説明

狭窄ノズル及びこれを用いたTIG溶接用トーチ

【課題】 アーク周囲に高速整流ガスを流してプラズマ気流の流れを速め、アークに作用する電磁力及び磁界を強化してアークのエネルギー密度、アークの指向性及び硬直性を高めて高速溶接を行えるようにし、また、シールド効果を高めて高品質な溶接を行えるようにする。
【解決手段】 本発明の狭窄ノズル7は、タングステン電極棒2の先端部周囲にタングステン電極棒2と同心状に配置され、タングステン電極棒2の先端部外周面との間に環状の高速ガス通路7dを形成する筒状のノズル本体7aと、ノズル本体7aの内周面に円周方向へ所定の間隔をおいて突出形成され、タングステン電極棒2をノズル本体7aの中心位置に保持するノズル本体7aの長手方向に沿う複数の位置決め用突条7bと、複数の位置決め用突条7b間に形成され、ノズル本体7aの長手方向に平行に延びて高速ガス通路7d内を流れるシールドガスGを整流化する複数のガス整流溝7cとから成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にステンレス鋼板や電磁鋼板等の金属薄板の端部同士を突合せ溶接するTIG溶接に於いて使用されるTIG溶接用トーチに取り付けられる狭窄ノズル及びこれを用いたTIG溶接用トーチに係り、特に、タングステン電極棒の先端部周囲に狭窄ノズルを配設し、当該狭窄ノズルからアークの周囲に高速整流ガスを流すことによって、プラズマ気流の流れを速め、アークに作用する電磁力及び磁界を強化してアークのエネルギー密度、アークの指向性及び硬直性をそれぞれ高めて高速溶接を行えるようにし、また、アルゴンガスやヘリウム等のシールドガスによる溶接部のシールド効果の向上を図れて高品質な溶接を行えるようにし、更に、タングステン電極棒の交換時にタングステン電極棒を元の位置に簡単且つ正確に取り付けることができて再現性及び作業性の向上を図れるようにした狭窄ノズル及びこれを用いたTIG溶接用トーチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、TIG溶接法は、タングステン電極棒の周囲にアルゴンガス等のシールドガスを流してタングステン電極棒と被溶接物である母材との間にアーク(アークプラズマ)を発生させ、そのアークの熱で母材を溶融するようにしたものであり、金属材料を用いる製造現場では重要な接合技術として広く利用されている。
【0003】
しかし、TIG溶接法は、他の溶接法(例えば、プラズマ溶接法やレーザー溶接法、電子ビーム溶接法)に比べて下記の(1)〜(5)に示すような問題がある。
(1)TIG溶接法は、プラズマ溶接法等の他の溶接法に比べて溶接能力や溶接強度が劣る。
(2)TIG溶接法は、タングステン電極棒やシールドガスとして使用するアルゴンガスが比較的高価であり、経費が嵩む。
(3)TIG溶接法は、溶接時にシールドガスが風の影響を受け易く、シールド効果が悪い。尚、シールド効果が悪いと、溶接2番部(溶接熱により母材部に生ずる熱影響部のことをいい、溶接熱によって急熱・急冷されて母材の組織が変化した部分)に黒っぽい焼けやビード表面に酸化膜が発生する。
(4)TIG溶接法は、小電流で溶接を行う際にアーク長を短くしないと、アークが不安定になる。
(5)TIG溶接法は、溶接速度を速くすると、溶接2番部にアンダーカット(へこみ)が発生する。
【0004】
一方、TIG溶接法に用いるTIG溶接用トーチとしては、例えば、アルゴンガス等のシールドガスを放出するための筒状のシールドノズルを用いたTIG溶接用トーチ(特許文献1)や、前記シールドノズルとアークのエネルギー密度を高めるための狭窄ノズルとを用いたTIG溶接用トーチ(特許文献2)が知られている。
【0005】
図12はシールドノズルを用いた従来のTIG溶接用トーチの一例を示すものであり、当該TIG溶接用トーチは、トーチボディ20内にタングステン電極棒21を保持固定する電極コレット22を挿着すると共に、トーチボディ20の先端にアルゴンガス等のシールドガスGを放出するセラミック製のシールドノズル23を取り付けた構造になっており、トーチボディ20の内部を通して流入して来たシールドガスGをトーチボディ20の先端部に設けたフィルター等から成るガスレンズ24により層流化し、この層流化したシールドガスGをシールドノズル23から被溶接物である母材へ向って流し、シールドガスGの雰囲気中でタングステン電極棒21と母材との間にアーク(アークプラズマ)を発生させ、そのアークの熱で母材を溶融するようにしたものである。
【0006】
また、図13はシールドノズル23及び狭窄ノズル25を用いた従来のTIG溶接用トーチの一例を示すものであり、当該TIG溶接用トーチは、トーチボディ(図示省略)内にタングステン電極棒21を保持固定する電極コレット(図示省略)を挿着すると共に、トーチボディの先端にアルゴンガス等のシールドガスGを流すセラミック製のシールドノズル23を取り付け、更に、シールドノズル23の先端部にシールドノズル23よりも小径に形成された先窄まり状の狭窄ノズル25を取り付けた構造になっており、狭窄ノズル25からタングステン電極棒21と母材との間に発生したアーク(アークプラズマ)の周囲にシールドガスGを集中的に流し、シールドガスGによるサーマルピンチ効果によりアークのエネルギー密度を高めるようにしたものである。
