説明

現像液処理装置、印刷版の製造装置、現像液吸引装置、現像液の処理方法及び印刷版の製造方法

【課題】現像液貯留タンク内に浮遊する不純物を効果的に除去する。
【解決手段】現像液を処理する現像液処理装置10は、現像処理に使用された現像液を貯留する現像液貯留タンク50と、現像液貯留タンク50内の現像液に浮遊し、上部の現像液を吸引する現像液吸引装置51と、現像液吸引装置51により吸引された現像液を濾過する現像液濾過装置52と、を有する。現像液吸引装置51は、フロート部材60と、フロート部材60に接続された現像液吸引部材61を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像液処理装置、印刷版の製造装置、現像液吸引装置、現像液の処理方法及び印刷版の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
感光性樹脂からなる印刷版を製版する際には、所定のパターンに露光された印刷版を現像液によって現像する現像処理が行われている。この現像処理は、現像装置で行われ、現像液貯留タンクの現像液を印刷版に供給しながら、ブラシで印刷版表面を擦り、例えば未硬化部分の感光性樹脂組成物を除去することにより行われる。現像装置には、再利用のために現像液を浄化する現像液処理装置を有するものがあり、この場合、現像処理に使用された現像液が、現像液貯留タンクに回収され、そこからフィルタ等によって感光性樹脂組成物などの不純物が取り除かれて再利用される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−258458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記現像装置では、例えば現像液貯留タンク内に浮遊する不純物を効果的に除去できない。このため、現像液貯留タンク内に不純物が溜まり易い。この状態を放置すると、例えば現像液貯留タンク内の現像液が直ちに汚染されるため、不純物を取り除く作業を頻繁に行う必要がある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、現像液貯留タンク内に浮遊する不純物を効果的に除去することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明は、現像液を処理する現像液処理装置であって、現像処理に使用された現像液を貯留する現像液貯留タンクと、前記現像液貯留タンク内の現像液に浮遊し、上部の現像液を吸引する現像液吸引装置と、前記現像液吸引装置により吸引された現像液を濾過する現像液濾過装置と、を有する。
【0007】
本発明によれば、現像液貯留タンク内の現像液に浮遊させた現像液吸引装置により、現像液の上部を吸引できるので、現像液の液面の高さにかかわらず、現像液貯留タンク内に浮遊する不純物を効果的に除去することができる。これにより、現像液貯留タンクから不純物を取り除く作業の負担を軽減できる。
【0008】
前記現像液吸引装置は、フロート部材と、当該フロート部材に接続された現像液吸引部材とを有するようにしてもよい。かかる場合、簡易な構成の装置により、現像液の不純物を効果的に除去することができる。
【0009】
前記現像液吸引装置は、複数の前記フロート部材を有し、平面から見てこれらのフロート部材の内側に前記現像液吸引部材が配置されていてもよい。かかる場合、例えばフロート部材により、現像液吸引部材が現像液貯留タンクの内側壁近くで停滞することが抑制されるので、より効果的に不純物を除去できる。
【0010】
前記現像液吸引部材は、前記フロート部材に対する上下方向の位置を調整可能に構成されていてもよい。かかる場合、不純物がより多くある位置に現像液吸引部材を調整できるため、より効果的に不純物を除去できる。
【0011】
前記現像液濾過装置は、現像液中に分散している分散物を凝集させる分散物フィルタと、前記分散物フィルタにより凝集された凝集物を除去する凝集物フィルタと、を有していてもよい。かかる場合、分散物フィルタで分散物を凝集させ、凝集物フィルタで凝集物を除去することにより、分散物フィルタへの負担を軽減し、フィルタの取り換え寿命を延ばすことができる。
【0012】
前記分散物フィルタの少なくとも一部が筒状であり、前記現像液が、前記分散物フィルタの筒状部分の内部に供給されるようにしてもよい。
【0013】
