独立ポット耕栽培用ベンチ並びに栽培ポット
【課題】栽培ポットを納めた栽培トレイを簡単かつ確実に収納保持することができ、かつ排水用樋の設置が容易な独立ポット耕栽培用ベンチ並びに栽培ポットを提供する。
【解決手段】ベンチ本体21は下方に向かって開口する断面略コ字型をなし、その上面には長手方向に渡って多数のトレイ保持口22が設けられ、該ベンチ本体21下端両側には長手方向に渡って連続して被係止部23が設けられており、前記栽培トレイ13をトレイ保持口22を通して該ベンチ本体21内に配置したとき、前記栽培トレイ13のフランジ部13aが前記トレイ保持口22周縁に当接して前記栽培トレイ13が収納保持されると共に、前記被係止部23に排水用樋24を吊り下げる吊下具25を引っ掛けることで、前記排水用樋24をベンチ本体21の下側に吊り下げるようにしたことを特徴とする。
【解決手段】ベンチ本体21は下方に向かって開口する断面略コ字型をなし、その上面には長手方向に渡って多数のトレイ保持口22が設けられ、該ベンチ本体21下端両側には長手方向に渡って連続して被係止部23が設けられており、前記栽培トレイ13をトレイ保持口22を通して該ベンチ本体21内に配置したとき、前記栽培トレイ13のフランジ部13aが前記トレイ保持口22周縁に当接して前記栽培トレイ13が収納保持されると共に、前記被係止部23に排水用樋24を吊り下げる吊下具25を引っ掛けることで、前記排水用樋24をベンチ本体21の下側に吊り下げるようにしたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培ポットを納めた栽培トレイを簡単かつ確実に収納保持することができ、かつ排水用樋の設置が容易な独立ポット耕栽培用ベンチ並びに栽培ポットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、土壌病害の進入、伝搬を抑制し、作業姿勢の改善を図ることができる栽培システムとして、ベンチ上で1株毎に根域、給液及び排液を独立させたポットで栽培する少量培地の栽培システムを利用した独立ポット耕栽培が行われている(非特許文献1参照)。
【0003】
この栽培システムは、栽培ベンチ、培養液管理装置、給液制御装置から構成される。培養液は、植物の種類及び育成過程に応じた処方で濃度管理を要するため、培養液管理装置には、濃縮液タンク、培養液タンク、液肥混入器などが必要とされる。培養液は、給液制御装置により栽培ベンチに供給される。1株当たりの培地量が大凡1.2lと少ないため、少量多回数の給液が行われる。また、給液制御装置により、無駄な給液及び培地の過湿を防ぐため、排液量を探知し、その排液量に応じて給液を自動的に止めるという制御が行われる。また、排液は、ハウス内の湿度が高くならないようにするため、回収され、ハウス外へ排出される。
【0004】
上記独立ポット耕栽培に用いる栽培ベンチ1は、図14に示すように、培地を充填したポット2を入れた栽培トレイ3を用い、この栽培トレイ3上縁の径に対応する間隔(おおよそ20cm)に水平状に2本の丸パイプ4、4を配置し、次いで、水平状に配置した2本の丸パイプ4、4に跨るように丸パイプ5、5を組み付けると共に2本の丸パイプ4、4の長手方向に所定間隔に垂直状に丸パイプ6、6を(2本の丸パイプ4、4の高さがおおよそ50cmとなる程度に)組み付けることで製作される。
【0005】
作製された栽培ベンチ1の水平状の2本の丸パイプ4、4間に栽培トレイ3が架けられ、栽培トレイ3の下側には、排水用樋7が前記2本の丸パイプ4、4にワイヤー8で吊り下げられるようになっている。
【0006】
栽培ベンチ1の水平状に配された2本の丸パイプ4、4間には、培養液を供給する給液管(図示しない)が配され、該2本の丸パイプ4、4間に架けられた各栽培トレイ3に培養液が点滴チューブ(図示しない)を介して給液されるようになっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】トマトの独立ポット耕栽培システムの開発 2008年9月発行 園芸学研究 Vol 7 別冊2 p526〜
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の独立ポット耕栽培システムに用いる栽培ベンチ1にあっては、栽培ベンチ1の水平状の2本の丸パイプ4、4間に栽培トレイ3を架けることで該栽培トレイ3の設置ができ、設置作業が簡単で手間がかからないというメリットがある反面、栽培トレイ3は2本の丸パイプ4、4上に乗っかっているだけであることから不安定であり、また、栽培ベンチ1を製作する際に、栽培トレイ3上縁の径に対応する間隔よりも2本の丸パイプ4、4の間隔が広くなってしまうことがあり、この場合、栽培トレイ3が架けられないなどの不具合が生じることもあった。
【0009】
本発明は、独立ポット耕栽培システムに用いられている栽培ベンチをさらに改良したものであり、栽培ポットを納めた栽培トレイを簡単かつ確実に収納保持することができ、かつ排水用樋の設置が容易な独立ポット耕栽培用ベンチ並びに栽培ポットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、根域を制限した独立培地で1株毎に植物を栽培する栽培ポットを収納保持する独立ポット耕栽培用ベンチであって、
該ベンチ本体に収納保持される栽培ポットは該栽培ポットを収納する収納口周囲にフランジ部を設けた栽培トレイ内に収納されており、
前記ベンチ本体は下方に向かって開口する断面略コ字型をなし、その上面には長手方向に渡って多数のトレイ保持口が設けられ、該ベンチ本体下端両側には長手方向に渡って連続して被係止部が設けられており、
前記栽培トレイをトレイ保持口を通して該ベンチ本体内に配置したとき、前記栽培トレイのフランジ部が前記トレイ保持口周縁に当接して前記栽培トレイが収納保持されると共に、前記被係止部に排水用樋を吊り下げる吊下具を引っ掛けることで、前記排水用樋をベンチ本体の下側に吊り下げるようにしたことを特徴とする独立ポット耕栽培用ベンチをその要旨とした。
【0011】
