説明

獣毛繊維製品

【課題】肌に対する物理的及び化学的な刺激の抑制効果があり、洗濯耐久性を有し、かつ風合いの良好な、肌に接する衣料に適した獣毛繊維製品を提供する。
【解決手段】本発明の獣毛繊維製品は、構成繊維の平均直径が20.0μm以下の獣毛繊維を含む繊維製品であって、前記獣毛繊維を親水化した後に、ホスホリルコリン基含有重合体を前記獣毛繊維表面に固定する。ホスホリルコリン基含有重合体は、例えば2−[(メタ)アクリロイルオキシエチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート]と、メタクリル酸アルキルエステルの重合体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は肌に接する衣料に適した獣毛繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
肌に接する衣服には吸放湿性や肌触りなどの快適性のほか、十分な安全性が求められている。しかし、時には衣服が皮膚障害の原因となるケースがあり、下記非特許文献1には、その原因は物理的刺激または化学的刺激であることが示されている。従って、安全な衣服を得るためこれらの原因を取り除くことが強く求められている。羊毛等の獣毛繊維は、吸放湿性が大きいことや人間の肌に近いケラチン蛋白からできているなど肌に接する衣料に適した性質を持っていることは良く知られている(下記非特許文献1)。
【0003】
羊毛は、一般にチクチク感といわれる物理的刺激のために肌に接する衣料での使用は限られている。チクチク感は、原料繊維の繊度に大きく影響を受け、繊度が小さくなるほど減少し、平均平均直径20.0μm以下では少なくなることが下記非特許文献2に報告されている。しかし、20.0μm以下の獣毛を用いても物理的な刺激抑制に効果があるだけで、化学的な刺激から肌を保護する効果は得られない。一方、近年刺激物質から肌を保護する効果がある繊維処理剤の研究開発が行われており、特許文献1〜5にはホスホリルコリン基含有単量体及び重合体を主成分とする繊維処理剤及び処理方法が開示されている。しかし、これらの方法で獣毛繊維を処理した場合、バインダー樹脂を併用しないと処理剤が洗濯により容易に脱落する問題があった。洗濯耐久性を向上させるためにバインダー樹脂を併用する場合は、風合いが硬化するという問題があった。
【非特許文献1】繊維の百科事典,丸善,310頁,995頁
【非特許文献2】Textile Asia, March,2003年 25-28頁
【特許文献1】特許第3485056号
【特許文献2】特開2002−146676号公報
【特許文献3】特開2002−348778号公報
【特許文献4】特開2002−348779号公報
【特許文献5】特開2004−68174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記従来の問題を改善し、肌に対する物理的及び化学的な刺激の抑制効果があり、洗濯耐久性を有し、かつ風合いの良好な、肌に接する衣料に適した獣毛繊維製品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の獣毛繊維製品は、構成繊維の平均直径が20.0μm以下の獣毛繊維を含む繊維製品であって、前記獣毛繊維を親水化した後に、ホスホリルコリン基含有重合体を前記獣毛繊維表面に固定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は平均直径20.0μm以下の獣毛繊維を原料とすることで肌への物理的刺激を抑制すると同時に、前記獣毛繊維を親水化した後にホスホリルコリン基含有重合体を前記獣毛繊維に固定したことにより、肌に対する物理的及び化学的な刺激の抑制効果があり、洗濯耐久性を有し、かつ風合いも良好で、肌に接する衣料に適した獣毛繊維製品を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、獣毛繊維を含む繊維製品である。獣毛繊維は20重量%含まれているのが好ましく、より好ましくは30重量%以上である。獣毛繊維100重量%製品はもちろん含まれる。本発明の獣毛繊維製品とは、ウール・カシミヤ・モヘヤ・キャメル・アンゴラ等の毛繊維を含有する製品をいう。他の繊維と混紡する場合は、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル系繊維等の合成繊維、レーヨン等の化学繊維、コットン、麻、絹等の天然繊維を使用できる。
【0008】
獣毛繊維の平均直径は20.0μm以下である。これにより、繊維が肌を物理的に刺激することはなく、チクチク感を防止できる。好ましい平均直径は19.0μm以下である。平均直径は20.0μm以下の獣毛繊維を選択するには、羊の場合、細い毛の取れる羊の種類を選択するのが好ましい。
【0009】
