特定の対象物品の識別のためのX線断層撮影検査システム
本発明が提供する改良された走査処理は、走査領域の周りの複数のX線放射源位置からX線を発生するように構成された、固定されたX線放射源と、走査領域を通って送られるX線を検出するように構成された検出器の第1のセットと、検出器の第1のセットからの出力を処理して、断層撮影画像データを生成するように構成された、少なくとも1つのプロセッサとを備える。X線検査システムを、他の検査技術、例えば、NQRによる検査、X線回折による検査、X線後方散乱による検査、または痕跡検出による検査と組み合わせて、使用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2009年5月26日に出願の米国特許仮出願第61/181,070号に優先権を依拠する。
【0002】
また、本出願は、2009年6月16日に出願の米国特許出願第12/485,897号の一部継続出願であり、これは2005年10月25日に出願の米国特許出願第10/554,656号の継続出願であり、現在、発行済みの米国特許第7,564,939号であり、これは2004年4月23日に出願の371の国内段階出願PCT/GB04/01729であり、これは、2003年4月25日に出願の英国出願第0309387.9号に優先権を依拠する。
【0003】
また、本出願は、2009年2月16日に出願の米国特許出願第12/371,853号の一部継続出願であり、これは2005年10月25日に出願の米国特許出願第10/554,975号の継続出願であり、現在、発行済みの米国特許第7,512,215号であり、これは2004年4月23日に出願の371の国内段階出願PCT/GB2004/01741であり、これは、2003年4月25日に出願の英国出願第0309383.8号に優先権を依拠する。
【0004】
また、本出願は、2010年1月3日に出願の米国特許出願第12/651,479号の一部継続出願であり、これは2005年10月25日に出願の米国特許出願第10/554,654号の継続出願であり、現在、発行済みの米国特許第7,664,230号であり、これは2004年4月23日に出願の371の国内段階出願PCT/GB2004/001731であり、これは、2003年4月25日に出願の英国特許出願第0309371.3号に優先権を依拠する。
【0005】
また、本出願は、2009年2月2日に出願の米国特許出願第12/364,067号の一部継続出願であり、これは2008年2月19日に出願の米国特許出願第12/033,035号の継続出願であり、現在、発行済みの米国特許第7,505,563号であり、これは2005年10月25日に出願の米国特許出願第10/554,569号の継続出願であり、現在、発行済みの米国特許第7,349,525号であり、これは2004年4月23日に出願の371の国内段階出願PCT/GB04/001732であり、これは、2003年4月25日に出願の英国特許出願第0309374.7号に優先権を依拠する。
【0006】
また、本発明は、2010年4月12日に出願の米国特許出願第12/758,764号の一部継続出願であり、これは2008年9月16日に出願の米国特許出願第12/211,219号の継続出願であり、現在、発行済みの米国特許第7,724,868号であり、これは2005年10月25日に出願の米国特許第10/554,655号の継続出願であり、現在、発行済みの米国特許第7,440,543号であり、これは2004年4月23日に出願の371の国内段階出願PCT/GB2004/001751であり、これは、2003年4月25日に出願の英国特許出願第0309385.3号に優先権を依拠する。
【0007】
また、本出願は、2010年1月29日に出願の米国特許出願第12/697,073号の一部継続出願であり、これは2005年10月25日に出願の米国特許出願第10/554,570号の継続出願であり、現在、発行済みの米国特許第7,684,538号であり、これは2004年4月23日に出願の371の国内段階出願PCT/GB2004/001747であり、これは、2003年4月25日に出願の英国特許出願第0309379.6号に優先権を依拠する。
【0008】
また、本出願は、2008年6月13日に出願の米国特許出願第12/097,422号と2008年6月19日に出願の米国特許出願第12/142,005号との一部継続出願であり、両出願は、2006年12月15日に出願の371の国内段階出願PCT/GB2006/004684であり、これは、2005年12月16日に出願の英国特許出願第0525593.0号に優先権を依拠する。
【0009】
また、本出願は、2009年6月4日に出願の米国特許出願第12/478,757号の一部継続出願であり、これは2009年2月2日に出願の米国特許出願第12/364,067号の継続出願であり、これは2008年2月19日に出願の米国特許出願第12/033,035号の継続出願であり、現在、発行済みの米国特許第7,505,563号であり、これは2005年10月25日に出願の米国特許出願第10/554,569号の継続出願であり、現在、発行済みの米国特許第7,349,525号であり、これは2004年4月23日に出願の371の国内段階出願PCT/GB04/001732であり、これは、2003年4月25日に出願の英国特許出願第0309374.7号に優先権を依拠する。加えて、米国特許出願は、2008年7月15日に出願の英国特許出願0812864.7に優先権を依拠する。
【0010】
また、本出願は、2010年2月25日に出願の米国特許出願第12/712,476号の一部継続出願であり、これは2009年2月26日に出願の米国特許仮出願第61/155,572号と、2009年2月25日に出願の英国特許出願第0903198.0号とに優先権を依拠する。
【0011】
また、本発明は、2009年7月20日に出願の米国特許出願第12/505,659号の一部継続出願であり、これは2008年7月18日に出願の米国特許出願第12/175,599号の継続出願であり、これは2004年9月29日に出願の米国特許出願第10/952,665号の継続出願である。
【0012】
前述のPCT出願、外国出願、米国出願、および、それらに関連するすべての出願は、それら全体で参照として本明細書に組み込まれる。
【0013】
本発明はX線走査に関し、特に、鋭利な対象物、ナイフ、核物質、タバコ、紙幣、薬物、液体等の、不法売買品や不審な対象物に関する、手荷物、小包についてのセキュリティチェックに関する。
【背景技術】
【0014】
X線コンピュータ断層撮影(CT)走査装置は、ここ何年かに渡り空港でセキュリティチェックに使用されてきた。従来のシステムは、ある軸を中心に回転するX線管と、これと一緒に同じ速度で同じ軸を中心に回転するアーチ形のX線検出器を有する。コンベアベルト上を手荷物が運ばれ、このコンベヤベルトは中心となる回転軸の周りの適当な開口部の中に設置され、X線管の回転と共に、この回転軸に沿って移動する。ファンビーム状のX線が放射源から対象物を通過し、X線検出器アレーで検出される。
【0015】
X線検出器アレーは対象物を通過したX線の強度を記録し、その長さ方向に沿った数箇所で対象物を検出する。1セットの投影データは多数の放射源の角度それぞれにおいて記録される。この記録されたX線の強度から、断層撮影(断面)画像を構成することができ、通常、フィルタ補正逆投影法により行われる。手荷物や小包等の対象物の正確な断層撮影画像を生成するため、X線は放射源から全ての面に渡って対象物を通過する必要があることが証明されている。これを上記の構成では、X線放射源の回転走査と、対象物が運ばれるコンベヤの長手方向の移動により行っている。
【0016】
このタイプのシステムではX線断層撮影の走査を行うことが可能な速度は、X線放射源とX線検出器アレーを保持する構台の回転速度に依存する。最新のCT用構台では、X線管と検出器のアセンブリと構台の全体を毎秒2〜4回転させるようにしている。これにより、断層撮影走査を毎秒4〜8回まで行うことができる。
【0017】
最新技術が開発されると共に、単環状のX線検出器は複環状の検出器に置き換わってきている。これにより、多数の断層(典型的には8)を同時に走査することができ、単環状の装置に適応させたフィルタ補正逆投影法を使用して再構成することができる。この撮像システムを通るコンベヤの連続的な動きを伴い、放射源は対象物に対し、らせん形に走査する動きを示す。これにより、より洗練されたコーンビーム画像再構成法を適用することができ、より正確な立体画像再構成が原理的に行える。
【0018】
更なる開発では、掃引電子ビーム走査装置の動作確認が医学応用において行われ、これにより、機械式走査機構のX線放射源とX線検出器は不要となり、これに置き換わる1つ(または複数)の連続した環状のX線検出器が対象物の周りを囲み、検査に際しては、アーチ形アノードの周りを電子ビームが掃引する結果、移動するX線放射源が生じる。これにより、従来の走査装置よりも高速に画像を得ることができる。しかし、電子源が回転軸上にあるため、このような掃引ビーム走査装置は、回転軸に近接し、これと平行して通過するコンベヤシステムとの互換性はない。
【0019】
本発明は物品を検査するX線走査システムを提供し、このX線走査システムは、走査容積の周りに延在し、放射されるX線が走査容積を通過できるように配向された複数の点状放射源を構成するX線放射源と、同様に走査容積の周りに延在し、点状放射源からの走査容積を通過したX線を検出し、検出されたX線に基づく出力信号を生成するように構成されたX線検出器アレーと、走査容積を通過して物品が運ばれるように構成されたコンベヤを有する。
【0020】
本発明が更に提供するネットワーク検査システムは、X線走査システムと、ワークステーションと、X線走査システムをワークステーションに接続するように構成された接続手段とを有し、X線走査システムは、走査容積の周りに延在し、放射されるX線が走査容積を通過できるように配向された複数の点状放射源を構成するX線放射源と、同様に走査容積の周りに延在し、点状放射源からの走査容積を通過したX線を検出し、検出されたX線に基づく出力信号を生成するように構成されたX線検出器アレーと、走査容積を通過して物品が運ばれるように構成されたコンベヤとを有する。
【0021】
本発明が更に提供する物品を仕分けする仕分けシステムは、各物品の複数の走査領域を走査することによって走査装置出力を生成するように構成された断層撮影走査装置と、走査装置出力を解析して各物品を複数の区分の1つに少なくとも部分的には走査装置出力に基づき割り当てるように構成された解析手段と、物品を少なくとも部分的には物品が割り当てられた区分に基づき仕分けするように構成された仕分け手段とを有する。
【0022】
本発明が更に提供するX線走査システムは、X線を走査領域の周りにある複数のX線放射源位置から発生させるように構成されたX線放射源と、走査領域を透過したX線を検出するように構成された第1の検出器セットと、走査領域内の散乱X線を検出するように構成された第2の検出器セットと、第1の検出器セットからの出力を処理して走査領域の画像を構成する画像データを生成し、画像データを解析して画像内の対象物を識別し、第2の検出器セットからの出力を処理して散乱データを生成し、散乱データの各部分を対象物に対応させるように構成された処理手段とを有する。
【0023】
本発明が更に提供するX線走査装置からのデータを収集するデータ収集システムは、画像の各領域にそれぞれ対応する複数の領域を有するメモリと、複数のX線検出器からの入力データを所定の順序で受信するように構成されたデータ入力手段と、入力データから画像の各領域に対応するX線透過データとX線散乱データを生成し、このX線透過データとX線散乱データを適切なメモリ領域に保存するように構成された処理手段とを有する。
【0024】
本発明が更に提供するX線走査システムは、対象物を走査して対象物の断層撮影X線画像を構成する走査データを生成するように構成された走査装置と、走査データを解析して画像データの少なくとも1つのパラメータを抽出して対象物を少なくとも1つの前記パラメータに基づいて複数の区分の1つに割り当てるように構成された処理手段とを有する。
【0025】
更に、爆発性物質や爆破装置の存在について、手荷物や貨物物品を検査したいという要求がある。このような走査は、通常、高速で行いながら、手荷物や貨物物品についての処理能力の中で計測されるが、検出性能を高水準にし、かつ、誤った警報を少なくするように行われる。誤った警報が発生すると、更なる検査が要求され、これにより、人手による探査の前に、手荷物や貨物物品について、その物品の所有者を確認する必要がある場合がある。このようなプロセスは、コストがかかり、時間を消費する。
【0026】
また、高い処理能力の断層撮影システムと、爆破装置を明確に検出できる第2のシステムとを組み合わせることが必要とされている。1つ、または複数の2次元X線画像が、高速(典型的には、コンベヤ速度が0.5m/sの場合)で、1つ、または複数の様々な投影角で得られる。自動化されたアルゴリズムにより、危険性のありそうな物質や装置の存在について、これらの画像を解析する。このような物質や装置が見つかった場合、手荷物や貨物の物品は、第2のシステムに発送され、第2のシステムは、その物品を貫く、1つ、または複数の、断層撮影によって再構成された断層を形成することができる。公知のシステムは低速なため、この方法では、手荷物や貨物物品の、わずかな部分しか、検査することができない。そして、1つ、または複数の断層撮影画像は、爆発物自動検出アルゴリズムによって、解析される。高い頻度で、そのアルゴリズムは、手荷物や貨物物品について、警告を発し、その後、操作者が、その画像データを見なければならない。そして、この時点で、警告を発し続けている物品の一部は、リコンシレーション(物品の所有者の確認)と、人手による探査とにかけられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
鋭利な対象物、ナイフ、核物質、タバコ、紙幣、薬物、液体等の、不法売買品、および爆発性物質、爆破装置等の、関心対象となる特定の物品を検出することができる断層撮影画像を高速、高精度に生成できるシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、第1の検査システムと、第2の検査システムとを備える、貨物や手荷物等の容器の中の対象物を識別するためのシステムに適用される。第1の検査システムは、走査領域の周りの複数のX線放射源位置からX線を発生するように構成された、固定されたX線放射源と、走査領域を通って送られるX線を検出するように構成された検出器の第1のセットと、走査領域の内部で散乱したX線を検出するように構成された検出器の第2のセットと、検出器の第1のセットからのデータ出力を処理し、少なくとも1つの断層撮影画像を生成し、前記検出器の第2のセットからのデータ出力を処理して、散乱画像データを生成するように構成された、少なくとも1つのプロセッサとを備え、第2の検査システムは、NQRによる検査システム、X線回折による検査システム、X線後方散乱による検査システム、または痕跡検出による検査システムのうちの少なくとも1つを備える。
【0029】
任意選択で、少なくとも1つのプロセッサは、容器の中の、不審な対象物を示すデータを出力する。不審な対象物は、X線走査システムを操作する者が関心を持つ内容である任意の対象物であり、例えば、危険性のある対象物、非合法である対象物、不法売買品、武器、薬物、核物質、紙幣、タバコ、ナイフ、爆弾、その他の物品である。第1の検査システムが、容器の中の、不審な対象物を識別した場合のみ、少なくとも1つのプロセッサは、その容器を第2の検査システムで検査すべきであることを示す信号を出力する。第1の検査システムが、容器の中の、不審な対象物を識別しなかった場合のみ、少なくとも1つのプロセッサは、容器を第2の検査システムで検査すべきでないことを示す信号を出力する。第2の検査システムは、容器の中に、不審な対象物が存在するか否かを示す信号を出力し、第2の検査システムの出力と、断層撮影画像データと、散乱画像データとを使用して、不審な対象物が非合法なものか否かを判定する。
【0030】
第1の検査システムは、第2の検査システムと並列に動作する。第1の検査システムは、第2の検査システムに対して、直列に動作する。第1の検査システムは、断層撮影画像データ、または散乱画像データの、少なくとも1つを解析して、容器の中の、対象物の材質の種類を判定する。第2の検査システムは、第1の検査システムによって判定された材質の種類に基づき、核四極子の計測を行う。第2の検査システムは、第1の検査システムによって生成された断層撮影画像に基づき、X線回折による検査を行う。固定されたX線放射源は、電子走査式X線放射源である。
【0031】
別の実施形態では、本発明は、容器の中の対象物を識別するためのシステムを備え、そのシステムは、第1の検査システムと、第2の検査システムへ、容器を移動させる搬送システムとを備える。その搬送機構は、任意の動作機構とすることができ、通常のコンベヤベルト、カート、手動操作式パレット、リフト、または、その他の構造とすることができる。第1の検査システムは、走査領域の周りの複数のX線放射源位置からX線を発生するように構成された、固定されたX線放射源と、走査領域を通って送られるX線を検出するように構成された検出器の第1のセットと、検出器の第1のセットからのデータ出力を処理し、少なくとも1つの断層撮影画像を生成するように構成された、少なくとも1つのプロセッサとを備え、搬送システムは、第1の検査システムから第2の検査システムへ、容器を移動させ、第2の検査システムは、NQRによる検査システム、X線回折による検査システム、X線後方散乱による検査システム、または痕跡検出による検査システムのうちの少なくとも1つを備える。
【0032】
任意選択で、少なくとも1つのプロセッサは、容器の中の、不審な対象物を示すデータを出力する。第1の検査システムが、容器の中の、不審な対象物を識別した場合のみ、少なくとも1つのプロセッサは、容器を前記第2の検査システムで検査すべきであることを示す信号を出力する。第2の検査システムは、容器の中に、不審な対象物が存在するか否かを示す信号を出力し、第2の検査システムの出力と、断層撮影画像データとを使用して、不審な対象物が危険性がある物か否かを判定する。第1の検査システムは、第2の検査システムと並列に動作する。第1の検査システムは、第2の検査システムに対して、直列に動作する。第1の検査システムは、断層撮影画像データを解析して、容器の中の、対象物の材質の種類を判定する。第2の検査システムは、第1の検査システムによって判定された材質の種類に基づき、核四極子の計測を行う。第2の検査システムは、第1の検査システムによって生成された断層撮影画像に基づき、X線回折による検査を行う。
【発明の効果】
【0033】
鋭利な対象物、ナイフ、核物質、タバコ、紙幣、薬物、液体等の、不法売買品、爆発性物質、爆破装置等の、関心対象となる特定の物品を検出することができる断層撮影画像を高速、高精度に生成することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は本発明の第1の実施形態に係るリアルタイム断層撮影セキュリティ走査システムの長手方向断面である。
【図1a】図1aは図1のシステムのX線放射源の斜視図である。
【図2】図1のシステムの平面図である。
【図3】図1のシステムの模式的な側面図である。
【図4】図1のシステムのデータ取得システムを形成する部分の模式図である。
【図5】図1のシステムの危険性検出システムを形成する部分の模式図である。
【図6】図1の走査システムを含む本発明の実施形態に係る手荷物仕分けシステムの模式図である。
【図7】本発明の更なる実施形態に係る手荷物仕分けシステムの模式図である。
【図8a】図8aは本発明の更なる実施形態に係る手荷物仕分けシステムの模式図である。
【図8b】図8bは本発明の更なる実施形態に係る手荷物仕分けシステムの別の模式図である。
【図8c】図8cは本発明の更なる実施形態に係る手荷物仕分けシステムの別の模式図である。
【図9】本発明の更なる実施形態に係るネットワーク型手荷物仕分けシステムの模式図である。
【図10】本発明の更なる実施形態に係るスタンドアロン型走査システムの模式的な平面図である。
【図11】図10のシステムの模式的な側面図である。
【図12】本発明の更なる実施形態に係るモジュール式走査システムの模式的な側面図である。
【図13】X線散乱現象の図である。
【図14】本発明の更なる実施形態に係るセキュリティ走査システムの長手方向断面である。
【図15】どのように異なる散乱現象が検出されるかを示す図14のシステムの更なる長手方向断面である。
【図16】図14のシステムの横断面である。
【図17】図14の走査システムのデータ取得システムの模式図である。
【図18】本発明の更なる実施形態に係る2種類のエネルギーに対する走査装置の部分図である。
【図19】図18の走査装置の更なる部分図である。
【図20】本発明の更なる実施形態の2種類のエネルギーのX線放射源の模式図である。
【図21】本発明の更なる実施形態に係る走査装置の検出器アレーの模式図である。
【図22】本発明の更なる実施形態に係る走査装置の検出器アレーの模式図である。
【図23】図21の実施形態のデータ取得回路の回路図である。
【図24】本発明の更なる実施形態のデータ取得回路の回路図である。
【図25】仕分けループ部を有する手荷物取り扱いシステムの一実施形態である。
【図26】仕分けループ部を有する手荷物取り扱いシステムの別の実施形態である。
【図27】NQR検出システムを備える確認センサーの一実施形態である。
【図28a】NQR検出システムのための、パルス列の第1の例のグラフである。
【図28b】NQR検出システムのための、パルス列の第2の例のグラフである。
【図29】標準的なX線管からのX線のスペクトラムの一例である。
【図30a】水のようなアモルファス物質と、爆発物等の多結晶物質とに対する指標となるX線回折スペクトラムの第1の例である。
【図30b】水のようなアモルファス物質と、爆発物等の多結晶物質とに対する指標となるX線回折スペクトラムの第2の例である。
【図31】確認センサーとして使用するためのX線回折システムの実施形態の一例である。
【図32】1次ビームと2次コリメータ・ビームとの交差部により規定される検査領域である。
【図33】パルス形成機能を有する適切な読み出し回路に結合された検出器を示す図である。
【図34】コンベヤの動く方向に、実質的に平行に配列されている回折検出ユニットを示す図である。
【図35】制御システムに固定され、制御システムにより、回折ビームの向きが、実質的に垂直方向から水平方向まで回転できるようになっているブームを示す図である。
【図36】後方散乱システムの一例を示す図である。
【図37】痕跡検出システムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の実施形態をここに、ほんの一例として添付図面を参照して記述する。
【0036】
図1〜3を参照すると、搬送路式手荷物走査システム6は、多焦点X線放射源10とX線検出器アレー12とを有する走査部8を有する。多焦点X線放射源10は、この多焦点X線放射源10上にそれぞれ間隔を置いて位置する多数の点状放射源14を有し、この点状放射源14は、このシステムの軸X−Xの周り360°全周に渡る円状アレーとして配置される。360°全周に満たない角度範囲を覆うアレーも使用できることは理解されるところである。
【0037】
図1aを参照すると、多焦点X線放射源10は多数の放射源ユニット11で構成され、この放射源ユニット11は走査領域16の周りに間隔を置いて位置し、コンベヤ移動方向に対し垂直な面に実質的に円状に配置される。各放射源ユニット11は、2つの側部を有する導電性金属製サプレッサ13と、この導電性金属製サプレッサ13の側部の間に沿って延在するエミッタ素子15とを有する。グリッドワイヤ17として形成される多数のグリッド素子は、導電性金属製サプレッサ13の上方で支持され、エミッタ素子15と垂直になっている。収束ワイヤ19として形成される多数の収束素子は、エミッタ素子に対しグリッドワイヤ17の反対側のもう一方の面で支持されている。収束ワイヤ19はグリッドワイヤ17に平行で、互いにグリッドワイヤ17と同じ間隔を隔てて配置され、各収束ワイヤ19は、それぞれグリッドワイヤ17の1つと一緒に配置されている。
【0038】
収束ワイヤ19は2つの支持レール21で支持され、この支持レール21はエミッタ素子15に平行に延在し、収束ワイヤ19は導電性金属製サプレッサ13と間隔を置いて位置している。支持レール21は導電性であり、全ての収束ワイヤ19が共に電気的に接続されるようになっている。支持レール21の一方は接続部材23に接続され、収束ワイヤ19が電気的に接続されるようになっている。各グリッドワイヤ17は導電性金属製サプレッサ13の一方の側部の下方に延在し、それぞれ、電気的接続部材25に接続され、この電気的接続部材25により各グリッドワイヤ17は独立して電気的に接続される。
【0039】
アノード27はグリッドワイヤ17と収束ワイヤ19の上方で支持されている。アノード27は棒状に形成され、典型的には銅タングステンまたは銀メッキを施した銅によるもので、エミッタ素子15に平行に延在する。従って、グリッドワイヤ17と収束ワイヤ19はエミッタ素子15とアノード27の間に延在している。電気的接続部材29によりアノード27は電気的に接続される。
【0040】
グリッドワイヤ17は正電圧に接続された2つを除き、全て負電圧に接続される。この正電圧のグリッドワイヤによりエミッタ素子15の領域から電子ビームが得られ、収束ワイヤ19により収束し、アノード27上の点に電子ビームを向かわせ、このグリッドワイヤのペアに対しX線点状放射源が形成される。従って、グリッドワイヤの電位は、どのグリッドワイヤのペアを任意のある時間に動作させるかを選択して変えることができる。すなわち、アノード27上の、どの点を任意の時間に動作しているX線点状放射源とするかを選択する。
【0041】
従って、多焦点X線放射源10を制御して、各放射源ユニット11の各点状放射源14からのX線を独立して発生させることができ、図1を再び参照すると、各点状放射源14からのX線は円状多焦点X線放射源10内の走査領域16を通って内側を向いている。多焦点X線放射源10を制御する制御部18は、グリッドワイヤ17に印加される電位を制御し、これにより、各点状放射源14からのX線の放射を制御する。この他の好適なX線放射源の構成についてはWO2004/097889に記述されている。
【0042】
多焦点X線放射源10は、電子制御回路18を使用して、多焦点X線放射源10内の多数の独立したX線点状放射源14の内のどれを任意の時間において時間内に動作させるかを選択することが可能になっている。従って、電気的に多焦点X線管を走査することにより、機械部品を機械的に動かすこと無しにX線放射源があたかも動いているかのような状態が作られる。この場合、放射源の角回転速度は、従来の回転式X線管アセンブリを使用する場合には全く得ることのできないレベルに上げることができる。この高速な回転走査により、これに応じたデータ取得プロセスの高速化と、後に続く高速画像再構成がもたらされる。
【0043】
また、X線検出器アレー12は円状に軸X−Xの周りに配置され、多焦点X線放射源10に対し軸X−Xの方向に少しずれた位置にある。多焦点X線放射源10は、X線が走査領域16を通過して走査領域16の反対側のX線検出器アレー12に放射される向きになるよう配置される。従って、X線ビームの経路18は走査領域16を通り、走査装置の軸X−Xに実質的に、すなわちほぼ垂直な方向となり、軸X−Xの近くで互いに交差する。これにより、走査され、画像化される走査領域の容積は、走査装置の軸に垂直な薄い断層により形成される。放射源が走査されることにより、各点状放射源はそれぞれの時間においてX線を放射するようになっており、この放射時間は所定の順番に設定されている。各点状放射源14がX線を放射すると、X線検出器アレー12に入射したX線の強度に基づく信号がX線検出器アレー12から発生し、この信号により生成される強度データがメモリ内に記録される。放射源が走査を完了した時、この検出器信号を処理して走査容積の画像を形成することができる。
【0044】
コンベヤベルト20は撮像容積を通って左から右へ図1に示すように走査装置の軸X−Xと平行に移動する。X線散乱遮へい部22はコンベヤベルト20の周りのX線システム本体部分の上流と下流に設置され、操作者が散乱したX線を浴びないようになっている。X線散乱遮へい部22は鉛ゴム製のれん24を、その開口端に有し、検査される物品26は検査領域に入る時と出る時、こののれんを通って移動させられるようになっている。ここに示した統合システムでは、主電子制御システム18と、処理システム30と、電源32と、冷却ラック34とは図示のようにコンベヤベルト20の下に取り付けられている。コンベヤベルト20は通常、連続して走査するように移動し、一定のコンベヤ速度で動作して、典型的には撮像容積内に炭素繊維製フレームアセンブリを有するように構成される。
【0045】
