現金処理装置
【課題】復旧作業ミスを防止するとともに、障害復旧時における金庫の入出金に関する情報を適切に管理する現金処理装置を提供する。
【解決手段】挿入口11、払出口12を介して金庫A〜Cに現金を入出金し、搬送経路21と識別部22とを有し、搬送経路21の搬送手段2と、挿入センサ23と、払出センサ24と、入出庫センサ25とを有し、各センサによる検出に基づいて搬送経路21に存在する金庫へ入庫しようとする現金および払出口12から払い出そうとする現金を管理する通常モードでの入出金制御を行い、障害復旧モードにおいて搬送経路21から取り除かれ挿入口11に挿入された現金のうち、搬送経路上現金情報と識別部22による識別とに基づいて金庫へ入庫しようとした現金を払出口12及び金庫A〜Cのいずれか一方へ搬送し、払出口12から払い出そうとした現金を払出口12及び金庫A〜Cのいずれか他方へ搬送する。
【解決手段】挿入口11、払出口12を介して金庫A〜Cに現金を入出金し、搬送経路21と識別部22とを有し、搬送経路21の搬送手段2と、挿入センサ23と、払出センサ24と、入出庫センサ25とを有し、各センサによる検出に基づいて搬送経路21に存在する金庫へ入庫しようとする現金および払出口12から払い出そうとする現金を管理する通常モードでの入出金制御を行い、障害復旧モードにおいて搬送経路21から取り除かれ挿入口11に挿入された現金のうち、搬送経路上現金情報と識別部22による識別とに基づいて金庫へ入庫しようとした現金を払出口12及び金庫A〜Cのいずれか一方へ搬送し、払出口12から払い出そうとした現金を払出口12及び金庫A〜Cのいずれか他方へ搬送する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現金の投入に応じて発券や商品販売等の取引を行い、釣りを返却する自動発券機等に用いる現金処理装置に係り、特に現金詰まりを主因とする障害を復旧する機能を備えた現金処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動発券機や自動販売機等の現金処理装置は、現金を収納する金庫を有し、利用者側に設けられた現金を挿入する挿入口および釣り札等の現金を返却する払出口を介して金庫に現金を入出金するものである。この現金処理装置は、挿入口、払出口及び金庫を接続する搬送経路と現金を識別する識別部と現金の位置を検出する各種センサとを有する搬送手段と、この搬送手段を通じて現金を搬送させ取引に応じた入出金制御を行う制御部とを備える構成が通例である。
【0003】
このような従来の現金処理装置は、現金を搬送する過程で現金が詰まる障害が発生することがあり、この障害が発生すると、障害復旧作業者が詰まった現金を手動で取り除いたうえで、取引をやり直す場合には回収した現金を利用者(外部)や金庫等の適切な場所に戻し、取引を進める場合には未払い金を利用者に支払う等の障害復旧作業が必要になる。この復旧作業に関連して特許文献1には、障害復旧作業者(係員)が詰まった現金を取り除いて適切な場所へ戻す取り扱いを行ったうえで、未払い金の支払いを自動的に行う現金処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−237369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記障害発生時の搬送経路上には、金庫に入庫しようとした現金および外部へ払い出されようとした現金のように、金庫の残高を管理するための入出庫情報に金庫内現金であるとして記憶されている現金(内金)と記憶されていない現金(外金)とが混在しており、障害復旧作業者は、装置が表示する搬送経路上の現金情報や現金が詰まっていた位置等から総合的に判断して、入出庫情報とのつじつまが合うように回収した現金を取り扱っている。
【0006】
しかしながら、従来の現金処理装置では、障害復旧作業者が入出庫情報とのつじつまが合うように回収した現金を取り扱い、さらにその後における取引自体の復旧も行うので、回収した現金を利用者(外部)及び金庫のいずれに戻せばよいか混乱しやすく、復旧作業が複雑化して作業者に負荷が掛かり、回収した現金の取り扱いを誤ることや搬送経路上に現金を取り残すこと等の作業ミスを生じることがある。
【0007】
また、障害復旧時に搬送経路上から回収した現金を人手で取り扱うため、この回収した現金の取り扱いを記録することが困難であり、適切な金庫管理を妨げる要因となっていた。
【0008】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、回収した現金の取り扱いを平易化して復旧作業ミスを防止するとともに、障害復旧時における金庫の入出金に関する情報を容易に記録することを可能として適切な金庫管理に資する現金処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0010】
すなわち、本発明に係る現金処理装置は、挿入口および払出口を介して金庫に現金を入出金する現金処理装置であって、前記挿入口、前記払出口および前記金庫を接続する搬送経路と現金を識別する識別部とを有し当該搬送経路を介して現金を搬送する搬送手段と、前記挿入口を介して前記搬送経路へ現金が挿入されたことを検出する挿入センサと、前記払出口を介して前記搬送経路から現金が払い出されたことを検出する払出センサと、前記金庫に現金が入出庫されたことを検出する入出庫センサと、前記各センサによる検出に基づいて前記搬送経路に存在する前記金庫へ入庫しようとする現金および前記払出口から払い出そうとする現金に関する搬送経路上現金情報を管理するとともに、前記入出庫センサの検出をもって前記金庫へ入庫しようとする現金が入庫されたとし前記払出センサの検出をもって前記払出口から払い出そうとする現金が払い出されたとして前記金庫の入出金に関する入出金情報を管理し、通常モードでの入出金制御を行う制御部とを具備してなり、前記制御部は、前記通常モードとは異なる障害復旧モードにおいて前記搬送経路から取り除かれ前記挿入口に挿入された現金のうち、前記搬送経路上現金情報と前記識別部による識別とに基づいて前記金庫へ入庫しようとした現金を前記払出口及び前記金庫のいずれか一方へ搬送するとともに、前記払出口から払い出そうとした現金を前記払出口及び前記金庫のいずれか他方へ搬送することを特徴とする。
【0011】
従来では、障害復旧時に作業者が搬送経路に残った現金を取り除き、回収した現金を外部へ払い出したり、金庫へ入庫したりする回収現金の取り扱いを搬送経路上現金情報に基づいて手作業で行っていたので、作業者が行う復旧作業が複雑化し、それに伴って作業ミスが生じるおそれがあるうえ、障害復旧時における金庫の入出金に関する情報を記録することが難しいものであるが、本発明では、障害復旧時に作業者が搬送経路に残った現金を取り除いて回収した現金を挿入口に投入するという簡単な行為だけで、取引をやり直す及び取引を進めるいずれの場合でも入出庫情報とのつじつまが合うように外部への払い出し及び金庫への入庫が自動的になされ、復旧作業ミスを防止して復旧作業を平易化できるとともに、障害復旧時における金庫の入出金に関する情報を容易に記録することが可能になり、適切な金庫管理に資することができる。
【0012】
さらに、作業者が現金を金庫へ入庫する作業を省くことができるため、作業者を金庫へアクセスできないようにすることにより、作業者による金庫に対する不正行為を防止することができる。
【0013】
搬送経路からの現金の取り忘れや、搬送経路から取り除かれた現金が作業者に着服されること等の回収した現金の不適切な取り扱いを防止するためには、前記搬送手段は、前記搬送経路から取り除かれ前記挿入口に挿入された現金を一時的に貯留するプールを有し、前記制御部は、前記プールに貯留している現金と前記搬送経路上現金情報に係る現金とが一致する場合に前記プールに貯留している現金のうち前記金庫に入庫しようとした現金を前記払出口及び前記金庫のいずれか一方へ搬送し、前記払出口から払い出そうとした現金を前記払出口及び前記金庫のいずれか他方へ搬送するとともに、前記プールに貯留している現金と前記搬送経路上現金情報に係る現金と一致しない場合に現金不一致エラーとすることが好ましい。
【0014】
迅速な払い出し処理および入庫処理に資するためには、前記プールは、前記金庫へ入庫するための入力用プールと、前記払出口から払い出すための出力用プールとを含み、前記制御部は、前記搬送経路から取り除かれ前記挿入口に挿入された現金のうち、前記金庫に入庫しようとした現金を前記入力用プール及び前記出力用プールのいずれか一方に貯留し、前記払出口から払い出そうとした現金を前記入力用プール及び前記出力用プールのいずれか他方に貯留することが望ましい。
【0015】
