説明

球根類の移植機

【課題】本発明では、供給部の種芋等の球根類の収容部から球根類を取出して各供給カップに球根類を入れる作業を不要にして作業者の植付作業負担を軽減出来る球根類の移植機を提供することが課題である。
【解決手段】球根類Aの供給を受けて圃場に植付ける植付装置7を駆動輪5にて走行する機体に装備した球根類の移植機において、植付装置7の上部に球根類Aを収容する収容ケース20を設け、該収容ケース20内部に球根類Aを一個ずつ取出口21から植付装置7へ送り出す送出装置23を設けたことを特徴とする球根類の移植機とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種芋を含む球根類を圃場に植付ける球根類の移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
作業者によって種芋供給部に供給された球根類を植付装置で圃場に植付ける球根類の移植機が知られている。
例えば、特許文献1に示されるように、種芋を貯留する種芋載せ台と該種芋載せ台から種芋が移動して収容される収容部と該収容部の下方に配置された複数の供給カップを設けた供給部と該供給部から受け取った種芋を圃場に植付ける植付装置を装備した球根類の移植機がある。作業者は、供給部の中央上方に配置された収容部から種芋を一個ずつ取出して供給部の各供給カップに種芋を入れることで植付作業を続ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−51613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成の球根類の移植機は、作業者が供給部の中央上方に配置された収容部から種芋を取出して各供給カップに種芋を入れる構成であるから、作業者は周回移動する各供給カップの向こう側にある収容部から種芋を1つずつ取出しては各供給カップに入れる作業を繰り返し行なわなければならず、まだまだ、作業性において改良の余地があった。
【0005】
そこで、本発明では、供給部の収容部から種芋を取出して各供給カップに種芋を入れる作業を不要にして作業者の植付作業負担を軽減出来る球根類の移植機を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に係る発明は、球根類Aの供給を受けて圃場に植付ける植付装置7を駆動輪5にて走行する機体に装備した球根類の移植機において、植付装置7の上部に球根類Aを収容する収容ケース20を設け、該収容ケース20内部に球根類Aを一個ずつ取出口21から植付装置7へ送り出す送出装置23を設けたことを特徴とする球根類の移植機とする。
【0007】
この構成で、請求項1に記載の発明は、送出装置23で収容ケース20内の球根類Aが一個ずつ取出口21から植付装置7へ送り出されて植付装置7で圃場へ植え付けられる。
また、請求項2に係る発明は、球根類Aを一個ずつ保持する搬送突起26を設けた搬送体25を縦に張って設け、送り揚げ過程で収容ケース20内の球根類Aを一個ずつ搬送突起26に取り込み、送り下げ過程の下端で球根類Aを植付装置7に供給するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の球根類の移植機とする。
【0008】
この構成で、請求項1に記載の発明の作用に加えて、収容ケース20内の球根類Aを損傷することなく最後の一個まで一個ずつ取出して取出口21から植付装置7に供給する。
また、請求項3に係る発明は、収容ケース20の取出口21に球根類Aを受けるシャッター24を設け、このシャッター24を植付装置7の植付体7bが取出口21に上昇するタイミングに連動して開口作動させた請求項1または請求項2記載の球根類の移植機とした。
【0009】
この構成で、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明の作用に加えて、シャッター24上の球根類Aを植付装置7の植付体7bに確実に受け渡しする。
【発明の効果】
【0010】
この発明は、球根類の植付作業において、作業者が一個ずつ球根類Aを供給する作業が必要なく、機体の操縦操作に専念出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例を示す移植機の側面図である。
【図2】本発明の実施例を示す移植機の平面図である。
【図3】送出装置の要部拡大側断面図である。
【図4】覆土鎮圧装置の要部拡大側面図(a)およびその背面図(b)である。
【図5】植付装置の植付ホッパ部の斜視図である。
【図6】植付装置の植付ホッパ部の側面図である。
【図7】第2実施例を示す乗用型の球根類移植機の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について、以下に、図面を参照しつつ説明する。
先ず、本発明の実施例を図1乃至図6に示す歩行型移植機について詳細に説明する。
【0013】
図1は発明適用構成例を示す移植機の側面図、図2はその平面図である。
