説明

独立気泡を有する硬質ポリウレタンフォームの製造方法

【課題】 貯蔵安定性に極めて優れ、且つ、得られる独立気泡を有する硬質ポリウレタンフォームにおける熱伝導性能や優れた機械物性(寸法安定性等)を付与することを可能とする、ハイドロカーボン及び水を発泡剤として用いた独立気泡を有する硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供すること。
【解決手段】 ポリメリックMDIと分子量150未満のアルコール類から構成されるポリイソシアネート組成物を用いることにより、解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立気泡を有する硬質ポリウレタンフォームの製造方法に関する。更に詳しくは、低熱伝導性に優れ、且つ、独立気泡でありながら良好なフォーム物性を得ることが可能であり、且つ、低粘度のポリイソシアネート組成物を用いることから、従来用いられているミキシングヘッドを用いても混合性が十分良好で均一な微細セルを確保できることが可能な、独立気泡を有する硬質ポリウレタンフォームの製造方法に関する。なお、本発明において、「硬質ポリウレタンフォーム」とは、特に断らない限り「イソシアヌレート変性ポリウレタンフォーム」を含む概念である。また、本発明における「独立気泡を有する」とは、ASTM D2856に準拠した独立気泡率が75%以上(75%を含む)であるものを意味する。
【背景技術】
【0002】
従来、硬質ポリウレタンフォームは、冷蔵庫、冷凍倉庫、建築材料等の断熱材として、また、スプレー用途として広範囲に使用されている。
【0003】
硬質ポリウレタンフォームを製造する際のポリイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と略記。)とMDI系多核縮合体(ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート)とを包含するポリメリックMDIが使用されている。
【0004】
一方、硬質ポリウレタンフォームを製造する際の発泡剤として、近年、オゾン層破壊を防止するなどの観点から、従来多用されていた1,1−ジクロロ−1−フルオロエタンなどの(ハイドロ)クロロフルオロカーボン類に代えて、n−ペンタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、またはこれらの混合物等といったハイドロカーボンが使用され始めている。
【0005】
硬質ポリウレタンフォームを用いる分野においては、硬質ポリウレタンフォーム自体の有する熱伝導性が低いことが要求される。このような分野に適用される硬質ポリウレタンフォームは、連続気泡ではなく独立気泡(クローズドセル)であることが要求される。
【0006】
この場合、発泡剤としてハイドロカーボンを用いた場合、気泡内に発泡剤として気化し取り込まれたガス自体の熱伝導性から、これまで使用されてきた発泡剤よりも熱伝導性が高くなる傾向にあることから、得られる硬質ポリウレタンフォーム自体の低熱伝導率化を検討する必要がある。
【0007】
このような問題の解決を図る手法として、例えば、(1)ポリメリックMDIに少なくとも1種類の線形、分岐もしくは環式、飽和もしくはオレフィン性不飽和の低分子量モノアルコールを反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーを用いる方法(特許文献1参照)、(2)ポリメリックMDIに少なくとも1つのポリエステル−ポリオールを反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーを用いる方法(特許文献2参照)が提案されている。
【0008】
しかしながら、上記(1)または(2)による方法では、得られるイソシアネート基末端プレポリマー自体が高粘度であることから、硬質ポリウレタンフォームを得る際に設備的に高性能なミキシングヘッドを必要とする、または、ミキシングヘッドにおいて良好な混合状態を得るべくイソシアネート基末端プレポリマーを必要以上に加温しなければならない等、設備面における高額な投資または製造コストの上昇という問題があった。
【0009】
【特許文献1】特開平7−278256号公報
【特許文献2】特開平8−231672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は以上のような背景に基づいてなされたものである。
【0011】
本発明の第1の目的は、従来用いられているミキシングヘッドでも十分良好な混合性が得られる程度に低粘度(具体的には25℃における粘度が50〜500mPa・sの範囲内)であり、且つ、得られる硬質ポリウレタンフォームにおける低熱伝導率化を図ることが可能である、独立気泡を有する硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明の第2の目的は、従来各分野に用いられている独立気泡を有する硬質ポリウレタンフォームと同等もしくはそれ以上の所望される機械物性を有する硬質ポリウレタンフォームを得ることが可能である、独立気泡を有する硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明の第3の目的は、とりわけ近年使用され始めているハイドロカーボンを発泡剤として用いた場合でも、前記の第1の目的並びに第2の目的をともに達成することが可能である、独立気泡を有する硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらの一連の課題を解決する(目的を達成する)ために、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、独立気泡を有する硬質ポリウレタンフォームを製造するにあたり、特定の組成物を用いることが解決する手段として非常に有効であることを見出し、本発明に至った。
【0015】
すなわち、本発明は次の(1)〜(2)のとおりである。
【0016】
