説明

現像装置および画像形成装置

【課題】電子写真方式に比べて簡易な構成で、記録媒体への画像を可能とし、また、滲みや劣化のない安定した画像形成を可能とする現像装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】第2担持回転体102上の画像部に相当する領域に着色粉体層106aの画像パターンを転写する際に、当接領域P1において、着色粉体層106aが第1感温性粘着材103から第2感温性粘着材104に粘着転写されるように、画像部の画像信号に対応して加熱装置110により当接領域P1に温度変化を与えることで、第1感温性粘着材103の粘着力と第2感温性粘着材104の粘着力とを反転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色粉体を用いて画像形成を行なう現像装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式に比べて簡易な構成を有し、用紙等の記録媒体に画像を形成する作像方式の一例として、インクジェット方式と溶融型熱転写方式とが挙げられる。インクジェット方式は、作像方式として広く用いられている技術であり、画像に対応した部分にだけ必要に応じてインクを吐出することで記録媒体に画像を形成するメリットを有する。
【0003】
しかし、インクジェットノズルからインクを吐出する為に、低粘度のインクを用いる必要がある。その結果、記録媒体にインクが着弾した際に、画像が滲んでしまうという課題を有している。
【0004】
一方、溶融型熱転写方式は、インクリボン上に形成された固体インク層の画像に対応した部分を、熱ヘッドを用いて記録媒体に転写させている。その結果、インクジェット方式のような、記録媒体にインクが滲むという課題は生じない。しかし、非画像部に対応する部分のインクリボンは使われないまま廃棄されてしまうという課題がある。
【0005】
これらの課題に対して、たとえば特許文献1(特開2000−296631号公報)に開示される画像形成方法においては、外部からの刺激に応じて温度を高めることにより急峻に粘着力が高められる材料を少なくとも表面に設けた着色粉体と、外部からの刺激に応じて温度を高めることにより急峻に粘着力が低められる材料とを少なくとも表面に設けた着色粉体担持回転体とが用いられている。
【0006】
上記構成において、たとえば、粘着力を高めた着色粉体担持回転体の表面に着色粉体を付着させた後に、画像情報に応じて刺激を与えることにより着色粉体担持回転体の表面の粘着力を低め、かつ、表面の粘着力を高めた着色粉体を記録媒体に粘着転写して画像を形成している。この画像形成方法は、粘着力の変化を利用して、最終的に記録媒体に着色粉体を粘着転写させるようにしたので、転写時においても着色粉体が飛び散ることなく安定した画像形成を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−296631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1では粘着転写を利用して、着色粉体で画像形成を行なっているので、電子写真方式に比べて現像装置の構成が簡易な構成である点に加えて、インクジェット方式のような記録媒体へのインクの滲みの課題も生じない。また、非画像部に対応する部分の着色粉体も再び画像形成に使用できるため、溶融型熱転写方式のようなインクリボンの廃棄の課題もない。
【0009】
しかしながら上記特許文献1に開示される画像形成方法では着色粉体の粒子の表面に粘着力材料を設けている点に課題がある。着色粉体のような微粒子を用いた画像形成方法では、微粒子どうしは絶えず互いに摩擦・衝突を繰り返して劣化が進行する。そのため、着色粉体の表面に設けた機能(接着性能)は時間経過とともに失われ、画像形成が困難となる。
【0010】
特に、着色粉体担持回転体の非画像部に残った着色粉体と、新たに着色粉体担持回転体に付着された着色粉体との間において、両着色粉体の劣化具合が異なる場合、粘着力の機能に違いがでるので、安定した画像を得ることができなくなる。また、感温性で可逆の特殊な材料を着色粉体の粒子表面の全てに設けることでコストが割高になってしまう。
【0011】
本発明の目的は以上の背景を鑑み、電子写真方式に比べて簡易な構成で、記録媒体への画像を可能とし、また、滲みや劣化のない安定した画像形成を可能とする現像装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に基づいた現像装置においては、第1転移温度の前後で粘着力が変化する第1感温性粘着材が表面に設けられた第1担持回転体と、上記第1担持回転体に当接しながら回転し、上記第1転移温度とは異なる第2転移温度の前後で粘着力が変化する第2感温性粘着材が表面に設けられた第2担持回転体と、上記第1担持回転体の表面上に着色粉体層を形成するために、第1感温性粘着材の表面上に着色粉体を供給する着色粉体供給装置と、上記第1担持回転体と上記第2担持回転体との当接領域に設けられる加熱装置とを備える。
【0013】
また、上記第2担持回転体上の画像部に相当する領域に上記着色粉体層の画像パターンを転写する際には、上記当接領域において、上記着色粉体層が上記第1感温性粘着材から上記第2感温性粘着材に粘着転写されるように、上記画像部の画像信号に対応して上記加熱装置により上記当接領域に温度変化を与えることで、上記第1感温性粘着材の粘着力と上記第2感温性粘着材の粘着力とを反転させる。
【0014】
他の形態では、上記第1感温性粘着材は、上記第1転移温度を境にして、上記第1転移温度よりも高い温度領域での粘着力が、上記第1転移温度よりも低い温度領域の粘着力よりも弱くなり、上記第2感温性粘着材は、上記第1転移温度よりも高い上記第2転移温度を境にして、上記第2転移温度よりも低い温度領域での粘着力は、上記第1感温性粘着材の上記第1転移温度よりも低い温度領域の粘着力と、第1感温性粘着材の上記第1転移温度よりも高い温度領域の粘着力との間の粘着力を有し、上記第2転移温度よりも高い温度領域での粘着力は、上記第2転移温度よりも低い温度領域の粘着力よりも弱くなる。
【0015】
また、上記第2担持回転体の画像部に相当する領域に上記着色粉体層を転写する際には、上記加熱装置を作動させない場合には、上記当接領域において上記第1感温性粘着材の粘着力が上記第2感温性粘着材の粘着力よりも高いため、上記第1感温性粘着材上の上記着色粉体層は上記第1感温性粘着材に残存し、上記加熱装置により、上記当接領域の温度を、上記第1転移温度よりも低い温度領域から上記第1転移温度と上記第2転移温度との間の温度領域に加熱することで、上記第1感温性粘着材の粘着力と上記第2感温性粘着材の粘着力とが反転し、上記第1感温性粘着材の粘着力が上記第2感温性粘着材の粘着力よりも低下することで、上記第1感温性粘着材上の上記着色粉体層が上記第2感温性粘着材に粘着転写される。
【0016】