【0007】
しかしながら、シールドノズル23や狭窄ノズル25を用いた従来のTIG溶接用トーチに於いても、TIG溶接に於ける上述の如き問題を全て解決することは不可能であり、下記に示すような問題を抱えている。
【0008】
例えば、シールドノズル23を用いたTIG溶接用トーチは、比較的内径の大きいシールドノズル23の先端からシールドガスGを拡散放出するだけであるため、アーク周辺のシールドガスGの濃度が低下し、エネルギー密度の高いアークが得られず、不安定なアークになっていた。そのため、溶接速度を遅くしなければならないうえ、アークの指向性等が悪いという問題があった。
【0009】
また、シールドノズル23及び狭窄ノズル25を用いたTIG溶接用トーチは、狭窄ノズル25からアークの周囲へシールドガスGを集中的に流すので、アークのエネルギー密度がシールドノズル23のみを用いたTIG溶接用トーチに比較して高められるため、溶接速度を速くできてアークの指向性も良くなるが、反対にシールドガスGの放出範囲が狭められてシールド効果が悪くなり、溶接の品質が低下するという問題があった。
しかも、タングステン電極棒21を交換したときに、タングステン電極棒21を元の位置(狭窄ノズル25の中心位置)にセットし難く、再現性及び作業性に劣るという問題があった。
【0010】
そのため、TIG溶接法に用いるTIG溶接用トーチに於いては、上述したTIG溶接法に於ける全ての問題を解決する新しいノズルを用いた溶接用トーチの開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3163559号公報
【特許文献2】特許第4327153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、アークの周囲に高速整流ガスを流すことによって、プラズマ気流の流れを速め、アークに作用する電磁力及び磁界を強化してアークのエネルギー密度、アークの指向性及び硬直性をそれぞれ高めて高速溶接を行えるようにし、また、アルゴンガスやヘリウム等のシールドガスによる溶接部のシールド効果の向上を図れて高品質な溶接を行えるようにし、更に、タングステン電極棒の交換時にタングステン電極棒を元の位置に簡単且つ正確に取り付けることができて再現性及び作業性の向上を図れるようにした狭窄ノズル及びこれを用いたIG溶接用トーチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の発明は、トーチボディの先端部に配設したガスレンズによりトーチボディの内部を通って流入して来たシールドガスを層流化すると共に、層流化したシールドガスをトーチボディの先端部に配設した筒状のシールドノズルから被溶接物である母材へ向って放出し、シールドガスの雰囲気中でシールドノズルの中心位置に配設したタングステン電極棒と母材との間にアークを発生させ、そのアークの熱で母材を溶融するようにしたTIG溶接用トーチに取り付けられる狭窄ノズルに於いて、前記狭窄ノズルは、タングステン電極棒の先端部周囲にタングステン電極棒と同心状に配置され、タングステン電極棒の先端部外周面との間に環状の高速ガス通路を形成する筒状のノズル本体と、ノズル本体の内周面に円周方向へ所定の間隔をおいて突出形成され、タングステン電極棒をノズル本体の中心位置に保持するノズル本体の長手方向に沿う複数の位置決め用突条と、複数の位置決め用突条間に形成され、ノズル本体の長手方向に平行に延びて高速ガス通路内を流れるシールドガスを整流化する複数のガス整流溝とから成り、トーチボディから放出されるシールドガスの一部を前記高速ガス通路に流してシールドノズルから放出される層流化したシールドガスよりも速い高速整流ガスとし、当該高速整流ガスをノズル本体の先端開口からアークの周囲に流す構成としたことに特徴がある。
【0014】
本発明の請求項2の発明は、請求項1の発明に於いて、位置決め用突条及びガス整流溝をノズル本体の先端から離れた位置に形成し、また、ノズル本体の先端と位置決め用突条及びガス整流溝との間に位置する高速ガス通路の内径を位置決め用突条及びガス整流溝の上流側の高速ガス通路の内径よりも大きく形成し、ガス整流溝を通過した高速整流ガスの流れを高速ガス通路の下流側部分で安定化するようにしたことに特徴がある。
【0015】
本発明の請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の発明に於いて、各ガス整流溝を、ノズル本体の先端開口から高速整流ガスをアークの周囲に均等に流すべくノズル本体の内周面に配置したことに特徴がある。
【0016】
本発明の請求項4の発明は、請求項1又は請求項2の発明に於いて、各ガス整流溝を、ノズル本体の先端開口から高速整流ガスをアークの周囲の相対する位置に多く流すべくノズル本体の内周面に配置したことに特徴がある。
【0017】
