説明

特異的結合対を作製するための改善された方法

特異的結合対(SBP)を提供するための改善された方法が提供される。この方法により、事前に選択した標的に対して親和性を有する、SBPの一方のメンバーの大集団と、SBPの他方のメンバーのより小さな事前に選択した集団の両方を用いて、SBPメンバーのライブラリーを作製することができる。特定の実施形態では、所定の標的または特定の配列に対して親和性がある1〜20種の、HCまたはLCを、遺伝的に多様なLCまたはHCの大集団と組み合わせて(必要に応じて)ライブラリーを作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の引用
本願は、2008年2月13日出願の米国特許出願第61/028,265号および2008年4月10日出願の米国特許出願61/043,938号に対する優先権を主張する。これらの先の出願の開示は、本出願の開示の一部とみなされ(そして参考として援用され)る。
【背景技術】
【0002】
背景
ファージディスプレイ法は、生物科学およびバイオテクノロジーにおいて公知であり広く応用されている(例えば、特許文献1、特許文献2、およびそこに引用されている参考文献を参照されたい)。この方法では、対象の外来ポリペプチドをコードする核酸配列をファージの外殻タンパク質をコードする配列と融合させて、ファージまたはファージミドから調製した粒子の表面に外来ポリペプチドを提示させることを利用する。この技術の応用には、属するメンバーが個々のファージ粒子の表面に提示されるポリペプチドライブラリーから、特定のクローンを選択するために親和性相互作用を使用することが含まれる。ポリペプチドの提示は、そのポリペプチドをコードする配列が挿入されたファージベクターから、その配列が発現されることによってなされる。したがって、対象のポリペプチドを選択するために用いることができるファージライブラリーを形成するために、ポリペプチドをコードする配列のライブラリーを個々の提示ファージベクターに移入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,223,409号明細書
【特許文献2】米国特許第5,403,484号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
ファージまたはファージミドにおいてFabおよびscFvのライブラリーを構築するために用いられる現行の方法は、1つにはM種の重鎖(HC)とN種の軽鎖(LC)を組み合わせるために、M×NのDNA分子を構築し、E.coliに導入して形質転換することが必要なことから、面倒で効率が悪い。本方法により、例えば、M種の(プラスミド)+N種の(ファージ)新規DNA分子を構築することを通して、M種のHCとN種のLCを組み合わせることが可能になる。組み合わせの混合は、DNAファージまたはファージミド分子の組換えライゲーションよりもはるかに効率的なファージ感染によって実現される。N種からなるLCは何回も繰り返し使用することができる。それゆえ、例えば10種からなるLCの集団を用いて10種のHCを試験するために必要なライゲーションおよび形質転換は、10回ではなく、10回である。我々の知る限りでは、同様の研究系は報告されておらず、細胞ライブラリーが大き過ぎる場合にこの方法の効率が減少するという希釈効果については考察されていない。
【0005】
本方法において、10種より大きい集団は、選択されたファージがファージにコードされたLCを含む機会、および選択の間担持されるHCを産生する細胞が細胞由来のHCによって見出される機会は、使用されるHC集団が大きくなるほど少なくなる、すなわち、細胞が大集団の中で「希釈」されるために、効率的に機能しない可能性が非常に高い。したがって、細胞ライブラリーに数多くのHCを使用することで可能性のある組み合わせが数多くもたらされると思われるにもかかわらず、「希釈」のために、実際の結合対が回収される可能性は低くなっている。結合性によって選択すると、特異的結合分子をラウンド当たり100〜1,000倍に濃縮することができるため、100種からなる細胞ライブラリーが良好に機能するであろうと推定される。20種、10種、6種、またはそれ以下からなるライブラリーがより良好に機能すると思われる。この方法は、単一のHCに適用でき、HCを数多くのLCと試験することが可能になる。
【0006】
比較的少数(10種以上と対照的に、1〜1000種(例えば、1〜500種、1〜250種、1〜100種、1〜50種、1〜25種、1〜15種、または例えば、1種、5種、6種、10種、15種、20種、25種、30種、35種、40種、45種、50種、60種、70種、80種、90種、100種、125種、150種、200種、250種、300種、400種、500種または750種))の、所定の標的または特定の配列に対して親和性があるHCまたはLCを、遺伝的に多様なLCまたはHCの大集団と組み合わせて(必要に応じて)特異的結合対、例えばFabなどの免疫グロブリン断片のライブラリーを作製する方法を提供する。
【0007】
一部の実施形態において、所定の標的または特定の配列に対して親和性がある1〜20種の、HCまたはLCを、遺伝的に多様なLCまたはHCの大集団と組み合わせて(必要に応じて)ライブラリーを作製する。本方法を用いることができる他種の特異的結合対の例としては、全長の抗体およびその抗原結合断片(例えば、HCおよびLCの可変ドメイン、Fabなど)、T細胞受容体分子(例えば、T細胞受容体(TCR)分子の細胞外ドメイン(α鎖およびβ鎖、またはγ鎖およびδ鎖)を含む)、MHCクラスI分子(例えば、β2ミクログロブリンと非共有結合したα1ドメイン、α2ドメイン、およびα3ドメインを含む)、およびMHCクラスII分子(α鎖およびβ鎖を含む)が挙げられる。
【0008】
一態様において、軽鎖の迅速最適化(Rapid Optimization of Light Chains)または「ROLIC」と称される方法では、LCの大集団を、ファージ上でそのLCの提示を引き起こすファージベクター内に置く。所定の標的に対して特異性を有するHCの小集団(例えば、プラスミドなどのベクター内)をE.coliにクローニングし、HCが発現されて周辺質に分泌されるようにする。次いでE.coliにLCの大集団をコードするファージベクターを感染させ、ファージ上にHC/LCタンパク質対合を作製する。そのファージ粒子はLC遺伝子のみを担持する。ファージ粒子が結合について選択されると、そのファージを、元の細胞集団(例えば、HC含有E.coli集団)に戻さなければならない。ファージが適正なHCを有する細胞に入る機会は、集団内のHCの数に反比例する。効率を良くするために、例えば、HC150種からなる集団を、例えばHC10種からなる亜集団15個の集団に分割することができる。各亜集団に、全LCレパートリーを感染させ、ファージを隔離したままに保ち、同時に選択し、ファージの各セットを元の亜集団に戻す。したがって、ファージが適当な細胞に入る機会は、1/150から1/10までに増加する。対象のLCおよびHC(例えば、所定の標的に結合する結合対を形成するもの)を、それらを含有する細胞から単離することができ(例えば、対象のLCおよび/またはHCをコードする核酸をPCR増幅し、単離することにより)、任意選択で、標準のFab提示形式または可溶性Fab(sFab)を分泌させるためのベクターに再結合させることができる。LC含有ベクターとHC含有ベクターのいずれか、またはその両方は、選択マーカー、例えば薬剤耐性遺伝子、例えばカナマイシン耐性遺伝子またはアンピシリン耐性遺伝子を含有することができる。HCのためのプラスミドとLCのためのファージとは異なる選択マーカー遺伝子を有することが好ましい。
【0009】
1回または複数回の選択ラウンドを行ったら、PCR以外の方法によって適正な対合を確立することができる。例えば、親LC−HC対を保持しているベクターから親LCを切り出し、それを新規に単離されたLCと置き換えることができる。1回の追加的な選択ラウンドにより、標的に結合するLC−HC対が単離される。例えば、HCが8種あり、300種のLCが単離された場合、細胞ライブラリーを樹立するために8回のライゲーション、8×300種のHC−LCの組み合わせを十分にサンプリングするために10回のライゲーションを行う必要があり得る。
【0010】
別の態様において、重鎖の経済的選択(Economical Selection of Heavy Chains)または「ESCH」と称される方法では、LCの小集団を、E.coliに導入された後にそのLCの小集団の分泌を引き起こすベクター(例えばプラスミド)内に置くことができる。ファージ内のHCの新規ライブラリーを構築し、例えば、HCを、例えばファージ上でHCの提示を引き起こすファージベクター内に置く。次いで、LCおよびHCを、非常に効率的な感染方法によって組み合わせることができる。有効なHCの少数のセットが選択されたら、それらをそのまま使用することができ、ROLICにかけて最適なHC/LC対合を得るか、古典的な選択のためにLCのFabライブラリーにクローニングすることができる。LC含有ベクターとHC含有ベクターのいずれか、またはその両方は、選択マーカー、例えば薬剤耐性遺伝子、例えばカナマイシン耐性遺伝子またはアンピシリン耐性遺伝子を含有することができる。プラスミドとファージは異なる選択マーカー遺伝子を有することが好ましい。
【0011】
一部の態様において、本明細書に記載の方法(例えば、ROLICまたはESCH)は、抗体などの特異的結合対を親和性成熟させるために使用することができる。例えば、所定の標的に結合する公知の抗体由来の1つまたはいくつかのHCまたはLCを本明細書に記載の技法で使用し、それぞれ、LCライブラリーまたはHCライブラリーと組み合わせる。得られた結合対について、所定の標的への結合を試験し、1またはそれより多くの性質(例えば、抗体の可変ドメインのフレームワーク領域または抗体の抗原結合断片における結合親和性、アミノ酸配列または核酸配列、生殖系列配列の存在など)について公知の抗体のものと比較することができる。好都合な性質(例えば、同一のアッセイ条件下で、所定の標的への結合親和性が公知の抗体よりも高いこと)との特異的結合対についてさらに評価することができる。実施例4も参照されたい。
【0012】
これらの方法により、FAB310ライブラリーまたはFAB410ライブラリー(Hoetら、Nat Biotechnol.、2005年、23巻、344〜348頁)よりも10倍大きいライブラリー(約1010のメンバーを持つ)が構築されたかのようにHCおよびLCの実際の対合が確立された。
【0013】
一部の態様において、本開示は、所定の標的に対して親和性がある特異的結合対(SBP)メンバーを作製する方法であって、該SBPは、第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖を含み、該方法は、(i)該所定の標的に対して親和性を有するように選択された第1のポリペプチド鎖、またはその全てが該所定の標的に対して親和性を有するように選択された該第1のポリペプチド鎖の遺伝的に多様な集団をコードする核酸を含む第1のベクターを含む宿主細胞(例えばE.coli)を提供するか、または該第1のベクターを宿主細胞に導入する工程であって、該第1のポリペプチド鎖が該宿主細胞から分泌される工程と、(ii)該第2のポリペプチド鎖の遺伝的に多様な集団をコードする核酸を含む第2のベクターを、該宿主細胞に導入する工程であって、該第2のポリペプチド鎖は、該第2のポリペプチド鎖を複製可能な遺伝子提示パッケージ(RGDP)の表面に提示させるための、分泌型RGDPの成分と融合されている工程(例えば、該第2のベクターが感染性RGDP内にパッケージングされており、それを該第1のベクターを有する宿主細胞に感染させることにより該第2のベクターを宿主細胞に導入する)と、(iii)該第1のポリペプチド鎖および該第2のポリペプチド鎖を該宿主細胞内で発現させて、RGDPによって提示される該SBPメンバーのライブラリーを形成し、該第1のポリペプチド鎖および該第2のポリペプチド鎖を該宿主細胞内で発現させて、該RGDPの表面に提示されるSBPメンバーのライブラリーを形成する工程であって、該第1のポリペプチド鎖および該第2のポリペプチド鎖が該RGDPの表面で結合している工程と、(iv)該集団のメンバーを該所定の標的に対する結合について選択する工程と、を含む方法を提供する。任意選択で、この方法は、第1のベクターを含有する宿主細胞の新鮮な試料に、選択されたRGDPを感染させる工程を包含することができる。