前記現像液濾過装置が、平行に配置された複数のリング、及び前記各リングの内周同士を接続する短冊状の複数のスペーサを備え、前記複数のスペーサの内側に前記分散物フィルタを収納するバスケットと、前記バスケットを格納するハウジングと、を備えていてもよい。
【0014】
前記複数のスペーサが、放射状に配置されていてもよい。
【0015】
前記複数のスペーサが、前記複数のリングに対して垂直に配置されていてもよい。
【0016】
上記現像液処理装置は、前記分散物フィルタで凝集された凝集物を、前記複数のリング上に堆積させるようにしてもよい。
【0017】
前記複数のリングの外周と前記ハウジングの内壁との間に、隙間が設けられていてもよい。
【0018】
前記分散物フィルタは、バッグフィルタであってもよい。
【0019】
上記現像液処理装置は、前記現像液濾過装置により濾過された現像液を前記現像液貯留タンクに戻す現像液循環装置を、さらに有していてもよい。
【0020】
別の観点による本発明は、印刷版の製造装置であって、上記現像液処理装置と、前記現像液処理装置の現像液貯留タンクの現像液を印刷版に供給し、当該現像液を回収して前記現像液貯留タンクに送る現像液供給装置と、を有する。
【0021】
別の観点による本発明は、現像液貯留タンクの現像液を吸引する現像液吸引装置であって、フロート部材と、前記フロー部材に接続された現像液吸引部材と、を有する。
【0022】
本発明によれば、現像液貯留タンク内の現像液の液面の高さにかかわらず、現像液貯留タンク内に浮遊する不純物を効果的に除去することができる。これにより、現像液貯留タンクから不純物を取り除く作業の負担を軽減できる。
【0023】
前記フロート部材は、複数設けられ、前記現像液吸引部材は、平面から見て前記フロート部材の内側に配置されていてもよい。
【0024】
前記現像液吸引部材は、前記フロート部材に対する上下方向の位置を調整可能に構成されていてもよい。
【0025】
別の観点による本発明は、現像液の処理方法であって、現像液貯留タンク内の、現像処理に使用された現像液に、フロート部材が接続された現像液吸引部材を浮遊させ、当該現像液吸引部材により上部の現像液を吸引する現像液吸引工程と、前記現像液吸引部材により吸引された現像液を濾過する現像液濾過工程と、を有する。
【0026】
本発明によれば、現像液貯留タンク内に現像液吸引部材を浮遊させて、現像液の上部を吸引できるので、現像液の液面の高さにかかわらず、現像液貯留タンク内に浮遊する不純物を効果的に除去することができる。これにより、現像液貯留タンクから不純物を取り除く作業の負担を軽減できる。
【0027】
上記現像液の処理方法は、前記濾過した現像液を前記現像液貯留タンクに戻す工程をさらに有していてもよい。
【0028】
前記現像液濾過工程が、現像液中に分散している分散物を、分散物フィルタを通して凝集させることと、前記分散物フィルタを通過した現像液から、前記凝集された凝集物を除去することと、を含むようにしてもよい。
【0029】
前記凝集物が除去された現像液を、再び前記分散物フィルタに供給するようにしてもよい。
【0030】
前記現像液が、分散物を凝集させる凝集剤を含まないようにしてもよい。
【0031】
別の観点による本発明は、印刷版の製造方法であって、上記現像液の処理方法を行いながら、現像液貯留タンクの現像液、または濾過した後の現像液の少なくともいずれかを印刷版に供給する工程と、前記印刷版に供給された現像液を現像液貯留タンクに回収する工程と、を行う。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、現像液貯留タンク内に浮遊する不純物を効果的に除去することができるので、現像液貯留タンクから不純物を取り除く作業の負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】印刷版の製造装置の構成の概略を示す模式図である。
【図2】現像液吸引装置の構成を示す斜視図である。
【図3】第1のフィルタ装置の構成の概略を示す縦断面の説明図である。
【図4】バスケットの斜視図である。
【図5】分散物フィルタを収容したバスケットの上面図である。
【図6】分散物フィルタの側面図である。
【図7】凝集物フィルタの平面図である。
【図8】袋状の凝集物フィルタを設置した場合の印刷版の製造装置の構成を示す模式図である。
