,16’の圧力ライン32,32’は圧力接続部40,40’に接続されている。圧力チャンバ38,38’から離れた各ピストン36,36’側において、ピストンロッド42,42’がそれに固定され、各従動シリンダー24,24’によって関連する湿式クラッチ12,12’に作用的に接続されて配される。説明された実施形態では、従動シリンダー24,24’は古典的なモデルの構造で示されているが、同様に、たとえ一部が、例えば本出願人のDE−A−197 16 473に示されるようにいわゆる「中央非係合装置」または「中央係合装置」であってもよい。
【0020】
逆止弁20,20’と従動シリンダー24、24’との間で各圧力管32,32’から分岐するのはバルブライン44,44’であり、各比例スロットルバルブ22,22’の圧力接続部46,46’に接続される。説明された実施形態において、後者は電磁駆動の2/2球状弁座バルブとして構成される。それは、本出願人のDE−A−196 33 420(図4)から原理がわかるように、非駆動状態で通過流ゼロ設定に切り替えられる。
【0021】
従って、比例スロットルバルブ22,22’は、アマチュアチャンバ50,50’、流出チャンバ52,52、及び圧力チャンバ54,54’,を有する3チャンバのバルブハウジング48,48’を備える。圧力接続部46,46’は圧力チャンバ54,54’内に開く。磁気ドライブ56,56’は、強磁性のアマチュア及び磁気コイルから構成される。磁気コイルは少なくとも一部がアマチュアを同心的に囲むとともに、アマチュアチャンバ50,50’の放射構造の壁に取り付けられる。(磁気ドライブの個々の部品は図には更に詳細には示されない)磁気コイルは、アマチュアチャンバ50,50’内に収容される。密封状態で流出チャンバ52,52’内に突出するバルブピン58,58’は、ピストン状のアマチュアの中心に搭載され、アマチュアチャンバ50,50’内において軸方向に移動可能である。磁気ドライブ56,56’に電流が適用されると、バルブピン58,58’がアマチュアによってバルブハウジング48,48’の軸方向において定められたように移動可能である。磁気ドライブ56,56’への電流の適用は、電力供給ケーブル59,59’を介して行われる。電力供給ケーブル59,59’は図1において点線で示され、制御ユニットECUに電気的に接続されている。
【0022】
金属ボールとして構成されるとともにバルブピン58,58’による駆動力が機械的に負荷される。バルブ体60,60’は、流出チャンバ52,52’内に配置される。流出チャンバ52,52’は軸方向にアマチュアチャンバ50,50’に接続されている。バルブ体60,60’及びバルブピン58,58’は2つの個別の要素であるため、バルブ体60,60’はバルブピン58,58によって圧力のみが負荷される。
【0023】
小径の圧力チャンバ54,54’は流出チャンバ52,52に接続されている。環状の弁座62,62’は圧力チャンバ54,54’の流出チャンバ側の端部に形成され、バルブハウジング48,48’の中心軸に関して中心的に配され、バルブ体60,60’とともに、バルブギャップを範囲づける。バルブギャップは比例スロットルバルブ22,22’のスロットル断面に一致する流れ通過断面を有する。バルブ体60,60’を磁気ドライブ56,56’のバルブピン58,58’に対して付勢する復元スプリング64,64’が圧力チャンバ54,54’に配置される。
【0024】
比例スロットルバルブの図示しない通過流ゼロ設定において、バルブ体60,60’と弁座62,62’との間の各バルブギャップは、復元スプリング64,64’の復元力によって最大に開き、磁気ドライブ56,56’のアマチュアはバルブ体60,60’及びバルブピン58,58’によって、流出チャンバ52,52’から離れたアマチュアチャンバ50,50’の端部の接触部(示されない)に対して直接付勢される。アマチュアチャンバ50,50’のアマチュアの最大可能ストロークは、少なくともバルブ体60,60’及び弁座62,62’間のバルブギャップの閉鎖パスに一致し、バルブギャップは磁気ドライブ56,56’によるバルブピン58,58’の軸方向変位によって規定され設定される。
【0025】
最後に、各比例スロットルバルブ22,22’は、流出チャンバ52,52’に開く流出接続部66,66’を有している。流出接続部66,66’によって、作動流体は、一定の場合に、バルブ体60,60’及び弁座62,62’間の開かれたバルブギャップの通過後、実質的に比例スロットルバルブからの圧力を用いることなく流れることが可能である。この目的のため、流出ライン68,68’が各流出接続部66,66’.に接続されている。
【0026】
