説明

珪藻類(diatomalgae)の増殖のための組成物

本発明は、メタレート改変シリカゾル上に吸着した主要栄養素および/または微量栄養素を含む珪藻類の多量ブルームのための組成物に関する。本発明はさらに、0.01%〜50%のFeを含むメタレート改変シリカゾル上に吸着した鉄、並びにシリカの重量の0.001%〜30%の比率での、Mn、Zn、Co、Cu、Mo、B、V、Ni、Se、I、F、Cr、Cdおよびこれらの混合物からなる、メタレート改変シリカゾル上に吸着した微量栄養素、並びにN、P、K、Mg、Ca、S、Cl、Naからなり、各々の主要栄養素の元素が、シリカの1%〜50%で変化する、メタレート改変シリカゾル上に吸着した主要栄養素を含む組成物の水性分散体の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、水中または土壌上のいずれかでの珪藻類の産生を増大させることに関する。本発明は、珪藻類の優勢な産生および従っていくつかの目的、例えば石油(化石燃料)生産の増大、水汚染の清浄化、藻類を増殖させることによる、また本明細書中に記載するいくつかの他の方法による、光合成に必要である二酸化炭素の一層迅速な消費による温室効果の低減を達成することを目的とする。さらに特に、本発明は、珪藻類の増殖のためのシリカ栄養素、主要栄養素および微量栄養素に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の記載
人類は長期にわたり、自然の生産および加工を繰り返すことを試行しており、これは極めて成功しており、極めて大きい利益をもたらしている。藻類は、海洋世界における食物連鎖の基礎である。シリカ壁を有する珪藻類は、海洋における生産性の原因である最も豊富な増殖および食物生産者である。容易には消化可能ではないセルロース細胞壁を有する他の緑色藻類および青緑色藻類と比較して、シリカ細胞壁を有する珪藻は、食物連鎖の開始要素、例えば動物プランクトンおよび魚類などにより容易に吸収および消化される。分析および推量により、シリカは、固体またはコロイド状シリカの解重合により生成するモノマーオルトケイ酸Si(OH)の形態であることが示される。多くの教科書には、珪藻増殖に対するシリカの役割、これらの形態および溶解性などについて、多く記述されている。
【0003】
珪藻の生物学的増殖のために許容し得る形態でのシリカの欠乏は、海洋における制限要因である。時々、海水の分析により、これがシリカを含むが、珪藻ブルーム(diatom bloom)はないことが示される。他の仮説は、海洋には鉄が欠乏しており、従って藻類はブルームしないことであった。SOFEXプロジェクトが、John Martinの鉄仮説を試験するために企画された。しかし、結果は平凡であった。
【0004】
二酸化炭素の大気中への放出をもたらす化石燃料の燃焼により、温室効果が増強され、地球温暖化がもたらされた。諸国は、余分な二酸化炭素が、海洋により吸収され、食物に変換されることを望んでいる。海洋の生産性は、プランクトン増殖の欠如のために乏しかった。適切な栄養素を加えることにより、珪藻の増殖を増幅させることができ、次に過剰の二酸化炭素のほとんどを、光合成により増殖する藻類により吸収し、酸素を、食物の製造に伴って放出することができる。これに加えて、海洋および湖は、陸地の流出からの過剰の硝酸塩およびリン酸塩で汚染され、植物プランクトンの有毒な種が増殖を開始した未処理の廃水および汚水により、人類全体に対する問題が生じている。「赤潮」の例は、十分知られている。過剰の硝酸塩、リン酸塩および汚水は、食物に変換しなければならない。
【0005】
栄養素、例えば窒素、リン、他の主要栄養素、微量栄養素およびビタミンが、すべての藻類の増殖に必要であることは、極めて十分に知られている。鉄は、藻類の増殖に必要な最大の微量栄養素であるが、極めて少量で必要であるが特にアルカリ性の塩を含む条件中では海水中で容易には得られない、他の極めて重要な微量栄養素がある。例えば、マンガン、亜鉛、コバルトおよび銅である。これらの微量栄養素はすべて、藻類の増殖には極めて少量で得られるようにしなければならない。シリカ栄養素を他の栄養素よりも必要とする珪藻類は特別である。その理由は、細胞壁が、細胞の乾燥重量の4%〜20%のシリカを有するからである。
