説明

玉軸受用保持器および玉軸受

【課題】 玉による潤滑油の剪断抵抗を起因とするトルクを容易に低減させる。
【解決手段】 軸方向に向き合う二枚の環状体10の対向面11に玉を収容する半球状のポケット12を周方向の複数箇所に形成し、その対向面11を衝合させてポケット12の周方向両端部に設けられた結合部18により二枚の環状体10を結合させた玉軸受用保持器であって、ポケット12の内周面に潤滑材抜け用凹部19を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玉を転動自在に保持する合成樹脂製の玉軸受用保持器、およびその保持器を外輪および内輪間に組み込んだ玉軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、発動機を有する車両のトランスミッションのギヤ支持軸には、深溝玉軸受やアンギュラ玉軸受などの各種の玉軸受が広く使用されている。
【0003】
この種の玉軸受は、外径面に内側転走面が形成された内輪と、その内輪の外側に配置され、内径面に外側転走面が形成された外輪と、内輪の内側転走面と外輪の外側転走面との間に転動自在に介在された複数の玉と、内輪と外輪との間に配され、各玉を円周方向等間隔に保持する保持器とで主要部が構成されている。この外輪あるいは内輪のいずれか一方がハウジングなどの固定部分に装着され、他方が回転軸などの回転部分に装着される。
【0004】
特に、電動車両やハイブリッド車両の駆動モータは、小型化すると共に効率向上を目的として高速回転化する傾向にあり、回転軸などの回転部分も高速回転となる。その結果、潤滑不足、トルク(発熱)、遠心力による保持器の変形などが問題となる。この潤滑不足やトルク(発熱)による保持器の変形に対しては保持器の形状を工夫することで解決することができ、また、軽量な合成樹脂製の保持器を使用することで遠心力による保持器の変形を抑制することが可能である。
【0005】
遠心力による保持器の変形を抑制することを目的とした軽量な合成樹脂製の保持器は種々提案されている。この種の保持器としては、円環状をなす主部と、その主部の軸方向片面に互いに間隔をあけて円周方向等配で一体的に突設された一対ずつの弾性片とで構成され、これら一対ずつの弾性片の間に凹設されたポケットで玉を転動自在に保持する冠形状を有するものがある。この冠型保持器では、玉を片側のみから保持しているため、大きな遠心力が負荷された時に不均等な変形により玉がポケットから脱落したり、内外輪などの他部品と干渉する可能性がある。
【0006】
このような懸念を解消するため、玉を両側から保持する軸方向合わせタイプの保持器が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に開示された保持器は、一対の環状体を互いに軸方向に結合させた構造を備え、円環状の基部と、その基部から等間隔で立設する柱部とが一体に成形されており、環状体同士を一方の柱部が他方の柱部間の中間点に位置するように対向させ、隣接する柱部間で玉を保持するためのポケットを形成するように結合させたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−115128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、自動車用途の玉軸受においては、燃費向上などの環境問題からもトルク低減が求められている。油浴潤滑下で使用される玉軸受におけるトルクの中で、保持器と玉との間で発生するトルクは、玉による潤滑油の剪断抵抗が多くの割合を占めている。また、その剪断抵抗のほとんどがポケットの内周面とそのポケットに収容された玉の外径面との間に形成された油膜を剪断する時に発生するものである。
【0009】
ところで、特許文献1で開示された軸方向合わせタイプの保持器のように、ポケットの内周面が玉の外径形状に沿うような単一の曲面で形成されている場合、玉を覆うポケットの内周面の面積が冠型保持器よりも増大する。これは、玉の外径面とポケットの内周面との間の微小な隙間を潤滑油が通過しようとする際、その潤滑油の剪断抵抗が大きくなり、その剪断抵抗により軸受のトルク(発熱)が大きくなる一つの要因となっている。
【0010】