複数金種を取り扱う場合であっても迅速な入庫処理を可能にするためには、前記金庫は、複数の金種に対応して複数設けられており、前記入力用プールは、前記金庫毎に対応して複数設けられていることが効果的である。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以上説明した構成であるから、障害復旧作業者が搬送経路から回収した現金を挿入口に投入するという簡単な行為を行うだけで、入出庫情報とのつじつまが合うように外部への払い出し及び金庫への入庫が自動的になされ、復旧作業ミスを防止して復旧作業を平易化できるとともに、障害復旧時における金庫の入出金に関する情報を容易に記録することが可能になり、適切な金庫管理に資することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る現金処理装置を示す概略全体構成図。
【図2】一部の金庫を抜き取った状態を示す図1に対応した図。
【図3】同実施形態における搬送手段および制御部の構成および機能の概略を示すブロック図。
【図4】同実施形態において通常モードでの入出金制御の動作を示す模式図。
【図5】同実施形態において通常モードでの入出金制御の動作を示す模式図。
【図6】同実施形態において通常モードでの入出金制御の動作を示す模式図。
【図7】同実施形態において通常モードでの入出金制御の動作を示す模式図。
【図8】同実施形態において障害復旧時に行う障害復旧制御の動作を示す模式図。
【図9】同実施形態において障害復旧時に行う障害復旧制御の動作を示す模式図。
【図10】同実施形態において障害復旧時に行う障害復旧制御の動作を示す模式図。
【図11】同実施形態において障害復旧時に行う障害復旧制御の動作を示す模式図。
【図12】同実施形態において障害復旧時に制御部で実行する障害復旧制御処理ルーチンを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る現金処理装置を、図面を参照して説明する。なお、現金は紙幣と硬貨とを含むが、本実施形態では紙幣を取り扱う紙幣ブロックとしての現金処理装置を例に挙げて説明する。
【0019】
図1に示す本実施形態の現金処理装置は、例えば乗車券やカード、精算切符等の券売を行う自動発券機として用いられるもので、紙幣ブロック1と、この紙幣ブロック1にセットされて紙幣の収納場所となる4つの金庫A〜Dと、外部から投入される紙幣の金種を識別部22で識別して金庫A〜Dのうち対応する金庫に搬送経路21を介して搬送する搬送手段2とを備えている。
【0020】
紙幣ブロック1は、この現金処理装置を利用する利用者に近い側に挿入口11、出金口13、返却口14(以下、出金口13及び返却口14を合わせて払出口12ともいう)を設けたもので、同じく利用者に近い側に固定式の金庫Dを内設し、係員が操作を行う側に3つのカセット式の金庫A〜Cを設けている。また、紙幣ブロック1には、金庫A〜Cに対応して設けられこれら金庫A〜Cへ紙幣を収納する前に一時的に保留する一次保留部a1〜c1、搬送経路21上の紙幣を一時的に保留する一時保留部Eや出金保留部F、読み取り不能、重送発生、異常検知時の不良券を回収する不良券回収部G等も設けられている。これら出金保留部Fおよび一次保留部a1〜c1は本発明のプールを構成し、一次保留部a1〜c1が本発明の入力用プールに該当し、出金保留部Fが本発明の出力用プールに該当するものである。勿論その他の組み合わせも可能である。
【0021】
カセット式の金庫A〜Cは、図2に例示するように把手hを把持して紙幣ブロック1から引き出すことが可能にされている。これら金庫A〜Cと紙幣ブロック1との間には、必要に応じて電磁力等を利用して金庫A〜Cを引き出し禁止状態にする図示しないロック機構が設けてあり、また、紙幣ブロック1又は金庫A〜Cには、引き出し禁止状態か否かを表示して係員に了知させる図示しないLED表示部が設けてある。
【0022】
この実施形態では、図3に示すように、金庫Aを第一金種たる一万円札を格納する第一金種金庫Aとし、金庫Bを第二金種たる五千円札を格納する第二金種金庫Bとし、金庫Cを第三金種たる千円札を格納する第三金種金庫Cとし、金庫Dを第四金種たる二千円札を格納する第四金種金庫Dとして、金庫A〜Dを四金種循環金庫として設定している。
【0023】
図3に示すように、現金処理装置は、搬送手段2とこれを制御する制御部3とを含んで構成されている。搬送手段2は、周知の現金処理装置と同様に、図示しない挾持ローラ、搬送ベルト、ウィング等の方向変換部などから構成される搬送経路21と、搬送される現金たる紙幣の金種および真性(偽造か否か)を識別する識別部22と、紙幣の金種識別のみを行い紙幣の真性までは識別しない簡易識別部20と、挿入口11及び識別部22の間に設けられ挿入口11を介して搬送経路21へ紙幣が挿入されたことを検出する挿入センサ23と、払出口12及び出金保留部Fの間に設けられ払出口12を介して搬送経路21から紙幣が払い出されたことを検出する払出センサ24と、金庫A〜Cの出入口に設けられ金庫A〜Cに紙幣が入出庫されたことを検出する入出庫センサ25とを有している。
【0024】
制御部3は、識別部22或いは簡易識別部20の識別結果等に基づいて搬送手段2を制御するものであり、挿入口11から投入された紙幣を識別部22に通過させた後、搬送経路21に沿って流通させ、随所に設けた分岐部26a〜26gで必要に応じて紙幣を方向変換して、第一金種金庫A、第二金種金庫B、第三金種金庫C、固定金庫D、一時保留部E、出金保留部F、払出口12、不良券回収部G等へ搬送する動作を行うとともに、金庫A〜D等から搬送経路21上への紙幣の繰り出し動作、簡易識別部20における金種識別、更には次なる搬送先である出金口13や金庫A〜Dへの搬送動作などを含む統括的な搬送制御を行うように構成されている。
【0025】
この紙幣の搬送制御に対して、さらに制御部3は、挿入センサ23、払出センサ24及び入出庫センサ25の検出結果に基づいて搬送経路21で搬送中の紙幣に関する搬送経路上現金情報を管理するとともに、金庫A〜Dの入出金に関する入出金情報(例えば金庫残高など)を管理している。搬送経路上現金情報は、例えば紙幣ブロック1から払出口12を介して外部に紙幣が払い出されたときに金庫から出金したとし、金庫A〜Cに紙幣が入庫したときに金庫に入金したというように、実際の金庫への入出庫時ではなく、現実の取引に即した形態で金庫の入出金情報を管理するために用いる情報であるとともに、紙幣詰まり等の障害発生時の復旧作業に用いる情報である。
【0026】
ここで、入出金情報において金庫内の現金であるとしている現金を「内金」といい、金庫外の現金であるとしている現金を「外金」という。本実施形態では、搬送経路21から金庫A〜Dへ入庫したことをもって「外金」が「内金」となり、搬送経路21から払出口12を通じて外部に払い出されたことをもって「内金」が「外金」となる取り扱いをしているが、「内金」と「外金」との取り扱いを切り替えるタイミングはこれに限定されるものではない。
【0027】
上記で述べた搬送制御、入出金情報および搬送経路上現金情報の管理を行う具体的な制御部3は、図3に示すように、入出金制御部31と、前記入出金情報を記憶する金庫入出金情報記憶部32と、前記搬送経路上現金情報を記憶する搬送経路上情報記憶部33と、搬送制御部34と、障害発生判定部35と、障害復旧制御部36と、障害復旧時挿入現金情報記憶部37とを含んで構成されている。
【0028】
金庫入出金情報記憶部32は、金庫A〜D毎にその入出金に関する入出金情報を記憶するものであり、1つの取引毎に金種及び枚数を含めて入金額並びに出金額を記憶する。
【0029】
搬送経路上情報記憶部33は、搬送経路21上を搬送中の紙幣に関する情報を記憶するものであり、入庫しようとする紙幣と払い出そうとする紙幣とを金種及び枚数を含めて記憶している。
【0030】
入出金制御部31は、利用者が操作する図示しない操作部、搬送手段2や各種センサからの信号に基づいて通常時である通常モードでの入出金に関する総括的な制御を行うものであり、金庫入出金情報記憶部32に記憶される入出金情報や搬送経路上情報記憶部33に記憶される搬送経路上現金情報の管理、取引に応じた紙幣の搬送指令を搬送制御部34に対して行う。
【0031】
搬送制御部34は、入出金制御部31及び後述する障害復旧制御部36からの紙幣の搬送指令に基づいて搬送手段2を駆動制御し、紙幣の搬送を行う。
【0032】
障害発生判定部35は、搬送手段2に設けられた図示しない各種センサからの入力に応じて紙幣詰まり等の障害が発生しているか否かを判定し、その判定結果を入出金制御部31及び障害復旧制御部36へ伝達する。障害発生していないと判定された場合には障害復旧制御部36が作動せずに入出金制御部31が通常モードでの入出金制御を行い、障害発生したと判定された場合には障害復旧制御部36が障害復旧モードとして作動し、入出金制御部31が障害復旧制御部36の支配下で付随して作動する。
【0033】
