説明

球根及び/または塊茎の防カビ処理及び/または発芽防止処理のためのミントオイルまたはL−カルボンの溶液の使用

本発明は、熱噴霧によるL−カルボン及び/またはミントオイルでの球根または塊茎の新規な処理方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球根または塊茎の処理方法、特に発芽防止処理及び防カビ処理の方法に関する。特に前記方法は、真菌の脱混在化または混在化を阻害することが可能である。
【背景技術】
【0002】
畑の作物は、畑でまたは収穫に続く貯蔵の間でカビの感染を受ける。これは特にジャガイモに当てはまり、それはRhizoctonia solani真菌によって感染され得る。これは黒あざ病を生じ、種芋に付着したまたは土壌に存在する黒い菌核から発達する。付着した植物から由来する塊茎は小さく、形が悪く、とがっている。Rhizoctonia solaniによる混在化は通常畑で生じ、貯蔵の間で発達する。それ故、畑で及び収穫後に抗カビ処理を使用することが重要である。
【0003】
ジャガイモはまた、銀か病も受ける(Helminthosporium solani)。
【0004】
更に、貯蔵の間で、球根及び塊茎は発芽を経験し、それは前記球根及び塊茎を商品化するために避けられるまたは制限されなければならない。
【0005】
それ故、利用可能で、特に天然由来で、消費者に危険を与えない新規で及び/または改良された抗カビ処理を有することが有用である。
【0006】
ジャガイモの発芽防止処理のためのL−カルボンの使用が記載されている(特に特許出願EP0719499を参照のこと)。しかしながらこの方法は、熱噴霧により塊茎の1トン当たり5から50gの間のL−カルボンの用量の月に一度の適用からなる。この文献は、抗カビ活性については開示していない;更に、適用パターンは、満足な抗カビ効果を得るものではない。更に、in vitroでのL−カルボンの抗カビ活性は、Goris等, Brighton Crop Protection Conference, Pest and Disease, 1994, 307-312に記載されている。しかしながらこの文献は、実験室スケールでの実験テストしか記載しておらず、それは必ずしも産業上のスケールの指標となるものではない。更に、エッセンシャルミントオイルは蒸発によって使用されており、この文献は用量及び/または適用頻度については何の示唆もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許出願EP0719499
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Goris等, Brighton Crop Protection Conference, Pest and Disease, 1994, 307-312
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それゆえ、発芽防止効果及び抗カビ効果を得るために、ミントオイルまたはL−カルボンを使用する新規な作物処理方法を利用可能とすることは有利である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
それ故第一の特徴点によれば、本発明は、1トン当たり60から400gのL−カルボン及び/またはミントオイルの初期適用、次いで3日から6週間の間の頻度での一度以上の適用を含む、熱噴霧によるL−カルボン及び/またはミントオイルでの抗カビ及び/または発芽防止作物処理方法に関する。
【0011】
好ましくは、抗カビ及び発芽防止活性は、本発明に係る用量及び頻度で共に得られる。
【0012】
好ましい特徴点によれば、本発明に係る方法は、Rhizoctonia solaniのようなRhizoctoniaによる混在化、特にHelminthosporium solaniといった銀か病のようなあざ、またはPhytophthora infestansのようなうどん粉病の脱混在化または混在化の防止を目的とする。本発明に係る方法は特に、ジャガイモの抗カビ処理及び発芽防止処理に有利である。
【0013】
別の好ましい特徴点によれば、第一の適用の用量は、球根または塊茎の1トン当たり60から200gの間のL−カルボン及び/またはミントオイルである。複数であっても良い後の適用は、1トン当たり20から100gの間の用量で実施されて良い。
【0014】
好ましくは、複数であって良い後の適用の頻度は、3日から4週間の間、より好ましくは3日から3週間の間である。
【0015】
一般的に前記組成物は、有利には収穫した球根または塊茎に対して貯蔵の間で適用される。
【0016】
特定の実施態様によれば、前記組成物は、特に有機溶媒で希釈されて良い。
【0017】
ジプロピレングリコール、モノプロピレングリコール、ジイソブチルケトン、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、またはそれらの混合物が、有機溶媒として挙げられる。
