説明

特定のシクロリグナン類の新しい使用

【課題】乾癬の予防または処置のための医薬の提供。
【解決手段】インスリン様増殖因子−1レセプターの阻害のための、特定のシクロリグナン類の使用に関し、ここで、9位および9’位における炭素原子は、シス立体配置を有する。上記化合物は、癌、感染、動脈硬化症および先端巨大症のようなIGF−1R依存性疾患の処置のために使用され得る。好ましい化合物は、ピクロポドフィリンである。この化合物が乾癬の予防または治療に使用できることを示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IGF−1R依存性疾患(特に癌)の処置のためのインスリン様増殖因子−1レセプター(IGF−1R)を抑制する特定のシクロリグナン類の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
インスリン様増殖因子−1レセプター(IGF−1R)は、悪性細胞のトランスフォーメーションおよびアポトーシスに対する保護、増殖において重要な役割を果たす。IGF−1Rはまた、腫瘍細胞の悪性表現型を維持するために重要であり、そして抗癌治療に対する腫瘍細胞保護に関与する。対照的に、IGF−1Rは、正常な細胞成長のための絶対条件であるように思われない。
【0003】
IGF−1Rは、リガンド結合を担う2つの同一の細胞外αサブユニット、ならびに貫膜ドメインおよび細胞内チロシンキナーゼドメインを有する2つの同一のβサブユニットからなる。リガンド−レセプター相互作用は、βサブユニットのチロシンキナーゼドメイン(これはアミノ酸973〜1229に広がる)におけるチロシン残基のリン酸化を生じる。リン酸化についての主要な部位は、1131位、1135位および1136位のクラスター化したチロシンである(LeRoith,D.ら、Endocr Rev 1995 April;16(2),143−63)。自己リン酸化後、レセプターキナーゼの自己リン酸化は、インスリンレセプター基質−1およびShcのような細胞内タンパク質をリン酸化し、これらは、それぞれ、ホスファチジルイノシトール−3キナーゼおよびマイトジェン活性化プロテインキナーゼシグナル伝達経路を活性化する。
【0004】
悪性細胞におけるIGF−1Rの中心的な役割に基づいて、IGF−1Rが癌療法のための標的であることがますます明らかになっている(Baserga,R.ら、Endocrine Vol.7,no.1,99−102,August 1997)。IGF−1R活性と干渉するための1つのストラテジーは、IGF−1Rチロシンキナーゼの選択的な阻害を誘導することである。しかし、現在のところ、IGF−1Rの選択的なインヒビターは利用可能でない。
【0005】
有名な毒性のシクロリグナンポドフィロトキシン(cyclolignan podophyllotoxin)を含む薬物は、何世紀にもわたって使用されており、その抗癌特性は、特別な興味を引いている。しかし、ポドフィロトキシンの望ましくない副作用は、抗癌薬物としてのその使用を妨げている。ポドフィロトキシンの細胞傷害性についての機構が、β−チューブリンへのその結合に寄与しており、微小管アセンブリの阻害および有糸分裂の停止を導く。ポドフィロトキシンのラクトン環におけるトランス立体配置が、β−チューブリンへの結合のために必要とされることが示されている。対照的に、その立体異性体のピクロポドフィロトキシン(これは、ラクトン環においてシス立体配置を有する)は、微小管重合に対して50倍低い阻害効果およびラットにおける35倍を超える高いLD50を有する。ピクロポドフィロトキシンの低い抗微小管効果に起因して、この化合物は、ほとんど興味を引いていない。最近十年間、ポドフィロトキシン誘導体に関する主な興味は、エトポシド(これは、4’−デメチル−epi−ポドフィロトキシンのエチリデングルコシド誘導体である)に関する。エトポシド(これは微小管に対して影響しない)は、トポイソメラーゼIIインヒビターであり、癌療法においてそれ自体使用されている。
【0006】
(先行技術)
多数の合成チロシンキナーゼインヒビター(すなわちチルホスチン(tyrphostin))は、Parrizas,M.ら、Endocrinology 1997,Vol.138,No.4,1427−1433によって研究されてきた。IGF−1Rは、チロシンキナーゼレセプターファミリーのメンバーであり、これはまた、インスリン、上皮成長因子(EGF)、神経成長因子(NGF)、および血小板由来増殖因子(PDGF)のレセプターを含む。IGF−1Rに活性な全てのチルホスチンはインスリンレセプターと交差反応するが、これらのうちの2つは、IGF−1Rについて適度な選択性(preference)を示した。従って、これらを区別し得る低分子を設計および合成することが可能であり得ることが示唆された。
【0007】
IGF−1レセプターキナーゼの基質競合インヒビターは、Blum,G.ら、Biochemistry 2000,39,15705−15712によって議論されている。単離されたIGF−1Rキナーゼのインヒビターについての多数のリード化合物が報告されている。これらの化合物についてのサーチは、インスリンレセプターキナーゼドメイン(これは、IGF−1Rキナーゼドメインに対して84%相同性である)の3次元構造の知識によって手助けされている。見出された最も強力なインヒビターは、400nMのIC50を有するチルホスチンAG538であった。しかし、上記インヒビターはまた、インスリンレセプターキナーゼをブロックした。
【0008】
Kanter−Lewensohn,L.ら、Mol Cell Endocr 165(2000)、131−137は、黒色腫細胞に対するタモキシフェン(TAM)の細胞傷害性効果がインスリン様増殖因子−1レセプターの発現または機能の妨害に依存し得るか否かについて調査した。TAMはIGF−1結合および細胞表面のIGF−1Rの発現に対して強い影響を有さなかったが、TAMはIGF−1R βサブユニットのチロシンリン酸化を効果的にブロックしたことを見出した。
【0009】
J.L.Hartwellら、Fortschritte der Chemie organischer Naturstoffe 15,1958,83−166によるPodophyllumの化学は、ポドフィロトキシンおよびその異なる誘導体(2つの植物種Podophyllum peltatumおよびPodophyllum emodiに商業的に由来する)の概略を与える。
【0010】
ピクロポドフィリンは、生物学的に不活性であると考えられている(Ayres,D.C.およびLoike,J.D.,Lignana.Chemical,biological and clinical properties.Cambridge University Press,Cambridge,1990)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
(発明の目的)
本発明の目的は、インスリン様増殖因子−1レセプターのチロシンキナーゼの阻害によって、IGF−1R依存性疾患(特に癌)の処置のための新しい方法を見出すことである。
【0012】
(発明の詳細な説明)
1131位、1135位および1136位におけるチロシン残基を含む、IGF−1Rチロシンドメインの12アミノ酸配列の3次元構造を、チロシン残基を模倣しそしてそのリン酸化を妨げる能力を有する化合物を見出すために、コンピュータープログラムを使用して分析した。12アミノ酸ペプチドを使用する場合、3つの重要なチロシンのうちの2つ(すなわち1135および1136)(これらは活性化のためにIGF−1Rにおいて自己リン酸化される必要がある)は、お互いに0.95nm(9.5Å)ほどの近距離に位置し得ること、およびこれらの基の間のみかけの角度は約60°であることが発見された。上記配列の立体配置は図1に示される。このような短い距離は、インスリンレセプターにおける対応するチロシンについては観察されていない。図1はまた、ポドフィロトキシンおよびピクロポドフィリンの空間構造を示す。
【0013】
分子モデリングにより、阻害性分子は、たった1炭素原子によって分離された2つのベンゼン環からなり得ることが示された。2炭素架橋が試みられる場合、ベンゼン環の置換基間の距離は長すぎ、約1.3nm(13Å)であった。
【0014】
チロシン中のヒドロキシ基に対応する置換基は、メトキシ基またはメチレンジオキシ基であるように選択された。なぜなら、これらは化学的に比較的安定である、すなわち、これらは酸化またはリン酸化されないためである。これらの置換基間の距離は、約0.95±0.10nm(9.5±1.0Å)であるべきである。
【0015】
次いで、驚くべきことに、シクロリグナン類ポドフィロトキシン及びピクロポドフィリンの2つの角度をなしかつ置換されたベンゼン環は、チロシン1135と1136との間のポケットにほぼ正確に適合することが見出され、このことは、上記化合物がチロシン残基の自己リン酸化を妨げ得ることを示した。微小管に対する効果とは対照的に、IGF−1R阻害は、ラクトン環においてトランス立体配置を有するシクロリグナン類に限定されなかった。
【0016】
レセプターに侵入するために、阻害分子は小さい必要がある。例えば、ポドフィロトキシンがグルコシド誘導体と複合体化した、ポドフィロトキシン−4,6−O−ベンジリデン−β−D−グルコピラノシドは、IGF−1R阻害に対する効果は完全に消滅した。さらに、ラクトン環のジオール構造への還元後、分子のサイズは、分子から突き出る(sticking out)還元された置換基に起因して増加し、化合物の劇的に減少した活性を生じた。ポドフィロトキシン−ジオールのメチレンジオキシ誘導体またはアセトニドを形成することによってサイズを増加することはまた、ほとんどまたは全く活性を有さない化合物を生じた。
【0017】
インヒビター分子はまた、細胞膜およびIGF−1レセプターに自由に侵入し得るように比較的非極性である必要があり、水中で適度に可溶性であるように十分に極性である必要がある。この分子の極性は、酸素官能基の数および性質によって決定される。この極性は、水溶性がデオキシポドフィロトキシンの水溶性(すなわち約0.01mM)とポドフィロトキシンの水溶性(約0.1〜0.2mM)との間にある場合に最適であるように見える。荷電したかまたは高度に極性の基は、分子上に存在しない。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、医薬としての使用のための式I
【0019】
【化1】