【0006】
読み取りのための参考:I.MORRISによるThe physiological ecology of phytoplankton "studies in ecology" Vol. 7。
従来技術で知られていることは、教科書に記載されている極めて初歩的なものである。ケイ酸塩を、キレート剤、例えばEDTAなどと結合した他の栄養素と共に加えることは、珪藻類のブルームをもたらすと知られている。以下は、珪藻を産生することについて述べている米国特許のいくつかである。
【0007】
米国特許第5567732号、第5244921号、Kyleら、Eicosapentaenoic acid- containing oil and methods of its production。
当該特許において、珪藻は、増殖培地組成物中でメタケイ酸ナトリウムを用いて増殖する。
【0008】
米国特許第6199317号、Saikiら、Materials for growing algae and artificial fishing banks。
これにおいて、珪藻は、水中に放出された第一鉄イオンを用いて増殖する。
【0009】
米国特許第5965117号、Howardら、Water buoyant particulate material containing micronutrients for phytoplankton。
米国特許出願第20040093785号、Markels, Michael JR、Method of increasing fish catch in the ocean、2004年5月20日。
【0010】
元素をキレート化するための有機化合物の使用に加えて、増殖培地中で生物学的に得られる粒子形態で元素を得られるようにするための方法は、いずれの従来技術にも全く記載されていない。
【0011】
シリカの供給源を提供するために用いられる無機ケイ酸塩は、これらが吸収されず、溶液から沈殿するため、概して無用である。持続された、および広範囲の珪藻ブルームが必要である場合には、シリカ栄養素は、増殖および吸収に許容し得る形態で、溶液中になければならない。珪藻ブルームのためにメタケイ酸ナトリウムを用いることをクレームしている先の米国特許第5567732号および米国特許第5244921号は、過度に基本的であり、大規模の珪藻生産には耐え得ない。第一鉄イオンを用いる米国特許第6199317号は、水が可溶性シリカを含む場合には補助となり得る。J. H.Martinにより"Testing the iron hypothesis in eco systems of the equatorial pacific ocean" Nature Vol: 371、1998年9月8日、123〜129頁中に述べられている、この鉄仮説理論がある。成功は、あったとしても極めて限定されており、当該理論を証明または反証していない。ケイ酸またはシリカゾルを用いた場合には、これらは、当該条件の下で重合し、シリカとして沈殿し、従ってもはや栄養素としては有用ではない。
【0012】
さらに、鉄が、藻類増殖に必要であるが、無機鉄塩は、海水条件の下で沈殿し、従って補助となり得ないという、ある真実がある。種々の元素の可溶性塩を、水に加えた場合には、これらの数種は、互いに反応し、生物学的に利用不能となる。水中の酸化性雰囲気により、ほとんどの元素は、これらの酸化物に変換され、これは難溶性となる。相反するアニオンおよびカチオンの相互作用の結果、元素の数種が溶液から排除される。例えば、可溶性カルシウム塩は、リン酸塩と反応し、沈殿する。
【0013】
従来技術のいずれも、シリカを、珪藻が吸収し、同化し、増殖することができる形態で、珪藻に必要な微量栄養素と共に送達する、シリカ栄養素を送達する包括的な方法を着想していない。主要栄養素が欠乏している場合において、送達方法は、いずれによっても述べられていない。
【0014】