障害復旧制御部36は、障害発生した際の障害復旧時に現金処理装置の制御を行うものであり、搬送経路21から取り除かれ回収された紙幣を挿入口11から取り込み、取り込んだ紙幣を識別して、識別した紙幣に関する挿入現金情報を障害復旧時挿入現金情報記憶部37に記憶し、上記搬送経路上情報記憶部33の搬送経路上現金情報と合わせて後述する復旧制御を行うものである。
【0034】
このような制御部3を実現する具体的な構成は、CPU、メモリ及びインターフェイスを有する通常のマイクロコンピュータユニットにより構成され、メモリには図示しない搬送制御処理ルーチンや障害発生判定処理ルーチンや入出金制御処理ルーチン、後述する障害復旧制御処理ルーチン(図12参照)が格納してあり、CPUが適宜必要なプログラムを呼び出して実行することにより、上記の入出金制御部31、障害復旧制御部36、搬送制御部34および障害発生判定部35が実現される。これらの詳細な制御、例えば制御部3は、紙幣を各金庫A〜Cに収納する前に一時的に一旦これらの一次保留部a1、b1、c1に保留し、その後、搬送経路21上に一旦繰り出した後に金庫A〜Cに収納する制御を行うが、本実施形態においてこれらの具体的な構成や制御については省略している。また、各金庫A〜Dに紙幣を装填し、或いは各金庫A〜Dから紙幣を繰り出す際には、各金庫A〜Dの一部または搬送経路21の一部に設けた図示しない計数部によって紙幣の枚数が計数されるようにしている。
【0035】
次に、通常モードでの入出金制御について図4〜図7を参照しつつ説明する。ここでは、一万円札1枚預かりお釣りが七千円(五千円札1枚、千円札2枚)を返却する入出金制御を例に挙げて説明する。
【0036】
まず、図4(a)に示すように、挿入口11を介して第一金種たる一万円札Mo1が搬送経路21に挿入されると、挿入センサ23及び識別部22がこれを検出ないし識別し、搬送経路上情報記憶部33の搬送経路上現金情報に、入庫中である現金は一万円札で1枚であると記憶する。また、挿入された一万円札Mo1を、これを格納する第一金種金庫Aに対応した一万円用一次保留部a1に搬送経路21を介して搬送する。この際、第一金種金庫Aに一万円札Mo1は入庫されていないため金庫入出金情報記憶部32には記憶されない。
【0037】
次に、図5(b)に示すように、三千円分の購入対象品を購入する取引が行われて七千円(五千円札1枚、千円札2枚)の払い出しが指令されると、第二金種たる五千円札Mo2がこれを格納する第二金種金庫Bから搬送経路21へ出庫され、第二金種金庫Bの出口に設けられた入出庫センサ25bがこれを検出して搬送経路上情報記憶部33の搬送経路上現金情報に、払出中である現金は五千円札で1枚であると記憶する。また、第二金種金庫Bから出された五千円札Mo2を、出金保留部Fに搬送経路21を介して搬送する。この際、五千円札Mo2は払出口12から払い出されていないため金庫入出金情報記憶部32には記憶されない。
【0038】
次に、図6(c)に示すように、上記五千円札Mo2と同様に、第三金種たる千円札Mo3がこれを格納する第三金種金庫Cから搬送経路21へ出庫され、第三金種金庫Cの出口に設けられた入出庫センサ25cがこれを検出して搬送経路上情報記憶部33の搬送経路上現金情報に、払出中である現金は千円札で1枚であると記憶する。また、第三金種金庫Cから出された千円札Mo3を、出金保留部Fに搬送経路21を介して搬送する。この際、千円札Mo3は払出口12から払い出されていないため金庫入出金情報記憶部32には記憶されない。もう一枚の千円札Mo3についても同様の処理を行う。
【0039】
最後に、図7(d)に示すように、出金保留部Fに保留されている1枚の五千円札Mo2及び2枚の千円札Mo3が払出口12を介して外部に払い出されると、これを払出センサ24が検出して、搬送経路上情報記憶部33の搬送経路上現金情報に記憶されている払出中である現金が払い出されたとして、金庫入出金情報記憶部32に記憶するとともに、搬送経路上情報記憶部33の記憶が消去される。同様に、一万円用一次保留部a1に保留されている1枚の一万円札Mo1が第一金種金庫Aに入庫されると、第一金種金庫Aの入口に設けられた入出庫センサ25aがこれを検出して、搬送経路上情報記憶部33の搬送経路上現金情報に記憶されている入庫中である現金が入庫したとして、金庫入出金情報記憶部32に記憶するとともに、搬送経路上情報記憶部33の記憶が消去される。
【0040】
次に、通常モードにおいて紙幣が詰まる等の障害が発生した障害復旧時に行う障害復旧制御について図8〜図12を参照して説明する。この障害復旧制御は、図12に示す障害復旧制御処理ルーチンを実行することにより実現されるものである。
【0041】
ここでは、図8(a)に示すように、上記の図6(c)に示す時点で二枚目の千円札Mo3が搬送経路21で詰まった場合を例に挙げて説明する。この例の障害発生時には、出金保留部Fに1枚の五千円札Mo2と1枚の千円札Mo3が保留され、一万円用一次保留部a1に1枚の一万円札Mo1が保留され、搬送経路21に1枚の千円札Mo3が詰まった状態で存在し、搬送経路上情報記憶部33における搬送経路上現金情報には入庫中である現金は一万円札で1枚であり、払出中である現金は1枚の五千円札と2枚の千円札であることが記憶されている。
【0042】
まず、図9(b)に示すように、障害復旧作業者たる係員が出金保留部Fと一万円用一次保留部a1と搬送経路21に存在する現金を回収し、これらを挿入口11に一括で挿入すると、挿入された現金が順番に処理される(図12の処理A2参照)。ここではまず一万円札Mo1が挿入センサ23及び識別部22で検出ないし識別され、搬送経路上情報記憶部33における搬送経路上現金情報に係る現金と合致するか否かが判定される(図12の処理A3参照)。搬送経路上現金情報において一万円札Mo1は入庫中である現金として記憶されているので、出力(返却)すべき現金として出力用プールである出金保留部Fに搬送される(図12の処理A4参照)。また、障害復旧時挿入現金情報記憶部37に記憶される障害復旧時に挿入口11へ挿入された現金に関する挿入現金情報に、出力すべき現金は1枚の一万円札Mo1であると記憶する(図12の処理A5参照)。
【0043】
次に、図10(c)に示すように、挿入された現金のうち残りの現金である1枚の五千円札Mo2と2枚の千円札Mo3とが挿入センサ23及び識別部22で検出ないし識別され、搬送経路上情報記憶部33における搬送経路上現金情報に係る現金と合致するか否かが判定される(図12の処理A3参照)。搬送経路上現金情報において1枚の五千円札Mo2と2枚の千円札Mo3は払出中である現金として記憶されているので、入力(入庫)すべき現金として入力用プールである五千円用一時保留部b1及び千円用一時保留部c1に搬送される(図12の処理A4参照)。また、障害復旧時挿入現金情報記憶部37に記憶される障害復旧時に挿入口11に挿入された現金に関する挿入現金情報に、入力すべき現金は1枚の五千円札Mo2と2枚の千円札Mo3であると記憶する(図12の処理A5参照)。
【0044】
次に、図11(d)に示すように、搬送経路上情報記憶部33の搬送経路上現金情報に係る現金と障害復旧時挿入現金情報記憶部37の挿入現金情報に係る現金とが一致するか否かが判定される(図12の処理A7参照)。具体的には、搬送経路上現金情報に係る入庫中である現金と、挿入現金情報に係る出力すべき現金とが金種及び数量において一致し、且つ、搬送経路上現金情報に係る払出中である現金と、挿入現金情報に係る入力すべき現金とが金種及び数量において一致する場合に、両情報に係る現金が一致すると判定する。一致しない場合は、表示部や音出力部を介して外部に現金不一致エラーであることを報知する(図12の処理A9参照)。一致する場合は、図11(d)に示すように、出力用プールである出金保留部Fに貯留している現金を払出口12から払い出し、入力用プールである五千円用一時保留部b1にある五千円札Mo2を第二金種金庫Bへ入庫し、入力用プールである千円用一時保留部c1にある千円札Mo3を第三金種金庫Cへ入庫する(図12の処理A8参照)。
【0045】
以上のように、本実施形態に係る現金処理装置は、挿入口11および払出口12(出金口13及び返却口14を含む)を介して金庫A〜Cに現金を入出金する現金処理装置であって、挿入口11、払出口12および金庫A〜Cを接続する搬送経路21と現金を識別する識別部22とを有し搬送経路21を介して現金を搬送する搬送手段2と、挿入口11を介して搬送経路21へ現金が挿入されたことを検出する挿入センサ23と、払出口12を介して搬送経路21から現金が払い出されたことを検出する払出センサ24と、金庫A〜Cに現金が入出庫されたことを検出する入出庫センサ25と、各センサ(挿入センサ23、払出センサ24、入出庫センサ25)による検出に基づいて搬送経路21に存在する金庫A〜Cへ入庫しようとする現金および払出口12から払い出そうとする現金に関する搬送経路上現金情報を管理するとともに、入出庫センサ25の検出をもって金庫A〜Cへ入庫しようとする現金が入庫されたとし払出センサ24の検出をもって払出口12から払い出そうとする現金が払い出されたとして金庫A〜Cの入出金に関する入出金情報を管理し、通常モードでの入出金制御を行う制御部3とを具備してなり、制御部3は、通常モードとは異なる障害復旧モードにおいて搬送経路21から取り除かれ挿入口11に挿入された現金のうち、搬送経路上現金情報と識別部による識別とに基づいて金庫A〜Cへ入庫しようとした現金を払出口12及び金庫A〜Cのいずれか一方へ搬送するとともに、払出口12から払い出そうとした現金を払出口12及び金庫A〜Cのいずれか他方へ搬送することを特徴とする。