【図9】現像液が分散物フィルタとバスケットを通過する際に凝集物が生成される様子を示す第1のフィルタ装置の一部の横断面の説明図である。
【図10】現像液が分散物フィルタとバスケットを通過する際に凝集物が生成される様子を示す第1のフィルタ装置の一部の縦断面の説明図である。
【図11】フィルタタンクの代わりにドレインパンを用いた場合の印刷版の製造装置の構成を示す模式図である。
【図12】濾過後の現像液が第1のリンスブラシに供給される場合の印刷版の製造装置の構成を示す模式図である。
【図13】濾過後の現像液が再度分散物フィルタに供給される場合の印刷版の製造装置の構成を示す模式図である。
【図14】実験における印刷原版の現像枚数とフィルタ圧力差の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる印刷版の製造装置1の構成の概略を示す模式図である。
【0035】
印刷版の製造装置1は、例えば印刷版Aに現像液を供給する現像液供給装置10と、現像処理に使用された現像液を処理する現像液処理装置11等を有している。
【0036】
現像液供給装置10は、例えば印刷版Aを載置する載置台20と、載置台20上に載置された印刷版Aに現像液を供給しながら印刷版Aの表面を擦る現像ブラシ21と、印刷版Aに供給された現像液を回収するドレインパン22等を有している。
【0037】
現像ブラシ21には、後述する現像液貯留タンク50に通じる現像液供給管30が接続されている。現像液供給管30には、ポンプ31が接続されている。ドレインパン22には、現像液貯留タンク50に通じる現像液排出管32が接続されている。
【0038】
また、現像液供給装置10は、例えば現像ブラシ21による現像後に第1のリンス液としての現像液を印刷版Aに供給しつつ、印刷版Aの表面を擦る第1のリンスブラシ40と、第1のリンスブラシ40によるリンス後に第2のリンス液としての水を印刷版Aに供給しつつ、印刷版Aの表面を擦る第2のリンスブラシ41を有している。第1のリンスブラシ40は、現像液供給源42に通じる現像液供給管43が接続されている。現像液供給管43には、ポンプ44が接続されている。第2のリンスブラシ41は、水供給源45に通じる水供給管46が接続されている。水供給源46には、ポンプ47が接続されている。
【0039】
例えば載置台20は、図示しない移動機構によって、現像ブラシ21の下方から第1のリンスブラシ40と第2のリンスブラシ41の下方に移動できる。よって、印刷版Aは、現像ブラシ21により現像された後、第1のリンスブラシ40の下方と第2のリンスブラシ41の下方に順次移動し、それぞれで洗浄できる。
【0040】
現像液処理装置11は、例えば現像処理に使用された現像液を貯留する現像液貯留タンク50と、現像液貯留タンク50内の現像液に浮遊し、上部の現像液を吸引する現像液吸引装置51と、現像液吸引装置51により吸引された現像液を濾過する現像液濾過装置52と、現像液濾過装置52により濾過された現像液を現像液貯留タンク50に戻す現像液循環装置53等を有している。
【0041】
現像液貯留タンク50の上部には、上記現像液排出管32が通じている。現像液貯留タンク50の下部には、上記現像液供給管30が接続されている。
【0042】
現像液吸引装置51は、例えば図2に示すように複数のフロート部材60と、フロート部材60に接続された現像液吸引部材(ノズル)61を有している。
【0043】
フロート部材60は、例えば平面から見て同一円周上に等間隔に配置されている。現像液吸引部材61は、平面から見て複数のフロート部材60の中央に配置されている。現像液吸引部材61は、例えば上下方向に延びる管状部62と、当該管状部62とフロート部材60との上下方向の位置を調整する位置調整部63を有している。管状部62の上部は、先端に近づくにつれて次第に内径が大きくなっており、当該先端には、他の部分よりも径の大きい現像液吸引口62aが開口している。
【0044】
位置調整部63は、例えば管状部62の外側に嵌め込まれ、管状部62に対し上下動可能なリング部64と、当該リング部64を挿通しリング部64を管状部62の外側面に締め付けて固定する固定ネジ65を有している。リング部64には、ワイア66によりフロート部材60が固定されている。管状部62に対しリング部64を所望の高さに移動させ、固定ネジ65によりリング部64を固定することによって、フロート部材60を管状部62に対し上下方向の所望の位置に調整できる。