請求項2記載の発明は、ベンチ本体下端両側に長手方向に渡って連続して設けた被係止部に地上に立設した支持フレームに繋がる吊り下げワイヤーを引っ掛けることで、ベンチ本体が吊り下げ状態に支持されるようにしたことを特徴とする独立ポット耕栽培用ベンチをその要旨とした。
【0012】
請求項3記載の発明は、支持フレームからの吊り下げワイヤーの長さを調節可能とすることで、ベンチ本体の高さ位置を調節できるようにしたことを特徴とする独立ポット耕栽培用ベンチをその要旨とした。
【0013】
請求項4記載の発明は、ベンチ本体がスタンドによって地面から立設状態に支持されるようにしたことを特徴とする独立ポット耕栽培用ベンチをその要旨とした。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の独立ポット耕栽培用ベンチによって収納保持される栽培ポットであって、不織布製ポットに培地を入れることで根域を制限した独立培地が構成されており、収納口周囲にフランジ部を設けた栽培トレイ内に収納されていることを特徴とする栽培ポットをその要旨とした。
【発明の効果】
【0015】
本発明の独立ポット耕栽培用ベンチにあっては、ベンチ本体に収納保持される栽培ポットが該栽培ポットを収納する収納口周囲にフランジ部を設けた栽培トレイ内に収納されており、ベンチ本体は下方に向かって開口する断面略コ字型をなし、その上面に長手方向に渡って多数のトレイ保持口が設けられており、
前記栽培トレイをトレイ保持口を通して該ベンチ本体内に配置したとき、前記栽培トレイのフランジ部が前記トレイ保持口周縁に当接して前記栽培トレイが収納保持されるようにしたので、栽培ポットを納めた栽培トレイを簡単かつ確実に収納保持することができる。
【0016】
また、本発明の独立ポット耕栽培用ベンチにあっては、該ベンチ本体下端両側に長手方向に渡って連続して被係止部が設けられており、前記被係止部に排水用樋を吊り下げる吊下具を引っ掛けることで、前記排水用樋をベンチ本体の下側に吊り下げるようにしたので、排水用樋の設置がきわめて容易である。被係止部がベンチ本体下端両側に長手方向に渡って連続して設けられているので、ベンチ本体の長手方向に渡るいずれの箇所にも排水用樋の設置が可能である。
【0017】
また、本発明の独立ポット耕栽培用ベンチは、ベンチ本体下端両側に長手方向に渡って連続して設けた被係止部を利用して、地上に立設した支持フレームに繋がる吊り下げワイヤーを前記被係止部に引っ掛けることで、該ベンチ本体が吊り下げ状態に支持されるようにすることができ、収穫時等の作業者の十分な足場を確保することができる。また、支持フレームからの吊り下げワイヤーを手動により或いはモーターなどによって巻き取り或いは巻き出し可能として長さ調節可能とすることで、ベンチ本体の高さ位置を調節することもでき、この場合、収穫作業等で腰を屈めたり、梯子を架けたりする必要がなく、作業効率を一層高めることができる。
【0018】
また、本発明の独立ポット耕栽培用ベンチは、ベンチ本体がスタンドによって地面から立設状態に支持されるようにすることもできる。この場合、長さ調節可能なスタンドを使用すれば、収穫作業時における作業位置をスタンドに長さ調節可能な範囲で調節することができ、腰を屈めたりする必要がなく、作業効率を一層高めることができる。
【0019】
本発明の栽培ポットにあっては、不織布製ポットに培地を入れることで根域を制限した独立培地が構成されており、収納口周囲にフランジ部を設けた栽培トレイ内に収納されていることから、請求項1〜4のいずれかに記載の独立ポット耕栽培用ベンチに適用し、栽培トレイをベンチ本体のトレイ保持口を通して該ベンチ本体内に配置したとき、前記栽培トレイのフランジ部が前記トレイ保持口周縁に当接して前記栽培トレイが収納保持されるので、該栽培ポットが簡単かつ確実に収納保持される。また、本発明の栽培ポットには、不織布製ポットに予め固化培地を入れておかれたものを用いることもでき、この場合、培地設置作業がより簡略化できるというメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の独立ポット耕栽培用ベンチの一例を示し、地上に立設した支持フレームに繋がる吊り下げワイヤーを引っ掛けることで、ベンチ本体が吊り下げ状態に支持されている状態を示した正面図。
【図2】同じく側面図。
【図3】図1に示す独立ポット耕栽培用ベンチによって収納保持される栽培ポットの拡大斜視図。
【図4】図1に示す独立ポット耕栽培用ベンチの要部を示す拡大正面図。
【図5】図1に示す独立ポット耕栽培用ベンチの要部を示す拡大平面図。
【図6】図1に示す独立ポット耕栽培用ベンチの下端両側に設けた被係止部に排水用樋を吊り下げる吊下具を引っ掛けた状態を示す要部拡大断面図。
【図7】図1に示す独立ポット耕栽培用ベンチの下端両側に設けた被係止部に吊り下げワイヤーを引っ掛けた状態を示す要部拡大断面図。
【図8】本発明の独立ポット耕栽培用ベンチの別例を示し、スタンドによってベンチ本体が地面から立設状態に支持されている状態を示す正面図。
【図9】同じく側面図。
【図10】図8に示す独立ポット耕栽培用ベンチの要部を示す拡大正面図。
【図11】図8に示す独立ポット耕栽培用ベンチの要部拡大断面図。
【図12】スタンドによってベンチ本体が地面から立設状態に支持されるようにした別例を示す拡大正面図。
【図13】同じく要部拡大断面図。
【図14】従来の独立ポット耕栽培用ベンチを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図1〜図13に従って、本発明の独立ポット耕栽培用ベンチ並びに栽培ポットを更に詳しく説明する。本発明の独立ポット耕栽培用ベンチ(以下、単にベンチという)は、ベンチ上で1株毎に根域、給液及び排液を独立させたポットで栽培する少量培地の栽培システムを利用した独立ポット耕栽培(以下、独立ポット耕という)に用いるものである。
【0022】
