説明

理美容椅子等の昇降装置

【課題】 従来における椅子の昇降を操作するためには2つのペダルを選択して椅子の上昇と下降を制御するものであるため、不慣れな理美容師が被施術者に対して「下降させます」と言って上昇用のペダルを踏み込んでしまって被施術者を驚かせたりすることがあり、また、理美容師も操作性に複雑さを感じるといった問題があった。
【解決手段】 初期位置にある1つのペダル5を所望位置まで踏み込むことでマイクロスイッチ等の検出手段7が動作してモータポンプ2を動作させ油をシリンダ内に供給し椅子等の昇降部材を上昇させ、さらに、前記ペダルを前記所望位置よりも踏み込むことで前記シリンダ内の油を排油する操作杆を操作して前記昇降部材を下降させるようにした理美容椅子等の昇降装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、理美容椅子、歯科用椅子等の昇降装置であって、1つのペダルによって昇降部材である椅子の昇降および回転のロック・アンロックが行えるようにした理美容椅子等の昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来における理美容椅子等の椅子を昇降させる手段としては、例えば、特開2000−14475公報に開示されているように、椅子の背面側に設けられた2つのペダルの1つを踏み込むことで椅子を上昇させ、また、他のペダルを踏み込むことで上昇している椅子を下降させるものであった。
【特許文献1】特開2000−14475公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記した椅子の昇降を操作するためには2つのペダルを選択して椅子の上昇と下降を制御するものであるため、不慣れな理美容師が被施術者に対して「下降させます」と言って上昇用のペダルを踏み込んでしまって被施術者を驚かせたりすることがあり、また、理美容師も操作性に複雑さを感じるといった問題があった。
【0004】
また、2つのペダルを椅子の背面側に設ける場合には、背面側の中心線から左右にある程度離れて設置するために、椅子の横方向から足先で操作する時に一方のペダルは近いので操作が行い易いが、他方のペダルまでの距離が長くなるため操作が悪いといった問題もあった。
【0005】
本発明は前記した問題点を解決せんとするもので、その目的とするところは、1つのペダルを軽く踏み込むことで椅子を上昇させ、深く踏み込むことで椅子を下降させ、また、ペダルを蹴り上げることで椅子の回転を阻止するといった簡単な操作によって椅子の昇降と回転のロック・アンロックが行えるので、理美容師の作業中における操作が簡単で間違えることが少なく、かつ、椅子の回転ロックも1つのペダルで行うことができる理美容椅子等の昇降装置を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の理美容椅子等の昇降装置は前記した目的を達成せんとするもので、請求項1の手段は、初期位置にある1つのペダルを所望位置まで踏み込むことでマイクロスイッチ等の検出手段が動作してモータポンプを動作させ油をシリンダ内に供給し椅子等の昇降部材を上昇させ、さらに、前記ペダルを前記所望位置よりも踏み込むことで前記シリンダ内の油を排油する操作杆を操作して前記昇降部材を下降させるようにしたものである。
【0007】
請求項2の手段は、初期位置にある1つのペダルを所望位置まで踏み込むことでマイクロスイッチ等の検出手段が動作してモータポンプを動作させ油をシリンダ内に供給し椅子等の昇降部材を上昇させ、さらに、前記ペダルを前記所望位置よりも踏み込むことで前記シリンダ内の油を排油する操作杆を操作して前記昇降部材を下降させ、また、前記初期位置にあるペダルを蹴上げることで前記シリンダのラムの回転をロックするようにしたものである。
【0008】
請求項3の手段は、前記した請求項1または2において、前記ペダルの踏み込み時に前記検出手段が操作されると所定の遅延時間の後に前記モータポンプを駆動するようにしてシリンダのラムの下降操作時にラムが上昇しないようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項4の手段は、前記した請求項1または2において、前記モータポンプと前記シリンダとの間にアキュムレータを接続し、ペダルの踏み込み時に前記検出手段が動作しても前記アキュムレータに油が充填された後に前記シリンダに油が供給されることでシリンダの下降時にラムが上昇しないようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項5の手段は、前記した請求項1または2において、前記モータポンプと前記シリンダとの間にアキュムレータを接続し、ペダルの踏み込み時に前記検出手段が動作しても前記アキュムレータに油が充填された後に前記シリンダに油が供給されることでシリンダの下降時にラムが上昇しないようにし、かつ、ラムの下降を停止しペダルが戻る時に検出手段が動作しないようにしたことを特徴とする。