アルミナ改変シリカゾルが、1959年以来知られているが、これは、単独で、系中に可溶性鉄並びに他の欠乏している主要栄養素および微量栄養素が存在しない場合において、珪藻の増殖を補助することができないため、シリカ栄養素のための供給源として用いられていなかった。海水は、性質がアルカリ性であり、ナトリウム、カリウム、カルシウムなどの塩が溶解しており、鉄、亜鉛、マンガン、銅などの溶解性は、無視でき、単量体としてのシリカの溶解性および存在は、極めて大幅に低下する。本発明において、鉄および他の微量栄養素は、アルミナ改変シリカゾル上に吸収され、この結果、鉄および他の微量栄養素は、水がアルカリ性であり、溶解した塩が存在しても、海水から沈殿し得ない。鉄は、炭素および窒素代謝の生体エネルギー学において臨界的に重要な役割を奏し、クロロフィルの合成および硝酸塩の還元に必要である。コバルトは、ビタミンB12の合成に必要であり、マンガンは、酵素活性化に必須である。実際の試験を、逆流水中で行った場合には、珪藻の多量ブルームが、この鉄およびアルミナ改変シリカゾルと複合した微量栄養素を付加することにより、得られたであろう。
【0015】
従来技術には、海水条件中で多量の珪藻ブルームをもたらし得るシリカ栄養素としていかなる生成物も記載されていない。従来技術は、ケイ酸塩および他の化学物質を示唆しているに過ぎない。本発明は、シリカ栄養素を、珪藻のブルームに必要な微量栄養素と共に直接供給することができる生成物を提供する。本発明はまた、珪藻ブルームを提供するために吸収される化合物の性質および形態を同定する。Markelsによる米国特許出願第20040093785号の発明において述べられている他のキレート化された栄養素を用いることにより、シリカが、水中で、吸収され得る形態で得られ、キレート化された栄養素のみが欠乏していると推測される。さらに、正確なキレート化化合物については、クレームされていない。他の特許明細書において、無機ケイ酸塩を用いることは、溶液中に残留せず、継続的な珪藻ブルームは、可能ではない。本発明は、珪藻ブルームを作成する問題に対する包括的な解決方法を提供する。
【0016】
栄養素元素の有機化合物はすべて、これらが増殖する藻類に利用可能となる前に、栄養素の鉱化を受けなければならない。本発明において、すべての栄養素は、1ミリミクロン未満から150ミリミクロンまでの範囲内の極めて微細な粒子の形態でシリカ上に吸着される、無機鉱物形態である。粒子が一層小さくなると、これは一層大きい表面積を有し、微量元素および主要元素を吸着する一層高い能力を有する。粒子の大きさはまた、これを栄養素の供給源として用いることができる珪藻の大きさについての意味を有する。シリカは、他の栄養素についての担体および単独での栄養素の両方となり、これは、アイスクリームとコーンとが共に食べられるコーンアイスクリームと同様である。
【0017】
すべての栄養素が、珪藻類により吸収され得る形態で水中で得られた後に、珪藻のブルームは、極めて迅速である。珪藻がブルームするに従って、これは、水媒体中のすべての余剰の栄養素を奪い取り、この結果、他の植物、藻類種などには、これらの栄養素が与えられず、従ってこれらは、媒体からゆっくりと死滅する。珪藻類は、得られる窒素に基づいて、動物プランクトンにより消費されるタンパク質および石油を産生し、次にこれは、魚類および海洋動物のための食物となる。珪藻が、窒素の欠乏のためにストレスを受ける場合に、および還元条件において、これらは、一層多量の石油および一層少量のタンパク質を産生するように変化する。世界の石油資源は、珪藻ブルーミングおよび石油の産生の結果であったと、考えられる。
【発明の開示】
【0018】
本発明の概要
従って、本発明の目的は、珪藻類の多量ブルームのための、メタレート改変シリカゾル上に吸着した主要栄養素および/または微量栄養素を含む、ゾル形態または再分散性の(redispersable)乾燥粒子状形態のいずれかにおける組成物を提供することにある。
【0019】
本発明の他の目的は、メタレート改変シリカゾル上に、好ましくはアルミナ改変シリカゾル上に吸着されるべき微量栄養素および主要栄養素の量が、要件、例えば処理されるべき水のタイプ、土壌の状態、例えばpHおよび環境から除去され、従って珪藻類の優勢な増殖を一層迅速な速度で可能にすることが必要である他のフローラに伴って変化する組成物を提供することにある。
【0020】