そこで、本発明は前述の問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、玉による潤滑油の剪断抵抗を起因とするトルクを容易に低減させ得る玉軸受用保持器および玉軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、軸方向に向き合う二枚の環状体の対向面に玉を収容する半球状のポケットを周方向の複数箇所に形成し、対向面を衝合させてポケットの周方向両端部に設けられた結合部により二枚の環状体を結合させた玉軸受用保持器であって、前記ポケットの内周面に潤滑油抜け用凹部を設けたことを特徴とする。なお、この凹部の断面形状は、円弧状あるいは角状のいずれであってもよく任意である。
【0012】
本発明では、ポケットの内周面に潤滑油抜け用凹部を設けたことにより、玉の外径面とポケットの内周面との間の隙間が拡大されることになり、その隙間を潤滑油が通過し易くなる。そのため、玉による潤滑油の剪断抵抗を小さく抑えることができて低トルク化が容易に図れる。
【0013】
本発明における結合部は、一方の環状体のポケットの周方向端部外径側を軸方向に延出させて外径側凸部を形成してその内周面を転動体と当接可能にすると共に内径側を凹ませて内径側凹部を形成し、かつ、他方の環状体のポケットの周方向端部内径側を軸方向に延出させて内径側凸部を形成してその内周面を転動体と当接可能にすると共に外径側を凹ませて外径側凹部を形成し、外径側凸部を外径側凹部に挿入すると共に内径側凸部を内径側凹部に挿入することにより外径側凸部と内径側凸部を軸方向で係合させ、外径側凸部と内径側凸部との係合面を、外径側凸部および内径側凸部の基端側よりも先端側が厚肉となるように軸方向に対して傾斜させた構造が望ましい。
【0014】
このようにすれば、外径側凸部と内径側凸部を軸方向で係合させることにより、その外径側凸部と内径側凸部との係合面に沿って摩擦力が発生する。また、外径側凸部と内径側凸部との係合面を、外径側凸部および内径側凸部の基端側よりも先端側が厚肉となるように軸方向に対して傾斜させたことにより、外径側凸部と内径側凸部との係合面の法線方向に発生した反力の軸方向成分が現出する。この外径側凸部と内径側凸部との係合面に沿って発生する摩擦力と、その係合面の法線方向に発生する反力の軸方向成分との相乗作用により、高回転により大きな遠心力が負荷された場合であっても、二枚の環状体が軸方向に分離することを確実に防止することができる。
【0015】
本発明における結合部は、外径側凸部と内径側凸部との係合面の傾斜角度を5°以上とした構造が望ましい。このように傾斜角度を設定すれば、高回転により大きな遠心力が負荷された時の係合面の変形を抑制することが容易となり、係合面に反力の軸方向成分を確実に作用させることができて二枚の環状体の結合力を確保することが容易となる。なお、係合面の傾斜角度が5°よりも小さいと、高回転により大きな遠心力が負荷された場合、係合面の変形を抑制することが困難となり、係合面に反力の軸方向成分を確実に作用させることが難しくなる。
【0016】
本発明における結合部は、内径側凸部を外径側凸部よりも厚肉にした構造が望ましい。このようにすれば、高回転により大きな遠心力が負荷された際、外径側凸部よりも厚肉にした内径側凸部の質量が外径側凸部よりも大きいことから、その内径側凸部が外径側凸部よりも大きく変形する。ここで、外径側凸部と内径側凸部との係合面は、外径側凸部および内径側凸部の基端側よりも先端側が厚肉となるように軸方向に対して傾斜していることから、内径側凸部の変形は、外径側凸部と内径側凸部との係合面での結合力を高めるように作用する。
【0017】
本発明における結合部は、ポケットの一方の周方向端部に外径側凸部および内径側凹部を形成すると共に、他方の周方向端部に内径側凸部および外径側凹部を形成した構造が望ましい。このような構造にすれば、一つの金型で製作した一種の環状体を使用して一方の環状体と他方の環状体とすることができ、製品コストの低減が図れる。
【0018】
なお、本発明における環状体は、保持器の軽量化が図れる点で合成樹脂製であることが有効である。この環状体を構成する合成樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフタルアミド樹脂あるいはポリアミドイミド樹脂から選択されたいずれか一つが好適である。
【0019】