【0014】
一部の実施形態において、第1のポリペプチド鎖は、抗体の重鎖(HC)またはその抗原結合断片を含む。
【0015】
一部の実施形態において、第2のポリペプチド鎖は、抗体の軽鎖(LC)またはその抗原結合断片を含む。
【0016】
一部の実施形態において、第1のポリペプチド鎖は、抗体の軽鎖(LC)またはその抗原結合断片を含む。
【0017】
一部の実施形態において、第2のポリペプチド鎖は、抗体の重鎖(HC)またはその抗原結合断片を含む。
【0018】
一部の実施形態において、第1のベクターはプラスミドである。
【0019】
一部の実施形態において、第1のベクターはファージベクターである。
【0020】
一部の実施形態において、第2のベクターはファージベクターである。
【0021】
一部の実施形態において、第1のベクターは、1〜1000種(例えば、1〜1000種(例えば、1〜500種、1〜250種、1〜100種、1〜50種、1〜25種、1〜15種または例えば、1種、5種、6種、10種、15種、20種、25種、30種、35種、40種、45種、50種、60種、70種、80種、90種、100種、125種、150種、200種、250種、300種、400種、500種、または750種)の異なる第1のポリペプチド鎖の遺伝的に多様な集団をコードする。一部の実施形態において、第1のベクターは、1つの第1のポリペプチド鎖をコードする。一部の実施形態において、第1のベクターは、2〜100種(例えば、2〜500種、2〜250種、2〜100種、2〜50種、2〜25種、2〜15種、または例えば2種、5種、6種、10種、15種、20種、25種、30種、35種、40種、45種、50種、60種、70種、80種、90種、100種、125種、150種、200種、250種、300種、400種、500種、または750種)の異なる第1のポリペプチド鎖をコードする。
【0022】
一部の実施形態において、第1のベクター集団は、1000種以下の第1のポリペプチド鎖をコードする。一部の実施形態において、第1のベクター集団は、100種以下の第1のポリペプチド鎖をコードする。一部の実施形態において、第1のベクター集団は、20種以下の第1のポリペプチド鎖をコードする。一部の実施形態において、第1のベクター集団は、10種以下の第1のポリペプチド鎖をコードする。一部の実施形態において、第1のベクター集団は、1種の第1のポリペプチド鎖をコードする。
【0023】
一部の実施形態において、第2のベクターは、10種以上の異なる第2のポリペプチド鎖からなる遺伝的に多様な集団をコードする。
【0024】
一部の実施形態において、選択する工程は、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)を含む。
【0025】
一部の実施形態において、この方法は、所定の標的に結合する特異的結合対メンバーを単離する工程をさらに含む。
【0026】
一部の実施形態において、第1の集団は2つ以上の亜集団に分割され、1つの亜集団から作製されるファージは、他の集団で作製されるファージから選択され別々に増殖する。
【0027】
一部の態様において、本開示は、第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖を含み、所定の標的に対して親和性がある特異的結合対(SBP)メンバーを作製する方法であって、(i)1またはそれより多くの望ましい性質を有するように選択された第1のポリペプチド鎖の1種または複数をコードする遺伝物質の集団を含む第1のベクター集団を含む宿主細胞を提供する工程であって、前記第1のポリペプチド鎖が前記宿主細胞から分泌される工程と、(ii)前記第2のポリペプチド鎖を複製可能な遺伝子提示パッケージ(RGDP)の表面に提示させるための分泌型RGDPの成分と融合させた前記第2のポリペプチド鎖をコードする遺伝物質の多様な集団を含む第2のベクター集団を、前記細胞に感染させる工程と、(iii)前記第1のポリペプチド鎖および前記第2のポリペプチド鎖を前記宿主細胞内で発現させて、前記RGDPの表面に提示されるSBPメンバーのライブラリーを形成する工程であって、前記第1のポリペプチド鎖および前記第2のポリペプチド鎖が前記RGDPの表面で結合している工程と、(iv)SBPメンバーを前記所定の標的に対する結合について選択する工程とを含む方法を提供する。
【0028】
一部の実施形態において、第1のポリペプチド鎖は、抗体の重鎖(HC)またはその抗原結合断片を含む。
【0029】
一部の実施形態において、第2のポリペプチド鎖は、抗体の軽鎖(LC)またはその抗原結合断片を含む。
【0030】
一部の実施形態において、第1のポリペプチド鎖は、抗体の軽鎖(LC)またはその抗原結合断片を含む。
【0031】
一部の実施形態において、第2のポリペプチド鎖は、抗体の重鎖(HC)またはその抗原結合断片を含む。
【0032】
一部の実施形態において、第1のベクターはプラスミドである。
【0033】
一部の実施形態において、第1のベクターはファージベクターである。
【0034】
一部の実施形態において、第2のベクターはファージベクターである。
【0035】
一部の実施形態において、第1のベクター集団は、1〜1000種(例えば、1〜1000種(例えば、1〜500種、1〜250種、1〜100種、1〜50種、1〜25種、1〜15種または例えば、1種、5種、6種、10種、15種、20種、25種、30種、35種、40種、45種、50種、60種、70種、80種、90種、100種、125種、150種、200種、250種、300種、400種、500種、または750種)の異なる第1のポリペプチド鎖をコードする。一部の実施形態において、第1のベクターは、1種の第1のポリペプチド鎖をコードする。一部の実施形態において、第1のベクターは、2〜1000種(例えば、2〜500種、2〜250種、2〜100種、2〜50種、2〜25種、2〜15種、または例えば2種、5種、6種、10種、15種、20種、25種、30種、35種、40種、45種、50種、60種、70種、80種、90種、100種、125種、150種、200種、250種、300種、400種、500種、または750種)の異なる第1のポリペプチド鎖をコードする。
【0036】
一部の実施形態において、第2のベクターは、10個以上の異なる第2のポリペプチド鎖からなる遺伝的に多様な集団をコードする。
【0037】
一部の実施形態において、選択する工程は、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)を含む。
【0038】
一部の実施形態において、この方法は、所定の標的に結合する特異的結合対メンバーを単離する工程をさらに含む。
【0039】
一部の実施形態において、この方法は、工程(i)の宿主細胞の新鮮な試料に工程(iv)から選択されるRGDPを感染させる工程をさらに含む。
【0040】
一部の実施形態において、第1の集団は2つ以上の亜集団に分割され、1つの亜集団から作製されるファージは、他の集団で作製されるファージから選択され別々に増殖する。
【0041】
一部の実施形態において、第1のベクター集団は、1000種以下の第1のポリペプチド鎖をコードする。一部の実施形態において、第1のベクター集団は、100種以下の第1のポリペプチド鎖をコードする。一部の実施形態において、第1のベクター集団は、20種以下の第1のポリペプチド鎖をコードする。一部の実施形態において、第1のベクター集団は、10種以下の第1のポリペプチド鎖をコードする。一部の実施形態において、第1のベクター集団は、1種の第1のポリペプチド鎖をコードする。
【0042】
一部の態様において、本開示は、第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖を含み、所定の標的に対して改善された親和性がある特異的結合対(SBP)メンバーを作製する方法であって、(i)複製可能な遺伝子提示パッケージ(RGDP)の表面に前記第1のポリペプチド鎖を提示するための分泌型RGDPの成分に融合させた、所定の標的に対して親和性を有するように選択された前記第1のポリペプチド鎖の1種または複数をコードする核酸を含む第1のベクター集団を含む宿主細胞を提供する、または前記第1のベクター集団を宿主細胞に導入する工程と、(ii)前記第2のポリペプチド鎖の遺伝的に多様な集団をコードする核酸を含む第2のベクター集団を前記宿主細胞に導入する工程であって、前記第1のベクターが感染性RGDP内にパッケージングされており、それを前記第2のベクターを有する宿主細胞に感染させることにより前記第1のベクターを宿主細胞に導入する、または前記第2のベクターが感染性RGDP内にパッケージングされており、それを前記第1のベクターを有する宿主細胞に感染させることにより前記第2のベクターを宿主細胞に導入する工程と、前記第1のポリペプチド鎖および前記第2のポリペプチド鎖を前記宿主細胞内で発現させて、RGDPによって提示される前記SBPメンバーのライブラリーを形成する工程であって、前記集団の少なくとも1つが、前記RGDP成分を用いてパッケージング可能な核酸から発現され、それによって前記RGDPのそれぞれの遺伝物質が、RGDPの表面に提示される前記SBPメンバーのポリペプチド鎖をコードする工程と、前記集団のメンバーを前記所定の標的に対する高親和性結合について選択する工程と、を含む方法を提供する。
【0043】
一部の実施形態において、第1のベクター集団は、1000種以下の第1のポリペプチド鎖をコードする。一部の実施形態において、第1のベクター集団は、100種以下の第1のポリペプチド鎖をコードする。一部の実施形態において、第1のベクター集団は、20種以下の第1のポリペプチド鎖をコードする。一部の実施形態において、第1のベクター集団は、10種以下の第1のポリペプチド鎖をコードする。一部の実施形態において、第1のベクター集団は、1種の第1のポリペプチド鎖をコードする。
【0044】
一部の実施形態において、第1の集団は2つ以上の亜集団に分割され、1つの亜集団から作製されるファージは、他の集団で作製されるファージから選択され別々に増殖する。
【0045】
一部の態様において、本開示は、第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖を含み、所定の標的に対して親和性を有する特異的結合対(SBP)メンバーを作製する方法であって、(i)前記第1のポリペプチド鎖を複製可能な遺伝子提示パッケージ(RGDP)の表面に提示させるための分泌型RGDPの成分と融合させた前記第1のポリペプチド鎖の遺伝的に多様な集団であって、その各メンバーが可変ドメインのフレームワーク領域に生殖系列配列を有することが公知である多様な集団をコードする核酸を含む第1のベクターと、(ii)各メンバーがCDR3を含み、そのCDR3において合成多様性を有する、前記第2のポリペプチド鎖の遺伝的に多様な集団をコードする核酸を含む第2のベクターと、を宿主細胞に導入する工程であって、前記第1のベクターが感染性RGDP内にパッケージングされており、それを前記第2のベクターを有する宿主細胞に感染させることにより前記第1のベクターを宿主細胞に導入する、または、前記第2のベクターが感染性RGDP内にパッケージングされており、それを前記第1のベクターを有する宿主細胞に感染させることにより前記第2のベクターを宿主細胞に導入する工程と、前記第1のポリペプチド鎖および前記第2のポリペプチド鎖を前記宿主細胞内で発現させて、RGDPによって提示される前記SBPメンバーのライブラリーを形成する工程であって、前記集団の少なくとも1つが、前記RGDP成分を用いてパッケージング可能な核酸から発現され、それによって前記RGDPのそれぞれの遺伝物質が、RGDPの表面に提示される前記SBPメンバーのポリペプチド鎖をコードする工程と、を含む方法を提供する。
