説明

球状蛍光体、波長変換フィルタ及びこれを用いた色変換発光デバイス

【課題】高い耐久性を有し、吸収した波長を変換して高強度の蛍光を放射する球状蛍光体、波長変換フィルタ及びこれを用いた色変換発光デバイスを提供する。
【解決手段】蛍光色素を少なくとも一種含有する透明材料が、球状である球状蛍光体。蛍光色素が、有機蛍光体又は希土類金属錯体である前記の球状蛍光体。透明材料が、透明樹脂である前記の球状蛍光体。また、これらの球状蛍光体を含む波長変換フィルタ及びこの波長変換フィルタを備えた色変換発光デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶、PDP、有機EL等のディスプレイ、イメージセンサ、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサー、オーディオ、ビデオ、カーナビゲーション、電話機、携帯端末機及び産業用計測機器等の表示素子、太陽電池等の光電変換素子用、蛍光灯、LED、EL照明等の照明用、波長変換型農業用資材などの分野に利用可能な球状蛍光体、波長変換フィルタ及びこれを用いた色変換発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エネルギーを吸収して励起した電子が、基底状態へ戻る際に余分なエネルギーとして電磁波を放射するような材料は、吸収と放出のエネルギーの違いから波長変換能を有しており、色変換色素(波長変換色素)として、染料、顔料、光学フィルタ、農業用フィルム等に用いられており、有機化合物においては吸収及び放射の波長が無機化合物に比較して制御しやすいため盛んに研究されてきた。特に吸収したエネルギーを蛍光として放射する化合物は蛍光色素と呼ばれ、可視光の蛍光を放射するものは実用性が高く、例えば、ディスプレイ等の表示装置、蛍光灯等の照明装置、生物学及び医学におけるマーカーとしての用途に用いることができる。
【0003】
蛍光色素はその用途上、高い耐久性が求められている。また、樹脂中に添加して用いられることが多く、樹脂中において蛍光強度が高いことが望ましい。
【0004】
特許文献1には、希土類錯体を蛍光色素とした波長変換フィルムが例示されているが、封止材として用いられているエチレンビニルアセテートと共に加水分解しやすく、たちまち劣化してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−303033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高い耐久性を有し、吸収した波長を変換して高強度の蛍光を放射する球状蛍光体、波長変換フィルタ及びこれを用いた色変換発光デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、蛍光色素として希土類金属錯体を用い、これを含有した球状蛍光体を得ることにより、耐湿性及び耐熱性に優れ、分散性が良く且つ高強度の蛍光を放射することを見出し、本発明を完成するに至った。さらに、希土類金属の有機錯体の湿度に対する耐性を、球体内に閉じ込めることにより増すことができる。
【0008】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1) 蛍光色素を少なくとも一種含有する透明材料が、球状であることを特徴とする球状蛍光体。
(2) 蛍光色素が、有機蛍光体又は希土類金属錯体であることを特徴とする(1)に記載の球状蛍光体。
(3) 透明材料が、透明樹脂であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の球状蛍光体。
(4) 透明材料が、透明ビニル樹脂であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の球状蛍光体。
(5) 蛍光色素を溶解又は分散させたビニルモノマを、乳化重合又は、懸濁重合により調製してなる球状樹脂粒子である、(1)〜(4)のいずれかに記載の球状蛍光体。
(6) (1)〜(5)のいずれかに記載のいずれかの球状蛍光体を少なくとも1種含む波長変換能を有する波長変換フィルタ。
(7) 発光部と、(6)に記載の波長変換フィルタとを備えた色変換発光デバイス。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐久性に優れ、蛍光強度が高い球状蛍光体、波長変換フィルタ及びこれを用いた色変換発光デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の球状蛍光体を用いた光学機能層の概略断面図である。
【図2】本発明の波長変換フィルタを示す断面図であり、(a)〜(c)は各構成例を示す図である。
【図3】本発明の波長変換フィルタを赤色変換層として用いた色変換発光デバイスの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<球状蛍光体およびその製造方法>
本発明の球状蛍光体は、蛍光色素とこれを含有する球状の透明材料からなる。そして、透明材料は、球体母材料である。
(蛍光色素)
本発明に用いられる蛍光色素としては、本発明の目的に適した蛍光性を有する化合物であれは、特は制限ない。
【0012】
例えば、希土類金属の有機錯体を好ましく挙げることができる。中でも波長変換効率の観点から、ユーロピウム錯体およびサマリウム錯体の少なくとも1種であることが好ましい。
また有機錯体を構成する配位子としては特に制限はなく、用いる金属に応じて適宜選択することができる。中でもユーロピウムおよびサマリウムの少なくとも1種と錯体を形成可能な配位子であることが好ましい。
【0013】
