説明

球検査用転がし装置

【課題】球径に応じて転がす量を変えられる球検査用転がし装置を提供する。
【解決手段】複数の球55を載置するパッド43と、複数の球55を縦横複数列に配置する配置部材30と、配置部材30およびパッド43を水平面内の直交する2方向のうち一方向に相対移動させる第1駆動装置20と、配置部材30およびパッド43を水平面内の直交する2方向のうち他方向に相対移動させる第2駆動装置40と、第1駆動装置20および第2駆動装置40を制御して配置部材30およびパッド43を相対移動させ、球55に縦転がしおよび横転がしを与える制御装置51と、制御装置51に球径を入力する入出力装置52とからなり、制御装置51は、入力された球径に応じた配置部材30およびパッド43の相対移動量を算出する算出手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球を転がして目視検査するのに最適な球検査用転がし装置に関する。
【背景技術】
【0002】
玉軸受に使用される球は、材質の面で鋼製およびセラミックス製の2種類があり、鋼製のものはカメラで捉えた画像を処理することにより、球の色、傷等の不具合を発見している。光の反射の関係上、鋼製はカメラで白っぽく捕えられるのに対し、セラミックス製はカメラで黒っぽく捕えられるので、セラミックス製の球は、球の色、傷等の不具合を発見しにくい。
【0003】
図13(特許文献1)に示す球検査用転がし装置は、駆動ローラ140および2個のコーンローラ160、170間に球150を配置し、駆動ローラ140および2個のコーンローラ160、170をそれぞれ回転させることにより球150を回転させるものである。2個のコーンローラ160、170が同じ回転速度で回転しているときは、図13の軸線q回りに球150が回転し、コーンローラ160がコーンローラ170よりも速い回転速度で回転しているときは、軸線qが軸線p回りに時計回りに回転して軸線qが右下がり(図13において)となり、コーンローラ160がコーンローラ170よりも遅い回転速度で回転しているときは、軸線qが軸線p回りに反時計回りに回転して軸線qが左下がり(図13において)となる。このような原理を利用して2個のコーンローラ160、170の回転速度を変えることにより、球150の全面を見るようにしている。このものは、球150を1個1個回転させて見るものであるため、鋼製の球のようにカメラで捉えて画像処理するものには最適であるが、セラミック製の球には不向きである。
【0004】
セラミックス製の球は、1個1個転がすと球の色、傷等の不具合を発見しにくいので、複数の球を転がして目視で一際異なるものを見つける方法を採用している。この方法を採用した球検査用転がし装置として、図14(特許文献2)に示すようなものがある。図14の(1)は、球検査用転がし装置の平面図であり、図14の(2)は、(1)のF−F線断面図である。このものは、ガイド板120の各ガイド穴123に球130を入れてこれらの球130をパッド110上に載せ、ガイド板120をガイド溝121、122およびピン111、112、113に倣って動かすことにより、各球130を一斉に図14の(1)の左下がりの方向に転がし、続いて左上がりの方向に転がし、左下がりの方向に転がし、左上がりの方向に転がし、最後に左下がりの方向に転がすことができる。これを使用すれば、誰が行っても同じ転がしを球に与えることができ、熟練度によるバラツキを無くすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭56−58643号公報
【特許文献2】特許第4654269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図14に示す球検査用転がし装置は、ガイド板120をガイド溝121、122およびピン111、112、113に倣って動かす方法を採用しているため、球径に応じて転がす量を変えられない問題がある。本発明は、上述した問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、球径に応じて転がす量を自由に変えられる球検査用転がし装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、複数の球を載置するパッドと、前記複数の球を縦横複数列に配置する配置部材と、前記配置部材および前記配置部材を水平面内の直交する2方向のうち一方向に相対移動させる第1駆動装置と、前記配置部材および前記パッドを前記水平面内の直交する2方向のうち他方向に相対移動させる第2駆動装置と、前記第1駆動装置および前記第2駆動装置を制御して前記配置部材および前記パッドを相対移動させ、前記球に縦転がしおよび横転がしを与える制御装置と、制御装置に球径を入力する入出力装置とからなり、前記制御装置は、入力された球径に応じた前記配置部材および前記パッドの相対移動量を算出する算出手段を有するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、球径に応じて転がす量を変えられる球検査用転がし装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態における球検査用転がし装置の平面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態において図1のA矢視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における図1のB−B線断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における入出力装置の画面の状態図である。
【図5】本発明の第1の実施形態において球径入力のフロー図である。
【図6】本発明の第1の実施形態における検査用球転がし動作のフロー図である。
【図7】本発明の第1の実施形態において枠移動のフロー図である。
【図8】本発明の第1の実施形態においてパッド移動のフロー図である。
【図9】本発明の第1の実施形態において球の転がり状態を示す状態図である。
【図10】本発明の第1の実施形態において枠の原点移動のフロー図である。
【図11】本発明の第2の実施形態における検査用球転がし動作のフロー図である。
【図12】本発明の第2の実施形態において球の転がり状態を示す状態図である。
【図13】従来におけるコーンローラタイプの球検査用転がし装置の平面図である。
【図14】従来におけるガイド板タイプの球検査用転がし装置の全体図であり、(1)は平面図であり、(2)は(1)のF−F線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の第1の実施形態について、図1ないし図10を参酌しつつ説明する。図1は球検査用転がし装置の平面図であり、図2は図1のA矢視図であり、図3は図1のB−B線断面図であり、図4は入出力装置の画面の状態図であり、図5は球径入力のフロー図であり、図6は検査用球転がし動作のフロー図であり、図7は枠移動のフロー図であり、図8はパッド移動のフロー図であり、図9は球の転がり状態を示す状態図であり、図10は枠の原点移動のフロー図である。
【0011】
図1ないし図3に示すように、球検査用転がし装置10は、床面に設置された図略の下部支持台と、この下部支持台上に載置された上部支持台11と、上部支持台11に設けられたパッド43と、パッド43を回転駆動する第2駆動装置40と、パッド43上に設けられた枠30と、枠30を前後方向に駆動する第1駆動装置20と、第1駆動装置20および第2駆動装置40を制御する制御装置51と、動作プログラムおよび球径等のデータを入力する入出力装置52とからなっている。
【0012】
上部支持台11は、水平な面を有する板状のテーブル12と、このテーブル12を支持固定した支持枠13とからなっている。テーブル12は、金属製で凹凸の非常に少ない上面を有し、この上面にパッド43の一部が載置されている。テーブル12上のパッド43上には四角形状の枠30が前後方向に移動可能に設けられている。
【0013】
枠30は、金属製で四角形状の枠状のもので、この内側に球55が縦4列、横5列配置される。枠30は、主に左右方向に延びる左右板31、34と、前後方向に延びる前後板32、33とからなる。枠30は、左右板31、34の両端にボルト等で前後板32、33を連結した簡単なものである。
【0014】
前後板32、33の前側には、前後方向に案内溝32a、33aが形成され、案内溝32a、33aに可動用左右板36が案内されている。左右板31、34の右側には、左右方向に図略の案内溝が形成され、案内溝に可動用前後板35が案内されている。可動用左右板36および可動用前後板35が互いに干渉しないように、可動用左右板36の右側に櫛の歯36aが形成され、可動用前後板35の前側に櫛の歯35aが形成され、歯36aおよび歯35aは互いに上下方向にずれて設けられている。
【0015】
前後板32、33の前側には前後方向に図略の長溝が穿孔され、左右板31、34の右側には左右方向に図略の長溝が穿孔されている。可動用左右板36および可動用前後板35には、長溝に対応する位置にネジ穴が穿孔され、長溝を介してネジ穴に固定ボルト50が螺合され、可動用左右板36および可動用前後板35がその位置に固定されるようになっている。球55の外径に応じて可動用左右板36および可動用前後板35を移動して固定することにより、板31、32、35、36および球55間の隙間をできるだけ少なくし、枠30を前後方向あるいはパッド43を左方向に動かしたときに球55がすぐに転がることができる。
