説明

珪素とアルカリ土類金属との合金からまたはアルカリ土類金属の珪化物からのシランの製造

本発明は、式Sin2n+2の化合物またはこの化合物の混合物(ここでnは1以上3以下の整数である)の製造方法であって、a)粉末状の式M1x2ySizの少なくとも1種の珪化物または珪素合金(ここでM1は還元性金属であり、M2はアルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、x、yおよびzは0から1まで変化し、zは0とは異なり、和x+yは0とは異なる)を、エーテル非プロトン性溶媒中に予め溶解させた塩化水素酸と反応させる工程を含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、珪素合金からまたは珪化物からの水素化珪素またはシランの製造に関する。
【0002】
ある種のシラン、より詳細にはモノシランすなわち四水素化珪素(SiH4)は、シリコンベクターとして、アモルファスシリコン、多結晶シリコン、ナノ形態もしくはマクロ形態シリコンとも呼ばれるナノ結晶もしくは単結晶シリコン、シリカ、窒化珪素または他のシリコン化合物を堆積させる技術、たとえば気相堆積技術において使用される。
【0003】
シランから得られるアモルファスシリコンおよび単結晶シリコンの薄膜堆積は太陽電池の製造を可能にする。
【0004】
また、シラン分解および炭化珪素などの化合物の製造により、酸腐食に対して抵抗力のあるコーティングを得ることが可能である。
【0005】
最後に、シランを不飽和炭化水素の単結合または三重結合に付加して、有機シランを与えることができる。
【0006】
モノシランの市場は、集積半導体の作製と、薄膜または結晶系太陽(光)電池、半導体部材の製造およびフラットスクリーンの製造との両面で非常に大きな拡大を経験している。
【0007】
以下に説明するいくつかのタイプのプロセスが今までに使用されてきた。
【0008】
第1に、450℃〜550℃の温度にあるKCl/LiCl浴中でのSiCl4のLiHによる還元が知られている。反応収率は高いが、このプロセスは一方では、リチウム資源が非常に限られているというのにLiHの入手可能性に依存し、他方では、電気分解によってリチウム金属をリサイクルできる可能性に依存する。反応混合物は非常に腐食性が高く特殊な材料を用いる。このプロセスは少量のシランを製造するのに使用されてきた。
【0009】
有機溶媒中でのSiF4のNaAlH4による還元がもう1つの例である。このプロセスは、他の薬品製造プロセスの副生物であるSiF4とナトリウムとが水素化ナトリウムアルミニウムを製造するために存在している場合にのみ、工業的に実施可能である。このプロセスは特に上記2つの理由のために容易に利用することができない。
【0010】
知られているもう1つの反応は、液体NH3媒体中での化学量論的なSiMg2合金の化学攻撃である。反応収支は以下の通りである:
【化1】

【0011】
このプロセスは室温温度に近い温度および大気圧で行われる。珪化マグネシウム(Mg2Si)は水性媒体中およびアンモニア媒体中で徹底的に試験されてきた。工業的製造ユニットで行うのに十分に許容できるが、このプロセスは以下の大きな欠点を有する:
・工業的珪化マグネシウムは、マグネシウムの揮発性のせいで、70%〜80%の化学量論的化合物を含有するにすぎない。化学量論的化合物を製造するための条件は、この工業にとって高価すぎる製品を含む;および
・モノシランがこのルートで製造されるのと同時に、多くの高次シラン、たとえばポリクロロシラン、シロキサンおよびシリコーンゴムが生じ、このことは、モノシランの物質収支を乏しいものにし、プロセス制御の大きな難題を招く。
【0012】
このプロセスはこのプロセスを制御することの難しさと液体アンモニアの非常に規制された使用とのために満足のいくものではない。
【0013】
知られているもう1つの反応は、グラフトアミン基などを含有する樹脂上でのSiHCl3の不均化である。全体的なプロセスを表現すると、たとえば:
a)4SiMetal + 12HCl → 4SiHCl3 + 4H2 (約300℃〜約1000℃の温度)
b)4SiHCl3 ←→ SiH4 + 3SiCl4 (室温に近い温度)
c)3SiCl4 + 3H2 → 3SiHCl3 + 3HCl (約1000℃の温度)となり、
すなわち、以下の反応収支となる:
4SiMetal + 9HCl → SiH4 + 3SiHCl3 + H2