他の形態では、上記第2担持回転体上の上記画像パターンを記録媒体に転写するため、上記第2担持回転体の上記記録媒体との当接領域を上記第2転移温度以上に加熱する加熱圧接ローラをさらに備える。
【0017】
他の形態では、上記第2感温性粘着材は、上記第2転移温度を境にして、上記第2転移温度よりも高い温度領域での粘着力が、上記第2転移温度よりも低い温度領域の粘着力よりも弱くなり、上記第1感温性粘着材は、上記第2転移温度よりも高い上記第1転移温度を境にして、上記第1転移温度よりも低い温度領域での粘着力は、上記第2感温性粘着材の上記第2転移温度よりも低い温度領域の粘着力と、第2感温性粘着材の上記第2転移温度よりも高い温度領域の粘着力との間の粘着力を有し、上記第1転移温度よりも高い温度領域での粘着力は、上記第1転移温度よりも低い温度領域の粘着力よりも弱くなる。
【0018】
また、上記第2担持回転体の画像部に相当する領域に上記着色粉体層を転写する際には、上記加熱装置を作動させない場合には、上記当接領域において上記第1感温性粘着材の粘着力が上記第2感温性粘着材の粘着力よりも低いため、上記第1感温性粘着材上の上記着色粉体層は上記第2感温性粘着材に粘着転写され、上記加熱装置により、上記当接領域の温度を、上記第2転移温度よりも低い温度領域から上記第2転移温度と上記第1転移温度との間の温度領域に加熱することで、上記第2感温性粘着材の粘着力と上記第1感温性粘着材の粘着力とが反転し、上記第2感温性粘着材の粘着力が上記第1感温性粘着材の粘着力よりも低下することで、上記着色粉体層が上記第1感温性粘着材に残存する。
【0019】
他の形態では、上記第2担持回転体上の上記画像パターンを記録媒体に転写するため、上記第2担持回転体の上記記録媒体との当接領域に設けられる圧接ローラをさらに備える。
【0020】
他の形態では、上記着色粉体は、上記当接領域で加えられる温度では溶融しない材料が用いられる。
【0021】
この発明に基づいた画像形成装置においては、上述の現像装置を有する。
【発明の効果】
【0022】
この発明に基づいた現像装置および画像形成装置によれば、電子写真方式に比べて簡易な構成で記録媒体への画像の転写を可能とし、また、滲みや劣化のない安定した画像形成を可能とする現像装置および画像形成装置を提供することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施の形態1および2における画像形成装置の外観を示す斜視図である。
【図2】実施の形態1における画像形成装置に採用される現像装置を含む画像形成ユニットの構造を示す断面模式図である。
【図3】実施の形態1における第1感温性粘着材と第2感温性粘着材との、温度と接着力との関係を示す図である。
【図4】実施の形態1における画像形成装置に採用される他の現像装置を含む画像形成ユニットの構造を示す断面模式図である。
【図5】実施の形態1における画像形成装置に採用されるさらに他の現像装置を含む画像形成ユニットの構造を示す断面模式図である。
【図6】実施の形態2における画像形成装置に採用される現像装置を含む画像形成ユニットの構造を示す断面模式図である。
【図7】実施の形態2における第1感温性粘着材と第2感温性粘着材との、温度と接着力との関係を示す図である。
【図8】ウォームオフタイプのインテリマー(登録商標)テープの温度による粘着力[N/25mm]を測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に基づいた各実施の形態における現像装置および画像形成装置について、以下、図を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。また、各実施の形態における構成を適宜組み合わせて用いることは当初から予定されていることである。
【0025】
また、画像形成装置として、複数の画像形成ユニットを備えるフルカラー方式の画像形成装置を図示しているが、本発明は、フルカラー方式にのみ限定されるものではなく、モノクロ画像のみを形成する1色(ブラック等)の画像形成ユニットを採用している画像形成装置への適用も可能である。
【0026】
(実施の形態1)
図1から図5を参照して、本実施の形態における画像形成装置1について説明する。なお、図1は、各実施の形態における画像形成装置の外観を示す斜視図、図2は実施の形態1における画像形成装置に採用される現像装置10Aを含む画像形成ユニット100Aの構造を示す断面模式図、図3は、実施の形態1における第1感温性粘着材と第2感温性粘着材との、温度と接着力との関係を示す図である。また、図4および図5は、実施の形態1における画像形成装置に採用される他の現像装置10B,10Cを含む画像形成ユニット100B,100Cの構造を示す断面模式図である。
【0027】
(画像形成装置1)
画像形成装置1は、複写機、プリンタ、またはファクシミリ等の画像形成装置の一例である。画像形成装置1は、本体の上部に位置する操作パネル50内に、操作部51および操作ディスプレイ52を有している。操作部51は、キー51aを通して入力されたユーザからの各種の指示等を受ける。操作ディスプレイ52は、ユーザに対する指示メニュー等を表示する。
【0028】
本体の上面には、スキャナ53およびフィーダ55が設けられている。フィーダ55は原稿をスキャナ53に送る。本体の側部には、プリンタ54が設けられている。本体の下部には、トレイ57および給紙部58が設けられている。
【0029】
トレイ57には、プリンタ54によって画像を印刷された記録媒体としての用紙が排出される。給紙部58は、プリンタ54に用紙を供給する。本体の内部には複数の画像形成ユニット10(実施の形態2では画像形成ユニット20)が設けられている。本体の内部には複数の画像形成ユニット100Aが設けられている。画像形成ユニット100Aは、現像装置10Aで現像された画像を記録媒体に印刷する。
【0030】
(画像形成ユニット100A)
図2は、画像形成ユニット100Aの詳細を模式的に示した断面図である。画像形成ユニット100Aは、本実施の形態における現像装置10Aを含んでいる。以下、画像形成ユニット100Aの構成について説明する。
【0031】
画像形成ユニット100Aを構成する現像装置10Aは、第1担持回転体101、第2担持回転体102、第1担持回転体101の上方位置に配置される着色粉体供給装置106、および第1担持回転体101と第2担持回転体102との当接領域P1に設けられる加熱装置110とを含んでいる。
【0032】
(第1担持回転体101)
第1担持回転体101は、円筒ドラム形状であって回転自在(図1中R1方向)に保持されている。第1担持回転体101の表面には、図3に示す温度と粘着力との関係を有する第1感温性粘着材103が設けられている。第1感温性粘着材103は、第1転移温度T11を境にして粘着力が変化する。
【0033】