【0011】
請求項6の手段は、前記した請求項1乃至5の何れかにおいて、前記ペダルは平面視でコ字状に形成され踏み込み部の幅が長く形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は前記したように、1つのペダルを初期位置から所望位置まで踏み込むことで椅子等の昇降部材が上昇し、さらに踏み込むことで昇降部材が下降するようにしたので、操作ミスを起こすことがなく、かつ、操作性に優れると共に構造が簡単でコストの低減を図ることができる。
【0013】
また、初期位置にあるペダルを蹴上げることでシリンダのラムの回転をロックして昇降部材の回転を阻止することができ、さらに、昇降部材を下降させる際に前記所望位置を通過しても遅延回路によって昇降部材を上昇させることなく下降させることができ、動作の安定性を図ることができ、また、ペダルを横長としたことにより昇降部材の横方向からの操作も行え操作性に優れている等の効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、1つのペダルを所望位置まで踏み込むことで昇降部材を上昇させ、また、所定位置よりもさらに踏み込むことで昇降部材を下降させ、さらに、ペダルを蹴上げることで昇降部材の回転をロックする。
【実施例1】
【0015】
以下、本発明に係る理美容椅子等の昇降装置の一実施例を理美容椅子の例として図面と共に説明する。
1は台盤、2は該台盤1上に固定された油タンクを有するモータポンプ、3は同じく台盤1上に取付けられ前記モータポンプ2と接続された油圧シリンダが内蔵されたハウジングにして、該ハウジング3の上面からは前記油圧シリンダのラム3aの上端が突出され、このラム3aの上端には椅子の座部(図示せず)が取付けられている。また、前記ハウジング3内には押下することでシリンダ内に滞留している油を前記モータポンプの油タンクに戻すための操作杆3bが内蔵され、この操作杆3bの上端がハウジング3の上面より突出している。
【0016】
4は前記ハウジング3の上面に固定された支持ブロックにして、図1において左右方向に延長した回転軸4aが取付けられている。そして、この回転軸4aにはコの字状に形成されたペダル5の両端が取付けられると共に前記操作杆3bを押下するためのコの字状の押下リンク6が取付けられ、さらに、前記回転軸4aには後述するマイクロスイッチ(以下、単にスイッチという)7をオンするための操作板8が取付けられている。
【0017】
9は前記基盤1側から起立した3本のパイプ状支柱9aによって支持固定された支持板にして、前記支柱パイプ9aの1つには上下動可能なピン(図示せず)が挿入され、かつ、該ピンの外周にはスプリング9bが外装され、該スプリング9bの先端は前記した操作板8の下面に当接している。従って、このスプリング9bのバネ力によって操作板8は図1,2に示す位置、すなわち、操作板8がスイッチ7の操作片7aを操作しない位置まで押し上げられている。また、この状態においては押下リンク6は操作杆3bから離れた上方に位置している。以下、この状態(図1,2に示す位置)を初期位置という。
【0018】
前記スイッチ7は前記した支持板9から起立した起立板9cに取付けられており、前記初期位置においてペダル5を踏み込み回転軸4aを回転させる途中において操作板8がスイッチ7の操作片7aを押してオン状態とし、さらに、ペダル5を踏み込むと操作板8は操作片7aから外れてスイッチ7をオフとするような状態に取付けられている。
【0019】
10は前記支持ブロック4の上方に取付けられたロック手段にして、前記油圧シリンダのラム3aの外周に位置して取付けられ、ネジを締め付けることでラム3aの回転を阻止する構造となっている。すなわち、回動することでネジを締め付けあるいは緩める作用をする第1リンク10aと、該第1リンク10aと一端が軸支され他端が前記操作板8に取付けられた第2リンク10bとより構成されており、ペダル5を踏み込み操作板8が反時計方向に回動されると第2リンク10bを介して第1リンク10aが時計方向に回動されることでネジを締め付けラム3aを締め付けロック状態とし、また、ペダル5を蹴り上げて操作板8を時計方向に回動すると第1リンク10aが反時計方向に回動されてネジを緩めてラム3aをアンロック状態とする。
【0020】
11は前記支持板9より垂下した状態で取付けられたモータポンプ2を駆動制御するための制御回路にして、後に詳述する遅延回路が含まれている。
【0021】
次に、前記した構成に基づいて動作を説明する。
図1、図2で示す初期位置における椅子を上昇させる動作について説明するに、ペダル5をスプリング9bのバネ力に抗して踏み込むと、操作板8が反時計方向に回動してスイッチ7の操作片7aを押してスイッチ7がオンの状態になる。なお、この位置においてクリック感を与えるような構造とすることが望ましい。