【0046】
従来では、障害復旧時に作業者が搬送経路21に残った現金を取り除き、回収した現金を外部へ払い出したり、金庫A〜Cへ入庫したりする回収現金の取り扱いを搬送経路上現金情報に基づいて手作業で行っていたので、作業者が行う復旧作業が複雑化し、それに伴って作業ミスが生じるおそれがあるうえ、障害復旧時における金庫の入出金に関する情報を記録することが難しいものであるが、本実施形態では、障害復旧時に作業者が搬送経路21に残った現金を取り除いて回収した現金を挿入口11に投入するという簡単な行為だけで、取引をやり直す及び取引を進めるいずれの場合でも入出庫情報とのつじつまが合うように外部への払い出し及び金庫への入庫が自動的になされ、復旧作業ミスを防止して復旧作業を平易化できるとともに、障害復旧時における金庫の入出金に関する情報を容易に記録することが可能になり、適切な金庫管理に資することができる。
【0047】
さらに、作業者が現金を金庫へ入庫する作業を省くことができるため、作業者を金庫へアクセスできないようにすることにより、作業者による金庫に対する不正行為を防止することができる。
【0048】
特に、搬送手段2は、搬送経路21から取り除かれ挿入口11に挿入された現金を一時的に貯留するプール(出金保留部F、一次保留部a1、b1、c1)を有し、制御部3は、プールに貯留している現金と搬送経路上現金情報に係る現金とが一致する場合にプールに貯留している現金のうち金庫A〜Cに入庫しようとした現金を払出口12及び金庫A〜Cのいずれか一方へ搬送し、払出口12から払い出そうとした現金を払出口12及び金庫A〜Cのいずれか他方へ搬送するとともに、プールに貯留している現金と搬送経路上現金情報に係る現金と一致しない場合、すなわち回収した現金が不足する場合に現金不一致エラーとするので、搬送経路21からの現金の取り忘れや、搬送経路21から取り除かれた現金が作業者に着服されること等の回収した現金の不適切な取り扱いを防止することが可能となる。
【0049】
さらにプールは、金庫A〜Cへ入庫するための入力用プール(一次保留部a1、b1、c1)と、払出口12から払い出すための出力用プール(出金保留部F)とを含み、制御部3は、搬送経路21から取り除かれ挿入口11に挿入された現金のうち、金庫A〜Cに入庫しようとした現金を入力用プール及び出力用プールのいずれか一方に貯留し、払出口12から払い出そうとした現金を入力用プール及び出力用プールのいずれか他方に貯留するので、両プールへ現金を搬送する過程で現金の最終搬送先を分ける処理を併せて実施し、迅速な払い出し処理および入庫処理が可能になる。
【0050】
さらに、金庫A〜Cは、複数の金種に対応して複数設けられており、入力用プール(一次保留部a1、b1、c1)は、金庫毎に対応して複数設けられているので、複数金種を取り扱う場合であっても迅速な入庫処理が可能になる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0052】
例えば、本実施形態では、障害復旧作業者が詰まった現金を手動で取り除いた後で取引をやり直す場合の復旧作業に対応するために、制御部3を、障害復旧モードにおいて搬送経路21から取り除かれ挿入口11に挿入された現金のうち、搬送経路上現金情報と識別部22による識別とに基づいて金庫A〜Cへ入庫しようとした現金を払出口12から払い出すとともに、払出口12から払い出そうとした現金を金庫A〜Cへ入庫するように構成しているが、障害復旧作業者が詰まった現金を手動で取り除いた後で取引を進める場合の復旧作業に対応するために、制御部3を、障害復旧モードにおいて搬送経路21から取り除かれ挿入口11に挿入された現金のうち、搬送経路上現金情報と識別部22とに基づいて金庫A〜Cへ入庫しようとした現金を金庫A〜Cへ入庫するとともに、払出口12から払い出そうとした現金を払出口12から払い出すように構成してもよい。
【0053】
また、本実施形態では、取引をやり直す復旧作業に対応するため、制御部3は、搬送経路21から取り除かれ挿入口11に挿入された現金のうち、金庫A〜Cに入庫しようとした現金を出金保留部F(出力用プール)に貯留し、払出口12から払い出そうとした現金を一次保留部a1〜c1(入力用プール)に貯留しているが、取引を進める復旧作業に対応する場合に本発明を適用するには、この逆すなわち、制御部3は、搬送経路21から取り除かれ挿入口11に挿入された現金のうち、金庫A〜Cに入庫しようとした現金を一次保留部a1〜c1(入力用プール)に貯留し、払出口12から払い出そうとした現金を出金保留部F(出力用プール)に貯留すればよい。
【0054】
また、本実施形態では、金庫A〜Dを四金種循環金庫としているが、金庫A〜Dに格納する金種は本実施形態のものに限定されるものでなく、どの金種を格納することも可能である。また、固定式の金庫Dを二千円札と五千円札を格納する混合金庫とし、金庫Aに千円札、金庫Bに一万円札を格納する循環金庫とし、金庫Cを多用途に利用可能な自在金庫に設定して、現金の補給及び回収を目的として現金処理装置を停止させることなく運用する、いわゆる無停止補給、無停止回収を実現した金庫設定も可能である。このような様々な金庫の設定に対しても本発明を適用することが可能である。
【0055】
また、本実施形態では、現金としての紙幣を取り扱う紙幣ブロックとしての現金処理装置を例に挙げて説明したが、硬貨を取り扱う硬貨ブロックにも本発明を適用することが可能である。
【0056】
また、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0057】
1………紙幣ブロック
11……挿入口
12……払出口
A〜C…金庫
2………搬送手段
21……搬送経路
22……識別部
23……挿入センサ
24……払出センサ
25……入出庫センサ
33……搬送経路上情報記憶部
31……入出金制御部
32……金庫入出金情報記憶部
F………出金保留部(出力用プール、プール)
a1、b1、c1…一次保留部(入力用プール、プール)
【技術分野】
【0001】
本発明は、現金の投入に応じて発券や商品販売等の取引を行い、釣りを返却する自動発券機等に用いる現金処理装置に係り、特に現金詰まりを主因とする障害を復旧する機能を備えた現金処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動発券機や自動販売機等の現金処理装置は、現金を収納する金庫を有し、利用者側に設けられた現金を挿入する挿入口および釣り札等の現金を返却する払出口を介して金庫に現金を入出金するものである。この現金処理装置は、挿入口、払出口及び金庫を接続する搬送経路と現金を識別する識別部と現金の位置を検出する各種センサとを有する搬送手段と、この搬送手段を通じて現金を搬送させ取引に応じた入出金制御を行う制御部とを備える構成が通例である。
【0003】
このような従来の現金処理装置は、現金を搬送する過程で現金が詰まる障害が発生することがあり、この障害が発生すると、障害復旧作業者が詰まった現金を手動で取り除いたうえで、取引をやり直す場合には回収した現金を利用者(外部)や金庫等の適切な場所に戻し、取引を進める場合には未払い金を利用者に支払う等の障害復旧作業が必要になる。この復旧作業に関連して特許文献1には、障害復旧作業者(係員)が詰まった現金を取り除いて適切な場所へ戻す取り扱いを行ったうえで、未払い金の支払いを自動的に行う現金処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−237369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記障害発生時の搬送経路上には、金庫に入庫しようとした現金および外部へ払い出されようとした現金のように、金庫の残高を管理するための入出庫情報に金庫内現金であるとして記憶されている現金(内金)と記憶されていない現金(外金)とが混在しており、障害復旧作業者は、装置が表示する搬送経路上の現金情報や現金が詰まっていた位置等から総合的に判断して、入出庫情報とのつじつまが合うように回収した現金を取り扱っている。
【0006】