具体的には、第1感温性粘着材103は、第1転移温度T11よりも低い温度領域A1では、高い粘着力を発現し維持する。また、第1転移温度T11よりも高い温度領域B1,C1での粘着力は、第1転移温度T11よりも低い温度領域A1での粘着力よりも急峻に弱くなる。第2担持回転体102との当接領域P1以外の領域では、第1感温性粘着材103は、A1の温度領域に保たれる。第1感温性粘着材103の具体的な材料等は後述する。
【0034】
なお、当接領域P1は、後述の着色粉体供給装置106から、第1担持回転体101の回転方向下流に位置している。
【0035】
(着色粉体供給装置106)
第1担持回転体101の上方に設けられる着色粉体供給装置106は、着色粉体である着色粉体を第1感温性粘着材103の表面に付着させて、所定厚さの着色粉体層106aを形成する。着色粉体の粒径は画像の解像度を左右するので20μm以下が好ましく、望ましくは5μm〜8μm程度である。
【0036】
着色粉体供給装置106には、図示しない着色粉体補給部と吸引・循環部材が備えられている。第1担持回転体101が回転しているときは、常に着色粉体供給装置106に、着色粉体が補給、吸引、および循環される。これにより、着色粉体供給装置106内の着色粉体は、パウダークラウド状態(着色粉体が飛翔している状態)となっている。
【0037】
粘着力が高い状態である第1担持回転体101の表面に、着色粉体供給装置106により着色粉体が適量供給および回収されて、着色粉体層106aを形成する。着色粉体がパウダークラウド状態にあっても、着色粉体供給装置106内は、常に吸引(図2中の空気流れF1,F2)されているので、着色粉体が着色粉体供給装置106の外部に漏れることはない。
【0038】
しかし、着色粉体供給装置106からの着色粉体の漏れ防止を確実にするために、着色粉体供給装置106と第1担持回転体101の表面との隙間に、PET(ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephthalate))フィルムなどのシール部材を設けても良い。
【0039】
(加熱装置110)
本実施の形態においては、当接領域P1の第1担持回転体101の内部に、加熱装置110が配設されている。加熱装置110としては、たとえば、サーマルヘッドなどの接触型の書き込み用熱源を用いることができる。ただし、加熱・非加熱を容易に切り替えられる熱源であれば、どのような加熱装置であってもかまわない。非接触型のレーザ光を用いた加熱装置であっても良い。
【0040】
(第2担持回転体102)
第2担持回転体102は、第1担持回転体101と同様に円筒ドラム形状であって回転自在(図1中矢印R2方向)に保持されている。第2担持回転体102は第1担持回転体101と回転方向が逆であり、当接領域P1において線速度が同じになるよう配設されている。
【0041】
第2担持回転体102の表面には、図3に示す温度と粘着力との関係を有する第2感温性粘着材104が設けられている。第2感温性粘着材104は、第1転移温度T11よりも高い温度である第2転移温度T12を境にして粘着力が変化する。
【0042】
具体的には、第2感温性粘着材104は、第2転移温度T12よりも低い温度領域A1,B1での粘着力は、第1感温性粘着材103の第1転移温度T11よりも低い温度領域A1での粘着力と、第1感温性粘着材103の第1転移温度T11よりも高い温度領域B1,C1での粘着力との間の粘着力を有している。
【0043】
また、第2感温性粘着材104の、第2転移温度T12よりも高い温度領域C1での粘着力は、第2転移温度T12よりも低い温度領域A1,B1の粘着力よりも急峻に弱くなる。第1担持回転体101の第1感温性粘着材103との当接領域P1以外の領域では、第2感温性粘着材104は、A1の温度領域に保たれる。第2感温性粘着材104の具体的な材料等は後述する。
【0044】
(記録媒体加熱圧接ローラ111)
第2担持回転体102は、第1担持回転体101との当接領域P1から回転方向(R2)の下流側において、記録媒体加熱圧接ローラ111とともに記録媒体107を圧接している。記録媒体加熱圧接ローラ111は、円筒ドラム状の加熱ローラであって、第2担持回転体102と逆回転に回転するよう回転自在に保持されている。ただし、第2感温性粘着材104を第2転移温度T12まで加熱することができる構成であれば、円筒ドラム状の形態には限られない。
【0045】
第2担持回転体102の記録媒体加熱圧接ローラ111との圧接領域P2を、図3に示すC1の温度領域(第2転移温度T12よりも高い温度領域)にすることで、第2感温性粘着材104の粘着力を急峻に低下させ、着色粉体層106cを記録媒体107へ転写する。
【0046】
(定着ローラ121,122)
第2担持回転体102と記録媒体加熱圧接ローラ111との圧接領域P2で、着色粉体の記録媒体107への転写のみを行なう場合は、記録媒体107の送り方向の下流側に、別途定着ローラ121,122を設け、記録媒体107上に最終出力画像を得る。
【0047】
(クリーニングローラ105)
記録媒体107へ、着色粉体層106cを転写させた後の第2担持回転体102は圧接領域P2の回転方向下流側に設けられるクリーニングローラ105により表面がクリーニングされる。
【0048】
クリーニングローラ105は、たとえば水やアルコール等が図示しない供給装置から供給されたウェブローラである。クリーニングローラ105は、回転自在に保持され、第2担持回転体102に当接、摺擦することで第2担持回転体102上に残った着色粉体を除去する。
【0049】
このとき、図示しない加熱部材を、第2担持回転体102を挟んでクリーニングローラ105と対向する位置に設け、第2担持回転体102を第2転移温度T12以上に加熱し、着色粉体の粘着力を低下させた状態で、着色粉体のクリーニングを行なっても良い。クリーニングローラ105は第2担持回転体102の回転方向と同じ方向に回転させ、第2担持回転体102をいわゆるカウンター方向に摺擦するとなお良い。
【0050】
(画像パターンの転写)
次に、第2担持回転体102の画像部に相当する領域に、第1担持回転体101の表面に形成された着色粉体層106aを転写する工程について詳細に説明する。当接領域P1に設置された加熱装置110を用いて、画像信号に応じた画像形成が行なわれる。
【0051】
まず、加熱装置110を作動させない場合には、当接領域P1において第1感温性粘着材103の粘着力は第2感温性粘着材104の粘着力よりも高いため、第1感温性粘着材103上の着色粉体層106aは第1感温性粘着材103に残存する。
【0052】
次に、加熱装置110により、当接領域P1の温度を、第1転移温度T11よりも低い温度領域A1から第1転移温度T11と第2転移温度T12との間の温度領域B1に加熱することで、図3に示すように、第1感温性粘着材103の粘着力と第2感温性粘着材104の粘着力とが反転し、第1感温性粘着材103の粘着力が第2感温性粘着材104の粘着力よりも低下する。
【0053】
これにより、当接領域P1においては、第1感温性粘着材103上の着色粉体層106aが第2感温性粘着材104に粘着転写され、第2担持回転体102上に、画像パターンを有する着色粉体層106cが形成される。