【0045】
図1に示すように現像液吸引部材61は、現像液吸引管70によって現像液貯留タンク50の外部のポンプ71に接続されている。ポンプ71は、送液管72によって後述の第1のフィルタ装置80に接続されている。
【0046】
現像液濾過装置52は、例えば第1のフィルタ装置80と、第2のフィルタ装置81を有している。
【0047】
第1のフィルタ装置80は、例えば図3に示すように略円筒状のハウジング90と、ハウジング90内に収容されるバスケット91と、バスケット91の内面に装着される分散物フィルタ92を有している。
【0048】
ハウジング90は、側壁の上部の内面に内側に突出した係止部100を有し、上方から挿入されたバスケット91を係止部100に係止することができる。ハウジング90の係止部100よりも上部の側壁には、上記現像液貯留タンク50側に通じる送液管72が接続されている。ハウジング90の底部は、中央が低い傾斜面となっており、中央に第2のフィルタ装置81に通じる送液管101が接続されている。ハウジング90の天井部には、開閉自在な蓋部102が形成されている。
【0049】
バスケット91は、例えば図4に示すように上面が開口した略円筒状に形成されている。バスケット91は、例えば格子状に形成されており、上下方向に平行に並べて配置された複数のリング110と、リング110同士の内周を接続する短冊状の複数のスペーサ111と、底面を覆う格子部112を有している。
【0050】
リング110は、例えば軸方向(上下方向)の高さよりも径方向の幅が広い平板形状を有している。リング110は、上下方向に互いに間隔をおいて配置されている。図3に示すように最上部のリング110は、他のリング110より外径が大きく形成されており、ハウジング90の係止部100に係止できる。最上部以外のリング110の外周とハウジング90の内壁との間には、隙間Dが形成されている。
【0051】
スペーサ111は、一方向に長い略直方体の細板形状を有しており、リング110に対し垂直に配置され、リング110の内周に沿って並べて配置されている。スペーサ111は、図4及び図5に示すように幅の広い面がバスケット91の周方向に向いて、幅の狭い面がバスケット91の径方向に向くように配置されている。これにより、図5に示すように平面から見ると、径方向に長いスペーサ111が、放射状に配置されている。スペーサ111の外側面はリング110の内周面に接着されている。
【0052】
分散物フィルタ92は、図6に示すようにバックフィルタであり、図5に示すようにバスケット91の内面、つまりスペーサ111の内周面に装着できる。なお、分散物フィルタ92の材質として、例えばポリエステル、ビスコース、ポリプロピレン、ナイロン、ノーメックス、ウール、又はフッ素樹脂等の高分子が用いられる。また、分散物フィルタ13は、各繊維の直径が例えば50μm程度のものが好ましく、また、厚みは、0.01mm〜10mmのものが好ましく、密度は、0.05g/cm3〜1g/cm3のものが好ましい。
【0053】
分散物フィルタ92は、図3に示すように上部の鍔部92aを最上部のリング110上に広げ、その上に固定リング113を嵌めることにより固定することができる。
【0054】
第2のフィルタ装置81は、例えば、図1に示すようにフィルタタンク120と、凝集物フィルタ121を有している。凝集物フィルタ121の形状は、例えば図7に示すように平板状に形成されている。凝集物フィルタ121は、例えばナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、PET等から製造されるネット、目開き0.3mmのステンレスメッシュフィルター、布、及び不織布等により形成されている。凝集物フィルタ121は、例えばフィルタタンク120の上部に配置されている。第1のフィルタ装置80に通じる送液管101は、凝集物フィルタ121の上方に開口している。第1のフィルタ装置80から供給された現像液は、凝集物フィルタ121を通って、凝集物が除去された後、フィルタタンク120に貯留される。
【0055】
なお、凝集物フィルタ121は、図8に示すように袋状に形成されたものであってもよい。かかる場合、凝集物フィルタ121は、送液管101から供給される現像液が袋内に入るように設置される。この袋状の凝集物フィルタ121は、交換容易性の観点で優れている。
【0056】