しかしながら、従来の現金処理装置では、障害復旧作業者が入出庫情報とのつじつまが合うように回収した現金を取り扱い、さらにその後における取引自体の復旧も行うので、回収した現金を利用者(外部)及び金庫のいずれに戻せばよいか混乱しやすく、復旧作業が複雑化して作業者に負荷が掛かり、回収した現金の取り扱いを誤ることや搬送経路上に現金を取り残すこと等の作業ミスを生じることがある。
【0007】
また、障害復旧時に搬送経路上から回収した現金を人手で取り扱うため、この回収した現金の取り扱いを記録することが困難であり、適切な金庫管理を妨げる要因となっていた。
【0008】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、回収した現金の取り扱いを平易化して復旧作業ミスを防止するとともに、障害復旧時における金庫の入出金に関する情報を容易に記録することを可能として適切な金庫管理に資する現金処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0010】
すなわち、本発明に係る現金処理装置は、挿入口および払出口を介して金庫に現金を入出金する現金処理装置であって、前記挿入口、前記払出口および前記金庫を接続する搬送経路と現金を識別する識別部とを有し当該搬送経路を介して現金を搬送する搬送手段と、前記挿入口を介して前記搬送経路へ現金が挿入されたことを検出する挿入センサと、前記払出口を介して前記搬送経路から現金が払い出されたことを検出する払出センサと、前記金庫に現金が入出庫されたことを検出する入出庫センサと、前記各センサによる検出に基づいて前記搬送経路に存在する前記金庫へ入庫しようとする現金および前記払出口から払い出そうとする現金に関する搬送経路上現金情報を管理するとともに、前記入出庫センサの検出をもって前記金庫へ入庫しようとする現金が入庫されたとし前記払出センサの検出をもって前記払出口から払い出そうとする現金が払い出されたとして前記金庫の入出金に関する入出金情報を管理し、通常モードでの入出金制御を行う制御部とを具備してなり、前記制御部は、前記通常モードとは異なる障害復旧モードにおいて前記搬送経路から取り除かれ前記挿入口に挿入された現金のうち、前記搬送経路上現金情報と前記識別部による識別とに基づいて前記金庫へ入庫しようとした現金を前記払出口及び前記金庫のいずれか一方へ搬送するとともに、前記払出口から払い出そうとした現金を前記払出口及び前記金庫のいずれか他方へ搬送することを特徴とする。
【0011】
従来では、障害復旧時に作業者が搬送経路に残った現金を取り除き、回収した現金を外部へ払い出したり、金庫へ入庫したりする回収現金の取り扱いを搬送経路上現金情報に基づいて手作業で行っていたので、作業者が行う復旧作業が複雑化し、それに伴って作業ミスが生じるおそれがあるうえ、障害復旧時における金庫の入出金に関する情報を記録することが難しいものであるが、本発明では、障害復旧時に作業者が搬送経路に残った現金を取り除いて回収した現金を挿入口に投入するという簡単な行為だけで、取引をやり直す及び取引を進めるいずれの場合でも入出庫情報とのつじつまが合うように外部への払い出し及び金庫への入庫が自動的になされ、復旧作業ミスを防止して復旧作業を平易化できるとともに、障害復旧時における金庫の入出金に関する情報を容易に記録することが可能になり、適切な金庫管理に資することができる。
【0012】
さらに、作業者が現金を金庫へ入庫する作業を省くことができるため、作業者を金庫へアクセスできないようにすることにより、作業者による金庫に対する不正行為を防止することができる。
【0013】
搬送経路からの現金の取り忘れや、搬送経路から取り除かれた現金が作業者に着服されること等の回収した現金の不適切な取り扱いを防止するためには、前記搬送手段は、前記搬送経路から取り除かれ前記挿入口に挿入された現金を一時的に貯留するプールを有し、前記制御部は、前記プールに貯留している現金と前記搬送経路上現金情報に係る現金とが一致する場合に前記プールに貯留している現金のうち前記金庫に入庫しようとした現金を前記払出口及び前記金庫のいずれか一方へ搬送し、前記払出口から払い出そうとした現金を前記払出口及び前記金庫のいずれか他方へ搬送するとともに、前記プールに貯留している現金と前記搬送経路上現金情報に係る現金と一致しない場合に現金不一致エラーとすることが好ましい。
【0014】
迅速な払い出し処理および入庫処理に資するためには、前記プールは、前記金庫へ入庫するための入力用プールと、前記払出口から払い出すための出力用プールとを含み、前記制御部は、前記搬送経路から取り除かれ前記挿入口に挿入された現金のうち、前記金庫に入庫しようとした現金を前記入力用プール及び前記出力用プールのいずれか一方に貯留し、前記払出口から払い出そうとした現金を前記入力用プール及び前記出力用プールのいずれか他方に貯留することが望ましい。
【0015】
複数金種を取り扱う場合であっても迅速な入庫処理を可能にするためには、前記金庫は、複数の金種に対応して複数設けられており、前記入力用プールは、前記金庫毎に対応して複数設けられていることが効果的である。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以上説明した構成であるから、障害復旧作業者が搬送経路から回収した現金を挿入口に投入するという簡単な行為を行うだけで、入出庫情報とのつじつまが合うように外部への払い出し及び金庫への入庫が自動的になされ、復旧作業ミスを防止して復旧作業を平易化できるとともに、障害復旧時における金庫の入出金に関する情報を容易に記録することが可能になり、適切な金庫管理に資することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る現金処理装置を示す概略全体構成図。
【図2】一部の金庫を抜き取った状態を示す図1に対応した図。
【図3】同実施形態における搬送手段および制御部の構成および機能の概略を示すブロック図。
【図4】同実施形態において通常モードでの入出金制御の動作を示す模式図。
【図5】同実施形態において通常モードでの入出金制御の動作を示す模式図。
【図6】同実施形態において通常モードでの入出金制御の動作を示す模式図。
【図7】同実施形態において通常モードでの入出金制御の動作を示す模式図。
【図8】同実施形態において障害復旧時に行う障害復旧制御の動作を示す模式図。
【図9】同実施形態において障害復旧時に行う障害復旧制御の動作を示す模式図。
【図10】同実施形態において障害復旧時に行う障害復旧制御の動作を示す模式図。
【図11】同実施形態において障害復旧時に行う障害復旧制御の動作を示す模式図。
【図12】同実施形態において障害復旧時に制御部で実行する障害復旧制御処理ルーチンを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る現金処理装置を、図面を参照して説明する。なお、現金は紙幣と硬貨とを含むが、本実施形態では紙幣を取り扱う紙幣ブロックとしての現金処理装置を例に挙げて説明する。
【0019】
図1に示す本実施形態の現金処理装置は、例えば乗車券やカード、精算切符等の券売を行う自動発券機として用いられるもので、紙幣ブロック1と、この紙幣ブロック1にセットされて紙幣の収納場所となる4つの金庫A〜Dと、外部から投入される紙幣の金種を識別部22で識別して金庫A〜Dのうち対応する金庫に搬送経路21を介して搬送する搬送手段2とを備えている。
【0020】
紙幣ブロック1は、この現金処理装置を利用する利用者に近い側に挿入口11、出金口13、返却口14(以下、出金口13及び返却口14を合わせて払出口12ともいう)を設けたもので、同じく利用者に近い側に固定式の金庫Dを内設し、係員が操作を行う側に3つのカセット式の金庫A〜Cを設けている。また、紙幣ブロック1には、金庫A〜Cに対応して設けられこれら金庫A〜Cへ紙幣を収納する前に一時的に保留する一次保留部a1〜c1、搬送経路21上の紙幣を一時的に保留する一時保留部Eや出金保留部F、読み取り不能、重送発生、異常検知時の不良券を回収する不良券回収部G等も設けられている。これら出金保留部Fおよび一次保留部a1〜c1は本発明のプールを構成し、一次保留部a1〜c1が本発明の入力用プールに該当し、出金保留部Fが本発明の出力用プールに該当するものである。勿論その他の組み合わせも可能である。
【0021】
カセット式の金庫A〜Cは、図2に例示するように把手hを把持して紙幣ブロック1から引き出すことが可能にされている。これら金庫A〜Cと紙幣ブロック1との間には、必要に応じて電磁力等を利用して金庫A〜Cを引き出し禁止状態にする図示しないロック機構が設けてあり、また、紙幣ブロック1又は金庫A〜Cには、引き出し禁止状態か否かを表示して係員に了知させる図示しないLED表示部が設けてある。
【0022】