【0016】
第1駆動装置20は、テーブル12の前後端に固定された第1ブラケット15と、前後の第1ブラケット15に固定された一対の支持棒21と、各支持棒21に案内支持される一対のガイドブッシュ22と、枠30に取り付けられたネジ軸23と、ネジ軸23に螺合する第2プーリ24と、第2プーリ24と平行に設けられた第1プーリ25と、第1プーリおよび第2プーリ24に掛け渡された駆動ベルト26と、第1プーリ25を回転駆動する第1モータ27と、第1モータ27に印加する電流を制御する第1駆動回路53とからなっている。
【0017】
一対の支持棒21およびネジ軸23はテーブル12に対し平行に設けられ、一対の支持棒21およびネジ軸23は互いに平行に設けられている。ガイドブッシュ22は枠30に取り付けられている。第1プーリ25および第2プーリ24は、第1ブラケット15に取り付けられた図略の第2ブラケットを介して回転可能に軸承されている。第2ブラケットには第1モータ27が取付けられ、第1モータ27はこれの回転量を第1駆動回路53へ出力できるサーボモータタイプのものが使用される。第1駆動回路53は制御装置51からの移動指令量を受け取り、この移動指令量に応じた電流を発生させるものである。
【0018】
第2駆動装置40は、テーブル12の前後に左右方向へ突出するような形で固定された第3ブラケット14と、前後の第3ブラケット14に回転可能に軸承された駆動回転軸44並びに従動回転軸45と、駆動回転軸44に一体的に回転連結された駆動ローラ41と、従動回転軸45に一体的に回転連結された従動ローラ42と、駆動回転軸44にカップリング47を介して回転連結され、駆動回転軸44を回転駆動する第2モータ46と、第2モータ46に印加する電流を制御する第2駆動回路54とからなっている。
【0019】
駆動回転軸44および従動回転軸45は、一対の支持棒21と互いに平行に設けられ、駆動回転軸44は、テーブル12に対して図1の左側に設けられ、従動回転軸45は、テーブル12に対して図1の右側に設けられている。第2モータ46は、第3ブラケット14に取り付けられた図略の第4ブラケットに取付けられている。第2モータ46はこれの回転量を第2駆動回路54へ出力できるサーボモータタイプのものが使用される。第2駆動回路54は制御装置51からの移動指令量を受け取り、この移動指令量に応じた電流を発生させるものである。駆動ローラ41および従動ローラ42間には、エンドレスベルト状のパッド43が掛け渡され、パッド43には駆動ローラ41との間に摩擦力が発生するようこれの長手方向にテンションが掛けられている。パッド43は、中にワイヤが入ったゴム製のものが使用される。
【0020】
制御装置51は、例えばパソコン本体のマザーボードにコントロールボードを差し込んだものが使用される。コントロールボードには、第1駆動回路53および第2駆動回路54が接続される。パソコン本体には、後述するメイン画面および設定画面を表示する表示プログラムと、コントロールボードを作動させる動作プログラムと、球55の外径等のデータを格納する格納プログラムと、球55の外径等のデータとが格納されている。
【0021】
入出力装置52は、例えばパソコンのマウス、キーボードおよび液晶画面が使用される。液晶画面には、図4の(1)に示すようなメイン画面、または図4の(2)に示すような設定画面が表示されるようになっている。メイン画面には、枠原点移動ボタン56a、検査用球転がしボタン56b、設定ボタン56c、枠各個動作の+ボタン、−ボタン、パッド各個動作の+ボタン、−ボタンが設定されている。設定ボタン56cを押すと設定画面へ移るようになっている。設定画面には、球径D入力項目57a、枠の減速比m入力項目57b、パッドの減速比n入力項目57c、枠の速度入力項目、パッドの速度入力項目、前画面ボタン56dが設定されている。前画面ボタン56dを押すとメイン画面に戻るようになっている。
【0022】
制御装置51には、図5のフローに示すような格納プログラムが入っており、設定画面で球径D入力項目57aに球径Dを入力し、エンターを押すと球径Dが格納されるようになっている。
【0023】
制御装置51には、図6のフローに示すような球検査用球転がし動作プログラムが入っており、メイン画面で検査用球転がしボタン56bを押すと、この動作プログラムが実行されるようになっている。
【0024】
制御装置51には、図7のフローに示すような枠動作プログラムが入っており、図6のステップ60a、60d、60gを実行するときに、図7のフローに従って実行されるようになっている。
【0025】
制御装置51には、図8のフローに示すようなパッド動作プログラムが入っており、図6のステップ60b、60c、60e、60fを実行するときに、図8のフローに従って実行されるようになっている。
【0026】