本発明のベンチを用いる独立ポット耕は、ベンチの他に、培養液管理装置、給液制御装置から構成されるシステムを利用するものである。培養液は、植物の種類に応じた処方で濃度管理を必要とするため、培養液管理装置には、例えば濃縮液タンク、培養液タンク、希釈倍率が設定可能な液肥混入器、携帯用ECメーターなどが設備されている。給液制御装置によって培養液がベンチに供給されるのであるが、1株当たりの培地量が大凡0.5〜2.0リットルと少ないため、少量多回数の給液が所定時間毎(例えば15分〜180分毎)に行われるようになっている。尚、給液間隔及び給液量は、植物の種類や培地量の多少によって異なるため、これらを勘案して適宜決定するとよい。また給液制御装置により、無駄な給液及び培地の過湿を防ぐため、排液量を探知して、その排液量に応じて給液を自動的に止めるよう制御されている。また、少量培地のために、何らかの原因で給液が止まった場合、季節によっては植物に障害が生じる恐れがある。このため、給液が止まった場合、警報を鳴らしたり、別の給液手段によって給液ができるようにするのが望ましい。排液は、ハウス内の湿度が高くならないようにするため、回収され、ハウス外へ排出されるか、殺菌、濾過後給液タンクに戻されるようになっている。
【0023】
上記独立ポット耕に用いる本発明のベンチは、根域を制限した独立培地で1株毎に植物を栽培する栽培ポットを収納保持するものである。本発明の栽培ポット10は、図3に示すように、ポット11に培地12を入れることで根域を制限した独立培地が構成されている。培地12を構成する培地としては、無肥料培地、有肥料培地、有機培地、無機培地、或いは固化培地、非固化培地など特に限定されない。図3に示す例では、培地として有肥料の有機培地を用い、この培地を培地量が0.5〜2.0リットルの範囲のサイコロ状に固化した固化培地12を用い、この固化培地12に1株のトマトAを植え付けた。
【0024】
培地12を入れるポット11としては、防根性及び排水性を有するものであれば特に限定されないが、防根性及び排水性が良好であり、かつ成形が容易であることから不織布製ポットが好ましい。図3に示す例では、固化培地12の形状及び大きさに対応して四角状底面を有する袋状に成形した不織布製ポットを用いた。尚、図示の例では、サイコロ状に固化した固化培地12を用い、これを四角状底面を有する袋状に成形した不織布製ポット11に入れた栽培ポット10を採用したが、これに限らず、例えば半球状、略円錐状、円筒状、長板状などの形状のポットとし、これに培地を入れるなど、栽培ポット10を構成するポット11の形状、大きさは、任意であり、栽培する植物の種類や大きさに合わせて適宜決定するとよい。
【0025】
上記のとおりポット11内に培地12を入れた栽培ポット10が図3に示すように栽培トレイ13内に収納されている。栽培トレイ13は、栽培ポット10の外形に対応して設けたプラスチック製の籠であり、栽培ポット10を収納する収納口周囲にはフランジ部13aが設けられている。尚、栽培ポット10を納める栽培トレイ13についても、半球状、略円錐状、円筒状、長板状など、栽培ポット10の形状、大きさに合わせて自由に設定できる。
【0026】
図1〜図7に示すように本発明のベンチは、栽培ポット10が栽培トレイ13内に収納された状態でベンチ本体21内に配置されるようになっているのである。ベンチ本体21は、下方に向かって開口する断面略コ字型をなす板状体であり、そのような板状体は、例えば鉄、アルミなどの金属板やワイヤーメッシュを折り加工することで、或いはプラスチックを押出成形することで作製することができる。尚、ベンチ本体21には、軽量化を目的として多数の孔を設けた穴あきの金属板を折り加工したものを用いることもできる。
【0027】
このベンチ本体21の上面には長手方向に渡って多数のトレイ保持口22が設けられている。図5に示すようにトレイ保持口22は栽培ポット10を納めた栽培トレイ13の形状に対応して四角状をなしており、フランジ部13aよりも小さく、かつ栽培トレイ13が該トレイ保持口22を通してベンチ本体21内に収納される大きさに設けられている。このため、栽培トレイ13をトレイ保持口22を通して該ベンチ本体21内に配置したとき、前記栽培トレイ13のフランジ部13aが前記トレイ保持口22周縁に当接し、これにより前記栽培トレイ13が収納保持されるようになっている。尚、トレイ保持口22の大きさ、形状は任意であり、栽培ポット10を納める栽培トレイ13の形状、大きさに合わせて○状、四角状、長方状など適宜決定するとよい。
【0028】
ベンチ本体21の下端両側には長手方向に渡って連続して被係止部23が設けられている。図4、図6及び図7に示すように、被係止部23は、ベンチ本体21の下端両側に該ベンチ本体21の内方に向かって設けた略L型をなす折り曲げ片である。この被係止部23はベンチ本体21と別体に設けてもよいが、図示の例では、該ベンチ本体21の製作時に、例えば鉄、アルミなどの金属板を折り加工することで、或いはプラスチックを押し出し成形することで、一体に作製した。
【0029】
この被係止部を利用して排水用樋を吊り下げたり、地上に立設した支持フレームから吊り下げたりすることができる。図4及び図6には被係止部23を利用して排水用樋24を吊り下げた例が示されている。図4及び図6に示す例では、ベンチ本体21の長さに対応する長さを有する排水用樋24を内包し、上端にベンチ本体21の被係止部23に掛着するフック部25aを有する吊下具25を用い、この吊下具25の各上端に設けたフック部25aをベンチ本体21の被係止部23に引っ掛けることで、前記排水用樋24をベンチ本体23の下側に吊り下げている。
【0030】
被係止部23はベンチ本体23下端両側に長手方向に渡って連続して設けられているので、排水用樋24の設置に際し、該ベンチ本体21の長手方向に渡るいずれの箇所にも設置が可能であるという利点がある。また、その吊り下げ作業もベンチ本体23下端両側に長手方向に渡って連続して設けられている被係止部23に排水用樋24を内包する吊下具25のフック部25aを引っ掛けるという簡単な操作で行うことができ、排水用樋の設置がきわめて容易である。
【0031】
図1、図2、図4及び図7は、ベンチ本体21下端両側に長手方向に渡って連続して設けた被係止部23を利用して、地上に立設した支持フレーム26からベンチ本体21を吊り下げた例を示すものである。図1、図2、図4及び図7に示すように、地上に立設した支持フレーム26には、所定の間隔に吊り下げワイヤー27が繋がっており、この吊り下げワイヤー27の先端に設けたフック部27aをベンチ本体21下端両側に長手方向に渡って連続して設けた被係止部23に引っ掛けることで、該ベンチ本体21が吊り下げ状態に支持されるようになっている。また、被係止部23がベンチ本体21下端両側に長手方向に渡って連続して設けられていることから、ベンチ本体21を吊り下げ作業に際し、該ベンチ本体21の長手方向に渡るいずれの箇所にも吊り下げワイヤー27先端のフック部27aを引っ掛けることができ、ワイヤー27の取り付け位置を選ばないという利点がある。