以上の構成を具備した保持器に、互いに相対回転する外輪および内輪と、外輪と内輪との間に介在する玉とを付加すれば、玉軸受を構成することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ポケットの内周面に潤滑油抜け用凹部を設けたことにより、玉の外径面とポケットの内周面との間の隙間が拡大されることになり、その隙間を潤滑油が通過し易くなる。そのため、玉による潤滑油の剪断抵抗を小さく抑えることができる。その結果、玉による潤滑油の剪断抵抗により保持器と玉との間に発生するトルクを低減させることが容易となる。これにより、近年における燃費向上などの環境問題に適合した自動車用途の玉軸受を容易に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態で、二枚の環状体を結合させる前の状態を示す組立分解斜視図である。
【図2】図1の二枚の環状体を結合させた後の状態を示す組立完了斜視図である。
【図3】結合前の二枚の環状体を示す部分展開図である。
【図4】結合後の二枚の環状体を示す部分展開図である。
【図5】本発明の他の実施形態で、二枚の環状体を結合させる前の状態を示す組立分解斜視図である。
【図6】図5の二枚の環状体を結合させた後の状態を示す組立完了斜視図である。
【図7】結合前の二枚の環状体を示す部分展開図である。
【図8】結合後の二枚の環状体を示す部分展開図である。
【図9】図3のA−A線および図7のE−E線に沿う断面図である。
【図10】図3のB−B線および図7のF−F線に沿う断面図である。
【図11】図4のC−C線および図8のG−G線に沿う断面図である。
【図12】図4のD−D線および図8のH−H線に沿う断面図である。
【図13】本発明の保持器を組み込んだ玉軸受を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る玉軸受用保持器および玉軸受の実施形態を以下に詳述する。なお、この実施形態の玉軸受は、特に、電動車両やハイブリッド車両において油浴潤滑下で使用される自動車用途の高回転軸受としての密封型玉軸受に好適であるが、密封型ではない他の玉軸受にも適用可能である。
【0023】
この実施形態の玉軸受1は、図13に示すように、外径面に内側転走面2aが形成された内輪2と、その内輪2の外側に配置され、内径面に外側転走面3aが形成された外輪3と、内輪2の内側転走面2aと外輪3の外側転走面3aとの間に転動自在に介在された複数の玉4と、内輪2と外輪3との間に配され、各玉4を円周方向等間隔に保持する保持器5と、内輪2と外輪3間に形成された環状空間6に配され、弾性部材からなるシールリップを有するシール部7とで主要部が構成されている。
【0024】
この実施形態では、外輪3がハウジングなどの固定部分に装着され、内輪2が回転軸などの回転部分に装着される。シール部7は、芯金8aに一体的に加硫接着されたゴム等の弾性部材からなるシール部材8bで構成され、そのシール部材8bは基端部が固定側である外輪3の内径端部に装着され、先端部に内輪2の外径端部に接触するシールリップ8cを有する。なお、この実施形態では内輪回転タイプを例示しているが、内輪2がハウジングなどの固定部分に装着され、外輪3が回転軸などの回転部分に装着された外輪回転タイプにも適用可能である。
【0025】
この玉軸受1は、高速回転下において遠心力による保持器5の変形を抑制することを目的として軽量な合成樹脂製の保持器5を備えている。この種の保持器5は、図1および図2に示すように、軸方向に向き合う二枚の環状体10の対向面11に玉4(図13参照)を転動自在に収容する半球状のポケット12を周方向の複数箇所に形成し、環状体10のそれぞれの対向面11を衝合させてポケット12の周方向両端部に設けられた結合部18により二枚の環状体10を結合させた対称形状を有する。この環状体10におけるポケット12の内周面は単一の曲率半径を持つ凹球面状をなす。
【0026】
図1〜図4は本発明の一つの実施形態で、図1および図3は二枚の環状体10を結合させる前の状態を示し、図2および図4は二枚の環状体10を結合させた後の状態を示す。同図に示すように、この実施形態では、ポケット12の内周面に、断面形状が円弧状の潤滑油抜け用凹部19を設けている。この凹部19は、それぞれの環状体10のポケット12の内周面の二箇所に径方向に延びる凹溝状に形成されている。
【0027】
図5〜図8は本発明の他の実施形態で、図5および図7は二枚の環状体10を結合させる前の状態を示し、図6および図8は二枚の環状体10を結合させた後の状態を示す。同図に示すように、この実施形態では、ポケット12の内周面に、断面形状が角状の潤滑油抜け用凹部20を設けている。この凹部20は、それぞれの環状体10のポケット12の内周面の二箇所に径方向に延びる凹溝状に形成されている。