【0020】
式中、R1は、同じであっても異なっていても良く、OHまたはOCH3であり、nは0、1または2であり、R2、R3およびR4は同じであっても異なっていてもよく、H、OH、O、OOCH3、OOCH2CH3、OCH3、もしくはOC25であるか、またはR3およびR4は一緒になってエーテルもしくはラクトンであり、必要に応じて二重結合Δ7(8)またはΔ8(8')を含む、の化合物に関する。
【0021】
特に、式Iの全ての化合物の9位および9’位における炭素はシス立体配置を有し、すなわち、式Iの実線によって示されるように、8−9および8’−9’結合は、炭素環(β結合)の平面中または平面上に位置する。炭素1’と7’との間のような波線は、結合がαまたはβ結合のいずれかであり得ることを示す。α結合(これは、炭素環の平面の下にある)は、破線で示される。ベンゼン環は、好ましくは、ピクロポドフィリン、デオキシピクロポドフィリン、αおよびβアポピクロポドフィリンによって示されるように、α位に存在するべきである。
【0022】
本発明は特に、医薬としての使用のための式
【0023】
【化2】

【0024】
ここで、R2は式Iにおけるように定義される、
の化合物に関する。好ましい化合物は、ピクロポドフィリンまたはデオキシピクロポドフィリンである。上記化合物の化学構造は、図2において示される。
【0025】
ポドフィロトキシンおよびデオキシポドフィロトキシン(記載されたピクロ誘導体の合成のための出発物質として使用される)は、植物中に天然に存在する。精製形態の上記物質を調製するために、例えば、Podophyllum emodiまたはPodophyllum peltatumの乾燥しかつ細かく粉砕した根茎を有機溶媒で抽出する。次いで、抽出物を濾過し、シリカゲルで濃縮する。この物質を含む画分を回収し、後者を酸アルミナおよびシリカゲルなどのクロマトグラフィーによってさらに精製し、そして最終的に再結晶化する。
【0026】
デオキシピクロポドフィリンおよびピクロポドフィリンは、それぞれデオキシポドフィロトキシンおよびポドフィロトキシンから調製され得る。後者の1mgを70%水性メタノール中に溶解した。該溶液に、20mgの酢酸ナトリウムを添加し、次いで混合物を、55℃で20時間インキュベートした。アルコールの蒸発後、生成物を、酢酸エチルで抽出し、次いで、シリカゲル(移動相:ヘキサン−酢酸エチル混合物)、および/または、オクタデシルシラン結合シリカ(移動相:水性メタノール)HPLC上でのクロマトグラフィーによって精製した。
【0027】
医薬としての使用のための特に興味深い本発明の他の化合物は、以下の式III
【0028】
【化3】