【0032】
地上に立設した支持フレーム26に繋がる吊り下げワイヤー27は、手動により或いはモーターなどによって巻き取り或いは巻き出し可能として長さ調節可能とすることができる。この場合、ベンチ本体21の高さ位置を適宜調節することができ、このため、収穫作業等で腰を屈めたり、梯子を架けたりする必要がなく、作業効率を一層高めることができる。
【0033】
また、図4、図6及び図7に示すように、ベンチ本体21の一方下端側には培養液を供給する給液管28が長手方向に渡って配されており、この給液管28に所定間隔に取り付けた点滴チューブ29を介して培養液が栽培トレイ13内に収納された栽培ポット10に給液されるようになっている。尚、図示の例では、ベンチ本体の一方下端側に給液管を配したが、ベンチ本体上面に配置することもできる。
【0034】
次に、本発明のベンチの別例を図8〜図13に従って説明する。図8−図13に示すベンチは、図1〜図7に示す地上に立設した支持フレーム26に繋がる吊り下げワイヤー27でベンチ本体21を支持フレーム26から吊り下げるのに代えて、スタンド30によってベンチ本体21を地面から立設状態に支持した例を示すものである。図8−図13に示すベンチは、支持フレームを使用して構築された大規模なハウスに比べて、狭小なハウスに好ましく用いることができるものである。尚、この例では、支持フレーム26からの吊り下げワイヤー27に代えてスタンド30を用いた以外、図1〜図7に示す形態と同じであるため、ここでの説明は割愛する。尚、スタンドは、ベンチ本体を地面から立設状態に支持するものであれば、その構造、材質、形状などは自由であり、図示のものに限定されるものではない。
【0035】
図10及び図11に示すスタンド30は所定長さ(たとえば40〜100cm)を有する鉄棒からなり、ベンチ本体21両側上面にボルト締めにより固定される取付具31を用いて取り付けられている。取付具31はベンチ本体21両側上面にボルト締めにより固定される固定部31aと、固定部31aから延びる挟持部31bと、スタンド30上端を鋏んで前記挟持部31bに当接し、ボルト締めにより固定される挟持板31cとからなるものである。
【0036】
このスタンド30は、図10及び図11に示す例のように、スタンド30下端に螺子溝を形成し、これに螺合する螺子溝を形成した脚部32に螺着することにより、スタンド30の長さを調節可能としたものである。このようなスタンドを使用すれば、収穫作業時における作業位置をスタンドに長さ調節可能な範囲で調節することができ、腰を屈めたりする必要がなく、作業効率を一層高めることができる。また、脚部32地面側は、地面に当接する当接プレート33に回動可能に枢着されており、地面が傾斜していても、垂直状にスタンド30を立設できるようになっている。
【0037】
図12−図13に示すベンチは、地面に設置される基板41と、基板41上に固定され、所定間隔、少なくともベンチ本体21の幅よりも長い間隔に立設される一対の螺子棒からなるスタンド42、42と、各スタンド42、42上端部分に跨るように所定高さ(例えば40〜100cm)にナット44で止め付けて固定される支持板43とからなるスタンド40を用い、このスタンド40をベンチ本体21の長さ方向に所定間隔を置いて配置し、それらのスタンド40の支持板43上面にベンチ本体21を載置することで、該ベンチ本体21が地面から立設状態に支持されるようにしたものである。
【0038】
尚、本発明のベンチ及び栽培ポットは、図面に示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲で自由に変更して使用することができる。
【符号の説明】
【0039】
10・・・栽培ポット
11・・・ポット
12・・・培地
13・・・栽培トレイ
13a・・・フランジ部
12・・・ベンチ本体
22・・・トレイ保持口
23・・・被係止部
24・・・排水用樋
25・・・吊下具
25a・・・フック部
26・・・支持フレーム
27・・・吊り下げワイヤー
27a・・・フック部
28・・・給液管
29・・・点滴チューブ
30、40・・・スタンド
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培ポットを納めた栽培トレイを簡単かつ確実に収納保持することができ、かつ排水用樋の設置が容易な独立ポット耕栽培用ベンチ並びに栽培ポットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、土壌病害の進入、伝搬を抑制し、作業姿勢の改善を図ることができる栽培システムとして、ベンチ上で1株毎に根域、給液及び排液を独立させたポットで栽培する少量培地の栽培システムを利用した独立ポット耕栽培が行われている(非特許文献1参照)。
【0003】
この栽培システムは、栽培ベンチ、培養液管理装置、給液制御装置から構成される。培養液は、植物の種類及び育成過程に応じた処方で濃度管理を要するため、培養液管理装置には、濃縮液タンク、培養液タンク、液肥混入器などが必要とされる。培養液は、給液制御装置により栽培ベンチに供給される。1株当たりの培地量が大凡1.2lと少ないため、少量多回数の給液が行われる。また、給液制御装置により、無駄な給液及び培地の過湿を防ぐため、排液量を探知し、その排液量に応じて給液を自動的に止めるという制御が行われる。また、排液は、ハウス内の湿度が高くならないようにするため、回収され、ハウス外へ排出される。
【0004】
上記独立ポット耕栽培に用いる栽培ベンチ1は、図14に示すように、培地を充填したポット2を入れた栽培トレイ3を用い、この栽培トレイ3上縁の径に対応する間隔(おおよそ20cm)に水平状に2本の丸パイプ4、4を配置し、次いで、水平状に配置した2本の丸パイプ4、4に跨るように丸パイプ5、5を組み付けると共に2本の丸パイプ4、4の長手方向に所定間隔に垂直状に丸パイプ6、6を(2本の丸パイプ4、4の高さがおおよそ50cmとなる程度に)組み付けることで製作される。
