説明

特定の腐食抵抗性電池を有する固体ポリマー電解質燃料電池スタック

複数の燃料電池を含む固体ポリマー電解質燃料電池スタックが、開示され、この固体ポリマー電解質燃料電池スタックにおいて、その燃料電池スタックのうちの少なくとも1つの電池は、その燃料電池スタックの他の燃料電池の有意な部分よりも大きな腐食抵抗性を有する。一実施形態において、上記燃料電池スタックの少なくとも1つの燃料電池は、上記スタックの一端にある電池または両端にある電池である。また、そのようなスタックを含む燃料電池システムもまた、開示される。操作の間のその固体ポリマー電解質燃料電池スタックの分解を減少するための方法もまた、開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、概して、固体ポリマー電解質燃料電池スタックに関し、その電池のうちの特定のものは、分解に対して抵抗性であり、本発明は、より具体的には、操作の間の分解に対してより抵抗性である端部電池を有するスタックに関する。
【背景技術】
【0002】
(先行技術の説明)
広範な種類の適用における電力供給源(例えば、据え置き型発電装置および持ち運び型動力装置)として使用するための信頼できる燃料電池システムの開発に対して、多大な努力が向けられている。そのようなシステムは、環境上の利益を提供しつつ、経済的に電力を送達する見込みを提供する。
【0003】
一般に、燃料電池は、燃料および酸化剤反応物を変換して、電力および反応生成物を発生させ、しばしば、カソード電極とアノード電極との間に配置された電解質を使用する。触媒は、代表的には、それらの電極にて、望ましい電気化学反応を誘導する。(特に、持ち運び適用および輸送適用のために)好ましい燃料電池は、固体ポリマー電解質(SPE)燃料電池であり、これは、固体ポリマー電解質を含み、比較的低温度にて作動する。
【0004】
SPE燃料電池は、膜電極アセンブリ(MEA)を使用し、このMEAは、カソード電極とアノード電極との間に配置された固体ポリマー電解質を含む。各電解質は、触媒層を含み、この触媒層は、適切な触媒を含み、この触媒層は、固体ポリマー電解質に隣接して位置する。この触媒は、代表的には、貴金属組成物(例えば、白金属ブラック(platinum metal black)またはその合金)であり、適切な体(例えば、カーボンブラック担持体上に担持される微細な白金粒子)上に提供され得る。この触媒層は、固相ポリマー膜電解質(例えば、Nafion(登録商標))に使用されるイオノマーと類似したイオノマーを含み得る。この電極はまた、多孔質の電気的に導電性の基板を含み得、この基板は、機械的な担持体、電気伝導性および/または反応物質分布を提供し、液体拡散層として役立つ。この反応物質を各電極または電極基板の一面を越えて配向するための流動領域プレートは、MEAの各側に配置される。作動中個々の燃料電池の出力電圧は、概して1ボルトより低い。従って、より大きい出力電圧を提供するために、多数の電池が通常一緒に積み重ねられ、直列に接続されてより高い電圧の燃料電池のスタックを作製する。
【0005】
SPE燃料電池の正常な作動の間に、燃料は、アノードの触媒で電気化学的に酸化され、代表的に、陽子、電子、および、あるいは、使用されえる燃料に依存して他の種を生成する。陽子は、陽子が固体ポリマー電極を介して生成される反応部位から導かれ、カソード触媒にある酸化剤と電気化学的に反応する。電子は、使用されない電力を提供する外部回路を通って移動し、次いで、カソード触媒で陽子および酸化剤と反応し、反応生成物として水を発生する。
【0006】
しかし、SPE燃料電池に異常な状態が存在する場合、他の反応が生じ得る。例えば、公開PCT出願WO01/15255、WO01/15249およびWO01/15254に開示されるとおり、水の電気分解および/または特定の燃料電池構成要素の腐食は、燃料電池が電圧の逆転を起こす場合、生じ得る。燃料不足状態は、例えば、アノード構成要素が腐食に供される電圧逆転状態を生じ得る。このような腐食を防止するか、または低減するための種々の方法が、上記公開された出願に開示される。
【0007】
一般的に、先行技術の方法は、スタック内の全燃料電池の腐食を防止または減少させようと模索してきた。代替的戦略は、改善措置が取られ得るような時点における有害な状況を感知または検出することであった。公開されたPCT出願WO00/02282においては、センサー電池が、有害な条件に感受性であるように特別に設計される。早期検出は、センサー電池をモニタリングしてスタック中の他の電池と比較することによって、達成される。一旦検出されると、その有害な条件に対処するために、修正処置が取られ得る。有害な条件はまた、起動および停止の際にSPE燃料電池においても起こり得る。公開された米国特許出願US2002/076582およびUS2002/076583において、起動および停止の間に複数の条件がカソードの腐食をもたらし得ることが、開示される。このような腐食は、適切な流体によりアノードの流れ場を迅速にパージすることによって、減少され得る。
