説明

球面滑り軸受及びその製造用金型並びにその製造方法

【課題】内輪、外輪及び合成樹脂製のライナーを備えて構成される球面滑り軸受の製造において、その工程数を減少させ、製造を極めて容易にすることを目的とし、又、ライナーが充分な滑り性を発揮可能な球面滑り軸受を提供することを目的とする。
【解決手段】可動式の上型11と固定式の下型12を備え、内輪7及び外輪6を収納する収納凹部13を下型12と上型11との金型分割面10に設け、下型12に回転自在に軸支された回転軸4を、先端部41を収納凹部13に突出させて設け、回転軸4の先端部41は、内輪7の軸受孔71に挿入されて、内輪7を回転軸4に固定可能に構成されている球面滑り軸受製造用金型1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球面滑り軸受及びその製造用金型並びにその製造方法に関し、特に外輪と内輪との間に合成樹脂製のライナーを介在させた球面滑り軸受及びその製造用金型並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から軸受の一種として球面滑り軸受が存在し、この球面滑り軸受は、軸受孔を備えると共に外周面が球状に形成された内輪が、内周面が球状に形成された外輪に摺動自在に嵌め込まれて構成されている。そして、外輪の内周面には合成樹脂製の自己潤滑性薄板であるライナーが固着されて、外輪と内輪の間にライナーを介在させることにより、無給油式球面滑り軸受を構成したものも存在する。
【0003】
このような外輪と内輪の間にライナーを介在させた球面滑り軸受の製造方法として、金属製外環の内周面に接着剤を塗布して樹脂製の繊維ベース織物を接着した後、該繊維ベース織物を加熱・圧着して前記金属製外環の内周面に圧着し、これを内輪外表面に被覆し、その内輪を鋳型内に配置し、金属製外環の外周面に溶融金属を鋳込むことによって外輪を形成すると同時に、金属製外環外周に溶融金属を充填して外輪に接合し、次に冷却硬化後、鋳型から取り出した成形品の外輪に半径方向内方に向かう外力を加えて外輪を内輪外表面側に押圧して展伸させ、金属製外環内周面に圧着された繊維ベース織物と内輪外表面との間に微少間隔を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
又、図9に示すように、予め内輪94及び外輪91を鋳込む等して製造し、外輪91の内周面92に予め合成樹脂製のライナー93を固着し(a)、外輪91及びライナー92内に内輪94を挿入し(b)、外輪91の内端部95を叩いて(c)、外輪91をかしめると共に、ライナー93を内輪94に密着させて、内輪94が外輪91から抜けないように成形(d)する方法も用いられている
【0005】
又、予め内輪及び外輪を鋳込む等して製造し、金型内に外輪の内周内に内輪が位置するように配置し、外輪と内輪間にライナーを構成する溶融樹脂を充填した後に、冷却して該樹脂を固化し、その後高周波加熱等により内輪、外輪及び樹脂を加熱して樹脂を再び溶融させて、内輪を叩いて、内輪と樹脂の接着を剥し、更に冷却して樹脂を再び固化させる方法も用いられている。
【0006】
【特許文献1】特開平5−18412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1記載の従来の製造方法では、ライナーとなる繊維ベース織物を加熱・圧着して金属製外環の内周面に圧着する工程、冷却硬化する工程、外輪に半径方向内方に向かう外力を加えて外輪を内輪外表面側に押圧して展伸させると共に、ライナーと内輪外表面との間に微少間隔を形成する工程を必要とし、その工程数が多く、製造工程が煩雑であり、製造コストも高くなるという欠点があった。
【0008】
又、図9に示すような従来の製造方法では、外輪にライナーを固着する工程、外輪に叩く等の圧力を加える工程が必要であり、その工程数が多く、製造工程が煩雑であり、製造コストも高くなるという欠点があった。
【0009】
又、三番目に示した従来の製造方法では、冷却後の加熱工程、叩いて内輪と樹脂の接着を剥す工程及び更なる冷却工程が必要であり、その工程数が多く、製造工程が煩雑であり、製造コストも高くなるという欠点があった。又、冷却して固化した樹脂を再び加熱して緩めて、内輪と樹脂の接着を剥すが、樹脂の種類によっては緩むものと緩まないものがあり、緩むものも緩み方が異なるので、樹脂の注入条件や、樹脂の種類によってその製造方法、製品の仕様が左右されてしまうという欠点があった。又、樹脂を加熱して緩めるので、樹脂の注入の際に高い圧力をかけることが出来ないので、樹脂の密度を高くすることが出来ず、ライナーとしての充分な滑り性を発揮させることができないといった欠点があった。