【0005】
作製された栽培ベンチ1の水平状の2本の丸パイプ4、4間に栽培トレイ3が架けられ、栽培トレイ3の下側には、排水用樋7が前記2本の丸パイプ4、4にワイヤー8で吊り下げられるようになっている。
【0006】
栽培ベンチ1の水平状に配された2本の丸パイプ4、4間には、培養液を供給する給液管(図示しない)が配され、該2本の丸パイプ4、4間に架けられた各栽培トレイ3に培養液が点滴チューブ(図示しない)を介して給液されるようになっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】トマトの独立ポット耕栽培システムの開発 2008年9月発行 園芸学研究 Vol 7 別冊2 p526〜
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の独立ポット耕栽培システムに用いる栽培ベンチ1にあっては、栽培ベンチ1の水平状の2本の丸パイプ4、4間に栽培トレイ3を架けることで該栽培トレイ3の設置ができ、設置作業が簡単で手間がかからないというメリットがある反面、栽培トレイ3は2本の丸パイプ4、4上に乗っかっているだけであることから不安定であり、また、栽培ベンチ1を製作する際に、栽培トレイ3上縁の径に対応する間隔よりも2本の丸パイプ4、4の間隔が広くなってしまうことがあり、この場合、栽培トレイ3が架けられないなどの不具合が生じることもあった。
【0009】
本発明は、独立ポット耕栽培システムに用いられている栽培ベンチをさらに改良したものであり、栽培ポットを納めた栽培トレイを簡単かつ確実に収納保持することができ、かつ排水用樋の設置が容易な独立ポット耕栽培用ベンチ並びに栽培ポットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、根域を制限した独立培地で1株毎に植物を栽培する栽培ポットを収納保持する独立ポット耕栽培用ベンチであって、
該ベンチ本体に収納保持される栽培ポットは該栽培ポットを収納する収納口周囲にフランジ部を設けた栽培トレイ内に収納されており、
前記ベンチ本体は下方に向かって開口する断面略コ字型をなし、その上面には長手方向に渡って多数のトレイ保持口が設けられ、該ベンチ本体下端両側には長手方向に渡って連続して被係止部が設けられており、
前記栽培トレイをトレイ保持口を通して該ベンチ本体内に配置したとき、前記栽培トレイのフランジ部が前記トレイ保持口周縁に当接して前記栽培トレイが収納保持されると共に、前記被係止部に排水用樋を吊り下げる吊下具を引っ掛けることで、前記排水用樋をベンチ本体の下側に吊り下げるようにしたことを特徴とする独立ポット耕栽培用ベンチをその要旨とした。
【0011】
請求項2記載の発明は、ベンチ本体下端両側に長手方向に渡って連続して設けた被係止部に地上に立設した支持フレームに繋がる吊り下げワイヤーを引っ掛けることで、ベンチ本体が吊り下げ状態に支持されるようにしたことを特徴とする独立ポット耕栽培用ベンチをその要旨とした。
【0012】
請求項3記載の発明は、支持フレームからの吊り下げワイヤーの長さを調節可能とすることで、ベンチ本体の高さ位置を調節できるようにしたことを特徴とする独立ポット耕栽培用ベンチをその要旨とした。
【0013】
請求項4記載の発明は、ベンチ本体がスタンドによって地面から立設状態に支持されるようにしたことを特徴とする独立ポット耕栽培用ベンチをその要旨とした。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の独立ポット耕栽培用ベンチによって収納保持される栽培ポットであって、不織布製ポットに培地を入れることで根域を制限した独立培地が構成されており、収納口周囲にフランジ部を設けた栽培トレイ内に収納されていることを特徴とする栽培ポットをその要旨とした。
【発明の効果】
【0015】
本発明の独立ポット耕栽培用ベンチにあっては、ベンチ本体に収納保持される栽培ポットが該栽培ポットを収納する収納口周囲にフランジ部を設けた栽培トレイ内に収納されており、ベンチ本体は下方に向かって開口する断面略コ字型をなし、その上面に長手方向に渡って多数のトレイ保持口が設けられており、
前記栽培トレイをトレイ保持口を通して該ベンチ本体内に配置したとき、前記栽培トレイのフランジ部が前記トレイ保持口周縁に当接して前記栽培トレイが収納保持されるようにしたので、栽培ポットを納めた栽培トレイを簡単かつ確実に収納保持することができる。
【0016】
また、本発明の独立ポット耕栽培用ベンチにあっては、該ベンチ本体下端両側に長手方向に渡って連続して被係止部が設けられており、前記被係止部に排水用樋を吊り下げる吊下具を引っ掛けることで、前記排水用樋をベンチ本体の下側に吊り下げるようにしたので、排水用樋の設置がきわめて容易である。被係止部がベンチ本体下端両側に長手方向に渡って連続して設けられているので、ベンチ本体の長手方向に渡るいずれの箇所にも排水用樋の設置が可能である。
【0017】
また、本発明の独立ポット耕栽培用ベンチは、ベンチ本体下端両側に長手方向に渡って連続して設けた被係止部を利用して、地上に立設した支持フレームに繋がる吊り下げワイヤーを前記被係止部に引っ掛けることで、該ベンチ本体が吊り下げ状態に支持されるようにすることができ、収穫時等の作業者の十分な足場を確保することができる。また、支持フレームからの吊り下げワイヤーを手動により或いはモーターなどによって巻き取り或いは巻き出し可能として長さ調節可能とすることで、ベンチ本体の高さ位置を調節することもでき、この場合、収穫作業等で腰を屈めたり、梯子を架けたりする必要がなく、作業効率を一層高めることができる。
【0018】
また、本発明の独立ポット耕栽培用ベンチは、ベンチ本体がスタンドによって地面から立設状態に支持されるようにすることもできる。この場合、長さ調節可能なスタンドを使用すれば、収穫作業時における作業位置をスタンドに長さ調節可能な範囲で調節することができ、腰を屈めたりする必要がなく、作業効率を一層高めることができる。