【0014】
上記反応の他の形態は、たとえば:
a)4SiMetal + 16HCl → 4SiCl4 + 8H2 (約1000℃〜約1100℃の温度)
b)4SiCl4 + 4H2 → 4SiHCl3 + 4HCl (約1000℃の温度)
4SiHCl3 → SiH4 + 3SiCl4となり、
すなわち、以下の反応収支となる:
4SiMetal + 12HCl → SiH4 + 3SiCl4 + 4H2
【0015】
このプロセスは、極めて腐食性の高い媒体中で高温を必要とし、大量のエネルギー(工程b)のために約50kWh/kg)を消費する。最大収率を達成するために、工程b)は多数のクロロシラン混合物再循環ループを必要とする。極めて腐食性が高く、毒性がありかつ可燃性である製品の使用の他に、このようなタイプのプロセスはエネルギーの面で非常に費用がかかり、多くの工業上のリスクを受ける。
【0016】
モノシランおよび高次のシランの製造は、the Gmelin Handbook of Inorganic Chemistry:Si-Silicon, by reacting, in the aqueous phase, silicides and silicon alloys in an acidic or basic mediumに記載されている。特許出願EP 146 456およびWO2006/041272はAlxSiyCaz粉末(ここで、x、yおよびzはそれぞれアルミニウム、珪素およびカルシウムの百分率含有量を表している)をHCl溶液中に入れることによる、水性相でのモノシランの合成を記載している。生じるガスの組成は約80%のモノシラン、10%のジシラン、5%のトリシラン、および微量のジシロキサンである。このタイプのプロセスは純粋なまたは高濃度のHClを取り扱いかつ保管しなければならないという欠点を有する。このような反応の結果得られる副生物は大量に生じ、環境に対して有害である(特に塩化物)。このプロセスのもう1つの欠点は反応混合物中での大量の泡の生成であり、それにより、反応収率を下げ、消泡剤の存在を必要とする。このような反応は非常に発熱性であり、合金粉末の導入速度を十分に抑えなければ、100℃よりも高い温度に非常に早く到達する。
【0017】
上に説明したこれらの全ての研究は、工業発展に有効なプロセスの達成に必要な条件を保証できていない。あまり難しくない反応条件を含むおよび/または小型または中型のユニットで、特に全ての環境でおよびモノシランが使用されるところに近い場所で行うことができるプロセスの開発は、上記工業にとっての大きな挑戦である。
【0018】
安価な原材料を使用し、工業的な収率で水素化珪素を製造するが、上述の全ての欠点を避ける単純なプロセスを見出した。
【0019】
本発明の目的は、従来技術の上記欠点の全てまたはその一部を軽減することである。以下で説明する本発明の目的は、上記欠点を最小にしながら、AlSiCa合金から出発するプロセスのさらなる最適化を提案することである。
【0020】
この目的のために、本発明の1つの主題は、式Sin2n+2の化合物またはこの化合物の混合物(ここでnは1以上3以下の整数である)の製造方法であって、a)粉末状の式M1x2ySizの少なくとも1種の珪化物または珪素合金(ここでM1は還元性金属であり、M2はアルカリまたはアルカリ土類金属であり、x、yおよびzは0から1まで変化し、zは0とは異なり、和x+yは0とは異なる)を、エーテルタイプの非プロトン性溶媒中に予め溶解させた塩化水素酸と反応させる工程を含む方法である。還元性金属はたとえばAl、B、GaおよびInであり、アルカリ金属はたとえばLi、Na、KおよびCsであり、アルカリ土類金属はたとえばMg、Ca、SrおよびBaである。
【0021】
さらに、本発明の実施形態は以下の特徴のうちの1つ以上を含むことができる:
−上で規定した方法において、前記非プロトン性溶媒はテトラヒドロフラン(THF)である;
−上述の方法は、M1がアルミニウムでありM2がカルシウムまたはマグネシウムであることを特徴とする;
−上述の方法は、珪素合金が式CaAl2Si2を有することを特徴とする;
−上述の方法は、反応工程a)中に生じる塩化物を珪化物または珪素合金の表面から永続的に除去するように、塩化水素酸/テトラヒドロフラン溶液を注入することを特徴とする;
−上述の方法は、工程a)を20℃〜130℃の温度および1bar〜10barの圧力で行うことを特徴とする;