【0046】
これらの方法を実施するための組成物およびキットも本明細書に記載されている。本発明のこれらの実施形態、他の実施形態、およびその特徴および特性は、下記の説明、図、および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、実施例1に記載のROLIC法の実施形態を示す図である。
【図2】図2は、従来のファージ選択スキーム(左側)と例示的なROLIC LC選択スキーム(右側)とを比較して示す図であり、ROLICの効率および対合率が優れていること、ならびに対合の見込み数を多くするためのライブラリーの必要性が除かれることが例証されている。
【図3】図3は、選択/スクリーニングの方法にROLICを組み込むことで、方法の工程数がどれだけ削減されるかを示す図である。
【図4】図4は、実施例1に記載されている、XL1 Blue MRFおよび他の細胞系についての細胞株評価の結果を示す図である。
【図5】図5は、ROLIC法で使用される例示的なHCベクターを示す図である。
【図6】図6は、実施例1に記載されている、DY3F85LCの軽鎖20種がpHCSK22内の重鎖20種と対合してファージ上に機能的Fabを創出することができるかどうかをELISA分析した結果を示す図である。
【図7】図7は、実施例1の記載されている、DY3F85LCの軽鎖20種がpHCSK22の重鎖20種と対合してファージ上に機能的Fabを創出することができるかどうかをELISA分析した結果を示す図である。
【図8】図8は、ファージの力価と提示とをELISAにより比較した結果を示す図である。
【図9】図9は、ROLIC選択が、軽鎖の全多様性および20種の抗Tie1重鎖(LC 4×10種×HC 20種)に対して機能するかどうかをELISA分析した結果を示す図である。
【図10】図10は、ROLIC選択が、軽鎖の全多様性および20種の抗Tie1重鎖(LC 4×10種×HC 20種)に対して機能するかどうかをELISA分析した結果を示す図である。
【図11】図11は、ROLIC選択が、軽鎖の全多様性および20種の抗Tie1重鎖(LC 4×10種×HC 20種)に対して機能するかどうかをELISA分析した結果を示す図である。
【図12】図12は、ROLIC選択が、軽鎖の全多様性および20種の抗Tie1重鎖(LC 4×10種×HC 20種)に対して機能するかどうかをELISA分析した結果を示す図である。
【図13】図13は、ROLIC選択が、軽鎖の全多様性および20種の抗Tie1重鎖(LC 4×10種×HC 20種)に対して機能するかどうかをELISA分析した結果を示す図である。
【図14】図14は、ROLIC選択が、軽鎖の全多様性および20種の抗Tie1重鎖(LC 4×10種×HC 20種)に対して機能するかどうかをELISA分析した結果を要約した図である。
【図15】図15は、実施例2に記載されている、ROLIC選択の後にVHとVL−CLとを再連結させるための「ジッピング」法の設計概略図である。LC−DY3P85はDY3F85LCと同一である。カセットがpMID21にクローニングされた場合、提示ファージミドを得る。カセットがpMID21.03にクローニングされた場合、sFab発現のためのベクターを得る。
【図16】図16は、実施例2に記載されている、「ジッピング」法の成功利用を例証しているSDS−PAGEを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
詳細な説明
便宜上、本発明をさらに説明する前に、本明細書、実施例および添付の特許請求の範囲で使用した特定の用語についてここで定義する。
【0049】
単数形「1つの(a)」「1つの(an)」、および「この/その(the)」は、その文脈で他に明らかに指示がなければ、複数を参照することも包含する。
【0050】
「親和性」または「結合親和性」という用語は、見かけの結合定数またはKを指す。Kは、解離定数(K)の逆数である。結合性タンパク質は、例えば、特定の標的分子に対して、1M当たり少なくとも10、10、10、10、10、1010および1011の結合親和性を有し得る。第2の標的と比べて第1の標的に対して結合性タンパク質の結合の親和性が高いことは、第2の標的への結合についてのK(またはK数値)よりも第1の標的への結合についてのKの方が高い(またはK数値が小さい)ことにより示され得る。そのような場合、結合性タンパク質は、第2の標的(例えば、第2のコンフォメーションをとっている同じタンパク質またはその模倣体)に比べて、第1の標的(例えば、第1のコンフォメーションをとっているタンパク質またはその模倣体)に対して特異性を有する。結合親和性における相違(例えば、特異性または他の比較)は、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍、37.5倍、50倍、70倍、80倍、91倍、100倍、500倍、1000倍、または10倍になり得る。
【0051】
結合親和性は、平衡透析、平衡結合、ゲルろ過、ELISA、表面プラズモン共鳴、または分光法(例えば蛍光測定を使用)を含めた種々の方法によって決定することができる。結合親和性を評価するための例示的な条件は、TRIS緩衝液(50mMのTRIS、150mMのNaCl、5mMのCaCl、pH7.5)内である。これらの技法は、結合した結合性タンパク質および遊離の結合性タンパク質の濃度を結合性タンパク質(または標的)の濃度の関数として測定するために用いることができる。結合した結合性タンパク質([結合])の濃度は、遊離の結合性タンパク質([遊離])の濃度および標的上にある結合性タンパク質の結合部位の濃度に関連しており、次の方程式によれば(N)は標的分子あたりの結合部位の数である。
[結合]=N・[遊離]/((1/Ka)+[遊離])
しかし、親和性の定性的または半定量的な測定値を得ることで十分なこともあるので、Kを正確に決定することは必ずしも必要ではなく、例えば、ELISAまたはFACS分析などの方法を用いて決定した親和性の定性的または半定量的な測定値はKに比例し、したがって、例えば機能アッセイ、例えばin vitroアッセイまたはin vivoアッセイにおける活性によって、親和性の定性的測定値を得るため、または親和性についての推論を得るために、高い親和性が、例えば2倍高いかどうかを決定することなどの比較のために使用することができる。
【0052】
「抗体」という用語は、少なくとも1種の免疫グロブリン可変ドメインまたは免疫グロブリン可変ドメイン配列を含むタンパク質を指す。例えば、抗体は重(H)鎖可変領域(本明細書ではVHと略す)、および軽(L)鎖可変領域(本明細書ではVLと略す)を含み得る。別の例では、抗体は、2種の重(H)鎖可変領域および2種の軽(L)鎖可変領域を含む。「抗体」という用語は、抗体の抗原結合断片(例えば、単鎖抗体、FabおよびsFab断片、F(ab’)、Fd断片、Fv断片、scFvおよびドメイン抗体(dAb)断片(de Wildtら、Eur J Immunol.1996年、26巻(3号)、629〜39頁))ならびに完全な抗体を包含する。抗体は、IgA、IgG、IgE、IgD、IgM(ならびにそのサブタイプ)の構造的特徴を有し得る。抗体は任意の供給源由来であってよいが、霊長類(ヒトおよび非ヒト霊長類)由来抗体および霊長類化抗体であることが好ましい。
【0053】
VH領域およびVL領域は、さらに、「相補性決定領域」(「CDR」)と呼ばれる超可変性の領域と、それが組み入れられた、「フレームワーク領域」(「FR」)と呼ばれる保存された領域に細分することができる。フレームワーク領域およびCDRの範囲は、正確に定義されている(Kabat、E.A.ら、(1991年)、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S. Department of Health and Human Services、NIH出版番号91−3242、およびChothia, C.ら、(1987年)、J. Mol. Biol. 196巻、901〜917頁を参照されたい。また、www.hgmp.mrc.ac.ukも参照されたい)。本明細書ではKabatによる定義を使用する。VHおよびVLは、それぞれ、一般には、3つのCDRと4つのFRとで構成され、アミノ末端からカルボキシ末端まで、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配置されている。
【0054】
抗体のVH鎖またはVL鎖は、重鎖定常領域または軽鎖定常領域の全部または一部をさらに含んでよく、それによって、それぞれ、免疫グロブリンの重鎖または軽鎖を形成する。一実施形態において、抗体は2つの免疫グロブリン重鎖および2つの免疫グロブリン軽鎖の四量体であり、そこで免疫グロブリンの重鎖および軽鎖は、例えば、ジスルフィド結合によって相互結合している。IgGでは、重鎖定常領域は3つの免疫グロブリンドメイン、CH1、CH2およびCH3を含む。軽鎖定常領域はCLドメインを含む。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、一般には、免疫系の種々の細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的な補体系の第1の成分(Clq)を含めた宿主の組織または因子への、抗体の結合を媒介する。免疫グロブリンの軽鎖は、カッパ型またはラムダ型であってよい。一実施形態において、抗体はグリコシル化される。抗体は、抗体依存性毒性および/または補体媒介毒性に対して機能し得る。
【0055】
抗体の1またはそれより多くの領域はヒトのもの、または事実上ヒトのものであり得る。例えば、1またはそれより多くの可変領域はヒトのもの、または事実上ヒトのものであり得る。例えば、1またはそれより多くのCDRは、ヒトの、例えばHC CDR1、HC CDR2、HC CDR3、LC CDR1、LC CDR2、およびLC CDR3であってよい。軽鎖CDRはそれぞれ、ヒトのものであり得る。HC CDR3はヒトのものであり得る。1またはそれより多くのフレームワーク領域は、ヒトの、例えば、HCまたはLCのFR1、FR2、FR3、およびFR4であり得る。例えば、Fc領域はヒトのものであり得る。一実施形態において、全てのフレームワーク領域はヒトのもの、例えば、ヒト体細胞、例えば、免疫グロブリンを産生する造血細胞または非造血細胞由来のフレームワーク領域である。一実施形態において、ヒトの配列は、例えば、生殖系列核酸によってコードされている生殖系列配列である。一実施形態において、選択されたFabのフレームワーク(FR)残基は、最も類似した霊長類の生殖系列遺伝子、特にヒト生殖系列遺伝子内の対応する残基のアミノ酸型に変換することができる。1またはそれより多くの定常領域は、ヒトのもの、または事実上ヒトのものであり得る。例えば、免疫グロブリンの可変ドメイン、定常領域、定常ドメイン(CH1、CH2、CH3、CL1)の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、92%、95%、98%、または100%、または抗体全体は、ヒトのもの、または事実上ヒトのものであり得る。
【0056】
