説明

特許マップ作成表示装置

【課題】所定の特許情報の引用関係を機械的に作成表示してマップ上で一目で把握することができ、特許情報の分析作業の能率を高めることが可能な特許マップ作成表示装置を提供する。
【解決手段】検索式等の作成条件を入力可能な入力装置と、該入力装置で入力された作成条件に基づいて特許データベースから抽出した複数の特許情報のデータを処理して特許マップを作成するデータ処理装置と、該データ処理装置で作成された特許マップを表示可能な出力装置と、を備え、データ処理装置で作成される特許マップは、複数の特許情報間の引用関係をネットワーク形式もしくはフロー形式で表示可能であると共に、特許情報間の引用関係が拒絶理由通知、異議証拠等の引用種別に応じて識別される。また、特許マップの各特許情報は、経過情報、処分情報、書誌的事項が同時に識別表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許情報群の中から検索式等に基づき抽出した特許情報から、特許マップを作成して表示可能な特許マップ作成表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許庁から発行されるCD−ROM特許公報等の特許情報を分析する場合、所定の検索式で抽出した特許情報により特許マップを作成し、この特許マップを画面上に表示する特許マップ作成表示装置が使用されている。この特許マップ作成表示装置で作成される特許マップとしては、例えば縦軸にF1ターム、IPC等の分類を指定し、横軸に件数を指定したランキングマップや、分類と出願人を指定して件数をマトリクス状に表示するマトリクスマップ等が使用されている。なお、この種の特許文献としては、例えば特許文献1に開示のものが知られている。
【特許文献1】特開2005−165861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような特許マップにあっては、予め指定した期間内の特許出願件数等を把握できるものの、所定の特許情報群中の各特許情報(特許出願)間の、例えば引用関係を一目で把握することができない。すなわち、登録された特許情報や拒絶査定された特許情報において、その審査段階で引用された引用文献としての特許公報があるか否かを、すなわち特許情報の引用関係を確認する場合、従来の特許マップ上での把握は困難で、各特許公報自体を手作業により一々チェックして例えば図表化する必要があり、特許情報の分析作業の能率が劣ることになる。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、所定の特許情報の引用関係を機械的に作成表示してマップ上で一目で把握することができ、特許情報の分析作業の能率を高めることが可能な特許マップ作成表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、検索式等の作成条件を入力可能な入力装置と、該入力装置で入力された作成条件に基づいて特許データベースから抽出した複数の特許情報のデータを処理して特許マップを作成するデータ処理装置と、該データ処理装置で作成された特許マップを表示可能な出力装置と、を備え、前記データ処理装置で作成される特許マップは、複数の特許情報間の引用関係をネットワーク形式もしくはフロー形式で表示可能であると共に、特許情報間の拒絶理由通知、異議証拠等の引用関係が引用種別に応じて識別されていることを特徴とする。
【0006】
そして、前記特許マップの各特許情報は、請求項2に記載の発明のように、庁通知書に対する経過情報が識別表示されたり、請求項3に記載の発明のように、登録、拒絶等の処分情報もしくは出願人、分類等の書誌的事項が識別表示されることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明のうち請求項1に記載の発明によれば、データ処理装置で作成される特許マップが、複数の特許情報間の引用関係をネットワーク形式もしくはフロー形式で表示可能なマップで、各特許情報間の引用関係が引用種別に応じて識別されているため、例えば分類等に応じて抽出した特許情報群中の複数の特許情報間の引用関係を、機械的に図表化して出力装置の画面上に表示でき、各特許情報間の引用形態や拒絶理由通知時の引例か否か等の引用種別をマップ上で一目で把握することができて、特許情報の分析作業の能率を高めることができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、特許マップに各特許情報の経過情報が識別表示されるため、例えば当該特許情報が登録されたものかあるいは拒絶されたものか等を表示画面上で同時に把握することができて、特許情報の分析作業の能率を一層高めることができる。
【0009】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の発明の効果に加え、特許マップに各特許情報の処分情報や書誌的事項が識別表示されるため、例えば同一出願人や同一分類の特許情報を表示画面上に同一色で表示できる等、特許情報の分析作業の能率をより一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図7は、本発明に係わる特許マップ作成表示装置の一実施形態を示し、図1がそのブロック構成図、図2が表示画面の一例を示す図、図3〜図6がその説明図、図7が他の表示画面を示す図である。
【0011】
図1において、特許マップ作成表示装置1は、データ処理装置2と、このデータ処理装置2に接続された入力装置3、出力装置4及び記憶装置5等を有している。また、データ処理装置2には、特許データベース6がネットワーク7を介して接続され、前記出力装置4は表示器8とプリンタ9で構成されている。なお、この特許マップ作成表示装置1は、例えばパソコンによって構築され、このパソコンがネットワーク7としてのインターネット回線を介して例えば特許庁のデータベースに接続されて使用されるようになっている。