(1) (A)(A1)ジフェニルメタンジイソシアネート異性体混合物(a1d)を20〜80質量%、3核体以上のジフェニルメタンジイソシアネート系多核縮合体(a1p)が80〜20質量%(但し、(a1d)+(a1p)=(A1)として100質量%)であるポリメリックMDI、及び、
(A2)分子量150未満のアルコール類、
を混合及び反応して得られる、25℃における粘度が50〜500mPa・s、且つ、イソシアネート基含有量が28.0〜32.0質量%であるポリイソシアネート組成物、
(B)ポリオール、
(C)(C1)ハイドロカーボン及び(C2)水からなる発泡剤、
(D)触媒、及び、
(E)整泡剤
からなる組成物を用いることを特徴とする、独立気泡を有する硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【0017】
(2) 前記発泡剤(C)として用いられるハイドロカーボンがシクロペンタンであることを特徴とする、(1)に記載の独立気泡を有する硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の独立気泡を有する硬質ポリウレタンフォームの製造方法に供されるポリイソシアネート組成物は、従来用いられているミキシングヘッドでも十分良好な混合性が得られる程度に低粘度(具体的には25℃における粘度が50〜500mPa・sの範囲内)であることから、混合性に極めて優れた特殊なミキシングヘッドを必要とせず、また、硬質ポリウレタンフォームの製造時において過度に加温する必要がないまま、従来用いられている独立気泡を有する硬質ポリウレタンフォーム製造用のミキシングヘッドを用いることが可能である。
【0019】
また、本発明の独立気泡を有する硬質ポリウレタンフォームの製造方法により、得られる独立気泡を有する硬質ポリウレタンフォームに所望される熱伝導性を向上させる(低熱伝導率化を図る)ことが可能である。
【0020】
さらに、本発明の独立気泡を有する硬質ポリウレタンフォームの製造方法により、従来各分野に用いられている独立気泡を有する硬質ポリウレタンフォームと同等もしくはそれ以上の所望される機械物性を有する硬質ポリウレタンフォームを得ることが可能である。
【0021】
これらの一連の優れた効果は、本発明のようにハイドロカーボン及び水を発泡剤とする独立気泡を有する硬質ポリウレタンフォームの製造方法、とりわけ、シクロペンタン及び水を発泡剤とする独立気泡を有する硬質ポリウレタンフォームの製造方法として極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明をさらに詳細に説明する。
【0023】
本発明の独立気泡を有する硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、以下に記載する組成物を用いる。
(A)(A1)ジフェニルメタンジイソシアネート異性体混合物(a1d)を20〜80質量%、3核体以上のジフェニルメタンジイソシアネート系多核縮合体(a1p)が80〜20質量%(但し、(a1d)+(a1p)=(A1)として100質量%)であるポリメリックMDI、
(A2)分子量150未満のアルコール類、
を混合及び反応して得られる、25℃における粘度が50〜500mPa・sの範囲内、且つ、イソシアネート基含有量が28.0〜32.0質量%の範囲内であるポリイソシアネート組成物、
(B)ポリオール、
(C)(C1)ハイドロカーボン及び(C2)水からなる発泡剤、
(D)触媒、及び、
(E)整泡剤
【0024】
<ポリメリックMDI(A1)>
本発明において用いられるポリイソシアネート組成物を構成するポリメリックMDI(A1)は、MDI(a1d)が20〜80質量%、MDI系多核縮合体(a1p)が80〜20質量%からなる混合物(ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート)である。なお、MDI(a1d)とMDI系多核縮合体(a1p)との合計は、ポリメリックMDI(A1)として100質量%である。
【0025】
ポリメリックMDI(A1)は、アニリンとホルマリンとの縮合反応によって得られる縮合混合物(ポリアミン)のアミノ基を、ホスゲン化等によりイソシアネート基に転化することによって得ることができ、縮合時の原料組成比や反応条件を変更することによって、最終的に得られるポリメリックMDIの組成(核体分布や異性体構成比)を制御することができる。
【0026】
本発明において用いられるポリメリックMDI(A1)は、イソシアネート基への転化後の反応液、反応液から溶媒の除去、一部MDIを留出分離した缶出液等の、反応条件や分離条件等の異なった数種の混合物であってもよい。また、市販のポリメリックMDIにMDI(a1d)を混合したものであってもよい。
【0027】
ポリメリックMDI(A1)におけるMDI(a1d)の割合は20〜80質量%の範囲内であり、好ましくは25〜75質量%の範囲内、中でも、ポリメリックMDI(A1)における液状での貯蔵安定性の保持、また、硬質ポリウレタンフォーム形成時における良好な作業性を具備するとの観点から、26〜70質量%の範囲内であることがとりわけ好ましい。ここで、MDI(a1d)の割合はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるMDIのピーク面積比から求める割合である。ポリメリックMDI(A1)におけるMDI(a1d)の割合が80質量%を超えた場合、MDI(a1d)に起因する結晶の析出が生じる等、ポリメリックMDIの貯蔵安定性の面で不具合が生じる可能性が高くなる傾向にある。一方、この割合が20質量%未満である場合、ポリメリックMDIの粘度が過度に高くなり、混合不良が生じる等作業性の面で不具合が生じる可能性が高くなる傾向にある。
【0028】
2核体であるMDI(a1d)は、4,4′−MDIと、2,2′−MDIと、2,4′−MDIとの3種類の異性体により構成されている。本発明においては、これらの異性体の構成比は特に限定はないが、例えば−20℃といった過酷な低温雰囲気条件下でも優れた貯蔵安定性を具備する(結晶等が析出しない)との観点から、4,4′−MDI含有割合が60〜100%の範囲内であることが好ましく、得られる硬質ポリウレタンフォームに所望される機械物性を確実に得ることができるとの観点から、95〜100%の範囲内(中でも、とりわけ好ましいのは限りなく100%に近いレベル)であることがより好ましい。なお、異性体の構成比はGC(ガスクロマトグラフィー)によって得られる各ピークの面積百分率を基に、検量線から求めることができる。