本発明では、配位子を限定するものではないが、中性配位子である、カルボン酸、含窒素有機化合物、含窒素芳香族複素環式化合物、β−ジケトン類、およびホスフィンオキサイドから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
また希土類錯体の配位子として、一般式 RCOCHRCOR(式中、Rはアリール基、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アラルキル基又はそれらの置換体を、Rは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アラルキル基又はアリール基を、Rはアリール基、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アラルキル基又はそれらの置換体をそれぞれ示す)で表わされるβ−ジケトン類を含有してもよい。
【0014】
β−ジケトン類としては、具体的にはアセチルアセトン、パーフルオロアセチルアセトン、ベンゾイル−2−フラノイルメタン、1,3−ビス(3−ピリジル)−1,3−プロパンジオン、ベンゾイルトリフルオロアセトン、ベンゾイルアセトン、5−クロロスルフォニル−2−テノイルトリフルオロアセトン、ジ(4−ブロモ)ベンゾイルメタン、ジベンゾイルメタン、d,d−ジカンフォリルメタン、1,3−ジシアノ−1,3−プロパンジオン、p−ビス(4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロ−1,3−ヘキサンジノイル)ベンゼン、4,4′−ジメトキシジベンゾイルメタン、2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオン、ジナフトイルメタン、ジピバロイルメタン、ビス(パーフルオロ−2−プロポキシプロピオニル)メタン、1,3−ジ(2−チエニル)−1,3−プロパンジオン、3−(トリフルオロアセチル)−d−カンファー、6,6,6−トリフルオロ−2,2−ジメチル−3,5−ヘキサンジオン、1,1,1,2,2,6,6,7,7,7−デカフルオロ−3,5−ヘプタンジオン、6,6,7,7,8,8,8−ヘプタフルオロ−2,2−ジメチル−3,5−オクタンジオン、2−フリルトリフルオロアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、3−(ヘプタフルオロブチリル)−d−カンファー、4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロ−1−(2−チエニル)−1,3−ヘキサンジオン、4−メトキシジベンゾイルメタン、4−メトキシベンゾイル−2−フラノイルメタン、6−メチル−2,4−ヘプタンジオン、2−ナフトイルトリフルオロアセトン、2−(2−ピリジル)ベンズイミダゾール、5,6−ジヒドロキシ−,10−フェナントロリン、1−フェニル−3−メチル−4−ベンゾイル−5−ピラゾール、1−フェニル−3−メチル−4−(4−ブチルベンゾイル)−5−ピラゾール、1−フェニル−3−メチル−4−イソブチリル−5−ピラゾール、1−フェニル−3−メチル−4−トリフルオロアセチル−5−ピラゾール、3−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−2,4−ペンタンジオン、3−フェニル−2,4−ペンタンジオン、3−[3′,5′−ビス(フェニルメトキシ)フェニル]−1−(9−フェナンチル)−1−プロパン−1,3−ジオン、5,5−ジメチル−1,1,1−トリフルオロ−2,4−ヘキサンジオン、1−フェニル−3−(2−チエニル)−1,3−プロパンジオン、3−(t−ブチルヒドロキシメチレン)−d−カンファー、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン、1,1,1,2,2,3,3,7,7,8,8,9,9,9−テトラデカフルオロ−4,6−ノナンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、4,4,4−トリフルオロ−1−(2−ナフチル)−1,3−ブタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−5,5−ジメチル−2,4−ヘキサンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−オクタンジオン、2,2,6−トリメチル−3,5−ヘプタンジオン、2,2,7−トリメチル−3,5−オクタンジオン、4,4,4−トリフルオロ−1−(チエニル)−1,3−ブタンジオン(TTA)、1−(p−t−ブチルフェニル)−3−(N−メチル−3−ピロール)−1,3−プロパンジオン(BMPP)、1−(p−t−ブチルフェニル)−3−(p−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオン(BMDBM)、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン、べンゾイルアセトン、ジべンゾイルアセトン、ジイソブチロイルメタン、ジビパロイルメタン、3−メチルペンタン−2,4−ジオン、2,2−ジメチルペンタン−3,5−ジオン、2−メチル−1,3−ブタンジオン、1,3−ブタンジオン、3−フェニル−2,4−ペンタンジオン、1,1,1−トリフロロ−2,4−ペンタンジオン、1,1,1−トリフロロ−5,5−ジメチル−2,4−ヘキサンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、3−メチル−2,4−ペンタンジオン、2−アセチルシクロペンタノン、2−アセチルシクロヘキサノン、1−ヘプタフロロプロピル−3−t−ブチル−1,3−プロパンジオン、1,3−ジフェニル−2−メチル−1,3−プロパンジオン、又は1−エトキシ−1,3−ブタンジオン等が挙げられる。