【0019】
本発明の栽培ポットにあっては、不織布製ポットに培地を入れることで根域を制限した独立培地が構成されており、収納口周囲にフランジ部を設けた栽培トレイ内に収納されていることから、請求項1〜4のいずれかに記載の独立ポット耕栽培用ベンチに適用し、栽培トレイをベンチ本体のトレイ保持口を通して該ベンチ本体内に配置したとき、前記栽培トレイのフランジ部が前記トレイ保持口周縁に当接して前記栽培トレイが収納保持されるので、該栽培ポットが簡単かつ確実に収納保持される。また、本発明の栽培ポットには、不織布製ポットに予め固化培地を入れておかれたものを用いることもでき、この場合、培地設置作業がより簡略化できるというメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の独立ポット耕栽培用ベンチの一例を示し、地上に立設した支持フレームに繋がる吊り下げワイヤーを引っ掛けることで、ベンチ本体が吊り下げ状態に支持されている状態を示した正面図。
【図2】同じく側面図。
【図3】図1に示す独立ポット耕栽培用ベンチによって収納保持される栽培ポットの拡大斜視図。
【図4】図1に示す独立ポット耕栽培用ベンチの要部を示す拡大正面図。
【図5】図1に示す独立ポット耕栽培用ベンチの要部を示す拡大平面図。
【図6】図1に示す独立ポット耕栽培用ベンチの下端両側に設けた被係止部に排水用樋を吊り下げる吊下具を引っ掛けた状態を示す要部拡大断面図。
【図7】図1に示す独立ポット耕栽培用ベンチの下端両側に設けた被係止部に吊り下げワイヤーを引っ掛けた状態を示す要部拡大断面図。
【図8】本発明の独立ポット耕栽培用ベンチの別例を示し、スタンドによってベンチ本体が地面から立設状態に支持されている状態を示す正面図。
【図9】同じく側面図。
【図10】図8に示す独立ポット耕栽培用ベンチの要部を示す拡大正面図。
【図11】図8に示す独立ポット耕栽培用ベンチの要部拡大断面図。
【図12】スタンドによってベンチ本体が地面から立設状態に支持されるようにした別例を示す拡大正面図。
【図13】同じく要部拡大断面図。
【図14】従来の独立ポット耕栽培用ベンチを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図1〜図13に従って、本発明の独立ポット耕栽培用ベンチ並びに栽培ポットを更に詳しく説明する。本発明の独立ポット耕栽培用ベンチ(以下、単にベンチという)は、ベンチ上で1株毎に根域、給液及び排液を独立させたポットで栽培する少量培地の栽培システムを利用した独立ポット耕栽培(以下、独立ポット耕という)に用いるものである。
【0022】
本発明のベンチを用いる独立ポット耕は、ベンチの他に、培養液管理装置、給液制御装置から構成されるシステムを利用するものである。培養液は、植物の種類に応じた処方で濃度管理を必要とするため、培養液管理装置には、例えば濃縮液タンク、培養液タンク、希釈倍率が設定可能な液肥混入器、携帯用ECメーターなどが設備されている。給液制御装置によって培養液がベンチに供給されるのであるが、1株当たりの培地量が大凡0.5〜2.0リットルと少ないため、少量多回数の給液が所定時間毎(例えば15分〜180分毎)に行われるようになっている。尚、給液間隔及び給液量は、植物の種類や培地量の多少によって異なるため、これらを勘案して適宜決定するとよい。また給液制御装置により、無駄な給液及び培地の過湿を防ぐため、排液量を探知して、その排液量に応じて給液を自動的に止めるよう制御されている。また、少量培地のために、何らかの原因で給液が止まった場合、季節によっては植物に障害が生じる恐れがある。このため、給液が止まった場合、警報を鳴らしたり、別の給液手段によって給液ができるようにするのが望ましい。排液は、ハウス内の湿度が高くならないようにするため、回収され、ハウス外へ排出されるか、殺菌、濾過後給液タンクに戻されるようになっている。
【0023】
上記独立ポット耕に用いる本発明のベンチは、根域を制限した独立培地で1株毎に植物を栽培する栽培ポットを収納保持するものである。本発明の栽培ポット10は、図3に示すように、ポット11に培地12を入れることで根域を制限した独立培地が構成されている。培地12を構成する培地としては、無肥料培地、有肥料培地、有機培地、無機培地、或いは固化培地、非固化培地など特に限定されない。図3に示す例では、培地として有肥料の有機培地を用い、この培地を培地量が0.5〜2.0リットルの範囲のサイコロ状に固化した固化培地12を用い、この固化培地12に1株のトマトAを植え付けた。
【0024】
培地12を入れるポット11としては、防根性及び排水性を有するものであれば特に限定されないが、防根性及び排水性が良好であり、かつ成形が容易であることから不織布製ポットが好ましい。図3に示す例では、固化培地12の形状及び大きさに対応して四角状底面を有する袋状に成形した不織布製ポットを用いた。尚、図示の例では、サイコロ状に固化した固化培地12を用い、これを四角状底面を有する袋状に成形した不織布製ポット11に入れた栽培ポット10を採用したが、これに限らず、例えば半球状、略円錐状、円筒状、長板状などの形状のポットとし、これに培地を入れるなど、栽培ポット10を構成するポット11の形状、大きさは、任意であり、栽培する植物の種類や大きさに合わせて適宜決定するとよい。
【0025】
上記のとおりポット11内に培地12を入れた栽培ポット10が図3に示すように栽培トレイ13内に収納されている。栽培トレイ13は、栽培ポット10の外形に対応して設けたプラスチック製の籠であり、栽培ポット10を収納する収納口周囲にはフランジ部13aが設けられている。尚、栽培ポット10を納める栽培トレイ13についても、半球状、略円錐状、円筒状、長板状など、栽培ポット10の形状、大きさに合わせて自由に設定できる。
【0026】
図1〜図7に示すように本発明のベンチは、栽培ポット10が栽培トレイ13内に収納された状態でベンチ本体21内に配置されるようになっているのである。ベンチ本体21は、下方に向かって開口する断面略コ字型をなす板状体であり、そのような板状体は、例えば鉄、アルミなどの金属板やワイヤーメッシュを折り加工することで、或いはプラスチックを押出成形することで作製することができる。尚、ベンチ本体21には、軽量化を目的として多数の孔を設けた穴あきの金属板を折り加工したものを用いることもできる。