制御装置51には、図10のフローに示すような枠原点移動動作プログラムが入っており、メイン画面で枠原点移動ボタン56aを押すと、この動作プログラムが実行されるようになっている。
【0027】
テーブル12上のパッド43には、球55の重力が作用し、パッド43自体の摩擦係数が高いので、パッド43に対して球55は転がる。これに対して、球55はセラミックス製で摩擦係数が小さく、枠30は金属製で摩擦係数が小さいので、枠30に対し球55は滑る。球55間でも滑りが発生する。すなわち、枠30を前後方向に移動させると、球55は枠30によって前後方向に押され、球55はパッド43上を転がりながら、球55は枠30に対して滑り、球55同士で滑りが発生する。また、テーブル12上のパッド43を左方向に移動させると、球55は枠30によって左方向の移動が止められているので、球55はパッド43上を転がりながら、球55は枠30に対して滑り、球55同士で滑りが発生する。
【0028】
次に第1の実施形態の動作について説明する。枠30が図1の下にある状態で、枠30へ一斉に複数の球55を投入し、可動用左右板36を後ろ側へ移動させ、可動用前後板35を左側へ移動させ、可動用左右板36および可動用前後板35をこの位置で固定ボルト50により固定する。こうして枠30の内側に球55が縦4列、横5列配置され、図1に示す状態となる。
【0029】
作業者は、図4の(1)のメイン画面で設定ボタン56cを押す。図4の(2)の設定画面となり(図5のステップ63a)、球径D入力項目57aへ球径をキーボートを使用して入力する(ステップ63b)。キーボードのエンターキーを押すと、ステップ63cでYesとなり、球径Dが制御装置51のメモリに格納される(ステップ63d)。
【0030】
続いて作業者は、設定画面の前画面ボタン56dを押し、図4の(1)のメイン画面に切り替える。メイン画面の検査用球転がしボタン56bを押し、図6のフローに示す球検査用球転がし動作プログラムが実行される。ステップ60a、60d、60gの実行時に図7の枠動作プログラムが実行され、ステップ60b、60c、60e、60fの実行時に図8のパッド動作プログラムが実行される。
【0031】
枠動作プログラムで球55を1回転させる場合は、k=1であり、球55を45度回転させる場合は、k=0.125である。
【0032】
図7を使用して例えば枠30の移動により球55を1回転させる場合を説明する。球径Dが呼び出され(ステップ61a)、球径Dおよびk=1により枠の移動量Sが算出される(ステップ61b)。枠の減速比mが呼び出され(ステップ61c)、移動量Sおよび減速比mにより枠30の移動指令量Pが算出される(ステップ61d)。制御装置51から第1駆動回路53へ移動指令量Pが送信され(ステップ61e)、この移動指令量Pに応じた電流が第1駆動回路53から第1モータ27に印加される。図1において、第1モータ27は第1プーリ25および駆動ベルト26を介して第2プーリ24を回転駆動し、第2プーリ24に螺合するネジ軸23が枠30とともに前方向へ移動する。これによって、球55が前方向へ1回転する。第1モータ27の回転量信号は、常に第1モータ27より第1駆動回路53へ送信され、移動指令量P分だけ第1モータ27が作動すると、第1駆動回路53から制御装置51へ移動完了指令が送信され、ステップ61fがYesとなると、枠の現在位置Yが枠30の移動量Sを加算した値に書き換えられる(ステップ61g)。
【0033】
パッド動作プログラムで球55を1回転させる場合は、j=1であり、球55を90度回転させる場合は、j=0.25である。
【0034】
図8を使用して例えばパッド43の移動により球55を90度回転させる場合を説明する。球径Dが呼び出され(ステップ62a)、球径Dおよびj=0.25により枠の移動量Tが算出される(ステップ62b)。パッドの減速比nが呼び出され(ステップ62c)、移動量Tおよび減速比nによりパッドの移動指令量Qが算出される(ステップ62d)。制御装置51から第2駆動回路54へ移動指令量Qが送信され(ステップ62e)、この移動指令量Qに応じた電流が第2駆動回路54から第2モータ46に印加される。図1において、第2モータ46はカップリング46および駆動回転軸44を介して駆動ローラ41を回転駆動し、テーブル12上のパッド43が左方向へ移動する。これによって、球55が右方向へ90度回転する。第2モータ46の回転量信号は、常に第2モータ46より第2駆動回路54へ送信され、移動指令量Q分だけ第2モータ46が作動すると、第2駆動回路54から制御装置51へ移動完了指令が送信され、ステップ62fがYesとなると、パッド動作プログラムが完了する。
【0035】