【0010】
そこで、本発明は従来技術の欠点を解消し、球面滑り軸受の製造において、その工程数を減少させ、製造を極めて容易にすること、又、製造コストを廉価にすることを目的とする。
【0011】
又、他の目的は、ライナーを構成する樹脂の注入の際に高い圧力をかけることが出来、樹脂の密度を高くして、ライナーが充分な滑り性を発揮可能な球面滑り軸受を提供することを目的とする。
【0012】
又、他の目的は、樹脂の注入条件や、樹脂の種類を問わず、同一の製造方法で製造可能なこと、性能が均一な球面滑り軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明は、内輪、外輪及び合成樹脂製のライナーを備えて構成される球面滑り軸受製造用の金型であって、可動式の上型と固定式の下型を備え、内輪及び外輪を収納する収納凹部を該下型と該上型との金型分割面に設け、下型に回転自在に軸支された回転軸を、該回転軸の先端部を該収納凹部に突出させて設け、該回転軸の先端部は、内輪の軸受孔に挿入されて、内輪を該回転軸に固定可能に構成されていることを特徴とする球面滑り軸受製造用金型である。
【0014】
又、上記金型において、前記回転軸の先端部は、先端方向に縮径すると共に、軸方向にスリットが切られて分割され、前記上型には、該スリットと嵌合或いは係合する挿入部が突出した楔が、前記上型の前記下型との金型分割面に設けた楔収納凹部に回転自在に設置され、該挿入部が前記回転軸のスリットに挿入されることにより、前記回転軸の先端部が外側へ拡径して、前記内輪を前記回転軸に固定可能に構成されていることを特徴とする球面滑り軸受製造用金型である。
【0015】
又、上記金型において、前記回転軸の先端部は、該先端部の軸芯を前記回転軸の回転軸芯からずらして設けたことを特徴とする球面滑り軸受製造用金型である。
【0016】
又、上記金型において、前記楔の挿入部は、該挿入部の軸芯が前記楔の回転軸芯と同一線上に位置するように設け、前記楔収納凹部は、楔との間に隙間が生じる形状としたことを特徴とする球面滑り軸受製造用金型である。
【0017】
又、上記金型において、前記下型の収納凹部及び軸孔の近傍には、磁石を設置することが好ましい。
【0018】
又、上記金型において、前記楔収納凹部の底部には、スライドプレートが設置されていることが好ましい。
【0019】
又、上記金型において、前記回転軸はモータと連結し、モータの回転により回転することを特徴とする球面滑り軸受製造用金型である。
【0020】
又、上記金型において、ゲートが内輪と外輪との隙間に開口していることを特徴とする球面滑り軸受製造用金型である。
【0021】
更に、内輪、外輪及び合成樹脂製のライナーを備えて構成される球面滑り軸受の製造方法であって、固定された外輪の内周内に内輪を設置する工程、該外輪と内輪の隙間に溶融した合成樹脂を注入する工程、該内輪を回転させることにより、ライナを構成する合成樹脂と該内輪の接着を防止又は解除する工程を備えることを特徴とする球面滑り軸受の製造方法である。
【0022】
又、上記方法において、前記内輪の回転は、球面滑り軸受製造用金型内で行うことを特徴とする球面滑り軸受の製造方法である。
【0023】
又、上記方法において、前記内輪の回転は、前記外輪の内周内を偏心して回転させることを特徴とする球面滑り軸受の製造方法である。
【0024】
又、上記方法において、前記内輪を回転させながら、前記外輪と前記内輪の隙間に溶融した合成樹脂を注入する工程を備えることを特徴とする球面滑り軸受の製造方法である。
【0025】
又、上記方法において、前記外輪と前記内輪の隙間への溶融した合成樹脂の注入完了後に前記内輪を回転させる工程を備えることを特徴とする球面滑り軸受の製造方法である。
【0026】
又、上記方法において、製品の冷却工程中も、前記内輪を回転させることを特徴とする球面滑り軸受の製造方法である。
【0027】
又、上記方法において、製品の冷却工程前のみ、前記内輪を回転させることを特徴とする球面滑り軸受の製造方法である。
【0028】