他の目的は、光合成のための生物学的条件が、光合成のための日光または他の光源、有毒な金属および藻類の増殖を阻害する化合物の除去、天然に、または外部から加えられた開始培養物の提供を含む、珪藻類の多量ブルームのために本発明の組成物を用いることにある。
【0021】
本発明の他の目的は、0.1%〜50%のFeを含むメタレート改変シリカゾル上に吸着した鉄、並びにシリカ表面の0.001%〜30%の比率での、Mn、Zn、Co、Cu、Mo、B、V、Ni、Se、I、F、Cr、Cdおよびこれらの混合物からなる、メタレート改変シリカゾル上に吸着した微量栄養素、並びにN、P、K、Mg、Ca、S、Cl、Naからなり、各々の主要栄養素の元素が、シリカの1%〜50%で変化する、メタレート改変シリカゾル上に吸着した主要栄養素を含む組成物の水性分散体の製造方法を提供することにある。
【0022】
本発明の他の目的は、このような増殖を欠いているかまたはこれが欠乏している海洋、湖、河川または水の塊における光合成植物プランクトンの増殖を刺激するための方法であって、前記方法が、本発明の生成物組成物を前記海洋、湖、河川または水の塊に加えることを含む、前記方法を提供することにある。
【0023】
本発明の他の目的は、本発明の生成物組成物を用いて、地球的な二酸化炭素を、海洋の光合成植物プランクトンの刺激された発生により減少させるための方法を提供することにある。
【0024】
本発明の他の目的は、本発明の生成物組成物を用いて、海洋の、または淡水の食物を、光合成植物プランクトンの刺激された発生により増大させるための方法を提供することにある。
【0025】
本発明の他の目的は、NおよびPの過剰の栄養素を、水の塊から除去し、光合成により酸素を産生し、これにより汚水および他の汚染物質により汚染された水塊並びに富栄養化の状態にある水塊を再生し、これに生命をもたらす方法を提供することにある。
【0026】
本発明の他の目的は、すべての水の塊において、本発明の生成物組成物を用いることにより、有毒な、および廃水の藻類種増殖を低減させ、有用な植物プランクトンの増殖、野生の水生植物、水草、ホテイアオイの防止および除去で置き換える方法を提供することにある。
【0027】
本発明の他の目的は、本発明の生成物組成物を用いることにより、汚水、汚染された水および流出水を処理して、臭気、BOD、COD、色を低減させ、かつ所要に応じて栄養素負荷を海洋の、または淡水の食物に変換する方法を提供することにある。
【0028】
本発明の1つの態様において、鉄が、他の微量栄養素および主要栄養素の吸着の前に、シリカの重量の0.01%〜50%優先的に吸着される組成物を提供する。
【0029】
本発明の他の目的は、海水もしくは淡水もしくは汚染された水もしくは汚水もしくは流出水またはこれらの混合物を、本発明の組成物を用いることにより処理することにある。
【0030】
本発明の1つの態様において、ここで微量栄養素および主要栄養素は、好ましくはこれらの対応する塩を用いて、メタレート改変シリカ上に吸着される。
【0031】
本発明の1つの態様において、ここで、組成物は、水性のゾル、または湿潤ないし乾燥再分散性(redispersible)ゾル粒子の形態であり、吸着した形態での鉄をメタレート改変シリカゾルと共に有する、メタレート改変シリカゾル上に吸着した鉄を含み、元素鉄は、シリカの重量の0.01%から50%まで変化し、単独で、またはメタレート改変シリカゾル上に吸着した他の微量栄養素および主要栄養素と共に用いられ、各々の元素状微量栄養素は、シリカの重量の0.001%〜30%の濃度で変化し、各々の元素状主要栄養素は、シリカの重量の1%〜50%の濃度で変化し、これは、海水、淡水、汚染された水、汚水、流出水およびこれらの混合物中の植物プランクトン、特に珪藻類の増殖のための、並びに微量栄養素および主要栄養素を可溶性形態で、変化する土壌pH条件の下で用いることができる、陸上および水中の植物の増殖のために、増殖系において天然に、または外部の付加により得られる、他の所要の平衡化主要栄養素、微量栄養素、ビタミン類、光合成のための生物学的条件の有用性を確実にした後である。
【0032】