【0012】
そして、この特許マップ作成表示装置1は、記憶装置5に予め記憶されている特許マップ作成プログラムに基づいて、特許データベースの特許情報が、入力装置3で入力された検索式等の作成条件に基づいて検索(抽出)され、この抽出された各特許情報がデータ処理装置2で適宜に処理されて特許マップが作成され、この特許マップが出力装置4の表示器8に出力されて表示されたり、あるいは出力装置4のプリンタ9に出力されて印刷されるようになっている。
【0013】
図2は、この特許マップ作成表示装置1で作成された特許マップの具体的な表示状態を示しており、以下、これについて説明する。先ず、特許マップの作成表示にあたっては、前記作成プログラムに基づき表示器8上に表示される所定の入力画面によって、特許マップを作成する際に必要な各種作成条件が入力設定される。なお、特許データベース6の各特許情報には、出願人や分類等の書誌的事項、審査請求の有無、審査経過、引用文献、最終判断等のデータが記憶されており、特許マップ作成表示装置1はこれらのデータの中から、特に引用文献のデータに基づいて、図2に示すような特許マップ12を作成する。
【0014】
すなわち、特許マップ12は、引用関係を有する特許情報がセル10で表示され、この特許情報と引用関係にある特許情報のセル10とが矢印11によって連結されている。このとき、各特許情報のセル10は、図3に示すように、上段10aに出願番号(もしくは公開番号)が表示され、下段10bの複数個(図では7個)のマス目に経過情報が表示されるようになっている。なお、各特許情報を示すセル10は、例えば図2の特許情報e〜gに示すように、当該特許情報が審査請求済みで経過情報がある場合に下段10bも表示され、図2の特許情報a〜dに示すように審査未請求で経過情報がない場合、あるいは図2の特許情報h〜kに示すように後述する公報引例として使用されている場合は、上段10aのみのが表示されて下段10bは表示されないようになっている。
【0015】
そして、セル10の下段10bに表示される経過情報としては、図4に示すように、「拒絶理由通知書」「登録査定」「拒絶査定」等の庁通知書の種類に応じて所定の記号が付され、この記号が表示されるようになっている。また、経過情報の各庁通知書に対して順位がつけられており、この順位に応じてセル10の下段10bのマス目に左側から順に前記記号が表示されるようになっている。
【0016】
また、前記セル10は、セル自体が例えば処分情報によって識別化されている。すなわち、セル10の外枠が、図5に示すように、当該特許情報の現時点(特許情報分析時)における処分情報に応じて異なる線種に設定され、例えば図2の特許情報gの場合は、外枠が二重線であるため「登録」されていることを示している。このとき使用される処分情報としては、「登録」の他に「拒絶」「未確定」等が使用される。
【0017】
さらに、各特許情報間を結ぶ前記矢印11は、引用情報によって識別化されている。すなわち、図6に示すように、「異議申立(異議証拠)」で引用された引用文献の場合は二点鎖線の矢印で表示され、「拒絶理由通知書」で引用された引用文献の場合は細実線の矢印で表示され、「登録査定」で引用された引用文献は二重線の矢印で表示される。なお、点線の矢印は「公報引例(登録公報の引用文献)」であることを示している。
【0018】
そして、このような表示条件が記憶装置5内に予め記憶設定されており、抽出した特許情報のうち引用関係にある各特許情報が、データ処理装置2によりネットワーク形式で連結されて図2に示す特許マップ12が作成されて表示される。この図2の特許マップ12の場合、特許情報gは、セル10の外枠が二重線で処分が登録でかつセル10の下段10bに「◎」が表示されて登録証が発行されていることを示すと共に、二重線矢印11aで連結された2つの特許情報e、fが登録査定時の引用文献として引用され、点線矢印11cで連結された2つの特許情報j、kの公報引例となっていることを示している。
【0019】
また、特許情報fは、セル10の外枠が実線で現時点の処分が未確定で、細実線矢印11bで連結された4つの特許情報a〜dが拒絶理由通知書時に引用文献として引用され、二重線矢印11aで連結された特許情報gの登録時に引用され、点線矢印11cで連結された2つの特許情報h、iの公報引例となっていることを示している。つまり、所定の特許情報の引用関係が庁通知書の書類に応じて識別化された矢印で連結表示されると共に、各特許情報は、その外枠の線種により現時点における処分が表示され、また、各特許情報の経過情報がセル10の下段10bに識別化された状態で同時に表示されるようになっている。
【0020】
そして、上記特許マップ12の場合、画面上に表示される特許情報のセル10部分をクリックすれば、当該特許情報の公報や審査経過等が詳細に拡大表示されると共に、セル10の外枠部分に設けたセル消去ボタン10c(図3参照)をクリックすることにより、当該特許情報の表示を消去できるようになっている。また、表示器8の左端側に、例えば画面上に表示された全ての特許情報の件数を示すバーが表示されており、このバーのうち所定のバーをクリックすることにより、当該部分のデータが拡大して画面上に表示されるようになっている。
【0021】
なお、以上の説明においては、各特許情報のセル10の外枠の線種を異ならせることにより、その処分情報を表示したが、例えばセル10の外枠や全体を異なる色や模様(飾り)で表示して識別化することもできるし、経過情報の記号も色で識別化することもできる。また、各特許情報間を連結する矢印も、線種に限らず、色や飾り等で識別化して表示しても良く、要は画面上における見易さが向上し、かつ確実に識別化できる適宜の表示方法を採用することができる。