前記獣毛繊維は親水化した後に、ホスホリルコリン基含有重合体を表面に固定する。親水化により獣毛繊維に水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基等の活性基が付与されるか又は内部から現れ、前記活性基にホスホリルコリン基含有重合体がイオン結合などにより固定される。親水化前の未処理羊毛の臨界表面張力は約45dyne/cmであるが、親水化処理後の好ましい臨界表面張力は50dyne/cmが好ましく、さらに好ましくは60dyne/cm以上、特に好ましくは約65dyne/cm以上である。
【0010】
前記親水化は、前記獣毛製品を塩素系化合物、モノ過硫酸、過マンガン酸塩及びオゾンから選ばれる少なくとも一つによる酸化によるものが好ましい。この酸化により、獣毛繊維の少なくとも外皮エピクチクル層が除去され、エキソチクル層又はエンドチクル層が現れる。このエキソチクル層又はエンドチクル層に含まれる活性基にホスホリルコリン基含有重合体をイオン結合などにより固定してもよい。別な方法としては、前記酸化の後に、前記獣毛繊維にポリアミドエピクロルヒドリン樹脂を共有結合し防縮処理した後に、ホスホリルコリン基含有重合体をイオン結合などにより固定してもよい。
【0011】
別の親水化は、アルカリ性水溶液による処理である。
【0012】
さらに別の親水化は、低温プラズマ及びコロナ放電から選ばれる少なくとも一つによる放電である。この処理の場合は、外皮エピクチクル層の分子が分断され、活性基が付与される。
【0013】
本発明において親水化処理自体は知られており、例えば改森道信,「染色工業」Vol.41,No.7,347−356頁,1993年に記載されている表面改質方法の中で、過マンガン酸塩、モノ過硫酸、アルカリ性水溶液による処理法や塩素化法、酸化法、塩素化/樹脂法等の防縮加工方法がある。また、唐川忠志,梅原亮,「繊維機械学会誌」Vol.55,No.9,340−344頁,2002年に記載されているオゾン法、改森道信,「染色工業」Vol.41,No.11,566−569頁,1993年に記載されている脱スケール法及び改森道信,「染色工業」Vol.41,No.11,569−577頁,1993年に記載されている低温プラズマ処理やコロナ放電処理を使用できる。
【0014】
本発明のホスホリルコリン基含有重合体を主成分とする繊維処理剤自体も知られており、例えば、日本油脂株式会社製"Lipidure"(商品名)で各種グレードが市販されている。
【0015】
上記繊維処理剤の処理装置は浸漬処理の可能な装置であれば何でも良く、製品の形態に応じ、トップ染め機、かせ染め機、糸染め機、反染め機等の一般的な染色機を用いることができる。浴比は1:10〜1:30が好ましいが、処理装置の形態次第でどのような浴比でも処理することはできる。
【0016】
ホスホリルコリン基含有重合体の使用濃度は0.1%owf〜50%owf(owfはon the weight of fiberの略)の範囲が好ましく、コストと効果を考えると2%owf〜10%owfの範囲がより好ましい。
【0017】
処理温度は25℃〜60℃が好ましい。処理温度が低すぎると、年間を通してエネルギー的に安価にかつ安定して処理を行うのが困難であるし、高すぎるとホスホリルコリン基含有重合体の吸着が低下する。また、処理pHは4〜11が好ましく、低すぎると吸着が低下し、高すぎると獣毛繊維の品質が劣化する。
【0018】
本発明により洗濯耐久性に優れた皮膚刺激抑制効果が得られる理由は十分解明するに至っていないが、概ね次のように考えられる。即ち、疎水性の獣毛の表面を改質し親水化することにより繊維表面にカルボキシル基、スルホン酸基又は水酸基が露出する。これらの活性基は等電点以上のpHでイオン化し負電荷を持つ。一方、ホスホリルコリン基含有重合体の第4級アンモニウム基は正電荷を持つ。従って、親水化された獣毛繊維とホスホリルコリン基含有重合体は第4級アンモニウム塩となり、イオン的に強固に結合し、高い洗濯耐久性が得られると考えられる。
【0019】
前記繊維製品は、綿、トップ、糸、織物、編物、フェルト及び不織布から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
【0020】
前記繊維製品は、肌に直接又は間接に接触する用途に好適であり、スポーツ衣料品、肌着、シャツ、手袋、靴下又は寝具等に使用するのが好ましい。
【0021】
(実施の形態)
図1に非特許文献1の995頁に記載されている羊毛繊維の構造を示す。本発明の一実施形態においては、塩素化処理により、疎水性の高い脂肪酸のエピクチクル層を除去する。一部エキソクチクル層を除去しても良い。この処理により、下記化学式1〜2に示すような反応が起こり、ペプタイド結合が開裂してカルボキシル基(−COOH)とアミノ基(−NH2)が形成され、ジサルファイド結合の酸化によりスルホン酸基(−SO3H)が形成される。
【0022】
【化1】