図4を参照すると、処理システム30は電子データ取得システムとリアルタイム画像再構成システムとを有する。X線検出器アレー12は、単純な直線状のパターン(例えば、1×16)で並べられた、独立したX線検出器50の配列を有する。また、複環状のパターン(例えば、8×16)とすることも可能である。各X線検出器50は検出されたX線の強度に基づく信号を出力する。多重化ブロック52は各X線検出器50から入力された出力データ信号を多重化し、データにフィルタ処理を行い、ゲインとオフセットの補正を行って、このデータを高速シリアルストリームにフォーマットする。選択ブロック53は全ての多重化ブロック52からの信号を取り込み、画像再構成に必要な全てのX線データの一部だけを選択する。また、選択ブロック53は対応するX線点状放射源の減衰がない場合のX線ビーム強度Io(多焦点X線管内の各X線点状放射源により変化する)を測定し、多重化ブロック52からのX線強度データIxをlogo(Ix/Io)を求めることにより処理した後、これに対し適当な1次元フィルタによる畳み込み積分を行う。得られた投影データはシノグラムとして保存され、このシノグラムにおいて投影データは1つの軸、ここでは水平軸とし、これに沿った画素番号を伴う配列として並び、また、もう1つの軸、ここでは垂直軸とし、これに沿った放射源角度を伴う配列として並ぶ。
【0046】
そして、データは選択ブロック53から、1組の逆投影加重処理エレメント54へ並行して送られる。逆投影加重処理エレメント54はハードウェアの中にマッピングされ、前もって計算された係数から成る参照テーブルを使用して、畳み込み積分された必要なX線データと、高速逆投影処理と高速加重処理についての重み付け係数を選択する。フォーマット処理ブロック55は逆投影加重処理エレメント54から再構成画像の各部分の画像を表すデータを取り込み、最終出力画像データをディスプレイ画面上で適切にフォーマットされた3次元画像を生成するのに適した形式にフォーマットする。この出力は画像をリアルタイムで生成するのに十分な速さで生成され、リアルタイムまたはオフラインでの表示が可能なので、このようなシステムをリアルタイム断層撮影(Real Time Tomography:RTT)システムと呼ぶ。
【0047】
この実施形態では、多重化ブロック52はソフトウェアでプログラミングされ、選択ブロック53とフォーマット処理ブロック55は共にファームウェアでプログラミングされ、逆投影加重処理エレメント54はハードウェアにマッピングされている。但し、これらの各構成要素はハードウェアとソフトウェアのどちらでもよく、該当するシステム要求に合わせればよい。
【0048】
図5を参照すると、各手荷物等の物品の各最終出力画像は、その後、処理システム30内の危険性検出プロセッサ60により処理され、この危険性検出プロセッサ60は画像化された手荷物等の物品に危険性があるかどうかを判定するように構成されている。危険性検出プロセッサ60では、入力されたX線断層撮影画像データ62は1組の低レベルパラメータ抽出部63(レベル1)の中に送られる。低レベルパラメータ抽出部63は画像の特徴、例えば、一定のグレーレベルの領域、質感、統計値等を識別する。低レベルパラメータ抽出部63には各2次元画像すなわち断層像に関するデータに対し動作するものもあれば、3次元画像に対し、動作するものもあり、また、シノグラムデータに対し動作するものもある。可能な場合、各低レベルパラメータ抽出部63は同じ1組の入力データに対し並行処理を行い、各低レベルパラメータ抽出部63は異なる処理動作を行い、異なるパラメータを求めるように構成される。処理終了時、低レベルパラメータ抽出部63により求めたパラメータは上位の1組の判別ツリー64(レベル2)に送られる。抽出されたパラメータの詳細について以下に述べる。判別ツリー64はそれぞれ、多数の(典型的には全ての)低レベルパラメータを取り込み、より高レベルの各情報、例えば、隣接する容積についての情報等を関連する統計値を用いて構築する。最高レベル(レベル3)では、データベース検索部65がレベル2で生成されたより高いレベルのパラメータを、検査されている物品について危険性が存在する確率Pr(threat)の「赤」と、安全である確率Pr(safe)の「緑」とにマッピングする。この確率は処理システム30により使用され、走査された物品を該当する安全性区分に割り当て、自動仕分け制御出力を生成する。この自動仕分け制御出力は、物品が合格区分に割り当てられたことを示す第1の「緑」の出力と、物品が「不合格」区分に割り当てられたことを示す第2の「赤」の出力と、自動仕分け動作が十分な信頼性を伴って実行されず、物品を「合格」区分または「不合格」区分に割り当てることができないことを示す第3の「黄色」の出力のいずれかにすることができる。具体的には、Pr(safe)が所定の値よりも大きい場合(またはPr(threat)が所定の値よりも小さい場合)、自動仕分け制御出力は第1の信号形態で生成され、この第1の信号形態は物品が緑の経路に割り当てられるべきであることを示す。Pr(threat)が所定の値よりも大きい場合(またはPr(safe)が所定の値よりも小さい場合)、自動仕分け制御出力は第2の信号形態で生成され、この第2の信号形態は物品が赤の経路に割り当てられるべきであることを示す。Pr(threat)(またはPr(safe))が、これら2つの所定の値の間にある場合、自動仕分け制御出力は第3の信号形態で生成され、この第3の信号形態は物品が赤の経路にも緑の経路にも割り当てることができないことを示す。また、この確率は更に追加された出力信号として出力することもできる。
【0049】
これらのパラメータは低レベルパラメータ抽出部63により求めることができ、通常、2次元または3次元画像の分割された領域内の画素の統計分析と関連している。画像内で分割された領域を識別するため、統計的エッジ検出法が使用される。これは、ある画素から開始し、隣接する画素が同じ領域の部分かどうかを確認し、領域が大きくなると共に外側へ移動していくものである。各ステップで、領域内の画素の平均明度を計算することにより領域の明度の平均値を求め、その領域に隣接する次の画素の明度を、その平均値と比較し、これがその画素をその領域に加えてもよいほどに近いかどうかを判定する。この場合、この領域内における画素の明度の標準偏差を求め、新しい画素の明度がこの標準偏差に入っていれば、この領域に加える。そうでない場合、この画素をこの領域には加えないで、これにより、この領域内の画素と、この領域には加えないことを確認された画素との間の境界をもって、この領域のエッジを定義する。
【0050】
画像が領域に分割された後、この領域のパラメータを求めることができる。このパラメータの1つに、領域内における画素の明度の分散という評価尺度がある。この値が高い場合、多くの塊から成る物質である可能性が示され、これは例えば手製爆弾等が検知された可能性があり、一方、この分散が低い場合、これは液体等の均質な物質であることを示すと考えられる。
【0051】
この他に、測定されるパラメータとして、領域内における画素値の分布の歪度があり、これは画素値のヒストグラムの歪度を算出することにより求められる。ガウス分布すなわち歪みのない分布は領域内の物質が均質であることを示し、一方、より高い歪みがある分布は、領域内が非均質であることを示す。
【0052】
上記のように、これらの低レベルパラメータは上位の判別ツリー64に送られ、ここで、より高レベルの情報が構築され、より高レベルのパラメータが求められる。このような、より高レベルのパラメータの1つに、識別される領域の容積に対する表面積の比がある。この他に、相似性という評価尺度があり、この場合には領域の形状とシステムに保存されたテンプレートの形状の相互相関である。このテンプレートの形状はセキュリティ上、危険とされる物品の形状に対応したものとして構成され、例えば、銃や起爆装置である。これらの高レベルパラメータを上記の様に使用して、画像化された対象物が危険性を示すレベルであるかどうかを判定する。
【0053】
図6を参照すると、インライン式リアルタイム断層撮影手荷物仕分けシステムは図1の走査システム6を有し、これを通過するコンベヤベルト20を伴う。走査システム6の下流に仕分け装置40が設置され、コンベヤベルト20からの物品である手荷物を受け入れ、これを合格すなわち「緑」のコンベヤ経路42、または不合格すなわち「赤」のコンベヤ経路44のいずれかに送る。仕分け装置40は処理システム30からの制御線46を経由する自動仕分け出力信号により制御され、この自動仕分け出力信号は物品が合格か不合格かについての処理システム30の判定を示し、また、回線45を経由して仕分け装置40に接続されているワークステーション48からの信号によっても制御される。走査システム6からの画像と処理システム30からの信号は赤と緑に対する確率と処理システム30の仮の判定を示し、ワークステーション48にも送られる。ワークステーション48は画面47上に画像を表示するよう構成され、操作者が見られるようになっており、また画面に赤と緑に対する確率と、仮の自動仕分け判定が表示されるようにもなっている。ワークステーション48の使用者は画像と確率と自動仕分け出力を再確認することができ、物品が赤または緑の区分に割り当てられた場合、走査システム6の判定を承認するか無効にするかを決定でき、走査システム6の判定により物品が「黄色」の区分に割り当てられた場合、判定を入力することができる。ワークステーション48は使用者入力部49を有し、これにより、使用者は信号を仕分け装置40に送ることができ、この信号は仕分け装置40により走査システム6の判定を無効化するものとして認識されることができる。無効化信号が仕分け装置40により受信されると、仕分け装置40は走査システム6の判定を無効化する。無効化信号が受信されない場合、または、実際にはワークステーション48からの確認信号が受信され、ワークステーション48が走査システム6の判定を確認している場合、仕分け装置40は走査装置の判定に基づき物品の仕分けを行う。この仕分けシステムが物品について「黄色」であるという信号を走査システム6から受信した場合、まず、その物品を「赤」の区分に割り当て、「赤」の経路に送る。但し、「緑」の区分に入れるべきと示されている物品の仕分けの前にワークステーション48から入力信号を受信した場合、その物品は「緑」の経路に仕分けされる。
【0054】
図6のシステムの変形例では、仕分けを完全に自動化することができ、「合格」と「不合格」の2つだけの仕分け出力の1つを出力する処理システムであり、物品は「緑」または「赤」のいずれかの経路に割り当てられる。また、この処理システムにより1つの閾値を伴う確率Pr(threat)の1つだけを求め、この確率がこの閾値より大きいか小さいかによって物品を2つの区分の内の1つに割り当てることも可能とされる。この場合、この割り当ては、まだ仮であり、操作者には、まだ自動仕分けを無効化するという選択肢があるとういうことになる。更なる変形例では、走査システムの自動区分割り当ては最終割り当てとして使用され、使用者による入力は全くない。これにより、完全に自動化された仕分けシステムが提供される。
【0055】
図6のシステムでは、走査速度はコンベヤ速度に合わせられ、手荷物はコンベヤベルト20上に載せられる搬入区域から一定の速度で移動し、走査システム6を経由して、仕分け装置40上に移動することができるようになっている。コンベヤベルト20は、走査システム6の出口と仕分け装置40の間で距離Lに渡って延在する。物品である手荷物が距離Lに渡ってコンベヤベルト20上を移動する間の時間で、操作者は検査中の物品の画像データと、走査システム6により判定された初期区分割り当てとを見ることができ、またRTTシステムによる自動判定を承認または却下することができる。典型的には手荷物は、その後、合格の経路に受け入れられ、その先への搬送準備に送られるか、不合格の経路に入れられ、それ以上の検査からは外されるかのいずれかになるものとされる。
【0056】
このRTT多焦点システムでは、RTT走査ユニット8は最大の手荷物用ベルト速度で動作することができるので、手荷物待ち行列機構も、その他の迂回機構も必要とせずに最適なシステム動作が行える。このような統合システムにおいて、従来の回転式放射源システムでは処理能力に限界があるため、著しく制約を受ける。このため、度々、従来のCT装置を複数台、並列に設置し、高性能手荷物取り扱いシステムを使用して物品を検査のため、次に利用可能な装置に振り分けている。このように複雑になることを図6の構成により回避することができる。
【0057】
図7を参照すると、本発明の第2の実施形態は冗長システムを有し、この冗長システムにおいて、2つのRTT走査システム70、72は同じコンベヤ74上で直列に設置され、一方のシステムが動作停止中に、他方が手荷物の走査を続けられるようにしている。いずれの場合も、コンベヤベルト74はRTT走査システム70、72の両方を通って標準動作ベルト速度で移動を続けることになる。
【0058】
図8aを参照すると、第3の実施形態では、より複雑な冗長システムが設けられ、この冗長システムにおいて、2つのRTT走査システム82、84は並列して動作する。第1の主搬入コンベヤ86は、仕分けされる全ての物品を第1の仕分け装置88に搬送し、この仕分け装置88は物品を2つの更なるコンベヤ90、92のいずれか1つの上に転送することができる。この2つのコンベヤ90、92はそれぞれ、各走査システム82、84の1つを通り、この走査システム82、84は物品を走査し、物品が合格か不合格かの判定を行うことができる。更なる仕分け装置94、96は、それぞれ2つのコンベヤ90、92に設けられ、その先への搬送のため、「緑の経路」の共通コンベヤ98上へ、または、更なる検査を受けるため、不合格の場合の「赤の経路」のコンベヤ100上へ、手荷物を仕分けするように構成される。この構成では、第1の主搬入コンベヤ86と、「緑の経路」のコンベヤ98とをRTTコンベヤ速度よりも速い速度、典型的には最大で、その2倍の速度で、動作させることができる。例えば、この場合、第1の主搬入コンベヤ86と「緑の経路」の共通コンベヤ98が1m/sの速度で移動すると、走査コンベヤ82、84は、この半分の速度、すなわち0.5m/sで移動する。当然ながら、このシステムは並列に追加されたRTTシステムにより拡張することができ、走査コンベヤ82、84の速度に対する第1の主搬入コンベヤ86の速度の比は、並列している走査装置の数に等しいか、または実質的に等しい。但し、仕分け装置は主コンベヤ速度が約1m/sを超えると信頼性が無くなる場合がある。
【0059】
図8bを参照すると、更なる実施形態では、手荷物仕分けシステムは多数のRTT走査装置81b、82b、83bを有し、典型的には、その数は1つのシステムにおいて最大で60程度であり、それぞれ、各搬入受け入れ部に対応している。仕分け装置84b、85b、86bは各RTT走査装置に対応しており、手荷物はコンベヤ上を各RTT走査装置から、これに対応する仕分け装置に搬送される。各仕分け装置84b、85b、86bは、手荷物を対応する走査装置からの信号に応じて、共通合格経路コンベヤ88b、または共通不合格経路コンベヤ87b上へ仕分けする。更なる予備RTT走査装置89bが共通不合格経路コンベヤ87bに設けられ、これに対応する仕分け装置90bにより、手荷物は共通不合格経路コンベヤ87b上に残留するか、または共通合格経路コンベヤ88bに転送されることができる。
【0060】
通常動作においては、主走査装置81b、82b、83bは、それぞれ手荷物を仕分けし、予備走査装置すなわち冗長走査装置89bは不合格の経路に仕分けされた物品に対する追加チェックのみを行う。冗長走査装置89bにより手荷物・物品に危険性がない、または危険性が非常に低いと判定された場合、物品は合格の経路に転送される。主走査装置81b、82b、83bの1つが動作しない場合、または故障した場合、対応する仕分け装置は、その走査装置からの全ての手荷物を不合格の経路に仕分けするように構成される。この時、予備走査装置89bは、この全ての手荷物を走査し、合格の経路と不合格の経路の仕分けを制御する。これにより、故障した走査装置の修理または交換をしている間も、全ての搬入受け入れ部が動作を継続できる。
【0061】
図8cを参照すると、更なる実施形態において、各搬入受け入れ部からの手荷物は複数の独立したコンベヤを通って中央ループ部いわゆる回転式コンベヤ81c上に転送され、そこで連続して周回する。多数の仕分け装置82c、83c、84cは、それぞれ手荷物・物品を中央ループ部81cから、各RTT走査装置85c、86c、87cへ誘導する各コンベヤに転送するように構成される。仕分け装置82c、83c、84cは走査装置により制御され、手荷物・物品が各走査装置に送られる速度が制御される。走査装置から、コンベヤにより全ての手荷物・物品が共通搬出コンベヤ88cに転送され、更なる仕分け装置89cに誘導される。これは全ての走査装置により制御され、各手荷物・物品は合格の経路90Cと不合格の経路91Cとに仕分けされる。
【0062】
各手荷物・物品の移動経路を記録するため、各物品には6桁のIDと、システムに最初に投入された時のコンベヤ上の位置の記録が付与される。これにより、走査装置は、どの手荷物・物品が任意のある時間において走査されたかを認識でき、走査結果を該当する物品に対応させることができる。また、これにより、仕分け装置は各手荷物・物品を識別することができ、その走査結果に基づいて仕分けをすることができる。
【0063】
このシステムの走査装置の数とコンベヤの速度は、走査装置の1つが動作しない場合、残りの走査装置により搬入受け入れ部から中央ループ部81c上に送られてくる全ての手荷物を処理することができるように設定される。
【0064】
この実施形態の変形例では、各走査装置にどの物品を転送するかを選択する仕分け装置82c、83c、84cは走査装置により制御されるのではなく、各仕分け装置は物品を各走査装置に所定の速度で送ることができるように中央ループ部81cからの物品を選択するよう構成される。
【0065】
図9を参照すると、更なる実施形態に係るネットワークシステムは図6の走査システムと同様な3つの走査システム108と、4つの操作者用ワークステーション148とを有する。3つのRTT走査システム108からのビデオ画像出力は各高帯域2地点間ビデオ接続リンクを経由してリアルタイムディスクアレー109に接続され、このリアルタイムディスクアレー109は冗長ビデオ切換部110への原画像データの一時記憶を行う。また、リアルタイムディスクアレー109は各操作者用ワークステーション148に接続される。これにより冗長ビデオ切換部110は各走査システム108からの原ビデオ画像出力を一時記憶から任意の操作者用ワークステーション148の1つに転送し、これを使用してオフラインでの表示が可能な3次元ビデオ画像を生成することができる。赤/緑の確率信号と自動仕分け割り当て信号の走査システムからの出力は従来の冗長イーサネット(登録商標)切換部112に接続され、更にこの冗長イーサネット(登録商標)切換部112は各ワークステーションに接続される。冗長イーサネット(登録商標)切換部112は各確率信号と自動仕分け割り当て信号を対応する画像信号と同じワークステーション148に切り替えるように構成されている。これにより、割り当ての決まった自動割り当てと確率を伴う複数の装置からの画像データを、操作者用ワークステーション148の配列に切り替えることができ、この時、操作者は手荷物検査システムの稼動状況の監視と、危険性レベルが黄色に割り当てられた手荷物の仕分け先の決定の両方を行うことができる。
【0066】
あるいは、ネットワークシステムは、サーバーに接続された1つの走査システム108と、ワークステーション148とを有する。走査システム108からのビデオ画像出力はリアルタイムディスクアレー109に接続され、このリアルタイムディスクアレー109は原画像データの一時記憶を行う。また、リアルタイムディスクアレー109はワークステーション148に接続される。確率信号出力と自動仕分け割り当て信号出力はワークステーション148に対応するビデオ画像出力を伴い送られ、操作者により確認される。ネットワークを構成する、この1つの走査システム108は複数の走査システムを伴うネットワークシステムの一部とすることができる。
【0067】
図10と11を参照すると、更なる実施形態において、インライン式走査装置は、主散乱遮へい部162と、ちょうど同じ長さのコンベヤベルト160を有する。このスタンドアロンなシステム構成では、検査される物品はコンベヤベルト160上に置かれ、システムに搬入される。そして、この物品は走査装置164で走査され、画像が生成される。しばしば、従来のシステムでは、コンピュータ断層撮影検査の前に簡易な透過型X線システムで物品の事前検査を行うことにより危険性のありそうな領域を識別し、コンピュータ断層撮影検査は対象物内の選択された面について行う。このような応用はリアルタイム多焦点システムに簡単に適用することができる。ここで、事前検査を使用しないのであれば、物品全体の正確な3次元画像を得ることになる。
【0068】
一部の実施形態では、多焦点X線放射源の点状放射源の軌跡は円弧状に、180°にファンビーム角(典型的には40〜90°の範囲)を加えただけの角度範囲に渡って伸びることができる。各点状放射源の数はナイキストのサンプリング理論を満足するように選択するのが効果的である。一部の実施形態では、図1の実施形態のように、点状放射源を360°全周に渡って環状にして使用する。この場合、点状放射源1つ当りの滞留時間は180+所定の走査速度に対するファンビーム設定に渡って増大し、これは再構成画像の信号対雑音比を改善するのに効果的である。
【0069】
図1の走査装置システムは統合走査システムであり、この中で、制御ユニット18、処理ユニット30、電源ユニット32、冷却ユニット34は、走査システム8と遮へい部22によるユニット内に収容される。図12を参照すると、更なる実施形態では、モジュールシステムが提供され、このモジュールシステムでは、制御ラック218、処理ラック230、電源ラック232、冷却ラック234の一部または全てが、多焦点X線放射源とセンサーアレーを有する走査ユニット208から離れたところに設置される。モジュール構成を採用することにより設置が容易になるという点で有利であり、特に手荷物を取り扱う広い場所という環境では、システムを天井から吊るしたり、アクセスが制限される場所であったりする場合、有利である。あるいは、システム全体を統合ユニットとして構成し、これが1つのハウジングの中に一緒に収容された複数のサブアセンブリユニットを伴うようにすることもできる。
【0070】
図1の実施形態を含む一部の実施形態では、1つの環状X線検出器が使用される。これにより低コストで、高い画像走査速度と簡易なファンビーム画像再構成アルゴリズムであっても、十分な信号対雑音性能が構成、提供される。他の実施形態(特に画像再構成の回転直径が大きい場合)では、互いに隣接し、システムの軸に沿って放射源とずらして配置された複数の円状または円弧状のセンサー群による複環状センサーアレーを使用することが好ましい。これにより、より複雑なコーンビーム画像再構成アルゴリズムを処理システムで使用することができる。複環状センサーを使用することにより、点状放射源1つ当りの滞留時間が増大するため、合成された信号の大きさの増大、再構成画像の信号対雑音比の改善がもたらされる。
【0071】
上記の実施形態ではコンピュータ断層撮影システムに基づき多焦点X線放射源が使用されるが、この構成の中核は放射源の角回転速度と、走査装置を通過するコンベヤシステムの速度の関係である。コンベヤが止まる限界では、再構成画像の断層の厚さはX線の焦点のサイズと、X線検出器アレーの各エレメントの面積によって決まる。コンベヤ速度がゼロから上昇すると、検査中の対象物はX線ビームが回転する中で断層画像化されていき、再構成画像へ断層の厚さ方向に入り込むぼやけが加わってくる。理想的には、X線放射源の回転はコンベヤ速度に比べて速ければ、断層の厚さ方向のぼやけは最小化されるようになる。
【0072】
手荷物検査用コンピュータ断層撮影システムに基づく多焦点X線放射源は、検査中の物品において危険性がある材質と物体を高い確率で検出する目的に対し、コンベヤの直線速度に対する放射源の角回転速度の比を良好なものにする。一例として、図1の実施形態では、コンベヤ速度は0.5m/sであり、空港のシステムとして一般的なものである。放射源はコンベヤの周りを毎秒240回転することができるので、検査中の対象物は断層を画像化する走査の間、2.08mmの距離を移動することになる。放射源が毎秒4回転する従来のシステムでは、検査中の対象物は断層を画像化する走査の間、同じベルト速度で62.5mmの距離を移動することになる。
【0073】
危険性のある物質の検出を行う検査システムの主要な目的は、危険性のある物質の存在を正確に検出し、他の全ての物質については疑いがないものとして通過させることである。1回の走査におけるコンベヤの移動によって生じる断層の方向のぼやけが増大すると、再構成画像の画素において一部の容積のアーチファクトも増大し、再構成画像の画像密度の精度は低下する。再構成画像の画像密度の精度が低下すると、システムが影響を受けやすくなり、危険性のない物質について警告を発し、実際に危険性のある物質について警告を発しないようになる。従って、多焦点X線放射源技術に基づくリアルタイム断層撮影(Real‐Time Tomography:RTT)システムは、従来の機械式回転X線システムよりも速いコンベヤ速度で危険性検出能力を大幅に高めることができる。
【0074】
多焦点X線放射源において延在するアーチ形アノードを使用することにより、従来のコンピュータ断層撮影システムに見られる機械式の回転を模した連続走査ではなく、アノードのほぼ全長に渡って飛び越すような電子源の切換を行うことができる。その瞬間のアノードにおける熱負荷を最小にするため、全ての以前の放射位置から現在のアノード放射位置の距離が最大になるようにX線の焦点を効果的に切り替えることができる。X線放射点のこの瞬間的な広範囲への移動は、コンベヤの移動による一部の容積への影響を最小化するので、再構成された画素の精度を更に向上させるという点で効果的である。
【0075】
RTTシステムの高い時間解像度により、自動化された危険性検出の精度を高レベルにすることができる。この高レベルの精度により、RTTシステムは無人状態で動作でき、緑すなわち合格に割り当てることに対応する一方の状態と、赤すなわち不合格に割り当てることに対応する他方の状態の2つの状態を簡易に出力表示することができる。緑の手荷物は合格で更に搬送される。赤の手荷物は高レベルの危険性があることを意味し、その乗客の承諾の上で、その渡航を禁止する必要がある。
【0076】
これから説明する本発明の更なる実施形態では、X線の散乱と透過に関するデータを記録し、これを使用して走査される手荷物・物品を解析する。
【0077】
図13を参照すると、X線ビーム300は対象物302を通過する時、X線の一部は直線状に対象物302を透過し、これを通過して入ってきた方向と同じ方向に進む。X線の一部は散乱角θで散乱し、この散乱角θは対象物に入る方向と、これから出て行く方向の差である。公知のように、散乱には2つのタイプがあり、散乱角が5°の辺り、典型的には4°〜6°の範囲に集中している可干渉性の、いわゆるブラッグ散乱と、より大きい角度でX線が散乱する非干渉性の、いわゆるコンプトン散乱が存在する。ブラッグ散乱は対象物の原子番号に対し線形に増加し、次式に従う。
nλ=2dsinθ
ここで、nは整数、λはX線の波長、dは対象物内の原子間距離である。
【0078】
従って、ブラッグ散乱の量によって対象物の原子構造に関する情報が与えられる。但し、これは原子番号に対し、滑らかに変化するものではない。
【0079】
コンプトン散乱の量は、対象物の電子密度に依存して滑らかに変化し、これにより、より大きい散乱角での散乱量によって対象物の電子密度に関する情報すなわち原子番号に関する情報が与えられる。
【0080】
図14を参照すると、本発明の更なる実施形態に係るセキュリティ走査システムは、図1のものと同じ多焦点X線放射源410と、同様に図1のものと同じ円状検出器アレー412とコンベヤ420とを有する。但し、この実施形態では、システムは更なる円筒状検出器アレー422を有し、これは円状検出器アレー412と同じ半径で同様にコンベヤの周りに延在するが、軸方向に多焦点X線放射源410の反対側に延在する。円状検出器アレー412は対象物426を透過するX線を検出するように構成されているのに対し、円筒状検出器アレー422は対象物426で散乱するX線を検出するように構成されている。円筒状散乱検出器アレー422は多数の円状アレーすなわち環状検出器422a、422bから成り、各環状部分の検出器はコンベヤ方向に等間隔になっており、走査装置の軸方向に延在する多数の直線状の列を構成するようになっている。
【0081】
円筒状散乱検出器アレー422内の検出器は、各X線が各検出器と起こす相互反応により検出器出力が発生するようになっているエネルギー分解検出器であり、この検出器出力はX線のエネルギーを示す。このような検出器は、GaAs、HgI、CdZnTe、CdTe等のバンドギャップの広い3−5族または2−6族の半導体材料、Ge等のバンドギャップの狭い半導体、または光電子増倍管による測定を伴うNaI(Ti)等の複合シンチレーション検出器により製造可能である。