【0029】
ここで、R3およびR4は式Iにおいて定義される通りであり、さらに、二重結合Δ7(8)またはΔ8(8')を含む、によって記載され得る。式IIIの好ましい化合物は、α−アポピクロポドフィリンおよびβ−アポピクロポドフィリンである。
【0030】
αおよびβ−アポピクロポドフィリンは、Buchardt,O.ら、J Pharmaceut Sci 75,1076−1080,1986によって記載されるように、上昇した温度で、緩衝化エタノール性溶液中でのインキュベーションによってポドフィロトキシンから調製され得る。ピクロポドフィリンおよびそのアポ誘導体の全合成は、Gensler,J.W.ら、J Am Chem Soc 82,1714−1727,1960によって記載されている。
【0031】
式Iの化合物のさらなる例として、以下が言及される:エピピクロポドフィリン、ピクロポドフィロン、4’−デメチルピクロポドフィリン、ならびにピクロポドフィリンのアセテート誘導体ならびにピクロポドフィリン酸のメチルエステルおよびエチルエステル誘導体。
【0032】
本発明は特に、インスリン様増殖因子−1レセプターのチロシンリン酸化を阻害する医薬の調製のための式Iの化合物の使用に関する。
【0033】
治療目的のためのIGF−1Rチロシンキナーゼのインヒビターを設計するために、インヒビターが、インスリンレセプターキナーゼ(これは、IGF−1Rと高度に相同性である)と交差反応しないことが非常に重要である。インスリンレセプターの同時阻害は、インビボでの糖尿病誘発応答を生じる。この応答は、非常に深刻な副作用を含み、これは、レセプターキナーゼがブロックされているのでインスリン処置によって克服し得ない。しかし、図3を参照すると、ピクロポドフィリン(これは、チルホスチンベースの化合物よりもはるかに強力なIGF−1Rインヒビターである)は、インスリンレセプターチロシンキナーゼと全く干渉しないことが現在立証された。これはまた、上皮成長因子、血小板由来増殖因子または繊維芽細胞増殖因子レセプターのチロシンリン酸化と干渉しない。
【0034】
好ましい局面に従って、本発明は、IGF−1R依存性疾患(例えば、癌、動脈硬化症(血管手術後の冠状動脈の再狭窄の予防を含む)、乾癬および先端巨大症)の予防または処置のための医薬調製のための上記化合物の使用に関する。
【0035】
ポドフィロトキシンは、癌療法に長い間関与してきたが、許容できない副作用を生じた。抗癌効果および副作用は、微小管アセンブリの阻害および有糸分裂ブロックに起因した。現在、ポドフィロトキシンおよびその非毒性異性体のピクロポドフィリン(これは、一般に、生物学的に不活性であると考えられている)が、インスリン様増殖因子−1レセプター(これは、癌細胞中の生存因子として極めて重要な役割を果たす)のチロシンリン酸化の非常に強力かつ特異的なインヒビターであることが立証された。最も重要なことには、ピクロポドフィリンまたはラクトン環中にシス立体配置を有する他のピクロ誘導体のいずれも、インスリンレセプター(これは、IGF−1Rに非常に相同性である)を阻害しない。また、これらは、他の主要な成長因子レセプターキナーゼも阻害しない。ポドフィロトキシンと比較したピクロポドフィリンの一般的に低い細胞傷害性は、前者の化合物が非常に選択的なIGF−1Rインヒビターであることを示唆する。
【0036】
生物学的実験の結果は、サブマイクロモル濃度のピクロポドフィリンまたは他のピクロ誘導体は、腫瘍細胞の死を引き起こすのに十分であり得ることを示唆する。しかし、最適な処置のために、比較的一定の濃度のインヒビターを長期間にわたって維持し、これらが全てのIGF−1Rを連続的に飽和し、このようにして最終的にできるだけたくさんの悪性細胞を殺すことが重要であると考えられている。従って、化合物の血漿濃度をモニタリングすることと組み合わせたピクロポドフィリンまたは誘導体の注入は、処置間のIGF−1Rの再活性化を導き得る繰り返し(例えば、毎日)投与の代わりの選択のストラテジーであり得る。
【0037】
ヒトおよび動物をポドフィロトキシンで処置する以前の試みは、これが全身的(ラットについてのLD50は14mg/kgである)および局所的(組織損傷性)の両方で、比較的毒性の化合物であることを実証した。その細胞傷害性は、β−チューブリンへのその結合に関連しているが、これは、インビトロで試験される場合のIGF−1R阻害について要求されるものよりも遙かに高い濃度でのみ生じるはずである(0.5−1.0μMのIC50対0.001μMのIC50)。この細胞傷害性は、非経口、経口、および局所投与のための薬物としてのその使用を妨げる。
【0038】
本発明は特に、異なる型の癌(例えば、悪性黒色腫);原始神経外胚葉性腫瘍(例えば、ユーイング肉腫);神経膠腫(例えば、グリオブラストーマおよび星状細胞腫);前立腺癌;乳癌;骨髄増殖性およびリンパ増殖性疾患(例えば、白血病およびリンパ腫);消化管腫瘍(例えば、胃癌、結腸癌および膵臓癌);婦人科的癌(例えば、卵巣癌および子宮内膜癌)の予防または処置のための医薬の調製のための記載されるような化合物の使用に関する。
【0039】
IGF−1Rに完全には依存しない腫瘍の場合、本発明の化合物は、他の抗癌薬物の効果を強化するのに有用であり得る。従って、本発明はまた、別の細胞増殖抑制剤(cytostaticum)と組み合わせた式Iの化合物の使用に関する。本発明のシクロリグナンと共に使用され得る細胞増殖抑制剤(cytostatica)の例としては、ビンクリスチン、タキソールおよ
びエトポシドが言及され得る。
【0040】
特別な局面に従って、本発明は、白血病の処置のための医薬調製のための式IIIの化合物の使用に関する。
【0041】
癌療法に加えて、シクロリグナン類は、その病原性が動脈硬化症および乾癬と同様に、IGF−1/IGF−1Rに関与する他の疾患の処置のために有用であり得る(例えば、Bayes−Genis,A.ら、Circ Res 86,125−30(2000)を参照のこと)。
【0042】
特別な局面に従って、本発明は、乾癬の処置のための医薬の調製のための式Iの化合物の使用に関する。上皮過形成は、一般的な皮膚障害である乾癬の重要な特徴である。IFG−1による上皮ケラチノサイトの刺激は細胞分裂に必須であり、従って、IGF−1に対する増加した感受性が乾癬において発生し得る。最近の研究において、IGF−1Rアンチセンスオリゴヌクレオチドがヒト乾癬病変に注射され、そしてこの処置は、過形成上皮の劇的な正常化を引き起こした(Wraight,C.T.ら、Nat Biotechnol 18,521−6(2000))。これは、IGF−1R刺激が乾癬の上皮過形成における律速段階であること、そして選択的なインヒビターによるIGF−1R標的化が潜在的な新しい乾癬療法の基礎を形成し得ることを強力に示唆する。
【0043】
別の局面に従って、本発明は、動脈硬化症および冠動脈血管形成後の再狭窄の処置のための医薬調製のための式Iの化合物の使用に関する。IGF−1は、動脈細胞についての成長プロモーターおよび心臓血管疾患(例えば、動脈硬化班の発生および冠動脈血管形成後の再狭窄)のメディエーターである。IGF−1は、マクロファージ走化性、過剰なLDLコレステロール取り込み、および炎症性(proinflammatory)サイトカインの放出を促進する。さらに、IGF−1は、血管平滑筋細胞(VSMC)増殖および遊走を刺激して新生内膜(neointima)を形成する。このようにして、IGF−1は、これらの事象において重要な役割を果たすようであり、動脈硬化症および再狭窄の新生内膜過形成において、プラーク成長および易損性(vulnerability)を制限または逆転させるために、IGF−1の活性は、IGF−1Rインヒビターを使用して抑制され得る(Bayes−Genis,A.ら、Circ Res 86,125−130,2000)。
【0044】
本発明はまた、生理学的に許容される担体と組み合わせた式Iの化合物を包含する薬学的組成物に関する。この薬学的組成物(これは必要に応じて従来の添加物を含む)は、処置される疾患および患者の状態に依存して、任意の適切な経路によって患者に投与され得る。
【0045】
非経口投与のために、該化合物は、界面活性剤および他の薬学的に許容されるアジュバントを添加してかまたは添加せずに、薬学的担体(これは、水、アルコール、油、および他の許容される有機溶媒のような滅菌した液体であり得る)としての生理学的に許容される希釈剤中の該化合物の溶液、懸濁液もしくはエマルジョンの注射可能な投薬量としてかまたは連続的な静脈内注入によって投与され得る。
【0046】
該化合物はまた、デポー注射(depot injection)またはインプラント調製物の形態で投与され得、これらは、活性成分の徐放性放出を可能にするような様式で処方され得る。
【0047】
経口投与のために、該化合物は、カプセル剤、丸剤、錠剤、トローチ剤、散剤、液剤、懸濁剤またはエマルジョンのような固体または液体の調製物に処方され得る。
【0048】
局所適用のために、該化合物は、軟膏(unguent)、クリーム、軟膏(ointment)、ローションまたはパッチの形態で投与され得る。
【0049】
従って、本発明はまた、哺乳動物における癌の処置の方法に関し、該方法は、腫瘍に罹患する患者への持続注入によって、生理学的に許容される担体と組み合わせて式Iを有する化合物を含む薬学的組成物を投与する工程、該化合物の血漿レベルを制御する工程、および腫瘍が遅延するかまたは消滅するのに十分な期間、0.05〜5.0μMの濃度で血漿レベルを維持するために注入速度を調整する工程を包含する。
【0050】
項1.
医薬としての使用のための式Iの化合物:
【0051】
【化4】