【0029】
ポリメリックMDI(A1)の平均官能基数は、2.2以上(2.2を含む)であることが好ましく、更に好ましくは2.2〜3.1の範囲内とされる。
【0030】
ポリメリックMDI(A1)のイソシアネート基含有量は、28〜33質量%の範囲内であることが好ましく、更に好ましくは28.5〜32.5質量%の範囲内とされる。
【0031】
ポリメリックMDI(A1)の酸度は0.001〜0.2質量%の範囲内であることが好ましく、更に好ましくは0.003〜0.15質量%の範囲内とされる。これにより、得られるポリイソシアネート組成物の貯蔵安定性と好適な反応性とが確保される。なお、「酸度」とは、室温でアルコールと反応し遊離する酸成分を塩化水素に換算して示した値をいい、JIS K−1603によって測定される。
【0032】
なお、本発明のポリイソシアネート組成物を構成するポリメリックMDI(A1)は、本発明において用いられるポリイソシアネート組成物(A)全体を100質量%とした場合、後述する本発明のポリイソシアネート組成物において必須となる一連の構成要件における導入の割合(ひいては各構成要件の導入により得られる、所望される諸性能や効果)を考慮して、92.0〜99.5質量%の範囲内で用いられるのが好ましい。
【0033】
<分子量150未満のアルコール類(A2)>
本発明において用いられるポリイソシアネート組成物(A)を構成する分子量150未満のアルコール類(A2)としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、のような線形もしくは分岐、飽和モノアルコールを挙げることができる。
【0034】
本発明においては、得られる独立気泡を有する硬質ポリウレタンフォームにおける機械物性が良好なものとなるようイソシアネート基含有量を28.0〜32.0質量%の範囲内で有しつつ、得られるポリイソシアネート組成物の粘度が25℃において50〜500mPa・sの範囲内を確保でき、且つ、低熱伝導性を確保できる程度に変性可能であるとの観点から、分子中に水酸基を1個有するアルカノール類(A2)として、メタノールまたはエタノールのいずれか、又はこれら両者の混合物を用いるのが好ましく、中でも、これらの一連の観点を最も反映させることができるとのことから、メタノールを選択して用いるのがより好ましい。
【0035】
また、本発明において用いられるポリイソシアネート組成物を構成する分子中に水酸基を1個有するアルカノール類(A2)は、ポリイソシアネート組成物(A)全体を100質量%とした場合、前述と同様の観点から、0.5〜8.0質量%の範囲内で用いられるのが好ましい。
【0036】
なお、本発明のポリイソシアネート組成物(A)においては、分子量150未満のアルコール類(A2)は前記のポリメリックMDI(A1)におけるイソシアネート基の一部と反応した形態で存在しても良く、また、イソシアネート基とは反応しないまま均一混合された形態で存在しても良い。
【0037】
<その他のイソシアネート化合物>
本発明において用いられるポリイソシアネート組成物(A)は前記のポリメリックMDI(A1)を必須とされるが、必要に応じて、この必須であるイソシアネート化合物以外のイソシアネート化合物(以下「その他のイソシアネート化合物」と略記。)が含有されていてもよい。
【0038】
その他のイソシアネート化合物としては、ポリメリックMDI(もしくはMDIのみ)と、活性水素基含有化合物とを反応させて得られるウレタン化物(前記のリシノレイン酸アルキルエステル類(A2)とポリメリックMDI(A1)におけるイソシアネート基の一部とが反応した形態で存在するものを除く。)、ウレア化物、アロファネート化物、ビウレット化物、カルボジイミド化物、ウレトンイミン化物、ウレトジオン化物、イソシアヌレート化物;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシレン−1,4−ジイソシアネート、キシレン−1,3−ジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートなどを挙げることができる。また、これらのポリメリック体やこれらのイソシアネートと、活性水素基含有化合物とを反応させて得られるウレタン化物、ウレア化物、アロファネート化物、ビウレット化物、カルボジイミド化物、ウレトンイミン化物、ウレトジオン化物、イソシアヌレート化物などを使用することもできる。これらのイソシアネート化合物は単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
<任意成分>
本発明において用いられるポリイソシアネート組成物(A)には、その効果が損なわれない範囲内において各種の任意成分が含有されていてもよい。かかる任意成分としては、硬質ポリウレタンフォームを製造するためのポリイソシアネート組成物に含有されるものとして従来公知の物質(添加剤など)を全て使用することができる。
【0040】
<ポリイソシアネート組成物>
本発明において用いられるポリイソシアネート組成物(A)におけるイソシアネート基含有量は28.0〜32.0質量%の範囲内とされるが、好ましくは28.2〜29.5質量%の範囲内、中でも、本発明のポリイソシアネート組成物を用いて得られる硬質ポリウレタンフォームに所望される良好な熱伝導性や機械物性を確実に具備できるとの観点から、28.4〜29.0質量%の範囲内であることが特に好ましい。イソシアネート基含有量が28.0質量%未満の場合、粘度が高くなることで均一混合性に劣る、また、反応に寄与するイソシアネート基が少ないことにより良好な機械物性を得ることが難しくなる可能性がある。また、32.0質量%を超える場合、本発明において得られる硬質ポリウレタンフォームに所望される良好な熱伝導性を得ることが難しくなる可能性がある。
【0041】