球検査用球転がし動作プログラムに戻り、図6を使用してこの動作プログラムによる動作を説明する。枠30を前方向へ球1回転分移動させ(ステップ60a)、パッド43を左方向へ球1回転分移動させ(ステップ60b)、パッド43を左方向へ球90度回転分移動させ(ステップ60c)、枠30を前方向へ球45度回転分移動させ(ステップ60d)、パッド43を左方向へ球90度回転分移動させ(ステップ60e)、パッド43を左方向へ球1回転分移動させ(ステップ60f)、枠30を前方向へ球1回転分移動させる(ステップ60g)。
【0036】
図9を使用して球55の目視検査状態を説明する。ステップ60aの開始前は、球55aの位置にある。ステップ60aによって球55は前方向へ1回転し、ステップ60a後は球55bの位置にあり、縦の2本線間が目視検査済となる。ステップ60bによって球55は右方向へ1回転し、ステップ60b後は球55cの位置にあり、横の2本線間が新たな目視完了済となる。球55cには縦横の十字の目視完了の2本線が入っている。
【0037】
ステップ60cによって球55は右方向へ90度回転し、ステップ60c後の球55は球55dに示す位置にある。ステップ60dによって球55は前方向へ45度回転し、ステップ60d後の球55は球55eに示す位置にある。ステップ60eによって球55は右方向へ90度回転し、ステップ60e後は球55fの位置にある。球55fには直交する2つの斜め方向の十字に2本線が入っている。球55cの状態から球55が45度回転して球55fの状態になったことが分かる。
【0038】
ステップ60fによって球55は右方向へ1回転し、ステップ60f後の球55は球55gに示す位置にあり、横の2本線間が新たな目視完了済となる。ステップ60gによって球55は前方向へ1回転し、ステップ60g後の球55は球55hに示す位置にあり、縦の2本線間が新たな目視完了済となる。球55hには、直交する2つの斜め方向の十字にさらに縦横の十字が入る。このようにすれば、目視範囲の重なりを最低限にしながら見落としなく球55の全面を効率良く見ることができる。
【0039】
上下の重なった2箇所を軸に45度回転させる理由について詳細に説明する。球55を前方向に1回転させ、続いて球55を右方向に1回転させると、見た範囲の重なるところが上下の2箇所に出来る。このまま前方向に1回転、右方向に1回転させると、同じところを見ることなり、好ましくない。上下の重なった2箇所を軸に45度回転させてから前方向に1回転、右方向に1回転させると、先ほどと異なるところを見ることができ、球55の全面を見ることが可能となる。前述した右方向に90度回転、前方向に45度回転、右方向に90度回転は、上下の重なった2箇所を軸に直接45度回転させる動作と同じことが得られる動作である。45度回転させる動作を、縦横方向に球55をそれぞれ1回転させる1回目の動作と、横縦方向に球をそれぞれ1回転させる2回目の動作間に入れた。
【0040】
球検査用球転がし動作が完了すると、作業者は図4の(1)のメイン画面の枠原点移動ボタン56aを押す。図10の枠原点移動動作プログラムが実行される。
【0041】
図10を使用して枠原点移動動作プログラムによる動作を説明する。枠30の現在位置Yが呼び出され(ステップ64a)、現在位置Yにより枠30の移動量Sが算出される(ステップ64b)。枠30の減速比mが呼び出され(ステップ64c)、移動量Sおよび減速比mにより枠30の移動指令量Pが算出される(ステップ64d)。制御装置51から第1駆動回路53へ移動指令量Pが送信され(ステップ64e)、この移動指令量Pに応じた電流が第1駆動回路53から第1モータ27に印加される。図1において、第1モータ27は第1プーリ25および駆動ベルト26を介して第2プーリ24を回転駆動し、第2プーリ24に螺合するネジ軸23が枠30とともに後ろ方向へ移動する。この結果、枠30は図1の下側にある原点へ移動する。
【0042】
作業者は、転がる複数の球55を目視し、複数の球55の中から一際異なるものを探す。色、傷等の一際異なるものを発見すると、その場でペン等で球55にマークが入れられる。球55の検査用転がりが完了した時点で、マークの入った球55を異常ボックスへ回収し、マークの入っていない球55を一斉に良品ボックスへ回収する。
【0043】
本発明の第2の実施形態について、図11および図12を使用して説明する。図11は検査用球転がし動作のフロー図であり、図12は球の転がり状態を示す状態図である。第2の実施形態と第1の実施形態の異なる点は、制御装置51に格納されている球検査用球転がし動作プログラムが異なるのみで、後は全て同じである。よって、第2の実施形態では、第1の実施形態の図6に代えて図11を使用し、図9に代えて図12を使用し、第1の実施形態の図1ないし図5、図7、図8、図10をそのまま利用する。
【0044】