【0018】
カルボンは、2−メチル−5−(1−メチルエテニル)−2−シクロヘキセン−1−オンを指す。もともとの天然ソースがクミンであるD−カルボン、及び他の酸素化モノテルペンとは異なり、L−カルボンは、例えばミントベースのいくつかの料理を消費する際、またはガムを噛んでいる際、ヒトの食物で天然で大量に摂取される化合物であり、その主たる天然ソースはスペアミントまたはMentha spicataである。L−カルボンは、特にスペアミント(Mentha spicata)といった天然ソースから、またはリモネンから合成によって得られて良い。食物で広く消費されている製品を活性成分として使用する有効な抗カビ処理の開発は、非毒性処理の現在の必要性に適合している。
【0019】
用語「発芽防止処理」は、球根及び塊茎の発芽を防止及び/または阻害することを指す。
【0020】
用語「抗カビ処理」は、真菌、特にあざ、リゾクトニア、またはうどん粉病からの脱混在化または混在化の防止を指す。銀か病(Helminthosporium solani)、Rhizoctonia solani、及びPhytophthora infestansは、特にジャガイモに罹患する真菌である。
【0021】
組成物は、それ自体既知の方法によって本発明に係る成分を混合することにより調製される。
【0022】
以下の実施例は、本発明の非制限的な例示的実施例として記載される。
【0023】
熱噴霧は、特に極端に細かい霧の果実及び野菜への適用からなる方法であり、その液滴は、約1マイクロメートルのサイズを有し、熱気流に液体を注入することによって生産され、熱気は活性成分を形成する化学物質のためのキャリアとして機能し、かくして生産された霧は処理製品による被覆を確保している。熱噴霧法は、特にEP0719499に記載されている。Xeda社により市販されているElectrofog(登録商標)装置を使用することが有利に実施されて良い。
【0024】
前記組成物は、それ自体既知の方法によって成分を混合することにより調製される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、貯蔵しているジャガイモの発芽に対するミントオイルの熱噴霧効果を説明する。4品種の塊茎を8℃且つ95%の湿度で6ヶ月貯蔵し、第一の適用について100ml/tの用量のミントオイルを、各その後の適用について30ml/tで毎月熱噴霧した。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の実施例は、本発明の非制限的な例示的実施例として記載される。
【実施例】
【0027】
実施例1:
ジャガイモ(Desiree cultivar)を、収穫後に8℃で貯蔵した。収穫後3週間、それらを75−80%のL−カルバンを含む天然ミントオイルで処理した。第一の処理(ジャガイモの1トン当たり90ml)に引き続く21日後に、第二の処理(ジャガイモの1トン当たり30ml)を実施し、その後の処理(ジャガイモの1トン当たり30ml)を45日間隔で実施した。全ての処理を、Xeda Electrofog熱噴霧器を使用して実施した。
【0028】
8℃で4ヶ月の貯蔵後、ジャガイモを植えるために20℃に移した。2〜3週間後、ジャガイモは発芽を開始した。発芽したジャガイモを畑に植えた。既処理及び未処理のジャガイモの成長は同一であった。ミントオイルで処理された植物からの収穫物はRhizoctonia solaniにより感染されていなかった一方で、未処理バッチ由来のジャガイモは感染されていた。これらの結果は、ミントオイルがRhizoctonia solaniによるジャガイモの混在化を制限するのに有効に使用できることを示す。
【0029】
実施例2:
ジャガイモにおける銀か病に対するL−カルボンの活性
ロゼバルジャガイモを、90g/トンのミントオイルまたは67−72g/トンのL−カルボンで熱噴霧によって処理し、次いで21日間隔で30g/トンのミントオイルまたは22.5−24g/トンのL−カルボンで3回処理した。次いでそれらを8℃で3ヶ月間貯蔵した。銀か病の範囲速度を、L−カルボンで処理したバッチと、第一の適用で60ml/トン、その後の適用で40ml/トンの用量で200g/LのCIPCの熱噴霧により処理されたコントロールとで測定した。その結果が以下の表に示されている。
【0030】
【表1】

【0031】
実施例3:
以下の4品種のジャガイモを使用した:ベリーニ、モンディアル、デジリー、及びカーレナ。Xeda International, Saint-Andiol, フランスにより市販されているミントオイルを、熱噴霧により適用した(Electrofog, Xeda International)。
【0032】
以下の処理を比較した:処理なし、第一の適用について100ml/トンの用量、各その後の適用について毎月30ml/トンの用量。
【0033】