【0015】
希土類錯体の中性配位子の含窒素有機化合物、含窒素芳香族複素環式化合物、ホスフィンオキサイドとしては、たとえば、1,10−フェナントロリン、2−2′−ビピリジル、2−2′−6,2″−ターピリジル、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2−(2−ピリジル)ベンズイミダゾール、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリ−n−ブチルホスフィンオキサイド、トリ−n−オクチルホスフィンオキサイド、トリ−n−ブチルホスフェート等が挙げられる。
【0016】
上記のような配位子を有する希土類錯体として、中でも波長変換効率の観点から、例えば、Eu(TTA)Phen、Eu(BMPP)Phen、Eu(BMDBM)Phen、等を好ましく利用できる。
Eu(TTA)Phenの製造法は、例えば、Masaya Mitsuishi, Shinji Kikuchi, Tokuji Miyashita, Yutaka Amano, J.Mater.Chem.2003, 13, 285−2879に開示されている方法を参照できる。
【0017】
有機蛍光体を用いる場合は、例えば、赤色系の発光を得たい場合は、4−ジシアノメチレン−2−イソプロピル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン(略称:DCJTI)、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン(略称:DCJT)、4−ジシアノメチレン−2−tert−ブチル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン(略称:DCJTB)やペリフランテン、2,5−ジシアノ−1,4−ビス[2−(10−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−9−イル)エテニル]ベンゼン等、600nmから680nmに発光スペクトルのピークを有する発光を呈する物質を発光物質として用いればよい。
【0018】
また、緑色系の発光を得たいときは、N,N′−ジメチルキナクリドン(略称:DMQd)、クマリン6やクマリン545T、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)等、500nmから550nmに発光スペクトルのピークを有する発光を呈する物質を発光物質として用いればよい。
【0019】
また、青色系の発光を得たいときは、9,10−ビス(2−ナフチル)−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuDNA)、9,9′−ビアントリル、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPA)、9,10−ビス(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−ガリウム(略称:BGaq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)等、420nmから500nmに発光スペクトルのピークを有する発光を呈する物質を発光物質として用いればよい。
【0020】
(透明材料)
本発明において前記蛍光色素は、前記透明材料に含有され、球状をなし、前記透明材料を構成するモノマ化合物としては特に制限はないが、光の散乱抑制の観点から、ビニル化合物であることが好ましい。特に、蛍光色素として希土類錯体など、耐湿性の弱い物質では、これを球体内に閉じ込めることにより、耐湿性を増すこともできる。
また前記蛍光色素を前記透明材料に含有させ、形状を球状にする方法としては、例えば、前記蛍光色素をモノマ化合物に溶解、あるいは分散調製し、これを重合することで乳化、あるいは懸濁重合により調製することができる。具体的には、例えば蛍光色素およびビニル化合物を含む混合物を調製し、ラジカル重合開始剤を用いてビニル化合物を重合することで、蛍光色素が含有された球状樹脂粒子として球状蛍光体を構成することができる。
【0021】
(ビニル化合物)
本発明においてビニル化合物とは、エチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物であれば特に制限はなく、重合反応した際にビニル樹脂、特にアクリル樹脂又はメタクリル樹脂になり得るアクリルモノマ、メタクリルモノマ、アクリルオリゴマー、メタクリルオリゴマー等を特に制限なく用いることができる。本発明において好ましくは、アクリルモノマ、およびメタクリルモノマ等が挙げられる。
【0022】
アクリルモノマ、およびメタクリルモノマとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、これらのアルキルエステルが挙げられ、またこれらと共重合し得るその他のビニル化合物を併用しても良く、1種単独でも、2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
【0023】