また、本発明において用いられるポリイソシアネート組成物(A)の粘度(25℃)は50〜500mPa・sの範囲内とされるが、好ましくは100〜400mPa・sの範囲内、中でも、従来公知のミキシングヘッド等、既存の製造設備でも容易に適用可能(例えば、他の成分との均一混合を確保するために必要以上に加温(=製造コストのアップ)して粘度を下げる必要がない等)であり、また、後述するポリオール類等との均一混合にも優れるとの観点から、150〜350mPa・sの範囲内であることが特に好ましい。
【0042】
<ポリオール(B)>
本発明の製造方法において用いられる「ポリオール(B)」は、特に制限されるものではなく、従来公知のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどを挙げることができる。なお、形成される硬質ポリウレタンフォームの強度等を考慮して、低分子ポリオール、低分子ポリアミン、低分子アミノアルコールなどを併用してもよい。
【0043】
本発明の製造方法において使用するポリオール(B)として、以下に示す3種類のポリオール〔ポリオール(b1)〜(b3)〕の少なくとも1種類を使用することが好ましく、2種類以上を使用することが更に好ましい。
【0044】
ポリオール(b1)およびポリオール(b3)の何れか1種類のみを使用する場合には、形成される硬質ポリウレタンフォームが十分な機械的強度を有するものとならない場合がある。また、ポリオール(b2)のみからなるポリオール(B)は粘度が過大となって、作業性に劣る傾向がある。
【0045】
〔ポリオール(b1)〕
モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類、トリレンジアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、アンモニア、アニリン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等のポリアミン類等のアミン系化合物の1種または2種以上の混合物を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加反応させて得られる、水酸基価50〜1,000mgKOH/gの範囲内、好ましくは100〜900mgKOH/gの範囲内のポリエーテルポリオール。なお、更に開始剤として、ポリオール(b2)およびポリオール(b3)を得るために使用される多価アルコールを併用することができる。
【0046】
〔ポリオール(b2)〕
(1)エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールのような多価アルコールの1種または2種以上の混合物と、アジピン酸、マロン酸、フマル酸、琥珀酸、酒石酸、シュウ酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等のような、少なくとも2個以上のカルボキシル基(またはカルボキシル基から誘導される基)を有する化合物の1種または2種以上の混合物とを使用し、公知の方法によって製造することによって得られる、水酸基価50〜800mgKOH/gの範囲内、好ましくは100〜700mgKOH/gの範囲内のポリエステルポリオール。
(2)ラクトン(例えばε−カプロラクトン)類の開環重合により得られるポリエステルポリオール。
(3)ポリエステルポリオール及びポリエステル成形品を分解して得られる回収ポリエステル。
【0047】
〔ポリオール(b3)〕
エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールような、1分子中にヒドロキシル基を2〜6個、好ましくは2〜5個有する多価アルコールを開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加反応させて得られる、水酸基価50〜1,000mgKOH/gの範囲内、好ましくは100〜900mgKOH/gの範囲内のポリエーテルポリオール。
【0048】
ポリオール(b1)〜(b3)の各々において、水酸基価が一定の値(下限値)以上であることにより、形成される硬質ポリウレタンフォームに十分な機械的強度を付与することができる。また、水酸基価が一定の値(上限値)以下であることにより、形成される硬質ポリウレタンフォームの脆性化を抑制することができる。
【0049】
ポリオール(b1)の平均官能基数は2〜8の範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは3〜6の範囲内とされる。
【0050】
ポリオール(b2)の平均官能基数は2〜4の範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは2〜3の範囲内とされる。
【0051】
ポリオール(b3)の平均官能基数は3〜6の範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは3〜5の範囲内とされる。
【0052】
ポリオール(b1)〜(b3)の各々において、平均官能基数が一定の数(下限)以上であることにより、形成される硬質ポリウレタンフォームに十分な機械的強度を付与することができる。また、平均官能基数が一定の数(上限)以下であることにより、形成される硬質ポリウレタンフォームの脆性化を抑制することができる。
【0053】
ポリオール(b1)を使用する場合において、ポリオール(B)に占めるポリオール(b1)の割合は5〜40質量%の範囲内であることが好ましい。
【0054】
ポリオール(b2)を使用する場合において、ポリオール(B)に占めるポリオール(b2)の割合は10〜90質量%の範囲内であることが好ましい。
【0055】
ポリオール(b3)を使用する場合において、ポリオール(B)に占めるポリオール(b3)の割合は10〜90質量%の範囲内であることが好ましい。
【0056】
ポリオール(B)に占める、ポリオール(b1)、ポリオール(b2)、ポリオール(b3)の合計の割合は80質量%以上(80質量%を含む)であることが好ましい。
【0057】