−上述の方法は、珪素合金の粒径が0.2mm〜0.9mm、好ましくは0.2mm〜0.5mmであることを特徴とする;
−上述の方法は、工程a)中に使用されなかった前記非プロトン性溶媒を、前記溶媒を170℃よりも高い温度まで加熱することによってリサイクルする工程をさらに含む;
−上述の方法は以下の工程:
a’)塩化水素酸をクラウンエーテルたとえばテトラヒドロフランと混合させる工程と;
b’)前記シリコン合金をa’)から得られた混合物と混合させる工程と;
c’)モノシランを高次のシランおよび他の揮発性化合物から分離することを目的とした、大気圧に近い圧力での分留工程と
を含む。
【0022】
また、本発明の主題は、上で規定したシラン製造方法を実施するためのオンサイトユニットでもあり、このユニットは:
−粉末状のシリコン合金を導入する手段および塩化水素酸を含有したクラウンエーテルたとえばテトラヒドロフランの溶液を導入する手段を備えた少なくとも1つのリアクタと;
−シランを分離するための分留カラムおよび純粋なモノシランおよび/またはシラン/ジシラン混合物を回収するための二重蒸留カラムを具備した精製サーキットと;
−前記シリコン合金とクラウンエーテルたとえばテトラヒドロフラン中に予め溶解させた塩化水素酸との反応中に使用されなかったクラウンエーテル、たとえばテトラヒドロフランをリアクタにリサイクルすることを目的とした少なくとも1つのリサイクル手段と
を具備している。
【0023】
珪素合金は、CaAl2Si2、Si0.5Mg、Si0.5Ca、AlSiCa、CaSi、Ca0.5Si、MgSi、AlSiNa、AlSiMg、SiNa、AlSiLi、SiK、Ca0.5AlSi0.33およびCa0.5AlSi0.75またはこれらの混合物、好ましくはSi0.5Mg、AlSiNa、SiNa、Si0.25Li、Si0.25Na、Si0.25KまたはSiKから選択される。本発明にとって好適な他のシリコン合金は珪素鉄タイプの合金、たとえばFeSi、FeSiMgおよびFeSiCaである。
【0024】
好ましくは、本発明の主題を形成するプロセスにおいて使用する合金は組成物CaAl2Si2であり、最高の収率を与える最も活性な相である。
【0025】
用語「高次シラン」は、n≧2である式Sin2n+2の化合物を意味すると理解され、ジシラン、トリシランおよびテトラシランを含む。
【0026】
本発明による方法を実施するのに用いる合金または珪化物は、発泡と鋼鉄製品中のスラグの脱酸素とを制御するのにも役立つ合金または珪化物である。それらはコストの低い工業製品であり製造するのが容易である。本発明の主題を形成する方法の利点の1つは、周囲(温度および圧力)条件に近い条件下で、無機化学工業において標準的な設備、たとえばグラスライニングリアクタなどにおいて反応を行うことができる能力である。これらの合金または珪化物を含む方法は、市場に可能な限り近接して動作する小型または中型のユニットでシランを製造することを可能にしうる。入手可能な合金および珪化物ならびに動作および環境上の制約とは無関係に、動作パラメータを調節することによって、同じユニットを使用することができる。全ての場合において、副生物はリサイクル可能または再使用可能な無機生成物である。
【0027】
合金粉末の粒径が反応速度におよびその結果反応収率に影響を与えることも見出された。この速度は粒径が減少すると増加する。粒径を制限する要因は反応中の泡の生成である。粒径が10分の1に減少すると、他の全ての条件が同じ場合には、同じ時間で生じるシランの量は約15倍に増加する。
【0028】
また、本発明による方法は、反応中に生じる全てのシランに対する生じるモノシランの割合が少なくとも60%であるという利点を有し、これは、本発明が意図する用途に望まれるシランのほとんどが特にモノシランである事実を考慮すると、重要なファクターである。
【0029】
本発明の好ましい実施形態によると、用いる合金はCaAlSi2である。発明者らは、驚くべきことにおよび予期せぬことに、これは最高の結果を与える合金であることを見出した。
【0030】
理論的なモノシラン生成の式は以下のように表される:
CaAl2Si2 + 8HCl → 2SiH4 + 2AlCl3 + CaCl2
すなわち、100%の収率の場合:
SiH4 1kg
HCl 4.56kg
AlCl3 4.17kg
CaCl3 1.74kg
である。
【0031】
比較のために、Mg2Siに基づく式を以下に示す:
Mg2Si + 4HCl → SiH4 + 2MgCl2