加えて、図1に示されるように、各圧力回路16,16’は圧力センサ70,70’を有する。後者は流体センサライン72,72’によって、逆止弁20,20’及び各従動シリンダー24、24の間の圧力ライン32,32’に接続され、したがって、従動シリンダー24、24’で実際にある流体圧力を検出する。電気信号ライン74,74’は制御ユニットECUに圧力ライン70,70’を接続する。
【0027】
さらに、図1に示される実施形態において、湿式クラッチ12,12のクラッチ冷却が実現される。これに関して、比例スロットルバルブ22の1または第1の圧力回路16を構成する流出接続部66における比例スロットルバルブ22の一つの出口と貯槽との間の接続は、第1のクラッチ冷却装置を構成し、他方の第2の圧力回路16’の従動シリンダー24’と作用的に接続された湿式クラッチ12’に関連する。対して、第2の圧力回路16’の比例スロットルバルブ22’の出口を構成する流出接続部66’と貯槽18との間の接続は、他のまたは第2のクラッチ冷却装置76’を構成し、第1の圧力回路16の従動シリンダー24と作用的に接続された湿式クラッチ12に関連する。クラッチ冷却装置76,76’は、図1に示されるように、例えばコンテナ78,78を備え、コンテナ78,78は、作動流体が流出ライン68,68’から供給されるとともに、湿式クラッチ12,12’を冷却するために、1つまたはそれ以上のスロットルポイント80,80’を介して作動流体を滴下して送り、最後に貯槽18に再び集める。その結果、第1の圧力回路16からの作動流体は、第1のクラッチ冷却装置76によって、第2の圧力回路16’における湿式クラッチ12’を冷却するために、供される。それに対して、第2の圧力回路16’からの作動流体は、第2のクラッチ冷却装置76’を介して、第1の圧力回路16における湿式クラッチ12を冷却するために、供される。
【0028】
図1に示される2つの湿式クラッチ12,12’及び係合装置としての従動シリンダー24、24構造を備えるシステムにおいて、下記の手順が、例えば前述された流体駆動装置10を用いて可能であり、制御ユニットECUは好ましくはポンプドライブM及び比例スロットルバルブ22,22’を駆動及び調整する。
【0029】
システムが駆動されない場合、両湿式クラッチ12,12’は分離されている。駆動装置10は全く電流が適用されてないか、あるいはポンプドライブMに電流が導かれ湿式クラッチ12,12’の冷却が必要な場合であり、ポンプ14が作動流体を貯槽18から圧力回路16,16’に送り、比例スロットルバルブ22,22’が電流フリーで通過流ゼロの設定になっている。その結果、湿式クラッチ12,12’の相互冷却が、クラッチ冷却装置76,76’を介して、比例スロットルバルブ22,22’から流出ライン68,68’を経て流れる体積流れ(バルブ22からクラッチ12’への体積流れ及びバルブ22’からクラッチ12への体積流れ)によって、行われる。
【0030】
例えば図1の右の湿式クラッチ12の係合のために、ポンプドライブM及び対応する図1のすなわち右の、比例スロットルバルブ22の両者は、電流を導き、ポンプ14が圧力回路16内に作動流体(また)を送り、比例スロットルバルブ22内でバルブ体60が磁気ドライブ56によってバルブピン58を介して復元スプリング64の力に抗して弁座62に付勢される。その結果として比例スロットルバルブ22の圧力チャンバ54内で圧力が発生し、したがって、逆止弁20及び従動シリンダー24間において、その圧力が、従動シリンダー24の圧力チャンバ38によってピストン36に作用し、ついには湿式クラッチ12の係合のためのピストンロッド42の移動に至る。同時に他の圧力回路16’内においてポンプ14で汲まれた作動流体は、比例スロットルバルブ22’を経て流出する。このスロットルバルブ22’は導電されておらず、したがって流出ライン68’によって第2のクラッチ冷却装置76’に開き、したがって係合した湿式クラッチ12の冷却に供する。類似した方法で、図1の左の湿式クラッチ12’が、あるいはまた両湿式クラッチ12,12’が同時に、係合する。そこで、後者の場合に、コンテナ78,78’が空である場合には冷却は起こらない。
【0031】
少なくとも一つの係合した湿式クラッチ12,12’、例えば図1の右の湿式クラッチ12、のシステム状態が維持されると、対応するすなわち図1の右の比例スロットルバルブ22は要求される荷重ポイントに対応する電流を導き、従動シリンダー24の圧力はバイアスの比例スロットルバルブ22によって維持され、この場合にポンプ14を用いずに逆止弁20が作動される必要がある。類似した方法で、図1の左の湿式クラッチ12が、あるいはまた両湿式クラッチ12,12’が同時に、係合状態に維持されることが可能である。
【0032】