この実施形態では、図3に示すように、金庫Aを第一金種たる一万円札を格納する第一金種金庫Aとし、金庫Bを第二金種たる五千円札を格納する第二金種金庫Bとし、金庫Cを第三金種たる千円札を格納する第三金種金庫Cとし、金庫Dを第四金種たる二千円札を格納する第四金種金庫Dとして、金庫A〜Dを四金種循環金庫として設定している。
【0023】
図3に示すように、現金処理装置は、搬送手段2とこれを制御する制御部3とを含んで構成されている。搬送手段2は、周知の現金処理装置と同様に、図示しない挾持ローラ、搬送ベルト、ウィング等の方向変換部などから構成される搬送経路21と、搬送される現金たる紙幣の金種および真性(偽造か否か)を識別する識別部22と、紙幣の金種識別のみを行い紙幣の真性までは識別しない簡易識別部20と、挿入口11及び識別部22の間に設けられ挿入口11を介して搬送経路21へ紙幣が挿入されたことを検出する挿入センサ23と、払出口12及び出金保留部Fの間に設けられ払出口12を介して搬送経路21から紙幣が払い出されたことを検出する払出センサ24と、金庫A〜Cの出入口に設けられ金庫A〜Cに紙幣が入出庫されたことを検出する入出庫センサ25とを有している。
【0024】
制御部3は、識別部22或いは簡易識別部20の識別結果等に基づいて搬送手段2を制御するものであり、挿入口11から投入された紙幣を識別部22に通過させた後、搬送経路21に沿って流通させ、随所に設けた分岐部26a〜26gで必要に応じて紙幣を方向変換して、第一金種金庫A、第二金種金庫B、第三金種金庫C、固定金庫D、一時保留部E、出金保留部F、払出口12、不良券回収部G等へ搬送する動作を行うとともに、金庫A〜D等から搬送経路21上への紙幣の繰り出し動作、簡易識別部20における金種識別、更には次なる搬送先である出金口13や金庫A〜Dへの搬送動作などを含む統括的な搬送制御を行うように構成されている。
【0025】
この紙幣の搬送制御に対して、さらに制御部3は、挿入センサ23、払出センサ24及び入出庫センサ25の検出結果に基づいて搬送経路21で搬送中の紙幣に関する搬送経路上現金情報を管理するとともに、金庫A〜Dの入出金に関する入出金情報(例えば金庫残高など)を管理している。搬送経路上現金情報は、例えば紙幣ブロック1から払出口12を介して外部に紙幣が払い出されたときに金庫から出金したとし、金庫A〜Cに紙幣が入庫したときに金庫に入金したというように、実際の金庫への入出庫時ではなく、現実の取引に即した形態で金庫の入出金情報を管理するために用いる情報であるとともに、紙幣詰まり等の障害発生時の復旧作業に用いる情報である。
【0026】
ここで、入出金情報において金庫内の現金であるとしている現金を「内金」といい、金庫外の現金であるとしている現金を「外金」という。本実施形態では、搬送経路21から金庫A〜Dへ入庫したことをもって「外金」が「内金」となり、搬送経路21から払出口12を通じて外部に払い出されたことをもって「内金」が「外金」となる取り扱いをしているが、「内金」と「外金」との取り扱いを切り替えるタイミングはこれに限定されるものではない。
【0027】
上記で述べた搬送制御、入出金情報および搬送経路上現金情報の管理を行う具体的な制御部3は、図3に示すように、入出金制御部31と、前記入出金情報を記憶する金庫入出金情報記憶部32と、前記搬送経路上現金情報を記憶する搬送経路上情報記憶部33と、搬送制御部34と、障害発生判定部35と、障害復旧制御部36と、障害復旧時挿入現金情報記憶部37とを含んで構成されている。
【0028】
金庫入出金情報記憶部32は、金庫A〜D毎にその入出金に関する入出金情報を記憶するものであり、1つの取引毎に金種及び枚数を含めて入金額並びに出金額を記憶する。
【0029】
搬送経路上情報記憶部33は、搬送経路21上を搬送中の紙幣に関する情報を記憶するものであり、入庫しようとする紙幣と払い出そうとする紙幣とを金種及び枚数を含めて記憶している。
【0030】
入出金制御部31は、利用者が操作する図示しない操作部、搬送手段2や各種センサからの信号に基づいて通常時である通常モードでの入出金に関する総括的な制御を行うものであり、金庫入出金情報記憶部32に記憶される入出金情報や搬送経路上情報記憶部33に記憶される搬送経路上現金情報の管理、取引に応じた紙幣の搬送指令を搬送制御部34に対して行う。
【0031】
搬送制御部34は、入出金制御部31及び後述する障害復旧制御部36からの紙幣の搬送指令に基づいて搬送手段2を駆動制御し、紙幣の搬送を行う。
【0032】
障害発生判定部35は、搬送手段2に設けられた図示しない各種センサからの入力に応じて紙幣詰まり等の障害が発生しているか否かを判定し、その判定結果を入出金制御部31及び障害復旧制御部36へ伝達する。障害発生していないと判定された場合には障害復旧制御部36が作動せずに入出金制御部31が通常モードでの入出金制御を行い、障害発生したと判定された場合には障害復旧制御部36が障害復旧モードとして作動し、入出金制御部31が障害復旧制御部36の支配下で付随して作動する。
【0033】
障害復旧制御部36は、障害発生した際の障害復旧時に現金処理装置の制御を行うものであり、搬送経路21から取り除かれ回収された紙幣を挿入口11から取り込み、取り込んだ紙幣を識別して、識別した紙幣に関する挿入現金情報を障害復旧時挿入現金情報記憶部37に記憶し、上記搬送経路上情報記憶部33の搬送経路上現金情報と合わせて後述する復旧制御を行うものである。
【0034】
このような制御部3を実現する具体的な構成は、CPU、メモリ及びインターフェイスを有する通常のマイクロコンピュータユニットにより構成され、メモリには図示しない搬送制御処理ルーチンや障害発生判定処理ルーチンや入出金制御処理ルーチン、後述する障害復旧制御処理ルーチン(図12参照)が格納してあり、CPUが適宜必要なプログラムを呼び出して実行することにより、上記の入出金制御部31、障害復旧制御部36、搬送制御部34および障害発生判定部35が実現される。これらの詳細な制御、例えば制御部3は、紙幣を各金庫A〜Cに収納する前に一時的に一旦これらの一次保留部a1、b1、c1に保留し、その後、搬送経路21上に一旦繰り出した後に金庫A〜Cに収納する制御を行うが、本実施形態においてこれらの具体的な構成や制御については省略している。また、各金庫A〜Dに紙幣を装填し、或いは各金庫A〜Dから紙幣を繰り出す際には、各金庫A〜Dの一部または搬送経路21の一部に設けた図示しない計数部によって紙幣の枚数が計数されるようにしている。
【0035】
次に、通常モードでの入出金制御について図4〜図7を参照しつつ説明する。ここでは、一万円札1枚預かりお釣りが七千円(五千円札1枚、千円札2枚)を返却する入出金制御を例に挙げて説明する。
【0036】
まず、図4(a)に示すように、挿入口11を介して第一金種たる一万円札Mo1が搬送経路21に挿入されると、挿入センサ23及び識別部22がこれを検出ないし識別し、搬送経路上情報記憶部33の搬送経路上現金情報に、入庫中である現金は一万円札で1枚であると記憶する。また、挿入された一万円札Mo1を、これを格納する第一金種金庫Aに対応した一万円用一次保留部a1に搬送経路21を介して搬送する。この際、第一金種金庫Aに一万円札Mo1は入庫されていないため金庫入出金情報記憶部32には記憶されない。
【0037】
次に、図5(b)に示すように、三千円分の購入対象品を購入する取引が行われて七千円(五千円札1枚、千円札2枚)の払い出しが指令されると、第二金種たる五千円札Mo2がこれを格納する第二金種金庫Bから搬送経路21へ出庫され、第二金種金庫Bの出口に設けられた入出庫センサ25bがこれを検出して搬送経路上情報記憶部33の搬送経路上現金情報に、払出中である現金は五千円札で1枚であると記憶する。また、第二金種金庫Bから出された五千円札Mo2を、出金保留部Fに搬送経路21を介して搬送する。この際、五千円札Mo2は払出口12から払い出されていないため金庫入出金情報記憶部32には記憶されない。
【0038】
次に、図6(c)に示すように、上記五千円札Mo2と同様に、第三金種たる千円札Mo3がこれを格納する第三金種金庫Cから搬送経路21へ出庫され、第三金種金庫Cの出口に設けられた入出庫センサ25cがこれを検出して搬送経路上情報記憶部33の搬送経路上現金情報に、払出中である現金は千円札で1枚であると記憶する。また、第三金種金庫Cから出された千円札Mo3を、出金保留部Fに搬送経路21を介して搬送する。この際、千円札Mo3は払出口12から払い出されていないため金庫入出金情報記憶部32には記憶されない。もう一枚の千円札Mo3についても同様の処理を行う。
【0039】
