説明

玄米飯およびその製造方法

【課題】
発芽玄米,納豆菌が組合わされて確実に健康の保持,増進に寄与する健康食品を提供する。
【解決手段】
玄米1を納豆菌が入れられた水で洗浄した後、玄米1を納豆菌3が入れられた納豆菌水4に15〜20℃に維持して17〜21時間継続して浸漬して発芽させ、発芽して糠層に納豆菌が浸食された発芽玄米6を蒸気釜で1.2Kg/cmの圧力を維持して5〜7分間蒸かすことにより炊飯する。発芽玄米6が炊飯された玄米飯を急速に冷却して真空パックする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発芽玄米,納豆菌を組合わせた玄米飯に係る技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
最近、健康の保持,増進に寄与する健康食品として、発芽玄米,納豆が着目されている。
【0003】
発芽玄米は、玄米をわずかに発芽させたもので、玄米に含まれている酵素を発芽によって活性化させることで、白米に含有されないビタミンBやミネラルを豊富に含んでいる玄米の栄養価をさらに高めるとともに、玄米の旨味成分を増加させたものである。なお、この発芽玄米については、白米と同様の炊飯調理で食しても、白米と同様の消化吸収が得られるとされている。
【0004】
納豆は、煮炊きした大豆(煮大豆)に納豆菌(枯草菌)を添加して発酵させたもので、大豆の組織を発酵によって分解することで、タンパク質,ビタミン,ミネラル等の豊富な栄養価をさらに高めるとともに、納豆菌の生体調節機能等を保持させたものである。
【0005】
これ等の発芽玄米,納豆は、炊飯した発芽玄米の上に納豆を掛ける等の方法によって同時的に食されるのが一般的である。そこで、発芽玄米,納豆の構成材料を組合せた新規な食品の開発が期待されるようになっている。
【0006】
従来、発芽玄米,納豆の構成材料を組合わせた新規な食品としては、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。
【0007】
特許文献1には、発芽玄米の粉末に納豆菌を添加混合する食品が記載されている。
【0008】
特許文献1に係る食品は、発芽玄米,納豆の構成材料である発芽玄米の粉末と納豆菌とを組合せたもので、前述の栄養価等面から健康の保持,増進に寄与する健康食品であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−25663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に係る技術では、発芽玄米の粉末に納豆菌を添加する着想が提示されているものの、添加手段等の具体的な構成が開示されておらず、実現性に乏しいという問題点がある。また、発芽玄米の粉末をそのまま食するということであるため、確実に栄養価等を消化吸収することができず、確実に健康の保持,増進に寄与する健康食品とにはなり得ないという問題点がある。
【0011】
本発明は、このような問題点を考慮してなされたもので、発芽玄米,納豆菌が組合わされて確実に健康の保持,増進に寄与する健康食品となる玄米飯と、この玄米飯の製造方法とを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述の課題を解決するため、本発明に係る玄米飯は、特許請求の範囲の請求項1,2に記載の手段を採用する。
【0013】
即ち、請求項1では、糠層に納豆菌を浸食された発芽玄米が炊飯されてなる。
【0014】
この手段では、発芽玄米の糠層に納豆菌を浸食させることで、発芽玄米の胚乳に含まれて栄養価を高め旨味成分を増加させるのに関与した酵素がその活性を納豆菌によって阻害されることない。また、発芽玄米の糠層でタンパク質を分解する酵素が納豆菌から生成されるから胃腸の消化吸収を促進する。また、発芽玄米が炊飯されることで、温度の上昇によって納豆菌が増殖され、タンパク質を分解する酵素が増殖される。
【0015】
また、請求項2では、請求項1の玄米飯において、炊飯された発芽玄米が真空パックされていることを特徴とする特徴とする。
【0016】
この手段では、炊飯された発芽玄米を真空パックすることで、外気が遮断された脱気雰囲気が形成され腐敗細菌の増殖が阻止される。
【0017】
前述の課題を解決するため、本発明に係る玄米飯の製造方法は、特許請求の範囲の請求項3〜6に記載の手段を採用する。