毎月の熱噴霧を、温度を次第に8℃に低下させる間の貯蔵の2週間後に開始した。適用の間、空気取り入れ口を閉ざし、加湿器を停止した。塊茎をそれぞれ100kgの重量でプラスチック箱に貯蔵した。処理を、8℃且つ95%の湿度で8mの範囲の貯蔵チェンバーで適用した。
【0034】
ミントオイルでの塊茎の熱噴霧は、塊茎のストックに高い効率で浸透し、発芽プロセスの阻害を導いた。4品種は発芽なしに9ヶ月を超えて貯蔵された。未処理塊茎は貯蔵の3ヵ月後に発芽を開始し、芽は塊茎の重量の4%であった。
【0035】
この結果が図1に示されている。
【0036】
実施例4:
Xeda HM Nat(55%のL−カルボン)の適用を、Xeda Electrofogを使用してセルに貯蔵されたビンチェジャガイモに180℃での熱噴霧により実施した。
【0037】
約12トンの容量を有するこれらのセルを、このタイプの試験のために特別にデザインし、分離し、喚起し、ジャガイモ貯蔵ビン(セル当たり18のビン)中に均一な空気分配システム(レターボックス)を備えた。
【0038】
必要であれば、セルの内部に配置された冷却ユニットの付加的なサポートで農業事業で実際に使用されている空気ミキシングの原理を適用する、外部からの冷却空気の導入により、セルを必要とされる温度で維持した。貯蔵の間の必要とされる温度は7.5℃である。
【0039】
第一の適用は80g/tの市販品で行われ、後の適用は30g/tの用量で3週間ごとに行われる。各段階について、メッシュのバッグ中のサンプルを、分析されるのに必要な日数での取り出しのために充填塊茎の間でビンの中央に配置する。サンプルを有する全てのビンを、貯蔵庫中に均一に配置する。
【0040】
処理されたジャガイモ中のL−カルボンの残余量を、以下の態様で分析した。
【0041】
蒸気蒸留:水蒸気
ヘキサンで回収
マススペクトロメーターに接合した気相クロマトグラフィーで分析
測定限界:0.02mg/kg
回収速度:0.05mg/kgで114%
0.13mg/kgで92%
【0042】
標本中の残余濃度:
【0043】
【表2】

【0044】
得られた残余物の濃度はかなりわずかであった。
【0045】
それ故この残余量の欠如は、法令との適合性と消費者への安全性を確保する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球根または塊茎の1トン当たり60gから400gの間のL−カルボンの初期用量で、任意に有機溶媒中に希釈されたミントオイル、L−カルボン、またはそれらの混合物の熱噴霧による適用、次いで3日から6週間の間の頻度で繰り返される一度以上の適用を含む、球根または塊茎の抗カビ処理及び/または発芽防止処理のための方法。
【請求項2】
L−カルボンの初期用量が球根または塊茎の1トン当たり60gから200gの間であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
後の適用の頻度が3日から3週間の間であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記希釈組成物が少なくとも30重量%のミントオイル及び/またはL−カルボンを含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記有機溶媒がモノプロピレングリコール、ジイソブチルケトン、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、またはそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
後の用量が1トン当たり20gから100gの間の活性成分であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
貯蔵チェンバーで実施されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
Rhizoctonia solani、Helminthosporium solani、及びPhytophthora infestansから選択される一種以上の真菌からの脱混在化、または前記真菌による混在化の予防を目的とすることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ジャガイモが処理されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−503041(P2011−503041A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532645(P2010−532645)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【国際出願番号】PCT/FR2008/052022
【国際公開番号】WO2009/068803
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(507138446)クセダ・アンテルナシオナル (2)
【Fターム(参考)】