ポリオール(b1)の含有割合が過大であると、活性が高くなりすぎ、ボイド等の成形不良を招く虞がある。
【0058】
ポリオール(b2)の含有割合が過大であると、ポリオール(B)の粘度が高くなり、フォームの液流れ性・充填性が悪化する傾向がある。
【0059】
ポリオール(b3)の含有割合が過大であると、形成される硬質ポリウレタンフォームの機械的強度が低下する傾向がある。
【0060】
ポリオール(B)を構成するポリオール(b1)〜(b3)以外のポリオール(以下、その他ポリオールと略記する)としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、水酸基価が50〜150mgKOH/gの範囲内のポリプロピレングリコールを好適なものとして挙げることができる。
【0061】
エチレングリコール、ジエチレングリコール、水酸基価が50〜150mgKOH/gの範囲内のポリプロピレングリコールから選ばれた少なくとも1種類を用いることにより、ポリオール(B)の粘度を低下させることができる。
【0062】
また、ポリオール(B)を構成するその他ポリオールとして、ポリマーポリオールを用いてもよい。このポリマーポリオールは、前述のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールをベースとして、スチレンまたはアクリロニトリルのビニルポリマーや、活性水素基含有化合物とポリイソシアネートから得られるポリマーをグラフト重合またはフィラーとして導入したものである。ポリマーポリオールにおけるポリマー含有量は1〜20質量%の範囲内であることが好ましい。
【0063】
ポリオール(B)の粘度(25℃)は2,000mPa・s以下(2,000mPa・sを含む)であることが好ましく、更に好ましくは100〜1,800mPa・sの範囲内とされる。粘度が上限を越える場合は、特に冬期での作業性が低下する。
【0064】
<発泡剤(C)>
本発明の製造方法においては、発泡剤(C)として、ハイドロカーボン(C1)と水(C2)を併用することを必須とする。
【0065】
ハイドロカーボン(C1)としては、炭素数が2〜8の範囲内の炭化水素化合物、例えば、シクロペンタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロヘキサン、またはこれらの混合物等を挙げることができる。本発明においては、良好なガス熱伝導率を得られること、また、引火点が比較的高いとの観点から、シクロペンタンを選択して用いるのが好ましい。
【0066】
発泡剤(C)の添加量としては、ハイドロカーボン(C1)がポリオール(B)を100質量%とした場合1〜50質量%の範囲内、また、水(C2)がポリオール(B)を100質量%とした場合0.5〜5.0質量%の範囲内であることが好ましい。
【0067】
本発明においては、発泡剤(C)として、ハイドロカーボン(C1)と水(C2)との併用、具体的には主たる発泡剤をハイドロカーボン(C1)とし、副たる発泡剤を水(C2)として併せ用いる形態が、本発明の製造方法により得られる硬質ポリウレタンフォームに所望される効果を最も奏する。ここで、“主たる発泡剤”と“副たる発泡剤”とは、用いられる質量部の多少のことであり、“主たる発泡剤”の方が“副たる発泡剤”より質量部として多いという意味である。
【0068】
なお、本発明の製造方法においては、得られる硬質ポリウレタンフォームに所望される性能(例えば低い熱伝導性や寸法安定性(常温収縮が小さいこと))を維持できる範囲内であれば、発泡剤(C)としてハイドロフルオロエーテルを、ハイドロカーボン(C1)並びに水(C2)と併せ用いることが可能である。
【0069】
ハイドロフルオロエーテルとしては、ハイドロフルオロエーテルとして従来公知のもの、具体的には、例えばHFE−254pc(CHFCFOCH)、CFCHFOCF(HFE−227me)、CFCHFOCHF(HFE−236me)、CFCHOCF(HFE−236mf)、 CHFCFOCHF(HFE−236pc)、CFCFOCH(HFE−245mc)、CFCHOCHF(HFE−245mf)、CFCFCFOCH(HFE−247mcc)、CFCFOCHCF(HFE−338mc−f)、(CFCFOCH(HFE−347mmy)、CHFCFOCHF(HFE−245pc)、CHFCFOCHF(HFE−245qc)、CFCFCHOCHF(HFE−347mcf)、CFCHFCFOCH(HFE−356mec)、CHFCFCFOCH(HFE−356pcc)、CHFCFCHOCHF(HFE−356pcf)、CHFCFOCHCF(HFE−347pc−f)、CFCHOCHCF(HFE−356mf−f)、CHFCFOCHCF(HFE−356qc−f)、(CFCHOCH(HFE−356mmz)等を挙げることができる。本発明の製造方法においては、これらのうちいずれか1種を選択してハイドロカーボン(C1)及び水(C2)と併せ用いても良いし、これらのうち2種以上を併用するかたちでハイドロカーボン(C1)及び水(C2)と併せ用いても良い。
【0070】
<触媒(D)>
本発明の製造方法において用いられる「触媒(D)」としては、通常ウレタン発泡に用いられる公知の触媒を使用することができる。例えば、ウレタン化触媒として、N−メチルイミダゾール、トリメチルアミノエチルピペラジン、トリプロピルアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート等の錫化合物、アセチルアセトン金属塩等の金属錯化合物等が挙げられる。三量化触媒としては、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,3,5−トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン等のトリアジン類、2,4−ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2−エチルヘキサン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、2−エチルアジリジン等のアジリジン類等のアミン系化合物、3級アミンのカルボン酸塩等の第四級アンモニウム化合物、ジアザビシクロウンデセン、ナフテン酸鉛、オクチル酸鉛等の鉛化合物、ナトリウムメトキシド等のアルコラート化合物、カリウムフェノキシド等のフェノラート化合物等を挙げることができる。これらの触媒は、1種または2種以上併用して用いることがでる。