最後に、図7(d)に示すように、出金保留部Fに保留されている1枚の五千円札Mo2及び2枚の千円札Mo3が払出口12を介して外部に払い出されると、これを払出センサ24が検出して、搬送経路上情報記憶部33の搬送経路上現金情報に記憶されている払出中である現金が払い出されたとして、金庫入出金情報記憶部32に記憶するとともに、搬送経路上情報記憶部33の記憶が消去される。同様に、一万円用一次保留部a1に保留されている1枚の一万円札Mo1が第一金種金庫Aに入庫されると、第一金種金庫Aの入口に設けられた入出庫センサ25aがこれを検出して、搬送経路上情報記憶部33の搬送経路上現金情報に記憶されている入庫中である現金が入庫したとして、金庫入出金情報記憶部32に記憶するとともに、搬送経路上情報記憶部33の記憶が消去される。
【0040】
次に、通常モードにおいて紙幣が詰まる等の障害が発生した障害復旧時に行う障害復旧制御について図8〜図12を参照して説明する。この障害復旧制御は、図12に示す障害復旧制御処理ルーチンを実行することにより実現されるものである。
【0041】
ここでは、図8(a)に示すように、上記の図6(c)に示す時点で二枚目の千円札Mo3が搬送経路21で詰まった場合を例に挙げて説明する。この例の障害発生時には、出金保留部Fに1枚の五千円札Mo2と1枚の千円札Mo3が保留され、一万円用一次保留部a1に1枚の一万円札Mo1が保留され、搬送経路21に1枚の千円札Mo3が詰まった状態で存在し、搬送経路上情報記憶部33における搬送経路上現金情報には入庫中である現金は一万円札で1枚であり、払出中である現金は1枚の五千円札と2枚の千円札であることが記憶されている。
【0042】
まず、図9(b)に示すように、障害復旧作業者たる係員が出金保留部Fと一万円用一次保留部a1と搬送経路21に存在する現金を回収し、これらを挿入口11に一括で挿入すると、挿入された現金が順番に処理される(図12の処理A2参照)。ここではまず一万円札Mo1が挿入センサ23及び識別部22で検出ないし識別され、搬送経路上情報記憶部33における搬送経路上現金情報に係る現金と合致するか否かが判定される(図12の処理A3参照)。搬送経路上現金情報において一万円札Mo1は入庫中である現金として記憶されているので、出力(返却)すべき現金として出力用プールである出金保留部Fに搬送される(図12の処理A4参照)。また、障害復旧時挿入現金情報記憶部37に記憶される障害復旧時に挿入口11へ挿入された現金に関する挿入現金情報に、出力すべき現金は1枚の一万円札Mo1であると記憶する(図12の処理A5参照)。
【0043】
次に、図10(c)に示すように、挿入された現金のうち残りの現金である1枚の五千円札Mo2と2枚の千円札Mo3とが挿入センサ23及び識別部22で検出ないし識別され、搬送経路上情報記憶部33における搬送経路上現金情報に係る現金と合致するか否かが判定される(図12の処理A3参照)。搬送経路上現金情報において1枚の五千円札Mo2と2枚の千円札Mo3は払出中である現金として記憶されているので、入力(入庫)すべき現金として入力用プールである五千円用一時保留部b1及び千円用一時保留部c1に搬送される(図12の処理A4参照)。また、障害復旧時挿入現金情報記憶部37に記憶される障害復旧時に挿入口11に挿入された現金に関する挿入現金情報に、入力すべき現金は1枚の五千円札Mo2と2枚の千円札Mo3であると記憶する(図12の処理A5参照)。
【0044】
次に、図11(d)に示すように、搬送経路上情報記憶部33の搬送経路上現金情報に係る現金と障害復旧時挿入現金情報記憶部37の挿入現金情報に係る現金とが一致するか否かが判定される(図12の処理A7参照)。具体的には、搬送経路上現金情報に係る入庫中である現金と、挿入現金情報に係る出力すべき現金とが金種及び数量において一致し、且つ、搬送経路上現金情報に係る払出中である現金と、挿入現金情報に係る入力すべき現金とが金種及び数量において一致する場合に、両情報に係る現金が一致すると判定する。一致しない場合は、表示部や音出力部を介して外部に現金不一致エラーであることを報知する(図12の処理A9参照)。一致する場合は、図11(d)に示すように、出力用プールである出金保留部Fに貯留している現金を払出口12から払い出し、入力用プールである五千円用一時保留部b1にある五千円札Mo2を第二金種金庫Bへ入庫し、入力用プールである千円用一時保留部c1にある千円札Mo3を第三金種金庫Cへ入庫する(図12の処理A8参照)。
【0045】
以上のように、本実施形態に係る現金処理装置は、挿入口11および払出口12(出金口13及び返却口14を含む)を介して金庫A〜Cに現金を入出金する現金処理装置であって、挿入口11、払出口12および金庫A〜Cを接続する搬送経路21と現金を識別する識別部22とを有し搬送経路21を介して現金を搬送する搬送手段2と、挿入口11を介して搬送経路21へ現金が挿入されたことを検出する挿入センサ23と、払出口12を介して搬送経路21から現金が払い出されたことを検出する払出センサ24と、金庫A〜Cに現金が入出庫されたことを検出する入出庫センサ25と、各センサ(挿入センサ23、払出センサ24、入出庫センサ25)による検出に基づいて搬送経路21に存在する金庫A〜Cへ入庫しようとする現金および払出口12から払い出そうとする現金に関する搬送経路上現金情報を管理するとともに、入出庫センサ25の検出をもって金庫A〜Cへ入庫しようとする現金が入庫されたとし払出センサ24の検出をもって払出口12から払い出そうとする現金が払い出されたとして金庫A〜Cの入出金に関する入出金情報を管理し、通常モードでの入出金制御を行う制御部3とを具備してなり、制御部3は、通常モードとは異なる障害復旧モードにおいて搬送経路21から取り除かれ挿入口11に挿入された現金のうち、搬送経路上現金情報と識別部による識別とに基づいて金庫A〜Cへ入庫しようとした現金を払出口12及び金庫A〜Cのいずれか一方へ搬送するとともに、払出口12から払い出そうとした現金を払出口12及び金庫A〜Cのいずれか他方へ搬送することを特徴とする。
【0046】
従来では、障害復旧時に作業者が搬送経路21に残った現金を取り除き、回収した現金を外部へ払い出したり、金庫A〜Cへ入庫したりする回収現金の取り扱いを搬送経路上現金情報に基づいて手作業で行っていたので、作業者が行う復旧作業が複雑化し、それに伴って作業ミスが生じるおそれがあるうえ、障害復旧時における金庫の入出金に関する情報を記録することが難しいものであるが、本実施形態では、障害復旧時に作業者が搬送経路21に残った現金を取り除いて回収した現金を挿入口11に投入するという簡単な行為だけで、取引をやり直す及び取引を進めるいずれの場合でも入出庫情報とのつじつまが合うように外部への払い出し及び金庫への入庫が自動的になされ、復旧作業ミスを防止して復旧作業を平易化できるとともに、障害復旧時における金庫の入出金に関する情報を容易に記録することが可能になり、適切な金庫管理に資することができる。
【0047】
さらに、作業者が現金を金庫へ入庫する作業を省くことができるため、作業者を金庫へアクセスできないようにすることにより、作業者による金庫に対する不正行為を防止することができる。
【0048】
特に、搬送手段2は、搬送経路21から取り除かれ挿入口11に挿入された現金を一時的に貯留するプール(出金保留部F、一次保留部a1、b1、c1)を有し、制御部3は、プールに貯留している現金と搬送経路上現金情報に係る現金とが一致する場合にプールに貯留している現金のうち金庫A〜Cに入庫しようとした現金を払出口12及び金庫A〜Cのいずれか一方へ搬送し、払出口12から払い出そうとした現金を払出口12及び金庫A〜Cのいずれか他方へ搬送するとともに、プールに貯留している現金と搬送経路上現金情報に係る現金と一致しない場合、すなわち回収した現金が不足する場合に現金不一致エラーとするので、搬送経路21からの現金の取り忘れや、搬送経路21から取り除かれた現金が作業者に着服されること等の回収した現金の不適切な取り扱いを防止することが可能となる。
【0049】
さらにプールは、金庫A〜Cへ入庫するための入力用プール(一次保留部a1、b1、c1)と、払出口12から払い出すための出力用プール(出金保留部F)とを含み、制御部3は、搬送経路21から取り除かれ挿入口11に挿入された現金のうち、金庫A〜Cに入庫しようとした現金を入力用プール及び出力用プールのいずれか一方に貯留し、払出口12から払い出そうとした現金を入力用プール及び出力用プールのいずれか他方に貯留するので、両プールへ現金を搬送する過程で現金の最終搬送先を分ける処理を併せて実施し、迅速な払い出し処理および入庫処理が可能になる。
【0050】
さらに、金庫A〜Cは、複数の金種に対応して複数設けられており、入力用プール(一次保留部a1、b1、c1)は、金庫毎に対応して複数設けられているので、複数金種を取り扱う場合であっても迅速な入庫処理が可能になる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0052】