鉄の供給源は、元素状鉄、硫酸第一鉄、硫酸アンモニウム第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硝酸第二鉄、鉄の酸化物、鉄を含む混合金属酸化物、鉄の水酸化物、鉄下級酸化物、オキシハロゲン化物、これらの混合物、鉄の無機化合物、鉄の有機形態およびキレート化された鉄からなる群から選択される。また、ビタミンは、他の微量栄養素および主要栄養素が吸着されるのと同様にして吸着される。最も好ましいビタミンは、B複合体の群から選択される。
【0033】
発明の詳細な説明
本発明は、珪藻類の増殖に必要な主要栄養素および微量栄養素と共に送達されるシリカ栄養素の開発に関する。栄養素シリカのためのベース材料は、1959年6月30日に特許付与されたGuy. B. AlexanderおよびRalphK.llerによる米国特許第2,892,797号に基づく改変されたシリカゾルである。改変されたシリカゾルの製造の詳細は、当該特許明細書中に述べられている。アルミナ改変シリカゾルは、好ましいものである。当該ゾルの粒子の大きさは、5〜150ミリミクロンで変化し得る。5〜30ミリミクロンを有するのが好ましい。このようにしてアルミン酸ナトリウムで改変された15nm粒子のシリカゾルの典型的な例において、シリカを基準としてわずか0.66重量%のAlを包含することが、海水条件において当該ゾルに安定性を付与するのに十分であった。米国特許第2,892,797号に基づくアルミナ改変シリカゾルは、改変されていないシリカゾルとは異なり、ゲル化または沈殿を伴わずに、すべての比率において海水と混和可能である。アルミナ改変シリカゾルは、Du PontからのLUDOX AMと呼ばれる市販の製品として入手可能である。しかし、この化合物は、単独では、鉄並びに海水中の他の微量栄養素および主要栄養素の不存在下では、海水中で珪藻を増殖させるには十分ではない。
【0034】
本発明の方法により、米国特許第2,892,797号に従って製造されたアルミナ改変シリカゾルを、限定された量の鉄塩の溶液で処理して、鉄が、シリカゾル上に吸着され、これが色の放出により示されるようにする。
鉄塩を、物理的結合を形成するシリカの表面上に吸収させる。
【0035】
同様に、可溶性形態での極めて少量の他の微量栄養素、例えばマンガン、亜鉛、コバルト、銅、モリブデン、ニッケル、バナジウム、ホウ素、セレン、クロム、ヨウ素、フッ素、カドミウムなどを、アルミナ改変シリカゾル上に吸着させることができる。同様にして、塩溶液の形態での主要栄養素、例えばリン、カリウム、硝酸塩、カルシウム、マグネシウム、塩化物、硫黄を、アルミナ改変シリカゾル上に吸着させ、用いることができる。鉄を吸着したアルミナ改変シリカゾルと、アルミナ改変シリカゾル上に吸着された他の微量栄養素および主要栄養素との混合物を、製造する。この溶液を、海水/淡水/汚染された水/汚水中で、珪藻を増殖させるためのシリカおよび微量栄養素の供給源として、直接用いることができるか、または海水/淡水中に再分散可能である粉末に乾燥し、シリカ栄養素および微量栄養素の供給源として用いることができる。
【0036】
沈殿を伴わずに淡水および海水に天然に可溶であるこれらの主要栄養素および微量栄養素を、水に直接加えることができる。沈殿するもの並びに、他のアニオンおよびカチオンと反応して不溶性の沈殿物を生成するもののみを、シリカ表面上に吸着させて、相互作用および沈殿を回避する必要がある。
【0037】
アルミナ改変シリカゾル上に吸収されたこの鉄並びに他の微量栄養素および主要栄養素は、ゲル化または沈殿を伴わずに、すべての比率において海水と混和可能であり、珪藻が大量に増殖するのを可能にする活性シリカ栄養素を形成する。微量栄養素および主要栄養素をすべて、アルミナ改変シリカゾル上に、所要の可溶性塩溶液を用いて吸収させることができる。好ましい鉄塩は、塩化第二鉄であるが、他の鉄塩を用いることができる。他の微量栄養素に好ましい塩は、塩化物形態におけるものである。
【0038】
藻類は、鉄を微量栄養素として必要とし、従ってマイクログラムの程度の極めて少量が、必要である。しかし、増殖培地中での欠乏が、主に鉄である場合には、一層多量の鉄を、アルミナ改変シリカゾル上に吸着させ、加えることができる。
【0039】