抗体の全部または一部は、免疫グロブリン遺伝子またはそのセグメントによってコードされ得る。例示的なヒト免疫グロブリン遺伝子としては、カッパ型、ラムダ型、アルファ型(IgA1およびIgA2)、ガンマ型(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、デルタ型、イプシロン型およびミュー型の定常領域遺伝子、ならびに多数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が挙げられる。全長免疫グロブリン「軽鎖」(約25KDaまたは約214アミノ酸)は、NH2末端において可変領域(約110アミノ酸)遺伝子によって、およびCOOH末端においてカッパ型またはラムダ型の定常領域遺伝子によってコードされている。全長免疫グロブリン「重鎖」(約50KDaまたは約446アミノ酸)は、同様に、可変領域(約116アミノ酸)遺伝子によって、および他の前述の定常領域遺伝子の1つ、例えばガンマ型定常領域遺伝子(約330アミノ酸をコードする)によってコードされている。ヒトHCの長さは、HC CDR3が約3アミノ酸残基から35アミノ酸残基を超えるまで変動するために、相当変動する。
【0057】
「ライブラリー」とは、ヌクレオチド、例えばDNA、クローン内の配列のコレクション、またはポリペプチド、または特異的結合対(SBP)メンバー、または個々のポリペプチドもしくはSBPメンバーを提供するために選択またはスクリーニングすることが可能なRGDP上に提示されるポリペプチドもしくはSBPメンバー、またはポリペプチドもしくはSBPメンバーの混合集団の、遺伝的に多様なコレクションを指す。
【0058】
本明細書では、「パッケージ」という用語は、その中の粒子が表面に特異的結合対のメンバーを提示している、複製可能な遺伝子提示パッケージを指す。このパッケージは、その表面に抗原結合ドメインを提示しているバクテリオファージであり得る。この種類のパッケージは、ファージ抗体(pAb)と呼ばれている。
【0059】
「所定の標的」とは、任意の開示された方法で使用する前にその正体が公知である標的分子を指す。
【0060】
本明細書では、「複製可能な遺伝子提示パッケージ(RGDP)」という用語は、粒子に複製能力を与える遺伝情報を有する生物学的粒子を指す。この粒子は、その表面にポリペプチドの少なくとも一部を提示することができる。このポリペプチドは、粒子固有の遺伝情報によってコードすることができ、かつ/またはその粒子内またはその粒子の祖先内に人為的に入れることができる。提示されるポリペプチドは、特異的結合対の任意のメンバー、例えば、免疫グロブリン分子、酵素または受容体などに基づいた重鎖ドメインまたは軽鎖ドメインであってよい。この粒子は、例えば、ウイルス、例えばfdまたはM13などのバクテリオファージであってよい。
【0061】
「分泌型」という用語は、SBPメンバーおよび/または分子が折りたたまり、パッケージが細胞サイトゾル外部に集まっている状態のRGDPまたはRGDP上に提示されるSBPのメンバーに結合した分子を指す。
【0062】
本明細書では、「特異的結合対(SBP)」という用語は、天然由来または合成的に作製された分子の対(それぞれが特異的結合対のメンバーになっている)を指す。対がお互いに特異的に結合する性質を有するように、分子対の一方は、他方の分子の特定の空間および極性組織に特異的に結合する表面区域または腔を有し、それゆえ、その他方の分子の特定の空間および極性組織と相補的であると定義される。特異的結合対の種類の例としては、抗原−抗体、ビオチン−アビジン、ホルモン−ホルモン受容体、受容体−リガンド、酵素−基質、IgG−プロテインAがある。
【0063】
「ベクター」という用語は、宿主生物内で複製する能力があるDNA分子を指し、その中に遺伝子を挿入して組換えDNA分子を構築する。「ファージベクター」は、ファージゲノムを修飾することにより得られるベクターであり、バクテリオファージの複製起点を含有するが、プラスミドの複製起点は含有しない。「ファージミドベクター」は、プラスミドゲノムを修飾することにより得られるベクターであり、バクテリオファージの複製起点ならびにプラスミドの複製起点を含有している。ファージミドベクターは、提示ファージよりもずっと小さいベクターにクローニングする利便性を提供する。ファージミドを感染させた細胞はヘルパーファージに救出されるに違いない。
【0064】
一態様において、第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖を含み、所定の標的に対して親和性がある特異的結合対(SBP)メンバーを作製する方法であって、(i)その全てが1またはそれより多くの望ましい性質を有するように選択された前記第1のポリペプチド鎖の1種または複数をコードする遺伝子の集団を含む第1のベクターを有する宿主細胞(例えばE.coli)の集団を提供する工程であって、前記第1のポリペプチド鎖が前記宿主細胞から分泌される工程と、(ii)前記第2のポリペプチド鎖を複製可能な遺伝子提示パッケージ(RGDP)の表面に提示させるための分泌型RGDPの成分と融合させた前記第2のポリペプチド鎖の集団(例えば、遺伝的に多様な集団)をコードする第2のベクター集団を、前記宿主細胞に感染させる工程と、(iii)前記第1のポリペプチド鎖および前記第2のポリペプチド鎖を前記宿主細胞内で発現させて、RGDPによって提示される前記SBPメンバーのライブラリーを形成する工程であって、それによって前記RGDPのそれぞれの遺伝物質が、RGDPの表面に提示される前記SBPメンバーの前記第2の集団のポリペプチド鎖をコードする工程と、(iv)前記集団のメンバーを前記所定の標的に対する結合について選択する工程と、任意選択で、(v)工程(i)の宿主細胞の新鮮な試料に、選択された前記RGDPを感染させる工程とを含む方法が提供される。
【0065】
一態様において、第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖を含み、所定の標的に対して改善された親和性がある特異的結合対(SBP)メンバーを作製する方法であって、(i)その全てが1またはそれより多くの望ましい性質を有するように選択され、可溶性分子として周辺質内に分泌されるようにそのそれぞれに対する遺伝子がシグナル配列に作動可能に連結されている前記第1のポリペプチド鎖の遺伝的に多様な集団をコードする核酸を含む第1のベクターと、(ii)前記第2のポリペプチド鎖を複製可能な遺伝子提示パッケージ(RGDP)の表面に提示させるための分泌型RGDPの成分と融合させた前記第2のポリペプチド鎖の遺伝的に多様な集団をコードする核酸を含む第2のベクターとを宿主細胞に導入する工程であって、前記第2のベクターが感染性RGDP内にパッケージングされており、それを前記第1のベクターを有する宿主細胞に感染させることにより前記第2のベクターを宿主細胞に導入する工程を含む方法が提供される。選択され得る第1の集団に望ましい性質としては、a)所定の標的に対して親和性を有すること、b)フレームワーク領域内の生殖系列アミノ酸配列をコードすること、c)E.coliのコドン使用頻度が最適であること、d)CHO細胞のコドン使用頻度が最適であること、e)特定の制限酵素認識部位がないこと、およびf)1またはそれより多くのCDR(例えば、HC CDR1、HC CDR2、HC CDR3、LC CDR1、LC CDR2、および/またはLC CDR3)において合成または選択された多様性を有することが挙げられる。一部の実施形態において、HC CDR3に合成または選択された多様性がある。
【0066】
所定の標的は、任意の対象の標的、例えば、治療介入のための標的、例えばTie−1、MMP−14、MMP−2、MMP−12、MMP−9、FcRN、VEGF、TNF−アルファ、血漿カリクレインなどであってよい。特定の標的に対する親和性は、当業者に公知の任意の方法によって決定することができる。
【0067】
特定の実施形態において、第1のポリペプチド鎖はLCまたはHCを含み、第2のポリペプチド鎖は、第1のポリペプチドが含むものの正体が何かに応じてLCまたはHCを含む。例えば、第1のポリペプチド鎖がLCを含む実施形態では、第2のポリペプチドはHCを含む。第1のポリペプチド鎖がHCを含む他の実施形態では、第2のポリペプチド鎖はLCを含む。
【0068】
第1のポリペプチド鎖の遺伝的に多様な集団は、全てが望ましい性質を有するように選択されており、少なくとも約5、約10、約25、約50、約75、約100、約200、約300、約400、約500、約750、約1000までのメンバーを含み得る。第2のポリペプチド鎖の遺伝的に多様な集団は一般にはるかに大きく、少なくとも約10、10、10以上に匹敵する。
【0069】
特定の実施形態において、前記ポリペプチド鎖のそれぞれまたはいずれかは、前記成分融合産物を用いてRGDPとしてパッケージング可能な核酸から発現され得る。
【0070】
この方法は、前記第1のポリペプチド鎖の集団を発現させる能力があるベクターを、前記発現を抑制する条件下で宿主生物に導入する工程を含み得る。第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖両方が発現できる条件下で、細胞のこの集団内に、前記第2のポリペプチド鎖をファージベクターの外被タンパク質との融合として発現させる能力があるファージベクターを導入する。
【0071】
ファージをRGDPとして使用する場合、そのファージはクラスIファージのfd、M13、f1、If1、lke、ZJ/Z、FfおよびクラスIIファージのXf、Pf1およびPf3から選択することができる。特定の実施形態において、繊維状F特異的バクテリオファージを用いて、その表面に結合性分子、例えば抗体および抗体断片およびその派生体を提示するためのビヒクルを提供し、続く選択および操作を容易にすることができる。fdの一本鎖DNAゲノム(およそ6.4Kb)を、カプシドサブユニットを隔離している細菌細胞膜を通して押し出し、成熟ビリオンを作製する。これらのビリオンは直径6nm、長さ1μmであり、それぞれがおよそ2,800分子の、ウイルス遺伝子VIIIによってコードされている主要外被タンパク質および4分子の吸着分子遺伝子IIIタンパク質(g3p)を含有し、後者はビリオンの一端に位置している。この構造は、Websterら、1978年、The Single Stranded DNA Phages、557〜569頁、Cold Spring Harbor Laboratory Pressに総説がある。遺伝子III産物は、ファージの細菌のF線毛への結合に関連する。fdファージの遺伝子IIIには、生物学的に活性な外来配列を挿入するための魅力的な可能性があることが認められている。しかし、例えば遺伝子VIIIおよび遺伝子VIを含めた、他の候補部位もある。特定の実施形態において、遺伝子III断端(stump)が本発明の方法に使用されている。
【0072】
宿主細胞は、ファージを感染させることが可能な任意の宿主細胞であってよい。特定の実施形態において、宿主細胞はE.coliの株、例えばTG1、XL1 Blue MRF’、EcloniまたはTop10F’である。
【0073】
以下のRGDPの組み合わせを選択またはスクリーニングして、ポリペプチド鎖をコードする核酸を持つそれぞれのRGDPに関連する個々のSBPメンバーまたは前記SBPメンバーの混合集団を提供することができる。次に、このように提供されるポリペプチド鎖の少なくとも1種類の限定された集団を、個々の相補的な鎖、または相補的な鎖の限定された集団を選択する、さらなる二重の組み合わせの方法に使用することができる。
【0074】
前記第1のポリペプチド鎖をコードする限定されたRGDP集団から取り出した核酸を、前記第2のポリペプチド鎖をコードする核酸の遺伝的に多様なレパートリー由来の核酸も導入される組換えベクターに導入することができ、または前記第2のポリペプチド鎖をコードする限定されたRGDP集団から取り出した核酸を、前記第1のポリペプチド鎖をコードする核酸の遺伝的に多様なレパートリー由来の核酸も導入される組換えベクターに導入することができる。