【0023】
【化2】

【0024】
本発明ではこの状態でホスホリルコリン基含有重合体を結合させても良い。また、次に説明するようにポリアミドエピクロルヒドリン樹脂を結合させて防縮処理した後にホスホリルコリン基含有重合体を結合させても良い。
【0025】
前記カルボキシル基(−COOH)とスルホン酸基(−SO3H)はpHが6.5を超えるとイオン化し、負に帯電する。この負に帯電した基は、下記化学式3に示すようにポリアミドエピクロルヒドリン樹脂等のカチオン性樹脂を繊維表面に引き付け結合する。
【0026】
【化3】

【0027】
ペプタイド結合の開烈により生成したアミノ基(−NH2)は、ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂を構成しているアゼチジニウムカチオンと反応し、共有結合を形成する。さらに羊毛のチオール基(−SH)もアゼチジニウムカチオンと共有結合を形成する。またジサルファイド結合、ペプタイド結合の開裂によって生成したカルボキシル基とスルホン酸基もアゼチジニウムカチオンと共有結合を形成する。
【0028】
【化4】

【0029】
前記防縮加工に用いるポリアミドエピクロルヒドリン樹脂は、ディックハーキュレス社製、商品名“ハーコセット(Hercosett) 57”又は東邦化学工業社製、商品名“ポーラミン(Pollamin) E-10"として販売されている。“ハーコセット(Hercosett) 57”の構造式を下記化学式5に示す。
【0030】
【化5】

【0031】
次に本発明で使用するホスホリルコリン基含有重合体を下記化学式6に示す。このホスホリルコリン基含有重合体は、日本油脂株式会社製"Lipidure"(商品名)で各種グレードが市販されている。
【0032】
【化6】