現像液循環装置53は、例えばフィルタタンク120の下部から現像液貯留タンク50に通じる送液管122と、送液管122に接続されたポンプ123を有している。
【0057】
次に、以上のように構成された印刷版の製造装置1を用いた印刷版の製造方法、及びその際に行われる現像液の処理方法について説明する。
【0058】
印刷版の製造処理においては、まず、所定のパターンに露光された印刷版Aが図1に示すように載置台20に載置され、次に、予め現像液貯留タンク50に貯留されていた現像液が現像液供給管30を通じて現像ブラシ21に供給される。なお、この現像液には、現像により印刷版Aから生じる分散物を凝集させる凝集剤を含まないものが用いられる。
【0059】
そして、現像ブラシ21から印刷版Aに現像液が供給されながら、当該現像ブラシ21により印刷版Aの表面が擦られて、印刷版Aが現像される。このとき、印刷版Aからは、例えば現像液よりも比重が小さい感光性樹脂組成物等の不純物としての樹脂成分が生成され、当該樹脂成分が現像液中に分散或いは溶解される。この現像液は、ドレインパン22及び現像液排出管32を通じて現像液貯留タンク50に戻される。
【0060】
次に印刷版Aは、載置台20により第1のリンスブラシ40の下方まで水平移動され、第1のリンスブラシ40から新しい現像液が供給された状態で、第1のリンスブラシ40により擦られる。例えばこの現像液もドレインパン22、現像液排出管32を通じて現像液貯留タンク50に排出される。続いて、印刷版Aは、載置台20により第2のリンスブラシ40の下方まで水平移動され、水が供給された状態で、第2のリンスブラシ41により擦られる。こうして、印刷版Aが洗浄される。その後、乾燥処理等が行われ、一連の現像処理が終了して印刷版Aが出来上がる。
【0061】
上記印刷版の製造処理中、現像液処理装置11が稼働する。現像処理で使用された現像液が流れ込んだ現像液貯留タンク50には、現像液吸引装置51のフロート部材60及び現像液吸引部材61が浮遊している。このとき、現像液吸引部材61の現像液吸引口62aは、例えば現像液の液面から 10〜100mm、より好ましくは30-60mm程度の位置に設定されている。これにより、現像液吸引口62aの位置が液面から近すぎて現像液吸引口62aからエアーばかり吸い液処理量が少なくなったり、現像液吸引口62aの位置が液面から遠すぎて表面の分散物を吸引できなくなることを防止できる。ポンプ71が稼働し、現像液吸引口62aから上層の現像液が吸引され、第1のフィルタ装置80のハウジング90内に供給される。現像液は、ハウジング90の上部から分散物フィルタ92内に供給され、分散物フィルタ92とバスケット91を通過する。
【0062】
この際、例えば図9に示すように現像液中に分散している分散物としての樹脂成分Bが分散物フィルタ92内に蓄積する。分散物フィルタ92内の樹脂成分Bは、例えば分散物フィルタ92との摩擦により、表面の界面活性剤が除去され、凝集剤を添加しなくとも互いに凝集して、凝集物Cを形成する。凝集物Cは、分散物フィルタ92の入口圧と出口圧との圧力差(水圧)によって、分散物フィルタ92内から押し出される。
【0063】
なお、このときの分散物フィルタ92の入口圧P1と出口圧P2の圧力差ΔP(P1−P2)は、例えば0.02MPa≦ΔP≦2MPa、より好ましくは0.04MPa≦ΔP≦1MPa、さらに好ましくは0.06MPa≦ΔP≦0.5MPaに設定される。この圧力差ΔPの範囲では、圧力差による分散物フィルタ92自体や現像液処理装置11の他の構成要素への負担を軽減しつつ、樹脂成分Bの高い凝集効率を実現できる。
【0064】
圧力差ΔPの設定は、例えばポンプ71の出力の設定により行ってもよいし、分散物フィルタ92の入口面に別途所定のエア圧を加えることにより行ってもよい。また、分散物フィルタ92の出口側の圧力を、ポンプやアスピレータ等を用いて減圧することによって行ってもよい。また、これらを併用してもよい。
【0065】
分散物フィルタ92を通過した凝集物Cは、バスケット91のスペーサ111同士の間をスペーサ111に沿って外側に押し出される。スペーサ111を通過した凝集物Cは、例えば図10に示すようにリング110上に堆積され、その後、現像液と共に、リング110とハウジング90との間の隙間Dからハウジング90の底部に落下する。
【0066】