本発明の請求項5の発明は、筒状のトーチボディと、トーチボディ内へ上下動自在且つ回転自在にねじ込み挿着され、タングステン電極棒を着脱自在に保持する電極コレットと、電極コレットの上端部に取り付けられ、電極コレットを正逆回転させてトーチボディに対して上下動させるコレットハンドルと、トーチボディの下端部に着脱自在に取り付けられ、トーチボディの内部を通して流入して来たシールドガスを均質拡散させて層流化するガスレンズと、ガスレンズ又はトーチボディにタングステン電極棒の先端部を囲繞する状態で着脱自在に取り付けられ、ガスレンズにより層流化されたシールドガスをアークの周囲に放出する筒状のシールドノズルと、タングステン電極棒の先端部周囲に配設された請求項1〜請求項4に記載の何れかの狭窄ノズルとから構成したことに特徴がある。
【0018】
本発明の請求項6の発明は、請求項5の発明に於いて、狭窄ノズルをガスレンズの先端面中央位置に着脱自在に取り付ける構成としたことに特徴がある。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1の狭窄ノズルは、タングステン電極棒の先端部周囲にタングステン電極棒と同心状に配置され、タングステン電極棒の先端部外周面との間に環状の高速ガス通路を形成する筒状のノズル本体と、ノズル本体の内周面に円周方向へ所定の間隔をおいて突出形成され、タングステン電極棒をノズル本体の中心位置に保持するノズル本体の長手方向に沿う複数の位置決め用突条と、複数の位置決め用突条間に形成され、ノズル本体の長手方向に平行に延びて高速ガス通路内を流れるシールドガスを整流化する複数のガス整流溝とから成り、トーチボディから放出されるシールドガスの一部を前記高速ガス通路に流してシールドノズルから放出される層流化したシールドガスよりも速い高速整流ガスとし、当該高速整流ガスをノズル本体の先端開口からアークの周囲に流す構成としているため、次のような優れた効果を奏することができる。
(1)即ち、本発明の請求項1の狭窄ノズルは、シールドガスの一部をシールドノズルから放出される層流化したシールドガスよりも速い高速整流ガスとし、この高速整流ガスをアークの周囲に流す構成としているため、タングステン電極棒側から被溶接物である母材側へ向って流れるプラズマ気流の速さが従来の速さ(約100m/sec)の2倍〜3倍の速さ(約200〜300m/sec)に達し、アークに作用する電磁力及び磁界が強化され、アークのエネルギー密度、アークの指向性及び硬直性がそれぞれ高められて安定したアークが得られる。
その結果、本発明の請求項1の狭窄ノズルは、溶接速度を従来の溶接速度に比較して5倍〜20倍速い溶接速度(1000mm/min〜7000mm/min)とすることができて高速溶接を行えるうえ、ビード幅が裏表とも均一で且つビードの波形の間隔が等間隔に形成されて高品質の安定した溶接を行える。
(2)本発明の請求項1の狭窄ノズルは、シールドガスを高速整流ガスにして流すと共に、高速溶接が可能となるため、溶接時にシールドガスが風の影響を受けることがなく、また、熱影響部の急熱・急冷によって結晶の粗大化を抑止し、溶接金属の曲げ延性も向上する。
(3)本発明の請求項1の狭窄ノズルは、高速のプラズマ気流により溶融金属内に発生する金属蒸気(不純物)の溶融金属への再付着・混入を防止でき、高品質な溶接を行える。
(4)本発明の請求項1の狭窄ノズルは、ノズル本体によりシールドガスを絞って高速整流ガスとして放出しているため、シールドガスの使用量が少なくて済み、コストの低減を図れる。
(5)本発明の請求項1の狭窄ノズルは、ノズル本体の内周面にタングステン電極棒をノズル本体の中心位置に保持する複数の位置決め用突条を突出形成しているため、タングステン電極棒の交換時にタングステン電極棒を元の位置(狭窄ノズルの中心位置)に正確且つ確実にセットすることができ、タングステン電極棒の取り付け位置の再現性を向上できて作業性も良くなる。
【0020】
本発明の請求項2〜請求項4の狭窄ノズルは、上記効果に加えて更に次のような効果を奏することができる。
即ち、本発明の請求項2の狭窄ノズルは、位置決め用突条及びガス整流溝をノズル本体の先端から離れた位置に形成し、また、ノズル本体の先端と位置決め用突条及びガス整流溝との間に位置する高速ガス通路の内径を位置決め用突条及びガス整流溝の上流側の高速ガス通路の内径よりも大きく形成しているため、ガス整流溝を通過した高速整流ガスの流れが高速ガス通路の下流側部分で安定化し、乱流の発生が防止される。
その結果、高品質の安定した溶接を確実且つ良好に行える。
【0021】
また、本発明の請求項3の発明は、各ガス整流溝を、ノズル本体の先端開口から高速整流ガスをアークの周囲に均等に流すべくノズル本体の内周面に配置する構成としているため、タングステン電極棒側から母材側へ向って流れるプラズマ気流が均等に流れることになり、真円度の高い横断面形状が円形のアークを形成することができ、溶接中のアークが安定することになる。
【0022】
更に、本発明の請求項4の発明は、各ガス整流溝を、ノズル本体の先端開口から高速整流ガスをアークの周囲の相対する位置に多く流すべくノズル本体の内周面に配置する構成としているため、横断面形状が楕円形状で且つエネルギー密度の高いアークを形成することができる。
このように、横断面形状が楕円形状のアークを形成した場合、予熱効果が上がって溶け込みが大きくなると共に、裏波も出易くなる。