【0033】
(但し、Xは−COO−,−O−,−C64−等の2価の有機残基、Yは炭素数1〜6のアルキレンオキシ基、Zは水素原子もしくはR5−O−(C=O)−(但し、R5は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基を示す。)、R1は水素原子もしくはメチル基を示す。R2,R3及びR4は同一もしくは異なる基であって、炭素数1〜6のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す。mは0又は1,nは1〜4の整数である。)で表わされるホスホリルコリン類似基含有単量体(例えば2−[(メタ)アクリロイルオキシエチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート])20〜90mol%と、メタクリル酸アルキルエステル等の疎水性単量体2〜80mol%を重合して、平均分子量100,000〜2,000,000としたポリマーである。このポリマーは、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとも呼ばれる。
【実施例】
【0034】
次に、実施例により本発明を具体的に説明する。本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
(1)物理的刺激の評価方法
物理的刺激(チクチク感)の評価は非特許文献2の方法に準拠した官能試験を用いた。判定者6人(女性3人、男性3人)が、温度20℃、相対湿度65%RHの恒温恒湿室内で、試料を首や前腕に触れさせチクチク感を判定する。判定基準は下記の5段階基準とし、下記の計算式に従いチクチク指数を算出した。チクチク指数が低い方ほど物理的刺激が少ないことを意味する。
判定基準 評点
全くチクチクしない 0
わずかにチクチクする 1
チクチクする 2
かなりチクチクする 3
強くチクチクする 4
チクチク指数=総評点和/判定者数
(2)化学的刺激の評価方法
化学的刺激の評価は刺激物質を染込ませた試料を24時間皮膚に貼り付けた後、剥離1時間後と24時間後の皮膚の状態を観察するパッチテストを用いた。刺激物質としてSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)の1.0%、3.0%水溶液を20μL使用した。被験者は男性5人で下記の本邦基準に従い判定し、下記の計算式に従い皮膚刺激指数を算出した。皮膚刺激指数は低いほど皮膚刺激が低いことを意味する。
基準 反応 評点
− 反応なし 0
± わずかな紅斑 0.5
+ 明らかな紅斑 1.0
++ 紅斑+浮腫、丘疹 2.0
+++ 紅斑+浮腫、丘疹+小水疱 3.0
++++ 大水疱 4.0
皮膚刺激指数=総評点和/被験者数×100
(3)洗濯耐久性評価方法
表面分析装置(ESCA)を用い表面に存在するリン原子を分析し、基質の炭素原子とリン原子の割合P/C値を求める。数値が高いほどホスホリルコリン基含有重合体の表面濃度が高いことを示す。洗濯はJIS L0217 105法に従い10回繰り返し、洗濯前後でのP/C値を求めて耐久性を評価した。
(4)風合い評価
KES−F計測システムを用いて風合い評価を行った。ここでKES−F計測システムとは、布の力学特性や風合いを評価する際に、当業界で一般的に行われている測定方法で、日本家政学会編「被服の資源と被服材料」、57−84頁、1989年12月10日、朝倉書店発行に記載されている。
【0035】
(実施例1)
平均繊維直径18.5μmの羊毛トップを有効塩素濃度2.0%owfの次亜塩素酸ナトリウム溶液の槽に浸漬し、次いで重亜硫酸ナトリウム4%owf、酢酸4%owfの槽で脱塩素処理を行い、水で洗浄した後、”ハーコセット125”(商品名、ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂、ハーキュレス社製)2%owf、40℃の槽に通して乾燥し、塩素化/樹脂防縮法による親水化羊毛トップを作成した。この親水化羊毛トップを原料とした糸番手2/80、平織り、目付け150g/m2の羊毛100%織物に”Lipidure CF72”(商品名、日本油脂株式会社製)3%owf、浴比1:20、pH6で30℃30分間処理を行った。処理後ホフマンプレス仕上げを行い、肌への刺激抑制効果をもつ織物を得た。
【0036】
(実施例2)
平均繊維直径18.5μm、糸番手2/80、平織り、目付け150g/m2の羊毛100%織物をユニテックス社の低温プラズマ加工機で反物速度10m/分で処理して親水化した後、”Lipidure CF72”(商品名、日本油脂株式会社製)3%owf、浴比1:20、pH6で30℃30分間処理を行った。処理後ホフマンプレス仕上げを行い、肌への刺激抑制効果をもつ織物を得た。
【0037】
(実施例3)
実施例2で使用した平均繊度18.5μmの羊毛100%織物を“ハイライト"(日産化学製、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム)5%owf、酢酸2%owf、浴比1:20で40℃、30分間処理することで親水化した後、“Lipidure CF72"(日本油脂株式会社製)3%owf、浴比1:20、pH5で30℃、30分間処理を行った。処理後ホフマンプレス仕上げを行い、肌への刺激抑制効果をもつ織物を得た。