【0075】
この組換えベクターは、2つのベクター間の細胞内組換えによって作製することができ、これは、ベクターの部位特異的組換えが起こり得る配列に、大腸菌ファージP1から得られるloxP配列などの配列を含めることにより促進することができる。次いで、部位特異的組換えを、同様に大腸菌ファージP1から得られるCreリコンビナーゼによって触媒することができる。
【0076】
使用されるCreリコンビナーゼは、調節可能なプロモーターの制御下で発現可能になり得る。
【0077】
別の態様において、第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖を含み、所定の標的に対して親和性を有する特異的結合対(SBP)メンバーを作製する方法は、(i)各メンバーが可変ドメインのフレームワーク領域に生殖系列配列を有することが公知である、前記第1のポリペプチド鎖の遺伝的に多様な集団をコードする核酸を含む第1のベクターと、(ii)前記第2のポリペプチド鎖を複製可能な遺伝子提示パッケージ(RGDP)の表面に提示させるための分泌型RGDPの成分と融合させた前記第2のポリペプチド鎖の遺伝的に多様な集団であって、その各メンバーがCDR3の合成多様性を有する集団をコードする核酸を含む第2のベクターとを宿主細胞に導入する工程であって、前記第2のベクターが感染性RGDP内にパッケージングされており、それを前記第1のベクターを有する宿主細胞に感染させることにより前記第2のベクターを宿主細胞に導入する工程を含む。
【0078】
ヒト生殖系列配列は、Tomlinson, I.A.ら、1992年、J. Mol. Biol.、227巻、776〜798頁;Cook, G. P.ら、1995年、Immunol. Today、16巻(5号)、237〜242頁;Chothia, D.ら、1992年、J. Mol. Bio.、227巻、799〜817頁に開示されている。V BASEディレクトリは、ヒト免疫グロブリン可変領域配列の幅広いディレクトリを提供している(Tomlinson, I.A.ら、MRC Centre for Protein Engineering、Cambridge, UKによる編集)。抗体は、結合性質が実質的に保たれる限りは、フレームワーク領域内の1またはそれより多くの非生殖系列アミノ酸を、抗体の対応する生殖系列アミノ酸に戻すことにより「生殖系列化」される。定常領域、例えば免疫グロブリン定常ドメインにおいても同様の方法を用いることができる。
【0079】
抗体は、その抗体の可変領域を1またはそれより多くの生殖系列配列により相似させるために修飾することができる。例えば、抗体は、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上のアミノ酸置換を、例えばフレームワーク、CDR、または定常領域に含めて参照生殖系列配列により相似させることができる。例示的な生殖系列化の方法の1つとして、単離された抗体の配列に相似した1またはそれより多くの生殖系列配列(例えば、特定のデータベースにおいて最も相似した配列)を同定することが挙げられる。次いで、単離された抗体において、増加的に、または他の突然変異との組み合わせて突然変異させる(アミノ酸レベルで)。例えば、可能性のある生殖系列突然変異の一部または全部をコードする配列を包含する核酸ライブラリーを作出する。次いで、例えば、単離された抗体と比較して1またはそれより多くの追加的な生殖系統残基を有し、それがなお有効である(例えば、機能活性を有する)抗体を同定するために、突然変異した抗体を評価する。一実施形態において、できるだけ多くの生殖系列残基を、単離された抗体に導入する。
【0080】
一実施形態において、突然変異誘発を用いてフレームワーク領域および/または定常領域内に1またはそれより多くの生殖系列残基を置換または挿入する。例えば、生殖系列のフレームワーク領域残基および/または定常領域残基は、修飾される非可変領域に相似している(例えば、最も相似している)生殖系列配列から得ることができる。突然変異誘発後、抗体の活性(例えば、結合または他の機能活性)を評価して、生殖系列残基(1つまたは複数)が許容される(すなわち、活性を抑止しない)かどうかを決定することができる。同様の突然変異誘発をフレームワーク領域において行うことができる。
【0081】
生殖系列配列の選択をさまざまな様式で行うことができる。例えば、生殖系列配列は、選択性または相似性、例えば、少なくともある特定の割合の同一性、例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%。93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または99.5%の同一性について所定の基準を満たす場合に選択することができる。選択は、少なくとも2種、3種、5種または10種の生殖系列配列を用いて行うことができる。CDR1およびCDR2の場合、相似している生殖系列配列の同定には、そのような配列を1つ選択することが含まれる。CDR3の場合、相似している生殖系列配列の同定には、そのような配列を1つ選択することが含まれ得るが、アミノ末端部とカルボキシ末端部に別々に寄与する2つの生殖系列配列を使用することが含まれてもよい。他の実施では、1つまたは2つを超える生殖系列配列が、例えば、コンセンサス配列を形成するために使用される。
【0082】
本発明の任意の態様による方法を実行する際に使用するためのキットも提供される。キットには、必要なベクターを含めることができる。そのようなベクターの1つは、一般には一本鎖バクテリオファージの複製起点を有し、SBPメンバーの核酸を含有するか、そのベクターをファージカプシドタンパク質の成熟コード配列の5’末端領域に挿入するための制限部位を有するかいずれかであり、カプシドタンパク質外因性ポリペプチドと細胞膜周辺腔の融合を導く前記部位の上流の分泌に関するリーダーコード配列を持つ。
【0083】
上記で定義したRGDPおよび上記で定義した任意の方法を用いることによって得られる特異的結合対のメンバー、例えば、抗体、酵素、受容体、それらの断片および派生体などの結合性分子も提供される。派生体は、酵素またはFc尾部などの別の分子と融合した特異的結合対のメンバーを含み得る。
【0084】
キットには、コードされているポリペプチドを遊離型で発現させるためのSBPメンバーの核酸の上記の特性を有し得る、またはコードされているポリペプチドを遊離型で発現させるためのSBPメンバーの核酸を含有し得る、またはコードされているポリペプチドを遊離型で発現させるためのSBPメンバーの核酸を挿入する部位を有するファージベクター(例えば、DY3F85LC、表2に配列を示す)を含めることができる。キットには、可溶性の鎖、例えば、pHCSK22(表3に配列を示す)を発現させるためのプラスミドベクターも含めることができる。キットには、適切な細胞系(例えば、TG1)も含めることができる。
【0085】
キットには、方法を実行するために必要な補助的な成分を含めることができ、そのような成分の特質は、採用した特定の方法の過程に左右される。有用な補助的な成分は、ヘルパーファージ、PCRプライマー、およびさまざまな種類の緩衝液および酵素を含み得る。緩衝液および酵素は、一般には、本明細書に記載の戦略による、再配列した免疫グロブリン遺伝子または再配列していない免疫グロブリン遺伝子由来のFv断片、scFv断片またはFab断片をコードするヌクレオチド配列を調製可能にするために使用する。
【実施例】
【0086】
例示
本発明を以下の実施例によりさらに例示し、これは限定的なものと決して解釈すべきではない。本願を通して引用した全ての参考文献、係属中の特許出願および公開特許の内容は、参照により明示的に本明細書に組み込まれる。
【0087】
(実施例1)
軽鎖の迅速最適化(ROLIC)
ROLICとは、軽鎖の迅速最適化である。この方法の例示的な実施形態において、SS−VH(i)−CH1の集団をコードする遺伝子を、PlacZなどの適切な調節可能なプロモーターの制御下で、ベクター内(pHCSK22など)に置く。SSは、E.coliにおいてVH(i)−CH1の分泌を引き起こし得るシグナル配列である(iは、集団におけるこのVHの指数であり、iは1、2、・・・Nであり得る)。VH(i)は、抗体の重鎖の可変ドメインであり、CH1は、IgG重鎖(HC)の第1の定常ドメインである。ベクターpHCSK22もpBR322の複製起点およびカナマイシン耐性遺伝子(kan)を含有する。pHCSK22内に入れられたHC集団は、特定の標的抗原に対して親和性を有するようにまたは他の一部の望ましい性質を選択されることになる。
【0088】
第2のベクター、DY3F85LCは、M13mp18から得たファージ由来ベクターである。野生型M13の全ての遺伝子に加えて、DY3F85LCは、アンピシリン耐性遺伝子(bla)および抗体の軽鎖(LC)の提示カセットを担持している。LC定常領域は、M13iiiの断端とインフレーム融合する。SS−VL−CL−III断端遺伝子はPlacZによって調節される。ヒトLCの大規模レパートリーをDY3F85LCにクローニングする。
【0089】
一実施例において、ヒトTIE−1に対して親和性を有する20種のHCをpHCSK22にクローニングし、E.coliのTG1株を形質転換して細胞集団を作出するために使用する。これらの細胞はF+であり、M13を感染させることができる。細胞が、pHCSK22集団の一メンバーとDY3F85LC集団の一メンバーの両方を有する場合、その細胞はAmpとKanの両方に対して耐性である。IPTGを用いて誘導された場合、またはグルコース非存在下で増殖させた場合、HCは周辺質に分泌され、各細胞はHC集団の一メンバーをなしている。M13は、多重感染を避けるためによく発達した系を有しているので、各細胞はLC集団の単一のメンバーを含有する。したがって、Amp細胞、Kan細胞から作製されたファージは、IIIstumpに固定されたLCの遺伝子を担持する。DY3F85LCが野生型iiiと提示型vl::cl::iiistumpの両方を有するため、ファージは概ね全長IIIを有する。多くのファージは、野生型IIIのみを有し、抗体は提示されない。VL::CL::IIIstumpタンパク質を担持しているファージは、細胞の周辺質からVH::CH1タンパク質を得る。
【0090】
例えば、5×10種のLCおよび20種の別々のHCがある場合、LC/HCの組み合わせは10通りになり得る。これらのファージは、標的、例えばTIE−1に結合させるために選択することができる。最初のFAB−310ライブラリーにおいて、各HCをおよそ25種の異なるLCと対合させる。ここで、その全てがTIE−1に対していくらかの親和性を有するHCの少数のセットを取り、それらを我々のコレクション中の全てのLCと組み合わせる。我々のベクターpMID22において10種からなるライブラリーを作出することが可能であり得るが、このサイズのライブラリーを作出することは非常に大きな労働力を要する。ROLICにおいて必要なのは、pHCSK22において20種のHCのライブラリーのみを作出し、E.coli細胞を形質転換することである。これらの細胞にDY3F85LCライブラリーを感染させることにより、全組み合わせが可能になる。DY3F85LCライブラリーを樹立する必要があるが、一度である。
【0091】