【0023】
本発明の請求項5のTIG溶接用トーチは、上記した狭窄ノズルを備えているため、上述した各効果を奏することができる。
しかも、このTIG溶接用トーチは、狭窄ノズルからアークの周囲に流す高速整流ガスとその外側にシールドノズルから流す層流化したシールドガスとにより二重にシールするようになっているため、シールド効果が高められて溶融池への空気の進入を確実に遮断することができ、表面ビードの酸化皮膜が少なく、ビード表面に光沢のある溶接を行えると共に、タングステン電極棒の寿命が長くなる。
【0024】
また、本発明の請求項6のTIG溶接用トーチは、狭窄ノズルをガスレンズの先端面中央位置に着脱自在に取り付ける構成としているため、狭窄ノズルが焼損したり、或いはタングステン電極棒を直径の異なるタングステン電極棒に交換したりする場合でも、狭窄ノズルを簡単に交換することができ、至極便利である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る狭窄ノズルを用いたTIG溶接用トーチの外観形状を示し、(A)はTIG溶接用トーチの正面図、(B)はTIG溶接用トーチの側面図である。
【図2】同じくTIG溶接用トーチの縦断面図である。
【図3】同じくTIG溶接用トーチの要部の拡大縦断面図である。
【図4】図3のイ−イ線断面図である。
【図5】狭窄ノズルの拡大縦断面図である。
【図6】図5のロ−ロ線断面図である。
【図7】アークに作用する力を示す説明図である。
【図8】従来の狭窄ノズルを用いたTIG溶接用トーチと本発明の狭窄ノズルを用いたTIG溶接用トーチを使用して同じ溶接条件下でステンレス鋼板を突合せ溶接し、その溶接部分をエリクセン試験したものであり、(A)は従来の狭窄ノズルを用いて溶接したステンレス鋼板の溶接部分の拡大斜視図、(B)は本発明の狭窄ノズルを用いて溶接したステンレス鋼板の溶接部分の拡大斜視図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る狭窄ノズルを用いたTIG溶接用トーチの要部の拡大縦断面図である。
【図10】図9のハ−ハ線断面図である。
【図11】図9及び図10に示す狭窄ノズルの原理を示す説明図であり、(A)は強いプラズマ気流が流れている状態の説明図、(B)は弱いプラズマ気流が流れている状態の説明図、(C)は図9及び図10に示す狭窄ノズルを用いた場合のアークの横断面形状を示す説明図である。
【図12】シールドノズルのみを用いた従来のTIG溶接用トーチの要部の拡大縦断面図である。
【図13】シールドノズル及び従来の狭窄ノズル用いたTIG溶接用トーチの要部の拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1〜図6は本発明の第1の実施形態に係る狭窄ノズル及びこれを用いたTIG溶接用トーチを示し、当該TIG溶接用トーチは、主にステンレス鋼板や電磁鋼板等の金属薄板の端部同士を突合せ溶接する際に用いるものであり、内部にアルゴンガスやヘリウム等のシールドガスGを通す筒状のトーチボディ1と、トーチボディ1内へ上方側から上下動自在且つ回転自在にねじ込み挿着され、タングステン電極棒2を着脱自在に保持する電極コレット3と、電極コレット3の上端部に取り付けられ、電極コレット3を正逆回転させてトーチボディ1に対して上下動させるコレットハンドル4と、トーチボディ1の下端部に着脱自在に取り付けられ、トーチボディ1の内部を通して流入して来たシールドガスGを均質拡散させて層流化するガスレンズ5と、ガスレンズ5又はトーチボディ1にタングステン電極棒2の先端部を囲繞する状態で着脱自在に取り付けられ、ガスレンズ5により層流化されたシールドガスGをアークaの周囲に放出する筒状のシールドノズル6と、タングステン電極棒2の先端部周囲に配設された狭窄ノズル7とから構成されている。
【0027】
尚、図1及び図2に於いて、8はトーチボディ1の上端部外周面に形成され、電極コレット3の昇降量を示すネジ目盛、9はコレットハンドル4の下端部外周面に形成され、コレットハンドル4の回転量を示すネジ目盛、10はトーチボディ1に設けられ、電極コレット3に適宜の回動抵抗を与えて電極コレット3を調整位置に保持する加圧調整ネジ、11はトーチボディ1に固定された電極・メインガス管接続金具、12はトーチボディ1とコレットハンドル4との間をシールするOリング、13はトーチボディ1とガスレンズ5との間に介設したガスシール用のゴムリング、14はトーチボディ1とシールドノズル6との間に介設したプラスチック製の調整リングである。
【0028】
前記トーチボディ1は、図1及び図2に示す如く、アルミ合金等の金属材により形成された角筒部及び角筒部の上端に連設された円筒部とから成り、角筒部の周壁には、電極・メインガス管接続金具11と加圧調整ネジ10が挿入固定されている。
また、トーチボディ1の上端部開口の内周面には、タングステン電極棒2を保持する電極コレット3が上下動自在に螺挿される雌ネジ1aが形成され、トーチボディ1の下端部開口の内周面には、シールドガスGを層流化するガスレンズ5が着脱自在に螺着される雌ネジ1bが形成されている。