【0082】
図15を参照すると、コリメータ428は円筒状検出器アレー422の前面に設けられている。コリメータ428は、特定の入射方向以外からのX線が各検出器に到達しないようにする仕切りとして働く。円筒状検出器アレー422の各検出器では、図16より分かるように、この入射方向は走査装置の長手方向の中心軸X−Xを通る。但し、入射方向は軸X−Xと垂直ではなく、図15より分かるように、多焦点X線放射源410へ向かう方向で環状検出器422a、422bの面に5°程度、傾いている。
【0083】
図15を参照すると、円筒状散乱検出器アレー422の任意のある検出器に入射するX線は、画像化される薄い容積内の各小容積部分から散乱したものでなければならず、この小容積部分はX線ビームの軌跡上で、かつ円筒状検出器アレー422からの入射方向の線上となる位置にあることが理解できる。全ての可干渉性の散乱X線に対し、これを検出する検出器の軸方向位置は、動作中のX線点状放射源から散乱を起こす位置までの距離で決まってくる。軸方向で多焦点X線放射源410に最も近い検出器は、動作中のX線点状放射源から最も遠くで散乱するX線を検出することになる。例えば、点xから散乱してくるX線は、動作中のX線点状放射源410aに最も近く、点zから散乱してくるX線よりも多焦点X線放射源410から遠くにある検出器により検出されることになり、この点zは動作中のX線点状放射源410aから、より遠くにある。従って、任意のある時間において、動作中のX線点状放射源を認識することができれば、散乱X線を検出した検出器の軸方向位置を使用して、X線ビームの方向に沿った散乱位置を求めることができる。
【0084】
また、図15より、このシステムの動作において、X線ビームは走査装置の軸方向に細く収束すべきであることが重要と理解することができる。横方向のビームの広がり、例えば横方向に広がるファンビームを使用することによっても、この可干渉性の散乱が起こった位置を求めることができる。
【0085】
図16を参照すると、コリメータ428は走査装置の軸方向に配向しているので、可干渉性の散乱をする動作中のX線点状放射源410aからのX線は、走査装置の軸に対して、この動作中の点状放射源の反対側にある検出器422aの列によってのみ検出され、場合によっては、これに近接する1つ以上のどちらかの側の列によって検出されるが、これはコリメータがどのぐらい細く収束させているかによる。X線をまっすぐな細い「ペンシル」ビームに限定した場合、より大きい角度の非干渉性の散乱をするX線は全て、コリメータ428によって遮断されるので、まったく検出されないことになる。このようなX線の例を図16の矢印aによって示す。但し、X線のファンビームが動作中の点状放射源410aから発生し、この放射源が走査装置の軸に垂直な方向の撮像容積の断層を通って広がる場合、走査装置の軸から、より外れた方向のX線は非干渉性の散乱をし、動作中の点状放射源の反対側にある検出器422aの列のどちらかの側の検出器に到達することができる。このようなX線の例を矢印b、cによって示す。任意の検出器422bに到達するには、散乱は走査装置の軸と検出器422bを通る面で起こる必要があることに注意すべきである。すなわち、任意の動作中の点状放射源と特定の検出器に対し、検出されたX線の散乱が起きた位置を、走査装置の軸とその検出器を通る面にあるものとして認識することができる。散乱が起きた位置を正確に求める場合は、他の情報が必要になる。例えば、撮像容積内の対象物の位置に関する断層撮影画像データ等からの情報が利用可能な場合、以下で更に詳細に説明するように、その散乱を最も可能性のある対象物と対応させることができる。
【0086】
ブラッグ散乱のデータから、検出された各散乱現象に対し、X線のエネルギーと散乱角の組み合わせを使用して散乱現象が起きた物質の原子間距離dを求めることができる。実際には、散乱角は一定と仮定でき、X線のエネルギーを使用して異なる物質を識別することができる。コンプトン散乱に対しては、走査容積の各容積からの散乱のレベルは、その容積内の物質の密度を示すものである。また、可干渉性の散乱に対するコンプトン散乱の比を求め、画像化される対象物の材質の特性を表す更なるパラメータとして使用することもできる。
【0087】
各X線点状放射源における滞留時間が短いため、各点状放射源において検出される散乱X線の量は常に非常に低く、典型的には5以下である。適切な可干渉性の散乱信号を形成するため、断層撮影走査範囲内の全ての点状放射源に対する散乱データを収集し、そして撮像容積の各容積部分についての結果を蓄積する必要がある。500個の点状放射源を有し、1容積部分当たりかつ1走査当たり可干渉性回折散乱が平均して1回起こり、その後そのデータのセットの蓄積を行う走査装置では、各容積部分では、これに対応する500の結果が得られ、これはこの容積部分内で起こる500回の散乱に対応する。典型的には容積部分は数平方センチメートルの画像化される面内の領域に渡り、これは数ミリメートルの厚さの容積である。
【0088】
図17を参照すると、図14〜16の走査装置の散乱検出器アレー422からのデータを蓄積するように構成されたデータ取得システムは、各検出器422に対応するマルチチャンネルアナライザ500を有する。各マルチチャンネルアナライザ500は、検出器からの出力信号を受信し、検出した各X線を多数のX線のエネルギー範囲すなわちチャンネルの1つに割り当て、検出されたX線が振り分けられたエネルギー範囲を示す信号を出力するように構成されている。多重化処理部502は各マルチチャンネルアナライザ500からの出力を受信するように構成されている。また、参照テーブル504が設けられ、この中にある記載項目は、任意の点状放射源と検出器に対し、X線が散乱した撮像容積内の容積部分を識別するものである。このシステムは更に画像メモリ506を有し、この画像メモリ506は多数のメモリ領域508を有し、各メモリ領域508は走査装置により画像化される面内の各容積部分に対応している。
【0089】
データは各メモリ領域508に自動的に多重化処理部502によって、参照テーブル504の指示に従いロードされる。参照テーブル504は走査の前に係数を伴ってロードされ、この係数は検出器422とマルチチャンネルアナライザ500の各組み合わせを各画像位置508にマッピングし、X線放射源毎に参照テーブルの記載項目が1つある。前方すなわち実質的に光子が放射源から全ての相互反応の前に伝搬する方向にある、これらの画素すなわち検出器422は可干渉性の散乱光子を4〜6°程度の小さいビーム角で記録すると仮定される。前方にない画素422はコンプトン散乱効果による非干渉性の散乱光子を記録すると仮定される。従って、画像メモリ506は実際には「3次元状」であり、2つの次元で画像内の位置を表し、3番目の次元は可干渉性の散乱(下位8ビット)と非干渉性の散乱(上位8ビット)の両方の散乱のエネルギーのスペクトルを保持している。また、参照テーブル504は多重化処理部502にデータのタイプについて指示し、このデータは各マルチチャンネルアナライザ500に対し各投影像で収集され、適切なメモリ空間に充当されるようになっている。
【0090】
散乱データが特定の走査について収集された後、このデータは投影像シーケンス制御部510に転送され、これにより主RTTデータ取得システム512と同期が取られるが、これは図4を参照して上記に示されている。従って、再構成画像データと散乱データは危険性検出システムを同時に通過し、このデータを使用して適切な解析用パラメータを求めることができる。
【0091】
各走査に対し、透過検出器412からの断層撮影画像は、画像の各画素におけるX線の減衰量に関するデータを生成し、一方、このデータは断層撮影画像容積の各容積部分に対応している。これは図4を参照して上記で説明したように取得される。散乱検出器422からのデータは上記のように、各容積部分内の可干渉性の散乱量に関するデータと、各容積部分内の非干渉性の散乱量に関するデータとを提供する。従って、このデータは図5の危険性検出プロセッサと同じもので解析できる。この場合、抽出されたデータのパラメータは画像データまたは散乱データまたは2つ以上のタイプのデータの組み合わせに関係付けることができる。データから抽出されるパラメータの例として、非干渉性の散乱に対する可干渉性の散乱の比率、可干渉性の散乱データから求められるような物質の種類、非干渉性の散乱データから求められるような物質の密度、散乱データに対するCT画像の画素値の相互相関がある。また、透過データについての上記のパラメータに対応する散乱データについてのパラメータも求めることができる。
【0092】
図18を参照すると、本発明の更なる実施形態では、断層撮影画像データの生成に使用される透過検出器512は、異なるエネルギー範囲に渡るX線の透過を測定するように構成されている。これを行うために2セットの検出器512a、512bが備えられ、それぞれコンベヤの周りに環状に形成される。この2セットの検出器512a、512bは、コンベヤの移動方向に沿う軸方向の異なる位置にあり、この場合、軸方向に互いに隣接している。第1の検出器セット512aは、その前部にフィルタを備えていないが、第2の検出器セット512bは、X線放射源510との間に設置された金属製フィルタ513を備えている。すなわち、第1の検出器セット512aは、広いエネルギー範囲に渡って透過するX線を検出し、第2の検出器セット512bは、高エネルギー端のエネルギー範囲のより狭い部分のX線のみを検出する。
【0093】
走査される物品がコンベヤに沿って移動すると、その薄い容積すなわち断層は、それぞれ第1の検出器セット512aを使用して1回の走査がなされ、その後、第2の検出器セット512bを使用して更に走査される。図示した実施形態では、同じ放射源510を使用して隣り合う2つの容積を同時に走査し、それぞれのデータは各検出器セット512a、512bの1つにより収集される。物品の容積が移動して両方の検出器セットを通過し、2回の走査がなされた後、2つの異なるX線のエネルギー範囲を使用して2セットの画像データを形成することができ、各画像は、その画像の各画素に対する透過データ(および、これによる減衰データ)を含んでいる。この2セットの画像データは第2の検出器セット512bによる画像データを第1の検出器セット512aによる画像データから引くことにより合成することができ、低エネルギーのX線成分についての対応する画像データが得られる。
【0094】
個々のエネルギー範囲それぞれに対するX線透過データと、高エネルギーと低エネルギー等の2つの異なる範囲のデータ間の差とを、画像の各画素について記録することができる。そして、このデータを使用してCT画像の精度を向上させることができる。また、これを危険性検出アルゴリズムの更なるパラメータとして使用することもできる。
【0095】
他の方法を使用してX線エネルギーの異なる範囲に対する透過データを得ることができることは理解されるところである。図18、19のシステムに対する変形例では、バランスフィルタを2セットの検出器において使用することができる。このバランスフィルタは両方のX線が通過する狭いエネルギーのウィンドウとなるように選択される。そして、この2セットの検出器512a、512bに対する画像データを合成して、この狭いエネルギーのウィンドウに対する透過データを得ることができる。これにより、化学的な特定をする画像化を行うことができる。例えば、カルシウムのKエッジエネルギーの周辺でバランスさせたフィルタを使用することにより骨を特定する画像を生成することができる。明らかに、この化学的な特定データは効果的に危険性検出アルゴリズムに使用することができる。
【0096】
更なる実施形態では、独立したフィルタを使用するのではなく、異なるエネルギーのX線に反応する2セットの検出器を使用する。この場合、検出器は重ねて使用され、この検出器は低エネルギーのX線には反応するが、高エネルギーのX線は通過させる薄い前部の検出器と、この前部の検出器を通過した高エネルギーのX線に反応する厚い後部の検出器とから成る。また、異なるエネルギー範囲の減衰データを使用して、エネルギーを特定する画像を提供することができる。
【0097】
更なる実施形態では、2つの走査を対象物の各断層に対し2つの異なるX線ビームのエネルギーによって行い、この走査は異なるX線放射源管電圧、例えば160kVと100kVを使用することにより行われる。この異なるエネルギーにより、X線のエネルギーのスペクトルは互いに応じて変化することになる。スペクトルが比較的、そのエネルギー範囲の領域に渡って平坦であれば、スペクトルはその範囲のほとんどに渡って似たものとなるはずである。但し、一部のスペクトルは著しく変化することになる。従って、2つの管電圧に対する画像を比較し、これを使用することで2つの画像間で著しく減衰が変化する対象物の部分を認識することができる。従って、これにより画像間で変化するスペクトルの狭い部分において高い減衰のある画像領域が認識される。すなわち、これは走査された容積内の各容積部分についての特定のエネルギーの減衰データを得る代替手段である。
【0098】
図20を参照すると、本発明の更なる実施形態では、2つの異なるX線のエネルギーのスペクトルを、X線管にアノード600を設けることにより発生させ、このアノード600は2つの異なる物質によるターゲット領域602、604を有する。この場合、例えば、アノード600は銅による母材606から成り、タングステンによるターゲット領域602とウランによるターゲット領域604を伴う。電子源610は、独立して動作可能な多数の点状放射源612を有する。1対の電極612、614は電子ビーム616の軌道を挟んで対向して設けられ、これを制御して電界のオン・オフを行い電子ビームの軌道を制御して、ターゲット領域602、604の一方または他方のいずれかに当たるようにすることができる。アノードにおけるX線のエネルギーのスペクトルは、どちらのターゲット領域に電子ビーム616が当たったかによって変化するものである。
【0099】
この実施形態で使用するX線放射源は図1aと同様のものであり、アノード27に沿って延在する平行な帯状のものとして形成される別々のターゲット領域を伴う。動作中の各点状電子源に対し、2つの異なるX線のスペクトルは、どちらのターゲット物質を使用するかによって発生させることができる。この電子源は、各点状電子源が動作中の時、これに対する2つのターゲット領域の間の切換を行うように構成することができる。あるいは、アノード27に沿った走査を2回、行い、1回は一方のターゲット物質に対して、1回は他方のターゲット物質に対して行うことができる。どちらの場合にも、電子ビーム収束ワイヤを追加することが、一方または他方のターゲット物質だけに電子ビームが確実に1回で照射されるようにするため必要となる可能性がある。
【0100】
X線ビームがアノードから取り出される角度によっては、2つのターゲット領域602、604からのビームが同じ撮像容積を通過して、共通の検出器アレーによって検出されるように構成できる場合もある。あるいは、撮像容積の隣接する断層を通過するようにして、別々の検出器アレーによって検出されるように構成してもよい。この場合、画像化される物品の各部分に対し、物品がコンベヤに沿って図18の構成と同様な方法で通過する場合の2倍の走査が行える。
【0101】
図21を参照すると、更なる実施形態では、2つの検出器アレーを1つの走査装置に設け、軸方向に互いに隣接させ、一方の検出器アレー710は図1の検出器アレーに対応するものとし、RTT画像を形成するように構成され、他方の検出器アレー712は高解像度のものとし、走査された対象物の高解像度投影画像を生成するように構成されている。この実施形態では、高解像度検出器アレー712は、異なるエネルギーのX線を検出するように、それぞれ構成されている2つの平行な線状アレー714、716を有し、2つのエネルギーの投影画像を生成することができるようになっている。図22の実施形態では、高解像度アレー812は2つの重ねられたアレー、すなわち、比較的低いエネルギーのX線は検出するが、比較的高いエネルギーのX線は透過するように構成された上部の薄いアレーと、比較的高いエネルギーのX線を検出するように構成された下部の厚い方のアレーとを有する。どちらの場合でも、2つの検出器アレーは共に軸方向に十分、近付けて設置することにより、点状放射源の1つの線状アレーからのX線を検出できるようにしている。
【0102】
投影画像を得るため、点状放射源が1つだけ動作している時に、データを高解像度アレー712、812の全ての検出器から取り込む必要がある。図23を参照すると、これを行うために高解像度アレーの各検出器718、818は積分器750に接続される。積分器750はコンデンサ754と並列に接続された増幅器752を有する。入力スイッチ756は検出器718と増幅器752の間に設けられ、リセットスイッチ758は増幅器752の入力端子と、コンデンサ754をまたいで接続された更なるリセットスイッチ759との間に設けられ、マルチプレクシングスイッチ760は積分器750とADコンバータADCの間に設けられている。
【0103】
稼動時、検出器718が動作する必要のない時、マルチプレクシングスイッチ760以外の全てのスイッチは閉じられる。これにより、コンデンサ754は確実に放電され、その状態を保つ。そして、検出器718によるデータ収集が必要になった時、その開始時に、2つのリセットスイッチ758、759が閉じられ、検出器718によって検出された任意のX線により、コンデンサ754の電荷が増え、検出器718からの信号が積分されることになる。データ収集の期間が終わると、入力スイッチ756が開かれ、コンデンサ754は充電されたままとなる。そして、積分信号を積分器750から読み出すため、出力スイッチ760が閉じられ、積分器750がADコンバータADCに接続される。これにより、コンデンサ754の充電レベルによって定まるアナログ信号がADコンバータADCへ供給されるので、これは検出器718が積分器750に接続されていた期間における検出器718によって検出されたX線の量を示す。そして、ADコンバータADCは、このアナログ信号をデータ取得システムに入力するためのデジタル信号に変換する。1つの投影画像を生成するため、X線点状放射源の1つが動作している時、全ての高解像度検出器を使用して同時にデータを収集する。
【0104】
図24を参照すると、更なる実施形態では、各検出器718は並列に接続された2つの積分器750a、750bに接続され、この積分器750a、750bはそれぞれ、図23のものと同じである。この2つの積分器750a、750bからの出力は、それぞれの出力スイッチ760a、760bを介してADコンバータADCに接続される。これにより、各積分器750a、750bがX線放射源の走査で異なる位置の検出器718からの信号を積分するように構成することができるので、別々の画像のデータを収集し、この2つの画像を異なるX線点状放射源の異なる角度に基づくものとすることができる。例えば、これを使用して高解像度3次元画像を形成するために使用できる直角方向からの投影画像を生成することができ、これから、画像化された手荷物の特徴的な部分を3次元で求めることができる。
【0105】
高解像度画像はRTT画像と合成する場合、有用であり、より高い解像度が必要な細いワイヤ等の物品の識別を容易にするようなことができる。
【0106】
本発明の別の実施形態では、手荷物や貨物物品を、最高コンベヤ速度で検査することができる高速断層撮影走査装置が開示される。これは、公知のセキュリティチェック・システムで使用される、機械式で走査される構台の代わりに、電子的に走査されるX線放射源と対応する検出方法とを用いることによって、実現される。このようなシステムの性能特性により、自動検出アルゴリズムによって疑いのある物質または装置の位置を求める場合、後続する人間が見る画像の可視化を伴う単一の走査の施行で爆発物や爆破装置の自動検出が可能となる。
【0107】
本発明は、高い走査処理能力と組み合わせられた高画質を特徴とする。本発明の範囲内の走査装置は、3次元すべてにおいて、約2mm以下の空間解像度を実現することができ、その3次元画像の再構成された画素サイズは、3次元すべてにおいて、1.5mm以下である。走査装置は、走査速度が0.25m/s以上で、再構成画像のSN比が50を超え、通常は100を超えて、コンベヤと共に動作をしながら、同時に、このような画像解像度特性を実現するように構成することができる。この画質により、典型的には1%である、その物質の線形減衰係数を正確に計測しながら、爆発する可能性のある物質の容積と形状の両方を明確に判定するのに十分な情報が提供される。
【0108】
このようなシステムの、その高画質、高い走査処理能力、およびインタラクティブな3次元画像表示能力にもかかわらず、爆発性物質や爆破装置の疑いがあり、追加検査が有益である場合が、今なお、ある。特に、本発明の高速で電子的に走査されるX線放射源走査装置を使用して検査されている手荷物や貨物物品の中の爆発性物質や爆破装置の疑いがある物を、更に第2の方法により調べて、爆発性物質の有無を確認することができる。
【0109】
高速X線システムの検査能力を改良するために、第2のセンサーが、物質それ自体の1つ、または複数の化学的特性を精査しなければならず、そして、その精査から生成された特定の信号を、X線検査処理により検出された爆発性物質の形状、容積、および予期される種類に戻って、相関を求めねばならない。
【0110】
加えて、第2のセンサーの性能を最大にするために、詳細なX線画像を使用して、第2の確認センサーの対象を、検査中の手荷物や貨物物品の特定の領域にしなければならない。
【0111】
図25に示すように、手荷物取り扱いシステム2500は、通常、検査中の対象物を、高処理能力X線システムから第2の走査領域の中へ移送する必要がある。空港のような環境で検査される手荷物等の、手荷物や貨物物品は、左方2501からシステム2500に入る。上述のように、手荷物や貨物物品は、高速X線走査装置2503を使用して検査され、高速X線走査装置2503は、電子切り替え式X線放射源と対応するX線検出と、画像再構成と、危険性検出とのサブシステムを備える。
【0112】
手荷物は、コンベヤシステム2511に続き、仕分け装置2505に入り、仕分け装置2505は、その先への搬送のための手荷物や貨物物品のセキュリティが確認されるまで、これらを止めておくループ部として構成され、ここで、仕分け装置2505は、手荷物や貨物物品を、多数の仕分け先2507の1つに送出してよい。空港では、各仕分け先は、該当する出発便の行き先に対応させるのが好ましいものである。
【0113】
X線走査、自動検出、および人間に見えるように可視化した後、危険性のあるものとしてマーキングされた手荷物や貨物物品は、コンベヤシステム2511と仕分け装置2505により、第2の確認センサー2509へ発送される。この設計の有利性として、確認センサー2509は、手荷物や貨物物品の、それらの仕分け先への流れを遅らせることなく、相当の期間をかけて手荷物や貨物物品を解析することが可能となる。
【0114】
一部の状況では、合格した手荷物だけを、主仕分けシステムに入れるようにできるという点で有利である。図26を参照すると、第2のループ部2617は、確認センサー2609のために設けられる。ここで、左方2601から入って、X線システム2603によって合格した手荷物や貨物物品は、分岐点2615を通って、その先にある主仕分けループ部2605および、物品の最終仕分け先2607へ直進する。X線システム2603によって、1つ、または複数の危険な物品を含む可能性があるものとしてマーキングされた手荷物は、その後、手荷物や貨物物品がコンベヤシステム2611上の分岐点2615へ続いている状態で、操作者による目視が行われる。操作者が、分岐点2615で手荷物や貨物物品を合格させなかった場合、その物品は、自動的に、分岐した側方ループ部2617に送られ、側方ループ部2617は、確認センサー2609を有する。人手による追加検査が更に必要な手荷物や貨物物品は、合格した手荷物が主仕分けループ部2605の方へ送られることができる状態で、分岐した検査領域2613に送ることができる。
【0115】
前述の実施形態の両方で、コンベヤシステムは、複数の物品が走査のために列を作れるような、複数の短いコンベヤセクション(典型的には長さが1.5〜2m)から形成されると、有利である。好ましくは、5〜20個の手荷物や貨物物品が列を作れるスロットが、利用可能であるとよい。手荷物や貨物物品は、確認センサー内に、一度に1個ずつ送られる。物品が列を作って、合格のマーキングをされた状態で、操作者が手荷物や貨物物品の検査を完了した場合、手荷物や貨物物品は、直進して確認走査装置を通るように送ることができ、更なる遅れや、主仕分けループ部2505、2605へ戻ることはない。そして、いまだ危険性がある物品として分類されたままの、それらの物品は、確認センサー2509、2609による検査にかけられる。
【0116】
確認センサー2509、2609が、物品を合格とした場合、その物品は、主仕分けループ部2505、2605へ戻され、該当する最終仕分け先への搬送が継続される。確認センサー2509、2609が、危険性がある手荷物や貨物物品を確認した場合、その物品は、分岐点2619を通って、保持室2613に送られ、保持室2613では、その手荷物や貨物物品を、その物品を有する乗客または所有者について確認した後、適切な権限により、人手による探査を行うことができる。
【0117】
X線システムは、高い確度で、爆破装置や爆発性物質を検出するが、通常、検査される、すべての手荷物や貨物物品のうち、典型的には10%〜30%の間の割合で、誤った警報が発生する。これらの不合格の物品は、1人または複数の操作者により目視が行われ、操作者は、通常、X線システムの爆発物自動検出アルゴリズムによって識別された、すべての危険物のうちの90%〜99%を判定できる。したがって、残りの物品は、確認センサーで走査する必要があるものである。
【0118】
すなわち、1時間当たり1800個の物品が投入される手荷物または貨物ラインに対し、一実施形態では、1時間当たり最高600個の物品が、X線システムの爆発物自動検出アルゴリズムによって、危険である可能性がある物品として識別され、目視検査にかけるように指定することができる。これらのうち、1時間当たり最高60個の物品が、検査者により、危険である可能性がある物としてマーキングすることができる。別の実施形態では、1時間当たり、わずか180個の物品がX線システムの爆発物自動検出アルゴリズムによって、危険である可能性がある物品として識別され、目視検査にかけるように指定することができる。これらのうち、1時間当たり最高2個の物品が、目視検査を行う検査者により、危険である可能性がある物としてマーキングすることができる。
【0119】
したがって、第2の確認センサーは、その解析を完了し、手荷物や貨物物品の中の識別された物質の特質を確認するのに、数分しかかからないように構成すべきである。これにより、本システムを通過する手荷物や貨物物品の流れが妨げられることがなく、高信頼性セキュリティチェックを目指した場合、どのような手荷物や貨物物品についても、数分を超える遅れは生じない。すなわち、本発明は、第2の確認システムの、高い処理能力を具現化して利用している。
【0120】
確認センサーの実施形態1:核四極子共鳴(Nuclear Quadrupole Resonance:NQR)
一実施形態では、確認センサーは、核四極子共鳴(Nuclear Quadrupole Resonance:NQR)の計測を行うシステムを備える。ここで、特定の原子核、特に、窒素と塩素は、相当な磁気四重極モーメントを有することが知られている。通常、サンプルとなる物質内の個々のスピンしている原子核の磁気四重極モーメントは、ランダムな方向を向いて並んでいる。強い磁場が印加される応用では、検査中の物質内の原子核の個々の磁気四重極モーメントは、印加される磁場に揃えられ、これにより、印加された磁場と反対の方向に作用する弱い磁場が形成される。印加される磁場は、約10〜100ミリテスラとしてよく、このとき、並んでいる原子核により発生する磁場は、フェムトテスラのオーダーにすぎないとしてよい。いったん、印加された磁場が無くなると、磁気双極子が、整列状態から外れて動き始め、合成された磁場の強度が減少し始める。
【0121】
第一の位置の磁場の強度は、検査中の物質内の、原子核の種類と、これらの原子核の密集度とに依存する。原子核による磁場が、印加されている磁場の影響で増大する割合と、原子核による磁場が、印加されている磁場が取り除かれた後に、どのように再び消滅するかとは、局所的な化学的環境と、検査中の物質内部の原子核の格子構造とに依存する。
【0122】
印加されている磁場により、関心対象となるサンプル内の原子核の整列状態によって発生する磁場の大きさが小さいため、発生する磁場による信号の計測は、通常、雑音が多い。そのため、その計測におけるSN比を増大させるため、計測を何度も繰り返し、印加される磁場刺激それぞれの後に生じる信号を、1つの結合された信号にして処理すると有利である。
【0123】