【0052】
ここで、R1は、同じであっても異なっていても良く、OHまたはOCH3であり、nは0、1または2であり、そしてR2、R3およびR4は、同じであっても異なっていてもよく、H、OH、O、OOCH3、OOCH2CH3、OCH3、もしくはOC25であるか、またはR3およびR4は一緒になってエーテルもしくはラクトンであり、必要に応じて二重結合Δ7(8)またはΔ8(8')を含む。
項2.
式II
【0053】
【化5】

【0054】
を有する点で特徴付けられ、R2が式Iにおけるように定義される、項1に記載の化合物。
項3.
ピクロポドフィリン(picropodophyllin)、デオキシピクロポドフィリン(deoxypicropodophyllin)からなる群より選択される、項1または2に記載の化合物。
項4
式III:、
【0055】
【化6】

【0056】
式中、R3およびR4は式Iにおいて定義される通りであり、二重結合Δ7(8)またはΔ8(8')を含む
を有する項1に記載の化合物。
項5
β−アポピクロポドフィリンおよびα−アポピクロポドフィリンからなる群より選択される、項4に記載の化合物。
項6
生理学的に許容される担体と組み合わせて、項1〜5のいずれか1項に記載の化合物を含む、薬学的組成物。
項7
インスリン様増殖因子−1レセプター(insulin-like growth factor-1 receptor)のチロシンリン酸化を阻害する医薬の調製のための、項1〜5のいずれか1項に記載の化合物の使用。
項8
IGF−1R依存性疾患の予防(prophylaxis)または処置のための医薬の調製のための、項1〜5のいずれか1項に記載の化合物の使用。
項9
癌の予防または処置のための医薬の調製のための、項1〜5のいずれか1項に記載の化合物の使用。
項10
悪性黒色腫、ユーイング肉腫、乳癌もしくは前立腺癌の予防または処置のための、項9に記載の使用。
項11
白血病の予防または処置のための医薬の調製のための、項1〜5のいずれか1項に記載の化合物の使用。
項12
癌の処置のための細胞増殖抑制剤(cytostaticum)と組み合わせた、項1〜5のいずれか1項に記載の化合物の使用。
項13
乾癬の予防または処置のための医薬の調製のための、項1〜5のいずれか1項に記載の化合物の使用。
項14
動脈硬化症の予防または処置のための医薬の調製のための、項1〜5のいずれか1項に記載の化合物の使用。
項15
先端巨大症の予防または処置のための医薬の調製のための、項1〜5のいずれか1項に記載の化合物の使用。
項16
哺乳動物における癌の処置の方法であって、該方法は、腫瘍に罹患する患者への持続注入によって、生理学的に許容される担体と組み合わせて、式Iを有する化合物を含む薬学的組成物を投与する工程、該化合物の血漿レベルを制御する工程、および腫瘍が遅延するかまたは消滅するのに十分な期間、0.05〜5.0μMの濃度で血漿レベルを維持するために注入速度を調整する工程を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、IGF−1レセプターのチロシン1131、1135および1136を含む12アミノ酸ペプチドのコンピューターモデルを示す。
【図2A】図2Aは、化合物ピクロポドフィリンおよびポドフィロトキシンの構造式を示す。
【図2B】図2Bは、デオキシピクロポドフィリンおよびβ−アポピクロポドフィリンの構造式を示す。
【図3】図3は、異なるレセプターのチロシンリン酸化に対するピクロポドフィリンの効果を示す図である。
【図4】図4は、IGF−1Rの自己リン酸化に対するピクロポドフィリンの効果を示す図である。
【図5A】図5Aおよび5Bは、4つの異なる細胞株の生存率に対するピクロポドフィリンの用量応答効果を示す図である。図5Aは、それぞれ黒色腫細胞株FM55および肉腫細胞株RD−ESに対する効果を示す。
【図5B】図5Aおよび5Bは、4つの異なる細胞株の生存率に対するピクロポドフィリンの用量応答効果を示す図である。図5Bは、2つの操作された細胞株R−およびP6に対する効果を示す。
【図6】図6Aおよび6Bは、マウスにおける腫瘍重量に対するピクロポドフィリンの効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
実験
材料
化学薬品
細胞培養試薬、すなわち、培地、胎児ウシ血清および抗生物質は、Gibco,Swedenから購入した。全ての他の化学薬品は、他に述べられない限り、Sigma(St.Louis.MO,USA)から購入した。ホスホチロシンに対するマウスモノクローナル抗体(PY99)およびIGF−1Rのαサブユニットに対するポリクローナル抗体(N20)およびインスリンレセプターのαサブユニット、ならびに血小板由来増殖因子レセプターに対するポリクローナル抗体は、Santa Cruz Biotechnology Inc(Santa Cruz,CA,USA)から購入した。IGF−1Rのαサブユニットに対するモノクローナル抗体(αIR−3)および繊維芽細胞増殖因子レセプターに対するモノクローナル抗体は、Oncogene Science(Manhasset,NY,USA)から購入した。上皮成長因子レセプターに対するマウスモノクローナル抗体はLife Scienceから購入し、抗IRS−1アガロース結合抗体はUBI(Lake Placid,NY,USA)から購入した。
【0059】
3H)チミジンおよび(3H)ロイシンは、Amersham Int.(UK)からのものであり、α−平滑筋アクチンに対するモノクローナル抗体は、Sigma Immuno Chemicals(La Jolla,CA,USA)からのものであった。組換えIGF−1は、Pharmacia Upjohn(Stockholm,Sweden)からの贈呈であった。デオキシポドフィロトキシンおよびポドフィロトキシン(純度99.97%)、ならびにα−アポピクロポドフィリン、β−アポピクロポドフィリンは、Analytecon SA, Pre Jorat,Switzerlandからの贈呈であり、ポドフィロトキシン−4,6−O−ベンジリデン−β−D−グルコピラノシドは、Conpharm AB,Uppsala,Swedenからであった。エトポシドはSigmaからのものであった。
【0060】
細胞培養
ヒト黒色腫細胞株SK−MEL−2、SK−MEL−5およびSK−MEL−28、ユーイング肉腫細胞株RD−ESおよびES−1、ヘパトーマ細胞株HepG2、前立腺癌細胞株PC−3、ならびに乳癌細胞株MCF−7は、American Tissue Culture Collection、USAからのものであった。悪性黒色腫細胞株BE、DWBおよびFM55を、R Kiessling教授、CCK,Karolinska Hospital,Stockholm,Swedenから得た。R−およびP6細胞株は、R.Baserga教授、Thomas Jefferson University,Philadelphia,PA,USAからの贈呈であった。R細胞は、IGF−1Rネガティブであるが、P6細胞はIGF−1Rを過剰発現する。
【0061】
ケラチノサイト(HaCaT細胞)は、Mona Backdahl教授、Department of Dermatology,Karolinska Hospital,Stockholm,Swedenによって提供され、Mona Backdahl教授との協力で試験した。HaCaT細胞株は、自発的に不死化したヒトケラチノサイト細胞株(Boukamp Pら、J Cell Biol 106:761−771,1988)であり、これは、乾癬についての実験モデルとして頻繁に使用される(Wraight,C.J.ら、Nat Biotechnol 18:521−526,2000)。HaCaT細胞を、10%胎児ウシ血清、グルタミン、ベンジルペニシリンおよびストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーグル培地中で培養した。
【0062】
ヒト血管平滑筋細胞(VSMC)を、本質的に以前に記載されたように、ヒト腎動脈の外科検体から単離および培養した(Ross R.,J Cell Biol 50:172−186,1971)。手短には、VSMCを、一次体外移植組織から遊走させ、引き続きコンフルエントで継代した。細胞を、15%胎児ウシ血清、0.05mg/mlアスコルビン酸、2μg/mlファンギゾン(fungizone)および200IU/mlのペニシリンを含むF12培地中で維持した。培養した細胞は、平滑筋特異的α−アクチン(これは、ユニークエピトープを認識する)についての免疫染色及びそれらの形態の両方によって同定されるヒト平滑筋細胞の均一な集団であった。培養を、37℃の温度、85%の湿度、および大気中5%のCO2濃度で行った。培地を一週間に二回交換し、細胞を、トリプシン(0.25%)およびEDTA(0.02%)の溶液を使用して、2〜8継代で収穫した。
【0063】