移植機1は、一体構成のエンジン2及び主伝動ケース2a、機体前部を支持する左右の前輪4,4、左右の伝動支持部5a,5aを介して機体高さと左右高さを調整可能に駆動支持する左右の駆動輪5,5、主伝動ケース2aの後部から一体的に延びるハンドルフレーム3、その後端に一体形成した歩行操縦用の操縦ハンドル3aよりなる走行部1aと、ジャガイモ等の種芋やラッキョウ等を含む球根類Aを圃場に植付けるための植付部1bとから構成される。尚、移植機1のエンジン2を設けた側を機体前部、操縦ハンドル3a側を機体後部と謂い、操縦ハンドル3a側の後部に立ってエンジン2側の前部に向かって左側を機体の左側、右側を機体の右側と謂う。
【0014】
植付部1bは、球根類Aを収納し内部に球根類Aを一個ずつ取出口21から送り出す送出装置23を設けた収容ケース20、植付け動作する植付ホッパ部7aを備える植付装置7、植付装置7の後方の覆土鎮圧輪8,8等からなる。
【0015】
収容ケース20内の送出装置23は、左右側壁に軸架した上下の送り駆動体27,28に搬送突起26を設けた搬送体25を巻き掛けた構成で、各搬送突起26の間隔は球根類Aの一個分の幅で一個の球根類Aを上下の搬送突起26で挟み込んで搬送する。搬送体25は突起付きのタイミングベルトで構成し該タイミングベルトに係合するタイミングプーリで送り駆動体27,28を構成するか、搬送体25をチェンで構成し送り駆動体27,28をスプロケットで構成して球根類Aを確実に送り作用するようにする。
【0016】
送出装置23は収容ケース20の内部前壁に接近して設けて、収容ケース20の底部をこの送出装置23の下部に向かって下り傾斜させて球根類Aが転がり易くして搬送突起26で残りなく取り出すようにしている。また、収容ケース20の左右側壁を送出装置23の下部に向けて狭めて一個の球根類Aが搬送突起26に掬い上げられるようにし、収容ケース20の底部に設ける取出口21には水平に移動して開閉するシャッター24を設けている。そして、このシャッター24は植付装置7の植付体7bが上昇するタイミングで開口作動するようにする。
【0017】
シャッター24は、一個の球根類Aを受けるので、このシャッター24に重量センサを設け、この重量センサが一個の球根類Aの重量を検出するまで搬送体25を駆動し、球根類Aの重量を検出すると搬送体25を停止するようにする。
【0018】
なお、取出口21にシャッター24を設けずに、植付装置7の植付体7bが上昇するタイミングで搬送体25が移動して球根類Aを取出口21から植付体7bに落下して供給するようにしても良い。
【0019】
収容ケース20の周壁を透明或いは半透明にして残留している球根類Aが外部から直ちに分かるようにしいている。また、機体の前方或いは左右側方から収容ケース20上に向けて供給台29を取り付けて、球根類Aを収容ケース20に供給できるようにする。この供給台29は固定的に取り付けるか適宜に着脱できるようにする。
【0020】
次に、覆土鎮圧装置については、図4の要部拡大側面図(a)およびその背面図(b)に示すように、鎮圧輪支持フレーム31に植付装置7の植付ホッパ部7aの前側から作用する鎮圧輪アーム32を軸支し、植付装置7との干渉なしに覆土鎮圧輪33a,33aを片持ちに構成する。鎮圧輪アーム32により、植付装置7の植付ホッパ部7aが下降すると覆土鎮圧輪33a,33aが上がり、植付ホッパ部7aが上昇すると覆土圧を調整可能なスプリング34で覆土鎮圧輪333a,33aが作用するように構成する。尚、覆土鎮圧輪33の両サイドに鎮圧輪33a,33aを装備し、植付ホッパ部7aが作用しない時は、前鎮圧として畝面を固める。両脇の鎮圧輪33a、33aで植付け位置の両肩から覆土することで、植付け姿勢に影響しにくくする。中央の鎮圧輪33で前鎮圧する。
【0021】
次に、植付装置7の植付ホッパ部7aについては、図5の斜視図及び図6の側面図に示すように、下端の前後の植付体7bが機体進行方向に沿って前後に開く一般的な構成であるが、該前後の植付体7bの各前後壁には上部から下部にかけて大きな開口7cが設けられている。また、前後の植付体7b内には開閉しない上部筒部から弾性変形する樹脂製の下端が窄まった筒状の植付物案内ガイド7dが前後の植付体7bの下部近くまで設けられており(植付物案内ガイド7dは、その下端と前後の植付体7bの下端との間に植付物である球根類Aが丁度入る程度の長さになっている)、該植付物案内ガイド7dは隙間のある簾状に形成されている。
【0022】
従って、前後の植付体7bの各前後壁には上部から下部にかけて大きな開口7cが設けられているので、前後の植付体7bが圃場中に入って開く時に土の抵抗が少なくてスムーズに開き、また、開く時に該開口7cから土が前後の植付体7b内に入り込んで植付ける球根類Aの上に被さるようになり、植付装置7が上動する際に球根類Aを引っ掛けて持ち上げるような事態を回避でき、然も、覆土も球根類Aの上に土があるので容易に且つ適正に行えて、良好な球根類Aの植付作業が行える。
【0023】
また、前後の植付体7b内には弾性変形する樹脂製の下端が窄まった筒状の植付物案内ガイド7dが前後の植付体7bの下部近くまで設けられているので、球根類Aは前後の植付体7bの下端部まで適正に落下案内され、然も、植付体7bの下端部に収まった球根類Aは下端が窄まった筒状の植付物案内ガイド7dの下端部にて上動することが防止されて植付時まで植付体7b下端の適正位置に保持されて適正に植付される。また、植付物案内ガイド7dは隙間のある簾状に形成されているので、前後の植付体7bが開く時に開口7cから前後の植付体7b内に入り込んでくる土は植付ける球根類Aの上に適正に被さり、前記のように植付装置7が上動する際に球根類Aを引っ掛けて持ち上げるような事態を回避でき、然も、覆土も球根類Aの上に土があるので容易に且つ適正に行えて、良好な球根類Aの植付作業が行える。