【0054】
より詳細に説明する。図3に示すA1の温度領域では、第1担持回転体101の第1感温性粘着材103、および第2担持回転体102の第2感温性粘着材104はともに、粘着力が高い状態であるが、第1感温性粘着材103の粘着力の方が第2感温性粘着材104よりも高い。
【0055】
図3に示すB1の温度領域では、第1担持回転体101の第1感温性粘着材103は、第1転移温度T11以上となるため、粘着力が急峻に低下しているが、第2担持回転体102の第2感温性粘着材104は、高い粘着力が維持されている。その結果、第2感温性粘着材104の粘着力の方が第1感温性粘着材103よりも高くなる。
【0056】
この温度領域A1と温度領域B1とを、加熱装置110にて切り替えることで、第1感温性粘着材103上の着色粉体層106aを第2感温性粘着材104に粘着転写させる。
【0057】
温度領域A1では、着色粉体層106aに第2感温性粘着材104が接触しても、第1感温性粘着材103の粘着力の方が高いため、着色粉体層106aは第2感温性粘着材104へは転写されない。
【0058】
これは当接領域P1にて、加熱装置110をオフ状態にし、加熱を行なわないことにより、第1感温性粘着材103を第1転移温度T11以下となるよう保つことで実現できる。この部分は、非画像部となり、第1担持回転体101の第1感温性粘着材103上に残る着色粉体層106eとなる。
【0059】
逆に、温度領域B1では、着色粉体層106aに第2担持回転体102の第2感温性粘着材104が接触すると、第1感温性粘着材103よりも第2感温性粘着材104の方の粘着力が高くなっているため、着色粉体層106aは第2感温性粘着材104へ粘着転写される。
【0060】
これは当接領域P1にて、加熱装置110をオン状態にし、加熱を行なうことにより、第1感温性粘着材103を第1転移温度T11以上にすることで実現できる。この部分は、画像部となり、第2担持回転体102の第2感温性粘着材104に粘着転写された着色粉体層106cとなる。
【0061】
つまり、画像部に相当する領域のみ、加熱装置110を用いて第1担持回転体101の第1感温性粘着材103を加熱することで、第2担持回転体102の第2感温性粘着材104へ着色粉体層106aを粘着転写させて画像を形成することができる。
【0062】
当接領域P1を通過した後、記録媒体107までの間には、加熱装置を設けず、第2担持回転体102は第2転移温度T12以上とならないよう保たれる。これにより、第2担持回転体102の第2感温性粘着材104は高い粘着力状態を維持する。
【0063】
第2感温性粘着材104へ粘着転写された着色粉体層106cは、粘着力を維持した第2感温性粘着材104により保持され搬送される。第2担持回転体102は第1担持回転体101との当接領域P1から回転方向(R2)下流にて、記録媒体加熱圧接ローラ111にて記録媒体107と圧接されている。着色粉体層106cを記録媒体107に転写させて、記録媒体107上に、画像106dが形成される。
【0064】
ここで記録媒体加熱圧接ローラ111にて、第2転移温度T12以上、かつ着色粉体の溶融温度以上に加熱して着色粉体層106cを溶融させることで、記録媒体107の繊維の凹凸への着色粉体層106cの粘着力を高め、着色粉体層106cの記録媒体107への転写性をさらに高めても良い。
【0065】
また、着色粉体に、マイクロカプセル状の圧力定着着色粉体を使用して、着色粉体と記録媒体107との転写性を高めても良い。圧力定着着色粉体は、軟質物質や液体をコア材料とし、そのまわりを薄く硬いシェルで包んだコアシェル構造の着色粉体であって、加圧することで表層のシェルが破壊されてコアが露出、流動する着色粉体である。この着色粉体を使用した場合は、転写と同時に記録媒体107に着色粉体を定着させることもできる。
【0066】
また、記録媒体加熱圧接ローラ111に、硬度の硬いローラ、たとえばヤング率40[MPa]以上のゴムを表層に持つローラを採用し、記録媒体加熱圧接ローラ111の回転速度を第2担持回転体102に比べてわずかに遅くし、たとえば、第2担持回転体102の回転速度に対して、記録媒体加熱圧接ローラ111の回転速度比を、0.97以下とすることで、いわゆる「ずり応力」により記録媒体107への転写性を高めても良い。
【0067】
第2担持回転体102と記録媒体107との圧接領域P2で転写のみを行なう場合は、記録媒体107の送り方向の下流側に、別途定着ローラ121,122を設け、記録媒体107上に最終出力画像を得る。
【0068】
一方、第1担持回転体101の第1感温性粘着材103に残された着色粉体層106eは粘着力が高められた第1感温性粘着材103により保持され、搬送される。第1担持回転体101の第1感温性粘着材103は、再び着色粉体供給装置106にて着色粉体層106aが形成される。着色粉体層106eのある部分は、粘着力がないため、第1感温性粘着材103が露出する部分にのみ、着色粉体が付着する。
【0069】
このため、着色粉体層106eは着色粉体層106aの一部となり、再び画像形成に使われる。このため、溶融型熱転写方式のインクリボンのような廃棄物は発生しない。この一連の動作を繰り返すことで、連続した画像形成も可能である。
【0070】
(第1感温性粘着材103、第2感温性粘着材104)
第1感温性粘着材103および第2感温性粘着材104は、転移温度を境にして、境の前後にて粘着力が急峻に変化する感温性粘着材であり、温度変化に伴い粘着力が可逆的に変化するものを使用する。
【0071】
たとえば、ニッタ株式会社のインテリマー(登録商標)テープが挙げられる。本実施の形態1では、転移温度以上になると粘着力が低められるウォームオフタイプのインテリマー(登録商標)テープを用いることができる。図8は、代表的なウォームオフタイプのインテリマー(登録商標)テープの温度℃による粘着力[N/25mm]を測定した結果を示す図である。
【0072】
粘着力はJIS-Z-0237に準拠し、テープおよびテープの接触する部分を必要に応じて加熱し測定温度に保って測定を行なった。このウォームオフタイプのインテリマー(登録商標)テープは粘着力の転移温度が約50℃に設定されており、転移温度以下では設定された上限粘着力として約8.5[N/25mm]を維持する。一方、転移温度以上では粘着力が著しく低下し、その低い粘着力を維持する。低下する割合は上限粘着力の9割以上である。
【0073】
このテープの粘着力は温度により可逆的に変化する。再びテープを転移温度以下とすることで、テープの粘着力は、設定粘着力まで高められる。この粘着力の変化は、転移温度近傍の約5℃以内の範囲で急峻に起こる。このため、温度変化を与えることにより画像形成を行なう本実施の形態を実現することができる。
【0074】
インテリマー(登録商標)テープは、転移温度および上限粘着力の設定が可能で、ウォームオフタイプのインテリマー(登録商標)テープは、転移温度が約30℃〜約50℃内、上限粘着力が約0.05[N/25mm]〜約10[N/25mm]で設定が可能である。