【0008】
多数の個別の電池を含むSPE燃料電池スタックにおいて、スタックの末端の電池の条件(すなわち、そのスタックの末端もしくは末端近くの一つもしくは複数の電池の条件)は、作動温度の差異のために、異常であり得、かつそのスタックの残りの電池とは異なり得る。周辺環境への熱の損失(例えば、対流または伝導による)は、末端の電池を、そのスタックにおける残りの電池よりも冷却させる。このことは、末端電池の性能低下または初期故障をという結果をもたらし得る。このような温度差の例は、公開された日本国特許出願JP08−167424に開示される。この特許出願はまた、末端の電池における熱損失を補償するため、燃料電池スタックの末端のコレクター極板における加熱素子の使用を開示する。同様に、公開された米国特許出願US 2001/0036568はまた、SPE燃料電池スタックの末端極板を加熱するための、加熱可能な素子の使用を開示する。この公開出願においては、より冷えた末端の電池において水が凝結し、フラッディングを引き起こして電圧逆転および燃料電池の材料の分解をもたらす可能性があることも、また注記されている。加熱素子が末端の電池からの熱損失を補償するために使用され得、それによって、末端の電池がスタックの残りの電池と同様に機能することを可能にする一方で、このアプローチは、さらなるハードウェアおよび複雑性を要求する。
【0009】
燃料電池に関して一般的に、そして特にSPE燃料電池スタックに関して著しい進歩がなされてきたが、分解に対してより抵抗性のある燃料電池、燃料電池スタックおよび関連するシステムの改善に対する必要性が、当該分野において依然として存在する。本発明は、以下により詳細に示されるように、これらの必要性および他の必要性を満たす。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の概要)
簡単に述べると、本発明は、複数の燃料電池を含む固体ポリマー電解質燃料電池スタックを提供し、ここで、その燃料電池スタックのうちの少なくとも1つの燃料電池は、その燃料電池スタックの他の燃料電池の有意な部分よりも大きな腐食抵抗性を有する。本明細書中で使用される場合、句「有意な部分」とは、燃料電池スタックの燃料電池のうちの半数(50%)より多くを意味する。従って、燃料電池スタックのうちの少なくとも1つの燃料電池は、その燃料電池スタックの燃料電池のうちの半数よりも大きな腐食抵抗性を有する。
【0011】
より特定の実施形態では、少なくとも1つの燃料電池は、その燃料電池スタックの一端または両端にある(本明細書中で「端燃料電池」とも称される)。さらに、用語「端燃料電池」はまた、その燃料電池スタックの一端または両端に近接する燃料電池を包含する。この点に関して、句「近接する」とは、燃料電池が、不利な条件に供される燃料電池スタックの端に接近するが(通常は、端燃料電池よりも低い程度ではあるが)、依然として増加した腐食抵抗性から恩恵を受けることを意味する。燃料電池スタックの内部(すなわち、燃料電池の2つの端の間)の燃料電池は、本明細書中で、「内部燃料電池」と称される。従って、この実施形態では、一方または両方の端燃料電池は、内部燃料電池の有意な部分よりも大きな腐食抵抗性を有する。
【0012】
さらにより特定の実施形態では、より大きな腐食抵抗性を有する燃料電池は、その内部燃料電池の対応するカソード、アノードあるいはカソードおよびアノードの両方と比較して、より大きな腐食抵抗性を有するカソード、より大きな腐食抵抗性を有するアノード、あるいはより大きな腐食抵抗性を有するカソードおよびアノードの両方を有し得る。
【0013】
より大きな腐食抵抗性を有する燃料電池の電極は、担持されていない触媒を含み得、一方で、そのスタック内部燃料電池は、炭素に担持された触媒を含む。代表的な担持されていない触媒は、プラチナブラックであり、一方で、適切な炭素に担持された触媒は、ファーネスブラックに担持された触媒である。
【0014】
より大きな腐食抵抗性を有する燃料電池における電極は、ポリテトラフルオロエチレン含み得、一方で、そのスタックの内部燃料電池は、過フルオロスルホン酸ポリマーを含む。
【0015】