その後、現像液は、第2のフィルタ装置81に送られ、凝集物フィルタ121を通過する。このとき、現像液から凝集物Cが除去される。凝集物Cが除去された現像液はフィルタタンク120に貯留される。
【0067】
フィルタタンク120の現像液は、ポンプ123によって送液管122を通じて現像液貯留タンク50に戻される。例えば印刷版の製造処理中、この現像液処理装置11による現像液の循環が継続して行われ、現像液貯留タンク50内の樹脂成分Bが除去される。なお、この現像液処理装置11による現像液の処理は、印刷版の製造処理中に常時行われてもよし、断続的に行われてもよい。
【0068】
以上の実施の形態によれば、現像液貯留タンク50内の現像液に浮遊させた現像液吸引装置51により、現像液の上部を吸引できるので、現像液の液面の高さにかかわらず、現像液貯留タンク50内に浮遊する不純物を効果的に除去することができる。これにより、現像液貯留タンク50から不純物を取り除く作業の負担を軽減できる。
【0069】
現像液吸引装置51は、フロート部材60と、現像液吸引部材61により構成されているので、簡易な構成の装置を用いて、現像液の不純物を効果的に除去することができる。
【0070】
また、平面から見て複数のフロート部材60の内側に現像液吸引部材61が配置されているので、例えばフロート部材60により、現像液吸引部材61が現像液貯留タンク50の内側壁近くで停滞することが抑制される。これにより、より効果的に不純物を除去できる。
【0071】
現像液吸引部材61は、位置調整部63を有するので、不純物がより多くある位置に現像液吸引部材61を調整でき、より効果的に不純物を除去できる。
【0072】
現像液濾過装置52は、分散物フィルタ92と、凝集物フィルタ121を有しているので、分散物フィルタ92で分散物である樹脂成分Bを凝集させ、凝集物フィルタ121で凝集物Cを除去することにより、各フィルタへの負担を軽減し、フィルタの取り換え寿命を延ばすことができる。
【0073】
現像液濾過装置52のバスケット91が、複数のリング110と、複数のスペーサ111を備えているので、例えば分散物フィルタ92の出口側で凝集物Cが詰まることがなく、分散物フィルタ92から凝集物Cを好適に押し出すことができる。
【0074】
スペーサ111が、放射状に配置されているので、任意の方向から凝集物Cを押し出すことができ、凝集物Cの押し出しを好適に行うことができる。
【0075】
複数のリング110の外周とハウジング90の内壁との間に、隙間Dが設けられているので、凝集物Cを滞ることなく適正に排出できる。
【0076】
現像液処理装置11は、現像液循環装置53を有しているので、濾過した現像液を現像液貯留タンク50に戻して再利用することができる。
【0077】
現像液が、分散物を凝集させる凝集剤を含まないので、コストを低減できる。また、凝集剤を除去する設備や作業が必要なく、現像液を濾過するだけで再利用できる。
【0078】
上記実施の形態における第2のフィルタ装置81は、例えば図11に示すようにフィルタタンク120の代わりにドレインパン22を用い、当該ドレインパン22内に袋状の凝集物フィルタ121を設置したものであってもよい。かかる場合、送液管101にポンプ123が設けられ、送液管101がドレインパン22の凝集物フィルタ121の袋内に現像液を供給する。
【0079】
以上の実施の形態では、現像液処理装置11において、濾過した現像液を現像液貯留タンク50に戻していたが、例えば第1のリンス液として第1のリンスノズル40に供給してもよい。かかる場合、例えば図12に示すように送液管122が途中から2経路に分離し、一方は、現像液貯留タンク50に通じ、他方は、第1のリンスノズル40に通じる。なお、現像液貯留タンク50に通じる送液管122は、現像液貯留タンク50に直接接続されていてもよいし、ドレインパン22に接続されていていてもよい。送液管122の各分岐路には、それぞれバルブ130、131が設けられている。そして、印刷版の製造処理において、バルブ130が開放されることにより、濾過後の現像液が現像液貯留タンク50に戻され、バルブ131が開放されることにより、濾過後の現像液が第1のリンスノズル40に供給され、第1のリンス液として印刷版Aに供給される。かかる場合、例えば現像液供給源42からの現像液の供給量を減らすことができ、第1のリンス液である現像液のトータルの消費量を低減できる。
【0080】