ヒト慢性骨髄性白血病K562/SおよびK562/Vcr30株および急性骨髄性白血病細胞株HL60/0およびHL60/Novは、ATCCから得た。K562/SおよびK562/Vcr30は野生型(非耐性)細胞であるが、K562/Vcr30およびHL60/Novは、細胞増殖抑制性剤耐性亜株である。全ての白血病細胞株を、10%胎児ウシ血清および2mM L−グルタミン、ベンジルペニシリン(100U/ml)およびストレプトマイシン(100μg/ml)で補充したRPMI1640培地中で培養した。細胞を、加湿したインキュベーター中37℃で95%空気/5%CO2雰囲気で維持した組織培養フラスコ中で増殖した。実験については、細胞は、60mmプラスチックディッシュまたは96ウェルプラスチックプレート中で培養した。
【0064】
全ての他の細胞株を、10%胎児ウシ血清、グルタミン、1%ベンジルペニシリンおよびストレプトマイシンを含む最小必須培地中で培養した。細胞は、加湿したインキュベーター中37℃で95%空気/5%CO2雰囲気で維持した組織培養フラスコ中単層で増殖した。実験については、細胞は、35mmもしくは60mmプラスチックディッシュまたは96ウェルプラスチックプレート中のいずれかで培養した。実験は、サブコンフルエントな増殖条件下で開始した。
【0065】
方法
インビトロチロシンキナーゼアッセイ
ポリTyrGlu(pTG)のIGF−1R触媒基質リン酸化を、本質的に以前に記載されたようにして実施した[Parrizas M.ら、同書、およびBlum G.ら、同書]。P6細胞抽出物からのIGF−1R、HepG2からのIRを免疫沈殿し、上清を免疫枯渇(immunodepleted)して、非IGF−1Rチロシンキナーゼをアッセイした。リン酸化したポリマー基質を、西洋わさびペルオキシダーゼ(HARP)に複合体化した精製ホスホチロシン特異的モノクローナル抗体でプローブした。色を、HRP色素形成基質のo−フェニレン−ジアミンジヒドロクロライド(OPD)で顕色した(developed)。色は、分光光度計(ELISAリーダー)によって定量化し、チロシンキナーゼの相対量を反映する。沈殿物を、IGF−1RおよびIRに対する抗体で免疫ブロットし、レセプターの存在を確かめた。連続希釈液を使用して、IGF−1RおよびIRの量に関する最適条件をアッセイした。シグナルは、30分間直線であり、75ng/ウェルまでIGF−1R濃度の関数であった。手短には、96ウェルプレート(Immunolog,Nunc)を、1μg/mlの濃度でIGF−1Rのβサブユニットに対するマウスモノクローナル抗体(LabVision)で、4℃で一晩コーティングした。プレートを、PBS中のBSA(ELISA blocking buffer,Pierce)でブロックし、P6細胞株由来の80μg/mlの総タンパク質溶解物を添加した。プレートを1時間インキュベートし、そしてPBS Tweenで洗浄した。調査した化合物を、IGF−1でのキナーゼ活性化の前に、30分間室温でPBS中に添加した。キナーゼアッセイを、製造業者の指示に従って、インビトロリン酸化のためのSigmaキットを使用して行った。分光測定後、インヒビターのIC50値を、Statisticaプログラムの回帰関数を使用して測定した。
【0066】
IGF−1Rチロシン自己リン酸化を、サンドイッチELISAアッセイによって分析した。手短には、96ウェルプレート(Immunolon,Nunc)を、IGF−1R βサブユニットに対する1μg/ウェルのモノクローナル抗体Ab−5(LabVision)で、4℃で一晩コーティングした。プレートを、PBS Tween中の1%BSAで一時間ブロックし、次いでP6細胞株由来の80g/ウェルの総タンパク質溶解物を添加した。ネガティブコントロールとして、R細胞株由来の総タンパク質溶解物を使用した。調査した化合物を、ATPでのキナーゼ活性化の前に、室温で30分間、APTを含まないチロシンキナーゼ緩衝液中に添加した。キナーゼアッセイを、Sigmaキットを使用して行った。分光測定後、インヒビターのIC50値を、Statisticaプログラムの回帰関数を使用して測定した。
【0067】
細胞増殖および生存アッセイ
細胞増殖キットII(Roche Inc.)は、生存能力のある細胞の呼吸鎖によるオレンジホルマザン染色中の黄色のテトラゾリウム塩XTTの比色変化に基づいている(Roehm,NWら、J Immunol Methods 142:257−265,1991)。96ウェルプレート中に100μl培地中に5000/ウェルの濃度で播種した細胞を、所定の濃度で異なる薬物で処理した。24または48時間後、製造業者のプロトコルに従って、XTTラベリング混合液と共に、細胞をインキュベートした。4時間後、ホルマザン染色を、495nmフィルターを備えたスキャンニングマルチウェル分光光度計を使用して定量する。吸光度は、生きている細胞の数と直接相関している。標準吸光度曲線を、1000細胞/ウェルの増加率で、1000〜10000細胞/ウェルの濃度で播種した未処理細胞によって作製した。全てのスタンダードおよび実験を、三連(triplicate)で行った。
【0068】
インタクト細胞におけるレセプターのチロシンリン酸化アッセイ
細胞を、6cmプレート中でサブコンフルエントまで培養し、次いで10%FBSおよび所望の化合物を含む新しい培地を1時間添加した。次いで細胞を溶解し、特定の抗体を使用する免疫沈降に供した。免疫沈降物を、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって分離し、ニトロセルロースメンブレンに移し、抗ホスホチロシン抗体と共にインキュベートした。アクチン(細胞抽出物中の)またはIGF−1R βサブユニットに対する抗体を、ローディングコントロールとして使用した。検出後、フィルムを定量化のためにスキャンした。
【0069】
免疫沈降およびタンパク質含量の測定
次いで単離された細胞を、プロテアーゼインヒビターを含む10ml氷冷PBSTDS中に溶解した(Carlberg,M.ら、J Biol Chem 271:17453−17462,1996)。50μlプロテインAまたはGアガロースを、1mlサンプル中に添加し、回転式振盪機で、4℃で15分間インキュベートした。4℃で10,000r/分での10分間の遠心分離後、上清を採取した(saved)。タンパク質含量を、Bio−Radから購入した試薬での色素結合アッセイによって測定した。ウシ血清アルブミンを、スタンダードとして使用した。15μlプロテインGプラスアガロースおよび5μl抗IGF−1Rを添加した。回転式振盪機での4℃での3時間のインキュベーション後、沈殿物を、14,000×gで10秒間、マイクロ遠心分離機でのパルス遠心分離によって回収した。上清を捨て、ペレットをPBSTDSで3回洗浄した。
【0070】
ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)
タンパク質サンプルを、Laemmli緩衝液および0.5%メタノールを含む2×サンプル緩衝液中で溶解し、96℃で5分間煮沸した。サンプルを、4%スタッキングゲルおよび7.5%分離ゲルを用いるSDS−PAGEによって分離した。分子量マーカー(Bio Rad,Sweden)を、全ての実験において同時に泳動した。
【0071】
ウエスタンブロッティング
SDS−PAGE後、タンパク質をニトロセルロース膜(Hybond,Amersham,UK)に一晩移し、次いで4%スキムミルク粉末およびPBS中0.02%Tween20の溶液(pH7.5)中で、室温で1時間ブロックした。一次抗体とのインキュベーションを、室温で1時間行い、続いてTweenを含むPBSで3回洗浄し、1時間室温で二次抗体と共にインキュベーションした。さらに3回洗浄した後、膜をストレプトアビジン標識した西洋わさびペルオキシダーゼと共に30分間インキュベートし、次いでAmersham ECL system(Amersham,UK)を使用して検出した。フィルムを、Fluor−S(BioRad)によってスキャンした。
【0072】
実験1.培養した黒色腫細胞中のIGF−1Rのリン酸化に対するポドフィロトキシン誘導体の効果
FM55黒色腫細胞を、10%胎児ウシ血清(FCS)で補充した最小必須培地中で、10,000細胞/cm2の濃度で、6cmディッシュ中に播種した。細胞が、ディッシュ中で65,000細胞/cm2の密度に達したときに、これらを、0.05μMのポドフィロトキシン、デオキシポドフィロトキシン、ピクロポドフィリン、デオキシピクロポドフィリン、4’−デメチル−7−(4,6−O−エチリデン−β−D−グルコピラノシル)エピポドフィロトキシン(エトポシド)およびポドフィロトキシン−4,6−O−ベンジリデン−β−D−グルコピラノシド(pf−4,6−O)で1時間処理した。エトポシドおよびpf−4,6−Oはまた、15μMで投与した。次いで細胞を、方法で記載されるようなIGF−1Rリン酸化のアッセイおよび定量化のために収穫した。表1で示す値は、3実験の平均値を示す。
【0073】
【表1】