【0075】
本実施の形態で使用する第1担持回転体101に用いる第1感温性粘着材103の第1転移温度T11、および第2担持回転体102に用いる第2感温性粘着材104の第2転移温度T12は、本実施の形態が複写機およびプリンタの画像形成方法として使用されることを考えると35℃以上が望ましい。
【0076】
本実施の形態では、たとえば第1転移温度T11が約40℃、第2転移温度T12が約50℃と設定されたウォームオフタイプのインテリマー(登録商標)テープを使用する。
【0077】
粘着転写による着色粉体にもよるが、たとえば第1感温性粘着材103と第2感温性粘着材104との間で粘着力の差が約3[N/25mm]以上あれば可能である。たとえば第1感温性粘着材103には粘着力が約7[N/25mm]、第2感温性粘着材104には粘着力が約4[N/25mm]のウォームオフタイプのインテリマー(登録商標)を使用する。
【0078】
(作用・効果)
以上、本実施の形態の構成によれば、第1感温性粘着材103を有する第1担持回転体101と第2感温性粘着材104を有する第2担持回転体102との間で、着色粉体層の粘着転写を行なう構成を採用することで、簡易な構成での現像、および記録媒体への画像形成が可能となる。また、着色粉体の粒子の表面に粘着力材料を設ける必要がないことから、着色粉体を繰り返し用いた場合でも、画像形成の安定化を図ることができる。
【0079】
また、粘着力を有する第1担持回転体101を用いることで、均一な厚さを有する着色粉体層106aを第1担持回転体101の表面に形成することができる。さらにこの着色粉体層106aを第1担持回転体101と第2担持回転体102との間で粘着転写させる際に、第1担持回転体101の第1感温性粘着材103の粘着力と、第2担持回転体102の第2感温性粘着材104の粘着力とを画像部および非画像部で逆転させて、第2感温性粘着材104の上に像を現像することができる。
【0080】
さらに、第2感温性粘着材104上に現像された画像の、記録媒体107への転写の際にも、第2担持回転体102の第2感温性粘着材104の粘着力をより低下させることで、記録媒体107に対して、滲みや劣化のない安定した画像形成が可能となる。また、第1担持回転体101の第1感温性粘着材103に残った非画像部の着色粉体も、繰り返し現像および画像形成に使えるため、低コストで廃棄物の少ない現像および画像形成が可能となる。
【0081】
なお、図2に示す画像形成ユニット100Aの現像装置10Aにおいては、加熱装置110を第1担持回転体101の内部に設ける構成を採用しているがこの構成に限定されるもものではない。当接領域P1において、第1感温性粘着材103および第2感温性粘着材104を、温度領域B1に加熱することができれば良いことから、図4に示すように、加熱装置110を第2担持回転体102の内部に設けた現像装置100Bを採用することも可能である。
【0082】
また、図2に示す現像装置10A、および、図4に示す現像装置10Bは、圧接領域P2の180度反対側(図中において真上側)に、当接領域P1を設ける配置としているが、第1担持回転体101と第2担持回転体102との配置関係は、この配置に限定されない。
【0083】
たとえば、図5に示すように、圧接領域P2の位置から見て、当接領域P1を真上ではなく、斜め上方に設けた、第1担持回転体101と第2担持回転体102との配置関係を有する現像装置100Cを採用することも可能である。図5においては、圧接領域P2から、第2担持回転体102の回転方向R2に沿って約135度の位置に、当接領域P1を設けている。
【0084】
(実施の形態2)
次に、図6および図7を参照して、本実施の形態における画像形成ユニット20について説明する。画像形成ユニット20を構成する現像装置200は、第1担持回転体201、第2担持回転体202、第1担持回転体201の上方位置に配置される着色粉体供給装置206、および第1担持回転体201と第2担持回転体202との当接領域P1に設けられる加熱装置210とを含んでいる。
【0085】
(第1担持回転体201)
第1担持回転体201は、円筒ドラム状であって回転自在(図6中R1方向)に保持されている。第1担持回転体201の表面には、図7に示す温度と粘着力との関係を有する第1感温性粘着材203が設けられている。第1感温性粘着材203は、第1転移温度T21を境にして粘着力が変化する。
【0086】
具体的には、第1感温性粘着材203は、後述の第2転移温度T22よりも高い第1転移温度T21を境にして急峻に粘着力が変化する。すなわち、第1転移温度T21よりも低い温度領域A2,B2での粘着力は、後述の第2感温性粘着材204の第2転移温度T22よりも低い温度領域A2の粘着力と、第2感温性粘着材204の第2転移温度T22よりも高い温度領域B2、C2の粘着力との間の粘着力を有する。
【0087】
一方、第1転移温度T21よりも高い温度領域C2での粘着力は、第1転移温度T21よりも低い温度領域A2,B2の粘着力よりも急峻に弱くなる。第2担持回転体202との当接領域P1以外の領域では、A2,B2の温度領域に保たれる。第1感温性粘着材203の具体的な材料等は後述する。
【0088】
なお、当接領域P1は、後述の着色粉体供給装置206から、第1担持回転体201の回転方向下流に位置している。
【0089】
第1担持回転体201の上方に設けられる着色粉体供給装置206は、着色粉体を第1感温性粘着材203の表面に付着させて、所定厚さの着色粉体層206aを形成する。着色粉体の粒径は画像の解像度を左右するので20μm以下が好ましく、望ましくは5μm〜8μm程度である。
【0090】
着色粉体供給装置206には、図示しない着色粉体補給部と吸引・循環部材が備えられている。第1担持回転体201は着色粉体供給装置206から表面が出てくる際には、出口に設けられたブラシ部材208にて余分な着色粉体は取り除かれる。ブラシ部材208は回転自在に保持されており、第1担持回転体201と同方向に回転する。この作用により除かれた着色粉体が着色粉体供給装置206の外部に漏れ出ることはない。
【0091】
粘着力が高い状態である第1担持回転体201の表面に、着色粉体供給装置206により着色粉体が適量供給および回収されて、着色粉体層206aを形成する。
【0092】
(第2担持回転体202)
第2担持回転体202は、第1担持回転体201と同様に円筒ドラム状であって回転自在(図6中矢印R2方向)に保持されている。第2担持回転体202は第1担持回転体201と回転方向が逆であり、当接領域P1において線速度が同じになるよう配設されている。
【0093】
第2担持回転体202の表面には、図7に示す温度と粘着力との関係を有する第2感温性粘着材204が設けられている。第2感温性粘着材204は、第1転移温度T21よりも低い温度である第2転移温度T22を境にして粘着力が変化する。
【0094】