より大きな腐食抵抗性を有する燃料電池の電極における触媒充填量は、そのスタックの内部燃料電池の電極における充填量よりも大きくあり得る。例えば、より大きな腐食抵抗性を有する燃料電池の電極における触媒充填量は、1mg/cmよりも大きくあり得、一方で、そのスタックの内部燃料電池の電極における触媒充填量は、1mg/cmよりも小さい。
【0016】
なおさらなる実施形態では、より大きな腐食抵抗性を有する燃料電池は、センサー電池ではなく、さらなる実施形態では、この燃料電池は、その燃料電池の作動パラメータをモニタリングするためのモニターと連結されていない。
【0017】
別の実施形態では、燃料電池システムが開示され、ここで、その燃料電池システムは、本発明の燃料電池スタックを備える。このようなシステムは、燃料電池スタックに加えて、反応物質および酸化剤供給システム、センサー、作動装置、制御回路、および当業者に公知の他の構成要素をさらに備え得る。
【0018】
さらに他の実施形態では、作動中に固体ポリマー電解質燃料電池の分解を減少するための方法が開示され、その方法は、少なくとも1つの電池の腐食抵抗性を、その燃料電池スタック中の他の燃料電池の有意な部分よりも大きくなるように増加する工程を包含する。
【0019】
本発明のこれらの局面および他の局面は、添付の図面および以下の詳細な説明を参照することで明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(発明の詳細な説明)
上記のように、本発明は、複数の燃料電池を含む固体ポリマー電解質(SPE)燃料電池スタックを提供し、ここで、この燃料電池スタックのうちの少なくとも1つの電池は、該燃料電池スタックの他の燃料電池の有意な部分よりも大きな腐食抵抗性を有する。
【0021】
1つの実施形態において、SPE燃料電池スタックの1つ以上の燃料電池の腐食(従って、分解)は、1つ以上の低温電池、特に、このような電池の電極の腐食に起因する。分解は、これらの電池が十分に大きな腐食抵抗性なす場合に、ほとんど克服され得る。典型的には、これは、腐食に対するさらなる保護を必要とする特定の一端の電池なので、スタック内の全ての電池に必要とされる場合、実用的でも経済的でもない、端の電池構造が利用され得る。しかし、特定のスタック構造はまた、スタック内の他の電池と比べて、より低温の状態を経験するスタックの内側の電池に生じ得る。例えば、スタックの中央にある担持体が有意な熱シンクとして作用する場合、このような状況が存在する。このような場合、スタック中央におけるこれらのより低温の電池は、燃料電池スタックの他の電池の有意な部分(significant portion)と比較して、十分な腐食抵抗性をなす。
【0022】
特に、代表的なSPEスタックの端の電池における熱条件は、部分的な燃料窮乏を生じ得、これは、端の電池カソードの腐食(例えば、局在化した一部分の燃料窮乏と反対の領域に生じる局在化したカソード腐食)を主に導く。このようなスタックにおいて、影響を受けた末端の電池においてより多くの腐食抵抗性カソードを使用することは、分解速度を減少させるのに十分であり、その結果、影響された末端の電池がスタック内の残りの電池と同様に実施する。
【0023】
燃料電池の腐食抵抗性は、燃料電池スタックの他の電極と比較して、より大きな腐食抵抗性を有する、カソード電極またはアノード電極を使用することによって増加され得る。種々の技術は、電極の全てもしくは部分の腐食抵抗性を増加させるために使用され得、そして当業者に公知である。例えば、担持されていない触媒(例えば、プラチナブラック)を、炭素で担持された触媒(carbon-supported catalyst)(例えば、ファーネスブラックで担持されたプラチナの代わりに使用することにより、腐食抵抗性は増加し得る。また、過フルオロスルホン酸ポリマーの代わりに電極層においてポリテトラフルオロエチレンを使用することにより、腐食抵抗性が増加され得る。さらに、電極においてより大きな触媒充填量(loading)(例えば、1mg/cm未満の代わりに1mg/cmより高く)を使用することにより、腐食抵抗性もまた増加され得る。腐食抵抗性を増加させるためのこれらの方法および他の方法は、PCT公開公報WO 01/15255、WO 01/15249およびWO 01/15254に開示されており、これらの出願は、その全体において参考として援用される。
【0024】
図1は、SPF燃料電池スタックの模式図を示す。スタック1は、それぞれスタック1のポジティブ端およびネガティブ端に端電池2および端電池3を備える、複数のスタック電池を含む。間にあるのは、複数の内部電池4である。ポジティブ極バスプレート6およびネガティブ極バスプレート7が、スタック電池のいずれかの端部に備え付けられ、外部電力は、このバスプレート6および7に備え付けられた端子から得られる。圧縮プレート8および9がまた、スタックのいずれかの端部に備え付けられ、このスタック素子に必要な圧縮を供給する。マニホールドアセンブリ10がまた、図1において、スタック1のアノード端に示される。マニホールドアセンブリ10は、スタック1内の電池に酸化剤(代表的には、空気)および燃料(例えば、水素)反応物の流れを供給および排気するために適した出口およびマニホールド(図示せず)を備える。