図11を使用して球検査用球転がし動作プログラムによる動作を説明する。パッド43を左方向へ球1回転分移動させ(ステップ65a)、枠30を前方向へ球45度回転分移動させ(ステップ65b)、パッド43を左方向へ球1回転分移動させ(ステップ65c)、枠30を前方向へ球45度回転分移動させ(ステップ65d)、パッド43を左方向へ球1回転分移動させ(ステップ65e)、枠30を前方向へ球45度回転分移動させ(ステップ65f)、パッド43を左方向へ球1回転分移動させる(ステップ65g)。
【0045】
続いて図12を使用して球55の目視検査状態を説明する。ステップ65aの開始前は、球55は球55iに示す位置にある。ステップ65aによって球55は右方向へ1回転し、ステップ65a後の球55は球55jに示す位置にあり、横の2本線間が目視検査済となる。ステップ65bによって球55は前方向へ45度回転し、ステップ65b後の球55は球55kに示す位置にある。ステップ65cによって球55は右方向へ1回転し、ステップ65c後の球55は球55mに示す位置にある。ステップ65dによって球55は前方向へ45度回転し、ステップ65d後の球55は球55nに示す位置にある。ステップ65eによって球55は右方向へ1回転し、ステップ65e後の球55は球55pに示す位置にある。球55pには横方向の2本線が入る。ステップ65fによって球55は前方向へ45度回転し、ステップ65f後の球55は球55qに示す位置にある。ステップ65gによって球55は右方向へ1回転し、ステップ65g後の球55は球55rに示す位置にある。球55rには横方向の2本線が入る。
【0046】
球55sは球55rを図12の右方向から見た図であり、直交する2つの斜め方向の十字にさらに縦横の十字が入っている。目視範囲の重なりを最低限にしながら見落としなく球55の全面を効率良く見ていることが分かる。ちなみに、球55sの縦方向の2本線は、ステップ65gで見た範囲であり、球55sの右下斜め方向の2本線は、ステップ65eで見た範囲であり、球55sの横方向の2本線は、ステップ65cで見た範囲であり、球55sの左下斜め方向の2本線は、ステップ65aで見た範囲である。
【0047】
第2の実施形態は、第1の実施形態と比較してパッド43の移動量が多い反面、枠30の移動量が少ない。これは、作業者の目視範囲が余り動かないことを意味し、目視作業の点で作業性が良くなる。第1の実施形態は、前方向の転がりと、右方向の転がりがほぼ均一になるので、球55との接触による枠30の摩耗を、前後方向と左右方向とでほぼ均一にできるメリットがある。
【0048】
本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0049】
上述した第1の実施形態において、ステップ60dで枠30を前方向へ球45度回転分移動させることを述べた。他の実施形態として、枠30を前方向へ球225度(180度+45度)回転分移動させても良い。目視範囲の重なる部分が増えるが、より見落としが無くなる点でメリットがある。
【0050】
上述した第1の実施形態において、ステップ60eでパッド43を左方向へ球90度回転分移動させ、ステップ60fでパッド43を左方向へ球1回転分移動させた。他の実施形態として、パッド43を右方向へ球90度回転分移動させ、パッド43を右方向へ球1回転分移動させも良い。このようにすれば、球55の接触による枠30の左右方向の摩耗を均一にできる。
【符号の説明】
【0051】
20:第1駆動装置、30:枠(配置部材)、40:第2駆動装置、43:パッド、51:制御装置、52:入出力装置、55:球、61b:ステップ(算出手段)、62b:ステップ(算出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の球を載置するパッドと、前記複数の球を縦横複数列に配置する配置部材と、前記配置部材および前記配置部材を水平面内の直交する2方向のうち一方向に相対移動させる第1駆動装置と、前記配置部材および前記パッドを前記水平面内の直交する2方向のうち他方向に相対移動させる第2駆動装置と、前記第1駆動装置および前記第2駆動装置を制御して前記配置部材および前記パッドを相対移動させ、前記球に縦転がしおよび横転がしを与える制御装置と、制御装置に球径を入力する入出力装置とからなり、前記制御装置は、入力された球径に応じた前記配置部材および前記パッドの相対移動量を算出する算出手段を有することを特徴とする球検査用転がし装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−101033(P2013−101033A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244474(P2011−244474)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】