アクリル酸アルキルエステル、およびメタクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸無置換アルキルエステルおよびメタクリル酸無置換アルキルエステル;ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート;多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物(例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(エチレン基の数が2〜14のもの)、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(プロピレン基の数が2〜14のもの)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAトリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAデカオキシエチレンジ(メタ)アクリレート等);グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を付加して得られる化合物(例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート等);多価カルボン酸(例えば、無水フタル酸)と水酸基及びエチレン性不飽和基を有する物質(例えば、β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)とのエステル化物;アクリル酸若しくはメタクリル酸のアルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル);ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、トリレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステルとの反応物、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとシクロヘキサンジメタノールと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステルとの反応物等);これらのアルキル基に水酸基、エポキシ基、ハロゲン基等が置換したアクリル酸置換アルキルエステル又はメタクリル酸置換アルキルエステル;等が挙げられる。
【0024】
また、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルと共重合し得るその他のビニル化合物としては、アクリルアミド、アクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。これらのビニルモノマは、1種単独でも、2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
本発明におけるビニル化合物としては、形成される樹脂粒子の屈折率が所望の値になるように適宜選択することが好ましく、アクリル酸アルキルエステルおよびメタクリル酸アルキルエステルから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、およびメタクリル酸プロピルから選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0026】
(ラジカル重合開始剤)
本発明においてはビニル化合物を重合させるためにラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。ラジカル重合開始剤としては、特に制限なく通常用いられるラジカル重合開始剤を用いることができる。例えば、過酸化物等が好ましく挙げられる。具体的には、熱により遊離ラジカルを発生させる有機過酸化物やアゾ系ラジカル開始剤が好ましい。
有機化酸化物としては例えば、イソブチルパーオキサイド、α,α′ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−s−ブチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルネオデカノエート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ(エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート、t−ヘキシルネオデカノエート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、サクニックパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイル)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、4−メチルベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、m−トルオノイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサノン、2,2−ビス(4,4−ジブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、α,α′ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシ、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン等を使用することができる。
アゾ系ラジカル開始剤としては、たとえば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、別名V−60)、2,2′−アゾビス(2−メチルイソブチロニトリル)(別名V−59)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(別名V−65)、ジメチル−2,2′−アゾビス(イソブチレート)(別名V−601)、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(別名V−70)などが挙げられる。