【0025】
例示のために、スタック1のネガティブ端の単一の燃料3aの温度条件は、正常作動の間に、残りのスタックよりも有意に低い温度であり、従って、残りのスタックにおける他の電池よりも分解しやすい。この点については、2℃のオーダーの温度差が有意であることに注意すべきである。さらに、マニホールドアセンブリ10は、スタック1のポジティブ端の端電池2にいくらかの絶縁を提供し、従って、端電池2は、内部電池4よりも有意に低い温度ではない。前述の温度条件は、例示のために記されるが、燃料電池スタックの構造は異なり、他の構造において、1つ以上の端電池2および/もしくは端電池3、ならびに/または、特定の内部電池4でさえ、内部電池4よりも有意に低い温度であり得、従って、より分解しやすいことが理解されるべきである。
【0026】
なお図1を参照して、本発明に従ってスタックの寿命を延長するために、より分解しやすい端電池3aの腐食抵抗は、スタック内の他の燃料電池のかなりの部分よりも大きくされる。従って、スタック内の残りの電池(すなわち、端電池2、内部電池4および任意の他の端電池3)は類似の構造であり得るが、端電池3aは、異なる、より腐食抵抗性の構造を有する。
【0027】
より特定の実施形態において、端部電池3aにおける唯一の特定の成分またはこれらの成分のなお唯一の部分は、より腐食抵抗性であることを要するに過ぎない。例えば、端部電池3aにおいて、そのより低い温度状態の結果として生じ得る状態は、部分的燃料不足である。このことは、主に端部電池3aのカソードの腐食をもたらす(局所的なカソード腐食は、代表的には、局所化した部分的燃料不足とは対照的な領域で生じる)。このような場合において、端部電池3aにおいてより腐食抵抗性カソードを使用することは、スタックにおける他の電池と同様に機能するのと同様に、その分解速度を減少させるに十分であり得る。しかし、他の不都合な状態を、部分的燃料不足と同様に、またはその代わりに経験し得る。例えば、完全な燃料不足が生じ得、これは、主に、アノードの腐食を生じる。その場合、端部電池3aにおけるアノードはまた、より腐食抵抗性にされ得る。
【0028】
種々の改変は、電極をより腐食抵抗性にするために、端部電池3aにおける電極に対して行われ得る。例えば、炭素担持触媒(例えば、ファーネスブラック担持白金またはファーネスブラック担持白金合金)は、代表的には、従来のSPE燃料電池スタックの電極において使用される。しかし、代わりに非担持触媒(プラチナブラック)を使用する他の点で類似の電極は、より腐食抵抗性である。あるいは、より腐食抵抗性担持触媒は、担持体の表面により多量の触媒をかぶせたものを使用するか、または担持体としてより強い炭素および/もしくは他の材料を使用することによって得られ得る。さらに、代表的なスタック電極は、触媒層中に過フルオロスルホン酸ポリマ(電解質に類似)を含む。しかし、代わりに触媒層中にポリテトラフルオロエチレンを使用する他の点で類似の電極は、より腐食抵抗性であり得る。なおさらに、より多くの触媒を電極に充填すると、より腐食抵抗性になり得る(より代表的な従来の電極の1mg/cm未満の充填の代わりに、1mg/cmを超える充填を使用する)。さらに、公開されたPCT出願WO01/15255、WO01/15249、WO01/15254(これらの各々は、その全体が本明細書に参考として援用される)に開示されるような、より多くの改変は、当業者によってなされ得る。
【0029】
より腐食抵抗性の構築物を除いて、このような電池は、燃料電池スタックにおける他の燃料電池と同じ様式で機能し得、いかなる特定のモニタリングデバイスもしくは感知デバイスまたはモニタリング目的もしくは感知目的と関連づけられる必要はない。より具体的な実施形態において、このような電池は、センサ電池でなく、および/または不都合な状態についてモニターされない。
【0030】
以下の実施例は、本発明の特定の局面を例示するために提供されるのであって、決して限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0031】
3つの高分子固体電解質燃料電池スタックを、性能劣化を、特に、劣化を受けやすい端電池において比較する目的で、異なるカソード構成を用いて作製した。
【0032】