図27を参照すると、NQR確認センサー2700の刺激コイルと対応する電子回路部が示される。ここで、コイル2702は、図示のように、適当な距離に延在する一巻きコイルであり、この距離は、検査される物品が、このコイルの3次元の筒状部の内部に収容できるようになっており、その内部は、内部領域2703として画定される。好ましくは、コイル2702は、コイルの共振回路の調整が容易になり、不要な発熱を起こす可能性のあるコイル2702内の電力損失を低減させるように抵抗の低い物質で作られる。適切なコイルの材質は銅である。
【0124】
信号発生器2708は、好ましくは、デジタル・プログラマブル信号発生器であり、これを使用して、電力増幅器2710を介して、コイル2702を、適切な帯域、典型的には、最大10MHzで駆動する。好ましくは、電力増幅器2710は、コイル2702を、高速電力スイッチ2705を介して駆動する。この電力スイッチ2705により、磁場を印加する高電流と高感度増幅器2704とが絶縁され、高感度増幅器2704は、検査中の物質から得られる磁気信号を検出するのに使用される。
【0125】
高ゲイン・高感度増幅器2704は、物質を刺激するために使用されるコイル2705に、リアクティプ結合部2705を介して接続される。この増幅器2704は、典型的には、コモンモード信号と、そのアナログ出力信号からの関心対象となる周波数範囲にない、それらの環境信号とを除去するように構成される。その後にある信号処理ユニット2706は、高ゲイン増幅器2704からのアナログ信号をデジタル化し、適切なデジタルフィルタ、例えば、検出した信号の包絡線に、指数関数的に減少する関数を適合させるようなデジタルフィルタをかける。本システムは、誘起された磁気四重極信号の緩和時間を判定する。この緩和時間は、原子核それ自体と、その化学的環境と、原子核が存在する格子構造とに依存する。
【0126】
印加される磁場は、典型的には、所定のパルス列でパルス化されて、誘起される信号を最大にし、記録される誘起された信号に対するパルスと、適切に処理された信号との間の時間が与えられる。図28aと28bは、それぞれ、印加される信号と出力に対するパルス列の一例を示している。図28aを参照すると、印加される信号は、典型的には、約400μsで、アクティブになる。これにより、信号が、その飽和レベル付近にまで達する時間が与えられる。図28bに示すように、印加された刺激が、取り除かれた後、コイル内の残留渦電流が信号取得の前に消滅するまでの短い不感時間(典型的には、50〜150μs)が続く。出力信号は、通例、500〜1000μsの期間に亘って、同期している。すなわち、パルス列の期間は、典型的には、約200Hz〜2kHである。爆発物の検出を高レベルで行うために、通例、トータルで1〜5秒間の計測時間が、採用される。
【0127】
パルス列と、対応するデジタルフィルタ処理とは、関心対象となりうる爆発性物質の種類ごとに、特別な構成となる。したがって、4つ、または5つの化合物のセットを探査する場合、トータルの計測時間は、30秒に及ぶ場合もある。
【0128】
この結合システムでは、X線データにより、出現しうる爆発性物質の種類の事前評価が既に与えられているものであるから、核四極子計測の対象を、まず、予想される爆発性物質とし、そして、適合が見られない場合、関係する化合物を検査することができる。これにより、試験時間を最小限にすることが容易になり、有利である。
【0129】
検査される手荷物や貨物物品を、走査領域に、導電性トンネル部を経由して送り、導電性トンネル部の寸法を、電磁的な環境ノイズ源に対する耐性を改善するために、コイルのサイズよりも実質的に小さくすると、有利である。
【0130】
確認センサーの実施形態2:X線回折
別の実施形態では、確認センサーは、X線回折システムを備える。10keV〜200keVのエネルギー範囲のX線が有する、対応する波長は、既知の物質内の格子面間隔のそれに相当する。10keVのX線の波長は、1.24×10−10m(1.24オングストローム)であり、200keVのX線の波長は、6×10−12m(0.06オングストローム)である。波の波長と、その波が伝搬する散乱物の間隔とが、その波長に近い場合、その波の回折は、ブラッグ散乱条件に従って起こる。
nλ=2dsinθ
ただし、nは、回折パターンの順番、λは、波の波長、dは、格子面間隔、θは、回折角である。
【0131】
X線の場合、ブラッグ散乱を使用して、格子面間隔を判定し、これにより、物質の種類を確認できる。実際のX線システムでは、X線放射源は単に1つのエネルギーではなく、複数のエネルギーを発生し、典型的には、10keVからX線管に設定された最大加速電圧までのエネルギー範囲、通常、最大200keVまでの範囲で発生する。このエネルギーは、エネルギー範囲全体に亘って、分散しており、一部のエネルギーは、他のエネルギーよりも、存在する可能性が高い。
【0132】
図29は、標準的なX線管からのX線のスペクトラムの一例を提供している。ここで、最大X線エネルギー2905は、X線管に印加される加速電圧で規定される。X線管を160kVの加速電圧で動作させた場合、可能な最大X線エネルギーは、160keVである。もっとも、ありえるX線エネルギーは、当然、これよりも、はるかに低い。最小X線エネルギー2910は、理論上は、0に近いが、実際には、最小X線エネルギーは、物質の種類と、真空支持窓(vacuum support window)の厚さで規定され、この真空支持窓は、X線ビームがX線ターゲットから検査中の対象物に伝搬する際に通過するものである。
【0133】
検査中の物質が、格子パラメータを1つだけ有する場合、X線のスペクトラムの、すべての成分に対して、異なる回折スペクトラムが発生するものと見られる。正味効果(net effect)は、単一エネルギーX線放射源を使用する場合に比較して、広い回折ピークとなる。同様に、実際の物質は、通常、多結晶、または、アモルファスであることすらあり、その場合、回折スペクトラムが、更に広がるものである。それにもかかわらず、回折スペクトラムの強度とエネルギーの実験による計測は、同様な物質についても、非常に良好な物質特性を提供することができる。水のようなアモルファス物質と、爆発物等の多結晶物質とに対する指標となるX線回折スペクトラムを、それぞれ、図30aと30bに参考として示す。
【0134】
高速電子走査式X線断層撮影画像システムと共に確認センサーとして使用するためのX線回折システムの実施形態の一例を、図31に示す。ここで、X線管3105から放射されるX線ビームは、コリメータ3110を経て、典型的には直径が1mm〜50mmの範囲にある円形または長方形の断面になっているビームにコリメートされる。ビームが細いほど、計測の精度は高くなると考えられるが、走査が完了するまでの時間が長くなる。検出器3130のセットは、放射源3105の反対側で、検査される対象物3120の逆側に配置される。各検出器3130は、第2のコリメータ3125の後方に配置され、第2のコリメータ3125は、平行ビームが1次ビームの容積と交差する小さい容積を除いて、検査中の対象物3120のすべての部分からの散乱放射を遮蔽するように設計される。この交差領域は、特定の検出器に対する検査容積3115を構成する。各検出器3130は、専用の第2のコリメータ3125を有し、1次ビームの容積の長さに沿った特定の検査容積3115を精査するように設計される。好ましくは、各平行検出器3130は、1次ビームの容積の異なる部分をサンプリングするように構成される。このようにして、並列データ取得を、検査中の対象物3120と1次X線ビームとの、すべての交差容積で、行うことができる。
【0135】
第2のコリメータ3125とX線検出器3130は、それぞれ、1次ビームの軸に対して、実質的に同一の散乱角を画定するような直線的な構成に、配列される。適切な散乱角は、約3°〜10°であり、最適な角度は、典型的には、6°である。
【0136】
図32に示すように、1次ビーム3210と2次コリメータ・ビーム3230との交差部により示される検査領域3220の長さは、典型的には、約10mm〜100mmであり、検出能率と、走査時間と、システムのコストとによる妥協点として、50mmに設定するのが有利であると考えられる。
【0137】
各検出点で、計測されたX線スペクトラムの特定の領域に、検出された各X線を割り当てることができるような、適切なエネルギー分解能を、X線検出器が提供すると有利である。適切な検出器は、パルス形成機能を有する適切な読み出し回路に結合されたNaI(Tl)やCsI等の無機シンチレーション結晶である。図33に示す読み出し回路の一例では、光電子増倍管3301が、光電子増倍管からの光信号を電子信号に変換する。コンデンサCf3302を、適切なゲインが得られるように選択するとともに、抵抗Rf3303を、適切なパルス期間長、典型的には、約50μs〜1000μsのパルス期間長が得られるように選択する。そして、初段増幅器3304からの出力は、パルス形成回路網3305を経由して送られ、パルス形成回路網3305は、典型的には約0.1μs〜2μsの時定数を有するCR−RCフィルタを備え、その時定数の正確な値は、良好なノイズ性能を維持しつつ、許容されるカウントレート性能が得られるように選択される。通常、1μsの形成時間が好ましい。図33に示す回路からの出力は、AD変換器(図示せず)とヒストグラム・デジタルメモリとに送られ、ヒストグラム・デジタルメモリは、パルスの高さのスペクトラムを作成する。典型的なシンチレーション結晶のサイズは、直径が約10mm〜50mmで、厚さが最大で10mmである。
【0138】
より高いエネルギー分解能を有する別の検出器は、半導体型検出器から選択することができ、特に、液体窒素の温度(77K)で好ましい動作をする高純度ゲルマニウム、または、室温で一般的な動作をするCdZnWO4である。半導体型検出器は、比較的、使用するには高価で、液体窒素を使用する必要がある等、操作時に多少、面倒なことが加わる傾向がある。
【0139】
検査容積の特定の地点からのスペクトラムが、蓄積されると、この情報は、実験で得られた参照スペクトラムのデータベースと、比較することができ、これは、例えば、参照スペクトラムのセットに対して正規化された計測されたスペクトラムに最小二乗法を使用して得られる。適合度が、ある閾値以内であると判定されると、2つのスペクトラムの形状の違いは、微小であるから、爆発性物質が存在する可能性が高いと結論付けることができると考えてよい。
【0140】
本発明の実用的な実施形態では、高速X線システムは、出現しうる危険性のある物質の位置と形状に関する高度な情報を提供する。X線回折システムは、対象物を通る、ある線に実質的に沿って解析を行う。すなわち、3次元X線画像データを使用して、検査される対象物を通るX線回折システムのビームが、もっとも適切な軌道になるように設定してもよいと認識される。
【0141】
一実施形態では、X線断層撮影システムからの画像データを使用して、検査される対象物の外部形状を正確に画定する表面の3次元のセットを再構成する。検査される対象物が、X線回折確認センサーに到達したとき、手荷物の向きは、X線画像データを収集したときと同じにはならない。そこで、X線回折システムに、図34に示すような、一連のビデオカメラ3401を設け、これらビデオカメラ3401を一緒に使用して、検査される対象物に対する3次元の外部表面を再構成することができる。
【0142】
X線断層撮影により計算された対象物の外面の3次元画像と、ビデオカメラにより計算された、それとを使用して、その2つの検出システム間の対象物の相対的な向きを示す3次元マトリックスを計算してもよい。3次元X線断層撮影画像が高い空間解像度となるようにして、検査される対象物を通るX線回折ビームに対する最適な軌道を計算してもよい。その2つの検査システムにおける手荷物の相対的な向きを示すマトリックスが、分かっていて、扱いやすい回折検査装置が与えられているので、回折ビームが、対象物を通る最適の軌道に沿って伝播するように設定することができる。
【0143】
例えば、公知の回折センサーでは、1つの次元の長さが他の次元に比べて短い構成の爆発性物質を検出するのは、難しい可能性がある。本発明では、3次元X線断層撮影画像による先験的な情報に基づき、対象物を最適に精査するように、X線ビームを向けてもよい。
【0144】
図34を参照すると、堅固ではあるが、可動性のブーム3402を設けて、X線センサーとX線管とを2次元で動かせるようにしている。図34に示すように、回折検出ユニット3403は、コンベヤ3404の動く方向に、実質的に平行に配列されている。一実施形態では、その検出ユニットは、長さが200mm〜1200mmで、狭い設置スペースであっても適応する。これは、空港の荷物受取エリアのような限られた空間の環境で、装置を使用するのに重要である。X線放射源3405と、これに対応するコリメータ(図示せず)は、同一の堅固ではあるが、可動性のブームに固定され、検出ユニット3403と、X線放射源3405と、これに対応するコリメータとの関係は、そのブームの位置にかかかわらず固定されたままになるようになっている。
【0145】
図35を参照すると、ブームが、制御システムに固定され、制御システムにより、回折ビームの向きが、実質的に垂直方向から水平方向まで回転できるようになっている。更に、制御システムにより、ブームが、垂直方向で上下に移動できるようになっている。この制御システムは、高さを調整するリフト3501と、回転支持アセンブリ3502とを備えて、X線放射源3503と検出ユニット3504との間のビームを、任意に移動させる。図に示す配置は、一例にすぎず、他のブームや制御システムによる構成を採用して、同一の効果を得ることができることは当業者には理解されよう。
【0146】
このビーム操作構成を与えて、対象物の輪郭をビデオ解析することにより決定されるマトリックスを使用した参照のX線回折システム・フレームから変換されたビームのセットで、3次元X線断層撮影画像を精査することにより、最適化されたビーム軌道を計算する。最適なビーム軌道が計算されると、最適な走査ラインが得られるまで、適切な位置と、コンベヤを使用して移動する対象物とに、X線回折検査装置を調整する。この時点で、X線ビームは、オンに切り替わり、データ収集期間が始まる。適切な時間、典型的には、1〜5秒が経過した後、X線回折信号が、既知の参照スペクトラムと比較される。明らかに適合した場合、走査を終了することができる。そうでない場合、ビームは、再び、オンとなり、機械的アセンブリを、検査中の対象物内の予想される検査点の周りで、垂直方向に比較的、短い距離、典型的には、100mmより短い距離で、回転面において最大10°、動かす。そのデータを、最大、数分かかると考えられる、この処理の間、常に求める。検査期間の終了時に、既知の危険物と適合する回折データが見られない場合、走査を終了し、検査中の手荷物や貨物物品を合格とし、搬送を進める。
【0147】
本発明の更なる実施形態では、検査中の対象物の周りを囲むトンネル部は、核四極子計測システムのためのコイル・アセンブリを形成し、X線回折検査装置は、コイル・アセンブリを通過する対象物を解析する。核四極子共鳴とX線回折との、2つのデータのセットは、時間が許せば、同時に、または、順次、取得することができる。
【0148】
確認センサーの実施形態3:X線後方散乱撮像
別の実施形態では、確認センサーは、X線後方散乱撮像システムを備える。
【0149】
X線後方散乱は、X線がコンプトン相互作用を受けたときに起こる。ここで、散乱するX線は、衝突の前に持っていたエネルギーよりも低い状態になり、エネルギーの差は、検査中の物質内の電子に与えられる。ある方向から放射されたX線が、その方向に後方散乱して、この後方散乱したX線を、X線放射源に隣接して配置された1つ、または複数のX線センサーで検出できる確率は高い。散乱したX線の方向は、入力ビームの方向に依存しないので、特定の対象物からの後方散乱信号と後方散乱信号検出信号との間には、弱い空間的な相関しかない。
【0150】
したがって、好ましくは、コリメータを、X線放射源と検査中の対象物との間で、本システムに組み込み、これにより、X線の1次元走査ペンシルビームを発生させることができる。このビーム走査では、検出器信号は、現在のビーム位置と関連付けられ、これにより、検査中の対象物の1次元画像が形成される。そして、対象物がX線ビーム面を通って走査され、X線検出器からのデータもコンベヤの走査レートと関連付けられると、検査中の対象物の2次元X線後方散乱画像が、生成される。有効なペンシルビーム幅は、約1mm〜10mmであり、空間解像度とSN比との間の良好なバランスを得るため、好ましくは、2mmに設定される。コンベヤ速度が0.5m/sでは、最適化されたシステムは、60回転/sの回転速度で動作する4つのコリメーション・ポートを有するチョッパーホイールを使用する。
【0151】
X線は、原子番号の大きい物質によって、より散乱するが、原子番号の大きい物質によって、より吸収される。すなわち、後方散乱信号は、原子番号の小さい物質からの信号が支配的で、X線放射源に最も近い対象物の表面に近い、原子番号の小さい物質を観察するのに使用できる。
【0152】
本発明の一実施形態では、図36を参照すると、走査型ホイール・コリメータ3605は、X線放射源3615からのX線放射をコリメートすることにより、X線のペンシルビームを生成し、検査されている手荷物や貨物物品3645の上面3655に亘って、走査する。貨物の中で後方散乱するX線3635は、隣接するX線検出ブロック3625で検出される。この検出ブロック3625は、走査領域の端部に位置してよく、あるいは、好ましくは、走査ラインに平行に隣接して配置され、図36に示す、それから90度、回転した方に向けことができる。手荷物または貨物物品3645を走査すると、3次元X線画像の中に位置する特徴と関連付けすることのできる画像が形成される。
【0153】
後方散乱システムにおける手荷物または貨物物品の向きは、それが、画像データの2つのセットを関連付けるため、X線断層撮影走査装置を通過したときの方向と一致させることが好ましい。このような検査装置は、爆発性物質の存在を自動的に確認することはしないが、これを使用して、X線断層撮影ユニットによって生成される画像に対して関係する原子番号を確認してもよい。
【0154】
確認センサーの実施形態4:痕跡検出
別の実施形態では、確認センサーは、痕跡化学検出器を備える。
【0155】
ある種の爆発性物質は、室温において、その物質から発する気化物質による化学的指標を放つ。この気化物質は、検査される手荷物や貨物物品の周りの空気中に、典型的には、数PPMから数PPB、存在すると考えられる。指標分子の実際の濃度は、その物質自体の蒸気圧に加え、検査される手荷物や貨物物品と周囲の空気との間のガス交換レートに依存する。例えば、シュリンク包装された手荷物物品では、手荷物の中の爆発性物質と周囲の空気との間のガス交換は、減少する。
【0156】
一実施形態では、検査される物品は、コンベヤシステムを使用して、チャンバーの中に送られる。例示的なチャンバー3701と、通過するコンベヤ3705を図37に示す。図37を参照すると、チャンバー3701は、チャンバーの入口端と出口端をそれぞれ、開閉して密閉するドア部3702、3703、または下降してチャンバーを閉じるシャッター等の、適当な機構を使用して密閉される。チャンバーには、小型の真空ポンプ3704が、取り付けられる。ポンプ3704は、ドア部を閉めると、チャンバー3701を、低真空(典型的には、約50〜100mBar)にできるように動作する。この時点で、手荷物や貨物物品の中に存在する、閉じ込められた空気や他の気体は、チャンバー本体の容積へ、引き込まれる。そして、1つ、または複数の痕跡検出システムが、爆発性物質の存在について、チャンバー3701の中に残っている気体を解析する。
【0157】
初期抜気の後、検査中の物品からの気化物質が、大気中に放出されるよりも、チャンバー内部に確実に残るように、チャンバーを密閉する。適当な時間の後、典型的には、10秒〜5分後、痕跡検出装置による信号解析が、完了し、3次元断層撮影画像システムによって予測された爆発性物質の存在に対して関連付けることができる。
【0158】
強い相関がある場合、その手荷物や貨物物品を、不合格として、マーキングし、必要に応じて、リコンシレーション・エリア(物品の所有者を確認するための場所)に送ることができる。X線システムで予測されなかった爆発性物質が、識別される場合、その物品を、再び、不合格として、マーキングすることができる。爆発性物質が、痕跡検出システムによって、識別されない場合、手荷物を手作業で検査する、あるいは、物品を、その先へ搬送することに合格したとして、マーキングする、という判断をすることができる。
【0159】
本発明の更なる態様では、ここに示した痕跡検出装置を、X線回折センサー・システム、および/または、核四極子共鳴システムと、組み合わせて使用することができる。一実施形態では、最大3つの独立した方法を、同時に、かつ、爆発性物質と爆破装置の検出のための同一の装置で、使用することができる。そして、アルゴリズムを使用して、疑いがある手荷物や貨物の物品を、その先へ搬送するように送り出してよいかどうかの確実度を判定してもよい。例えば、独立したセンサーそれぞれが、非合法の疑いがある対象物を、第1回の検査で、「存在しない」、「存在する可能性あり」、「確実に存在する」に、分類することができる。1つ、または複数の「確実に存在する」という計測結果が得られた場合、その物品は、その先への搬送を制限されるべきである。すべてのセンサーが、「存在しない」という応答をした場合、その物品は、その先へ搬送することに合格したものとすることができる。2つ以上のセンサーが、「存在する可能性あり」という応答をした場合、その物品は、その先への搬送その他を、制限されるべきである。このような投票型システムは、疑いのある手荷物や貨物物品を、その先への搬送へ送り出すかどうかの判定の確実度を、高くする。
【0160】
同一のセンサーを使用しながらも、拡張されたデータベースを有する、このような多層型アプローチを、薬物、タバコ製品、紙幣等の不法売買品、および、その他の危険性のある物質の検出のために、まったく同じ方法で使用できることは、当業者には、明らかであろう。
【0161】
上記の例は、本発明のシステムの多くの応用の実例にすぎない。本発明の少数の実施形態しか、ここには示されていないが、本発明の趣旨または範囲を逸脱せずに、本発明は、多くの、その他の具体的な形態で、実施されうることは、理解されよう。すなわち、ここに示した例と実施形態とは、実例であり、非制限的であると考えられるものであり、本発明は、添付の特許請求の範囲の中で、変更されうるものである。
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2009年5月26日に出願の米国特許仮出願第61/181,070号に優先権を依拠する。
【0002】
また、本出願は、2009年6月16日に出願の米国特許出願第12/485,897号の一部継続出願であり、これは2005年10月25日に出願の米国特許出願第10/554,656号の継続出願であり、現在、発行済みの米国特許第7,564,939号であり、これは2004年4月23日に出願の371の国内段階出願PCT/GB04/01729であり、これは、2003年4月25日に出願の英国出願第0309387.9号に優先権を依拠する。
【0003】
また、本出願は、2009年2月16日に出願の米国特許出願第12/371,853号の一部継続出願であり、これは2005年10月25日に出願の米国特許出願第10/554,975号の継続出願であり、現在、発行済みの米国特許第7,512,215号であり、これは2004年4月23日に出願の371の国内段階出願PCT/GB2004/01741であり、これは、2003年4月25日に出願の英国出願第0309383.8号に優先権を依拠する。
【0004】
また、本出願は、2010年1月3日に出願の米国特許出願第12/651,479号の一部継続出願であり、これは2005年10月25日に出願の米国特許出願第10/554,654号の継続出願であり、現在、発行済みの米国特許第7,664,230号であり、これは2004年4月23日に出願の371の国内段階出願PCT/GB2004/001731であり、これは、2003年4月25日に出願の英国特許出願第0309371.3号に優先権を依拠する。
【0005】
また、本出願は、2009年2月2日に出願の米国特許出願第12/364,067号の一部継続出願であり、これは2008年2月19日に出願の米国特許出願第12/033,035号の継続出願であり、現在、発行済みの米国特許第7,505,563号であり、これは2005年10月25日に出願の米国特許出願第10/554,569号の継続出願であり、現在、発行済みの米国特許第7,349,525号であり、これは2004年4月23日に出願の371の国内段階出願PCT/GB04/001732であり、これは、2003年4月25日に出願の英国特許出願第0309374.7号に優先権を依拠する。
【0006】
また、本発明は、2010年4月12日に出願の米国特許出願第12/758,764号の一部継続出願であり、これは2008年9月16日に出願の米国特許出願第12/211,219号の継続出願であり、現在、発行済みの米国特許第7,724,868号であり、これは2005年10月25日に出願の米国特許第10/554,655号の継続出願であり、現在、発行済みの米国特許第7,440,543号であり、これは2004年4月23日に出願の371の国内段階出願PCT/GB2004/001751であり、これは、2003年4月25日に出願の英国特許出願第0309385.3号に優先権を依拠する。
【0007】
また、本出願は、2010年1月29日に出願の米国特許出願第12/697,073号の一部継続出願であり、これは2005年10月25日に出願の米国特許出願第10/554,570号の継続出願であり、現在、発行済みの米国特許第7,684,538号であり、これは2004年4月23日に出願の371の国内段階出願PCT/GB2004/001747であり、これは、2003年4月25日に出願の英国特許出願第0309379.6号に優先権を依拠する。
【0008】
また、本出願は、2008年6月13日に出願の米国特許出願第12/097,422号と2008年6月19日に出願の米国特許出願第12/142,005号との一部継続出願であり、両出願は、2006年12月15日に出願の371の国内段階出願PCT/GB2006/004684であり、これは、2005年12月16日に出願の英国特許出願第0525593.0号に優先権を依拠する。
【0009】
また、本出願は、2009年6月4日に出願の米国特許出願第12/478,757号の一部継続出願であり、これは2009年2月2日に出願の米国特許出願第12/364,067号の継続出願であり、これは2008年2月19日に出願の米国特許出願第12/033,035号の継続出願であり、現在、発行済みの米国特許第7,505,563号であり、これは2005年10月25日に出願の米国特許出願第10/554,569号の継続出願であり、現在、発行済みの米国特許第7,349,525号であり、これは2004年4月23日に出願の371の国内段階出願PCT/GB04/001732であり、これは、2003年4月25日に出願の英国特許出願第0309374.7号に優先権を依拠する。加えて、米国特許出願は、2008年7月15日に出願の英国特許出願0812864.7に優先権を依拠する。
【0010】
また、本出願は、2010年2月25日に出願の米国特許出願第12/712,476号の一部継続出願であり、これは2009年2月26日に出願の米国特許仮出願第61/155,572号と、2009年2月25日に出願の英国特許出願第0903198.0号とに優先権を依拠する。
【0011】
また、本発明は、2009年7月20日に出願の米国特許出願第12/505,659号の一部継続出願であり、これは2008年7月18日に出願の米国特許出願第12/175,599号の継続出願であり、これは2004年9月29日に出願の米国特許出願第10/952,665号の継続出願である。
【0012】
前述のPCT出願、外国出願、米国出願、および、それらに関連するすべての出願は、それら全体で参照として本明細書に組み込まれる。
【0013】
本発明はX線走査に関し、特に、鋭利な対象物、ナイフ、核物質、タバコ、紙幣、薬物、液体等の、不法売買品や不審な対象物に関する、手荷物、小包についてのセキュリティチェックに関する。
【背景技術】
【0014】
X線コンピュータ断層撮影(CT)走査装置は、ここ何年かに渡り空港でセキュリティチェックに使用されてきた。従来のシステムは、ある軸を中心に回転するX線管と、これと一緒に同じ速度で同じ軸を中心に回転するアーチ形のX線検出器を有する。コンベアベルト上を手荷物が運ばれ、このコンベヤベルトは中心となる回転軸の周りの適当な開口部の中に設置され、X線管の回転と共に、この回転軸に沿って移動する。ファンビーム状のX線が放射源から対象物を通過し、X線検出器アレーで検出される。
【0015】
X線検出器アレーは対象物を通過したX線の強度を記録し、その長さ方向に沿った数箇所で対象物を検出する。1セットの投影データは多数の放射源の角度それぞれにおいて記録される。この記録されたX線の強度から、断層撮影(断面)画像を構成することができ、通常、フィルタ補正逆投影法により行われる。手荷物や小包等の対象物の正確な断層撮影画像を生成するため、X線は放射源から全ての面に渡って対象物を通過する必要があることが証明されている。これを上記の構成では、X線放射源の回転走査と、対象物が運ばれるコンベヤの長手方向の移動により行っている。