【0027】
ラジカル重合開始剤の使用量は、前記ビニル化合物の種類や形成される樹脂粒子の屈折率等に応じて適宜選択することができ、通常用いられる使用量で使用される。具体的には例えば、ビニル化合物に対して0.01〜2質量%で使用することができ、0.1〜1質量%で使用することが好ましい。
【0028】
<球状蛍光体を含む波長変換フィルタの製造方法>
本発明の球状蛍光体を含む波長変換フィルタは、波長変換能を有する。例えば、図1に示すように、紫外光を可視光へと変換する波長変換フィルタとして用いることができる。
【0029】
本発明の波長変換フィルタは、例えば、LED照明、エレクトロルミネッセンス照明等に用いることができる。
【0030】
本発明の波長変換フィルタは、球状蛍光体を含んでいればよく、波長変換フィルタの構成に制限はない。本発明の実施形態の波長変換フィルタの構成例を図2に示す。例えば、波長変換フィルタは、支持体100と、球状蛍光体を含有する光学機能層120とを含み、必要に応じて、下塗り層110、反射防止層130、ハードコート層140、潤滑層150等を設けることができる。図2(a)に示すように、支持体100の一方の表面上に、下塗り層110、光学機能層120、反射防止層130、ハードコート層140及び潤滑層150を積層してもよい。あるいはまた、図2(b)に示すように、透明支持体の一方の表面上に下塗り層110、光学機能層120、ハードコート層140及び潤滑層150を積層し、他方の表面上に下塗り層110、反射防止層130及び潤滑層150を積層してもよい。あるいはまた、本発明の波長変換フィルタは、図2(c)に示すように、本発明の球状蛍光体を含有する光学機能支持体105の表面上に下塗り層110、反射防止層130、ハードコート層140及び潤滑層150を積層した構造であってもよい。球状蛍光体を含有する光学機能層120又は光学機能支持体105は、波長変換層として機能する。
【0031】
支持体100の材料としては、例えば、ガラス等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、スチレン−ブタジエンコポリマー、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、エチレン‐酢酸ビニル共重合樹脂、エポキシ樹脂、ポリフルオレン樹脂、シリコーン樹脂等の合成高分子材料を用いることができる。支持体100は可視光に対して80%以上の透過率を有することが好ましく、86%以上の透過率を有することがさらに好ましい。透明支持体100のヘイズは、2%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。透明支持体100の屈折率は、1.45〜1.70であることが好ましい。
【0032】
図2中の各層には、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、無機微粒子等を添加してもよい。また、支持体100に各種の表面処理を施してもよい。該表面処理は、例えば、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理、オゾン酸化処理等を含む。
【0033】
光学機能層120又は光学機能支持体105の構成物としては、必要に応じて、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等のバインダー樹脂や、光安定剤、硬化剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、界面活性剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、重金属不活性剤、ハイドロタルサイト、有機カルボン酸、着色剤、加工助剤、無機添加剤、充填剤、透明化剤、造核剤、結晶化剤等の各種添加剤を使用することができる。
【0034】
光学機能層120又は光学機能支持体105は、球状蛍光体を少なくとも1種類含有していれば特に形態を問わないが、例えば、球状蛍光体をバインダー樹脂中に分散した樹脂液から得られるフィルム、フィルタからなってもよいし、球状蛍光体のみからなる単独膜又は積層体からなってもよい。光学機能層120及び光学機能支持体105の厚みは用途等に応じて適宜選択され、特に制限されるものではないが、光学機能層120の厚みは0.1〜300μmの範囲から、光学機能支持体105の厚みは10〜1000μmの範囲から、それぞれ選択されることが好ましい。
【0035】
光学機能層120又は光学機能支持体105の製造方法は、例えば溶媒中に分散した後ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スピンコート法あるいはエクストルージョンコート法によって恒久支持体又は一時支持体上に塗膜形成する方法が挙げられる。
【0036】
上記溶媒としては、特に制限されないが、例えば、水、アルコール系、ジオール系、ケトン系、エステル系、エーテル系、脂肪族又は脂環族炭化水素系、芳香族炭化水素系、シアノ基を有する炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素系等が挙げられる。
【0037】