加えて、湿式クラッチ12,12’の一方から他方へのトルク移動が行われ、例えば下記に概説されるように、例えば下記のシステム状態から始まる:右のクラッチ12係合、左のクラッチ12’非係合、右のバルブ22導電、左のバルブ22’及びポンプドライブM非導電。制御ユニットECUは、最初にポンプドライブMへの電力の適用によってポンプ14を開始させる。それから湿式クラッチ12用の図1の右の比例スロットルバルブ22が連続して解放され、磁気ドライブ56におけるバルブ電流の付与は、制御ユニットECUに記録されている既知の右の湿式クラッチ12のクラッチ特性曲線に対応して規制される。したがって、圧力回路16における圧力は適正に下がり、従動シリンダー24のピストン36は定められた「非係合」の意味で左に移動する。同時に、湿式クラッチ12’用の図1の左の比例スロットルバルブ22’は電流を導き、磁気ドライブ56’におけるバルブ電流の付与は、制御ユニットECUに記録され同様に既知の左の湿式クラッチ12’のクラッチ特性曲線に対応して規制される。したがって圧力回路16’における圧力は適正に上り、従動シリンダー24’のピストン36’は定められた「係合」の意味で右に移動する。例えば、ツインクラッチ動力伝達装置において、比例スロットルバルブ22,22’における電流規制は、摩擦力を妨げずに切り替え可能となるように、互いに一致するようにされる。圧力チャンバ16,16’における設定圧力及び従動シリンダー24、24’におけるピストンロッド42,42’の所望の位置の達成で、制御ユニットECUは、ポンプドライブMへの電流供給の遮断によってポンプ14をオフに切り替える。図1の「左」から「右」へのトルクの移動は類似の方法によって明らかに起こることができる。
【0033】
全システムは、制御ユニットECUにより、ポンプドライブM及び比例スロットルバルブ22,22’の切り替えによって、完全に電流無しとするように、停止される。
【0034】
従動シリンダー24、24’の構築において被係合装置として、システムは単純に逆作用、すなわちクラッチ12,12’分離のため負荷及び同接続のための解放、が可能である。湿式クラッチ12,12’の冷却の実現(そのバルブ循環容積流はそのクラッチを通って流れ去る)は、通常の切り替えサイクル、すなわち選択的に図1に示すのとは異なる、ヒートバランスに基づいてさらに実行できる。
【0035】
前記の流体駆動装置は、各動力伝達装置の構造によって、さらなる設定の分岐(それぞれがポンプステージ、さらに逆止弁及び比例スロットルバルブをさらに備える)によって、明らかに大型になり得る。これらはそれぞれの駆動要求に対応し、同時に操作され、あるいはまた時間的に互いにオフセットされることが可能である。
【0036】
第2の実施形態は以下に図2を参照して説明され、説明は図1に示される第1の実施形態と異なる範囲のみに及ぶ。
【0037】
第1の実施形態と対照的に、図2の流体駆動装置10’は3つの回路ポンプ14’を有する。それは、例えば特別なステータカムトラック(丸いコーナーの三角形)を有し、1回転当たりいくつかの吸引及び圧力ストロークを許容する、トリプルストロークベーンポンプであり得る。ポンプ14’へ接続されるのは全部で3つの圧力回路16,16’,16’’であり、これは第1の実施形態における圧力回路16,16’と異ならない。第2実施形態の、従動シリンダー24、24’24’’に駆動されるクラッチ(よりよい明瞭さのために図2に示されない)は、しかしながら、3つの乾式クラッチである。これは流体の冷却、及びしたがって第1の実施形態におけるクラッチ冷却装置を、その限りにおいて必要としない。第1の実施形態と対照に、したがって、第2の実施形態では、流出ライン68,68’,68’’は比例スロットルバルブ22,22’,22’’から直接導かれ貯槽18へ戻る。
【0038】
この実施形態の場合、それぞれ係合または非係合動作を発生させるために、制御ユニットECUによるポンプドライブM及び比例スロットルバルブ22,22’,22’’の適正な駆動により、それぞれの駆動要求に対応して、従動シリンダー24、24’は流体的に負荷されまたは解放されることが、当業者に明らかである。そこでは、特に、技術的な機械設備の比較的小さいエネルギー消費で非常に有利に各システム状態の維持が行われる。
【0039】
特に自動車用のマルチクラッチ動力伝達装置のクラッチ流体駆動装置は、電気ポンプドライブを有するマルチ回路ポンプ、ポンプに流体的に接続された少なくとも2の圧力回路、そこから流体がポンプによって圧力回路へ送られる作動流体用の貯槽、を備える。この点に関して、ポンプからスタートする各圧力回路は、ポンプの方向に閉鎖する逆止弁、それにより圧力回路は定められた流体を貯槽に解放するように義務付けられる電磁駆動の比例スロットルバルブを、関連するクラッチに作用的に接続された出口側の従動シリンダーとともに、備える。ポンプドライブ及び比例スロットルバルブは制御ユニットに電気的に接続される。制御ユニットは、ポンプドライブ及び比例スロットルの電気駆動を調整する。その結果、低減されたコストで高い総合効率のクラッチ駆動が可能である。