【0016】
このタイプのシステムではX線断層撮影の走査を行うことが可能な速度は、X線放射源とX線検出器アレーを保持する構台の回転速度に依存する。最新のCT用構台では、X線管と検出器のアセンブリと構台の全体を毎秒2〜4回転させるようにしている。これにより、断層撮影走査を毎秒4〜8回まで行うことができる。
【0017】
最新技術が開発されると共に、単環状のX線検出器は複環状の検出器に置き換わってきている。これにより、多数の断層(典型的には8)を同時に走査することができ、単環状の装置に適応させたフィルタ補正逆投影法を使用して再構成することができる。この撮像システムを通るコンベヤの連続的な動きを伴い、放射源は対象物に対し、らせん形に走査する動きを示す。これにより、より洗練されたコーンビーム画像再構成法を適用することができ、より正確な立体画像再構成が原理的に行える。
【0018】
更なる開発では、掃引電子ビーム走査装置の動作確認が医学応用において行われ、これにより、機械式走査機構のX線放射源とX線検出器は不要となり、これに置き換わる1つ(または複数)の連続した環状のX線検出器が対象物の周りを囲み、検査に際しては、アーチ形アノードの周りを電子ビームが掃引する結果、移動するX線放射源が生じる。これにより、従来の走査装置よりも高速に画像を得ることができる。しかし、電子源が回転軸上にあるため、このような掃引ビーム走査装置は、回転軸に近接し、これと平行して通過するコンベヤシステムとの互換性はない。
【0019】
本発明は物品を検査するX線走査システムを提供し、このX線走査システムは、走査容積の周りに延在し、放射されるX線が走査容積を通過できるように配向された複数の点状放射源を構成するX線放射源と、同様に走査容積の周りに延在し、点状放射源からの走査容積を通過したX線を検出し、検出されたX線に基づく出力信号を生成するように構成されたX線検出器アレーと、走査容積を通過して物品が運ばれるように構成されたコンベヤを有する。
【0020】
本発明が更に提供するネットワーク検査システムは、X線走査システムと、ワークステーションと、X線走査システムをワークステーションに接続するように構成された接続手段とを有し、X線走査システムは、走査容積の周りに延在し、放射されるX線が走査容積を通過できるように配向された複数の点状放射源を構成するX線放射源と、同様に走査容積の周りに延在し、点状放射源からの走査容積を通過したX線を検出し、検出されたX線に基づく出力信号を生成するように構成されたX線検出器アレーと、走査容積を通過して物品が運ばれるように構成されたコンベヤとを有する。
【0021】
本発明が更に提供する物品を仕分けする仕分けシステムは、各物品の複数の走査領域を走査することによって走査装置出力を生成するように構成された断層撮影走査装置と、走査装置出力を解析して各物品を複数の区分の1つに少なくとも部分的には走査装置出力に基づき割り当てるように構成された解析手段と、物品を少なくとも部分的には物品が割り当てられた区分に基づき仕分けするように構成された仕分け手段とを有する。
【0022】
本発明が更に提供するX線走査システムは、X線を走査領域の周りにある複数のX線放射源位置から発生させるように構成されたX線放射源と、走査領域を透過したX線を検出するように構成された第1の検出器セットと、走査領域内の散乱X線を検出するように構成された第2の検出器セットと、第1の検出器セットからの出力を処理して走査領域の画像を構成する画像データを生成し、画像データを解析して画像内の対象物を識別し、第2の検出器セットからの出力を処理して散乱データを生成し、散乱データの各部分を対象物に対応させるように構成された処理手段とを有する。
【0023】
本発明が更に提供するX線走査装置からのデータを収集するデータ収集システムは、画像の各領域にそれぞれ対応する複数の領域を有するメモリと、複数のX線検出器からの入力データを所定の順序で受信するように構成されたデータ入力手段と、入力データから画像の各領域に対応するX線透過データとX線散乱データを生成し、このX線透過データとX線散乱データを適切なメモリ領域に保存するように構成された処理手段とを有する。
【0024】
本発明が更に提供するX線走査システムは、対象物を走査して対象物の断層撮影X線画像を構成する走査データを生成するように構成された走査装置と、走査データを解析して画像データの少なくとも1つのパラメータを抽出して対象物を少なくとも1つの前記パラメータに基づいて複数の区分の1つに割り当てるように構成された処理手段とを有する。
【0025】
更に、爆発性物質や爆破装置の存在について、手荷物や貨物物品を検査したいという要求がある。このような走査は、通常、高速で行いながら、手荷物や貨物物品についての処理能力の中で計測されるが、検出性能を高水準にし、かつ、誤った警報を少なくするように行われる。誤った警報が発生すると、更なる検査が要求され、これにより、人手による探査の前に、手荷物や貨物物品について、その物品の所有者を確認する必要がある場合がある。このようなプロセスは、コストがかかり、時間を消費する。
【0026】
また、高い処理能力の断層撮影システムと、爆破装置を明確に検出できる第2のシステムとを組み合わせることが必要とされている。1つ、または複数の2次元X線画像が、高速(典型的には、コンベヤ速度が0.5m/sの場合)で、1つ、または複数の様々な投影角で得られる。自動化されたアルゴリズムにより、危険性のありそうな物質や装置の存在について、これらの画像を解析する。このような物質や装置が見つかった場合、手荷物や貨物の物品は、第2のシステムに発送され、第2のシステムは、その物品を貫く、1つ、または複数の、断層撮影によって再構成された断層を形成することができる。公知のシステムは低速なため、この方法では、手荷物や貨物物品の、わずかな部分しか、検査することができない。そして、1つ、または複数の断層撮影画像は、爆発物自動検出アルゴリズムによって、解析される。高い頻度で、そのアルゴリズムは、手荷物や貨物物品について、警告を発し、その後、操作者が、その画像データを見なければならない。そして、この時点で、警告を発し続けている物品の一部は、リコンシレーション(物品の所有者の確認)と、人手による探査とにかけられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
鋭利な対象物、ナイフ、核物質、タバコ、紙幣、薬物、液体等の、不法売買品、および爆発性物質、爆破装置等の、関心対象となる特定の物品を検出することができる断層撮影画像を高速、高精度に生成できるシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、第1の検査システムと、第2の検査システムとを備える、貨物や手荷物等の容器の中の対象物を識別するためのシステムに適用される。第1の検査システムは、走査領域の周りの複数のX線放射源位置からX線を発生するように構成された、固定されたX線放射源と、走査領域を通って送られるX線を検出するように構成された検出器の第1のセットと、走査領域の内部で散乱したX線を検出するように構成された検出器の第2のセットと、検出器の第1のセットからのデータ出力を処理し、少なくとも1つの断層撮影画像を生成し、前記検出器の第2のセットからのデータ出力を処理して、散乱画像データを生成するように構成された、少なくとも1つのプロセッサとを備え、第2の検査システムは、NQRによる検査システム、X線回折による検査システム、X線後方散乱による検査システム、または痕跡検出による検査システムのうちの少なくとも1つを備える。
【0029】
任意選択で、少なくとも1つのプロセッサは、容器の中の、不審な対象物を示すデータを出力する。不審な対象物は、X線走査システムを操作する者が関心を持つ内容である任意の対象物であり、例えば、危険性のある対象物、非合法である対象物、不法売買品、武器、薬物、核物質、紙幣、タバコ、ナイフ、爆弾、その他の物品である。第1の検査システムが、容器の中の、不審な対象物を識別した場合のみ、少なくとも1つのプロセッサは、その容器を第2の検査システムで検査すべきであることを示す信号を出力する。第1の検査システムが、容器の中の、不審な対象物を識別しなかった場合のみ、少なくとも1つのプロセッサは、容器を第2の検査システムで検査すべきでないことを示す信号を出力する。第2の検査システムは、容器の中に、不審な対象物が存在するか否かを示す信号を出力し、第2の検査システムの出力と、断層撮影画像データと、散乱画像データとを使用して、不審な対象物が非合法なものか否かを判定する。
【0030】
第1の検査システムは、第2の検査システムと並列に動作する。第1の検査システムは、第2の検査システムに対して、直列に動作する。第1の検査システムは、断層撮影画像データ、または散乱画像データの、少なくとも1つを解析して、容器の中の、対象物の材質の種類を判定する。第2の検査システムは、第1の検査システムによって判定された材質の種類に基づき、核四極子の計測を行う。第2の検査システムは、第1の検査システムによって生成された断層撮影画像に基づき、X線回折による検査を行う。固定されたX線放射源は、電子走査式X線放射源である。
【0031】
別の実施形態では、本発明は、容器の中の対象物を識別するためのシステムを備え、そのシステムは、第1の検査システムと、第2の検査システムへ、容器を移動させる搬送システムとを備える。その搬送機構は、任意の動作機構とすることができ、通常のコンベヤベルト、カート、手動操作式パレット、リフト、または、その他の構造とすることができる。第1の検査システムは、走査領域の周りの複数のX線放射源位置からX線を発生するように構成された、固定されたX線放射源と、走査領域を通って送られるX線を検出するように構成された検出器の第1のセットと、検出器の第1のセットからのデータ出力を処理し、少なくとも1つの断層撮影画像を生成するように構成された、少なくとも1つのプロセッサとを備え、搬送システムは、第1の検査システムから第2の検査システムへ、容器を移動させ、第2の検査システムは、NQRによる検査システム、X線回折による検査システム、X線後方散乱による検査システム、または痕跡検出による検査システムのうちの少なくとも1つを備える。
【0032】
任意選択で、少なくとも1つのプロセッサは、容器の中の、不審な対象物を示すデータを出力する。第1の検査システムが、容器の中の、不審な対象物を識別した場合のみ、少なくとも1つのプロセッサは、容器を前記第2の検査システムで検査すべきであることを示す信号を出力する。第2の検査システムは、容器の中に、不審な対象物が存在するか否かを示す信号を出力し、第2の検査システムの出力と、断層撮影画像データとを使用して、不審な対象物が危険性がある物か否かを判定する。第1の検査システムは、第2の検査システムと並列に動作する。第1の検査システムは、第2の検査システムに対して、直列に動作する。第1の検査システムは、断層撮影画像データを解析して、容器の中の、対象物の材質の種類を判定する。第2の検査システムは、第1の検査システムによって判定された材質の種類に基づき、核四極子の計測を行う。第2の検査システムは、第1の検査システムによって生成された断層撮影画像に基づき、X線回折による検査を行う。
【発明の効果】
【0033】
鋭利な対象物、ナイフ、核物質、タバコ、紙幣、薬物、液体等の、不法売買品、爆発性物質、爆破装置等の、関心対象となる特定の物品を検出することができる断層撮影画像を高速、高精度に生成することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は本発明の第1の実施形態に係るリアルタイム断層撮影セキュリティ走査システムの長手方向断面である。
【図1a】図1aは図1のシステムのX線放射源の斜視図である。
【図2】図1のシステムの平面図である。
【図3】図1のシステムの模式的な側面図である。
【図4】図1のシステムのデータ取得システムを形成する部分の模式図である。
【図5】図1のシステムの危険性検出システムを形成する部分の模式図である。
【図6】図1の走査システムを含む本発明の実施形態に係る手荷物仕分けシステムの模式図である。
【図7】本発明の更なる実施形態に係る手荷物仕分けシステムの模式図である。
【図8a】図8aは本発明の更なる実施形態に係る手荷物仕分けシステムの模式図である。
【図8b】図8bは本発明の更なる実施形態に係る手荷物仕分けシステムの別の模式図である。
【図8c】図8cは本発明の更なる実施形態に係る手荷物仕分けシステムの別の模式図である。
【図9】本発明の更なる実施形態に係るネットワーク型手荷物仕分けシステムの模式図である。
【図10】本発明の更なる実施形態に係るスタンドアロン型走査システムの模式的な平面図である。
【図11】図10のシステムの模式的な側面図である。
【図12】本発明の更なる実施形態に係るモジュール式走査システムの模式的な側面図である。
【図13】X線散乱現象の図である。
【図14】本発明の更なる実施形態に係るセキュリティ走査システムの長手方向断面である。
【図15】どのように異なる散乱現象が検出されるかを示す図14のシステムの更なる長手方向断面である。
【図16】図14のシステムの横断面である。
【図17】図14の走査システムのデータ取得システムの模式図である。
【図18】本発明の更なる実施形態に係る2種類のエネルギーに対する走査装置の部分図である。
【図19】図18の走査装置の更なる部分図である。
【図20】本発明の更なる実施形態の2種類のエネルギーのX線放射源の模式図である。
【図21】本発明の更なる実施形態に係る走査装置の検出器アレーの模式図である。
【図22】本発明の更なる実施形態に係る走査装置の検出器アレーの模式図である。
【図23】図21の実施形態のデータ取得回路の回路図である。
【図24】本発明の更なる実施形態のデータ取得回路の回路図である。
【図25】仕分けループ部を有する手荷物取り扱いシステムの一実施形態である。
【図26】仕分けループ部を有する手荷物取り扱いシステムの別の実施形態である。
【図27】NQR検出システムを備える確認センサーの一実施形態である。
【図28a】NQR検出システムのための、パルス列の第1の例のグラフである。
【図28b】NQR検出システムのための、パルス列の第2の例のグラフである。
【図29】標準的なX線管からのX線のスペクトラムの一例である。
【図30a】水のようなアモルファス物質と、爆発物等の多結晶物質とに対する指標となるX線回折スペクトラムの第1の例である。
【図30b】水のようなアモルファス物質と、爆発物等の多結晶物質とに対する指標となるX線回折スペクトラムの第2の例である。
【図31】確認センサーとして使用するためのX線回折システムの実施形態の一例である。
【図32】1次ビームと2次コリメータ・ビームとの交差部により規定される検査領域である。
【図33】パルス形成機能を有する適切な読み出し回路に結合された検出器を示す図である。
【図34】コンベヤの動く方向に、実質的に平行に配列されている回折検出ユニットを示す図である。
【図35】制御システムに固定され、制御システムにより、回折ビームの向きが、実質的に垂直方向から水平方向まで回転できるようになっているブームを示す図である。
【図36】後方散乱システムの一例を示す図である。
【図37】痕跡検出システムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の実施形態をここに、ほんの一例として添付図面を参照して記述する。
【0036】
図1〜3を参照すると、搬送路式手荷物走査システム6は、多焦点X線放射源10とX線検出器アレー12とを有する走査部8を有する。多焦点X線放射源10は、この多焦点X線放射源10上にそれぞれ間隔を置いて位置する多数の点状放射源14を有し、この点状放射源14は、このシステムの軸X−Xの周り360°全周に渡る円状アレーとして配置される。360°全周に満たない角度範囲を覆うアレーも使用できることは理解されるところである。
【0037】
図1aを参照すると、多焦点X線放射源10は多数の放射源ユニット11で構成され、この放射源ユニット11は走査領域16の周りに間隔を置いて位置し、コンベヤ移動方向に対し垂直な面に実質的に円状に配置される。各放射源ユニット11は、2つの側部を有する導電性金属製サプレッサ13と、この導電性金属製サプレッサ13の側部の間に沿って延在するエミッタ素子15とを有する。グリッドワイヤ17として形成される多数のグリッド素子は、導電性金属製サプレッサ13の上方で支持され、エミッタ素子15と垂直になっている。収束ワイヤ19として形成される多数の収束素子は、エミッタ素子に対しグリッドワイヤ17の反対側のもう一方の面で支持されている。収束ワイヤ19はグリッドワイヤ17に平行で、互いにグリッドワイヤ17と同じ間隔を隔てて配置され、各収束ワイヤ19は、それぞれグリッドワイヤ17の1つと一緒に配置されている。
【0038】
収束ワイヤ19は2つの支持レール21で支持され、この支持レール21はエミッタ素子15に平行に延在し、収束ワイヤ19は導電性金属製サプレッサ13と間隔を置いて位置している。支持レール21は導電性であり、全ての収束ワイヤ19が共に電気的に接続されるようになっている。支持レール21の一方は接続部材23に接続され、収束ワイヤ19が電気的に接続されるようになっている。各グリッドワイヤ17は導電性金属製サプレッサ13の一方の側部の下方に延在し、それぞれ、電気的接続部材25に接続され、この電気的接続部材25により各グリッドワイヤ17は独立して電気的に接続される。
【0039】
アノード27はグリッドワイヤ17と収束ワイヤ19の上方で支持されている。アノード27は棒状に形成され、典型的には銅タングステンまたは銀メッキを施した銅によるもので、エミッタ素子15に平行に延在する。従って、グリッドワイヤ17と収束ワイヤ19はエミッタ素子15とアノード27の間に延在している。電気的接続部材29によりアノード27は電気的に接続される。
【0040】
グリッドワイヤ17は正電圧に接続された2つを除き、全て負電圧に接続される。この正電圧のグリッドワイヤによりエミッタ素子15の領域から電子ビームが得られ、収束ワイヤ19により収束し、アノード27上の点に電子ビームを向かわせ、このグリッドワイヤのペアに対しX線点状放射源が形成される。従って、グリッドワイヤの電位は、どのグリッドワイヤのペアを任意のある時間に動作させるかを選択して変えることができる。すなわち、アノード27上の、どの点を任意の時間に動作しているX線点状放射源とするかを選択する。
【0041】
従って、多焦点X線放射源10を制御して、各放射源ユニット11の各点状放射源14からのX線を独立して発生させることができ、図1を再び参照すると、各点状放射源14からのX線は円状多焦点X線放射源10内の走査領域16を通って内側を向いている。多焦点X線放射源10を制御する制御部18は、グリッドワイヤ17に印加される電位を制御し、これにより、各点状放射源14からのX線の放射を制御する。この他の好適なX線放射源の構成についてはWO2004/097889に記述されている。
【0042】
多焦点X線放射源10は、電子制御回路18を使用して、多焦点X線放射源10内の多数の独立したX線点状放射源14の内のどれを任意の時間において時間内に動作させるかを選択することが可能になっている。従って、電気的に多焦点X線管を走査することにより、機械部品を機械的に動かすこと無しにX線放射源があたかも動いているかのような状態が作られる。この場合、放射源の角回転速度は、従来の回転式X線管アセンブリを使用する場合には全く得ることのできないレベルに上げることができる。この高速な回転走査により、これに応じたデータ取得プロセスの高速化と、後に続く高速画像再構成がもたらされる。
【0043】
また、X線検出器アレー12は円状に軸X−Xの周りに配置され、多焦点X線放射源10に対し軸X−Xの方向に少しずれた位置にある。多焦点X線放射源10は、X線が走査領域16を通過して走査領域16の反対側のX線検出器アレー12に放射される向きになるよう配置される。従って、X線ビームの経路18は走査領域16を通り、走査装置の軸X−Xに実質的に、すなわちほぼ垂直な方向となり、軸X−Xの近くで互いに交差する。これにより、走査され、画像化される走査領域の容積は、走査装置の軸に垂直な薄い断層により形成される。放射源が走査されることにより、各点状放射源はそれぞれの時間においてX線を放射するようになっており、この放射時間は所定の順番に設定されている。各点状放射源14がX線を放射すると、X線検出器アレー12に入射したX線の強度に基づく信号がX線検出器アレー12から発生し、この信号により生成される強度データがメモリ内に記録される。放射源が走査を完了した時、この検出器信号を処理して走査容積の画像を形成することができる。
【0044】
コンベヤベルト20は撮像容積を通って左から右へ図1に示すように走査装置の軸X−Xと平行に移動する。X線散乱遮へい部22はコンベヤベルト20の周りのX線システム本体部分の上流と下流に設置され、操作者が散乱したX線を浴びないようになっている。X線散乱遮へい部22は鉛ゴム製のれん24を、その開口端に有し、検査される物品26は検査領域に入る時と出る時、こののれんを通って移動させられるようになっている。ここに示した統合システムでは、主電子制御システム18と、処理システム30と、電源32と、冷却ラック34とは図示のようにコンベヤベルト20の下に取り付けられている。コンベヤベルト20は通常、連続して走査するように移動し、一定のコンベヤ速度で動作して、典型的には撮像容積内に炭素繊維製フレームアセンブリを有するように構成される。
【0045】
図4を参照すると、処理システム30は電子データ取得システムとリアルタイム画像再構成システムとを有する。X線検出器アレー12は、単純な直線状のパターン(例えば、1×16)で並べられた、独立したX線検出器50の配列を有する。また、複環状のパターン(例えば、8×16)とすることも可能である。各X線検出器50は検出されたX線の強度に基づく信号を出力する。多重化ブロック52は各X線検出器50から入力された出力データ信号を多重化し、データにフィルタ処理を行い、ゲインとオフセットの補正を行って、このデータを高速シリアルストリームにフォーマットする。選択ブロック53は全ての多重化ブロック52からの信号を取り込み、画像再構成に必要な全てのX線データの一部だけを選択する。また、選択ブロック53は対応するX線点状放射源の減衰がない場合のX線ビーム強度Io(多焦点X線管内の各X線点状放射源により変化する)を測定し、多重化ブロック52からのX線強度データIxをlogo(Ix/Io)を求めることにより処理した後、これに対し適当な1次元フィルタによる畳み込み積分を行う。得られた投影データはシノグラムとして保存され、このシノグラムにおいて投影データは1つの軸、ここでは水平軸とし、これに沿った画素番号を伴う配列として並び、また、もう1つの軸、ここでは垂直軸とし、これに沿った放射源角度を伴う配列として並ぶ。
【0046】
そして、データは選択ブロック53から、1組の逆投影加重処理エレメント54へ並行して送られる。逆投影加重処理エレメント54はハードウェアの中にマッピングされ、前もって計算された係数から成る参照テーブルを使用して、畳み込み積分された必要なX線データと、高速逆投影処理と高速加重処理についての重み付け係数を選択する。フォーマット処理ブロック55は逆投影加重処理エレメント54から再構成画像の各部分の画像を表すデータを取り込み、最終出力画像データをディスプレイ画面上で適切にフォーマットされた3次元画像を生成するのに適した形式にフォーマットする。この出力は画像をリアルタイムで生成するのに十分な速さで生成され、リアルタイムまたはオフラインでの表示が可能なので、このようなシステムをリアルタイム断層撮影(Real Time Tomography:RTT)システムと呼ぶ。
【0047】
この実施形態では、多重化ブロック52はソフトウェアでプログラミングされ、選択ブロック53とフォーマット処理ブロック55は共にファームウェアでプログラミングされ、逆投影加重処理エレメント54はハードウェアにマッピングされている。但し、これらの各構成要素はハードウェアとソフトウェアのどちらでもよく、該当するシステム要求に合わせればよい。
【0048】
図5を参照すると、各手荷物等の物品の各最終出力画像は、その後、処理システム30内の危険性検出プロセッサ60により処理され、この危険性検出プロセッサ60は画像化された手荷物等の物品に危険性があるかどうかを判定するように構成されている。危険性検出プロセッサ60では、入力されたX線断層撮影画像データ62は1組の低レベルパラメータ抽出部63(レベル1)の中に送られる。低レベルパラメータ抽出部63は画像の特徴、例えば、一定のグレーレベルの領域、質感、統計値等を識別する。低レベルパラメータ抽出部63には各2次元画像すなわち断層像に関するデータに対し動作するものもあれば、3次元画像に対し、動作するものもあり、また、シノグラムデータに対し動作するものもある。可能な場合、各低レベルパラメータ抽出部63は同じ1組の入力データに対し並行処理を行い、各低レベルパラメータ抽出部63は異なる処理動作を行い、異なるパラメータを求めるように構成される。処理終了時、低レベルパラメータ抽出部63により求めたパラメータは上位の1組の判別ツリー64(レベル2)に送られる。抽出されたパラメータの詳細について以下に述べる。判別ツリー64はそれぞれ、多数の(典型的には全ての)低レベルパラメータを取り込み、より高レベルの各情報、例えば、隣接する容積についての情報等を関連する統計値を用いて構築する。最高レベル(レベル3)では、データベース検索部65がレベル2で生成されたより高いレベルのパラメータを、検査されている物品について危険性が存在する確率Pr(threat)の「赤」と、安全である確率Pr(safe)の「緑」とにマッピングする。この確率は処理システム30により使用され、走査された物品を該当する安全性区分に割り当て、自動仕分け制御出力を生成する。この自動仕分け制御出力は、物品が合格区分に割り当てられたことを示す第1の「緑」の出力と、物品が「不合格」区分に割り当てられたことを示す第2の「赤」の出力と、自動仕分け動作が十分な信頼性を伴って実行されず、物品を「合格」区分または「不合格」区分に割り当てることができないことを示す第3の「黄色」の出力のいずれかにすることができる。具体的には、Pr(safe)が所定の値よりも大きい場合(またはPr(threat)が所定の値よりも小さい場合)、自動仕分け制御出力は第1の信号形態で生成され、この第1の信号形態は物品が緑の経路に割り当てられるべきであることを示す。Pr(threat)が所定の値よりも大きい場合(またはPr(safe)が所定の値よりも小さい場合)、自動仕分け制御出力は第2の信号形態で生成され、この第2の信号形態は物品が赤の経路に割り当てられるべきであることを示す。Pr(threat)(またはPr(safe))が、これら2つの所定の値の間にある場合、自動仕分け制御出力は第3の信号形態で生成され、この第3の信号形態は物品が赤の経路にも緑の経路にも割り当てることができないことを示す。また、この確率は更に追加された出力信号として出力することもできる。
【0049】
これらのパラメータは低レベルパラメータ抽出部63により求めることができ、通常、2次元または3次元画像の分割された領域内の画素の統計分析と関連している。画像内で分割された領域を識別するため、統計的エッジ検出法が使用される。これは、ある画素から開始し、隣接する画素が同じ領域の部分かどうかを確認し、領域が大きくなると共に外側へ移動していくものである。各ステップで、領域内の画素の平均明度を計算することにより領域の明度の平均値を求め、その領域に隣接する次の画素の明度を、その平均値と比較し、これがその画素をその領域に加えてもよいほどに近いかどうかを判定する。この場合、この領域内における画素の明度の標準偏差を求め、新しい画素の明度がこの標準偏差に入っていれば、この領域に加える。そうでない場合、この画素をこの領域には加えないで、これにより、この領域内の画素と、この領域には加えないことを確認された画素との間の境界をもって、この領域のエッジを定義する。
【0050】
画像が領域に分割された後、この領域のパラメータを求めることができる。このパラメータの1つに、領域内における画素の明度の分散という評価尺度がある。この値が高い場合、多くの塊から成る物質である可能性が示され、これは例えば手製爆弾等が検知された可能性があり、一方、この分散が低い場合、これは液体等の均質な物質であることを示すと考えられる。
【0051】
この他に、測定されるパラメータとして、領域内における画素値の分布の歪度があり、これは画素値のヒストグラムの歪度を算出することにより求められる。ガウス分布すなわち歪みのない分布は領域内の物質が均質であることを示し、一方、より高い歪みがある分布は、領域内が非均質であることを示す。
【0052】