あるいはまた、光学機能層120又は光学機能支持体105の製造方法として、球状蛍光体と高分子材料とを含む混合物を押出成形、キャスト成形又はロール成形して、直接的に自立層を形成してもよい。用いることのできる高分子材料は、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース等のセルロースエステル; ポリアミド; ポリカーボネート; ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ− 1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4′−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリスチレン;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリエーテルイミド;ポリオキシエチレン;ノルボルネン;エチレン‐酢酸ビニル共重合樹脂等を含む。
【0038】
光学機能層120又は光学機能支持体105を色変換層として機能させる場合、球状蛍光体の使用量を球状蛍光体に含まれる蛍光色素が、通常波長変換フィルタの単位面積当たり1〜1000mg/mの範囲内、好ましくは5〜300mg/mの範囲内とすることが望ましい。このような範囲の使用量とすることにより、充分な波長変換効果を発揮するとともに、色変換発光デバイス及び光電変換デバイスで適切な色変換効率及び光電変換効果を発揮する。図2(c)の構成で用いられる光学機能支持体105を色変換層として用いる場合も、同様の範囲内の使用量において球状蛍光体を用いることが好ましい。上記の単位面積当たりの好ましい使用量を満たすためには、使用するバインダー樹脂の種類等によっても異なるが、例えばバインダー樹脂100質量部に球状蛍光体0.001〜10質量部の割合で配合した樹脂液を用いて、前述の好ましい範囲の厚みを持つ光学機能層120又は光学機能支持体105を形成することが望ましい。
【0039】
反射防止層130は、本態様の波長変換フィルタにおける反射を防止して光透過率を向上させるための層である。反射防止層130は、透明支持体100よりも低い屈折率を有する材料から形成される低屈折率層であってもよい。低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.55であることが好ましく、1.30〜1.50であることがさらに好ましい。低屈折率層の厚さは、50〜400nmであることが好ましく、50〜200nmであることがさらに好ましい。低屈折率層は、屈折率の低い含フッ素ポリマーからなる層、ゾルゲル法により得られる層、あるいは微粒子を含む層として形成することができる。微粒子を含む層では、微粒子間又は微粒子内のミクロボイドとして、低屈折率層中に空隙を形成することができる。微粒子を含む層は、3〜50体積%の空隙率を有することが好ましく、5〜35体積%の空隙率を有することがさらに好ましい。
【0040】
反射防止層130を1つ又は複数の低屈折率層と1つ又は複数の中・高屈折率層との積層体から形成することによって、より広い波長領域の光反射を防止することができる。高屈折率層の屈折率は、1.65〜2.40であることが好ましく、1.70〜2.20であることがさらに好ましい。中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との中間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.90であることが好ましく、1.55〜1.70であることがさらに好ましい。中・高屈折率層の厚さは、5nm〜100μmであることが好ましく、10nm〜10μmであることがさらに好ましく、30nm〜1μmであることが最も好ましい。中・高屈折率層のヘイズは、後述のアンチグレア機能を付与する場合を除いて、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。
【0041】
中・高屈折率層は、比較的高い屈折率を有するポリマーバインダーを用いて形成することができる。屈折率が高いポリマーの例には、ポリスチレン、スチレン共重合体、ポリカーボネート、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、及び環状(脂環式又は芳香族)イソシアネートとポリオールとの反応で得られるポリウレタンが含まれる。その他の環状(芳香族、複素環式、脂環式)基を有するポリマーや、フッ素以外のハロゲン原子を置換基として有するポリマーも、屈折率が高い。二重結合を導入してラジカル硬化を可能にしたモノマーの重合反応によりポリマーを形成してもよい。
【0042】
さらに高い屈折率を得るため、ポリマーバインダー中に無機微粒子を分散してもよい。分散させる無機微粒子の屈折率は、1.80〜2.80であることが好ましい。無機微粒子は、二酸化チタン(例、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造)、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム及び硫化亜鉛のような金属の酸化物又は硫化物から形成することが好ましい。酸化チタン、酸化錫及び酸化インジウムが特に好ましい。無機微粒子は、これらの金属の酸化物又は硫化物を主成分とし、さらに他の元素を含むことができる。主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分を意味する。他の元素の例には、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びSが含まれる。あるいはまた、被膜形成性で溶剤に分散し得るか、それ自身が液状である無機材料、例えば、各種元素のアルコキシド、有機酸の塩、配位性化合物と結合した配位化合物(例、キレート化合物)、活性無機ポリマーを用いて、中・高屈折率層を形成することもできる。
【0043】