結合のために選択されたファージは、HC遺伝子を担持していないので、そのファージを得た同じ細胞系で増殖させなければならない。選択されたLCファージを感染させた細胞(HC集団を担持している)を、液体中で一晩増殖させる。増幅したファージを沈殿させ、精製し、該標的に暴露させる。ファージが結合した標的を、ファージが感染、増幅することを可能にし、潜在的に新規LC HC対合を可能にする元のHC pHCSK22細菌と混合する。最終的にこのファージを含有する細胞が培養されるまで、このプロセスを2回または3回繰り返す。個々のコロニーを選び取り、増殖させる。単離されたコロニー(例えば、960)から得たファージをファージELISAで試験する。標的に結合するファージを産生するコロニーにおいて、所望の対合を得たが、LC遺伝子およびHC遺伝子は別々のDNA分子上にある。PCRを用いて、LCおよびHCを、Hoet, R.M.ら、Nat Biotechnol、23巻、344〜348頁(2005年)に記載の標準のFab提示形式に再結合させることができる。あるいは、可溶性Fab(sFab)発現カセットを作製し、sFabを試験することができる。
【0092】
ROLICにより、1〜100個(あるいは1〜500個)の抗体を一度に親和性成熟させることができる。利用できるレパートリー中に良好なLCがないという危険性を伴って1つの抗体を選び取ることは強制されない。100pM〜100nMの範囲の親和性を有する抗体を最初に選択し、それらの3分の1が10倍の改善を示した場合、ほんの少しの追加的な努力に対して20pM〜100nMの範囲の親和性を持つ抗体が得られるはずである。
【0093】
A.例示的なROLIC法
1.FAB−310またはFAB−410からの選択を1〜2ラウンド行う。
【0094】
2.プラスミドの集団内のHCを、つないでいないHCとして細胞ライブラリー内に移動させる(1〜1000種のHCレパートリー;ほとんどまたは全く特性付けしない)。
【0095】
3.細胞ライブラリーに、IIIstumpに固定した5Eカッパ型&5Eラムダ型を担持し、HCを担持していないファージライブラリーを感染させる。
【0096】
4.ファージを選択し、1回繰り返す(同じ細胞ライブラリーを使用する)
5.ファージELISAを使用して役立つLC/HC対を有するコロニーを選び取る。
【0097】
6.pMID21.03においてELISA陽性コロニーからsFabカセットを構築する(pMID21.03は、pMID21由来のベクターであり、IIIstumpを欠失しているのでsFabが分泌される)。
【0098】
この方法により、ライブラリーがFAB−310またはFAB−410よりも10倍大きいかのように、実際のHCとLCとの対合が確立される。このことは図1に例証している。上記の工程2において、任意の前もって設定した程度にHCを特徴付ける必要はない。酵素を阻害することなどの望ましい特徴を全てが現している複数のHCを自由に選び取ることができる。ファージライブラリーFAB−410を、表4に示すファージベクターDY3F63において樹立した。ファージミドライブラリーFAB−310を、表5に示すファージミドベクターpMID21において樹立した。
【0099】
B.LCの選択−例
図2は、ROLICを用いてLCを選択する1つの方法を例証している。図3は、潜在的に高速な方法を例証している。
【0100】
C.カッパ型LCおよびラムダ型LCライブラリーの構築
完全なライブラリーを樹立する前に、以下の評価実験を完了させた。
【0101】
1.κ型LCおよびλ型LCを、小規模で、DY3F85LCにライゲーションさせた。
【0102】
2.最終ベクター20ngをXL1 Blue細胞に電気穿孔処理し培養した。
【0103】
3.各ライブラリーに対して4つのプレートを選び取った。
【0104】
4.ファージ上でLCが発現していることを確認した(κ&λLC ELISA)
5.各ライブラリーに対して4つのプレートについて配列決定することにより、各ライブラリーの多様性を評価した。
【0105】
6.3つのE.coli株を評価した。
【0106】
各ライブラリーに対して、ウサギおよびヤギの2種の抗ヒトLC抗体を試験した。pMID17由来のカッパ型LCおよびラムダ型LCが、DY3F85LCファージ上に首尾よく提示され、大規模な軽鎖ライブラリーの構築が可能になった。ベクターpMID17は、LC−HC Ab(抗体)カセットのためのホールディングベクターであり、bla遺伝子を含有するが、提示アンカーを欠乏している。
【0107】
3つのE.coli株を評価した:XL1 Blue MRF’(Stratagene)、Ecloni(Lusigen)およびTop10F’(Invitrogen)。以下のパラメーターについて試験した:カッパLC発現(ELISA)、形質転換効率(力価)およびファージ産生能力(ファージの増殖および力価)。図4は、3株におけるカッパ型LC発現についてのELISAによる評価の結果を示す。各株の形質転換効率は以下の通りであった:XL1 Blue MRF’−7.3×10CFU/μg、Ecloni−4.3×10CFU/μgおよびTop10F’−6.8×10CFU/μg。精製したファージの力価測定値は以下の通りであった:
PFU:XL1 Blue MRF’−3.58×10;Ecloni−1.56×10およびTop10F’−5.07×10
CFU:XL1 Blue MRF’−1.19×10;Ecloni−5.36×10およびTop10F’−6.30×10
軽鎖の発現、形質転換効率およびファージの産生能力は、試験したE.coli株全てで同等であった。
【0108】
XL1 Blue MRF’を選択して大規模ライブラリーを創出した。大規模ライブラリーの構築を含む工程/パラメーターは、
1.試験ライゲーション
2.大規模ライゲーション(×60)
3.試験電気穿孔処理(EPs)
4.大規模EPs(ライブラリーごと60回のEPs)
5.力価(ライブラリーのサイズ):カッパ型−全CFU2×10およびラムダ型−全CFU1×10
6.NUNC培養/スクラッピング
7.PEG沈殿およびファージの精製
8.最終力価:カッパ型−6×10/μLおよびラムダ型−8×10/μL
HCを発現させてLCライブラリーと対合させるために用いるHCベクター、およびその構築に関する情報を図5に示す。
【0109】
D.ROLICの実証
実証実験のために、Tie−1に対して特異性を有するHC20種を選択した。抗Tie−1および抗重鎖(V5)および抗軽鎖についてのELISAを用いて、DY3F85LCの軽鎖20種とpHCSK22の重鎖20種が対合してファージ上で機能的Fabが創出され得るどうかを評価した(LC1種×HC1種)。例示的なELISAの結果を図6および7に示し、それにより、LCがHCと対合して抗Tie−1活性を持つFab(LCとHCの両方を有する)が創出され得ることが示されている。
【0110】
このライブラリー由来の提示と、pMID21およびDY3F63(Fab310およびFab410)由来の提示との比較を、抗Tie−1ELISA滴定および抗Fab(またはHC特異的およびLC特異的)ELISA滴定を用いて行った。特に、抗Tie−1ELISAを以下の通り行った。対応する(元の)10個の個々のTie−1LC−DY3F85LCを持つ10個の個々のTie−1HC−pHCSK22クローンを救出し30℃で一晩インキュベートした。ファージをPEG沈殿させ、ファージ滴定(CFU)を行った。ELISAを下記の通り行った:1)抗Fab抗体(PBS中、1μg/mL、100ul/ウェル)で96ウェルプレートを4℃で一晩(O/N)コーティングし、2)PBS中4%BSAを用いて室温(RT)で1時間ブロッキングし、3)PBST(0.1%TWEEN(登録商標)20)で洗浄し、4)ウェルにファージを加え、室温で1時間インキュベートし、4)PBST(0.1%TWEEN(登録商標)20)で洗浄し、5)抗M13−HRPを加え、室温で1時間インキュベートし、6)洗浄し、基質を加え、6)450nmで読み取った。ライブラリー間のファージ力価および提示の比較を図8に示す。
【0111】
次に、ROLIC選択が、抗Tie−1軽鎖および重鎖の混合集団((LC20種×HC1種)または(LC20種×HC20種))でうまくいくかどうかを評価した。Tie−1HC−pHCSK22クローンをTie1LC−DY3F85LCで救出し、その結果を抗Tie−1ELISAで分析し、配列決定した。例示的な結果を図9〜13に示し、図14の表に要約している。
【0112】
ROLIC選択が、完全な軽鎖多様性および抗Tie−1重鎖20種(4×10LC×20HC)でうまくいくかどうかを、Tie1Hc−pHCSK22クローンをK−DY3F85LCおよびL−DY3F85LCで救出することにより決定し、その結果を抗Tie1ELISAで分析し、配列決定した。HC20種を全LC多様性(ファージDY3F85)で救出し、精製した。ファージ溶液をMPBST(0.1%TWEEN(登録商標)20&2%スキムミルク)でブロッキングした。ブロッキングしたファージを、ビオチン化抗FcでコーティングしたビーズおよびTrail−Fcでコーティングしたビーズ上で、各10分間、全部で5回の除去処理で除去した。Tie−1−Fc200pmolを、バイオ−抗Fc(総体積500μL)でコーティングしたビーズを用いて4℃で一晩インキュベートした。除去したファージ溶液を標的ビーズに加え、室温で30分インキュベートした。ビーズをPBSTで12回洗浄し、ファージが結合したビーズを用いてHC細胞20mLに感染させた。産出物をAmpプレートおよびKanプレートにおいて滴定した。ELISA用の384ウェルプレートをTie−1,抗V5、抗カッパ、抗ラムダまたはTrail−Fc(PBS中、1μg/mL、100μl/ウェル)を用いて4℃で一晩コーティングした。プレートをPBS中1%BSAを用いて37℃で1時間ブロッキングし、PBST(0.1%TWEEN(登録商標)20)で洗浄した。上清をウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。抗M13−HRPを加え、室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、基質を加え、630nmで読み取った。プレート#1について、34単離株がT>0.5かつT/B>3の基準を満たした。プレート#2について、29単離株がT>0.5かつT/B>3の基準を満たした。
【0113】
(実施例2)
ROLIC法におけるVH/VL−CL再連結
この方法は、ROLICクローニングの手順中に失われた軽鎖遺伝子と重鎖遺伝子との間の遺伝子型連結の再確立を可能にする1つの様式である(軽鎖と重鎖に対して異なるROLICベクター)。これにより、抗体カセットをApalI−NheI断片としてpMID21ベクター内に1工程でクローニングして戻すことができる。pMID21.03をレピシエントとして使用する場合、次いでsFabを作製するためのベクターを得る。簡単に述べると、この方法工程は、
1.HC細菌にLCファージを感染させる。
【0114】
2.ファージをPEG沈殿させ、またはPEGなしで単に上清を取る。
【0115】
3.標的への結合のために選択する。
【0116】
4.LC DNAのみを有する結合ファージを採取する。
【0117】
5.HC細菌にLCファージを感染させる。
【0118】
6.LCとHCを一緒に維持するために単一のコロニーを培養するが、選択における対と同じではない。
【0119】
7.ELISAによってスクリーニングできるように、96ウェルプレートの単一のコロニーを選び取る。
【0120】
8.一晩置いたファージの上清を採取してELISAを行い、標的への結合を調べる。
【0121】
9.工程7で得られた細菌培養物(まだHC遺伝子とLC遺伝子の両方を含有する)を使用し、軽鎖と重鎖を別々に増幅し、RBS様リンカーを用いてジッピングを行う(プライマーの詳細については下記を参照されたい)。
【0122】
10.ジッピングされた抗体カセットを、ApalI−NheI PCR挿入片としてpMID21に再クローニングできるように準備する。
【0123】
この方法の概要を図15に示す。
【0124】
軽鎖と重鎖をジッピングし、pMID21ベクターへの1工程クローニングを可能にするためのプライマー:
1−重鎖遺伝子の増幅−付加RBSリンカー:
【0125】
【化1】