上記のように、これらの低レベルパラメータは上位の判別ツリー64に送られ、ここで、より高レベルの情報が構築され、より高レベルのパラメータが求められる。このような、より高レベルのパラメータの1つに、識別される領域の容積に対する表面積の比がある。この他に、相似性という評価尺度があり、この場合には領域の形状とシステムに保存されたテンプレートの形状の相互相関である。このテンプレートの形状はセキュリティ上、危険とされる物品の形状に対応したものとして構成され、例えば、銃や起爆装置である。これらの高レベルパラメータを上記の様に使用して、画像化された対象物が危険性を示すレベルであるかどうかを判定する。
【0053】
図6を参照すると、インライン式リアルタイム断層撮影手荷物仕分けシステムは図1の走査システム6を有し、これを通過するコンベヤベルト20を伴う。走査システム6の下流に仕分け装置40が設置され、コンベヤベルト20からの物品である手荷物を受け入れ、これを合格すなわち「緑」のコンベヤ経路42、または不合格すなわち「赤」のコンベヤ経路44のいずれかに送る。仕分け装置40は処理システム30からの制御線46を経由する自動仕分け出力信号により制御され、この自動仕分け出力信号は物品が合格か不合格かについての処理システム30の判定を示し、また、回線45を経由して仕分け装置40に接続されているワークステーション48からの信号によっても制御される。走査システム6からの画像と処理システム30からの信号は赤と緑に対する確率と処理システム30の仮の判定を示し、ワークステーション48にも送られる。ワークステーション48は画面47上に画像を表示するよう構成され、操作者が見られるようになっており、また画面に赤と緑に対する確率と、仮の自動仕分け判定が表示されるようにもなっている。ワークステーション48の使用者は画像と確率と自動仕分け出力を再確認することができ、物品が赤または緑の区分に割り当てられた場合、走査システム6の判定を承認するか無効にするかを決定でき、走査システム6の判定により物品が「黄色」の区分に割り当てられた場合、判定を入力することができる。ワークステーション48は使用者入力部49を有し、これにより、使用者は信号を仕分け装置40に送ることができ、この信号は仕分け装置40により走査システム6の判定を無効化するものとして認識されることができる。無効化信号が仕分け装置40により受信されると、仕分け装置40は走査システム6の判定を無効化する。無効化信号が受信されない場合、または、実際にはワークステーション48からの確認信号が受信され、ワークステーション48が走査システム6の判定を確認している場合、仕分け装置40は走査装置の判定に基づき物品の仕分けを行う。この仕分けシステムが物品について「黄色」であるという信号を走査システム6から受信した場合、まず、その物品を「赤」の区分に割り当て、「赤」の経路に送る。但し、「緑」の区分に入れるべきと示されている物品の仕分けの前にワークステーション48から入力信号を受信した場合、その物品は「緑」の経路に仕分けされる。
【0054】
図6のシステムの変形例では、仕分けを完全に自動化することができ、「合格」と「不合格」の2つだけの仕分け出力の1つを出力する処理システムであり、物品は「緑」または「赤」のいずれかの経路に割り当てられる。また、この処理システムにより1つの閾値を伴う確率Pr(threat)の1つだけを求め、この確率がこの閾値より大きいか小さいかによって物品を2つの区分の内の1つに割り当てることも可能とされる。この場合、この割り当ては、まだ仮であり、操作者には、まだ自動仕分けを無効化するという選択肢があるとういうことになる。更なる変形例では、走査システムの自動区分割り当ては最終割り当てとして使用され、使用者による入力は全くない。これにより、完全に自動化された仕分けシステムが提供される。
【0055】
図6のシステムでは、走査速度はコンベヤ速度に合わせられ、手荷物はコンベヤベルト20上に載せられる搬入区域から一定の速度で移動し、走査システム6を経由して、仕分け装置40上に移動することができるようになっている。コンベヤベルト20は、走査システム6の出口と仕分け装置40の間で距離Lに渡って延在する。物品である手荷物が距離Lに渡ってコンベヤベルト20上を移動する間の時間で、操作者は検査中の物品の画像データと、走査システム6により判定された初期区分割り当てとを見ることができ、またRTTシステムによる自動判定を承認または却下することができる。典型的には手荷物は、その後、合格の経路に受け入れられ、その先への搬送準備に送られるか、不合格の経路に入れられ、それ以上の検査からは外されるかのいずれかになるものとされる。
【0056】
このRTT多焦点システムでは、RTT走査ユニット8は最大の手荷物用ベルト速度で動作することができるので、手荷物待ち行列機構も、その他の迂回機構も必要とせずに最適なシステム動作が行える。このような統合システムにおいて、従来の回転式放射源システムでは処理能力に限界があるため、著しく制約を受ける。このため、度々、従来のCT装置を複数台、並列に設置し、高性能手荷物取り扱いシステムを使用して物品を検査のため、次に利用可能な装置に振り分けている。このように複雑になることを図6の構成により回避することができる。
【0057】
図7を参照すると、本発明の第2の実施形態は冗長システムを有し、この冗長システムにおいて、2つのRTT走査システム70、72は同じコンベヤ74上で直列に設置され、一方のシステムが動作停止中に、他方が手荷物の走査を続けられるようにしている。いずれの場合も、コンベヤベルト74はRTT走査システム70、72の両方を通って標準動作ベルト速度で移動を続けることになる。
【0058】
図8aを参照すると、第3の実施形態では、より複雑な冗長システムが設けられ、この冗長システムにおいて、2つのRTT走査システム82、84は並列して動作する。第1の主搬入コンベヤ86は、仕分けされる全ての物品を第1の仕分け装置88に搬送し、この仕分け装置88は物品を2つの更なるコンベヤ90、92のいずれか1つの上に転送することができる。この2つのコンベヤ90、92はそれぞれ、各走査システム82、84の1つを通り、この走査システム82、84は物品を走査し、物品が合格か不合格かの判定を行うことができる。更なる仕分け装置94、96は、それぞれ2つのコンベヤ90、92に設けられ、その先への搬送のため、「緑の経路」の共通コンベヤ98上へ、または、更なる検査を受けるため、不合格の場合の「赤の経路」のコンベヤ100上へ、手荷物を仕分けするように構成される。この構成では、第1の主搬入コンベヤ86と、「緑の経路」のコンベヤ98とをRTTコンベヤ速度よりも速い速度、典型的には最大で、その2倍の速度で、動作させることができる。例えば、この場合、第1の主搬入コンベヤ86と「緑の経路」の共通コンベヤ98が1m/sの速度で移動すると、走査コンベヤ82、84は、この半分の速度、すなわち0.5m/sで移動する。当然ながら、このシステムは並列に追加されたRTTシステムにより拡張することができ、走査コンベヤ82、84の速度に対する第1の主搬入コンベヤ86の速度の比は、並列している走査装置の数に等しいか、または実質的に等しい。但し、仕分け装置は主コンベヤ速度が約1m/sを超えると信頼性が無くなる場合がある。
【0059】
図8bを参照すると、更なる実施形態では、手荷物仕分けシステムは多数のRTT走査装置81b、82b、83bを有し、典型的には、その数は1つのシステムにおいて最大で60程度であり、それぞれ、各搬入受け入れ部に対応している。仕分け装置84b、85b、86bは各RTT走査装置に対応しており、手荷物はコンベヤ上を各RTT走査装置から、これに対応する仕分け装置に搬送される。各仕分け装置84b、85b、86bは、手荷物を対応する走査装置からの信号に応じて、共通合格経路コンベヤ88b、または共通不合格経路コンベヤ87b上へ仕分けする。更なる予備RTT走査装置89bが共通不合格経路コンベヤ87bに設けられ、これに対応する仕分け装置90bにより、手荷物は共通不合格経路コンベヤ87b上に残留するか、または共通合格経路コンベヤ88bに転送されることができる。
【0060】
通常動作においては、主走査装置81b、82b、83bは、それぞれ手荷物を仕分けし、予備走査装置すなわち冗長走査装置89bは不合格の経路に仕分けされた物品に対する追加チェックのみを行う。冗長走査装置89bにより手荷物・物品に危険性がない、または危険性が非常に低いと判定された場合、物品は合格の経路に転送される。主走査装置81b、82b、83bの1つが動作しない場合、または故障した場合、対応する仕分け装置は、その走査装置からの全ての手荷物を不合格の経路に仕分けするように構成される。この時、予備走査装置89bは、この全ての手荷物を走査し、合格の経路と不合格の経路の仕分けを制御する。これにより、故障した走査装置の修理または交換をしている間も、全ての搬入受け入れ部が動作を継続できる。
【0061】
図8cを参照すると、更なる実施形態において、各搬入受け入れ部からの手荷物は複数の独立したコンベヤを通って中央ループ部いわゆる回転式コンベヤ81c上に転送され、そこで連続して周回する。多数の仕分け装置82c、83c、84cは、それぞれ手荷物・物品を中央ループ部81cから、各RTT走査装置85c、86c、87cへ誘導する各コンベヤに転送するように構成される。仕分け装置82c、83c、84cは走査装置により制御され、手荷物・物品が各走査装置に送られる速度が制御される。走査装置から、コンベヤにより全ての手荷物・物品が共通搬出コンベヤ88cに転送され、更なる仕分け装置89cに誘導される。これは全ての走査装置により制御され、各手荷物・物品は合格の経路90Cと不合格の経路91Cとに仕分けされる。
【0062】
各手荷物・物品の移動経路を記録するため、各物品には6桁のIDと、システムに最初に投入された時のコンベヤ上の位置の記録が付与される。これにより、走査装置は、どの手荷物・物品が任意のある時間において走査されたかを認識でき、走査結果を該当する物品に対応させることができる。また、これにより、仕分け装置は各手荷物・物品を識別することができ、その走査結果に基づいて仕分けをすることができる。
【0063】
このシステムの走査装置の数とコンベヤの速度は、走査装置の1つが動作しない場合、残りの走査装置により搬入受け入れ部から中央ループ部81c上に送られてくる全ての手荷物を処理することができるように設定される。
【0064】
この実施形態の変形例では、各走査装置にどの物品を転送するかを選択する仕分け装置82c、83c、84cは走査装置により制御されるのではなく、各仕分け装置は物品を各走査装置に所定の速度で送ることができるように中央ループ部81cからの物品を選択するよう構成される。
【0065】
図9を参照すると、更なる実施形態に係るネットワークシステムは図6の走査システムと同様な3つの走査システム108と、4つの操作者用ワークステーション148とを有する。3つのRTT走査システム108からのビデオ画像出力は各高帯域2地点間ビデオ接続リンクを経由してリアルタイムディスクアレー109に接続され、このリアルタイムディスクアレー109は冗長ビデオ切換部110への原画像データの一時記憶を行う。また、リアルタイムディスクアレー109は各操作者用ワークステーション148に接続される。これにより冗長ビデオ切換部110は各走査システム108からの原ビデオ画像出力を一時記憶から任意の操作者用ワークステーション148の1つに転送し、これを使用してオフラインでの表示が可能な3次元ビデオ画像を生成することができる。赤/緑の確率信号と自動仕分け割り当て信号の走査システムからの出力は従来の冗長イーサネット(登録商標)切換部112に接続され、更にこの冗長イーサネット(登録商標)切換部112は各ワークステーションに接続される。冗長イーサネット(登録商標)切換部112は各確率信号と自動仕分け割り当て信号を対応する画像信号と同じワークステーション148に切り替えるように構成されている。これにより、割り当ての決まった自動割り当てと確率を伴う複数の装置からの画像データを、操作者用ワークステーション148の配列に切り替えることができ、この時、操作者は手荷物検査システムの稼動状況の監視と、危険性レベルが黄色に割り当てられた手荷物の仕分け先の決定の両方を行うことができる。
【0066】
あるいは、ネットワークシステムは、サーバーに接続された1つの走査システム108と、ワークステーション148とを有する。走査システム108からのビデオ画像出力はリアルタイムディスクアレー109に接続され、このリアルタイムディスクアレー109は原画像データの一時記憶を行う。また、リアルタイムディスクアレー109はワークステーション148に接続される。確率信号出力と自動仕分け割り当て信号出力はワークステーション148に対応するビデオ画像出力を伴い送られ、操作者により確認される。ネットワークを構成する、この1つの走査システム108は複数の走査システムを伴うネットワークシステムの一部とすることができる。
【0067】
図10と11を参照すると、更なる実施形態において、インライン式走査装置は、主散乱遮へい部162と、ちょうど同じ長さのコンベヤベルト160を有する。このスタンドアロンなシステム構成では、検査される物品はコンベヤベルト160上に置かれ、システムに搬入される。そして、この物品は走査装置164で走査され、画像が生成される。しばしば、従来のシステムでは、コンピュータ断層撮影検査の前に簡易な透過型X線システムで物品の事前検査を行うことにより危険性のありそうな領域を識別し、コンピュータ断層撮影検査は対象物内の選択された面について行う。このような応用はリアルタイム多焦点システムに簡単に適用することができる。ここで、事前検査を使用しないのであれば、物品全体の正確な3次元画像を得ることになる。
【0068】
一部の実施形態では、多焦点X線放射源の点状放射源の軌跡は円弧状に、180°にファンビーム角(典型的には40〜90°の範囲)を加えただけの角度範囲に渡って伸びることができる。各点状放射源の数はナイキストのサンプリング理論を満足するように選択するのが効果的である。一部の実施形態では、図1の実施形態のように、点状放射源を360°全周に渡って環状にして使用する。この場合、点状放射源1つ当りの滞留時間は180+所定の走査速度に対するファンビーム設定に渡って増大し、これは再構成画像の信号対雑音比を改善するのに効果的である。
【0069】
図1の走査装置システムは統合走査システムであり、この中で、制御ユニット18、処理ユニット30、電源ユニット32、冷却ユニット34は、走査システム8と遮へい部22によるユニット内に収容される。図12を参照すると、更なる実施形態では、モジュールシステムが提供され、このモジュールシステムでは、制御ラック218、処理ラック230、電源ラック232、冷却ラック234の一部または全てが、多焦点X線放射源とセンサーアレーを有する走査ユニット208から離れたところに設置される。モジュール構成を採用することにより設置が容易になるという点で有利であり、特に手荷物を取り扱う広い場所という環境では、システムを天井から吊るしたり、アクセスが制限される場所であったりする場合、有利である。あるいは、システム全体を統合ユニットとして構成し、これが1つのハウジングの中に一緒に収容された複数のサブアセンブリユニットを伴うようにすることもできる。
【0070】
図1の実施形態を含む一部の実施形態では、1つの環状X線検出器が使用される。これにより低コストで、高い画像走査速度と簡易なファンビーム画像再構成アルゴリズムであっても、十分な信号対雑音性能が構成、提供される。他の実施形態(特に画像再構成の回転直径が大きい場合)では、互いに隣接し、システムの軸に沿って放射源とずらして配置された複数の円状または円弧状のセンサー群による複環状センサーアレーを使用することが好ましい。これにより、より複雑なコーンビーム画像再構成アルゴリズムを処理システムで使用することができる。複環状センサーを使用することにより、点状放射源1つ当りの滞留時間が増大するため、合成された信号の大きさの増大、再構成画像の信号対雑音比の改善がもたらされる。
【0071】
上記の実施形態ではコンピュータ断層撮影システムに基づき多焦点X線放射源が使用されるが、この構成の中核は放射源の角回転速度と、走査装置を通過するコンベヤシステムの速度の関係である。コンベヤが止まる限界では、再構成画像の断層の厚さはX線の焦点のサイズと、X線検出器アレーの各エレメントの面積によって決まる。コンベヤ速度がゼロから上昇すると、検査中の対象物はX線ビームが回転する中で断層画像化されていき、再構成画像へ断層の厚さ方向に入り込むぼやけが加わってくる。理想的には、X線放射源の回転はコンベヤ速度に比べて速ければ、断層の厚さ方向のぼやけは最小化されるようになる。
【0072】
手荷物検査用コンピュータ断層撮影システムに基づく多焦点X線放射源は、検査中の物品において危険性がある材質と物体を高い確率で検出する目的に対し、コンベヤの直線速度に対する放射源の角回転速度の比を良好なものにする。一例として、図1の実施形態では、コンベヤ速度は0.5m/sであり、空港のシステムとして一般的なものである。放射源はコンベヤの周りを毎秒240回転することができるので、検査中の対象物は断層を画像化する走査の間、2.08mmの距離を移動することになる。放射源が毎秒4回転する従来のシステムでは、検査中の対象物は断層を画像化する走査の間、同じベルト速度で62.5mmの距離を移動することになる。
【0073】
危険性のある物質の検出を行う検査システムの主要な目的は、危険性のある物質の存在を正確に検出し、他の全ての物質については疑いがないものとして通過させることである。1回の走査におけるコンベヤの移動によって生じる断層の方向のぼやけが増大すると、再構成画像の画素において一部の容積のアーチファクトも増大し、再構成画像の画像密度の精度は低下する。再構成画像の画像密度の精度が低下すると、システムが影響を受けやすくなり、危険性のない物質について警告を発し、実際に危険性のある物質について警告を発しないようになる。従って、多焦点X線放射源技術に基づくリアルタイム断層撮影(Real‐Time Tomography:RTT)システムは、従来の機械式回転X線システムよりも速いコンベヤ速度で危険性検出能力を大幅に高めることができる。
【0074】
多焦点X線放射源において延在するアーチ形アノードを使用することにより、従来のコンピュータ断層撮影システムに見られる機械式の回転を模した連続走査ではなく、アノードのほぼ全長に渡って飛び越すような電子源の切換を行うことができる。その瞬間のアノードにおける熱負荷を最小にするため、全ての以前の放射位置から現在のアノード放射位置の距離が最大になるようにX線の焦点を効果的に切り替えることができる。X線放射点のこの瞬間的な広範囲への移動は、コンベヤの移動による一部の容積への影響を最小化するので、再構成された画素の精度を更に向上させるという点で効果的である。
【0075】
RTTシステムの高い時間解像度により、自動化された危険性検出の精度を高レベルにすることができる。この高レベルの精度により、RTTシステムは無人状態で動作でき、緑すなわち合格に割り当てることに対応する一方の状態と、赤すなわち不合格に割り当てることに対応する他方の状態の2つの状態を簡易に出力表示することができる。緑の手荷物は合格で更に搬送される。赤の手荷物は高レベルの危険性があることを意味し、その乗客の承諾の上で、その渡航を禁止する必要がある。
【0076】
これから説明する本発明の更なる実施形態では、X線の散乱と透過に関するデータを記録し、これを使用して走査される手荷物・物品を解析する。
【0077】
図13を参照すると、X線ビーム300は対象物302を通過する時、X線の一部は直線状に対象物302を透過し、これを通過して入ってきた方向と同じ方向に進む。X線の一部は散乱角θで散乱し、この散乱角θは対象物に入る方向と、これから出て行く方向の差である。公知のように、散乱には2つのタイプがあり、散乱角が5°の辺り、典型的には4°〜6°の範囲に集中している可干渉性の、いわゆるブラッグ散乱と、より大きい角度でX線が散乱する非干渉性の、いわゆるコンプトン散乱が存在する。ブラッグ散乱は対象物の原子番号に対し線形に増加し、次式に従う。
nλ=2dsinθ
ここで、nは整数、λはX線の波長、dは対象物内の原子間距離である。
【0078】
従って、ブラッグ散乱の量によって対象物の原子構造に関する情報が与えられる。但し、これは原子番号に対し、滑らかに変化するものではない。
【0079】
コンプトン散乱の量は、対象物の電子密度に依存して滑らかに変化し、これにより、より大きい散乱角での散乱量によって対象物の電子密度に関する情報すなわち原子番号に関する情報が与えられる。
【0080】
図14を参照すると、本発明の更なる実施形態に係るセキュリティ走査システムは、図1のものと同じ多焦点X線放射源410と、同様に図1のものと同じ円状検出器アレー412とコンベヤ420とを有する。但し、この実施形態では、システムは更なる円筒状検出器アレー422を有し、これは円状検出器アレー412と同じ半径で同様にコンベヤの周りに延在するが、軸方向に多焦点X線放射源410の反対側に延在する。円状検出器アレー412は対象物426を透過するX線を検出するように構成されているのに対し、円筒状検出器アレー422は対象物426で散乱するX線を検出するように構成されている。円筒状散乱検出器アレー422は多数の円状アレーすなわち環状検出器422a、422bから成り、各環状部分の検出器はコンベヤ方向に等間隔になっており、走査装置の軸方向に延在する多数の直線状の列を構成するようになっている。
【0081】
円筒状散乱検出器アレー422内の検出器は、各X線が各検出器と起こす相互反応により検出器出力が発生するようになっているエネルギー分解検出器であり、この検出器出力はX線のエネルギーを示す。このような検出器は、GaAs、HgI、CdZnTe、CdTe等のバンドギャップの広い3−5族または2−6族の半導体材料、Ge等のバンドギャップの狭い半導体、または光電子増倍管による測定を伴うNaI(Ti)等の複合シンチレーション検出器により製造可能である。
【0082】
図15を参照すると、コリメータ428は円筒状検出器アレー422の前面に設けられている。コリメータ428は、特定の入射方向以外からのX線が各検出器に到達しないようにする仕切りとして働く。円筒状検出器アレー422の各検出器では、図16より分かるように、この入射方向は走査装置の長手方向の中心軸X−Xを通る。但し、入射方向は軸X−Xと垂直ではなく、図15より分かるように、多焦点X線放射源410へ向かう方向で環状検出器422a、422bの面に5°程度、傾いている。
【0083】
図15を参照すると、円筒状散乱検出器アレー422の任意のある検出器に入射するX線は、画像化される薄い容積内の各小容積部分から散乱したものでなければならず、この小容積部分はX線ビームの軌跡上で、かつ円筒状検出器アレー422からの入射方向の線上となる位置にあることが理解できる。全ての可干渉性の散乱X線に対し、これを検出する検出器の軸方向位置は、動作中のX線点状放射源から散乱を起こす位置までの距離で決まってくる。軸方向で多焦点X線放射源410に最も近い検出器は、動作中のX線点状放射源から最も遠くで散乱するX線を検出することになる。例えば、点xから散乱してくるX線は、動作中のX線点状放射源410aに最も近く、点zから散乱してくるX線よりも多焦点X線放射源410から遠くにある検出器により検出されることになり、この点zは動作中のX線点状放射源410aから、より遠くにある。従って、任意のある時間において、動作中のX線点状放射源を認識することができれば、散乱X線を検出した検出器の軸方向位置を使用して、X線ビームの方向に沿った散乱位置を求めることができる。
【0084】
また、図15より、このシステムの動作において、X線ビームは走査装置の軸方向に細く収束すべきであることが重要と理解することができる。横方向のビームの広がり、例えば横方向に広がるファンビームを使用することによっても、この可干渉性の散乱が起こった位置を求めることができる。
【0085】
図16を参照すると、コリメータ428は走査装置の軸方向に配向しているので、可干渉性の散乱をする動作中のX線点状放射源410aからのX線は、走査装置の軸に対して、この動作中の点状放射源の反対側にある検出器422aの列によってのみ検出され、場合によっては、これに近接する1つ以上のどちらかの側の列によって検出されるが、これはコリメータがどのぐらい細く収束させているかによる。X線をまっすぐな細い「ペンシル」ビームに限定した場合、より大きい角度の非干渉性の散乱をするX線は全て、コリメータ428によって遮断されるので、まったく検出されないことになる。このようなX線の例を図16の矢印aによって示す。但し、X線のファンビームが動作中の点状放射源410aから発生し、この放射源が走査装置の軸に垂直な方向の撮像容積の断層を通って広がる場合、走査装置の軸から、より外れた方向のX線は非干渉性の散乱をし、動作中の点状放射源の反対側にある検出器422aの列のどちらかの側の検出器に到達することができる。このようなX線の例を矢印b、cによって示す。任意の検出器422bに到達するには、散乱は走査装置の軸と検出器422bを通る面で起こる必要があることに注意すべきである。すなわち、任意の動作中の点状放射源と特定の検出器に対し、検出されたX線の散乱が起きた位置を、走査装置の軸とその検出器を通る面にあるものとして認識することができる。散乱が起きた位置を正確に求める場合は、他の情報が必要になる。例えば、撮像容積内の対象物の位置に関する断層撮影画像データ等からの情報が利用可能な場合、以下で更に詳細に説明するように、その散乱を最も可能性のある対象物と対応させることができる。
【0086】
ブラッグ散乱のデータから、検出された各散乱現象に対し、X線のエネルギーと散乱角の組み合わせを使用して散乱現象が起きた物質の原子間距離dを求めることができる。実際には、散乱角は一定と仮定でき、X線のエネルギーを使用して異なる物質を識別することができる。コンプトン散乱に対しては、走査容積の各容積からの散乱のレベルは、その容積内の物質の密度を示すものである。また、可干渉性の散乱に対するコンプトン散乱の比を求め、画像化される対象物の材質の特性を表す更なるパラメータとして使用することもできる。
【0087】
各X線点状放射源における滞留時間が短いため、各点状放射源において検出される散乱X線の量は常に非常に低く、典型的には5以下である。適切な可干渉性の散乱信号を形成するため、断層撮影走査範囲内の全ての点状放射源に対する散乱データを収集し、そして撮像容積の各容積部分についての結果を蓄積する必要がある。500個の点状放射源を有し、1容積部分当たりかつ1走査当たり可干渉性回折散乱が平均して1回起こり、その後そのデータのセットの蓄積を行う走査装置では、各容積部分では、これに対応する500の結果が得られ、これはこの容積部分内で起こる500回の散乱に対応する。典型的には容積部分は数平方センチメートルの画像化される面内の領域に渡り、これは数ミリメートルの厚さの容積である。
【0088】
図17を参照すると、図14〜16の走査装置の散乱検出器アレー422からのデータを蓄積するように構成されたデータ取得システムは、各検出器422に対応するマルチチャンネルアナライザ500を有する。各マルチチャンネルアナライザ500は、検出器からの出力信号を受信し、検出した各X線を多数のX線のエネルギー範囲すなわちチャンネルの1つに割り当て、検出されたX線が振り分けられたエネルギー範囲を示す信号を出力するように構成されている。多重化処理部502は各マルチチャンネルアナライザ500からの出力を受信するように構成されている。また、参照テーブル504が設けられ、この中にある記載項目は、任意の点状放射源と検出器に対し、X線が散乱した撮像容積内の容積部分を識別するものである。このシステムは更に画像メモリ506を有し、この画像メモリ506は多数のメモリ領域508を有し、各メモリ領域508は走査装置により画像化される面内の各容積部分に対応している。
【0089】
データは各メモリ領域508に自動的に多重化処理部502によって、参照テーブル504の指示に従いロードされる。参照テーブル504は走査の前に係数を伴ってロードされ、この係数は検出器422とマルチチャンネルアナライザ500の各組み合わせを各画像位置508にマッピングし、X線放射源毎に参照テーブルの記載項目が1つある。前方すなわち実質的に光子が放射源から全ての相互反応の前に伝搬する方向にある、これらの画素すなわち検出器422は可干渉性の散乱光子を4〜6°程度の小さいビーム角で記録すると仮定される。前方にない画素422はコンプトン散乱効果による非干渉性の散乱光子を記録すると仮定される。従って、画像メモリ506は実際には「3次元状」であり、2つの次元で画像内の位置を表し、3番目の次元は可干渉性の散乱(下位8ビット)と非干渉性の散乱(上位8ビット)の両方の散乱のエネルギーのスペクトルを保持している。また、参照テーブル504は多重化処理部502にデータのタイプについて指示し、このデータは各マルチチャンネルアナライザ500に対し各投影像で収集され、適切なメモリ空間に充当されるようになっている。
【0090】
散乱データが特定の走査について収集された後、このデータは投影像シーケンス制御部510に転送され、これにより主RTTデータ取得システム512と同期が取られるが、これは図4を参照して上記に示されている。従って、再構成画像データと散乱データは危険性検出システムを同時に通過し、このデータを使用して適切な解析用パラメータを求めることができる。
【0091】