これらのスタックは、連続して積層された5つの燃料電池を備えた。各スタックにおける第一の電池は、その燃料電池スタックの端部に存在するマニホルドおよび他のハードウェアを通しての熱損失に起因して、作動の間、残りの電池よりも低温であった。電極の配置は、これらの第一の燃料電池におけるアノードが、そのスタックの外側に向くような配置であった。そのスタックにおける各電池において、アノードは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含浸された炭素繊維紙構造体を有し、この炭素繊維紙構造体の上の、PTFEおよびShawiniganブラックを含有する下層、この下層の上の、Vulcanカーボンブラック上に担持されたPt/Ru触媒、PTFE、およびShawiniganブラックを含有する触媒層、ならびに最後に、この触媒層上の、過フルオロスルホン酸イオノマーコーティングを備えた。各電池はまた、NAFION(登録商標)N112過フルオロスルホン酸膜電解質を利用した。
【0033】
比較用のスタックにおいて、各電池におけるカソードは、PTFE(6重量%)を含浸された炭素繊維紙構造体、この炭素繊維紙構造体の上の、6%PTFEおよび94%Shawiniganブラックを含有する0.6mg/cmの下層、この下層の上の、Vulcanカーボンブラック上に担持された77重量%のPt触媒(0.75mg/cmのPt負荷)および23%のイオノマーを含有する触媒層、ならびに最後に、この触媒層上の、0.2mg/cmのイオノマーコーティングを有した。
【0034】
第一の、より腐食抵抗性が高いスタック(「テフロン(登録商標)化された」と称される)において、これらのカソードを、触媒層がVulcanカーボンブラックに担持された90重量%のPt触媒および10%のPTFEを含有することを除いて、比較用のスタックにおけるカソードと類似の様式で作製した。従って、このスタックは、カソードにおける触媒層がイオノマーの代わりにPTFEを含有するという点で、比較用のスタックと異なった。
【0035】
第二の、より腐食抵抗性が高いスタック(「テフロン(登録商標)化されたPtブラック」と称される)において、カソードを、触媒層が90重量%のPt触媒ブラック(1.3mg/cmのPt負荷)および10%のPTFEを含有することを除いて、比較用のスタックにおけるカソードと類似の様式で作製した。従って、このスタックは、カソードにおける触媒層がイオノマーの代わりにPTFEを含有し、炭素に担持されたPt触媒の代わりにPtブラックを含有し、そしてPt触媒の合計負荷がより大きい点で、比較用のスタックと異なった。
【0036】
次いで、各スタックを、従来の様式で、約100時間にわたって、低い負荷で作動させた。これは、70℃の作動温度にて、反応物として100%RHの水素および空気を供給すること、ならびに電流を0.1A/cmで取り出すことを包含した。
【0037】
図2は、これらのスタックの平均初期電池電圧を示し、これらと100時間の作動後の最終電池電圧とを比較する。電圧の低下は、性能の低下を示す。図2には、スタックの電池全ての平均初期電池電圧、端電池番号1(低下しやすい電池)の最終電圧、およびスタックの電池の残りの最終電圧(電池番号2〜5)を示す棒が示される。図2から明らかなように、100時間の作動後、比較スタックの端電池番号1は、この低い負荷において、0.1V未満の出力になるように低下した。しかし、比較スタックの他の電池は、それほど低下しなかった。しかし、「テフロン(登録商標)化」耐腐食性スタックにおいて、端電池番号1の性能は、作動の100時間後において、比較電池の性能よりも実質的に改善される。「テフロン(登録商標)化Ptブラック」耐腐食性スタックは、さらにより良く、端電池番号1とスタックの電池の残りとの間の低下の違いをほとんど示さない。図2は、端電池性能が、スタックの電池の残りの性能よりも実質的により迅速に低下し得ることを示す。さらに、この早期の低下は、端電池中に適切な耐腐食性カソードを組み込むことによって軽減され得る。
【0038】
本発明の特定の要素、実施形態および適用が示され、記載されているものの、もちろん、特に先の技術に照らして、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、改変が当業者によってなされ得るので、本発明が、これらに制限されないことが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、本発明の代表的な固体ポリマー電解質燃料電池スタックの模式図を示す。