【0018】
即ち、請求項3では、玄米を納豆菌が入れられた水に浸漬して発芽させた発芽玄米を炊飯する。
【0019】
この手段では、玄米を納豆菌が入れられた水に浸漬することで、玄米を発芽させて発芽玄米とすると同時に玄米の糠層に納豆菌を浸食させることができる。そして、発芽玄米の糠層に納豆菌を浸食させることで、発芽玄米の胚乳に含まれて栄養価を高め旨味成分を増加させるのに関与した酵素がその活性を納豆菌によって阻害されることがない。また発芽玄米の糠層でタンパク質を分解して酵素が納豆菌から生成されるから胃腸の消化吸収を促進する。また、発芽玄米が炊飯されることで、温度の上昇によって納豆菌が増殖されタンパク質を分解する酵素が増殖される。
【0020】
また、請求項4では、請求項3の玄米飯の製造方法において、玄米を納豆菌が入れられた水に浸漬する前に、納豆菌が入れられた別の水で洗浄することを特徴とする。
【0021】
この手段では、玄米を納豆菌が入れられた別の水で洗浄(洗米)することで、玄米の汚れを除去すると同時に玄米の糠層と納豆菌とを慣れさせる。
【0022】
また、請求項5では、請求項3または4の玄米飯の製造方法において、炊飯された発芽玄米を急速に冷却して真空パックすることを特徴とする。
【0023】
この手段では、炊飯された発芽玄米を急速に冷却して真空パックすることで、納豆菌を休眠状態にして発芽玄米の表面を覆い水分の逃散を阻止し、外気が遮断された脱気雰囲気が形成されて腐敗細菌の増殖が阻止される。
【0024】
また、請求項6では、請求項3〜5のいずれかの玄米飯の製造方法において、炊飯を蒸気釜で加圧しながら蒸かすことにより行うことを特徴とする。
【0025】
この手段では、炊飯を蒸気釜で加圧しながら蒸かすことにより行うことで、発芽玄米の胚乳,糠層の組織を破壊することなく短時間で食に適した状態とすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る玄米飯は、発芽玄米の糠層に納豆菌を浸食させることで、発芽玄米の胚乳に含まれて栄養価を高め、旨味成分を増加させるのに関与した酵素がその活性を納豆菌によって阻害されることがない。また発芽玄米の糠層でタンパク質を分解する酵素が納豆菌から生成され、胃腸の消化吸収を促進する。発芽玄米が炊飯されることで、温度の上昇によって納豆菌が増殖されタンパク質を分解する酵素が増殖されるため胃腸の消化吸収を促進する。このように発芽玄米,納豆菌が組合わされて確実に健康の保持,増進に寄与する健康食品となることができる効果がある。
【0027】
また、請求項2として、炊飯されたものを真空パックすることで、外気が遮断された脱気雰囲気が形成され腐敗細菌の増殖が阻止されるため、長期保存が可能になる効果がある。
【0028】
本発明に係る玄米飯の製造方法は、玄米を納豆菌が入れられた水に浸漬することで、玄米を発芽させて発芽玄米とすると同時に玄米の糠層に納豆菌を浸食させることができる。そして、発芽玄米の糠層に納豆菌を浸食させることで、発芽玄米の胚乳に含まれて栄養価を高め旨味成分を増加させるのに関与した酵素がその活性を納豆菌によって阻害されることがない。また発芽玄米の糠層でタンパク質を分解する酵素が納豆菌から生成されるから胃腸の消化吸収を促進する。また、発芽玄米が炊飯されることで、温度の上昇によって納豆菌が増殖されタンパク質を分解する酵素が増殖される。従って、発芽玄米,納豆菌が組合わされて確実に健康の保持,増進に寄与する健康食品を簡単に製造することができる効果がある。
【0029】
また、請求項4として、玄米を納豆菌が入れられた別の水で洗浄(洗米)することで、玄米の汚れを除去すると同時に玄米の糠層と納豆菌とを慣れさせるため、発芽玄米の糠層への納豆菌の浸食が円滑になされる効果がある。
【0030】
また、請求項5として、炊飯された発芽玄米を急速に冷却して真空パックすることで、納豆菌を一気に休眠状態として発芽玄米の表面を覆い水分の逃散を阻止し、外気が遮断された脱気雰囲気を形成して腐敗細菌の増殖が阻止されるため、乾燥が防止された良質な状態での長期保存が可能になる効果がある。
【0031】
また、請求項6として、炊飯を蒸気釜で加圧しながら蒸かすことにより行うことで、発芽玄米の胚乳,糠層の組織を破壊することなく短時間で食に適した状態とすることができるため、炊飯中に発芽玄米の胚乳に含まれて栄養価を高め旨味成分を増加させるのに関与した酵素がその活性を納豆菌によって阻害されるのを確実に防止することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る玄米飯およびその製造方法を実施するための形態の製造工程図のフローチャートである。