尚、電極・メインガス管接続金具11には、図示していないが、メインガス供給管及びパワーケーブルがそれぞれ接続されている。
【0029】
前記電極コレット3は、図2に示す如く、先端部に半割り状のチャック部を備えた細長い筒状に形成され、外周面の一部にトーチボディ1の上端部側の雌ネジ1aに上下動自在に螺着される雄ネジ3aを形成した銅製のコレット本体3′と、コレット本体3′のチャック部に着脱自在に螺着され、チャック部を締め付けてコレット本体3′に挿通されたタングステン電極棒2を固定する銅製の筒状の固定具3″とから構成されている。
この電極コレット3は、トーチボディ1内へ上方側から螺挿されており、コレット本体3′の上端部に固定したコレットハンドル4を回転させることによりトーチボディ1内で上下動するようになっている。
【0030】
前記ガスレンズ5は、トーチボディ1の下端部に着脱自在に取り付けられる銅材製の筒状構造のホルダー5′と、ホルダー5′に取り付けた金属製のフィルター5″とから成る。
【0031】
具体的には、ホルダー5′は、図2及び図3に示す如く、中心部にガス通路5aを形成した筒状体に形成されており、上端部外周面には、トーチボディ1の下端部側の雌ネジ1bに着脱自在に螺着される雄ネジ5bが形成され、また、下端部には、外周面にシールドノズル6が着脱自在に螺着される雄ネジ5cを形成した筒状の保持筒部5dと、保持筒部5dの中心に位置してその内周面に狭窄ノズル7が着脱自在に螺着される雌ネジ5eを形成した支持筒部5fとがそれぞれ形成されている。
更に、ホルダー5′の保持筒部5dと支持筒部5fとの間の空間は、環状のガス室5gとなっており、支持筒部5fの基端部近傍に形成した複数のガス流通孔5h及びホルダー5′のガス通路5aを介してトーチボディ1内に連通されている。
【0032】
一方、フィルター5″は、環状に打ち抜かれた金網を複数枚積層することにより形成されており、その内周縁部をホルダー5′の支持筒部5fに、また、その外周縁部をホルダー5′の保持筒部5dに嵌め込むことによりホルダー5′に取り付けられている。
このフィルター5″には、600メッシュのステンレス鋼製の金網3枚と300メッシュのステンレス鋼製の金網2枚を組み合せたものが使用されている。
【0033】
前記シールドノズル6は、図2及び図3に示す如く、セラッミク材により先端部が絞られた筒状に形成されており、その内周面の一部には、ガスレンズ5の保持筒部5dの雄ネジ5cに着脱自在に螺着される雌ネジ6aが形成されている。
このシールドノズル6は、その雌ネジ6aをガスレンズ5の保持筒部5dの雄ネジ5cにねじ込むことによりガスレンズ5の外周面に取り付けられており、ガスレンズ5のフィルター5″を通過して層流化されたシールドガスGをタングステン電極棒2の先端部周囲に放出するようになっている。
【0034】
前記狭窄ノズル7は、図2及び図3に示す如く、タングステン電極棒2の先端部周囲に配設されてタングステン電極棒2の先端部との間に環状の高速ガス通路7dを形成するものであり、トーチボディ1内からガスレンズ5のホルダー5′のガス通路5a内に流れるシールドガスGの一部を前記高速ガス通路7d内に流してシールドノズル6から狭窄ノズル7の周囲に流れる層流化したシールドガスGよりも速い高速整流ガスG3とし、当該高速整流ガスG3をアークaの周囲に流すようにしたものである。
【0035】
即ち、前記狭窄ノズル7は、電導性及び強度性等に優れた銅材(ベリリウム銅)により筒状体に形成されており、図2〜図6に示す如く、タングステン電極棒2の先端部周囲にタングステン電極棒2と同心状に配置され、タングステン電極棒2の先端部外周面との間に環状の高速ガス通路7dを形成する筒状のノズル本体7aと、ノズル本体7aの内周面に円周方向へ所定の間隔をおいて突出形成され、タングステン電極棒2をノズル本体7aの中心位置に保持するノズル本体7aの長手方向に沿う複数の位置決め用突条7bと、複数の位置決め用突条7b間に形成され、ノズル本体7aの長手方向に平行に延びて高速ガス通路7d内を流れるシールドガスGを整流化する複数のガス整流溝7cとから成る。
【0036】
具体的には、ノズル本体7aは、先端部(下端部)外周面が先細り状に形成されており、その基端部(上端部)外周面には、ガスレンズ5のホルダー5′の支持筒部5fに着脱自在に螺着される雄ネジ7eが形成されている。
このノズル本体7aは、その雄ネジ7eを支持筒部5fにねじ込むことによりガスレンズ5の先端面中央位置に取り付けられる。このとき、ノズル本体7aは、タングステン電極棒2の先端部周囲にタングステン電極棒2及びシールドノズル6と同心状に配置されてタングステン電極棒2の先端部外周面との間に環状の高速ガス通路7dを形成する。
【0037】
また、位置決め用突条7b及びガス整流溝7cは、それぞれノズル本体7aの内周面の円周方向へ等角度ごとに配置されており、ノズル本体7aの先端開口から高速整流ガスG3をアークaの周囲に均等に流せるようになっている。
【0038】
更に、位置決め用突条7b及びガス整流溝7cは、ノズル本体7aの先端から離れた位置に形成され、また、ノズル本体7aの先端と位置決め用突条7b及びガス整流溝7cとの間に位置する高速ガス通路7dの内径は、位置決め用突条7b及びガス整流溝7cの上流側の高速ガス通路7dの内径よりも大きく形成されている。