【0022】
また、以上の例においては、各特許情報の引用関係をネットワーク形式で表示したが、例えば図7に示すように、フロー形式で表示した特許マップ12とすることもできる。このフロー形式の場合も、各特許情報を示すセル10や各特許情報間を連結する矢印11は、上記ネットワーク形式と同様に設定されている。このフロー形式の特許マップ12の場合は、各特許情報間を連結する矢印11a〜11cがネットワーク形式のように交差する部分がなくなる。
【0023】
このように、上記実施形態の特許マップ作成表示装置1によれば、データ処理装置2で作成される特許マップ12が、複数の特許情報間の引用関係をネットワーク形式もしくはフロー形式で表示可能なマップであり、かつ各特許情報間の引用関係が引用情報に応じて識別化されているため、例えば分類等に応じて抽出した特許情報群中の複数の特許情報間の引用関係を、機械的に図表化して表示器8の画面上に表示することができる。
【0024】
特に、特許マップ12の各特許情報のセル10の下段10bに経過情報が記号等で識別化されて表示されることから、例えば当該特許情報が登録されたものかあるいは拒絶されたものか等を表示できると共に、各特許情報のセル10の外枠の線種等が識別化されていることから、当該特許情報の現時点における処分等も画面上に表示することができる。これらにより、各特許情報間の引用形態や拒絶理由通知時の引例か否か等の引用情報や各特許情報の処分等を特許マップ12上で一目で同時に把握することができて、特許情報の分析作業の能率を従来の手作業に比較して大幅に高めることができると共に、分析精度を向上させることもできる。
【0025】
また、特許マップ12上の各特許情報のセル10部分をクリックすることで、当該特許情報の詳細データを拡大表示したり、所定の特許情報の部分だけを拡大表示できて、引用関係を見易い状態で表示することができ、特許マップ作成表示装置1の使い勝手を向上させることができると共に、操作性に勝れた特許マップ作成表示装置1を提供することが可能となる。
【0026】
なお、上記実施形態においては、各特許情報のセル10の外枠の種別により、当該特許情報の現時点における処分を識別表示したが、例えば図5に二点鎖線で示すように、書誌的事項である「同一出願人」や「同一IPC」「同一Fターム」等の種別をセル10の外枠で表示するようにしても良く、このようにすれば、画面上から出願人の関係を一目で把握できて、特許情報のより精度良い分析や広範囲な分析が可能となる。
【0027】
また、上記実施形態においては、表示器8の画面上に各特許情報を平面的に表示したが、例えば、引用文献が複数ある場合に当該各特許情報を重ね合わせた状態で立体的に表示する等、適宜の表示方法を採用することができる。さらに、上記実施形態における、特許マップ作成表示装置1のブロック構成等も一例であって、例えばネットワークを介することなく、特許データが記憶されたCD−ROM等の記憶媒体を、特許データベースとして使用して特許マップを作成表示可能なブロック構成とする等、本発明に係わる各発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、各特許情報の引用関係が表示される特許マップであれば、ネットワーク形式やフロー形式以外の他の全ての形式の特許マップにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係わる特許マップ作成表示装置の一例を示すブロック構成図
【図2】同作成した特許マップの表示状態を示す図
【図3】同その特許情報のセルの説明図
【図4】同経過情報の説明図
【図5】同処分情報の説明図
【図6】同引用情報の説明図
【図7】同特許マップの他の表示状態を示す図
【符号の説明】
【0030】
1:特許マップ作成表示装置、2:データ処理装置、3:入力装置、4:出力装置、5:記憶装置、6:特許データベース、7:ネットワーク、8:表示器、9:プリンタ、10:セル、10a:上段、10b:下段、10c:セル消去ボタン、11、11a〜11c:矢印、12:特許マップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検索式等の作成条件を入力可能な入力装置と、該入力装置で入力された作成条件に基づいて特許データベースから抽出した複数の特許情報のデータを処理して特許マップを作成するデータ処理装置と、該データ処理装置で作成された特許マップを表示可能な出力装置と、を備え、
前記データ処理装置で作成される特許マップは、複数の特許情報間の引用関係をネットワーク形式もしくはフロー形式で表示可能であると共に、特許情報間の引用関係が拒絶理由通知、異議証拠等の引用種別に応じて識別されていることを特徴とする特許マップ作成表示装置。
【請求項2】
前記特許マップの各特許情報は、庁通知書に対する経過情報が識別表示されることを特徴とする請求項1に記載の特許マップ作成表示装置。
【請求項3】
前記特許マップの各特許情報は、登録、拒絶等の処分情報もしくは出願人、分類等の書誌的事項が識別表示されることを特徴とする請求項1または2に記載の特許マップ作成表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−108467(P2010−108467A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305489(P2008−305489)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(598051277)インパテック株式会社 (9)
【Fターム(参考)】