すなわち、100%の収率の場合:
SiH4 1kg
HCl 4.56kg
MgCl2 5.94kg
である。
【0032】
2つの経路が等価な物質収支をもたらすことが分かる。1つの特定の実施形態によると、本発明は少なくとも90重量%のCaAl2Si2および10重量%未満のCaSi2を含有するアルミニウム合金反応に関する。
【0033】
本発明の主題を形成する方法はエーテルタイプの非プロトン性溶媒、好ましくはテトラヒドロフラン(THF)を用いる。他の溶媒、たとえばジエチルエーテル、ジメチルエーテル、ジグリム(ジ(2−メトキシエチル)エーテル)およびトリグリムも考えられる。
【0034】
このような溶媒はシロキサンおよび水酸化珪素の生成を避けるという利点を有する。
【0035】
本発明による方法の1つの例示的な実施形態では、塩化水素酸(HCl)をまず溶媒、たとえばTHFに溶解させて、均質な反応媒体を作る。
【0036】
THFは、そのクラウンエーテル作用により、非常に多くのアルカリ土類金属および塩化アルミニウムを溶解させ、THF中に溶解しているHClはこれら金属と非常に迅速に反応して、対応する塩化物を形成し、これは同時にTHF中に溶解する。金属のこのHCl−酸強化「活性」により、この反応は、クロロシランの競合生成ではなく、優先的に金属塩化物(たとえばAlCl3)の生成へと向かう。
【0037】
本発明による方法の好ましい実施形態では、HCl/THF溶液を注入して、合金の表面を持続的に「洗浄」し、それにより、固体媒体のほぼ完全な反応と、媒体中に過剰な未反応のHClが存在しないような割合とをもたらす。
【0038】
Mg2Siからのシランの製造中、上で説明したように、水性媒体中または液体アンモニア性媒体中でのHClの反応は、非常に粘性で可燃性のシリコーンゴムまでに及ぶ高次シランの生成が伴う。これは、Si−H結合が顕著な(Si+−−H-)イオン性を有し非常に化学変化を起こし易いという事実によって説明される。MgCl2、CaCl2およびAlCl3などの塩化物は線状または分枝の重合を容易に触媒し、H−(SiH2n−Hタイプの鎖を与える。本発明の主題を形成する方法の1つの特定の実施形態の実施中、HCl/THF溶液は合金粉末を洗浄して持続的にこの塩化物を溶解する。このようにして、所望のシランが塩化物からその生成直後に分離される。
【0039】
さらに、200℃を十分に下回ったままの温度では、軽質シランとHClとの反応によるクロロシランの生成のリスクが非常に低い。
【0040】
他の特徴および利点は図1を参照しながら以下の説明を読むことで明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、本発明による方法を実施するために使用する装置の図を示している。
【0042】
製造ユニット1は少なくとも3つの部分を具備しており、これにはリアクタ2と、精製システム3と、リアクタ2から来る溶媒をリサイクルするためのシステム4とが含まれる。
【0043】
シラン生成反応は、混合手段40、たとえばスクレーパーまたはミキサなどを備えたリアクタ2内で起こる。リアクタ2に、一方でシリコン合金、たとえば供給源5から来るCaAl2Si2を充填し、他方で供給源6から、エーテルタイプの非プロトン性溶媒、たとえばTHFと予め混合させた酸、たとえばHClとを含有した溶液を充填する。この混合物の割合は、ユーザーにより、考えられる最高の収率を得る目的で反応の前に上述の解決すべき問題を考慮して選択される。カバーをたとえばリアクタ2に留めてもよく、前記カバーは上から取り外すことができ、つるによって固定される。カバーは気密開口部を有し、これは気密ホッパー7を接続することを可能にする。好ましくは、リアクタは断熱材で覆われる。
【0044】
シリコン合金流動手段7はリアクタ2の近くにある。このような流動手段は、たとえば、式M1x2ySiz(ここでM1は還元性金属であり、M2はアルカリまたはアルカリ土類金属であり、x、yおよびzは0から1まで変化し、zは0とは異なる)の粉末状のシリコン合金で最初に充填されたホッパー7である。好ましくは合金はCaAl2Si2である。たとえば、ホッパー7は供給スクリューとホッパー7をリアクタ2から隔離することを可能にする狭窄ダクトとを有する。ホッパー7の設計はたとえばカルシウムカーバイドをアセチレンリアクタに流し込むのに使用するホッパーに類似している。合金はアセチレン製造ユニットにおいてカルシウムカーバイドを運ぶのに使用するドラムに類似したドラムで供給される。