その結果、高速ガス通路7d内に流入したシールドガスGは、ガス整流溝7cを通過して整流化されて高速整流ガスG3となり、高速ガス通路7dの下流側部分で安定化してからノズル本体7aの先端開口から放出されることになる。
【0039】
尚、この実施の形態に於いては、使用するタングステン電極棒2の直径は、1.6mmに設定されている。
また、位置決め用突条7b及びガス整流溝7cは、図4及び図6に示す如く、ノズル本体7aの内周面に60°ごとに六つずつ形成されており、位置決め用突条7bの横断面形状は、位置決め用突条7bの頂面が円弧状になったほぼ台形状に形成されていると共に、ガス整流溝7cの横断面形状は、U字状に形成されている。
更に、狭窄ノズル7の全長は18mmに、直径の最も大きい部分の外径は6mmに、ノズル本体7aの基端部側の内径は2.7mmに、ノズル本体7aの先端部側の内径は3.0mmに、位置決め用突条7b及びガス整流溝7cの長さは約2mmに、ガス整流溝7cの幅は0.5mmに、ガス整流溝7cの深さは0.75mmに、対向する二つの位置決め用突条7b間の差し渡し距離は1.7mmに、位置決め用突条7b及びガス整流溝7cの形成位置はノズル本体7aの先端から3mmの位置になるようにそれぞれ設定されている。
そして、対向する二つの位置決め用突条7b間の差し渡し距離は、タングステン電極棒2を摺動自在に保持できるようにタングステン電極棒2の外径よりも0.1mm大きめに設定されている。
【0040】
次に、上述した狭窄ノズル7を用いたTIG溶接用トーチの作用について説明する。
先ず、タングステン電極棒2を保持固定した電極コレット3をトーチボディ1内に挿着し、タングステン電極棒2の円錐状の先端が狭窄ノズル7の先端から僅かに突出した状態になるようにタングステン電極棒2の突出長さを設定する。
【0041】
次に、セッティングされた被溶接物である母材WをTIG溶接用トーチのタングステン電極棒2の下方へ位置させるか、或いはTIG溶接用トーチを保持する保持装置(図示省略)を調整してタングステン電極棒2の先端を母材Wの溶接個所近傍へ位置させた後、コレットハンドル4を回転操作してタングステン電極棒2の先端と母材Wとの距離を設定値に調整する。
【0042】
尚、溶接電流、アークaの長さ、溶接速度、シールドガスGの供給量、タングステン電極棒2の先端形状等の溶接条件は、母材Wの材質、板厚等に応じて最適の条件下に設定されていることは勿論である。
【0043】
TIG溶接用トーチ及び母材Wのセッティングが終了すれば、TIG溶接用トーチのシールドノズル6及び狭窄ノズル7からアルゴンガス等のシールドガスGを母材Wへ向って流しつつ、電源(図示省略)を操作してタングステン電極棒2と母材Wとの間に電圧を印加してシールドガスGの雰囲気中でタングステン電極棒2の先端と母材Wとの間にアークaを発生させる。
この実施の形態では、前記溶接は、電源に直流を使用し、タングステン電極棒2を直流溶接機の負極に接続して溶接を行う正極性(棒マイナス)となっている。
【0044】
トーチボディ1内へ供給されたシールドガスGは、ガスレンズ5のホルダー5′のガス通路5a内を流下し、その一部が複数のガス流通孔5hから環状のガス室5g内に流入し、また、残りがガス通路5aから狭窄ノズル7の高速ガス通路7d内に流入する。
【0045】
環状のガス室5gに流入したシールドガスGは、フィルター5″を通過して均質拡散され、層流ガスG1となってシールドノズル6からアークaの周囲に放出される。
また、高速ガス通路7dに流入したシールドガスGは、その速度を増して高速ガスG2となると共に、複数のガス整流溝7cを通過することにより整流され、高速整流ガスG3となってノズル本体7aの先端開口からアークaの周囲に放出される。
【0046】
尚、ガス整流溝7cを通過した高速整流ガスG3は、位置決め用突条7b及び複数のガス整流溝7cがノズル本体7aの先端から離れた位置に形成されているため、高速ガス通路7dの下流側部分で安定化し、安定した状態でノズル本体7aの先端開口から放出される。
【0047】
そして、タングステン電極棒2の先端と母材Wとの間に発生したアークaは、図7に示す如く、タングステン電極棒2から母材Wへ向って広がっているため、アークaの内部圧力はタングステン電極棒2の方が母材Wよりも高くなっている。
その結果、シールドガスGの一部がアークa内に引き込まれ、プラズマ気流Pと呼ばれる高速のガス流が発生する。このプラズマ気流Pは、母材Wの溶け込み形成に大きく影響し、また、アークaの指向性及び硬直性(アークaがその形状を保持する性質)にも影響を与えるものであり、その速度が速くなればなる程、アークaの指向性及び硬直性を高めることができる。
また、発生したアークaは、狭窄ノズル7から放出される高速整流ガスG3によるサーマルピンチ効果により絞られてエネルギー密度の高い安定したアークaとなる。
【0048】
安定したアークaが発生したら、TIG溶接用トーチを所定の速度で母材Wの溶接個所に沿って走行移動させる。そうすると、タングステン電極棒2の先端と母材Wとの間に発生したアークaの熱によって母材Wの溶接個所が溶融して接合される。