【0126】
ライブラリーのさまざまなメンバーが3つの配列のうち任意の1つを含有し得るので3種のプライマーを一緒に使用する。
【0127】
【化2】

【0128】
2−軽鎖遺伝子の増幅−付加RBSリンカー:
【0129】
【化3】

【0130】
ライブラリーはCラムダ2またはCラムダ7のいずれかを持つメンバーを含有するため、ラムダ型に対するプライマーは2種ある。
【0131】
3−ジッピング工程
【0132】
【化4】

【0133】
1つのクローンを選択し、ジッピングの概念を実証し、1工程反応として最適化した。図16は、ジッピングされた構築物とLC単独およびHC単独とを比較したSDS−PAGEの結果を示す。
【0134】
(実施例3)
重鎖の経済的選択(ESCH)
抗体の親和性および特異性の大部分はHC由来であり、LCは許容状態であることのみが必要であることが頻繁に指摘されてきた。したがって、実施例1に記載のROLICにおける役割を逆にすることが可能である。LCの小集団を、その分泌を引き起こすベクター内に置き、ファージにおいてHCの新規ライブラリーを樹立する。次にこれらを非常に効率的な感染方法により組み合わせることができる。有効なHCの少数のセットが選択されたら、ROLICにかけて最適なHC/LC対合を得ることができ、または有効なHCの少数のセットをそのまま使用することができる。
【0135】
ヒトの治療に使用するための抗体を選び取ることの一態様は、抗体の所望の親和性、特異性、溶解性、および安定性を分け与えるために必須ではない生殖系列配列からの逸脱を避けることを望むことである。したがって、マウス由来、またはヒト化マウス由来のファージライブラリーから選択された抗体は、「生殖系列化」される必要がある。つまり、生殖系列でないフレームワーク残基は全て生殖系列に戻し、抗体の性質への影響を試験するが、これは大変である。それゆえ、非常に有益な手法は、細胞において、全てのLCが完全に生殖系列化されたフレームワーク領域を有するようなLCライブラリーを作出することであり得る。例えば、完全に生殖系列化されたフレームワークおよび特にLC−CDR3にいくらかの多様性を有するLCのセットを現存のライブラリーから選択することができる。ベクターpLCSK24は、LC遺伝子を受容し、それらを周辺質に分泌するように調製されていることを除いて、pHCSK22と同様である。DY3F87HCは、VH−CH1遺伝子を受容し、IIIstumpに付着したそれらを提示するように準備されていることを除いて、DY3F85LCと同様である。
【0136】
(実施例4)
親和性成熟のためのROLICの使用
ROLIC法を、血漿カリクレイン(pKal)の抗体阻害剤6種に対する親和性成熟方法として用いた。簡単に述べると、この方法は、これらの抗体の6種のHCを我々の全LCレパートリーと試験することを可能にする手段を提供する。
【0137】
ROLIC法を用いて、阻害の基準および成熟させる異種間の反応性研究に基づいて6種の重鎖を選択した。6種の重鎖をpHCSK22発現ベクターにクローニングし、そのプラスミドを用いてTG1細胞を形質転換した。次にDY3F85LCベクター内に軽鎖レパートリーをクローニングすることによって創出した軽鎖含有ファージを細菌に感染させた。ファージは、LCがファージに固定されるように、M13のIII遺伝子によってコードされたタンパク質の3−膜貫通細胞内アンカードメインと融合した軽鎖を含有して集合する。これらのファージは、HC成分を含有しない。HCタンパク質は、細胞性HCライブラリーによって提供される。
【0138】
他のファージは、HCがファージに固定されるように、M13のIII遺伝子によってコードされたタンパク質の3−膜貫通細胞内アンカードメインにHCを融合させて構築した。これらのファージは、LC成分を含有しない。LCタンパク質は、細胞性LCライブラリーによって提供される。ストレプトアビジン磁気ビーズ上のビオチン化ヒトpKalタンパク質またはストレプトアビジン磁気ビーズ上のビオチン化マウスpKalタンパク質を用いて選択を下記の通り行った。
I.ヒトのみ
a.ラウンド1:ヒトタンパク質200pmol
b.ラウンド2:ヒトタンパク質100pmol
II.マウスのみ
a.ラウンド1:マウスタンパク質200pmol
b.ラウンド2:マウスタンパク質100pmol
III.ヒトおよびマウス
a.ラウンド1:ヒトタンパク質200pmol
b.ラウンド2:マウスタンパク質100pmol
pHCSK22内に6種の重鎖を含有する新鮮なTG1細胞に、ラウンド間に得られたファージ産出物を感染させた。ファージを一晩増幅させてその後の選択ラウンドに使用した。ラウンド2の最後に、6種の重鎖を含有する新しいTG1細胞にこのファージ産出物を感染させ、単一のコロニーを増殖させるために培養した。分離したコロニーを96ウェルプレート中の液体培養で一晩増殖させ、ファージを含有する上清の、ビオチン化ヒトpKalおよびビオチン化マウスpKalへの結合性を標準ELISAによって試験した。
【0139】
全部で672コロニーをELISAによって試験し、136コロニーが、マウスpKalとヒトpKalの両方に結合した。いくつかの単離株は、マウスpKalのみに結合し、他のいくつかの単離株はヒトpKalのみに結合した。これら136の両結合性の単離株の軽鎖および重鎖を個々にPCR増幅し、オーバーラッピングPCRオリゴを介して単一のDNA鎖内に一緒にジッピングし、pMID21sFab発現ベクター(遺伝子IIIを持たない)にクローニングした。配列決定分析の結果、148種の特有の軽鎖が、最初の重鎖6種のうち3種と対合した。PCRにおいていくつかの突然変異が起こり、LC−HC対の数が増長した。
【0140】
(実施例5)
LCとHCを一緒にジッピングするための代替プライマー
以下は、LCとHCを一緒に再連結するために使用することができる試薬および方法の追加例である。
・重鎖はpHCSK22ベクター由来であり得る。
・全ての重鎖は、pHCSK22ベクターの構築による雑種7シグナル配列を含有し得る。
・実際の雑種7シグナル配列:
【0141】
【化5】