【0045】
本発明の1つの特定の実施形態によると、リアクタ2のカバーの上に、2つの気密隔離バルブが直列に存在し、この2つの間に、断路前にリアクタ2をパージするためのラテラルタップオフを備えている。液体を除去するための類似したデバイス8がリアクタ2の底部にある出口に設けられている。リアクタ2の底部は、液体生成物が底部流路において沈滞することを防ぐ手段9、たとえばドームによって閉じられている。このドームは底部バルブ8を作動させることによって持ち上がる。液体はライン11を通して晶析システム10に送られる。
【0046】
所望のシランを回収するために、リアクタ2から送り出されたが晶析システム10に送られない生成物をライン12を通して精製システム3に送る。前記精製システム3は、存在する他の生成物からシランを分離するための少なくとも1つの分留カラムと、最終的に、続いて所望の用途のために使用される純粋なモノシランを回収するための二重蒸留塔とを具備している。また、シラン/ジシラン混合物を配送できる分留システムも設けられている。
【0047】
この目的のために、約80%のシランと約20%のジシランとを含有した混合物の使用がシリコン堆積技術において想起されうる。
【0048】
したがって、1つの特定の実施形態によると、本発明の主題は、モノシラン/ジシラン混合物などの気体のシランの混合物を連続的に製造する方法および製造ユニットである。これらの混合物は、薄膜太陽電池の製造のために直接使用できる。このプロセスは80体積%のモノシランと20体積%のジシランとからなる典型的な組成を有する混合物の製造を可能にする。
【0049】
化合物の粉末(シリコン合金、たとえばCaAl2Si2)をホッパー7によりリアクタ2に連続的に導入する。リアクタ2は、反応しなかった粒子を保持することを目的として、有機濾材14、たとえば濾紙が載せられる金属製の濾材15からなる僅かに切頭円錐形の第1の底部13を有する。この切頭円錐形の底部13は、その中間部に、外部から機械的に切り離し可能な栓によって閉じられた穴を含んでいる。リアクタ2はスクレーパー40をさらに含み、その機能は化合物の粉末を攪拌することにある。
【0050】
気体の酸、たとえば塩化水素酸(HCl)を、切頭円錐形の底部の中に収容された固体の高さのために規定された最高高さ17の上方に、ディフューザー16によって注入する。液体の非プロトン性溶媒、たとえばTHFがリアクタ2の上方にある凝縮器18から来る。晶析器10から来る気体THFを凝縮器18の下でリアクタ2に注入する。ここで説明するデバイスによって本発明を実施する特定の例では、ホッパー7によって注入される合金化合物の粉末はまず気体のTHFと気体のHClとからなる雰囲気に遭遇し、その後HCl/THF混合物を含有する液体に遭遇する。それゆえに、合金化合物は、切頭円錐形の底部にぶつかる前に、気体のHClおよびTHFと接触し、ライン19を通して精製システム3に放出されるシランを形成する。合金と溶媒中に溶解したHClとの反応から得られる塩化物、たとえばAlCl3またはCaCl2は、それら自体が切頭円錐形の底部13中に存在するTHFによって溶解し、その後ライン11および液体放出システム8を通して放出される。これらの液体生成物(CaCl2、AlCl3、THFなど)はその後晶析器のシステム10に達する。塩化物(CaCl2およびAlCl3)を含有したTHF溶液が切頭円錐形の底部13に溜まった合金化合物の層を通り抜けると、前記溶液は170℃よりも高い温度で動作する1つ以上の晶析器10を通るように送られて、THFが蒸発し、固体の塩化物が析出する。これらの塩化物はたとえばリサイクルされるために抜き取ってもよいし、または水に溶解させて、リサイクルユニットに運ばれるかん水をつくってもよい。凝縮器18から来るTHFを使用して流れる液体流のおかげで、反応しなかったHCl蒸気および合金化合物の屑がトラップされて未だ反応していない合金化合物の層が存在している切頭円錐形の底部13に運ばれる。液体HCl/THFの流れはこの層を通り抜けて合金化合物と反応する一方で、THFはその前に生じた塩化物を溶解させる。好ましくは、リアクタ2中を流れるTHFの流量がHClの質量流量の4〜5倍になるように、このプロセスを調節する。この反応のための一般条件は、好ましくは、圧力の場合は1bar〜10barであり、温度の場合は50℃〜130℃である。THFの1つの利点は、それが反応中に生じうるシリコーンポリマーを溶解することにある。たとえば、THFを、この溶液を反応後少なくとも170℃まで加熱することによってリサイクルする。