また、濾過後の現像液を現像ブラシ21に送って現像時の印刷版Aに供給してもよい。この場合、送液管122を現像液供給管30に接続する。また、この場合、濾過後の現像液をすべて現像ブラシ21に供給してもよいし、一部を現像液ブラシ21に供給し、一部を現像液貯留タンク50に戻してもよい。
【0081】
また、以上の実施の形態において、凝集物Cが除去された現像液を、再び分散物フィルタ92に供給するようにしてもよい。かかる場合、例えば図13に示すように送液管122と送液管72を、バイパス管140によって接続し、送液管122とバイパス管140にバルブ141、142を設けるようにしてもよい。現像液の処理時には、分散物フィルタ92及び凝集物フィルタ121で濾過された現像液が、送液管122、バイパス管140を通って送液管72に戻され、分散物フィルタ92に供給される。こうすることにより、不純物のより少ない現像液を生成できる。
【0082】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0083】
例えば以上の実施の形態において、現像液吸引装置51のフロート部材60は、球状のものであったが、現像液に浮くものであれば他の構成のものであってもよい。また、分散物フィルタ92の形は、一部が筒状であればよく、本発明は、分散物フィルタがバックフィルタ以外の場合にも適用できる。また、上記現像液処理装置11による現像液の処理は、印刷版の製造処理中のみならず、製造処理後に行われてもよい。
【0084】
ここで、上述の実施の形態のように、複数のスペーサと複数のリングを有するバスケットを用いた場合の、分散物フィルタの連続現像可能枚数についての実験結果を示す。印刷版として、PET製の支持体と、感光性樹脂組成物層と、赤外線レーザーアブレージョン層と、がこの順で積層された、縦900mm、横1067mm、厚み1.14mmのシート状に形成された旭化成イーマテリアルズ社製の印刷原版「DEF−20」(商標)を用意した。支持体側から、上記印刷原版の支持体の厚みを含めた硬化層の厚みが0.54mmになるように紫外線露光機「旭化成イーマテリアルズ株式会社製 AFP−912EDLF」(商標)を用いて露光した。次に、レーザー描画機「ESKO ARTWORKS社製 CDI SPARK 4260」を用いて、赤外線アブレーション層に画像面積率30%の図柄を描画した。 次に、紫外線アブレージョン層側から、前記露光機で7分間露光し、露光済みの印刷原版を得た。
【0085】
この刷原版を上述の実施の形態と同様に現像したところ、図14に示すように、印刷原版を連続的に現像しても、印刷原版の現像枚数が30枚になるまでは、フィルタ圧力差は最大0.14Mpaで平衡になった。なお、フィルタ圧力差が0.30MPa以下であれば、詰まりが少なく現像可能であることが確認されている。また、30版以上の印刷原版を現像可能であった。したがって、上記実施の形態のようなバスケットを用いることによって、連続的に印刷原版を現像可能であることが示された。また、分散物フィルタで形成された凝集物は、凝集物フィルタで好適に回収可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、現像液貯留タンク内に浮遊する不純物を効果的に除去する際に有用である。
【符号の説明】
【0087】
1 印刷版の製造装置
10 現像液供給装置
11 現像液処理装置
50 現像液貯留タンク
51 現像液吸引装置
52 現像液濾過装置
53 現像液循環装置
60 フロート部材
61 現像液吸引部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像液を処理する現像液処理装置であって、
現像処理に使用された現像液を貯留する現像液貯留タンクと、
前記現像液貯留タンク内の現像液に浮遊し、上部の現像液を吸引する現像液吸引装置と、
前記現像液吸引装置により吸引された現像液を濾過する現像液濾過装置と、を有する、現像液処理装置。
【請求項2】
前記現像液吸引装置は、フロート部材と、当該フロート部材に接続された現像液吸引部材とを有する、請求項1に記載の現像液処理装置。
【請求項3】
前記現像液吸引装置は、複数の前記フロート部材を有し、平面から見てこれらのフロート部材の内側に前記現像液吸引部材が配置されている、請求項2に記載の現像液処理装置。
【請求項4】
前記現像液吸引部材は、前記フロート部材に対する上下方向の位置を調整可能に構成されている、請求項2又は3に記載の現像液処理装置。