【0028】
これらの実施形態における保持器5では、ポケット12の内周面に潤滑油抜け用凹部19,20を設けたことにより、玉4の外径面とポケット12の内周面との間の隙間が拡大されることになり、その隙間を潤滑油が通過し易くなる。そのため、玉4による潤滑油の剪断抵抗を小さく抑えることができて低トルク化が容易に図れる。
【0029】
ここで、凹部19,20は、ポケット12の内周面に径方向外径側と径方向内径側との間で切り抜けるように形成された凹溝状をなすことから、玉4の外径面とポケット12の内周面との間で拡大された隙間を潤滑油がより一層通過し易くなっている。また、この実施形態では、それぞれの環状体10のポケット12の内周面の二箇所に凹部19,20を設けているが、その凹部19,20の位置および数については任意である。
【0030】
以上の実施形態の保持器5は、二枚の環状体10を結合させるための手段として、以下の結合構造を具備する。
【0031】
図1、図3、図5および図7に示すように、二枚の環状体10のそれぞれは、ポケット12の一方の周方向端部の外径側を軸方向に延出させて外径側凸部13を形成すると共に内径側を凹ませて内径側凹部14を形成し、かつ、ポケット12の他方の周方向端部の内径側を軸方向に延出させて内径側凸部15を形成すると共に外径側を凹ませて外径側凹部16を形成する。
【0032】
このように、二枚の環状体10のそれぞれで、ポケット12の一方の周方向端部に外径側凸部13および内径側凹部14を形成すると共に、他方の周方向端部に内径側凸部15および外径側凹部16を形成した構造を採用したことにより、一つの金型で製作した一種の環状体10を使用して一方の環状体10と他方の環状体10とすることができ、製品コストの低減が図れる。
【0033】
この構造において、一方の環状体10の外径側凸部13を他方の環状体10の外径側凹部16に挿入すると共に一方の環状体10の内径側凸部15を他方の環状体10の内径側凹部14に挿入することにより、外径側凸部13と内径側凸部15を軸方向で係合させる。また、外径側凸部13と内径側凸部15との係合面13a,15aを、外径側凸部13および内径側凸部15の基端側よりも先端側が厚肉となるように軸方向に対して傾斜させている(図9および図10参照)。
【0034】
図2、図4、図6および図8に示すように、二枚の環状体10のそれぞれの対向面11を衝合させ、外径側凸部13と内径側凸部15を所定の締め代でもって軸方向で係合させることにより、その外径側凸部13と内径側凸部15との係合面13a,15aに沿って摩擦力が発生する。また、外径側凸部13と内径側凸部15との係合面13a,15aを、外径側凸部13および内径側凸部15の基端側よりも先端側が厚肉となるように軸方向に対して傾斜させたことにより、外径側凸部13と内径側凸部15との係合面13a,15aの法線方向に発生した反力の軸方向成分が現出する。
【0035】
この外径側凸部13と内径側凸部15との係合面13a,15aに沿って発生する摩擦力と、その係合面13a,15aの法線方向に発生する反力の軸方向成分との相乗作用により、高回転により大きな遠心力が負荷された場合であっても、二枚の環状体10が軸方向に分離することを確実に防止することができる。
【0036】
このように、環状体10のポケット12の周方向両端部に、外径側凸部13および内径側凹部14と内径側凸部15および外径側凹部16からなる結合部18を設けたことにより、高回転により大きな遠心力が負荷された場合、一方の環状体10と他方の環状体10が相互に軸方向外側へ離隔してポケット12が開こうとしても、前述の結合部18により玉4をポケット12内に収容した状態を維持することが容易となる。
【0037】
この実施形態の結合構造では、外径側凸部13と内径側凸部15との係合面13a,15aの傾斜角度θ(図9および図10参照)を5°以上とする必要がある。このように傾斜角度θを設定することにより、高回転により大きな遠心力が負荷された時の係合面13a,15aの変形を抑制することが容易となり、係合面13a,15aに反力の軸方向成分を確実に作用させることができて二枚の環状体10の結合力を確保することが容易となる。なお、係合面13a,15aの傾斜角度θが5°よりも小さいと、高回転により大きな遠心力が負荷された場合、係合面13a,15aの変形を抑制することが困難となり、係合面13a,15aに反力の軸方向成分を確実に作用させることが難しくなる。
【0038】