【0027】
このベンチ本体21の上面には長手方向に渡って多数のトレイ保持口22が設けられている。図5に示すようにトレイ保持口22は栽培ポット10を納めた栽培トレイ13の形状に対応して四角状をなしており、フランジ部13aよりも小さく、かつ栽培トレイ13が該トレイ保持口22を通してベンチ本体21内に収納される大きさに設けられている。このため、栽培トレイ13をトレイ保持口22を通して該ベンチ本体21内に配置したとき、前記栽培トレイ13のフランジ部13aが前記トレイ保持口22周縁に当接し、これにより前記栽培トレイ13が収納保持されるようになっている。尚、トレイ保持口22の大きさ、形状は任意であり、栽培ポット10を納める栽培トレイ13の形状、大きさに合わせて○状、四角状、長方状など適宜決定するとよい。
【0028】
ベンチ本体21の下端両側には長手方向に渡って連続して被係止部23が設けられている。図4、図6及び図7に示すように、被係止部23は、ベンチ本体21の下端両側に該ベンチ本体21の内方に向かって設けた略L型をなす折り曲げ片である。この被係止部23はベンチ本体21と別体に設けてもよいが、図示の例では、該ベンチ本体21の製作時に、例えば鉄、アルミなどの金属板を折り加工することで、或いはプラスチックを押し出し成形することで、一体に作製した。
【0029】
この被係止部を利用して排水用樋を吊り下げたり、地上に立設した支持フレームから吊り下げたりすることができる。図4及び図6には被係止部23を利用して排水用樋24を吊り下げた例が示されている。図4及び図6に示す例では、ベンチ本体21の長さに対応する長さを有する排水用樋24を内包し、上端にベンチ本体21の被係止部23に掛着するフック部25aを有する吊下具25を用い、この吊下具25の各上端に設けたフック部25aをベンチ本体21の被係止部23に引っ掛けることで、前記排水用樋24をベンチ本体23の下側に吊り下げている。
【0030】
被係止部23はベンチ本体23下端両側に長手方向に渡って連続して設けられているので、排水用樋24の設置に際し、該ベンチ本体21の長手方向に渡るいずれの箇所にも設置が可能であるという利点がある。また、その吊り下げ作業もベンチ本体23下端両側に長手方向に渡って連続して設けられている被係止部23に排水用樋24を内包する吊下具25のフック部25aを引っ掛けるという簡単な操作で行うことができ、排水用樋の設置がきわめて容易である。
【0031】
図1、図2、図4及び図7は、ベンチ本体21下端両側に長手方向に渡って連続して設けた被係止部23を利用して、地上に立設した支持フレーム26からベンチ本体21を吊り下げた例を示すものである。図1、図2、図4及び図7に示すように、地上に立設した支持フレーム26には、所定の間隔に吊り下げワイヤー27が繋がっており、この吊り下げワイヤー27の先端に設けたフック部27aをベンチ本体21下端両側に長手方向に渡って連続して設けた被係止部23に引っ掛けることで、該ベンチ本体21が吊り下げ状態に支持されるようになっている。また、被係止部23がベンチ本体21下端両側に長手方向に渡って連続して設けられていることから、ベンチ本体21を吊り下げ作業に際し、該ベンチ本体21の長手方向に渡るいずれの箇所にも吊り下げワイヤー27先端のフック部27aを引っ掛けることができ、ワイヤー27の取り付け位置を選ばないという利点がある。
【0032】
地上に立設した支持フレーム26に繋がる吊り下げワイヤー27は、手動により或いはモーターなどによって巻き取り或いは巻き出し可能として長さ調節可能とすることができる。この場合、ベンチ本体21の高さ位置を適宜調節することができ、このため、収穫作業等で腰を屈めたり、梯子を架けたりする必要がなく、作業効率を一層高めることができる。
【0033】
また、図4、図6及び図7に示すように、ベンチ本体21の一方下端側には培養液を供給する給液管28が長手方向に渡って配されており、この給液管28に所定間隔に取り付けた点滴チューブ29を介して培養液が栽培トレイ13内に収納された栽培ポット10に給液されるようになっている。尚、図示の例では、ベンチ本体の一方下端側に給液管を配したが、ベンチ本体上面に配置することもできる。
【0034】
次に、本発明のベンチの別例を図8〜図13に従って説明する。図8−図13に示すベンチは、図1〜図7に示す地上に立設した支持フレーム26に繋がる吊り下げワイヤー27でベンチ本体21を支持フレーム26から吊り下げるのに代えて、スタンド30によってベンチ本体21を地面から立設状態に支持した例を示すものである。図8−図13に示すベンチは、支持フレームを使用して構築された大規模なハウスに比べて、狭小なハウスに好ましく用いることができるものである。尚、この例では、支持フレーム26からの吊り下げワイヤー27に代えてスタンド30を用いた以外、図1〜図7に示す形態と同じであるため、ここでの説明は割愛する。尚、スタンドは、ベンチ本体を地面から立設状態に支持するものであれば、その構造、材質、形状などは自由であり、図示のものに限定されるものではない。
【0035】
図10及び図11に示すスタンド30は所定長さ(たとえば40〜100cm)を有する鉄棒からなり、ベンチ本体21両側上面にボルト締めにより固定される取付具31を用いて取り付けられている。取付具31はベンチ本体21両側上面にボルト締めにより固定される固定部31aと、固定部31aから延びる挟持部31bと、スタンド30上端を鋏んで前記挟持部31bに当接し、ボルト締めにより固定される挟持板31cとからなるものである。
【0036】
このスタンド30は、図10及び図11に示す例のように、スタンド30下端に螺子溝を形成し、これに螺合する螺子溝を形成した脚部32に螺着することにより、スタンド30の長さを調節可能としたものである。このようなスタンドを使用すれば、収穫作業時における作業位置をスタンドに長さ調節可能な範囲で調節することができ、腰を屈めたりする必要がなく、作業効率を一層高めることができる。また、脚部32地面側は、地面に当接する当接プレート33に回動可能に枢着されており、地面が傾斜していても、垂直状にスタンド30を立設できるようになっている。