又、上記方法において、製品の冷却工程後のみ、前記内輪を回転させることを特徴とする球面滑り軸受の製造方法である。
【0029】
更に、上記製造方法を用いて製造したことを特徴とする球面滑り軸受である。
【発明の効果】
【0030】
以上のような本発明よれば、球面滑り軸受の製造において、その工程数を減少させ、製造を極めて容易にすること、又、製造コストを廉価にすることが可能となった。
【0031】
又、ライナーを構成する樹脂の注入の際に高い圧力をかけることが出来、樹脂の密度を高くして、ライナーが充分な滑り性を発揮可能な球面滑り軸受を提供することが可能となった。
【0032】
樹脂の注入条件や、樹脂の種類を問わず、同一の製造方法で製造可能なこと、性能が均一な球面滑り軸受を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下本発明の実施の形態を図に従って説明する。図1は、内輪、外輪及び合成樹脂製のライナーを備えて構成される球面滑り軸受製造用の樹脂注入用金型1の縦断面図であり、図2は横断面図である。金型1は分割式で、可動式の上型11と固定式の下型12、回転軸4を備え、上型11と下型12は夫々複数のプレート類、押し出しピン22等のピン及びブッシュ等を備え、プレート類はボルト21等で結合されて構成されている。尚、金型1はツーピースプレート金型でも、スリーピースプレート金型でもよい。
【0034】
下型12の上型11との金型分割面10には、球面滑り軸受3を構成する外輪6及び内輪7を収納する収納凹部13が設けられている。収納凹部13は下型12或いは上型11の一方にのみ凹部を設けて構成してもよく、下型12及び上型11の双方に凹部を設けて構成してもよい。
【0035】
又、下型12の収納凹部13及び軸孔14の近傍には、磁石100を設置することが好ましい。このような構成とすることで、収納凹部13に外輪6及び内輪7を設置したときに、外輪6及び内輪7が収納凹部13から脱落することを防止することが可能となっている。
【0036】
円柱状の回転軸4は下型12に水平方向に設けた軸孔14に挿入設置されると共に、先端部41を収納凹部13に突出させ、後端部及び中間部を下型12に設けた軸受51,52で支持して、下型12に回転軸芯を中心として回転自在に軸支されている。又、下型12の下部には、モータボックスに収納されたモータ55が設置され、ギア53,54を介して回転軸4と連結し、ギア53,54でモータ55の回転を変速させて回転軸4に伝達し、回転軸4を回転させる構成としている。
【0037】
回転軸4の先端部41は、内輪7の軸受孔71に挿入可能な径で、僅かに先端方向に縮径して形成され、収納凹部13の内輪7が設置される位置に突出し、内輪7の設置時に内輪7の軸受孔71に挿入される。先端部41には軸方向にスリット42が、十字に切られ、先端部41は4分割されている。尚、スリット42の形状は特に限定されず、先端部41が2以上に分割されていればよい。又、先端部41は、回転軸4の他の部分より細く形成してもよく、円錐状に限定されない。
【0038】
上型11の下型12との金型分割面10には、球面滑り軸受3を構成する内輪7の一部を収納する収納凹部15、合成樹脂を注入するためのランナ16と連通したゲート17、楔収納凹部18が設けられている。
【0039】
楔収納凹部18には、金型1が閉じている時に、回転軸4の先端部41のスリット42に挿入され、スリット42と嵌合或いは係合する挿入部48が突出した円柱状の楔47が回転自在に設置されている。挿入部48の先端はスリット42の形状に適合させて十字形等に形成すると共に、先端方向に細くなるように形成され、挿入部48が回転軸4のスリット42に挿入されることにより、回転軸4の先端部41が外側へ拡径する。この拡径により、回転軸4の先端部41が内輪7の内周面73に押し付けられて、内輪7を回転軸4に固定する。
【0040】
楔47は回転軸4の回転に伴って回転軸4と同軸で回転し、楔収納凹部18の底部には、スライドプレート49が設置され、楔47の挿入部48と反対方向の端面と当接して楔47の回転を容易としている。スライドプレート49は無給油スライドプレートとすることが好ましい。スライドプレート49に替えてベアリングを用いることも出来るが、ベアリングの場合、ベアリングの厚み及び楔47の長さ調節が容易ではなく、スライドプレート49を用いることで、スライドプレートの厚みを精密に規定しなくてもよいので、好ましい。尚、楔47が上型11から抜け落ちないように、楔47の挿入部48と反対方向の端部にはフランジを設けると共に、楔収納凹部18の下部には段部を設けて、係合させている。