【図2】図2は、実施例の多様な燃料電池スタック内の特定の燃料電池の分解速度比を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料電池を含む固体ポリマー電解質燃料電池スタックであって、該燃料電池スタックのうちの少なくとも1つの電池は、該燃料電池スタックの他の燃料電池の有意な部分よりも大きな腐食抵抗性を有する、燃料電池スタック。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池スタックであって、前記少なくとも1つの電池は、該燃料電池スタックの一端または両端にある、スタック。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料電池スタックであって、前記少なくとも1つの電池は、該燃料電池スタックの一端にある、スタック。
【請求項4】
請求項2に記載の燃料電池スタックであって、前記少なくとも1つの電池は、該燃料電池スタックの両端にある、スタック。
【請求項5】
請求項1に記載の燃料電池スタックであって、前記少なくとも1つの電池は、1つ以上の内部燃料電池である、スタック。
【請求項6】
請求項1に記載の燃料電池スタックであって、前記少なくとも1つの電池は電極を備え、該電極は、前記他の燃料電池の有意な部分の対応する電極よりも大きな腐食抵抗性を有する、スタック。
【請求項7】
請求項6に記載の燃料電池スタックであって、前記電極は、カソードである、スタック。
【請求項8】
請求項6に記載の燃料電池スタックであって、前記電極は、アノードである、スタック。
【請求項9】
請求項6に記載の燃料電池スタックであって、前記電極は、担持されていない触媒を含み、前記他の電極の有意な部分の対応する電極は、担持された触媒である、スタック。
【請求項10】
請求項9に記載の燃料電池スタックであって、前記担持されていない触媒は、プラチナブラックである、スタック。
【請求項11】
請求項9に記載の燃料電池スタックであって、前記担持された触媒は、ファーネスブラック上に担持された白金である、スタック。
【請求項12】
請求項6に記載の燃料電池スタックであって、前記電極は、ポリテトラフルオロエチレンを含み、前記他の燃料電池の有意な部分の対応する電極は、過フルオロスルホン酸ポリマーを含む、スタック。
【請求項13】
請求項6に記載の燃料電池スタックであって、前記電極は、前記他の燃料電池の有意な部分の対応する電極と比較して、増加した触媒充填量を含む、スタック。
【請求項14】
請求項13に記載の燃料電池スタックであって、前記電極の触媒充填量は、1mg/cmよりも多く、前記他の燃料電池の有意な部分の対応する電極の触媒充填量は、1mg/cmよりも少ない、スタック。
【請求項15】
請求項1に記載の燃料電池スタックを含む、燃料電池システム。
【請求項16】
請求項15に記載の燃料電池システムであって、該システムは、不利な条件について前記少なくとも1つの電池をモニターしない、システム。
【請求項17】
操作の間の固体ポリマー電解質燃料電池スタックの分解を減少する方法であって、該燃料電池スタックは、複数の燃料電池を有し、該方法は、
該燃料電池スタックの少なくとも1つの燃料電池の腐食抵抗性を、該燃料電池スタックの他の燃料電池の有意な部分よりも大きいように増加させる工程、
を包含する、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、前記少なくとも1つの燃料電池は、一端にある燃料電池または両端にある燃料電池である、方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法であって、前記腐食抵抗性は、前記燃料電池スタックの他の燃料電池の有意な部分の対応する電極と比較して増加した腐食抵抗性を有する電極を使用することによって、増加される、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、前記電極は、カソードである、方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−522998(P2006−522998A)
【公表日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504093(P2006−504093)
【出願日】平成16年4月2日(2004.4.2)
【国際出願番号】PCT/CA2004/000504
【国際公開番号】WO2004/091018
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(303026556)バラード パワー システムズ インコーポレイティド (28)
【Fターム(参考)】