【0038】
(比較例1)
実施例2で用いた織物の未処理品を比較例1とした。
【0039】
(比較例2)
実施例2で用いた織物に親水化処理を行わずに、“Lipidure CF72"(日本油脂株式会社製)3%owf、浴比1:20、pH5で30℃、30分間処理を行った。処理後ホフマンプレス仕上げを行い、比較例2の織物を得た。
【0040】
(比較例3)
塩素化/樹脂防縮法で親水化された平均繊度21.5μmの羊毛100%織物に“Lipidure CF72"(日本油脂株式会社製)3%owf、浴比1:20、pH5で30℃、30分間処理を行った。処理後ホフマンプレス仕上げを行い、比較例3の織物を得た。
【0041】
(比較例4)
実施例1で用いた織物に“Lipidure MF3"(日本油脂株式会社製)5%(w/w)、“ガブセンSR150"(ナガセケムテックス株式会社製・ポリエステル樹脂)2%(w/w)、絞り率60%でパディング処理を行い、150℃で3分間キュアリングした。処理後ホフマンプレス仕上げを行い、比較例4の織物を得た。
【0042】
本発明の実施例1〜3と比較例1〜4の測定結果を表1〜2にまとめて示す。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
本発明の実施例1〜3、比較例1と比較例3のチクチク指数の結果より明らかなとおり、平均繊度が20μm以下の実施例1〜3、比較例1は平均繊度が20μm以上の比較例3より物理的刺激が抑制されていることが確認できた。
【0046】
実施例1〜3、比較例3と比較例1の皮膚刺激指数の結果から、ホスホリルコリン基含有重合体処理を行った実施例1〜3、比較例3は行わなかった比較例1に比べて明らかに化学的皮膚刺激が抑制されていることが確認できた。
【0047】
実施例1〜3と比較例2のP/C値(洗濯前後)の結果からは、親水化前処理を行った実施例1〜3は行わなかった比較例2に比べて、明らかにホスホリルコリン基含有重合体の初期吸着量及び洗濯後の残留が大きいこと、すなわち洗濯耐久性に優れることが確認できた。
【0048】
実施例1と比較例4のKES測定値を比べると実施例1はバインダーを併用した比較例4に比べて明らかに、柔らかく柔軟な風合いであることが確認できた。
【0049】
以上から本発明の平均直径20.0μmの獣毛繊維を原料とすることで肌への物理的刺激を抑制すると同時に、前記獣毛繊維を親水化した後にホスホリルコリン基含有重合体を前記獣毛繊維に固定したことにより、肌に対する物理的及び化学的な刺激の抑制効果があり、洗濯耐久性を有し、かつ風合いも良好で、肌に接する衣料に適した獣毛繊維製品が確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明で使用する獣毛繊維の一例である羊毛繊維の構造を示す模式図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成繊維の平均直径が20.0μm以下の獣繊維を含む繊維製品であって、
前記獣毛繊維を親水化した後に、
ホスホリルコリン基含有重合体を前記獣毛繊維表面に固定したことを特徴とする獣毛繊維製品。
【請求項2】
前記親水化は、前記獣毛製品を塩素系化合物、モノ過硫酸、過マンガン酸塩及びオゾンから選ばれる少なくとも一つによる酸化である請求項1に記載の獣毛繊維製品。
【請求項3】
前記親水化は、前記酸化の後に、前記獣毛繊維にポリアミドエピクロルヒドリン樹脂を共有結合した防縮処理である請求項2に記載の獣毛繊維製品。
【請求項4】
前記親水化は、アルカリ性水溶液による処理である請求項1に記載の獣毛繊維製品。
【請求項5】
前記親水化は、低温プラズマ及びコロナ放電から選ばれる少なくとも一つによる放電である請求項1に記載の獣毛繊維製品。
【請求項6】
前記親水化により獣毛繊維の少なくとも外皮エピクチクル層を除去し、
前記エピクチクル層より内層の表面に前記ホスホリルコリン基含有重合体を固定した請求項1〜4のいずれかに記載の獣毛繊維製品。
【請求項7】
前記繊維製品は、綿、トップ、糸、織物、編物、フェルト及び不織布から選ばれる少なくとも一つである請求項1〜6のいずれかに記載の獣毛繊維製品。
【請求項8】
前記繊維製品は、スポーツ衣料品、肌着、シャツ、手袋、靴下又は寝具である請求項1〜6のいずれかに記載の獣毛繊維製品。


【図1】
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【公開番号】特開2006−132059(P2006−132059A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−325240(P2004−325240)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(390018153)日本毛織株式会社 (8)
【Fターム(参考)】