【0051】
さらに、THFはシステムのコールドウォールに堆積しうるシリコンポリマーを溶解することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Sin2n+2の化合物またはこの化合物の混合物(ここでnは1以上3以下の整数である)の製造方法であって、a)粉末状の式M1x2ySizの少なくとも1種の珪化物または珪素合金(ここでM1は還元性金属であり、M2はアルカリまたはアルカリ土類金属であり、x、yおよびzは0から1まで変化し、zは0とは異なり、和x+yは0とは異なる)を、エーテルタイプの非プロトン性溶媒中に予め溶解させた塩化水素酸と反応させる工程を含む方法。
【請求項2】
前記非プロトン性溶媒はテトラヒドロフラン(THF)であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1はアルミニウムでありM2はカルシウムまたはマグネシウムであることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記珪素合金は式CaAl2Si2を有することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
反応工程a)中に生じる塩化物を前記珪化物または前記珪素合金の表面から持続的に除去するように、塩化水素酸/テトラヒドロフラン溶液を注入することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程a)を20℃〜130℃の温度および1bar〜10barの圧力で行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記珪素合金の粒径は0.2mm〜0.9mm、好ましくは0.2mm〜0.5mmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程a)中に使用されなかった前記非プロトン性溶媒を、前記溶媒を170℃よりも高い温度まで加熱することによってリサイクルする工程をさらに含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
以下の工程:
a’)塩化水素酸をクラウンエーテルたとえばテトラヒドロフランと混合させる工程と;
b’)前記シリコン合金をa’)から得られた混合物と混合させる工程と;
c’)モノシランを高次のシランおよび他の揮発性化合物から分離することを目的とした、大気圧に近い圧力での分留工程と
を含む請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のシラン製造方法を実施するためのオンサイトユニット(1)であって:
−粉末状のシリコン合金を導入する手段(5、7)および塩化水素酸を含有したクラウンエーテルたとえばテトラヒドロフランの溶液を導入する手段(6、12)を備えた少なくとも1つのリアクタ(2)と;
−シランを分離するための分留カラムおよび純粋なモノシランおよび/またはシラン/ジシラン混合物を回収するための二重蒸留カラムを具備した精製サーキット(3)と;
−前記シリコン合金とクラウンエーテルたとえばテトラヒドロフラン中に予め溶解させた塩化水素酸との反応中に使用されなかったテトラヒドロフランを前記リアクタ(2)にリサイクルすることを目的とした少なくとも1つのリサイクル手段(4)と
を具備したユニット。

【図1】
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【公表番号】特表2012−533511(P2012−533511A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521072(P2012−521072)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051335
【国際公開番号】WO2011/010032
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(591036572)レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード (438)
【Fターム(参考)】