【0071】
触媒(D)の使用量は、ポリオール(B)を100質量%とした場合、0.01〜15質量%の範囲内となる量が適当である。
【0072】
<整泡剤(E)>
本発明の製造方法に用いられる整泡剤(E)としては、硬質ポリウレタンフォーム用の整泡剤として従来公知のもの(ジメチルポリシロキサンおよびポリシロキサン−ポリエーテル共重合体)を全て使用することができる。具体例としては、公知のシリコーン系界面活性剤が挙げられ、例えば東レ・ダウコーニング製のL−5340、L−5420、L−5421、L−5740、L−580、SZ−1142、SZ−1642、SZ−1605、SZ−1649、SZ−1919、SZ−1675、SZ−1720、SZ−1725、SH−190、SH−192、SH−193、SF−2945F、SF−2940F、SF−2936F、SF−2938F、SRX−294A、信越化学工業製のF−305、F−341、F−343、F−374、F−345、F−348、ゴールドシュミット製のB−8404、B−8407、B−8465、B−8444、B−8467、B−8433、B−8466、B−8870、B−8450、B−8460等が挙げられる。
【0073】
本発明の製造方法においては、整泡剤(E)の一部または全部として、水酸基を含有するポリシロキサン−ポリエーテル共重合体(以下、「水酸基含有シリコーン」という。)を使用することが好ましい。
【0074】
水酸基含有シリコーンは、ジメチルポリシロキサン構造と、ポリオキシアルキレン構造(ポリエーテル構造)とからなるブロック共重合体であって、分子構造中に水酸基を有する化合物である。
【0075】
水酸基含有シリコーンの平均官能基数(1分子中に有する水酸基の平均の数)は1〜10の範囲内であることが好ましく、更に好ましくは1〜5の範囲内、特に好ましくは1〜2の範囲内とされる。
【0076】
また、水酸基含有シリコーンの数平均分子量は500〜20,000の範囲内であることが好ましく、更に好ましくは1,000〜18,000の範囲内とされる。数平均分子量が過大であるものは、粘度が高くて取扱性に劣る。
【0077】
水酸基含有シリコーンの水酸基価は3〜300mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、更に好ましくは5〜150mgKOH/gの範囲内とされる。
【0078】
本発明における整泡剤(E)の使用量は、ポリオール(B)に対して、0.1〜5質量%の範囲内となる量が適当である。
【0079】
本発明の製造方法においては添加剤を用いること(添加剤の存在下に、ポリイソシアネート組成物(A)とポリオール(B)とを反応させること)ができる。この添加剤としては、可塑剤、充填剤、着色剤、難燃剤、有機または無機の充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、顔料・染料、抗菌剤・抗カビ剤等が挙げられる。本発明では、難燃剤を用いるのが好ましい。難燃剤としては、トリエチルホスフェート、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート等のリン酸エステル類、亜リン酸エチル、亜リン酸ジエチル等の亜リン酸エステル類のリン酸化合物等が挙げられる。
【0080】
本発明の製造方法においては、3成分以上の多成分系としても良いが、装置を簡略化する目的から、前記のポリイソシアネート組成物(A)を主成分とする「I液」と、ポリオール(B)を主成分とする「R液」からなる2成分系とするのが好ましい。
【0081】
以下、2成分系とする場合における好ましい具体的な製造方法の例を示す。
【0082】
(1)前記のポリイソシアネート組成物(A)を「I液」とし、前記のポリオール(B)を「R液」とする。
【0083】
(2)発泡剤(C)、触媒(D)、整泡剤(E)および添加剤(任意成分)の各々を、「I液」および/または「R液」中に混合させる。なお、発泡剤(C)、触媒(D)および整泡剤(E)は、「R液」中に混合させることが好ましい。
【0084】
(3)「I液」と「R液」とを混合し、前記のポリイソシアネート組成物(A)と、前記のポリオール(B)とを、前記の発泡剤(C)、触媒(D)および整泡剤(E)の存在下に反応させ、反応系を発泡、硬化させる。
【0085】
「I液」と「R液」との混合装置としては特に限定されるものでなく、例えば、小型ミキサー、一般のウレタンフォームを製造する際に使用される、注入発泡用の低圧または高圧発泡機、スラブ発泡用の低圧または高圧発泡機、連続ライン用の低圧または高圧発泡機、吹き付け工事用のスプレー発泡機等を使用することができる。なお、混合される「I液」と「R液」の温度は、各々15〜30℃の範囲内に調節しておくことが好ましい。
【0086】
なお、本発明の製造方法においては、ハイドロカーボン(C1)の有する引火点の低さ、これに伴う取扱上の注意点を考慮し、「I液」と「R液」の他に、発泡剤としてのハイドロカーボンを別成分とした3成分系(発泡する直前にハイドロカーボン(C1)を「I液」または「R液」に混合して用いる形態)とするのも好ましい。
【0087】
本発明の製造方法によって得られる硬質ポリウレタンフォームは、ウレタン結合やウレア結合といった化学結合を有するもの(いわゆるウレタンフォーム)である。また、製造条件によっては、発泡時にイソシアヌレート基を生成させることができ、このようにして得られるイソシアヌレート変性ポリウレタンフォーム(いわゆるイソシアヌレートフォーム)も「硬質ポリウレタンフォーム」に包含される。イソシアヌレート基は、イソシアネート基を三量化触媒により三量化させて生成され、機械的強度や耐熱性等を向上させることができる。
【0088】