【0024】
尚、上例では前後の植付体7bが機体進行方向に沿って前後に開く例を示したが、左右の植付体7bが機体進行方向に対して左右に開く構成とした場合には、左右の植付体7bの各左右側壁に開口7cを同様に開ければ、左右の植付体7bが圃場中に入って開く時に土の抵抗が少なくてスムーズに開き、また、開く時に該開口7cから土が左右の植付体7b内に入り込んで植付ける球根類Aの上に被さるようになり、植付装置7が上動する際に球根類Aを引っ掛けて持ち上げるような事態を回避でき、然も、覆土も球根類Aの上に土があるので容易に且つ適正に行えて、良好な球根類Aの植付作業が行える。
【0025】
ここで、上記の歩行型移植機でジャガイモの種芋Aを圃場の畝に植付する作業について説明する。
先ず、機体を圃場に入れて、左右駆動輪5,5及び左右前輪4,4が畝を跨いだ状態とし、収容ケース20にジャガイモの種芋Aを入れる。そして、作業者は、機体の後側を歩きながら操縦ハンドル3aを握って操縦操作を行う。
【0026】
機体の走行とともに送出装置23が収容ケース20内の球根類Aを一個ずつ取出して植付装置7の植付体7bに供給し、植付体7bで圃場に植え付け、覆土鎮圧輪33で植付穴を埋める。
【0027】
このように、作業者は機体の操縦操作を行うだけで植付作業ができるので、作業が容易で且つ効率良く行え、植付作業が容易で且つ能率良く行える。
図7は乗用型の球根類移植機を示す。
【0028】
エンジン2を取り付けた主伝動ケース2aから前方に向けてメインフレーム37を設けている。
メインフレーム37の前端には左右前輪4,4を装着し、主伝動ケース2aの左右から後方に駆動輪5を装着する伝動支持部5aを主伝動ケース2aに基部を固着した昇降シリンダ47にて上下に揺動して機体の上下及び左右傾きを調整するようにしている。
【0029】
主伝動ケース2aから支持脚39を立設して座席40を設けている。また、主伝動ケース2aから前上方に向けて副伝動ケース38を設け、この副伝動ケース38の前側に供給装置6と植付装置7を装着している。供給装置6は複数の供給カップ6aが周回するターンテーブル方式で、植付装置7は前述の実施例の構成と同じで、供給ガイド7eの上部には供給台6bの底面に密着する蛇腹ガイド7fを設けている。
【0030】
また、供給カップ6aの上に収納ケース43を設け、この収納ケース43の後壁部44を商法に上方して開口し球根類Aを取り出しやすくし、旋回の場合には閉じて球根類Aが零れないようにしている。
【0031】
副伝動ケース38の後上部に操作盤45を設け、走行レバー46を立設している。
メインフレーム37の左右にステップフロア41を設け、このステップフロア41に前輪4を操向する操向ペダル42を設けている。また、メインフレーム37の底部にはピッチングセンサ板36を設けてメインフレーム37の高さを検出すると共に植付装置7の植付体7bが穿った植付穴を埋め戻すようにしている。
【0032】
エンジン2の後上方に向けてハンドルフレーム3を設け、このハンドルフレーム3の操縦ハンドル3aを持って歩行操縦も可能にしている。
座席40に座った作業者が収納ケース43内の球根類Aを取り出して供給カップ6aに落とし込み、植付作業を行うのである。
【符号の説明】
【0033】
5 駆動輪
7 植付装置
7b 植付体
20 収容ケース
21 取出口
23 送出装置
24 シャッター
25 搬送体
26 搬送突起
A 球根類

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球根類(A)の供給を受けて圃場に植付ける植付装置(7)を駆動輪(5)にて走行する機体に装備した球根類の移植機において、植付装置(7)の上部に球根類(A)を収容する収容ケース(20)を設け、該収容ケース(20)内部に球根類(A)を一個ずつ取出口(21)から植付装置(7)へ送り出す送出装置(23)を設けたことを特徴とする球根類の移植機。
【請求項2】
球根類(A)を一個ずつ保持する搬送突起(26)を設けた搬送体(25)を縦に張って設け、送り揚げ過程で収容ケース(20)内の球根類(A)を一個ずつ搬送突起(26)に取り込み、送り下げ過程の下端で球根類(A)を植付装置(7)に供給するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の球根類の移植機。
【請求項3】
収容ケース(20)の取出口(21)に球根類(A)を受けるシャッター(24)を設け、このシャッター(24)を植付装置(7)の植付体(7b)が取出口(21)に上昇するタイミングに連動して開口作動させたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の球根類の移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−217622(P2011−217622A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87142(P2010−87142)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】