【図2】本発明に係る玄米飯およびその製造方法を実施するための形態の玄米飯の成分分析表である。
【図3】本発明に係る玄米飯およびその製造方法を実施するための形態の玄米飯の遊離γ−アミノ酪酸の含有量の分析表である。
【図4】本発明に係る玄米飯およびその製造方法を実施するための形態の玄米飯の各種アミノ酸の含有量の分析表である。
【図5】本発明に係る玄米飯およびその製造方法を実施するための形態の玄米飯の食物繊維,脂肪酸の含有量の分析表である。である。
【図6】本発明に係る玄米飯およびその製造方法を実施するための形態と白米,玄米,発芽玄米との含水分の分析比較表である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る玄米飯およびその製造方法を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0034】
図1には、本発明に係る玄米飯およびその製造方法を実施するための形態の製造工程が示されている。
【0035】
この形態では、玄米1,水2,納豆菌3を製造材料としている。
【0036】
玄米1については、好ましくは収穫後1年以内ものを選択する。水2については、通常の飲用に適応したもので差支えない。納豆菌3については、納豆製造用として市販されているものが使用される。
【0037】
まず、納豆菌水4を調整する。
【0038】
納豆菌水4は、2リットルの水2に対して1gの納豆菌3を添加して調整する。
【0039】
次ぎに、玄米1を洗浄する。
【0040】
玄米1の洗浄は、玄米1の表面に付着している汚れを除去するために行われるもので、炊飯に先行して行われる通常の洗米である。この洗浄に使用される水2については、適量の納豆菌3を添加する。なお、この納豆菌3の添加の手段としては、先に調整した納豆菌水4を利用することもできる。洗浄する水2への納豆菌3の添加は、玄米1の糠層と納豆菌3とを慣れさせ、後述の納豆菌水4への浸漬による発芽玄米6の糠層への納豆菌3の浸食を円滑にする。
【0041】
次ぎに、洗浄された洗玄米5を納豆菌水4に浸漬する。
【0042】
洗玄米5の浸漬は、玄米1を発芽させるために行われるもので、納豆菌水4を15〜20℃に維持して17〜21時間継続する。発芽の温度環境を低く抑制することは、雑菌の繁殖の防止に役立つ。なお、浸漬を21時間以上継続した場合には、大きく発芽してしまうことになる。
【0043】
納豆菌水4に浸漬された洗玄米5は、わずかに発芽して発芽玄米6となる。この際、発芽玄米6の糠層に納豆菌水4に含まれている納豆菌3が浸食される。この発芽玄米6は、納豆菌3によって視覚的には黒色様を呈するようになる。この結果、発芽玄米6の胚乳に含まれて栄養価を高め、また旨味成分を増加させるのに関与した酵素がその活性を納豆菌3によって阻害されることなく、発芽玄米6の糠層でタンパク質を分解する酵素(プロテアーゼ)が納豆菌3から生成される。なお、納豆菌3は、一般的に20℃以下だと不活性化して増殖しないとされているが、水分,栄養源が充分に存在する条件下では活性を維持して増殖する。
【0044】
次ぎに、発芽玄米6を炊飯する。
【0045】
発芽玄米6の炊飯は、発芽玄米6を膨潤化して消化吸収に適した状態にするもので、好ましくは蒸気釜を使用して1.2Kg/cmの圧力を維持して5〜7分間蒸かす。なお、蒸気釜の構造によっては、1.2Kg/cmの圧力に到達するのに5分間程度を要し、その後蒸気を逃がしながら1.2Kg/cmの圧力を維持して蒸かすことになる。
【0046】
発芽玄米6が炊飯される際には、発芽玄米6の糠層において膨潤化(α化)を妨げるタンパク質が納豆菌3によって生成された酵素で分解されているため、白米と同様の食感の炊上がりが得られる。蒸気釜として遠赤外線が発生するものを使用すると、いわゆる芯のない炊上がりが得られる。また、炊飯の温度上昇によって、納豆菌3が増殖されタンパク質を分解して消化吸収を促進する酵素も増殖される。ちなみに、納豆菌3には、300℃以上でも増殖するものがある。なお、前述の圧力,時間を超えた炊飯を行うと、発芽玄米6の糠層,胚乳の組織が崩壊して、納豆菌3や納豆菌3から生成された酵素が胚乳に浸食し胚乳に含まれて栄養価を高め旨味成分を増加させるのに関与した酵素がその活性を阻害されることになる。蒸気釜の使用は、前述の圧力,時間の設定,調整を容易にする。