【0074】
結果は、ポドフィロトキシン、デオキシポドフィロトキシン、ピクロポドフィリンおよびデオキシピクロポドフィリンは全て、IGF−1Rリン酸化の強力なインヒビターであるが、エトポシドおよびPf−4,6−Oはそうではなかったことを示す。
【0075】
実験2.無細胞系におけるIGF−1Rのリン酸化に対するピクロポドフィリンの用量応答効果
インタクトな細胞に対する全てのこれらのデータは、ピクロポドフィリンおよびポドフィロトキシンがIGF−1Rのリン酸化を妨げることを示したが、これがチロシンキナーゼに対する直接的または間接的な効果であるかどうかは明らかにしなかった。従って、本発明者らは、レセプターを単離し、インビトロでのIGF−1R触媒基質チロシンリン酸化およびIGF−1R自己リン酸化に対するピクロポドフィリンの効果を測定した。ピクロポドフィリンは、pTG基質のリン酸化を効果的に減少させた(IC50値0.006μM、図3を参照のこと)。対照的に、EGFRおよびIRチロシンキナーゼの基質リン酸化および他の“非IGF−1Rキナーゼ”(これらは、IGF−1Rの免疫枯渇(immunodepletion)によって得られた)の基質リン酸化を妨げることはできなかった(図3)。ポドフィロトキシンは、ピクロポドフィリンと同様の結果を生じた。
【0076】
無細胞実験の次のセットにおいて、本発明者らは、PPPが、約0.001μMのIC50値で、IGF−1Rの自己リン酸化(詳細については、方法を参照のこと)を効率的に阻害したことを示した(図4を参照のこと)。同様の応答が、PPTによって得られた(データは示されていない)。PPPがATPレベルまたは基質レベルでのチロシン自己リン酸化(すなわち、IGF−1R βサブユニットのチロシンキナーゼドメイン)と干渉するか否かを調査するために、種々の濃度のATP(19−300μM)を、アッセイの間、反応緩衝液に添加した。示されるように、これは、PPPのIC50値(これは、0.001−0.002μMで維持された)を変化させなかった(図4)。これらの結果は、IGF−1R自己リン酸化のインヒビターがATPとの干渉によって作用するのではなく、むしろIGF−1Rチロシンキナーゼによる基質リン酸化を阻害することを示唆する。
【0077】
実験3.培養細胞中の種々のレセプターチロシンキナーゼに対するピクロポドフィリンおよびポドフィロトキシンの特異性
FM55黒色腫細胞を、実験1に記載されるのと同じ方法で培養した。ディッシュ中で65,000細胞/cm2の密度に達したときに、これらを、それぞれ、0(コントロール)および0.05μMのピクロポドフィリンおよびポドフィロトキシンで、1時間処理した。次いで細胞を単離して、それぞれの分子に対する抗体を使用して、IGF−1R、繊維芽細胞増殖因子レセプター(FGFR)、血小板由来増殖因子レセプター(PDGFR)、上皮成長因子レセプター(EGFR)、インスリンレセプター(IR)およびインスリン基質−1(IRS−1)の免疫沈降に供した。IRS−1は、IGF−1Rの基質であり、従って、そのリン酸化は、リン酸化されたIGF−1Rに依存している。ゲル電気泳動、ウエスタンブロッティングおよび異なるシグナルの定量化は、上記のように行った。
【0078】
【表2】

【0079】
これは、ピクロポドフィリンおよびポドフィロトキシンがIGF−1Rに特異的であることを示す。
【0080】
実験4.種々の悪性細胞型のIGF−1Rリン酸化に対するポドフィロトキシンおよびピクロポドフィリンの効果
異なる起源の12細胞株を、胎児ウシ血清(FCS)で補充した最小必須培地中に10,000細胞/cm2の濃度で、6cmディッシュに播種した。細胞が65,000細胞/cm2の濃度に達したときに、これらを、0、0.01、0.025、0.05、0.1または1.0μM用量のポドフィロトキシンおよびピクロポドフィリンで一時間処理した。次いで細胞を、上記のようにIGF−1Rリン酸化のアッセイおよび定量化のために収穫した。次いで、EC50値(各インヒビターおよび細胞株について50%有効濃度(すなわち、リン酸化を50%減少させるために必要な濃度))を計算する。値は以下の表3に示す。結果は、2つの異なる実験に基づく。
【0081】
【表3】