【0037】
図12−図13に示すベンチは、地面に設置される基板41と、基板41上に固定され、所定間隔、少なくともベンチ本体21の幅よりも長い間隔に立設される一対の螺子棒からなるスタンド42、42と、各スタンド42、42上端部分に跨るように所定高さ(例えば40〜100cm)にナット44で止め付けて固定される支持板43とからなるスタンド40を用い、このスタンド40をベンチ本体21の長さ方向に所定間隔を置いて配置し、それらのスタンド40の支持板43上面にベンチ本体21を載置することで、該ベンチ本体21が地面から立設状態に支持されるようにしたものである。
【0038】
尚、本発明のベンチ及び栽培ポットは、図面に示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲で自由に変更して使用することができる。
【符号の説明】
【0039】
10・・・栽培ポット
11・・・ポット
12・・・培地
13・・・栽培トレイ
13a・・・フランジ部
12・・・ベンチ本体
22・・・トレイ保持口
23・・・被係止部
24・・・排水用樋
25・・・吊下具
25a・・・フック部
26・・・支持フレーム
27・・・吊り下げワイヤー
27a・・・フック部
28・・・給液管
29・・・点滴チューブ
30、40・・・スタンド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
根域を制限した独立培地で1株毎に植物を栽培する栽培ポットを収納保持する独立ポット耕栽培用ベンチであって、
該ベンチ本体に収納保持される栽培ポットは該栽培ポットを収納する収納口周囲にフランジ部を設けた栽培トレイ内に収納されており、
ベンチ本体は下方に向かって開口する断面略コ字型をなし、その上面には長手方向に渡って多数のトレイ保持口が設けられ、該ベンチ本体下端両側には長手方向に渡って連続して被係止部が設けられており、
前記栽培トレイをトレイ保持口を通して該ベンチ本体内に配置したとき、前記栽培トレイのフランジ部が前記トレイ保持口周縁に当接して前記栽培トレイが収納保持されると共に、前記被係止部に排水用樋を吊り下げる吊下具を引っ掛けることで、前記排水用樋をベンチ本体の下側に吊り下げるようにしたことを特徴とする独立ポット耕栽培用ベンチ。
【請求項2】
ベンチ本体下端両側に長手方向に渡って連続して設けた被係止部に地上に立設した支持フレームに繋がる吊り下げワイヤーを引っ掛けることで、ベンチ本体が吊り下げ状態に支持されるようにしたことを特徴とする請求項1記載の独立ポット耕栽培用ベンチ。
【請求項3】
支持フレームからの吊り下げワイヤーの長さを調節可能とすることで、ベンチ本体の高さ位置及びまたは傾斜角度を調節できるようにしたことを特徴とする請求項2記載の独立ポット耕栽培用ベンチ。
【請求項4】
ベンチ本体がスタンドによって地面から立設状態に支持されるようにしたことを特徴とする請求項1記載の独立ポット耕栽培用ベンチ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の独立ポット耕栽培用ベンチによって収納保持される栽培ポットであって、不織布製ポットに培地を入れることで根域を制限した独立培地が構成されており、収納口周囲にフランジ部を設けた栽培トレイ内に収納されていることを特徴とする栽培ポット。
【請求項1】
根域を制限した独立培地で1株毎に植物を栽培する栽培ポットを収納保持する独立ポット耕栽培用ベンチであって、
該ベンチ本体に収納保持される栽培ポットは該栽培ポットを収納する収納口周囲にフランジ部を設けた栽培トレイ内に収納されており、
ベンチ本体は下方に向かって開口する断面略コ字型をなし、その上面には長手方向に渡って多数のトレイ保持口が設けられ、該ベンチ本体下端両側には長手方向に渡って連続して被係止部が設けられており、
前記栽培トレイをトレイ保持口を通して該ベンチ本体内に配置したとき、前記栽培トレイのフランジ部が前記トレイ保持口周縁に当接して前記栽培トレイが収納保持されると共に、前記被係止部に排水用樋を吊り下げる吊下具を引っ掛けることで、前記排水用樋をベンチ本体の下側に吊り下げるようにしたことを特徴とする独立ポット耕栽培用ベンチ。
【請求項2】
ベンチ本体下端両側に長手方向に渡って連続して設けた被係止部に地上に立設した支持フレームに繋がる吊り下げワイヤーを引っ掛けることで、ベンチ本体が吊り下げ状態に支持されるようにしたことを特徴とする請求項1記載の独立ポット耕栽培用ベンチ。
【請求項3】
支持フレームからの吊り下げワイヤーの長さを調節可能とすることで、ベンチ本体の高さ位置及びまたは傾斜角度を調節できるようにしたことを特徴とする請求項2記載の独立ポット耕栽培用ベンチ。
【請求項4】
ベンチ本体がスタンドによって地面から立設状態に支持されるようにしたことを特徴とする請求項1記載の独立ポット耕栽培用ベンチ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の独立ポット耕栽培用ベンチによって収納保持される栽培ポットであって、不織布製ポットに培地を入れることで根域を制限した独立培地が構成されており、収納口周囲にフランジ部を設けた栽培トレイ内に収納されていることを特徴とする栽培ポット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−92081(P2011−92081A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248656(P2009−248656)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(591043950)揖斐川工業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(591043950)揖斐川工業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】
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