【0041】
尚、回転軸4の先端部41は、その軸芯が回転軸4の回転軸芯と同一線上に位置するように設け、即ち、先端部41は回転軸4の回転軸芯から偏心させずに設け、内輪7が外輪6の内周内で偏心せずに回転するように構成してもよいが、回転軸4の先端部41は、該先端部41の軸芯を回転軸4の回転軸芯からずらして設け、即ち、先端部41は回転軸4の回転軸芯から偏心させて設け、内輪7の回転を、外輪6の内周内を偏心して回転させることが望ましい。このような構成とすることで、内輪7と合成樹脂101、ライナー67との接着をより効果的に防止することが出来る。
【0042】
又、回転軸4の先端部41の位置が上記のいずれの場合であっても、楔47の挿入部48は、該挿入部48の軸芯が楔47の回転軸芯と同一線上に位置するよう、即ち偏心させずに設ければよい。
【0043】
そして、先端部41の軸芯を回転軸4の回転軸芯からずらして、即ち偏心させて設けた場合には、楔収納凹部18は、楔47との間に隙間が生じる形状とし、回転軸4の回転に伴って、楔47が楔収納凹部18内を偏心して回転する構成とすることが好ましい。勿論、楔収納凹部18と楔47との間に隙間、遊びを設けずに形成し、楔47の挿入部48は、該挿入部48の軸芯を楔47の回転軸芯と偏心させて設けてもよいが、回転軸4の回転と同期させる必要があり、構造が複雑となる。
【0044】
ゲート17は、下型12に内輪7及び外輪6をセットした際に、内輪7と外輪6との隙間120に注入口が開口するように設けてある。
【0045】
尚、上記で説明した本発明に特有な構成以外は、公知の樹脂製形用の金型と同様の構成を採用することが出来るので、それらの部分の説明は割愛する。
【0046】
次に、図3から7を参照して、金型1を用いた球面滑り軸受3の製造手順について説明する。尚、外輪6及び内輪7は予め製造しておく。外輪6及び内輪7は鋼、鋼合金、チタン合金、ジュラルミン等のアルミ合金等の金属を用いて、ダイキャスト鋳造等の鋳造、或いは鍛造等により形成することが出来る。
【0047】
先ず、図3に示すように、上型11を稼動して金型1を開き、収納凹部13を露出させる。この状態では、収納凹部13には回転軸4の先端部41が突出している。次に、図4に示すように、収納凹部13に外輪6を嵌め込んで設置する。この状態では、外輪6の内周面61で画定された内輪設置部66内に回転軸4の先端部41が挿入されている。
【0048】
そして、図5に示すように、回転軸4の先端部41を内輪7の軸受孔71に挿入して、内輪7を収納凹部13内、且外輪6の内輪設置部66内に設置し、外輪6の内周内に設置する。この状態では、回転軸4の先端部41と内輪7の内周面73間には僅かな隙間が存在し、嵌合していない。しかし、外輪6及び内輪7は磁石100で下型12に固定されているので、金型1から脱落することがない。そして、上型11を移動させて、金型1を閉じていく。この際に楔47の挿入部48が、回転軸4の先端部41のスリット42に挿入されていき、回転軸4の先端部41を拡径させていく。
【0049】
図6に示すように、上型11と下型12の金型分割面10が接触して金型1が完全に閉じられた状態では、回転軸4の先端部41のスリット42に楔47の挿入部48が嵌合し、拡径した回転軸4の先端部41が内輪7の内周面73に押し付けられて、内輪7を回転軸4に固定する。この状態では、外輪6は下型12に固定され、内輪7は回転軸4に固定されている。又、外輪6と内輪7との間には隙間120が形成され、この隙間120は密閉されている。ここで、モータ55を作動させて、回転軸4を回転させるが、この際回転軸4の回転に伴って内輪7及び楔47も回転する。一方、外輪6は回転せず、静止している。そして、回転軸4及び内輪7を回転させながら、外輪6と内輪7の隙間120に溶融した合成樹脂101を注入していく。このように、内輪7の回転は、球面滑り軸受製造用金型1内で行われる。
【0050】
尚、使用する合成樹脂101は特に限定されず、テフロン(登録商標)等のポリエチレンテレフタレート、ナイロン(登録商標)、PEEK、ポリイミド等を所望のもの用いることが出来るが、摩擦係数が低く、耐摩耗性及び耐熱性に優れ、耐荷重性が高く、熱伝導性がよく、熱膨張率が小さいが好ましい。ガラス繊維やモリブデン等の添加剤を添加することとしてもよい。