他の微量栄養素は、尚一層少量で必要であり、従ってほとんどゾルに加える必要はない。シリカゾル上に吸着させることができる鉄塩の量は、粒子の大きさおよびゾル中の粒子の重合度に依存する。粒子の大きさが小さくなると、これが吸着することができる鉄塩の量は一層多くなる。鉄塩の過剰の添加により、粒子上での電荷が逆転し、海水条件中での溶液からの凝集および沈殿がもたらされ得る。健康、栄養学および医学において、当該化合物は、鉄、他の微量栄養素および可溶性シリカの供給源として用途が見出される。珪藻類の増殖のために、鉄塩を、1%より低いシリカ含量(モル対モル)に制限して、安定なゾルおよび海水の存在下で凝集または沈殿しないものを得るのが、好ましい。他の微量栄養素、例えばマンガンについて、1.0%より低い量が十分であるが、好ましくは0.3%が十分であり、亜鉛については1.0%より低い量、好ましくは0.5%より低い量、および最も好ましくは0.1%が十分であり、コバルトおよび銅について、0.3%より低い量、好ましくは0.1%および最も好ましくは0.01%が十分である。しかし、微量栄養素の量を、詳細な研究に基づいて、個別の藻類の要件に依存して変化させることができる。
【0040】
メタレート改変シリカ上への吸着のプロセスを、吸着させるべき栄養素の塩溶液とメタレート改変シリカとを所要の比率で所要の時間にわたり混合して、適切な吸着を確実にすることにより、行う。吸着の完了は、一般的に、色変化および他の既知の手段により示される。微量栄養素および主要栄養素の吸着の順序は、本発明については必須ではない。すべての栄養素を一緒に、または個別に順次のいずれかで、改変されたシリカ上に吸着させることができる。
【0041】
上記の記載および例は、この本質において例示的であり、本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではないことを、注記することができる。
【0042】
例1
Du PontからのLUDOX AMと呼ばれる市販のアルミナ改変シリカゾルが、入手可能である。他の商業的に競合する製品もまた、用いることができる。100gのこの製品を、ビーカー中に採取する。他のビーカー中に、10mlの蒸留水を採取し、0.3gの塩化第二鉄を溶解する。塩化第二鉄の溶液を、LUDOX AMに、混合しながら加える。茶色が放出され、淡いクリーム色が生じ、これは、鉄のシリカ上への吸着を示している。この溶液をこれ自体で、例2と混合して用い、液体として用いるか、または乾燥し、用いることができる。
【0043】
例2
100グラムのLUDOX AMまたは他の商業的に競合する製品を、ビーカー中に採取する。他のビーカー中に、10mlの蒸留水を採取し、以下のものを加える:a)0.1gの塩化マンガン、b)0.05gの塩化亜鉛、c)0.01gの塩化コバルト、d)0.01gの塩化銅。種々の微量栄養素の溶液を、LUDOX AMに加える。微量栄養素を、LUDOX AM上に吸収させる。これを、例1と混合し、これ自体で用いるか、または乾燥し、例1と混合し、用いることができる。
上記の量は、指示的であるに過ぎず、これを、実際の要件に基づいて変化させることができる。
【0044】
従って、本発明を、本明細書中にこの特定の態様を参照して記載したが、改変、種々の変更および置換の自由度は、上記の開示において意図され、いくつかの例において、本発明の態様のいくつかの特徴を、記載した本発明の範囲および精神から逸脱せずに、他の特徴の対応する使用を伴わずに用いることを、理解するべきである。
【0045】
従って、多くの改変を行って、特定の状況または材料を本発明の本質的な範囲および精神に適合させることができる。本発明は、特許請求の範囲において用いた特定の用語および/または本発明を実施することを意図する最良の形態として開示した特定の態様に限定されず、本発明は、添付した特許請求の範囲内にある任意の、およびすべての態様および同等なものを含むことを、意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタレート改変シリカゾルであって、その上に可溶性鉄が、珪藻類の多量ブルームのために、吸着されている、前記メタレート改変シリカゾル。
【請求項2】