例えば、本実施形態では、障害復旧作業者が詰まった現金を手動で取り除いた後で取引をやり直す場合の復旧作業に対応するために、制御部3を、障害復旧モードにおいて搬送経路21から取り除かれ挿入口11に挿入された現金のうち、搬送経路上現金情報と識別部22による識別とに基づいて金庫A〜Cへ入庫しようとした現金を払出口12から払い出すとともに、払出口12から払い出そうとした現金を金庫A〜Cへ入庫するように構成しているが、障害復旧作業者が詰まった現金を手動で取り除いた後で取引を進める場合の復旧作業に対応するために、制御部3を、障害復旧モードにおいて搬送経路21から取り除かれ挿入口11に挿入された現金のうち、搬送経路上現金情報と識別部22とに基づいて金庫A〜Cへ入庫しようとした現金を金庫A〜Cへ入庫するとともに、払出口12から払い出そうとした現金を払出口12から払い出すように構成してもよい。
【0053】
また、本実施形態では、取引をやり直す復旧作業に対応するため、制御部3は、搬送経路21から取り除かれ挿入口11に挿入された現金のうち、金庫A〜Cに入庫しようとした現金を出金保留部F(出力用プール)に貯留し、払出口12から払い出そうとした現金を一次保留部a1〜c1(入力用プール)に貯留しているが、取引を進める復旧作業に対応する場合に本発明を適用するには、この逆すなわち、制御部3は、搬送経路21から取り除かれ挿入口11に挿入された現金のうち、金庫A〜Cに入庫しようとした現金を一次保留部a1〜c1(入力用プール)に貯留し、払出口12から払い出そうとした現金を出金保留部F(出力用プール)に貯留すればよい。
【0054】
また、本実施形態では、金庫A〜Dを四金種循環金庫としているが、金庫A〜Dに格納する金種は本実施形態のものに限定されるものでなく、どの金種を格納することも可能である。また、固定式の金庫Dを二千円札と五千円札を格納する混合金庫とし、金庫Aに千円札、金庫Bに一万円札を格納する循環金庫とし、金庫Cを多用途に利用可能な自在金庫に設定して、現金の補給及び回収を目的として現金処理装置を停止させることなく運用する、いわゆる無停止補給、無停止回収を実現した金庫設定も可能である。このような様々な金庫の設定に対しても本発明を適用することが可能である。
【0055】
また、本実施形態では、現金としての紙幣を取り扱う紙幣ブロックとしての現金処理装置を例に挙げて説明したが、硬貨を取り扱う硬貨ブロックにも本発明を適用することが可能である。
【0056】
また、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0057】
1………紙幣ブロック
11……挿入口
12……払出口
A〜C…金庫
2………搬送手段
21……搬送経路
22……識別部
23……挿入センサ
24……払出センサ
25……入出庫センサ
33……搬送経路上情報記憶部
31……入出金制御部
32……金庫入出金情報記憶部
F………出金保留部(出力用プール、プール)
a1、b1、c1…一次保留部(入力用プール、プール)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入口および払出口を介して金庫に現金を入出金する現金処理装置であって、
前記挿入口、前記払出口および前記金庫を接続する搬送経路と現金を識別する識別部とを有し当該搬送経路を介して現金を搬送する搬送手段と、
前記挿入口を介して前記搬送経路へ現金が挿入されたことを検出する挿入センサと、
前記払出口を介して前記搬送経路から現金が払い出されたことを検出する払出センサと、
前記金庫に現金が入出庫されたことを検出する入出庫センサと、
前記各センサによる検出に基づいて前記搬送経路に存在する前記金庫へ入庫しようとする現金および前記払出口から払い出そうとする現金に関する搬送経路上現金情報を管理するとともに、前記入出庫センサの検出をもって前記金庫へ入庫しようとする現金が入庫されたとし前記払出センサの検出をもって前記払出口から払い出そうとする現金が払い出されたとして前記金庫の入出金に関する入出金情報を管理し、通常モードでの入出金制御を行う制御部とを具備してなり、
前記制御部は、前記通常モードとは異なる障害復旧モードにおいて前記搬送経路から取り除かれ前記挿入口に挿入された現金のうち、前記搬送経路上現金情報と前記識別部による識別とに基づいて前記金庫へ入庫しようとした現金を前記払出口及び前記金庫のいずれか一方へ搬送するとともに、前記払出口から払い出そうとした現金を前記払出口及び前記金庫のいずれか他方へ搬送することを特徴とする現金処理装置。
【請求項2】
前記搬送手段は、前記搬送経路から取り除かれ前記挿入口に挿入された現金を一時的に貯留するプールを有し、
前記制御部は、前記プールに貯留している現金と前記搬送経路上現金情報に係る現金とが一致する場合に前記プールに貯留している現金のうち前記金庫に入庫しようとした現金を前記払出口及び前記金庫のいずれか一方へ搬送し、前記払出口から払い出そうとした現金を前記払出口及び前記金庫のいずれか他方へ搬送するとともに、前記プールに貯留している現金と前記搬送経路上現金情報に係る現金と一致しない場合に現金不一致エラーとする請求項1に記載の現金処理装置。
【請求項3】
前記プールは、前記金庫へ入庫するための入力用プールと、前記払出口から払い出すための出力用プールとを含み、
前記制御部は、前記搬送経路から取り除かれ前記挿入口に挿入された現金のうち、前記金庫に入庫しようとした現金を前記入力用プール及び前記出力用プールのいずれか一方に貯留し、前記払出口から払い出そうとした現金を前記入力用プール及び前記出力用プールのいずれか他方に貯留する請求項2に記載の現金処理装置。
【請求項4】
前記金庫は、複数の金種に対応して複数設けられており、
前記入力用プールは、前記金庫毎に対応して複数設けられている請求項3のいずれかに記載の現金処理装置。
【請求項1】
挿入口および払出口を介して金庫に現金を入出金する現金処理装置であって、
前記挿入口、前記払出口および前記金庫を接続する搬送経路と現金を識別する識別部とを有し当該搬送経路を介して現金を搬送する搬送手段と、
前記挿入口を介して前記搬送経路へ現金が挿入されたことを検出する挿入センサと、
前記払出口を介して前記搬送経路から現金が払い出されたことを検出する払出センサと、
前記金庫に現金が入出庫されたことを検出する入出庫センサと、
前記各センサによる検出に基づいて前記搬送経路に存在する前記金庫へ入庫しようとする現金および前記払出口から払い出そうとする現金に関する搬送経路上現金情報を管理するとともに、前記入出庫センサの検出をもって前記金庫へ入庫しようとする現金が入庫されたとし前記払出センサの検出をもって前記払出口から払い出そうとする現金が払い出されたとして前記金庫の入出金に関する入出金情報を管理し、通常モードでの入出金制御を行う制御部とを具備してなり、
前記制御部は、前記通常モードとは異なる障害復旧モードにおいて前記搬送経路から取り除かれ前記挿入口に挿入された現金のうち、前記搬送経路上現金情報と前記識別部による識別とに基づいて前記金庫へ入庫しようとした現金を前記払出口及び前記金庫のいずれか一方へ搬送するとともに、前記払出口から払い出そうとした現金を前記払出口及び前記金庫のいずれか他方へ搬送することを特徴とする現金処理装置。
【請求項2】
前記搬送手段は、前記搬送経路から取り除かれ前記挿入口に挿入された現金を一時的に貯留するプールを有し、
前記制御部は、前記プールに貯留している現金と前記搬送経路上現金情報に係る現金とが一致する場合に前記プールに貯留している現金のうち前記金庫に入庫しようとした現金を前記払出口及び前記金庫のいずれか一方へ搬送し、前記払出口から払い出そうとした現金を前記払出口及び前記金庫のいずれか他方へ搬送するとともに、前記プールに貯留している現金と前記搬送経路上現金情報に係る現金と一致しない場合に現金不一致エラーとする請求項1に記載の現金処理装置。
【請求項3】
前記プールは、前記金庫へ入庫するための入力用プールと、前記払出口から払い出すための出力用プールとを含み、
前記制御部は、前記搬送経路から取り除かれ前記挿入口に挿入された現金のうち、前記金庫に入庫しようとした現金を前記入力用プール及び前記出力用プールのいずれか一方に貯留し、前記払出口から払い出そうとした現金を前記入力用プール及び前記出力用プールのいずれか他方に貯留する請求項2に記載の現金処理装置。
【請求項4】
前記金庫は、複数の金種に対応して複数設けられており、
前記入力用プールは、前記金庫毎に対応して複数設けられている請求項3のいずれかに記載の現金処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−53887(P2011−53887A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201680(P2009−201680)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】
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