【0047】
炊飯された発芽玄米6は、そのまま食される玄米飯7となる。この玄米飯7は、発芽玄米6,納豆菌3が組合わされて確実に健康の保持,増進に寄与する健康食品となっている。そして、洗玄米5を発芽させて発芽玄米6とする際に、納豆菌4の発芽玄米6の糠層への浸食も同時に行われるため、製造が面倒になることがない。
【0048】
次ぎに、玄米飯7を冷却する。
【0049】
玄米飯7の冷却は、納豆菌3を休眠状態とするもので、好ましくは一気に休眠状態にするため急速冷却とする。
【0050】
冷却された玄米飯7は、表面に休眠状態となって胞子化された納豆菌3が被覆され、水分の逃散が防止される。
【0051】
次ぎに、冷却された玄米飯7を真空パックする。
【0052】
玄米飯7の真空パックは、外気が遮断された脱気雰囲気を形成して腐敗細菌の増殖を阻止するもので、通常の食品用の合成樹脂フィルムが使用される。
【0053】
真空パックされた玄米飯7は、乾燥が防止された良質な状態で長期保存が可能な保存用玄米飯8となる。この保存用玄米飯8は、前述のような胞子化された納豆菌3の被覆によって、乾燥が有効に防止される。
【0054】
以上、図示した形態の外に、発芽玄米6を他の炊飯器で炊飯することも可能である。
【実施例】
【0055】
前述の本発明に係る玄米飯およびその製造方法を実施するための形態において、納豆菌水4に15℃で18時間の浸漬を行った発芽玄米6について各種の分析を実施した。
【0056】
図2に示す成分分析表によると、膨潤化を妨げるタンパク質が少なくなっていることが確認される。
【0057】
図3に示す分析表によると、GABAと称される重要な生体調節機能をもつ遊離γ−アミノ酪酸が充分に含まれていることが確認される。
【0058】
図4に示す分析表によると、旨味成分となる各種のアミノ酸も充分に含まれていることが確認される。
【0059】
図5に示す分析表によると、食物繊維,脂肪酸も充分に含まれていることが確認される。
【0060】
さらに、前述の発芽玄米6と、納豆菌に浸漬されていない通常の白米、玄米ならびに発芽玄米とを、それぞれ電気炊飯器で炊飯して3日間保温状態とした後、冷却して真空パックしておき、水分測定を行った。
【0061】
図6の分析比較表において、サンプルAが白米を炊飯して真空パックしたものであり、サンプルBが玄米を炊飯して真空パックしたものであり、サンプルCが発芽玄米を炊飯して真空パックしたものであり、サンプルDが前述の保存用玄米飯8である。この分析比較表に示すように、前述の保存用玄米飯8の含水分量が最も多いことが確認される。
【符号の説明】
【0062】
1 玄米
2 水
3 納豆菌
4 納豆菌水
6 発芽玄米
7 玄米飯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糠層に納豆菌を浸食された発芽玄米が炊飯されてなる玄米飯。
【請求項2】
請求項1の玄米飯において、炊飯された発芽玄米が真空パックされていることを特徴とする玄米飯。
【請求項3】
玄米を納豆菌が入れられた水に浸漬して発芽させた発芽玄米を炊飯する玄米飯の製造方法。
【請求項4】
請求項3の玄米飯の製造方法において、玄米を納豆菌が入れられた水に浸漬する前に、納豆菌が入れられた別の水で洗浄することを特徴とする玄米飯の製造方法。
【請求項5】
請求項3または4の玄米飯の製造方法において、炊飯された発芽玄米を急速に冷却して真空パックすることを特徴とする玄米飯の製造方法。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれかの玄米飯の製造方法において、炊飯を蒸気釜で加圧しながら蒸かすことにより行うことを特徴とする玄米飯の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−85590(P2012−85590A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236000(P2010−236000)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(510279767)株式会社 L12 (1)
【Fターム(参考)】