【0049】
上述した狭窄ノズル7を用いたTIG溶接用トーチは、狭窄ノズル7によりシールドガスGの一部をシールドノズル6から放出される層流化したシールドガスGよりも速い高速整流ガスG3とし、この高速整流ガスG3をアークaの周囲に流す構成としているため、タングステン電極棒2側から被溶接物である母材W側へ向って流れるプラズマ気流Pの速さが従来の速さ(約100m/sec)の2倍〜3倍の速さ(約200〜300m/sec)に達する。また、アークaに作用する磁界及び中心軸方向の電磁力が強化され、アークaのエネルギー密度、アークaの指向性及び硬直性をそれぞれ高めることができ、安定したアークaが得られる。
その結果、前記TIG溶接用トーチを使用すれば、溶接速度を従来の溶接速度に比較して5倍〜20倍速い溶接速度(1000mm/min〜7000mm/min)とすることができて高速溶接を行えるうえ、ビード幅が裏表とも均一で且つビードの波形の間隔が等間隔で形成されて高品質の安定した溶接を行える。
【0050】
また、前記TIG溶接用トーチは、狭窄ノズル7からシールドガスGを高速整流ガスG3にして流すと共に、高速溶接が可能となるため、溶接時にシールドガスGが風の影響を受けることがなく、熱影響部の急熱・急冷によって結晶の粗大化を抑止し、溶接金属の曲げ延性も向上する。
更に、このTIG溶接用トーチは、高速のプラズマ気流Pにより溶融金属内に発生する金属蒸気(不純物)の溶融金属への再付着・混入を防止でき、高品質な溶接を行える。
そのうえ、このTIG溶接用トーチは、アークaの周囲に流す高速整流ガスG3とその外側に流す層流化したシールドガスGとにより二重にシールするようになっているため、シールド効果が高められて溶融池への空気の進入を確実に遮断することができ、表面ビードの酸化皮膜が少なく、ビード表面に光沢のある溶接を行えると共に、タングステン電極棒2の寿命が長くなる。
加えて、このTIG溶接用トーチは、狭窄ノズル7によりシールドガスGを絞って高速整流ガスG3として放出しているため、シールドガスGの使用量が少なくて済み、コストの低減を図れる。
また、このTIG溶接用トーチは、位置決め用突条7b及びガス整流溝7cをそれぞれノズル本体7aの内周面の円周方向へ等角度ごとに配置し、ノズル本体7aの先端から高速整流ガスG3をアークaの周囲に均等に流す構成としているため、タングステン電極棒2から母材W側へ向って流れるプラズマ気流Pが均等に流れることになり、真円度の高い横断面形状が円形のアークaを形成することができ、溶接中のアークaが安定することになる。
【0051】
下記の表1は冒頭で述べたシールドノズル23のみを用いた従来のTIG溶接用トーチと、シールドノズル23及び狭窄ノズル25を用いた従来のTIG溶接用トーチと、本発明の狭窄ノズル7を用いたTIG溶接用トーチの効果を比較した表である。
表1からも明らかなように、本発明の狭窄ノズル7を用いたTIG溶接用トーチは、アークaの指向性、溶接速度、シールド効果、溶接品質等に於いて何れも従来のシールドノズル23や狭窄ノズル25を用いたTIG溶接用トーチに比較して全ての面で優れた効果を発揮することができる。
【0052】
【表1】

【0053】
また、図8は従来の狭窄ノズル25を用いたTIG溶接用トーチと本発明の狭窄ノズル7を用いたTIG溶接用トーチとを使用して同じ溶接条件下でステンレス鋼板を突合せ溶接し、その溶接部分をエリクセン試験したものであり、図8の(A)は従来の狭窄ノズル7を用いたTIG溶接用トーチを使用して突合せ溶接したステンレス鋼板の溶接部を示し、また、(B)は本発明の狭窄ノズル7を用いたTIG溶接用トーチを使用して突合せ溶接したステンレス鋼板の溶接部を示すものである。
図8の写真から明らかなように、従来の狭窄ノズル25を用いたTIG溶接用トーチに於いては、溶接部に亀裂が生じているが、本発明の狭窄ノズル7を用いたTIG溶接用トーチに於いては、亀裂が生じておらず、従来のものよりも強度的に優れた突合せ溶接を行えることが判る。
【0054】
更に、図9及び図10は本発明の第2の実施形態に係る狭窄ノズル7を用いたTIG溶接用トーチの要部を示し、当該狭窄ノズル7は、各ガス整流溝7cを、ノズル本体7aの先端開口から高速整流ガスG3をアークaの周囲の相対する位置に多く流せるようにノズル本体7aの内周面に配置したものである。
【0055】
即ち、この狭窄ノズル7は、図10に示す如く、二つの位置決め用突条7b及びガス整流溝7cをそれぞれノズル本体7aの内周面の円周方向へ180°ごとに配置し、ノズル本体7aの先端から高速整流ガスG3をアークaの周囲の相対する位置に多く流し、その他の個所には高速整流ガスG3を少なめに流す構成としたものである。
【0056】
前記狭窄ノズル7を用いたTIG溶接用トーチは、図11(A)〜(C)に示す如く、アークaの円周方向に90°ごとにプラズマ気流Pの強い個所と弱い個所が交互に形成されるため、横断面形状が楕円状で且つエネルギー密度の高いアークaを形成することができる。
このように、横断面形状が楕円状のアークaを形成した場合、予熱効果が上がって溶け込みが大きくなると共に、裏波も出易くなる。然も、電流を上げても良好な溶接を行える。