【0142】
・軽鎖はDY3F85LCファージベクター由来であり得る。
・DY3F85LCベクター内には停止コドンがなく、したがって、さらにRBSに樹立し戻す必要があり得る。
・RBS配列は、ベクターの全配列に記したようにpMID21ベクターストックに含有される実際の配列に基づいて樹立し戻すことができる。
・ラムダ型定常領域オリゴは生殖系列および繊維状ファージに基づき、したがってC0プライマーである。
・LCの最後のコドンとHC SSの最初のコドンとの間の配列は、以下の通りである。
【0143】
【化6】

【0144】
・理論的な構築物を、雑種7および実際のRBSを用いてカッパ型または仮定上のラムダ型を含有して樹立した。
【0145】
ROLICで得たpMID21カッパ型ジッピング試料
ROLICで得たpMiD21ラムダ型ジッピング試料
・任意選択の工程:ジッピングする前に、軽鎖および重鎖を長い尾部なしで持ち上げ、その結果全部で3つのPCR事象がもたらされる。
・全てのオリゴヌクレオチド(ON)配列を下記の表1に示す。
・方法:
LCss(ApaLI)からLCconstまでのPCR
・G3ss.Forおよび
・Kconst Revおよび
・ラムダ型C0 Revおよび
・ラムダ型C2 Revおよび
・ラムダ型C3 Revおよび
・ラムダ型C7 Rev
HCssからNheI部位までのPCR
・HCss.Forおよび
・HC.const.rev.
LCss(ApaLI)からLC+RBS突出までのPCR
・G3ss.Forおよび
・K.RBS.Revまたは
・LC0.RBS.Rev
・LC2.RBS.Rev
・LC3.RBS.Rev
・LC7.RBS.Rev
RBS+HCssからHCconst(NheI部位)までのPCR
・HCss.RBS.Forおよび
・HC.const.rev
LCss(ApaLI)からHCconst(NheI部位)までのジッピング
・G3ss.Forおよび
・HC.const.rev
ApaLIからNheIを介したpMID21へのクローニング
【0146】
【表1】

【0147】
【表2−1】

【0148】
【表2−2】

【0149】
【表2−3】

【0150】
【表2−4】

【0151】
【表2−5】

【0152】
【表2−6】

【0153】
【表3−1】

【0154】
【表3−2】

【0155】
【表3−3】

【0156】
【表4−1】

【0157】
【表4−2】

【0158】
【表4−3】

【0159】
【表4−4】

【0160】
【表4−5】

【0161】
【表5−1】

【0162】
【表5−2】

【0163】
【表5−3】

【0164】
参考文献
本願を通して引用した参考文献、交付済み特許、公開または非公開特許出願ならびに以下に列挙したそれらを含めた、全ての引用した参考文献の内容は、その全体が参照により明示的に本明細書に組み込まれる。矛盾する場合は、本明細書における任意の定義を含め、本願が優先する。
【0165】
【数1】

【0166】
均等物
本発明の実施形態をいくつも記載した。しかし、本発明の精神と範囲から逸脱することなく種々の改変を行うことができることを理解されたい。したがって、他の実施形態も以下の特許請求の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の標的に対して親和性がある特異的結合対(SBP)メンバーを作製する方法であって、該SBPは第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖を含み、該方法は、
(i)1またはそれより多くの望ましい性質を有するように選択された該第1のポリペプチド鎖の1またはそれより多くの種類をコードする遺伝物質の集団を含む第1のベクター集団を含む宿主細胞を提供する工程であって、該第1のポリペプチド鎖が該宿主細胞から分泌される工程と、
(ii)該第2のポリペプチド鎖をコードする遺伝物質の多様な集団を含む第2のベクター集団を、該細胞に感染させる工程であって、該第2のポリペプチド鎖は、該第2のポリペプチド鎖を複製可能な遺伝子提示パッケージ(RGDP)の表面に提示させるための、分泌型RGDPの成分と融合している工程と、
(iii)該第1のポリペプチド鎖および該第2のポリペプチド鎖を該宿主細胞内で発現させて、該RGDPの表面に提示されるSBPメンバーのライブラリーを形成する工程であって、該第1のポリペプチド鎖と該第2のポリペプチド鎖とが該RGDPの表面で結合している工程と、
(iv)SBPメンバーを該所定の標的に対する結合について選択する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記第1のポリペプチド鎖が抗体の重鎖(HC)またはその抗原結合断片を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のポリペプチド鎖が抗体の軽鎖(LC)またはその抗原結合断片を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のポリペプチド鎖が抗体の軽鎖(LC)またはその抗原結合断片を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のポリペプチド鎖が抗体の重鎖(HC)またはその抗原結合断片を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のベクターがプラスミドである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のベクターがファージベクターである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第2のベクターがファージベクターである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のベクター集団が1〜1000種の異なる第1のポリペプチド鎖をコードする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第2のベクターが、10種以上の異なる第2のポリペプチド鎖の遺伝的に多様な集団をコードする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記選択する工程がELISA(酵素結合免疫吸着検定法)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記所定の標的に結合する特異的結合対メンバーを単離する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
工程(iv)から選択された前記RGDPを工程(i)の宿主細胞の新鮮な試料に感染させる工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の集団が2つ以上の亜集団に分割され、1つの亜集団から作製されるファージが、他の集団で作製されるファージから選択され別々に増殖される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
所定の標的に対して改善された親和性がある特異的結合対(SBP)メンバーを作製する方法であって、該SBPは、第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖を含み、該方法は、
(i)該ポリペプチド鎖を複製可能な遺伝子提示パッケージ(RGDP)の表面に提示させるための分泌型RGDPの成分と融合させた、該所定の標的に対して親和性を有するように選択された該第1のポリペプチド鎖の1またはそれより多くの種類をコードする核酸を含む第1のベクター集団と、
(ii)該第2のポリペプチド鎖の遺伝的に多様な集団をコードする核酸を含む第2のベクター集団と、
を宿主細胞に導入する工程であって、
該第1のベクターが感染性RGDP内にパッケージングされており、それを該第2のベクターを有する宿主細胞に感染させることにより該第1のベクターを宿主細胞に導入するか、または、
該第2のベクターが感染性RGDP内にパッケージングされており、それを該第1のベクターを有する宿主細胞に感染させることにより該第2のベクターを宿主細胞に導入する工程と、
該宿主細胞内で該第1のポリペプチド鎖および該第2のポリペプチド鎖を発現させて、RGDPによって提示される該SBPメンバーのライブラリーを形成する工程であって、該集団の少なくとも1つが、該RGDP成分を用いてパッケージング可能な核酸から発現され、それによって該RGDPのそれぞれの遺伝物質が、RGDPの表面に提示される該SBPメンバーのポリペプチド鎖をコードする工程と、
該集団のメンバーを該所定の標的に対する高親和性結合について選択する工程と
を含む方法。
【請求項16】
前記第1の集団が、2つ以上の亜集団に分割され、1つの亜集団から作製されるファージが、他の集団で作製されるファージから選択され別々に増殖される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のベクター集団が1000種以下の第1のポリペプチド鎖をコードする、請求項1または15に記載の方法。
【請求項18】
前記第1のベクター集団が100種以下の第1のポリペプチド鎖をコードする、請求項1または15に記載の方法。
【請求項19】
前記第1のベクター集団が20種以下の第1のポリペプチド鎖をコードする、請求項1または15に記載の方法。
【請求項20】
前記第1のベクター集団が10種以下の第1のポリペプチド鎖をコードする、請求項1または15に記載の方法。
【請求項21】
前記第1のベクター集団が1種の第1のポリペプチド鎖をコードする、請求項1または15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2011−511647(P2011−511647A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−546912(P2010−546912)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/034016
【国際公開番号】WO2009/102927
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(504326804)ダイアックス コーポレイション (8)
【Fターム(参考)】