具体的には、第2感温性粘着材204は、第1転移温度T21よりも低い第2転移温度T22を境にして、第2転移温度T22よりも高い温度領域B2,C2での粘着力は、第2転移温度T22よりも低い温度領域A1の粘着力よりも急峻に弱くなる。また、第2感温性粘着材204の第2転移温度T22よりも高い温度領域B2,C2での粘着力は、第1感温性粘着材203の温度領域A2,B2での粘着力よりも低い粘着力となる。第2感温性粘着材204の具体的な材料等は後述する。
【0095】
(加熱装置210)
本実施の形態においては、当接領域P1の第2担持回転体202の内部に、加熱装置210が配設されている。加熱装置210としては、たとえば、サーマルヘッドなどの接触型の書き込み用熱源を用いることができる。ただし、加熱・非加熱を容易に切り替えられる熱源であれば、どのような加熱装置であってもかまわない。非接触型のレーザ光を用いた加熱装置であっても良い。
【0096】
また、実施の形態1の場合と同様に、当接領域P1において、第1感温性粘着材203および第2感温性粘着材204を、温度領域B2に加熱することができれば良いことから、加熱装置210を第1担持回転体201の内部に設けた構成を採用することも可能である。
【0097】
(記録媒体加熱圧接ローラ211、第2担持回転体加熱圧接ローラ212)
第2担持回転体202は、第1担持回転体201との当接領域P1から回転方向(R2)の下流側にて記録媒体加熱圧接ローラ211にて記録媒体207と圧接されている。また、第2担持回転体202の内部には、第2担持回転体加熱圧接ローラ212が設けられている。
【0098】
記録媒体加熱圧接ローラ211は、円筒ドラム状の加熱ローラであって、第2担持回転体102と逆回転に回転するよう回転自在に保持されている。また、第2担持回転体加熱圧接ローラ212は、円筒ドラム状の加熱ローラであって、第2担持回転体202と同方向に回転するよう回転自在に保持されている。ただし、第2感温性粘着材204を第2転移温度T22まで加熱することができる構成であれば、円筒ドラム状の形態には限られない。
【0099】
第2担持回転体202の記録媒体加熱圧接ローラ211との圧接領域P2が、図7に示すB2,C2の温度領域(第2転移温度T22よりも高い温度領域)とすることで、第2感温性粘着材204の粘着力を急峻に低下させ、着色粉体層206cを記録媒体207へ転写する。
【0100】
(定着ローラ221,222)
第2担持回転体202と記録媒体加熱圧接ローラ211との圧接領域P2で、着色粉体の記録媒体207への転写のみを行なう場合は、記録媒体207の送り方向の下流側に、別途定着ローラ221,222を設け、記録媒体207上に最終出力画像を得る。
【0101】
(クリーニングローラ205)
記録媒体207へ、着色粉体層206cを転写させた後の第2担持回転体202は圧接領域P2の回転方向下流側に設けられるクリーニングローラ205により表面がクリーニングされる。
【0102】
クリーニングローラ205は、たとえば水やアルコール等が図示しない供給装置から供給されたウェブローラである。クリーニングローラ205は、回転自在に保持され、第2担持回転体202に当接、摺擦することで第2担持回転体202上に残った着色粉体を除去する。
【0103】
このとき、図示しない加熱部材を、第2担持回転体202を挟んでクリーニングローラ205と対向する位置に設け、第2担持回転体202を第2転移温度T22以上に加熱し、着色粉体の粘着力を低下させて状態で、着色粉体のクリーニングを行なっても良い。クリーニングローラ205は第2担持回転体202の回転方向と同じ方向に回転させ、第2担持回転体202をいわゆるカウンター方向に摺擦するとなお良い。
【0104】
(画像パターンの転写)
次に、第2担持回転体102の画像部に相当する領域に、第1担持回転体201の表面に形成された着色粉体層206aを転写する工程について詳細に説明する。当接領域P1に設置された加熱装置110を用いて、画像信号に応じた画像形成が行なわれる。
【0105】
上記加熱装置210を作動させない場合には、当接領域P1において第1感温性粘着材203の粘着力が第2感温性粘着材204の粘着力よりも低いため、第1感温性粘着材203上の着色粉体層206aは第2感温性粘着材204に粘着転写される。
【0106】
次に、加熱装置210により、当接領域P1の温度を、第2転移温度T22よりも低い温度領域A2から第2転移温度T22と第1転移温度T21との間の温度領域B2に加熱することで、第2感温性粘着材204の粘着力と第1感温性粘着材203の粘着力とが反転し、第2感温性粘着材204の粘着力が第1感温性粘着材203の粘着力よりも低下することで、着色粉体層206aが第1感温性粘着材203に残存する。
【0107】
より詳細に説明する。図7に示すA2の温度領域では、第1担持回転体201の第1感温性粘着材203、および第2担持回転体202の第2感温性粘着材204はともに、粘着力が高い状態であるが、第1感温性粘着材203の粘着力の方が第2感温性粘着材204よりも低い。
【0108】
図7に示すB2の温度領域では、第2担持回転体202の第2感温性粘着材204は第2転移温度T22以上となるため、粘着力が急峻に低下しているが、第1担持回転体201の第1感温性粘着材203は、高い粘着力が維持されている。その結果、第1感温性粘着材203の粘着力の方が第2感温性粘着材204よりも高くなる。
【0109】
この温度領域A2と温度領域B2とを、加熱装置210にて切り替えることで、第1感温性粘着材203上の着色粉体層206aを第2感温性粘着材204に粘着転写させる。
【0110】
温度領域B2では、着色粉体層206aに、第2感温性粘着材204が接触しても、第1感温性粘着材203の粘着力の方が高いため、着色粉体層206aは第2感温性粘着材204へは転写されない。
【0111】
これは当接領域P1にて、加熱装置210をオン、つまり加熱を行なうことにより第2感温性粘着材204を第2転移温度T22以上にすることで実現できる。この部分が非画像部となり、第1感温性粘着材203に残る着色粉体層206eとなる。
【0112】
逆に温度領域A2では、着色粉体層206aが第2感温性粘着材204に接触すると、第2感温性粘着材204の粘着力が第1感温性粘着材203の粘着力より高くなっているため、着色粉体層206aは、第2感温性粘着材204へ粘着転写される。
【0113】
これは当接領域P1にて、加熱装置210をオフ、つまり加熱を行なわないことにより第2感温性粘着材204を第2転移温度T22以下となるよう保つことで実現できる。この部分が画像部となり、第2感温性粘着材204上に粘着転写された着色粉体層206cとなる。
【0114】
つまり,非画像部に相当する領域のみ、加熱装置210を用いて第2担持回転体202の第2感温性粘着材204を加熱することで、第1感温性粘着材203へ着色粉体層206aを粘着転写させることで、第2感温性粘着材204に、画像に相当する着色粉体層206cを形成することができる。
【0115】