【0051】
合成樹脂101の注入時に合成樹脂101にかける圧力は、外輪6と内輪7の隙間120に充填可能であれば限定されず、高圧とすることが可能で、合成樹脂の密度を高くする等、圧力の掛け方により密度を調整することが出来、ライナーの滑り性を調整することが可能となっている。
【0052】
図7に示すように、外輪6と内輪7の隙間120へ溶融した合成樹脂101の充填が完了した時点で、注入を止めるが、回転軸4及び内輪7の回転は止めず、金型1内での製品、球面滑り軸受3の冷却時にも回転を止めない。合成樹脂101が硬化した冷却完了後に、モータ55を止めて、回転軸4及び内輪7の回転を止め、金型1を開いて、押し出しピン22で押し出して、下型12から図8に示すような製品、球面滑り軸受3を取り出す。この状態では、外輪6と内輪7の隙間120に充填された合成樹脂101は固化してライナー67を形成し、ライナー67は外輪6の内周面61と接着し、内輪7とは接着してない。このようにして球面滑り軸受3の製造を完了する。
【0053】
又、外輪6と内輪7の隙間に溶融した合成樹脂101を注入していく際には、モータ55を作動させずに、従って、回転軸4、内輪7及び楔47も回転させず、合成樹脂101の外輪6と内輪7の隙間120への注入完了後にモータ55を作動させて、回転軸4、内輪7及び楔47を回転させ、冷却工程の前のみ、又は冷却工程の間内輪7を回転させておく手順も採用することが出来る。又、合成樹脂101がある程度硬化した冷却工程の後のみ、内輪7を回転させ手順も採用出来る。このように、金型1内の様々な工程において、任意の1以上の工程において、回転軸4を回転させる工程を組み合われることが出来る。
【0054】
尚、金型1から球面滑り軸受3を取り出した後に、別工程として、更に内輪7を回転させることとしてもよい。又、上述のような金型1を用いずに、外輪6と内輪7の隙間120へ合成樹脂101を充填する機能のみを有する金型を用いて、外輪6と内輪7の隙間120へ合成樹脂101を充填し、該金型から内輪とライナーが接着した製品、球面滑り軸受3を取り出し、他の工程として、他の装置を用いて外輪を固定し、内輪を回転させて、内輪とライナの接着を解除する方法も採用することが出来る。
【0055】
尚、内輪7の回転は、外輪6の内周内を偏心せずに回転させてもよいが、外輪6の内周内を偏心させて回転させることにより、内輪7と合成樹脂101、ライナー67との接着をより効果的に防止又は解除することが出来る。
【0056】
このように、本発明では、冷却後の加熱工程、叩いて内輪と樹脂の接着を剥す工程及び更なる冷却工程等従来必要であった工程が全く不要であり、その製造工程を大幅に減少することが出来、容易に製造可能で、製造コストも下げることが可能となっている。
【0057】
又、冷却して固化した樹脂を再び加熱して緩めることを行わないので、樹脂の注入条件や、樹脂の種類を問わず、同一の製造方法で製造可能なこと、性能が均一な球面滑り軸受を提供することが可能となっている。又、樹脂の注入の際に高い圧力をかけることが出来、樹脂の密度を高くすることが出来、ライナーとしての充分な滑り性を発揮させることが可能となっている。
【0058】
尚、上記説明及び図面では、球面滑り軸受3として、外輪6にボルト65が一体に形成された物を用いているが、本発明でいう球面滑り軸受は、この形状に限定されず、外輪6が円筒状の球面滑り軸受単体、ロッドエンド型等各種球面滑り軸受を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明金型一実施例縦断面図
【図2】本発明金型一実施例横断面図
【図3】本発明球面滑り軸受の製造工程を示す一実施例断面図
【図4】本発明球面滑り軸受の製造工程を示す一実施例断面図
【図5】本発明球面滑り軸受の製造工程を示す一実施例断面図
【図6】本発明球面滑り軸受の製造工程を示す一実施例断面図
【図7】本発明球面滑り軸受の製造工程を示す一実施例断面図
【図8】本発明球面滑り軸受一実施例斜視図
【図9】従来の球面滑り軸受の製造工程を示す図
【符号の説明】
【0060】
1 金型
10 金型分割面
11 上型
12 下型
13 収納凹部
14 軸孔
15 収納凹部
17 ゲート
18 楔収納凹部
100 磁石
101 合成樹脂
120 内輪と外輪との隙間
3 球面滑り軸受
4 回転軸
41 先端部