【0082】
これは、ポドフィロトキシンおよびピクロポドフィリンが、種々の癌細胞におけるIGF−1Rリン酸化を阻害することを示す。
【0083】
実験5.多数の悪性細胞型の生存率に対するポドフィロトキシンおよびピクロポドフィリンの効果
12の異なる型の細胞株を、胎児ウシ血清で補充した最小必須培地中で10,000細胞/cm2の濃度で、96ウェルプレート(ウェル中の培地容量は、100μlであった)中に播種した。細胞が、65,000細胞/cm2の濃度に達したときに、これらを、異なる用量のポドフィロトキシンおよびピクロポドフィリンで48時間処理した。次いで細胞生存率をアッセイした(上記を参照のこと)。濃度として計算される、各インヒビターおよび細胞株についてのEC50値(細胞生存において50%の減少を生じる)は、以下の表4において示す。ピクロポドフィリンで処理した黒色腫細胞株FM55およびユーイング肉腫細胞株RD−ESについての用量応答曲線を図5Aに示す。両方の腫瘍細胞株の生存率は、ピクロポドフィリン濃度によって減少する。図5Bは、マウス繊維芽細胞株(ヒトIGF−1Rを欠く(R−)かまたは過剰発現する(P6))についての用量応答曲線を示す。P6細胞の生存率はピクロポドフィリン用量と共に低下するが、R−細胞は反応性ではない。これは、ピクロポドフィリンがIGF−1Rについて選択的であることを示唆する。表4および図5に示される全ての結果は、4つの異なる実験に基づく。
【0084】
【表4】

【0085】
ポドフィロトキシンおよびピクロポドフィリンは、腫瘍細胞生存率の非常に強力なインヒビターである。
【0086】
実験6.インビボにおける悪性細胞増殖の阻害
4〜5週齢の無病原体ヌードマウス(nu/nu)を使用して、滅菌施設中のプラスチックアイソレーター中で飼育した。ユーイング肉腫細胞株ES−1および黒色腫細胞株BE(共にIGF−1Rを発現することが証明されている)を、0.2mlの容量の滅菌生理食塩水中で、107細胞/マウスで皮下注射した。ポドフィロトキシン、デオキシポドフィロトキシンまたはピクロポドフィリンを用いる実験処置を、DMSOおよび生理学的食塩水(8:2)の混合物からなる、100μl容量の溶媒中の化合物の毎日の腹腔内注射によって行った。コントロールマウスを溶媒で処理した。3〜6匹の動物を、各群において処理した。動物を、疾患および腫瘍増殖の兆候について、1週間に3回モニターした。腫瘍体積を式(d2×D)/2を使用して概算した。ここで、dおよびDは、それぞれ、腫瘍の小さい直径および大きい直径を示す。マウスを、副作用の存在について注意深く観察し、そして病変の組織学的分析のための実験の終わりに犠牲にした。全ての実験を、施設倫理委員会(institutional ethical committee)によって提供される実験室動物使用のための倫理ガイドラインに従って実施した。
【0087】
第1のセットの実験を、ポドフィロトキシン、デオキシポドフィロトキシンおよびピクロポドフィリンのヌードマウスに対する可能性のある局所的および全身的毒性影響を調査するために実施した。最初の実験において、無薬物溶媒、ポドフィロトキシン(0.25mg)、デオキシポドフィロトキシン(0.25mg)またはピクロポドフィリン(0.25mg)のいずれかでロードした(loaded)浸透圧ポンプを側腹領域に皮下移植した。薬物を、7日にわたって、0.6μl/hの一定の流れで、皮下送達した。ポンプの容量は、100μlであった。7日後、マウスを殺して、皮膚およびポンプの出口に隣接する皮下組織を分析して、経験のある病理学者によって組織反応についてスコアリングした。各群において3匹のマウスが存在した。溶媒を用いる処置(コントロール)は、何らの傷害も生じなかった。対照的に、ポドフィロトキシンは、壊死、出血および炎症を有する重篤な組織反応を引き起こした(表5)。デオキシポドフィロトキシンで処理したマウスは、軽い損傷を得たが、ピクロポドフィリン処理した動物は、目に見える反応を示さなかった(表5)。
【0088】
次の実験において、本発明者らは、5日間にわたって毎日、100μlの各化合物を腹腔内注射することによって薬物の全身的効果を分析した。2つの用量を注射し(7または28mg/kg/d)、そして3〜6匹のマウスを、各薬物および用量に使用した。マウスを、不快、疾患および体重減少の兆候について毎日注意深くチェックした。マウスが無薬物溶媒に十分に耐えることが最初に確認された。しかし、低い用量および高い用量のポドフィロトキシンで処理されたマウスは病気になり、2日以内にそれぞれ67%および100%の動物が死亡した(表6)。低用量のデオキシポドフィロトキシン処理マウスは、3日後に疾患の重大な兆候を示した。高用量において、実験は、重大な疾患または死亡に起因して2日後に停止した。対照的に、ピクロポドフィリンのいずれかの用量で処理したマウスは、全5日間の実験を生き残り、疾患のいずれの証拠も示さなかった(表6)。
【0089】
ポドフィロトキシンおよびデオキシポドフィロトキシンの毒性に起因して、本発明者らは、腫瘍異種移植片に対する効果を分析するためにピクロポドフィリンのみを使用した。この目的のために、ES−1(ユーイング肉腫細胞)およびBE(黒色腫細胞)異種移植片を、ヌードマウスにおいて確立した。ES−1およびBE腫瘍が皮下増殖を開始しそして測定可能な場合、マウスを、ピクロポドフィリン(28mg/kg、これは、血漿中の0.05μMを超える平均濃度のピクロポドフィリンを与えるために必要とされる)または担体としての生理食塩中の80%DMSOの腹腔内注射で4〜6日間、毎日処理し、その後、4〜6日間処置しなかった。次いでマウスを殺し、そして経験のある病理学者によって腫瘍を分析した。ピクロポドフィリンは、両方の型の腫瘍の増殖を有意に阻害し、退行を引き起こし(図6Aおよび6Bを参照のこと)、腫瘍標本の組織学的分析は、広範囲の壊死を示した。
【0090】
結果は、ピクロポドフィリンは、ポドフィロトキシンおよびデオキシポドフィロトキシンと対照的に、動物によって十分に耐えられ、腫瘍の退行を引き起こすことを示す。
【0091】
【表5】