圧接領域P2を通過した後、記録媒体207までの間は加熱を設けず、第2担持回転体202は、第2転移温度T22以上とならないよう保たれる。これにより、第2担持回転体202の第2感温性粘着材204は高い粘着力状態を維持する。
【0116】
第2担持回転体202の第2感温性粘着材204へ粘着転写された着色粉体層206cは、粘着力を維持した第2感温性粘着材204により保持され搬送される。第2担持回転体202は第1担持回転体201との当接領域P1から回転方向(R2)下流にて、記録媒体加熱圧接ローラ211および第2担持回転体加熱圧接ローラ212により記録媒体207と圧接されている。着色粉体層206cを記録媒体207に転写させて、記録媒体207上に、画像206dが形成される。
【0117】
ここで記録媒体加熱圧接ローラ211および第2担持回転体加熱圧接ローラ212にて、第2転移温度T22以上、かつ着色粉体の溶融温度以上に加熱して着色粉体層206cを溶融させることで、記録媒体207の繊維の凹凸への着色粉体層206cの粘着力を高め、着色粉体層206cの記録媒体207への転写性をさらに高めても良い。
【0118】
また、着色粉体に、マイクロカプセル状の圧力定着着色粉体を使用して、着色粉体と記録媒体207との転写性を高めても良い。圧力定着着色粉体は、軟質物質や液体をコア材料とし、そのまわりを薄く硬いシェルで包んだコアシェル構造の着色粉体であって、加圧することで表層のシェルが破壊されてコアが露出、流動する着色粉体である。この着色粉体を使用した場合は、転写と同時に記録媒体207に着色粉体を定着させることもできる。
【0119】
また、記録媒体加熱圧接ローラ211に、硬度の硬いローラ、たとえばヤング率40[MPa]以上のゴムを表層に持つローラを採用し、記録媒体加熱圧接ローラ211の回転速度を第2担持回転体202に比べてわずかに遅くし、たとえば、第2担持回転体202の回転速度に対して、記録媒体加熱圧接ローラ211の回転速度比を、0.97以下とすることで、いわゆるずり応力により記録媒体207への転写性を高めても良い。
【0120】
第2担持回転体202と記録媒体207との圧接領域P2で転写のみを行なう場合は、記録媒体207の送り方向の下流側に、別途定着ローラ221,222を設け、記録媒体207上に最終出力画像を得る。
【0121】
一方、第1担持回転体201の第1感温性粘着材203に残された着色粉体層206eは粘着力が高められた第1感温性粘着材203により保持され、搬送される。第1担持回転体201の第1感温性粘着材203は、再び着色粉体供給装置206にて着色粉体層206aが形成される。着色粉体層206eのある部分は、粘着力がないため、第1感温性粘着材203が露出する部分にのみ、着色粉体が付着する。
【0122】
このため、着色粉体層206eは着色粉体層206aの一部となり、再び画像形成に使われる。このため、溶融型熱転写方式のインクリボンのような廃棄物は発生しない。この一連の動作を繰り返すことで、連続した画像形成も可能である。
【0123】
(第1感温性粘着材203、第2感温性粘着材204)
第1感温性粘着材203および第2感温性粘着材204は、実施の形態1で用いた第1感温性粘着材103および第2感温性粘着材104と同じ特性を有する感温性粘着材が用いられる。なお、第1感温性粘着材203には、実施の形態1で用いた第2感温性粘着材104と同等の感温性粘着材が用いられ、第2感温性粘着材204には、実施の形態1で用いた第1感温性粘着材103と同等の感温性粘着材が用いられる。
【0124】
(作用・効果)
以上、本実施の形態の構成によれば、感温性粘着材を表面に有する2つの担持回転体の間で、着色粉体層の粘着転写を行なう構成を採用することで、簡易な構成での現像および記録媒体への画像形成が可能となる。また、着色粉体の粒子の表面に粘着力材料を設ける必要がないことから、着色粉体を繰り返し用いた場合でも、画像形成の安定化を図ることができる。
【0125】
また、粘着力を有する第1担持回転体201を用いることで、均一な厚さを有する着色粉体層206aを第1担持回転体201の表面に形成することができる。さらにこの着色粉体層206aを第1担持回転体201と第2担持回転体202との間で粘着転写させる際に、第1担持回転体201の第1感温性粘着材203の粘着力と第2担持回転体202の第2感温性粘着材204の粘着力とを画像部および非画像部で逆転させて、第2感温性粘着材204の上に像を現像することができる。
【0126】
さらに、第2感温性粘着材204上に現像された画像の、記録媒体207への転写の際も、第2担持回転体202の第2感温性粘着材204の粘着力をより低下させることで、記録媒体207に対して、滲みや劣化のない安定した画像形成が可能となる。また、第1担持回転体201の第1感温性粘着材203に残った非画像部の着色粉体も、繰り返し現像および画像形成に使えるため、低コストで廃棄物の少ない現像および画像形成が可能となる。
【0127】
また、図6に示す現像装置200は、圧接領域P2の180度反対側(図中において真上側)に、当接領域P1を設ける配置としているが、第1担持回転体101と第2担持回転体102との配置関係は、この配置に限定されない。
【0128】
たとえば、図5に示したのと同様に、圧接領域P2の位置から見て、当接領域P1を真上ではなく、斜め上方に設けた、第1担持回転体と第2担持回転体との配置関係を有する現像装置を採用することも可能である。
【0129】
(各実施の形態の他の形態)
なお、上記各実施の形態において採用した現像装置10A、10B、10C、および20において、着色粉体は、第1担持回転体101,201と第2担持回転体102,202との当接領域P1で加熱装置110,210から加えられる温度では溶融しないことが好ましい。
【0130】
着色粉体は、第1担持回転体101,201と第2担持回転体102,202との間で粘着転写されるが、この際、着色粉体が溶融してしまうと着色粉体の粘着力や変形による転写性への影響がある。
【0131】
第1担持回転体101,201と第2担持回転体102,202との当接領域P1、および第2担持回転体102,202と記録媒体107,207との圧接領域P2での加熱温度を考慮した着色粉体の温度設計をすると、より安定した現像および画像形成が可能となる。
【0132】
たとえば、第1担持回転体101,201と第2担持回転体102,202との当接領域P1の加熱温度を約45℃、第2担持回転体102,202と記録媒体107,207との圧接領域P2における加熱温度を約80℃とする。
【0133】
着色粉体には、溶融定着温度が70℃の、ある一定温度以上における溶融速度の速いシャープメルト着色粉体を使用し、第2担持回転体102,202と記録媒体107,207との圧接領域P2において、記録媒体107,207への画像の転写、熱定着を行なう。この場合には、定着ローラ121,122,221,222は必ずしも必要ではない。
【0134】