各走査に対し、透過検出器412からの断層撮影画像は、画像の各画素におけるX線の減衰量に関するデータを生成し、一方、このデータは断層撮影画像容積の各容積部分に対応している。これは図4を参照して上記で説明したように取得される。散乱検出器422からのデータは上記のように、各容積部分内の可干渉性の散乱量に関するデータと、各容積部分内の非干渉性の散乱量に関するデータとを提供する。従って、このデータは図5の危険性検出プロセッサと同じもので解析できる。この場合、抽出されたデータのパラメータは画像データまたは散乱データまたは2つ以上のタイプのデータの組み合わせに関係付けることができる。データから抽出されるパラメータの例として、非干渉性の散乱に対する可干渉性の散乱の比率、可干渉性の散乱データから求められるような物質の種類、非干渉性の散乱データから求められるような物質の密度、散乱データに対するCT画像の画素値の相互相関がある。また、透過データについての上記のパラメータに対応する散乱データについてのパラメータも求めることができる。
【0092】
図18を参照すると、本発明の更なる実施形態では、断層撮影画像データの生成に使用される透過検出器512は、異なるエネルギー範囲に渡るX線の透過を測定するように構成されている。これを行うために2セットの検出器512a、512bが備えられ、それぞれコンベヤの周りに環状に形成される。この2セットの検出器512a、512bは、コンベヤの移動方向に沿う軸方向の異なる位置にあり、この場合、軸方向に互いに隣接している。第1の検出器セット512aは、その前部にフィルタを備えていないが、第2の検出器セット512bは、X線放射源510との間に設置された金属製フィルタ513を備えている。すなわち、第1の検出器セット512aは、広いエネルギー範囲に渡って透過するX線を検出し、第2の検出器セット512bは、高エネルギー端のエネルギー範囲のより狭い部分のX線のみを検出する。
【0093】
走査される物品がコンベヤに沿って移動すると、その薄い容積すなわち断層は、それぞれ第1の検出器セット512aを使用して1回の走査がなされ、その後、第2の検出器セット512bを使用して更に走査される。図示した実施形態では、同じ放射源510を使用して隣り合う2つの容積を同時に走査し、それぞれのデータは各検出器セット512a、512bの1つにより収集される。物品の容積が移動して両方の検出器セットを通過し、2回の走査がなされた後、2つの異なるX線のエネルギー範囲を使用して2セットの画像データを形成することができ、各画像は、その画像の各画素に対する透過データ(および、これによる減衰データ)を含んでいる。この2セットの画像データは第2の検出器セット512bによる画像データを第1の検出器セット512aによる画像データから引くことにより合成することができ、低エネルギーのX線成分についての対応する画像データが得られる。
【0094】
個々のエネルギー範囲それぞれに対するX線透過データと、高エネルギーと低エネルギー等の2つの異なる範囲のデータ間の差とを、画像の各画素について記録することができる。そして、このデータを使用してCT画像の精度を向上させることができる。また、これを危険性検出アルゴリズムの更なるパラメータとして使用することもできる。
【0095】
他の方法を使用してX線エネルギーの異なる範囲に対する透過データを得ることができることは理解されるところである。図18、19のシステムに対する変形例では、バランスフィルタを2セットの検出器において使用することができる。このバランスフィルタは両方のX線が通過する狭いエネルギーのウィンドウとなるように選択される。そして、この2セットの検出器512a、512bに対する画像データを合成して、この狭いエネルギーのウィンドウに対する透過データを得ることができる。これにより、化学的な特定をする画像化を行うことができる。例えば、カルシウムのKエッジエネルギーの周辺でバランスさせたフィルタを使用することにより骨を特定する画像を生成することができる。明らかに、この化学的な特定データは効果的に危険性検出アルゴリズムに使用することができる。
【0096】
更なる実施形態では、独立したフィルタを使用するのではなく、異なるエネルギーのX線に反応する2セットの検出器を使用する。この場合、検出器は重ねて使用され、この検出器は低エネルギーのX線には反応するが、高エネルギーのX線は通過させる薄い前部の検出器と、この前部の検出器を通過した高エネルギーのX線に反応する厚い後部の検出器とから成る。また、異なるエネルギー範囲の減衰データを使用して、エネルギーを特定する画像を提供することができる。
【0097】
更なる実施形態では、2つの走査を対象物の各断層に対し2つの異なるX線ビームのエネルギーによって行い、この走査は異なるX線放射源管電圧、例えば160kVと100kVを使用することにより行われる。この異なるエネルギーにより、X線のエネルギーのスペクトルは互いに応じて変化することになる。スペクトルが比較的、そのエネルギー範囲の領域に渡って平坦であれば、スペクトルはその範囲のほとんどに渡って似たものとなるはずである。但し、一部のスペクトルは著しく変化することになる。従って、2つの管電圧に対する画像を比較し、これを使用することで2つの画像間で著しく減衰が変化する対象物の部分を認識することができる。従って、これにより画像間で変化するスペクトルの狭い部分において高い減衰のある画像領域が認識される。すなわち、これは走査された容積内の各容積部分についての特定のエネルギーの減衰データを得る代替手段である。
【0098】
図20を参照すると、本発明の更なる実施形態では、2つの異なるX線のエネルギーのスペクトルを、X線管にアノード600を設けることにより発生させ、このアノード600は2つの異なる物質によるターゲット領域602、604を有する。この場合、例えば、アノード600は銅による母材606から成り、タングステンによるターゲット領域602とウランによるターゲット領域604を伴う。電子源610は、独立して動作可能な多数の点状放射源612を有する。1対の電極612、614は電子ビーム616の軌道を挟んで対向して設けられ、これを制御して電界のオン・オフを行い電子ビームの軌道を制御して、ターゲット領域602、604の一方または他方のいずれかに当たるようにすることができる。アノードにおけるX線のエネルギーのスペクトルは、どちらのターゲット領域に電子ビーム616が当たったかによって変化するものである。
【0099】
この実施形態で使用するX線放射源は図1aと同様のものであり、アノード27に沿って延在する平行な帯状のものとして形成される別々のターゲット領域を伴う。動作中の各点状電子源に対し、2つの異なるX線のスペクトルは、どちらのターゲット物質を使用するかによって発生させることができる。この電子源は、各点状電子源が動作中の時、これに対する2つのターゲット領域の間の切換を行うように構成することができる。あるいは、アノード27に沿った走査を2回、行い、1回は一方のターゲット物質に対して、1回は他方のターゲット物質に対して行うことができる。どちらの場合にも、電子ビーム収束ワイヤを追加することが、一方または他方のターゲット物質だけに電子ビームが確実に1回で照射されるようにするため必要となる可能性がある。
【0100】
X線ビームがアノードから取り出される角度によっては、2つのターゲット領域602、604からのビームが同じ撮像容積を通過して、共通の検出器アレーによって検出されるように構成できる場合もある。あるいは、撮像容積の隣接する断層を通過するようにして、別々の検出器アレーによって検出されるように構成してもよい。この場合、画像化される物品の各部分に対し、物品がコンベヤに沿って図18の構成と同様な方法で通過する場合の2倍の走査が行える。
【0101】
図21を参照すると、更なる実施形態では、2つの検出器アレーを1つの走査装置に設け、軸方向に互いに隣接させ、一方の検出器アレー710は図1の検出器アレーに対応するものとし、RTT画像を形成するように構成され、他方の検出器アレー712は高解像度のものとし、走査された対象物の高解像度投影画像を生成するように構成されている。この実施形態では、高解像度検出器アレー712は、異なるエネルギーのX線を検出するように、それぞれ構成されている2つの平行な線状アレー714、716を有し、2つのエネルギーの投影画像を生成することができるようになっている。図22の実施形態では、高解像度アレー812は2つの重ねられたアレー、すなわち、比較的低いエネルギーのX線は検出するが、比較的高いエネルギーのX線は透過するように構成された上部の薄いアレーと、比較的高いエネルギーのX線を検出するように構成された下部の厚い方のアレーとを有する。どちらの場合でも、2つの検出器アレーは共に軸方向に十分、近付けて設置することにより、点状放射源の1つの線状アレーからのX線を検出できるようにしている。
【0102】
投影画像を得るため、点状放射源が1つだけ動作している時に、データを高解像度アレー712、812の全ての検出器から取り込む必要がある。図23を参照すると、これを行うために高解像度アレーの各検出器718、818は積分器750に接続される。積分器750はコンデンサ754と並列に接続された増幅器752を有する。入力スイッチ756は検出器718と増幅器752の間に設けられ、リセットスイッチ758は増幅器752の入力端子と、コンデンサ754をまたいで接続された更なるリセットスイッチ759との間に設けられ、マルチプレクシングスイッチ760は積分器750とADコンバータADCの間に設けられている。
【0103】
稼動時、検出器718が動作する必要のない時、マルチプレクシングスイッチ760以外の全てのスイッチは閉じられる。これにより、コンデンサ754は確実に放電され、その状態を保つ。そして、検出器718によるデータ収集が必要になった時、その開始時に、2つのリセットスイッチ758、759が閉じられ、検出器718によって検出された任意のX線により、コンデンサ754の電荷が増え、検出器718からの信号が積分されることになる。データ収集の期間が終わると、入力スイッチ756が開かれ、コンデンサ754は充電されたままとなる。そして、積分信号を積分器750から読み出すため、出力スイッチ760が閉じられ、積分器750がADコンバータADCに接続される。これにより、コンデンサ754の充電レベルによって定まるアナログ信号がADコンバータADCへ供給されるので、これは検出器718が積分器750に接続されていた期間における検出器718によって検出されたX線の量を示す。そして、ADコンバータADCは、このアナログ信号をデータ取得システムに入力するためのデジタル信号に変換する。1つの投影画像を生成するため、X線点状放射源の1つが動作している時、全ての高解像度検出器を使用して同時にデータを収集する。
【0104】
図24を参照すると、更なる実施形態では、各検出器718は並列に接続された2つの積分器750a、750bに接続され、この積分器750a、750bはそれぞれ、図23のものと同じである。この2つの積分器750a、750bからの出力は、それぞれの出力スイッチ760a、760bを介してADコンバータADCに接続される。これにより、各積分器750a、750bがX線放射源の走査で異なる位置の検出器718からの信号を積分するように構成することができるので、別々の画像のデータを収集し、この2つの画像を異なるX線点状放射源の異なる角度に基づくものとすることができる。例えば、これを使用して高解像度3次元画像を形成するために使用できる直角方向からの投影画像を生成することができ、これから、画像化された手荷物の特徴的な部分を3次元で求めることができる。
【0105】
高解像度画像はRTT画像と合成する場合、有用であり、より高い解像度が必要な細いワイヤ等の物品の識別を容易にするようなことができる。
【0106】
本発明の別の実施形態では、手荷物や貨物物品を、最高コンベヤ速度で検査することができる高速断層撮影走査装置が開示される。これは、公知のセキュリティチェック・システムで使用される、機械式で走査される構台の代わりに、電子的に走査されるX線放射源と対応する検出方法とを用いることによって、実現される。このようなシステムの性能特性により、自動検出アルゴリズムによって疑いのある物質または装置の位置を求める場合、後続する人間が見る画像の可視化を伴う単一の走査の施行で爆発物や爆破装置の自動検出が可能となる。
【0107】
本発明は、高い走査処理能力と組み合わせられた高画質を特徴とする。本発明の範囲内の走査装置は、3次元すべてにおいて、約2mm以下の空間解像度を実現することができ、その3次元画像の再構成された画素サイズは、3次元すべてにおいて、1.5mm以下である。走査装置は、走査速度が0.25m/s以上で、再構成画像のSN比が50を超え、通常は100を超えて、コンベヤと共に動作をしながら、同時に、このような画像解像度特性を実現するように構成することができる。この画質により、典型的には1%である、その物質の線形減衰係数を正確に計測しながら、爆発する可能性のある物質の容積と形状の両方を明確に判定するのに十分な情報が提供される。
【0108】
このようなシステムの、その高画質、高い走査処理能力、およびインタラクティブな3次元画像表示能力にもかかわらず、爆発性物質や爆破装置の疑いがあり、追加検査が有益である場合が、今なお、ある。特に、本発明の高速で電子的に走査されるX線放射源走査装置を使用して検査されている手荷物や貨物物品の中の爆発性物質や爆破装置の疑いがある物を、更に第2の方法により調べて、爆発性物質の有無を確認することができる。
【0109】
高速X線システムの検査能力を改良するために、第2のセンサーが、物質それ自体の1つ、または複数の化学的特性を精査しなければならず、そして、その精査から生成された特定の信号を、X線検査処理により検出された爆発性物質の形状、容積、および予期される種類に戻って、相関を求めねばならない。
【0110】
加えて、第2のセンサーの性能を最大にするために、詳細なX線画像を使用して、第2の確認センサーの対象を、検査中の手荷物や貨物物品の特定の領域にしなければならない。
【0111】
図25に示すように、手荷物取り扱いシステム2500は、通常、検査中の対象物を、高処理能力X線システムから第2の走査領域の中へ移送する必要がある。空港のような環境で検査される手荷物等の、手荷物や貨物物品は、左方2501からシステム2500に入る。上述のように、手荷物や貨物物品は、高速X線走査装置2503を使用して検査され、高速X線走査装置2503は、電子切り替え式X線放射源と対応するX線検出と、画像再構成と、危険性検出とのサブシステムを備える。
【0112】
手荷物は、コンベヤシステム2511に続き、仕分け装置2505に入り、仕分け装置2505は、その先への搬送のための手荷物や貨物物品のセキュリティが確認されるまで、これらを止めておくループ部として構成され、ここで、仕分け装置2505は、手荷物や貨物物品を、多数の仕分け先2507の1つに送出してよい。空港では、各仕分け先は、該当する出発便の行き先に対応させるのが好ましいものである。
【0113】
X線走査、自動検出、および人間に見えるように可視化した後、危険性のあるものとしてマーキングされた手荷物や貨物物品は、コンベヤシステム2511と仕分け装置2505により、第2の確認センサー2509へ発送される。この設計の有利性として、確認センサー2509は、手荷物や貨物物品の、それらの仕分け先への流れを遅らせることなく、相当の期間をかけて手荷物や貨物物品を解析することが可能となる。
【0114】
一部の状況では、合格した手荷物だけを、主仕分けシステムに入れるようにできるという点で有利である。図26を参照すると、第2のループ部2617は、確認センサー2609のために設けられる。ここで、左方2601から入って、X線システム2603によって合格した手荷物や貨物物品は、分岐点2615を通って、その先にある主仕分けループ部2605および、物品の最終仕分け先2607へ直進する。X線システム2603によって、1つ、または複数の危険な物品を含む可能性があるものとしてマーキングされた手荷物は、その後、手荷物や貨物物品がコンベヤシステム2611上の分岐点2615へ続いている状態で、操作者による目視が行われる。操作者が、分岐点2615で手荷物や貨物物品を合格させなかった場合、その物品は、自動的に、分岐した側方ループ部2617に送られ、側方ループ部2617は、確認センサー2609を有する。人手による追加検査が更に必要な手荷物や貨物物品は、合格した手荷物が主仕分けループ部2605の方へ送られることができる状態で、分岐した検査領域2613に送ることができる。
【0115】
前述の実施形態の両方で、コンベヤシステムは、複数の物品が走査のために列を作れるような、複数の短いコンベヤセクション(典型的には長さが1.5〜2m)から形成されると、有利である。好ましくは、5〜20個の手荷物や貨物物品が列を作れるスロットが、利用可能であるとよい。手荷物や貨物物品は、確認センサー内に、一度に1個ずつ送られる。物品が列を作って、合格のマーキングをされた状態で、操作者が手荷物や貨物物品の検査を完了した場合、手荷物や貨物物品は、直進して確認走査装置を通るように送ることができ、更なる遅れや、主仕分けループ部2505、2605へ戻ることはない。そして、いまだ危険性がある物品として分類されたままの、それらの物品は、確認センサー2509、2609による検査にかけられる。
【0116】
確認センサー2509、2609が、物品を合格とした場合、その物品は、主仕分けループ部2505、2605へ戻され、該当する最終仕分け先への搬送が継続される。確認センサー2509、2609が、危険性がある手荷物や貨物物品を確認した場合、その物品は、分岐点2619を通って、保持室2613に送られ、保持室2613では、その手荷物や貨物物品を、その物品を有する乗客または所有者について確認した後、適切な権限により、人手による探査を行うことができる。
【0117】
X線システムは、高い確度で、爆破装置や爆発性物質を検出するが、通常、検査される、すべての手荷物や貨物物品のうち、典型的には10%〜30%の間の割合で、誤った警報が発生する。これらの不合格の物品は、1人または複数の操作者により目視が行われ、操作者は、通常、X線システムの爆発物自動検出アルゴリズムによって識別された、すべての危険物のうちの90%〜99%を判定できる。したがって、残りの物品は、確認センサーで走査する必要があるものである。
【0118】
すなわち、1時間当たり1800個の物品が投入される手荷物または貨物ラインに対し、一実施形態では、1時間当たり最高600個の物品が、X線システムの爆発物自動検出アルゴリズムによって、危険である可能性がある物品として識別され、目視検査にかけるように指定することができる。これらのうち、1時間当たり最高60個の物品が、検査者により、危険である可能性がある物としてマーキングすることができる。別の実施形態では、1時間当たり、わずか180個の物品がX線システムの爆発物自動検出アルゴリズムによって、危険である可能性がある物品として識別され、目視検査にかけるように指定することができる。これらのうち、1時間当たり最高2個の物品が、目視検査を行う検査者により、危険である可能性がある物としてマーキングすることができる。
【0119】
したがって、第2の確認センサーは、その解析を完了し、手荷物や貨物物品の中の識別された物質の特質を確認するのに、数分しかかからないように構成すべきである。これにより、本システムを通過する手荷物や貨物物品の流れが妨げられることがなく、高信頼性セキュリティチェックを目指した場合、どのような手荷物や貨物物品についても、数分を超える遅れは生じない。すなわち、本発明は、第2の確認システムの、高い処理能力を具現化して利用している。
【0120】
確認センサーの実施形態1:核四極子共鳴(Nuclear Quadrupole Resonance:NQR)
一実施形態では、確認センサーは、核四極子共鳴(Nuclear Quadrupole Resonance:NQR)の計測を行うシステムを備える。ここで、特定の原子核、特に、窒素と塩素は、相当な磁気四重極モーメントを有することが知られている。通常、サンプルとなる物質内の個々のスピンしている原子核の磁気四重極モーメントは、ランダムな方向を向いて並んでいる。強い磁場が印加される応用では、検査中の物質内の原子核の個々の磁気四重極モーメントは、印加される磁場に揃えられ、これにより、印加された磁場と反対の方向に作用する弱い磁場が形成される。印加される磁場は、約10〜100ミリテスラとしてよく、このとき、並んでいる原子核により発生する磁場は、フェムトテスラのオーダーにすぎないとしてよい。いったん、印加された磁場が無くなると、磁気双極子が、整列状態から外れて動き始め、合成された磁場の強度が減少し始める。
【0121】
第一の位置の磁場の強度は、検査中の物質内の、原子核の種類と、これらの原子核の密集度とに依存する。原子核による磁場が、印加されている磁場の影響で増大する割合と、原子核による磁場が、印加されている磁場が取り除かれた後に、どのように再び消滅するかとは、局所的な化学的環境と、検査中の物質内部の原子核の格子構造とに依存する。
【0122】
印加されている磁場により、関心対象となるサンプル内の原子核の整列状態によって発生する磁場の大きさが小さいため、発生する磁場による信号の計測は、通常、雑音が多い。そのため、その計測におけるSN比を増大させるため、計測を何度も繰り返し、印加される磁場刺激それぞれの後に生じる信号を、1つの結合された信号にして処理すると有利である。
【0123】
図27を参照すると、NQR確認センサー2700の刺激コイルと対応する電子回路部が示される。ここで、コイル2702は、図示のように、適当な距離に延在する一巻きコイルであり、この距離は、検査される物品が、このコイルの3次元の筒状部の内部に収容できるようになっており、その内部は、内部領域2703として画定される。好ましくは、コイル2702は、コイルの共振回路の調整が容易になり、不要な発熱を起こす可能性のあるコイル2702内の電力損失を低減させるように抵抗の低い物質で作られる。適切なコイルの材質は銅である。
【0124】
信号発生器2708は、好ましくは、デジタル・プログラマブル信号発生器であり、これを使用して、電力増幅器2710を介して、コイル2702を、適切な帯域、典型的には、最大10MHzで駆動する。好ましくは、電力増幅器2710は、コイル2702を、高速電力スイッチ2705を介して駆動する。この電力スイッチ2705により、磁場を印加する高電流と高感度増幅器2704とが絶縁され、高感度増幅器2704は、検査中の物質から得られる磁気信号を検出するのに使用される。
【0125】
高ゲイン・高感度増幅器2704は、物質を刺激するために使用されるコイル2705に、リアクティプ結合部2705を介して接続される。この増幅器2704は、典型的には、コモンモード信号と、そのアナログ出力信号からの関心対象となる周波数範囲にない、それらの環境信号とを除去するように構成される。その後にある信号処理ユニット2706は、高ゲイン増幅器2704からのアナログ信号をデジタル化し、適切なデジタルフィルタ、例えば、検出した信号の包絡線に、指数関数的に減少する関数を適合させるようなデジタルフィルタをかける。本システムは、誘起された磁気四重極信号の緩和時間を判定する。この緩和時間は、原子核それ自体と、その化学的環境と、原子核が存在する格子構造とに依存する。
【0126】
印加される磁場は、典型的には、所定のパルス列でパルス化されて、誘起される信号を最大にし、記録される誘起された信号に対するパルスと、適切に処理された信号との間の時間が与えられる。図28aと28bは、それぞれ、印加される信号と出力に対するパルス列の一例を示している。図28aを参照すると、印加される信号は、典型的には、約400μsで、アクティブになる。これにより、信号が、その飽和レベル付近にまで達する時間が与えられる。図28bに示すように、印加された刺激が、取り除かれた後、コイル内の残留渦電流が信号取得の前に消滅するまでの短い不感時間(典型的には、50〜150μs)が続く。出力信号は、通例、500〜1000μsの期間に亘って、同期している。すなわち、パルス列の期間は、典型的には、約200Hz〜2kHである。爆発物の検出を高レベルで行うために、通例、トータルで1〜5秒間の計測時間が、採用される。
【0127】
パルス列と、対応するデジタルフィルタ処理とは、関心対象となりうる爆発性物質の種類ごとに、特別な構成となる。したがって、4つ、または5つの化合物のセットを探査する場合、トータルの計測時間は、30秒に及ぶ場合もある。
【0128】
この結合システムでは、X線データにより、出現しうる爆発性物質の種類の事前評価が既に与えられているものであるから、核四極子計測の対象を、まず、予想される爆発性物質とし、そして、適合が見られない場合、関係する化合物を検査することができる。これにより、試験時間を最小限にすることが容易になり、有利である。
【0129】
検査される手荷物や貨物物品を、走査領域に、導電性トンネル部を経由して送り、導電性トンネル部の寸法を、電磁的な環境ノイズ源に対する耐性を改善するために、コイルのサイズよりも実質的に小さくすると、有利である。
【0130】
確認センサーの実施形態2:X線回折
別の実施形態では、確認センサーは、X線回折システムを備える。10keV〜200keVのエネルギー範囲のX線が有する、対応する波長は、既知の物質内の格子面間隔のそれに相当する。10keVのX線の波長は、1.24×10−10m(1.24オングストローム)であり、200keVのX線の波長は、6×10−12m(0.06オングストローム)である。波の波長と、その波が伝搬する散乱物の間隔とが、その波長に近い場合、その波の回折は、ブラッグ散乱条件に従って起こる。
nλ=2dsinθ
ただし、nは、回折パターンの順番、λは、波の波長、dは、格子面間隔、θは、回折角である。
【0131】
X線の場合、ブラッグ散乱を使用して、格子面間隔を判定し、これにより、物質の種類を確認できる。実際のX線システムでは、X線放射源は単に1つのエネルギーではなく、複数のエネルギーを発生し、典型的には、10keVからX線管に設定された最大加速電圧までのエネルギー範囲、通常、最大200keVまでの範囲で発生する。このエネルギーは、エネルギー範囲全体に亘って、分散しており、一部のエネルギーは、他のエネルギーよりも、存在する可能性が高い。
【0132】
図29は、標準的なX線管からのX線のスペクトラムの一例を提供している。ここで、最大X線エネルギー2905は、X線管に印加される加速電圧で規定される。X線管を160kVの加速電圧で動作させた場合、可能な最大X線エネルギーは、160keVである。もっとも、ありえるX線エネルギーは、当然、これよりも、はるかに低い。最小X線エネルギー2910は、理論上は、0に近いが、実際には、最小X線エネルギーは、物質の種類と、真空支持窓(vacuum support window)の厚さで規定され、この真空支持窓は、X線ビームがX線ターゲットから検査中の対象物に伝搬する際に通過するものである。
【0133】
検査中の物質が、格子パラメータを1つだけ有する場合、X線のスペクトラムの、すべての成分に対して、異なる回折スペクトラムが発生するものと見られる。正味効果(net effect)は、単一エネルギーX線放射源を使用する場合に比較して、広い回折ピークとなる。同様に、実際の物質は、通常、多結晶、または、アモルファスであることすらあり、その場合、回折スペクトラムが、更に広がるものである。それにもかかわらず、回折スペクトラムの強度とエネルギーの実験による計測は、同様な物質についても、非常に良好な物質特性を提供することができる。水のようなアモルファス物質と、爆発物等の多結晶物質とに対する指標となるX線回折スペクトラムを、それぞれ、図30aと30bに参考として示す。
【0134】
高速電子走査式X線断層撮影画像システムと共に確認センサーとして使用するためのX線回折システムの実施形態の一例を、図31に示す。ここで、X線管3105から放射されるX線ビームは、コリメータ3110を経て、典型的には直径が1mm〜50mmの範囲にある円形または長方形の断面になっているビームにコリメートされる。ビームが細いほど、計測の精度は高くなると考えられるが、走査が完了するまでの時間が長くなる。検出器3130のセットは、放射源3105の反対側で、検査される対象物3120の逆側に配置される。各検出器3130は、第2のコリメータ3125の後方に配置され、第2のコリメータ3125は、平行ビームが1次ビームの容積と交差する小さい容積を除いて、検査中の対象物3120のすべての部分からの散乱放射を遮蔽するように設計される。この交差領域は、特定の検出器に対する検査容積3115を構成する。各検出器3130は、専用の第2のコリメータ3125を有し、1次ビームの容積の長さに沿った特定の検査容積3115を精査するように設計される。好ましくは、各平行検出器3130は、1次ビームの容積の異なる部分をサンプリングするように構成される。このようにして、並列データ取得を、検査中の対象物3120と1次X線ビームとの、すべての交差容積で、行うことができる。
【0135】
第2のコリメータ3125とX線検出器3130は、それぞれ、1次ビームの軸に対して、実質的に同一の散乱角を画定するような直線的な構成に、配列される。適切な散乱角は、約3°〜10°であり、最適な角度は、典型的には、6°である。