ゾルがさらに、その上に吸着した可溶性主要栄養素(単数または複数)および/または微量栄養素(単数または複数)を含む、請求項1に記載のメタレート改変シリカゾル。
【請求項3】
ゾルが、好ましくはアルミナ改変シリカゾルである、請求項1に記載のメタレート改変シリカゾル。
【請求項4】
鉄の濃度が、シリカの重量の0.01%〜50%である、請求項1に記載のメタレート改変シリカゾル。
【請求項5】
主要栄養素が、リン、カリウム、窒素、ナトリウム、カルシウム、マグネシウムおよび硫黄またはこれらの組み合わせ(単数または複数)を含む群から選択される、請求項2に記載のメタレート改変シリカゾル。
【請求項6】
微量栄養素が、マンガン、亜鉛、コバルト、銅、モリブデン、ニッケル、バナジウム、ホウ素、セレン、クロム、ヨウ素、フッ素およびカドミウムまたはこれらの組み合わせ(単数または複数)を含む群から選択される、請求項2に記載のメタレート改変シリカゾル。
【請求項7】
ゾルが、水性または再分散性のいずれかの形態である、請求項1に記載のメタレート改変シリカゾル。
【請求項8】
主要栄養素(単数または複数)の濃度が、シリカの重量の1.0%〜50%である、請求項2に記載のメタレート改変シリカゾル。
【請求項9】
微量栄養素(単数または複数)の濃度が、シリカの重量の0.001%〜30%である、請求項2に記載のメタレート改変シリカゾル。
【請求項10】
請求項1に記載のゾルの製造方法であって、前記方法が、可溶性鉄を、単独で、または主要栄養素および/または微量栄養素と共に、メタレート改変シリカゾル上に吸着させる工程を含む、前記方法。
【請求項11】
ゾルが、好ましくはアルミナ改変シリカゾルである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
鉄の濃度が、シリカの重量の0.01%〜50%である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
主要栄養素が、リン、カリウム、窒素、ナトリウム、カルシウム、マグネシウムおよび硫黄またはこれらの組み合わせ(単数または複数)を含む群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
微量栄養素が、マンガン、亜鉛、コバルト、銅、モリブデン、ニッケル、バナジウム、ホウ素、セレン、クロム、ヨウ素、フッ素およびカドミウムまたはこれらの組み合わせ(単数または複数)を含む群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
ゾルが、水性または再分散性のいずれかの形態である、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
主要栄養素(単数または複数)の濃度が、シリカの重量の1.0%〜50%である、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
微量栄養素(単数または複数)の濃度が、シリカの重量の0.001%〜30%である、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
可溶性鉄が単独で、または主要栄養素および/または微量栄養素と共に、その上に吸着したメタレート改変シリカゾルの、珪藻類の多量ブルームのための使用であって、前記方法が、前記ゾルを水塊に加え、珪藻類の多量ブルームを得る工程を含む、前記使用。

【公表番号】特表2008−501334(P2008−501334A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−514330(P2007−514330)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【国際出願番号】PCT/IN2005/000195
【国際公開番号】WO2005/121313
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(506386206)
【氏名又は名称原語表記】THOTHATHRI, Sampath, Kumar
【Fターム(参考)】