【0057】
尚、狭窄ノズル7の位置決め用突条7b及びガス整流溝7cの数、横断面形状、大きさ、位置関係等は、上記各実施の形態のものに限定されるものではなく、アークaの周囲に高速整流ガスG3を流すことができれば、その数、横断面形状、大きさ、位置関係等は、適宜変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
1はトーチボディ、2はタングステン電極棒、3は電極コレット、4はコレットハンドル、5はガスレンズ、6はシールドノズル、7は狭窄ノズル、7aはノズル本体、7bは位置決め用突条、7cはガス整流溝、7dは高速ガス通路、aはアーク、Gはシールドガス、G1は層流ガス、G2は高速ガス、G3は高速整流ガス、Wは母材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トーチボディ(1)の先端部に配設したガスレンズ(5)によりトーチボディ(1)の内部を通って流入して来たシールドガス(G)を層流化すると共に、層流化したシールドガス(G)をトーチボディ(1)の先端部に配設した筒状のシールドノズル(6)から被溶接物である母材Wへ向って放出し、シールドガス(G)の雰囲気中でシールドノズル(6)の中心位置に配設したタングステン電極棒(2)と母材(W)との間にアーク(a)を発生させ、そのアーク(a)の熱で母材(W)を溶融するようにしたTIG溶接用トーチに取り付けられる狭窄ノズル(7)に於いて、前記狭窄ノズル(7)は、タングステン電極棒(2)の先端部周囲にタングステン電極棒(2)と同心状に配置され、タングステン電極棒(2)の先端部外周面との間に環状の高速ガス通路(7d)を形成する筒状のノズル本体(7a)と、ノズル本体(7a)の内周面に円周方向へ所定の間隔をおいて突出形成され、タングステン電極棒(2)をノズル本体(7a)の中心位置に保持するノズル本体(7a)の長手方向に沿う複数の位置決め用突条(7b)と、複数の位置決め用突条(7b)間に形成され、ノズル本体(7a)の長手方向に平行に延びて高速ガス通路(7d)内を流れるシールドガス(G)を整流化する複数のガス整流溝(7c)とから成り、トーチボディ(1)から放出されるシールドガス(G)の一部を前記高速ガス通路(7d)に流してシールドノズル(6)から放出される層流化したシールドガス(G)よりも速い高速整流ガス(G3)とし、当該高速整流ガス(G3)をノズル本体(7a)の先端開口からアーク(a)の周囲に流す構成としたことを特徴とする狭窄ノズル。
【請求項2】
位置決め用突条(7b)及びガス整流溝(7c)をノズル本体(7a)の先端から離れた位置に形成し、また、ノズル本体(7a)の先端と位置決め用突条(7b)及びガス整流溝(7c)との間に位置する高速ガス通路(7d)の内径を位置決め用突条(7b)及びガス整流溝(7c)の上流側の高速ガス通路(7d)の内径よりも大きく形成し、ガス整流溝(7c)を通過した高速整流ガス(G3)の流れを高速ガス通路(7d)の下流側部分で安定化するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の狭窄ノズル。
【請求項3】
各ガス整流溝(7c)を、ノズル本体(7a)の先端開口から高速整流ガス(G3)をアーク(a)の周囲に均等に流すべくノズル本体(7a)の内周面に配置したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の狭窄ノズル。
【請求項4】
各ガス整流溝(7c)を、ノズル本体(7a)の先端開口から高速整流ガス(G3)をアーク(a)の周囲の相対する位置に多く流すべくノズル本体(7a)の内周面に配置したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の狭窄ノズル。
【請求項5】
筒状のトーチボディ(1)と、トーチボディ(1)内へ上下動自在且つ回転自在にねじ込み挿着され、タングステン電極棒2を着脱自在に保持する電極コレット(3)と、電極コレット(3)の上端部に取り付けられ、電極コレット(3)を正逆回転させてトーチボディ(1)に対して上下動させるコレットハンドル(4)と、トーチボディ(1)の下端部に着脱自在に取り付けられ、トーチボディ(1)の内部を通して流入して来たシールドガス(G)を均質拡散させて層流化するガスレンズ5と、ガスレンズ(5)又はトーチボディ(1)にタングステン電極棒(2)の先端部を囲繞する状態で着脱自在に取り付けられ、ガスレンズ5により層流化されたシールドガス(G)をアーク(a)の周囲に放出する筒状のシールドノズル(6)と、タングステン電極棒(2)の先端部周囲に配設された請求項1〜請求項4に記載の何れかの狭窄ノズル(7)とから構成したことを特徴とするTIG溶接用トーチ。
【請求項6】
狭窄ノズル(7)をガスレンズ(5)の先端面中央位置に着脱自在に取り付ける構成としたことを特徴とする請求項5に記載のTIG溶接用トーチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図8】
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