【0092】
【表6】

【0093】
実験7.ヒト白血病細胞の生き残りに対するピクロポドフィリンおよび誘導体の効果
白血病細胞株(K562/S、K562/Vcr30、HL60/0およびHL60/Nov)は全て、方法ならびに実験1および2において記載されるように、ウエスタンブロッティング分析によってアッセイされるように、IGF−1Rを発現する。
【0094】
上記細胞株の細胞を、胎児ウシ血清で補充したRPMI40において、96ウェルプレート中に播種した(25000細胞/ウェル、1ウェル当たりの培地容量は100μlであった)。24h後、ピクロポドフィリンおよび誘導体のα−アポピクロポドフィリンおよびβ−アポピクロポドフィリンを、異なる濃度で添加し、そして細胞を72時間インキュベートした。次いで細胞生存率を、アッセイした(上記を参照のこと)。各化合物および細胞株についてのEC50値を以下に示す(表7)。結果は、3つの異なる実験に基づく。
【0095】
結果(表7に示す)は、0.11〜0.32μMピクロポドフィリンが、4つの細胞株のうち3つにおいて50%細胞死を引き起こすのに必要であるが、ビンクリスチン耐性細胞株K562/Vcr30については、0.5μMを超えて必要とされる。対照的に、α−およびβ−アポピクロポドフィリンについてのIC50値は、0.01〜0.05μMほどに低い。
【0096】
【表7】

【0097】
ピクロポドフィリン誘導体α−およびβ−アポピクロポドフィリンは、白血病細胞増殖および生存の高度に強力なインヒビターであることが結論付けられ得る。
【0098】
実験8.細胞増殖抑制剤で処理した悪性細胞に対するピクロポドフィリンの相互作用効果
白血病細胞株K562/S、K562/Nov、HL60/0およびHL60/Novを、実験7において記載されるように、96ウェルプレート中で培養した。24h後、細胞を、0.05μMピクロポドフィリンと同時インキュベートするかまたはしないで、異なる濃度の抗癌剤ビンクリスチンで72h処理した。この濃度におけるピクロポドフィリンは、腫瘍細胞における何らの検出可能な細胞死を引き起こさないことが証明された。次いで細胞生存率をアッセイした。各インヒビターおよび細胞株についてのIC50を以下に示す(表8)。結果は、3つの異なる実験に基づいている。
【0099】
示されるように、ピクロポドフィリンとの同時インキュベーションは、全ての4細胞株において、細胞生存率についてのIC50を減少させた。
【0100】
【表8】

【0101】
結果は、ピクロポドフィリンが従来の細胞増殖抑制剤について悪性細胞を敏感にすることを示す。
【0102】
実験9.ヒト乾癬モデル細胞株のIGF−1Rリン酸化および細胞生存に対するピクロポドフィリンおよびポドフィロトキシンの効果
HaCaT細胞(これらは不死化したヒトケラチノサイトであり、乾癬についてのモデル細胞株を表す)を、10%胎児ウシ血清を含むダルベッコ改変イーグル培地中7,000細胞/cm2の濃度で、6cmディッシュまたは96ウェルプレート(ウェル中の培地容量は、100μlであった)中に播種した。細胞が50,000細胞/cm2の濃度に達したとき、これらを、培養培地中0または0.05μMの最終濃度までの、ポドフィロトキシンまたはピクロポドフィリンと共にインキュベートした。0μMでの処置は、未処理のコントロールを示す。1hのインキュベーション後、6cmディッシュ中の細胞を、実験1において記載されるように、IGF−1Rリン酸化のアッセイおよび定量化のために収穫した。48hのインキュベーション後、96ウェルプレート中で培養した細胞を、上記のように、細胞増殖キットIIによって細胞生存率についてアッセイした。
【0103】
結果は、ポドフィロトキシンおよびピクロポドフィリンの両方がHaCaT細胞における細胞生存率およびIGF−1Rリン酸化の効率的なインヒビターであることを示す。
【0104】
【表9】

【0105】
実験10.動脈硬化症および再狭窄についてのモデルにおける培養されたヒト血管平滑筋細胞(VSMC)のIGF−1Rリン酸化および細胞増殖に対するポドフィロトキシンおよびピクロポドフィリンの効果
IGF−1は、動脈細胞についての増殖プロモーターおよび心臓血管疾患(例えば、冠動脈硬化症班発生および冠動脈血管形成後の再狭窄)のメディエーターである。これらの事象における重要な役割は、血管壁におけるVSMCの過度の増殖(これは、IGF−1によって引き起こされる)によって果たされている(Bayes−Genis Aら、同書)。実験のために、単離かつ培養されたVSMCを、24ウェルプレート中で増殖し(20.000〜40.000細胞/ウェル)、IGF−1Rリン酸化ならびにVSMCの増殖および生存に対するポドフィロトキシンおよびピクロポドフィリンの効果に関する研究を、本質的に実験9において記載されるように行った。さらに、細胞増殖を、DNAへの(3H)チミジン取り込み(DNA合成)およびタンパク質への(3H)ロイシン取り込み(タンパク質合成)を測定することによって評価する。前者の場合、細胞(20.000〜40.000細胞/ウェル)を、24ウェルプレート中で増殖し、異なる濃度(0〜1.0μM)のポドフィロトキシンまたはピクロポドフィリンを含むかまたは含まず、1μCi/ml(3H)チミジンおよびIGF−1(nM〜μM濃度;単独または胎児ウシ血清中に存在)を添加して、24時間インキュベートする。次いで、細胞を、F12培地で洗浄し、DNAを5%氷冷トリクロロ酢酸(TCA)で沈殿させる。DNAを0.1M KOH中で可溶化し、各ウェルにおける500μlの溶液を、シンチレーション液に添加し、放射能を液体シンチレーションカウンターで測定する。後者の場合において、細胞は、上記のように24時間インキュベートするが、(3H)チミジンは使用しない。代わりに(3H)ロイシンが、1μCi/mlの濃度に達するまで添加されるが、最後90分のインキュベーション間のみである。次いで、細胞を冷リン酸緩衝化生理食塩水(pH=7.4)でリンスし、タンパク質は、氷冷TCA中に沈殿する。タンパク質を、以下を含む溶液中に可溶化する:5%ドデシル硫酸ナトリウム、20mM Na2CO3および2mM EDTA。放射能は、液体シンチレーションカウンティングによって測定する。VSMCにおけるDNAおよびタンパク質合成に関する結果は、コントロール細胞(すなわち、ポドフィロトキシンまたはピクロポドフィリンなしでインキュベートされるもの)の%として表される。
【0106】
結論
ピクロポドフィリンおよびラクトン環中にシス立体配置を有するその誘導体は、IGF−1Rチロシンキナーゼの高度に特異的かつ強力なインヒビターであることが示された。
【0107】
インスリン様増殖因子−1レセプターのピクロポドフィリン誘導性不活化は悪性細胞において広範な細胞死を引き起こすが、インスリン様増殖因子−1レセプターを欠く細胞は耐性であった。ピクロポドフィリンおよびその誘導体のこの新しい機構は、癌および他のIGF−1R依存性疾患の治療において有用であり得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾癬の予防または処置のための医薬の調製のための式IIの化合物の使用。
【化1】

(式中、R2がOHであり、9位および9’位における炭素はシス立体配置を有し8−9および8’−9’結合はβ結合であり、且つベンゼン環はα位に存在する、ピクロポドフィリンである化合物)

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−242406(P2009−242406A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134006(P2009−134006)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【分割の表示】特願2003−506277(P2003−506277)の分割
【原出願日】平成14年6月19日(2002.6.19)
【出願人】(503463988)アクセラー エービー (2)
【Fターム(参考)】