また、他の例として、第1担持回転体101,201と第2担持回転体102,202との当接領域P1の加熱温度を約45℃、第2担持回転体102,202と記録媒体107,207との圧接領域P2における加熱温度を約55℃とする。
【0135】
着色粉体にはシェルの溶融温度が約100℃のマイクロカプセル状の圧力転写着色粉体を用い、第2担持回転体102,202と記録媒体107,207との圧接領域P2において、記録媒体107,207への転写、圧力定着を行なう。この場合には、定着ローラ121,122,221,222は必ずしも必要ではない。
【0136】
また、さらに他の例として、第1担持回転体101,201と第2担持回転体102,202との当接領域P1の加熱温度を約45℃、第2担持回転体102,202と記録媒体107,207との圧接領域P2における加熱温度を約55℃とする。
【0137】
着色粉体には溶融定着温度が約80℃の一般的な電子写真用着色粉体を使用し、第2担持回転体102,202と記録媒体107,207との圧接領域P2において、記録媒体107,207への転写を行なう。その後、定着ローラ121,122,221,222を用いて80℃以上に加熱し、記録媒体107,207へ加圧定着を行なう。
【0138】
また、上記各実施の形態において採用した現像装置10A、10B、10C、および20において、第1担持回転体101,201および第2担持回転体102,202に円筒ドラム状の部材を採用した場合について説明したが、この構成に限定されない。たとえば、ベルト状の形態を有する担持回転体を採用することも可能である。
【0139】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の本質は、第2担持回転体102,202上の画像部に相当する領域に着色粉体層106a,206aの画像パターンを転写する際には、当接領域P1において、着色粉体層106a,206aが第1感温性粘着材103,203から第2感温性粘着材104,204に粘着転写されるように、画像部の画像信号に対応して加熱装置110,210により当接領域P1に温度変化を与えることで、第1感温性粘着材103,203の粘着力と第2感温性粘着材104,204の粘着力とを反転させる点にある。したがって、本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0140】
1 画像形成装置、10,20 画像形成ユニット、50 操作パネル、51 操作部、51a キー、52 操作ディスプレイ、53 スキャナ、54 プリンタ、55 フィーダ、57 トレイ、58 給紙部、100A,100B,100C,200 現像装置、101,201 第1担持回転体、102,202 第2担持回転体、103,203 第1感温性粘着材、104,204 第2感温性粘着材、105,205 クリーニングローラ、106,206 着色粉体供給装置、106a,106b,106c,106d,106e,206a,206b,206c,206d,206e 着色粉体層、107,207 記録媒体、110,210 加熱装置、111,211 記録媒体加熱圧接ローラ、121,122,221,222 定着ローラ、208 ブラシ部材、P1 圧接領域、P2 圧接領域、R1,R2 回転方向、T11,T21 第1転移温度、T12,T22 第2転移温度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1転移温度の前後で粘着力が変化する第1感温性粘着材が表面に設けられた第1担持回転体と、
前記第1担持回転体に当接しながら回転し、前記第1転移温度とは異なる第2転移温度の前後で粘着力が変化する第2感温性粘着材が表面に設けられた第2担持回転体と、
前記第1担持回転体の表面上に着色粉体層を形成するために、第1感温性粘着材の表面上に着色粉体を供給する着色粉体供給装置と、
前記第1担持回転体と前記第2担持回転体との当接領域に設けられる加熱装置と、を備え、
前記第2担持回転体上の画像部に相当する領域に前記着色粉体層の画像パターンを転写する際には、前記当接領域において、前記着色粉体層が前記第1感温性粘着材から前記第2感温性粘着材に粘着転写されるように、前記画像部の画像信号に対応して前記加熱装置により前記当接領域に温度変化を与えることで、前記第1感温性粘着材の粘着力と前記第2感温性粘着材の粘着力とを反転させる、現像装置。
【請求項2】
前記第1感温性粘着材は、前記第1転移温度を境にして、前記第1転移温度よりも高い温度領域での粘着力が、前記第1転移温度よりも低い温度領域の粘着力よりも弱くなり、
前記第2感温性粘着材は、前記第1転移温度よりも高い前記第2転移温度を境にして、前記第2転移温度よりも低い温度領域での粘着力は、前記第1感温性粘着材の前記第1転移温度よりも低い温度領域の粘着力と、第1感温性粘着材の前記第1転移温度よりも高い温度領域の粘着力との間の粘着力を有し、前記第2転移温度よりも高い温度領域での粘着力は、前記第2転移温度よりも低い温度領域の粘着力よりも弱くなる、請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記第2担持回転体上の前記画像パターンを記録媒体に転写するため、前記第2担持回転体の前記記録媒体との当接領域を前記第2転移温度以上に加熱する加熱圧接ローラをさらに備える、請求項2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記第2感温性粘着材は、前記第2転移温度を境にして、前記第2転移温度よりも高い温度領域での粘着力が、前記第2転移温度よりも低い温度領域の粘着力よりも弱くなり、
前記第1感温性粘着材は、前記第2転移温度よりも高い前記第1転移温度を境にして、前記第1転移温度よりも低い温度領域での粘着力は、前記第2感温性粘着材の前記第2転移温度よりも低い温度領域の粘着力と、第2感温性粘着材の前記第2転移温度よりも高い温度領域の粘着力との間の粘着力を有し、前記第1転移温度よりも高い温度領域での粘着力は、前記第1転移温度よりも低い温度領域の粘着力よりも弱くなる、請求項1に記載の現像装置。
【請求項5】
前記第2担持回転体上の前記画像パターンを記録媒体に転写するため、前記第2担持回転体の前記記録媒体との当接領域に設けられる圧接ローラをさらに備える、請求項4に記載の現像装置。
【請求項6】
前記着色粉体は、前記当接領域で加えられる温度では溶融しない材料が用いられる、請求項1から5のいずれかに記載の現像装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の現像装置を有する、画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−66431(P2012−66431A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211904(P2010−211904)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】