反射防止層130は、その表面にアンチグレア機能(入射光を表面で散乱させて、膜周囲の景色が膜表面に移るのを防止する機能)を付与することができる。例えば、反射防止層130が形成される表面(たとえば、粗面化された下塗り層110等)に微細な凹凸を形成するか、あるいはエンボスロール等により反射防止層130表面に凹凸を形成することにより、アンチグレア機能を付与することができる。アンチグレア機能を有する反射防止層130は、一般に3〜30%のヘイズを有する。
【0044】
ハードコート層140は、その下に形成される層(光学機能層120及び/又は反射防止層130)を保護するための層であり、透明支持体100よりも高い硬度を有する材料から形成される。ハードコート層140は、架橋しているポリマーを含むことが好ましい。ハードコート層は、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系のポリマー、オリゴマー又はモノマー(例、紫外線硬化型樹脂)を用いて形成することができる。シリカ系材料からハードコート層140を形成することもできる。
【0045】
本態様の波長変換フィルタの表面に潤滑層150を形成してもよい。潤滑層150は、波長変換フィルタ表面に滑り性を付与し、耐傷性を改善する機能を有する。潤滑層150は、ポリオルガノシロキサン(例、シリコーンオイル)、天然ワックス、石油ワックス、高級脂肪酸金属塩、フッ素系潤滑剤又はその誘導体を用いて形成することができる。潤滑層150の厚さは、2〜20nmであることが好ましい。
【0046】
上記の下塗り層110、反射防止層130、ハードコート層140、及び潤滑層150は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法及びエクストルージョンコート法のような当該技術において知られている任意の塗布方法により形成することができる。シリカ系材料からハードコート層140を形成する際には、蒸着、スパッタ、CVD、レーザーアブレーション等の当該技術において知られている任意の成膜技術を用いてハードコート層140を形成してもよい。
【0047】
波長変換フィルタの各構成層は、その積層順序に従って1層ずつ順次形成してもよいし、2つ以上の層を同時塗布法により形成してもよい。
【0048】
<色変換発光デバイスの製造方法>
本発明の色変換発光デバイスは、発光部(光源)と、色変換部として、本発明の波長変換フィルタとを有していれば特に限定はされず、従来の色変換発光デバイスに準じた構成とすることができる。例として図3に、カラーディスプレイ用の色変換発光デバイスの例を示す。図3に示した色変換発光デバイスは、支持体50の上に発光層40が設けられている。該発光層40を発光させる手法は限定されないが、例えばEL(エレクトロルミネッセンス)素子であれば発光層を電極で挟み電流を流すことで発光させることができる。
【0049】
また、発光層40上に赤、緑、青の色変換層20R、20G及び20Bを設けることで、発光層40から放出された光を色変換することができる。これらの色変換層の少なくとも1つが本発明の波長変換フィルタである。該波長変換フィルタは、変換後の波長に応じて、適宜赤、緑、青の色変換層20R、20G、20Bとすることができる。上記色変換層として、例えば、球状蛍光体をバインダー樹脂中に分散した樹脂液から得られたフィルムからなる波長変換フィルタを採用することができる。
【0050】
更に適宜、赤、緑、青のカラーフィルタ層10R、10G及び10Bを設けることができる。これらのカラーフィルタ層は、赤、緑、青の色変換層20R、20G及び20Bにより変換された光の色座標又は色純度を最適化するために、必要に応じて設けられるものである。
【0051】
支持体50の材料として、例えば、波長変換フィルムにおける支持体100の材料として挙げたガラス等の無機材料、合成高分子材料を用いることができる。発光層40を発光させる電極を適宜作製するため、電極を形成しやすい支持体としてガラスが好ましい。
【0052】
各色のカラーフィルタ層10R、10G及び10Bは、所望される波長域の光のみを透過させる機能を持つ。各色のカラーフィルタ層10R、10G及び10Bは、色変換層20R、20G及び20Bによって波長分布変換されなかった光源からの光を遮断し、また色変換層20R、20G及び20Bによって波長分布変換された光の色純度を向上させることに対して有効である。これらのカラーフィルタ層は、例えば液晶ディスプレイ用カラーフィルタ材料等を用いて形成してもよい。
【0053】
図2に示したRGBの色変換発光デバイスを一組の画素として、複数の画素を支持体上にマトリックス状に配置することによって、カラーディスプレイ用の色変換発光デバイスを形成することができる。色変換層の所望されるパターンは、使用される用途に依存する。赤、緑、及び青の矩形又は円形もしくはその中間の形状の区域を一組として、それをマトリックス状に透明支持体全面に作製してもよい。あるいはまた、微小の区域に分割された適当な面積比で配設される二種の色変換層を用いて、単独の色変換層では達成できない単一色を示すようにしてもよい。
【0054】
図3の例ではRGB各色の色変換層を設けた場合を示したが、青色の光を放出する発光素子を光源として用いる場合には、青色に関して色変換層を用いずに、カラーフィルタ層のみを用いてもよい。
【0055】
また、上記発光部としては、近紫外から可視域、好ましくは近紫外から青緑色の光を発する任意の光源を用いることができる。そのような光源の例は、無機EL発光素子、有機EL発光素子、プラズマ発光素子、冷陰極管、放電灯(高圧・超高圧水銀灯及びキセノンランプ等)、発光ダイオード等を含む。
【0056】