また、この結合構造では、図11および図12に示すように、内径側凸部15を外径側凸部13よりも厚肉にしている(tIN>tOUT)。このように内径側凸部15を外径側凸部13よりも厚肉にすることにより、高回転により大きな遠心力が負荷された際、外径側凸部13よりも厚肉にした内径側凸部15の質量が外径側凸部13よりも大きいことから、その内径側凸部15が外径側凸部13よりも大きく変形する。ここで、外径側凸部13と内径側凸部15との係合面13a,15aは、外径側凸部13および内径側凸部15の基端側よりも先端側が厚肉となるように軸方向に対して傾斜していることから、内径側凸部15の変形は、外径側凸部13と内径側凸部15との係合面13a,15aでの結合力を高めるように作用する。
【0039】
なお、以上で説明した環状体10は、保持器5の軽量化を図るために合成樹脂製としている。この環状体10を構成する合成樹脂としては、コスト面や耐油性の点を考慮すれば、ポリアミド樹脂(PA46、PA66、PA9T、PA11、PA6等)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリフタルアミド樹脂(PPA)あるいはポリアミドイミド樹脂(PAI)から選択されたいずれか一つが好適である。
【0040】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0041】
1 玉軸受
2 内輪
3 外輪
4 玉
5 保持器
10 環状体
11 対向面
12 ポケット
13 外径側凸部
13a 係合面
14 内径側凹部
15 内径側凸部
15a 係合面
16 外径側凹部
18 結合部
19,20 凹部
θ 傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に向き合う二枚の環状体の対向面に玉を収容する半球状のポケットを周方向の複数箇所に形成し、前記対向面を衝合させて前記ポケットの周方向両端部に設けられた結合部により二枚の環状体を結合させた玉軸受用保持器であって、前記ポケットの内周面に潤滑油抜け用凹部を設けたことを特徴とする玉軸受用保持器。
【請求項2】
前記凹部は、その断面形状が円弧状をなす請求項1に記載の玉軸受用保持器。
【請求項3】
前記凹部は、その断面形状が角状をなす請求項1に記載の玉軸受用保持器。
【請求項4】
前記結合部は、一方の環状体のポケットの周方向端部外径側を軸方向に延出させて外径側凸部を形成してその内周面を前記玉と当接可能にすると共に内径側を凹ませて内径側凹部を形成し、かつ、他方の環状体のポケットの周方向端部内径側を軸方向に延出させて内径側凸部を形成してその内周面を前記玉と当接可能にすると共に外径側を凹ませて外径側凹部を形成し、前記外径側凸部を外径側凹部に挿入すると共に前記内径側凸部を内径側凹部に挿入することにより前記外径側凸部と内径側凸部を軸方向で係合させ、前記外径側凸部と内径側凸部との係合面を、外径側凸部および内径側凸部の基端側よりも先端側が厚肉となるように軸方向に対して傾斜させた請求項1〜3のいずれか一項に記載の玉軸受用保持器。
【請求項5】
前記結合部は、前記外径側凸部と前記内径側凸部との係合面の傾斜角度を5°以上とした請求項4に記載の玉軸受用保持器。
【請求項6】
前記結合部は、前記内径側凸部を前記外径側凸部よりも厚肉にした請求項4又は5に記載の玉軸受用保持器。
【請求項7】
前記結合部は、前記ポケットの一方の周方向端部に外径側凸部および内径側凹部を形成すると共に、他方の周方向端部に内径側凸部および外径側凹部を形成した請求項4〜6のいずれか一項に記載の玉軸受用保持器。
【請求項8】
前記環状体は合成樹脂製である請求項1〜7のいずれか一項に記載の玉軸受用保持器。
【請求項9】
前記合成樹脂は、ポリアミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフタルアミド樹脂あるいはポリアミドイミド樹脂から選択されたいずれか一つである請求項8に記載の玉軸受用保持器。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の保持器と、互いに相対回転する外輪および内輪と、前記外輪と内輪との間に介在する玉とを備えた玉軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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