【符号のリスト】
【0040】
10,10’…流体駆動装置、12,12’…乾式クラッチ、14…ツイン回路ポンプ、14’…トリプル回路ポンプ、16,16’,16’’…圧力回路、18…貯槽、20,20’,20’’…逆止弁、22,22’,22’’比例スロットルバルブ、24,24’,24’’…従動シリンダー26…ポンプ入口、28…吸込ライン、30,30’,30’’…ポンプ出口、32,32’,32’’…圧力ライン、33…電力供給ケーブル、34,34’…シリンダハウジング、36,36’…ピストン、38,38’…圧力チャンバ、40,40’…圧力接続部、42,42’…ピストンロッド、44,44’,44’’…バルブライン、46,46’…圧力ライン、48,48’…バルブハウジング、50,50’…アマチュアチャンバ、52,52’…流出チャンバ、54,54’…圧力チャンバ、56,56’…磁気ドライブ、58,58’…バルブピン、59,59’,59’’…電力供給ケーブル、60,60’…バルブ体、62,62’…弁座、64,64’…復元スプリング、66,66’…流出接続部、68,68’,68’’…流出ライン、70,70’,70’’…圧力センサ、72,72’,72’’センサライン、74,74’,74’’…信号ライン、76…第1のクラッチ冷却装置、76’…第2のクラッチ冷却装置、78,78’…コンテナ、80,80’…スロットルポイント、ECU…制御ユニット、M…ポンプドライブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプドライブ(M)を有するマルチ回路ポンプ(14,14’)と、
ポンプ(14,14’)に流体的に接続された少なくとも2つの圧力回路(16,16’,16’’)と、
作動流体用の、それから作動流体がポンプ(14,14’)により圧力回路(16,16’,16’’)に送られることが可能な貯槽(18)と、を備えた特に自動車用のマルチクラッチ動力伝達装置における、クラッチ(12,12’)駆動用の流体駆動装置(10,10’)であって、
ポンプ(14,14’)からスタートする各圧力回路(16,16’,16’’)は、ポンプ(14,14’)の方向を閉鎖する逆止弁(20,20’,20’’)、及び、それにより各圧力回路が定められたように流体を貯槽(18)に向けて解放する電磁駆動の比例スロットルバルブ(22,22’,22’’)、対応するクラッチ(12,12’)に作用的に接続された出口側の従動シリンダー(24,24’,24’’)を備え、
ポンプドライブ(M)及び比例スロットルバルブ(22,22’,22’’)は、ポンプドライブ(M)及び比例スロットルバルブ(22,22’,22’’)の電気駆動を調整する制御ユニット(ECU)に電気的に接続される、
流体駆動装置(10,10’)。
【請求項2】
各圧力回路(16,16’,16’’)は圧力センサ(70,70’,70’’)を備える請求項1の駆動装置(10,10’)。
【請求項3】
非駆動状態における前記比例スロットルバルブ(22,22’,22’’)は通過流ゼロ設定に切り替えられる請求項1または2の駆動装置(10,10’)
【請求項4】
第1のクラッチ冷却装置(76)は、第1の圧力回路(16)における比例スロットルバルブ(22)の出口(66)と貯槽(18)との間で接続され、第2の圧力回路(16’)の従動シリンダー(24’)に作用的に接続されたクラッチ(12’)に関連し、
第2のクラッチ冷却装置(76’)は、第2の圧力回路(16’)における比例スロットルバルブ(22’)の出口(66’)と貯槽(18)との間で接続され、第1の圧力回路(16)の従動シリンダー(24)に作用的に接続されたクラッチ(12)に関連し、
第1の圧力回路(16)から流出する作動流体は、第1のクラッチ冷却装置(76)により、第2の圧力回路(16’)のクラッチ(12’)の冷却に供され、
第2の圧力回路(16’)から流出する作動流体は、第2のクラッチ冷却装置(76’)により、第1の圧力回路(16)のクラッチ(12)の冷却に供される、
請求項1乃至3のいずれかの駆動装置(10)。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−57396(P2013−57396A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−130185(P2012−130185)
【出願日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【出願人】(502088803)エフティーイー・オートモーティブ・ゲーエムベーハー (2)
【氏名又は名称原語表記】FTE automotive GmbH
【Fターム(参考)】