42 スリット
47 楔
48 挿入部
49 スライドプレート
53 ギア
54 ギア
55 モータ
6 外輪
61 内周面
66 内輪設置部
67 ライナー
7 内輪
71 軸受孔
73 内周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪、外輪及び合成樹脂製のライナーを備えて構成される球面滑り軸受製造用の金型であって、
可動式の上型と固定式の下型を備え、
内輪及び外輪を収納する収納凹部を該下型と該上型との金型分割面に設け、
下型に回転自在に軸支された回転軸を、該回転軸の先端部を該収納凹部に突出させて設け、
該回転軸の先端部は、内輪の軸受孔に挿入されて、内輪を該回転軸に固定可能に構成されていることを特徴とする球面滑り軸受製造用金型。
【請求項2】
前記回転軸の先端部は、先端方向に縮径すると共に、軸方向にスリットが切られて分割され、
前記上型には、該スリットと嵌合或いは係合する挿入部が突出した楔が、前記上型の前記下型との金型分割面に設けた楔収納凹部に回転自在に設置され、
該挿入部が前記回転軸のスリットに挿入されることにより、前記回転軸の先端部が外側へ拡径して、前記内輪を前記回転軸に固定可能に構成されていることを特徴とする請求項1記載の球面滑り軸受製造用金型。
【請求項3】
前記回転軸の先端部は、該先端部の軸芯を前記回転軸の回転軸芯からずらして設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の球面滑り軸受製造用金型。
【請求項4】
前記楔の挿入部は、該挿入部の軸芯が前記楔の回転軸芯と同一線上に位置するように設け、前記楔収納凹部は、楔との間に隙間が生じる形状としたことを特徴とする請求項3記載の球面滑り軸受製造用金型。
【請求項5】
前記下型の収納凹部及び軸孔の近傍には、磁石を設置したことを特徴とする請求項1から4のうち何れか1項に記載の球面滑り軸受製造用金型。
【請求項6】
前記楔収納凹部の底部には、スライドプレートが設置されていることを特徴とする請求項2から5のうち何れか1項に記載の球面滑り軸受製造用金型。
【請求項7】
前記回転軸はモータと連結し、モータの回転により回転することを特徴とする請求項1から6のうち何れか1項に記載の球面滑り軸受製造用金型。
【請求項8】
ゲートが内輪と外輪との隙間に開口していることを特徴とする請求項1から7のうち何れか1項に記載の球面滑り軸受製造用金型。
【請求項9】
内輪、外輪及び合成樹脂製のライナーを備えて構成される球面滑り軸受の製造方法であって、
固定された外輪の内周内に内輪を設置する工程、
該外輪と内輪の隙間に溶融した合成樹脂を注入する工程、
該内輪を回転させることにより、ライナーを構成する合成樹脂と該内輪の接着を防止又は解除する工程を備えることを特徴とする球面滑り軸受の製造方法。
【請求項10】
前記内輪の回転は、球面滑り軸受製造用金型内で行うことを特徴とする請求項9記載の球面滑り軸受の製造方法。
【請求項11】
前記内輪の回転は、前記外輪の内周内を偏心して回転させることを特徴とする請求項9又は10記載の球面滑り軸受の製造方法。
【請求項12】
前記内輪を回転させながら、前記外輪と前記内輪の隙間に溶融した合成樹脂を注入する工程を備えることを特徴とする請求項9から11のうち何れか1項に記載の球面滑り軸受の製造方法。
【請求項13】
前記外輪と前記内輪の隙間への溶融した合成樹脂の注入完了後に前記内輪を回転させる工程を備えることを特徴とする請求項9から12のうち何れか1項に記載の球面滑り軸受の製造方法。
【請求項14】
製品の冷却工程中も、前記内輪を回転させることを特徴とする請求項9から13のうち何れか1項に記載の球面滑り軸受の製造方法。
【請求項15】
製品の冷却工程前のみ、前記内輪を回転させることを特徴とする請求項9から13のうち何れか1項に記載の球面滑り軸受の製造方法。
【請求項16】
製品の冷却工程後のみ、前記内輪を回転させることを特徴とする請求項9から11及び13のうち何れか1項に記載の球面滑り軸受の製造方法。
【請求項17】
請求項9から16のうち何れか1項に記載の製造方法を用いて製造したことを特徴とする球面滑り軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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