本発明の色変換発光デバイスにおいて、図3に示されるようにカラーフィルタ層を設ける場合、発光部は色変換層の側に配置される。また、本発明の色変換発光デバイスにおいて、カラーフィルタ層を設けずに、例えば色変換部として図2に示される波長変換フィルタ(カラーフィルタ層を持たない)を用いる場合、発光部は波長変換フィルタのいずれかの側に配置されてもよく、また該波長変換フィルタは光源の表面に直接積層してもよい。
【実施例】
【0057】
以下に、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0058】
(実施例1)
<蛍光色素の合成>
まず、蛍光色素を合成する。4,4,4−トリフルオロ−1−(チエニル)−1,3−ブタンジオン(TTA)200mgを7mlのエタノールに溶解し、ここへ1Mの水酸化ナトリウム1.1mlを加え混合した。7mlのエタノールに溶かした6.2mgの1,10−フェナントロリンを先の混合溶液に加え、1時間攪拌した後、EuCl・6HO 103mgの3.5ml水溶液を加え、沈殿物を得る。これをろ別し、エタノールで洗浄し、乾燥をし、蛍光色素Eu(TTA)Phenを得た。
【0059】
<球状蛍光体の作製>
上記の蛍光色素Eu(TTA)Phen、1g、メタクリル酸メチルを100g、熱ラジカル開始剤であるラウロイルパーオキサイドを、0.2gを200mlスクリュー管に入れ、超音波洗浄器とミックスローターを用いて、攪拌混合した。冷却管をつけたセパラブルフラスコにイオン交換水500g、界面活性剤としてポリビニルアルコール1.8%溶液4gを加え、攪拌した。これに先に調整したメタクリル酸メチルの混合液を加え、ホモジナイザーを用い、2000rpmで20秒間攪拌した。これを350rpmで攪拌しながら、60℃に加熱し、3時間反応させた。この懸濁液を、Beckman Coulter LS13320を用い、粒径を測定すると、体積平均径が、104μmであった。沈殿物を濾別し、イオン交換水で洗浄し、60℃で乾燥させ、懸濁重合による球状蛍光体を得た。
【0060】
<光学機能層用樹脂組成物の調整>
透明樹脂(分散媒樹脂)として東ソー株式会社製のエチレン−酢酸ビニル樹脂、ウルトラセン634(「ウルトラセン」は登録商標)を100g、を用い、前記球状蛍光体を、1g、100℃に調整したロールミキサで混練し、光学機能層用樹脂組成物を得た。
【0061】
<光学機能層の作製>
上記で得られた光学機能層用樹脂組成物を約30g、離型シートに挟み、0.2mm厚ステンレス製スペーサーを用い、熱板を80℃に調整したプレスを用い、シート状にした。
【0062】
<光学機能層の発光高温高湿耐性の評価>
作製した光学機能層を10cm角に裁断し、試験片とした。この試験片にアズワン株式会社製ハンディーUVランプ、SLUV−4の365nmの光を照射し、赤色発光の有無を観察した。観察した試験片を85℃、85%相対湿度に調整された恒温恒湿槽に入れ、適当な時間をおいて同様な観察をした。その結果、2500時間まで発光が確認された。観察結果は比較例とともに表1に示す。
【0063】
(比較例1)
実施例1の<光学機能層用樹脂組成物の調整>で、実施例の球状蛍光体のところを、蛍光色素Eu(TTA)Phenをそのまま0.2mgとし、以下同様の手順、方法で、光学機能層を作製し、発光高温高湿耐性の評価を行った。その結果、24時間後には発光が確認されなかった。観察結果は実施例とともに表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
表1より、比較例で用いた光学機能層と比較し、球状蛍光体を用いた実施例1の光学機能層は耐久性に優れる事が明らかである。以上より、本発明の球状蛍光体は、耐久性に優れ、色変換発光デバイスに好適である事が明らかである。
【符号の説明】
【0066】
05 球状蛍光体、10R 赤色フィルタ層、10G 緑色フィルタ層、10B 赤色フィルタ層、20R 赤色変換層、20G 緑色変換層、20B 青色変換層、30 ブラックマスク、40 発光層、50 支持体、100 支持体、105 光学機能支持体、110 下塗り層、120 光学機能層、130 反射防止層、140 ハードコート層
150 潤滑層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光色素を少なくとも一種含有する透明材料が、球状であることを特徴とする球状蛍光体。
【請求項2】
蛍光色素が、有機蛍光体又は希土類金属錯体であることを特徴とする請求項1に記載の球状蛍光体。
【請求項3】
透明材料が、透明樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の球状蛍光体。
【請求項4】
透明材料が、透明ビニル樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の球状蛍光体。
【請求項5】
蛍光色素を溶解又は分散させたビニルモノマを、乳化重合又は、懸濁重合により調製してなる球状樹脂粒子である、請求項1〜4のいずれかに記載の球状蛍光体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のいずれかの球状蛍光体を少なくとも1種含む波長変換能を有する波長変換フィルタ。
【請求項7】
発光部と、請求項6に記載の波長変換フィルタとを備えた色変換発光デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−64031(P2013−64031A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201828(P2011−201828)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000004455)日立化成株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】