本発明の製造方法において、好ましいイソシアネートインデックス〔(ポリイソシアネート組成物中の全イソシアネート基のモル数/ポリオール(B)中の全活性水素基のモル数)×100〕は、いわゆるウレタンフォームの場合で50〜140の範囲内であることが好ましく、更に好ましくは70〜130の範囲内である。また、三量化触媒を用いて形成するいわゆるイソシアヌレートフォームの場合で140〜800の範囲内であることが好ましく、更に好ましくは150〜500の範囲内である。イソシアネートインデックスがウレタンフォームの場合で50未満、イソシアヌレートフォームの場合で140未満であると、得られたフォームが十分な強度を有しないことがあり収縮しやすくなる。また、ウレタンフォームの場合で140を越え、イソシアヌレートフォームの場合で800を越えると、得られるフォームの脆性が高くなり接着性が低下する傾向にある。
【実施例】
【0089】
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらの例によってなんら限定して解釈されるものではない。なお、以下においては特段の記載がない限り、「%」および「部」は、それぞれ「質量%」および「質量部」を示す。
【0090】
<有機ポリイソシアネート組成物の合成>
合成例1
下記表1に示す処方に従って、攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた容量:100kgの反応器に、ポリメリックMDI(A1)として「イソシアネートA」を99.4kg仕込み、攪拌しながら60℃に加温した。次いで、分子量150未満のアルコール類(A2)として「メチルアルコール」0.6kgについて、反応器への仕込みを行った。仕込み完了後、攪拌しながら60℃にて2時間反応させ、本発明の製造方法に供されるポリイソシアネート組成物「NCO−1」を得た。このポリイソシアネート組成物「NCO−1」のイソシアネート基含有量(以下、必要に応じて「NCO含量」と略記。)は29.6質量%、粘度(25℃)は232mPa・sであった。
【0091】
合成例2〜24
下記表1〜表3に示す処方に従って、ポリメリックMDI(A1)として「イソシアネートA」、分子量150未満のアルコール類(A2)として「メチルアルコール」または「エチルアルコール」の各々を使用したこと以外は、合成例1と同様にして、本発明の製造方法に供されるポリイソシアネート組成物「NCO−2」〜「NCO−16」、並びに、比較例としてのポリイソシアネート組成物「NCO−17」〜「NCO−24」を合成した。得られたポリイソシアネート組成物のイソシアネート基含有量および粘度(25℃)を表1〜表3に併せて示す。
【0092】
<ポリイソシアネート組成物の低温雰囲気下における液貯蔵安定性>
上記の合成例1〜24により得られたポリイソシアネート組成物「NCO−1」〜「NCO−24」の各々について、200ml容量のガラス製サンプル瓶に200g仕込み、蓋で密封した後、−5℃並びに−10℃雰囲気下にて90日間静置した。90日経過後の外観を目視により観察し、下記の基準に基づいて評価した。結果を表1〜表3に併せて示す。
【0093】
(評価基準)
「○」:結晶析出や液相分離は見られない。
「×」:結晶析出や液相分離、またはこれらの前兆と思われる液の濁りが見られる。
なお、測定開始時における上記のポリイソシアネート組成物「NCO−1」〜「NCO−24」は、各々全て「○」と判断されている。
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

【0096】
【表3】

【0097】
上記の表1〜表3における化合物(成分)の詳細は下記のとおりである。
【0098】
<イソシアネートA(本発明の(A1)に相当)>
(i)GPCによるMDIのピーク面積比=40%(ポリメリックMDI)
(ii)MDI中の4,4’−MDIの割合=99%(GCによる測定)
(iii)イソシアネート含量=30.6%
(iv)平均官能基数=2.3
(v)酸度=0.01%
<メタノール(本発明の(A2)に相当)>
メチルアルコール
<エタノール(本発明の(A2)に相当)>
エチルアルコール
【0099】
<調製例1>
下記表4に示す配合処方に従って、各成分を均一混合することによりポリオール組成物「OH−1」を調製した。
【0100】
【表4】

【0101】
上記の表4における化合物(成分)の詳細は下記のとおりである。
【0102】
<ポリオール(B−1)>
シュークロースを開始剤としてプロピレンオキサイドの付加により得られたポリエー
テルポリオールを主たる成分としたポリエーテルポリオール、公称官能基数=4.3、公
称水酸基価=390
<ポリオール(B−2)>
ソルビトールを開始剤としてプロピレンオキサイドの付加により得られたポリエーテ
ルポリオールを主たる成分としたポリエーテルポリオール、公称官能基数=5.0、公称
水酸基価=460
<ポリオール(B−3)>
トルエンジアミンを開始剤としたポリエーテルポリオール、公称水酸基価=460
<発泡剤(C−1)>
精製水
<発泡剤(C−2)>
シクロペンタン
<触媒(D−1)>
アミン系触媒、商品名「TOYOCAT−TE(東ソー(株)製)
<触媒(D−2)>
アミン系触媒、商品名「TOYOCAT−TRC(東ソー(株)製)
<触媒(D−3)>
アミン系触媒、商品名「TOYOCAT−DT(東ソー(株)製)
<整泡剤(E−1)>
シリコン系整泡剤、商品名「SZ−1725(東レ・ダウコーニング(株)製)」
【0103】
<硬質ポリウレタンフォームの形成(製造)>
実施例1〜16、比較例1〜8
【0104】
<その1(反応性等の測定)>
ポリイソシアネート組成物(A液)として「NCO−1」〜「NCO−24」を、また、ポリオール組成物(B液)として「OH−1」をそれぞれ用意し、各々液温を20℃に調整した。これらを下記表5〜表7に示す組合せに従い、(A液)/(B液)=125/100(体積比)となるよう、合計35gをφ120mm×150mm(高さ)の紙製カップに仕込み、ラボミキサー(独国Heidolph社製)を用いて5秒間攪拌・均一混合することにより、発泡性の混合物(本発明の組成物/比較用の組成物)を得た。
【0105】