【請求項5】
前記現像液濾過装置は、現像液中に分散している分散物を凝集させる分散物フィルタと、前記分散物フィルタにより凝集された凝集物を除去する凝集物フィルタと、を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の現像液処理装置。
【請求項6】
前記分散物フィルタの少なくとも一部が筒状であり、前記現像液が、前記分散物フィルタの筒状部分の内部に供給される、請求項5に記載の現像液処理装置。
【請求項7】
前記現像液濾過装置は、
平行に配置された複数のリング、及び前記各リングの内周同士を接続する短冊状の複数のスペーサを備え、前記複数のスペーサの内側に前記分散物フィルタを収納するバスケットと、
前記バスケットを格納するハウジングと、を備える、請求項6に記載の現像液処理装置。
【請求項8】
前記複数のスペーサが、放射状に配置されている、請求項7に記載の現像液処理装置。
【請求項9】
前記複数のスペーサが、前記複数のリングに対して垂直に配置されている、請求項7又は8に記載の現像液処理装置。
【請求項10】
前記分散物フィルタで凝集された凝集物を、前記複数のリング上に堆積させる、請求項7〜9のいずれかに記載の現像液処理装置。
【請求項11】
前記複数のリングの外周と前記ハウジングの内壁との間に、隙間が設けられている、請求項10に記載の現像液処理装置。
【請求項12】
前記分散物フィルタが、バッグフィルタである、請求項5〜11のいずれかに記載の現像液処理装置。
【請求項13】
前記現像液濾過装置により濾過された現像液を前記現像液貯留タンクに戻す現像液循環装置を、さらに有する、請求項1〜12のいずれかに記載の現像液処理装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の現像液処理装置と、前記現像液処理装置の現像液貯留タンクの現像液を印刷版に供給し、当該現像液を回収して前記現像液貯留タンクに送る現像液供給装置と、を有する、印刷版の製造装置。
【請求項15】
現像液貯留タンクの現像液を吸引する現像液吸引装置であって、
フロート部材と、
前記フロー部材に接続された現像液吸引部材と、を有する、現像液吸引装置。
【請求項16】
前記フロート部材は、複数設けられ、
前記現像液吸引部材は、平面から見て前記フロート部材の内側に配置されている、請求項15に記載の現像液吸引装置。
【請求項17】
前記現像液吸引部材は、前記フロート部材に対する上下方向の位置を調整可能に構成されている、請求項15又は16に記載の現像液吸引装置。
【請求項18】
現像液の処理方法であって、
現像液貯留タンク内の、現像処理に使用された現像液に、フロート部材が接続された現像液吸引部材を浮遊させ、当該現像液吸引部材により上部の現像液を吸引する現像液吸引工程と、
前記現像液吸引部材により吸引された現像液を濾過する現像液濾過工程と、を有する、現像液の処理方法。
【請求項19】
前記濾過した現像液を前記現像液貯留タンクに戻す工程をさらに有する、請求項18に記載の現像液の処理方法。
【請求項20】
前記現像液濾過工程が、
現像液中に分散している分散物を、分散物フィルタを通して凝集させることと、
前記分散物フィルタを通過した現像液から、前記凝集された凝集物を除去することと、を含む、請求項18又は19に記載の現像液の処理方法。
【請求項21】
前記凝集物が除去された現像液を、再び前記分散物フィルタに供給することを含む、請求項20に記載の現像液の処理方法。
【請求項22】
前記現像液が、分散物を凝集させる凝集剤を含まない、請求項18〜21のいずれかに記載の現像液の処理方法。
【請求項23】
請求項18〜22のいずれかに記載の現像液の処理方法を行いながら、現像液貯留タンクの現像液、または濾過した後の現像液の少なくともいずれかを印刷版に供給する工程と、前記印刷版に供給された現像液を現像液貯留タンクに回収する工程と、を行う、印刷版の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−33773(P2011−33773A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179063(P2009−179063)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】