【0136】
図32に示すように、1次ビーム3210と2次コリメータ・ビーム3230との交差部により示される検査領域3220の長さは、典型的には、約10mm〜100mmであり、検出能率と、走査時間と、システムのコストとによる妥協点として、50mmに設定するのが有利であると考えられる。
【0137】
各検出点で、計測されたX線スペクトラムの特定の領域に、検出された各X線を割り当てることができるような、適切なエネルギー分解能を、X線検出器が提供すると有利である。適切な検出器は、パルス形成機能を有する適切な読み出し回路に結合されたNaI(Tl)やCsI等の無機シンチレーション結晶である。図33に示す読み出し回路の一例では、光電子増倍管3301が、光電子増倍管からの光信号を電子信号に変換する。コンデンサCf3302を、適切なゲインが得られるように選択するとともに、抵抗Rf3303を、適切なパルス期間長、典型的には、約50μs〜1000μsのパルス期間長が得られるように選択する。そして、初段増幅器3304からの出力は、パルス形成回路網3305を経由して送られ、パルス形成回路網3305は、典型的には約0.1μs〜2μsの時定数を有するCR−RCフィルタを備え、その時定数の正確な値は、良好なノイズ性能を維持しつつ、許容されるカウントレート性能が得られるように選択される。通常、1μsの形成時間が好ましい。図33に示す回路からの出力は、AD変換器(図示せず)とヒストグラム・デジタルメモリとに送られ、ヒストグラム・デジタルメモリは、パルスの高さのスペクトラムを作成する。典型的なシンチレーション結晶のサイズは、直径が約10mm〜50mmで、厚さが最大で10mmである。
【0138】
より高いエネルギー分解能を有する別の検出器は、半導体型検出器から選択することができ、特に、液体窒素の温度(77K)で好ましい動作をする高純度ゲルマニウム、または、室温で一般的な動作をするCdZnWO4である。半導体型検出器は、比較的、使用するには高価で、液体窒素を使用する必要がある等、操作時に多少、面倒なことが加わる傾向がある。
【0139】
検査容積の特定の地点からのスペクトラムが、蓄積されると、この情報は、実験で得られた参照スペクトラムのデータベースと、比較することができ、これは、例えば、参照スペクトラムのセットに対して正規化された計測されたスペクトラムに最小二乗法を使用して得られる。適合度が、ある閾値以内であると判定されると、2つのスペクトラムの形状の違いは、微小であるから、爆発性物質が存在する可能性が高いと結論付けることができると考えてよい。
【0140】
本発明の実用的な実施形態では、高速X線システムは、出現しうる危険性のある物質の位置と形状に関する高度な情報を提供する。X線回折システムは、対象物を通る、ある線に実質的に沿って解析を行う。すなわち、3次元X線画像データを使用して、検査される対象物を通るX線回折システムのビームが、もっとも適切な軌道になるように設定してもよいと認識される。
【0141】
一実施形態では、X線断層撮影システムからの画像データを使用して、検査される対象物の外部形状を正確に画定する表面の3次元のセットを再構成する。検査される対象物が、X線回折確認センサーに到達したとき、手荷物の向きは、X線画像データを収集したときと同じにはならない。そこで、X線回折システムに、図34に示すような、一連のビデオカメラ3401を設け、これらビデオカメラ3401を一緒に使用して、検査される対象物に対する3次元の外部表面を再構成することができる。
【0142】
X線断層撮影により計算された対象物の外面の3次元画像と、ビデオカメラにより計算された、それとを使用して、その2つの検出システム間の対象物の相対的な向きを示す3次元マトリックスを計算してもよい。3次元X線断層撮影画像が高い空間解像度となるようにして、検査される対象物を通るX線回折ビームに対する最適な軌道を計算してもよい。その2つの検査システムにおける手荷物の相対的な向きを示すマトリックスが、分かっていて、扱いやすい回折検査装置が与えられているので、回折ビームが、対象物を通る最適の軌道に沿って伝播するように設定することができる。
【0143】
例えば、公知の回折センサーでは、1つの次元の長さが他の次元に比べて短い構成の爆発性物質を検出するのは、難しい可能性がある。本発明では、3次元X線断層撮影画像による先験的な情報に基づき、対象物を最適に精査するように、X線ビームを向けてもよい。
【0144】
図34を参照すると、堅固ではあるが、可動性のブーム3402を設けて、X線センサーとX線管とを2次元で動かせるようにしている。図34に示すように、回折検出ユニット3403は、コンベヤ3404の動く方向に、実質的に平行に配列されている。一実施形態では、その検出ユニットは、長さが200mm〜1200mmで、狭い設置スペースであっても適応する。これは、空港の荷物受取エリアのような限られた空間の環境で、装置を使用するのに重要である。X線放射源3405と、これに対応するコリメータ(図示せず)は、同一の堅固ではあるが、可動性のブームに固定され、検出ユニット3403と、X線放射源3405と、これに対応するコリメータとの関係は、そのブームの位置にかかかわらず固定されたままになるようになっている。
【0145】
図35を参照すると、ブームが、制御システムに固定され、制御システムにより、回折ビームの向きが、実質的に垂直方向から水平方向まで回転できるようになっている。更に、制御システムにより、ブームが、垂直方向で上下に移動できるようになっている。この制御システムは、高さを調整するリフト3501と、回転支持アセンブリ3502とを備えて、X線放射源3503と検出ユニット3504との間のビームを、任意に移動させる。図に示す配置は、一例にすぎず、他のブームや制御システムによる構成を採用して、同一の効果を得ることができることは当業者には理解されよう。
【0146】
このビーム操作構成を与えて、対象物の輪郭をビデオ解析することにより決定されるマトリックスを使用した参照のX線回折システム・フレームから変換されたビームのセットで、3次元X線断層撮影画像を精査することにより、最適化されたビーム軌道を計算する。最適なビーム軌道が計算されると、最適な走査ラインが得られるまで、適切な位置と、コンベヤを使用して移動する対象物とに、X線回折検査装置を調整する。この時点で、X線ビームは、オンに切り替わり、データ収集期間が始まる。適切な時間、典型的には、1〜5秒が経過した後、X線回折信号が、既知の参照スペクトラムと比較される。明らかに適合した場合、走査を終了することができる。そうでない場合、ビームは、再び、オンとなり、機械的アセンブリを、検査中の対象物内の予想される検査点の周りで、垂直方向に比較的、短い距離、典型的には、100mmより短い距離で、回転面において最大10°、動かす。そのデータを、最大、数分かかると考えられる、この処理の間、常に求める。検査期間の終了時に、既知の危険物と適合する回折データが見られない場合、走査を終了し、検査中の手荷物や貨物物品を合格とし、搬送を進める。
【0147】
本発明の更なる実施形態では、検査中の対象物の周りを囲むトンネル部は、核四極子計測システムのためのコイル・アセンブリを形成し、X線回折検査装置は、コイル・アセンブリを通過する対象物を解析する。核四極子共鳴とX線回折との、2つのデータのセットは、時間が許せば、同時に、または、順次、取得することができる。
【0148】
確認センサーの実施形態3:X線後方散乱撮像
別の実施形態では、確認センサーは、X線後方散乱撮像システムを備える。
【0149】
X線後方散乱は、X線がコンプトン相互作用を受けたときに起こる。ここで、散乱するX線は、衝突の前に持っていたエネルギーよりも低い状態になり、エネルギーの差は、検査中の物質内の電子に与えられる。ある方向から放射されたX線が、その方向に後方散乱して、この後方散乱したX線を、X線放射源に隣接して配置された1つ、または複数のX線センサーで検出できる確率は高い。散乱したX線の方向は、入力ビームの方向に依存しないので、特定の対象物からの後方散乱信号と後方散乱信号検出信号との間には、弱い空間的な相関しかない。
【0150】
したがって、好ましくは、コリメータを、X線放射源と検査中の対象物との間で、本システムに組み込み、これにより、X線の1次元走査ペンシルビームを発生させることができる。このビーム走査では、検出器信号は、現在のビーム位置と関連付けられ、これにより、検査中の対象物の1次元画像が形成される。そして、対象物がX線ビーム面を通って走査され、X線検出器からのデータもコンベヤの走査レートと関連付けられると、検査中の対象物の2次元X線後方散乱画像が、生成される。有効なペンシルビーム幅は、約1mm〜10mmであり、空間解像度とSN比との間の良好なバランスを得るため、好ましくは、2mmに設定される。コンベヤ速度が0.5m/sでは、最適化されたシステムは、60回転/sの回転速度で動作する4つのコリメーション・ポートを有するチョッパーホイールを使用する。
【0151】
X線は、原子番号の大きい物質によって、より散乱するが、原子番号の大きい物質によって、より吸収される。すなわち、後方散乱信号は、原子番号の小さい物質からの信号が支配的で、X線放射源に最も近い対象物の表面に近い、原子番号の小さい物質を観察するのに使用できる。
【0152】
本発明の一実施形態では、図36を参照すると、走査型ホイール・コリメータ3605は、X線放射源3615からのX線放射をコリメートすることにより、X線のペンシルビームを生成し、検査されている手荷物や貨物物品3645の上面3655に亘って、走査する。貨物の中で後方散乱するX線3635は、隣接するX線検出ブロック3625で検出される。この検出ブロック3625は、走査領域の端部に位置してよく、あるいは、好ましくは、走査ラインに平行に隣接して配置され、図36に示す、それから90度、回転した方に向けことができる。手荷物または貨物物品3645を走査すると、3次元X線画像の中に位置する特徴と関連付けすることのできる画像が形成される。
【0153】
後方散乱システムにおける手荷物または貨物物品の向きは、それが、画像データの2つのセットを関連付けるため、X線断層撮影走査装置を通過したときの方向と一致させることが好ましい。このような検査装置は、爆発性物質の存在を自動的に確認することはしないが、これを使用して、X線断層撮影ユニットによって生成される画像に対して関係する原子番号を確認してもよい。
【0154】
確認センサーの実施形態4:痕跡検出
別の実施形態では、確認センサーは、痕跡化学検出器を備える。
【0155】
ある種の爆発性物質は、室温において、その物質から発する気化物質による化学的指標を放つ。この気化物質は、検査される手荷物や貨物物品の周りの空気中に、典型的には、数PPMから数PPB、存在すると考えられる。指標分子の実際の濃度は、その物質自体の蒸気圧に加え、検査される手荷物や貨物物品と周囲の空気との間のガス交換レートに依存する。例えば、シュリンク包装された手荷物物品では、手荷物の中の爆発性物質と周囲の空気との間のガス交換は、減少する。
【0156】
一実施形態では、検査される物品は、コンベヤシステムを使用して、チャンバーの中に送られる。例示的なチャンバー3701と、通過するコンベヤ3705を図37に示す。図37を参照すると、チャンバー3701は、チャンバーの入口端と出口端をそれぞれ、開閉して密閉するドア部3702、3703、または下降してチャンバーを閉じるシャッター等の、適当な機構を使用して密閉される。チャンバーには、小型の真空ポンプ3704が、取り付けられる。ポンプ3704は、ドア部を閉めると、チャンバー3701を、低真空(典型的には、約50〜100mBar)にできるように動作する。この時点で、手荷物や貨物物品の中に存在する、閉じ込められた空気や他の気体は、チャンバー本体の容積へ、引き込まれる。そして、1つ、または複数の痕跡検出システムが、爆発性物質の存在について、チャンバー3701の中に残っている気体を解析する。
【0157】
初期抜気の後、検査中の物品からの気化物質が、大気中に放出されるよりも、チャンバー内部に確実に残るように、チャンバーを密閉する。適当な時間の後、典型的には、10秒〜5分後、痕跡検出装置による信号解析が、完了し、3次元断層撮影画像システムによって予測された爆発性物質の存在に対して関連付けることができる。
【0158】
強い相関がある場合、その手荷物や貨物物品を、不合格として、マーキングし、必要に応じて、リコンシレーション・エリア(物品の所有者を確認するための場所)に送ることができる。X線システムで予測されなかった爆発性物質が、識別される場合、その物品を、再び、不合格として、マーキングすることができる。爆発性物質が、痕跡検出システムによって、識別されない場合、手荷物を手作業で検査する、あるいは、物品を、その先へ搬送することに合格したとして、マーキングする、という判断をすることができる。
【0159】
本発明の更なる態様では、ここに示した痕跡検出装置を、X線回折センサー・システム、および/または、核四極子共鳴システムと、組み合わせて使用することができる。一実施形態では、最大3つの独立した方法を、同時に、かつ、爆発性物質と爆破装置の検出のための同一の装置で、使用することができる。そして、アルゴリズムを使用して、疑いがある手荷物や貨物の物品を、その先へ搬送するように送り出してよいかどうかの確実度を判定してもよい。例えば、独立したセンサーそれぞれが、非合法の疑いがある対象物を、第1回の検査で、「存在しない」、「存在する可能性あり」、「確実に存在する」に、分類することができる。1つ、または複数の「確実に存在する」という計測結果が得られた場合、その物品は、その先への搬送を制限されるべきである。すべてのセンサーが、「存在しない」という応答をした場合、その物品は、その先へ搬送することに合格したものとすることができる。2つ以上のセンサーが、「存在する可能性あり」という応答をした場合、その物品は、その先への搬送その他を、制限されるべきである。このような投票型システムは、疑いのある手荷物や貨物物品を、その先への搬送へ送り出すかどうかの判定の確実度を、高くする。
【0160】
同一のセンサーを使用しながらも、拡張されたデータベースを有する、このような多層型アプローチを、薬物、タバコ製品、紙幣等の不法売買品、および、その他の危険性のある物質の検出のために、まったく同じ方法で使用できることは、当業者には、明らかであろう。
【0161】
上記の例は、本発明のシステムの多くの応用の実例にすぎない。本発明の少数の実施形態しか、ここには示されていないが、本発明の趣旨または範囲を逸脱せずに、本発明は、多くの、その他の具体的な形態で、実施されうることは、理解されよう。すなわち、ここに示した例と実施形態とは、実例であり、非制限的であると考えられるものであり、本発明は、添付の特許請求の範囲の中で、変更されうるものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の中の対象物を特定するためのシステムであって、
a.第1の検査システムは、
i.走査領域の周りの複数のX線放射源位置からX線を発生するように構成された、固定されたX線放射源と、
ii.前記走査領域を通って送られるX線を検出するように構成された検出器の第1のセットと、
iii.前記走査領域の内部で散乱したX線を検出するように構成された検出器の第2のセットと、
iv.前記検出器の第1のセットからのデータ出力を処理し、少なくとも1つの断層撮影画像を生成し、前記検出器の第2のセットからのデータ出力を処理して、散乱画像データを生成するように構成された、少なくとも1つのプロセッサとを備え、
b.第2の検査システムは、NQRによる検査システム、X線回折による検査システム、X線後方散乱による検査システム、または痕跡検出による検査システムのうちの少なくとも1つを備え、
前記第1の検査システムと前記第2の検査システムとを備えるシステム。
【請求項2】
前記少なくとも1つのプロセッサは、容器の中の、不審な対象物を示すデータを出力する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1の検査システムが、前記容器の中の、不審な対象物を特定した場合のみ、前記少なくとも1つのプロセッサは、前記容器を前記第2の検査システムで検査すべきであることを示す信号を出力する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の検査システムが、前記容器の中の、不審な対象物を特定しなかった場合のみ、前記少なくとも1つのプロセッサは、前記容器を前記第2の検査システムで検査すべきでないことを示す信号を出力する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第2の検査システムは、前記容器の中に、不審な対象物が存在するか否かを示す信号を出力し、前記第2の検査システムの前記出力と、前記断層撮影画像データと、前記散乱画像データとを使用して、前記不審な対象物が非合法なものか否かを判定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の検査システムは、前記第2の検査システムと並列に動作する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の検査システムは、前記第2の検査システムに対して、直列に動作する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1の検査システムは、前記断層撮影画像データ、または前記散乱画像データの、少なくとも1つを解析して、前記容器の中の、対象物の材質の種類を判定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記第2の検査システムは、前記第1の検査システムによって判定された材質の前記種類に基づき、核四極子の計測を行う、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記第2の検査システムは、前記第1の検査システムによって生成された前記断層撮影画像に基づき、X線回折による検査を行う、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記固定されたX線放射源は、電子走査式X線放射源である、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
容器の中の対象物を特定するためのシステムであって、
a.第1の検査システムは、
i.走査領域の周りの複数のX線放射源位置からX線を発生するように構成された、固定されたX線放射源と、
ii.前記走査領域を通って送られるX線を検出するように構成された検出器の第1のセットと、
iii.前記検出器の第1のセットからのデータ出力を処理し、少なくとも1つの断層撮影画像を生成するように構成された、少なくとも1つのプロセッサとを備え、
b.搬送システムは、前記第1の検査システムから第2の検査システムへ、前記容器を移動させ、前記第2の検査システムは、NQRによる検査システム、X線回折による検査システム、X線後方散乱による検査システム、または痕跡検出による検査システムのうちの少なくとも1つを備え、
前記第1の検査システムと前記搬送システムとを備えるシステム。
【請求項13】
前記少なくとも1つのプロセッサは、容器の中の、不審な対象物を示すデータを出力する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1の検査システムが、前記容器の中の、不審な対象物を特定した場合のみ、前記少なくとも1つのプロセッサは、前記容器を前記第2の検査システムで検査すべきであることを示す信号を出力する、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記第2の検査システムは、前記容器の中に、不審な対象物が存在するか否かを示す信号を出力し、前記第2の検査システムの前記出力と、前記断層撮影画像データとを使用して、前記不審な対象物が危険性がある物か否かを判定する、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
前記第1の検査システムは、前記第2の検査システムと並列に動作する、請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
前記第1の検査システムは、前記第2の検査システムに対して、直列に動作する、請求項12に記載のシステム。
【請求項18】
前記第1の検査システムは、前記断層撮影画像データを解析して、前記容器の中の、対象物の材質の種類を判定する、請求項12に記載のシステム。
【請求項19】
前記第2の検査システムは、前記第1の検査システムによって判定された材質の前記種類に基づき、核四極子の計測を行う、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記第2の検査システムは、前記第1の検査システムによって生成された前記断層撮影画像に基づき、X線回折による検査を行う、請求項12に記載のシステム。
【請求項1】
容器の中の対象物を特定するためのシステムであって、
a.第1の検査システムは、
i.走査領域の周りの複数のX線放射源位置からX線を発生するように構成された、固定されたX線放射源と、
ii.前記走査領域を通って送られるX線を検出するように構成された検出器の第1のセットと、
iii.前記走査領域の内部で散乱したX線を検出するように構成された検出器の第2のセットと、
iv.前記検出器の第1のセットからのデータ出力を処理し、少なくとも1つの断層撮影画像を生成し、前記検出器の第2のセットからのデータ出力を処理して、散乱画像データを生成するように構成された、少なくとも1つのプロセッサとを備え、
b.第2の検査システムは、NQRによる検査システム、X線回折による検査システム、X線後方散乱による検査システム、または痕跡検出による検査システムのうちの少なくとも1つを備え、
前記第1の検査システムと前記第2の検査システムとを備えるシステム。
【請求項2】
前記少なくとも1つのプロセッサは、容器の中の、不審な対象物を示すデータを出力する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1の検査システムが、前記容器の中の、不審な対象物を特定した場合のみ、前記少なくとも1つのプロセッサは、前記容器を前記第2の検査システムで検査すべきであることを示す信号を出力する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の検査システムが、前記容器の中の、不審な対象物を特定しなかった場合のみ、前記少なくとも1つのプロセッサは、前記容器を前記第2の検査システムで検査すべきでないことを示す信号を出力する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第2の検査システムは、前記容器の中に、不審な対象物が存在するか否かを示す信号を出力し、前記第2の検査システムの前記出力と、前記断層撮影画像データと、前記散乱画像データとを使用して、前記不審な対象物が非合法なものか否かを判定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の検査システムは、前記第2の検査システムと並列に動作する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の検査システムは、前記第2の検査システムに対して、直列に動作する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1の検査システムは、前記断層撮影画像データ、または前記散乱画像データの、少なくとも1つを解析して、前記容器の中の、対象物の材質の種類を判定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記第2の検査システムは、前記第1の検査システムによって判定された材質の前記種類に基づき、核四極子の計測を行う、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記第2の検査システムは、前記第1の検査システムによって生成された前記断層撮影画像に基づき、X線回折による検査を行う、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記固定されたX線放射源は、電子走査式X線放射源である、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
容器の中の対象物を特定するためのシステムであって、
a.第1の検査システムは、
i.走査領域の周りの複数のX線放射源位置からX線を発生するように構成された、固定されたX線放射源と、
ii.前記走査領域を通って送られるX線を検出するように構成された検出器の第1のセットと、
iii.前記検出器の第1のセットからのデータ出力を処理し、少なくとも1つの断層撮影画像を生成するように構成された、少なくとも1つのプロセッサとを備え、
b.搬送システムは、前記第1の検査システムから第2の検査システムへ、前記容器を移動させ、前記第2の検査システムは、NQRによる検査システム、X線回折による検査システム、X線後方散乱による検査システム、または痕跡検出による検査システムのうちの少なくとも1つを備え、
前記第1の検査システムと前記搬送システムとを備えるシステム。
【請求項13】
前記少なくとも1つのプロセッサは、容器の中の、不審な対象物を示すデータを出力する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1の検査システムが、前記容器の中の、不審な対象物を特定した場合のみ、前記少なくとも1つのプロセッサは、前記容器を前記第2の検査システムで検査すべきであることを示す信号を出力する、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記第2の検査システムは、前記容器の中に、不審な対象物が存在するか否かを示す信号を出力し、前記第2の検査システムの前記出力と、前記断層撮影画像データとを使用して、前記不審な対象物が危険性がある物か否かを判定する、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
前記第1の検査システムは、前記第2の検査システムと並列に動作する、請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
前記第1の検査システムは、前記第2の検査システムに対して、直列に動作する、請求項12に記載のシステム。
【請求項18】
前記第1の検査システムは、前記断層撮影画像データを解析して、前記容器の中の、対象物の材質の種類を判定する、請求項12に記載のシステム。
【請求項19】
前記第2の検査システムは、前記第1の検査システムによって判定された材質の前記種類に基づき、核四極子の計測を行う、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記第2の検査システムは、前記第1の検査システムによって生成された前記断層撮影画像に基づき、X線回折による検査を行う、請求項12に記載のシステム。
【図1】
【図1a】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28a】
【図28b】
【図29】
【図30a】
【図30b】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図1a】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28a】
【図28b】
【図29】
【図30a】
【図30b】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【公表番号】特表2012−528332(P2012−528332A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513219(P2012−513219)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/036221
【国際公開番号】WO2010/138607
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(509347538)ラピスカン システムズ、インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/036221
【国際公開番号】WO2010/138607
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(509347538)ラピスカン システムズ、インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】
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