得られた発泡性の混合物(本発明の組成物/比較用の組成物)の各々について、攪拌・均一混合後そのまま静置して、発泡時における反応時間(クリームタイム、ゲルタイム、タックフリータイム、ライズタイム)を測定した。また、撹拌混合開始から10分経過した時点で、形成された硬質ポリウレタンフォームのコア部を切り出し、自由膨張密度(FRD)を測定した。これらの結果を表5〜表7に示す。
【0106】
<その2(フォーム物性の測定)>
ポリイソシアネート組成物(A液)として「NCO−1」〜「NCO−24」を、また、ポリオール組成物(B液)として「OH−1」をそれぞれ用意し、各々液温を20℃に調整した。これらを下記表5〜表7に示す組合せに従い、(A液)/(B液)=125/100(体積比)となるよう、合計100gをφ120mm×150mm(高さ)の紙製カップに仕込み、ラボミキサー(独国Heidolph社製)を用いて5秒間攪拌・均一混合することにより、発泡性の混合物(本発明の組成物/比較用の組成物)を得た。
【0107】
得られた発泡性の混合物(本発明の組成物/比較用の組成物)の各々について、予め45℃に調温した250mm(幅方向)×250mm(組成物の流れ方向=発泡方向)×50mm(厚み方向)のアルミ製モールドに直ちに投入し、上面を開放した状態で硬質ポリウレタンフォーム製のパネルを作成した。撹拌開始から10分経過した時点で形成された該パネルをモールドから取り出し、上面より飛び出たフォーム部分をカットした重量を該サイズにおける100%パック重量とした。
【0108】
次いで、下記表5〜表7に示す組合せに従い、(A液)/(B液)=125/100(体積比)にて、該サイズにおける120%パックの硬質ポリウレタンフォーム製のパネルが得られる量を各々φ120mm×150mm(高さ)の紙製カップに仕込み、ラボミキサー(独国Heidolph社製)を用いて5秒間攪拌混合することにより、発泡性の混合物(本発明の組成物/比較用の組成物)を得た。
【0109】
得られた発泡性の混合物(本発明の組成物/比較用の組成物)の各々について、予め45℃に調温した250mm(幅方向)×250mm(組成物の流れ方向=発泡方向)×50mm(厚み方向)のアルミ製モールドに直ちに投入し、投入し終えた時点で上面をクローズし、120%パックによる硬質ポリウレタンフォーム製のパネルを作成した。撹拌開始から10分経過した時点で形成された該パネルをモールドから取り出した後、25℃雰囲気下にて24時間静置した。静置後、以下に示す方法により、独立気泡率、セルの均一性、熱伝導率、並びに寸法安定性(低温環境下並びに高温高湿環境下における体積変化)について測定を行った。これらの結果を表5〜表7に示す。
【0110】
<独立気泡率>
120%パックによる硬質ポリウレタンフォーム製のパネルより、30mm(幅方向)×30mm(厚み方向)×130mm(組成物の流れ方向=発泡方向)の寸法を有するフォームコア部をカットしたもの(試験片)について、ASTM D2856に準拠して独立気泡率(%)を測定した。
【0111】
<セルの均一性>
前記の独立気泡率、また、後記の熱伝導率並びに寸法安定性を測定するためのサンプルについて各々目視にてセルの均一状態を観察し判定を行った。
(評価基準)
「○」:均一なセルが得られている。
「△」:注視すると、部分的にセルが不均一になっている箇所がある。
「×」:セルが不均一になっている箇所が明確である。
【0112】
<熱伝導率>
120%パックによる硬質ポリウレタンフォーム製のパネルより、200mm(幅方向)×25mm(厚み方向)×200mm(組成物の流れ方向=発泡方向)の寸法を有するフォームコア部をカットしたもの(試験片)について、JIS A1412に準拠して熱伝導率測定装置(オートΛ)を用いて測定した。
【0113】
<寸法安定性>
120%パックによる硬質ポリウレタンフォーム製のパネルより、50mm(幅方向)×40mm(厚み方向)×50mm(組成物の流れ方向=発泡方向)の寸法を有するフォームコア部をカットしたもの(試験片)について、−30℃(低温)雰囲気下、また、70℃95%相対湿度(高温高湿)雰囲気下に48時間各々静置した場合の体積変化を測定して、寸法安定性を評価した。
【0114】
【表5】

【0115】
【表6】

【0116】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の独立気泡を有する硬質ポリウレタンフォーム製造用ポリイソシアネート組成物を用いて得られた硬質ポリウレタンフォームは、前述のとおり一連の優れた機械物性を有することから、ボード、パネル、冷蔵庫、庇、ドア、雨戸、サッシ、コンクリート系住宅、バスタブ、低温タンク機器、冷凍倉庫、パイプカバー、結露防止、スラブ等、各種断熱材用途に適用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(A1)ジフェニルメタンジイソシアネート異性体混合物(a1d)を20〜80質量%、3核体以上のジフェニルメタンジイソシアネート系多核縮合体(a1p)が80〜20質量%(但し、(a1d)+(a1p)=(A1)として100質量%)であるポリメリックMDI、
(A2)分子量150未満のアルコール類、
を混合及び反応して得られる、25℃における粘度が50〜500mPa・s、且つ、イソシアネート基含有量が28.0〜32.0質量%であるポリイソシアネート組成物、
(B)ポリオール、
(C)(C1)ハイドロカーボン及び(C2)水からなる発泡剤、
(D)触媒、及び、
(E)整泡剤
からなる組成物を用いることを特徴とする、独立気泡を有する硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項2】
前記発泡剤(C)として用いられるハイドロカーボン(C1)がシクロペンタンであることを特徴とする、請求項1に記載の独立気泡を有する硬質ポリウレタンフォームの製造方法。


【公開番号】特開2008−260836(P2008−260836A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104354(P2007−104354)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】