【0022】
このスイッチ7のオンによりモータポンプ2が駆動して油をシリンダ内に供給するので、ラム3aは上昇を開始する。この時、ロック手段10によるラム3aのロックは前記したように解除された状態となっている(図3参照)。そして、希望する高さ位置(椅子の高さ位置)までラム3aを上昇させてペダル5から足を離すと、スプリング9bのバネ力によって操作板8が時計方向に回動されるので、ペダル5は初期位置に戻って停止する。
【0023】
次に、上昇状態の椅子を下降させる動作について説明するに、ペダル5を前記した椅子を上昇させる踏み込み量より多く踏み込むと押下リンク6が反時計方向に回動して操作杆3bを押下する。該操作杆3bが押し下げられると公知のように油圧シリンダ内の油が油タンク内に戻されるので、ラム3aは下降を開始し椅子が下降する(図4参照)。そして、希望する高さ位置、あるいは最下降位置までラム3aを下降させた位置においてペダル5から足を離すと、スプリング9bのバネ力によって操作板8が時計方向に回動されるので、ペダル5は初期位置に戻って停止する。
【0024】
次に、椅子の回転をロックする動作について説明するに、ペダル5を被施術者が爪先で蹴上げるようにして該ペダル5を押し上げると、ペダル5が反時計方向に回動するので、第2リング10bを介して第1リンク10aの先端が時計方向に回動され、その結果、ネジが締め付けられラム3aの外周を締め付けてロック状態とする。これによりラム3aの回転が阻止されるので、椅子の回転が阻止されて各種の施術が行えるようになる。また、ペダル5を踏み込むと前記した動作とは逆の動作が行われネジが緩められるので椅子を回転することが可能となる。
【0025】
前記した動作説明において、ラム3aを下降させ椅子を下降させるためにペダル5を大きく踏み込むと、この踏み込み時にスイッチ7を一端オン状態とし、その後にスイッチ7はオフ状態となるために、前記オン状態(踏み込み速度によってオン時間は異なるが、一般的に被施術者がペダル5を踏み込む速度は0.1〜0.5秒)においてモータポンプ2が動作して油がシリンダ内に供給されラム3aが僅かではあるが上昇して着座している被施術者に対してショックを与える可能性がある。
なお、前記したメカ的なスイッチに変えて電気的なスイッチ、例えば、光センサや磁気センサ等を使用してもよい。
【0026】
そこで、図6に示すようにスイッチ7とモータポンプ2との間に、スイッチ7がオンしてからモータポンプ2を駆動するための時間を遅らせるための遅延回路11を接続することで解決することが可能となる。すなわち、スイッチ7がオンしてから前記遅延時間の間にはモータポンプ2への通電は行われない。そして、遅延時間が経過した時には押下リンク6はスイッチ操作位置を外れているので、モータポンプ2への通電は行われず、従って、ラム3aの上昇は行われない。
【0027】
そして、ラム3aの下降を停止するためにペダル5から足を離すと、該ペダル5の戻り時に押下リンク6が再びスイッチ7をオン状態とするが、前記した遅延回路11によって前記遅延時間内に於ける押下リンク6によるスイッチ7のオンによってモータポンプ2の通電は行われず、従って、停止時にもラム3aが上昇することはない。
【0028】
また、ラム3aを下降させる時にスイッチ7をオンしてもラム3aを上昇させないようにするための他の例としては図7に示すものが考えられる。すなわち、モータポンプ2とシリンダとの間にアキュムレータ12とオリフィス13とを直列的に接続することで、スイッチ7がオン状態となってモータポンプ2が動作しても、該モータポンプ2から供給される油は一端アキュムレータ12に貯留されるので、短時間のモータポンプ2の駆動ではシリンダ内に油が供給されることはなく、従って、ラム3aが上昇することはない。
【0029】
ところで、前記した動作においてラム3aの下降を停止するためにペダル5から足を離すと押下リンク7によって再びスイッチ7がオン状態となると、前記アキュムレータ11内の圧力が上昇したままとなっているので、スイッチ7がオン状態となることでラム3aは上昇する。そこで、スイッチ7が押下リンク6の上方からの移動ではオンするが、下方からの移動ではオン状態としない一方向操作手段をスイッチ7の操作片7aに取付ける。
【0030】
すなわち、図8に示すように操作片7aに起立片7bを取付け、該起立片7bに回動片7cを回動自在に取付け、該回動片7cにローラ7dを取付ける。そして、回動片7cの起立片7bとの軸支部分にストッパ片7eを設けて回動片7cを上方からの押下リンク6の移動には操作片7aを変位させてスイッチをオン状態とするが、下方からの移動には回動片7cは起立片7bに対して上方に回動してスイッチはオン状態とならないように構成されている。
【0031】
このように構成することで、ラム3aの下降を停止するためにペダル5から足を離してペダル5が回動し押圧リンク6が下方から回動片7cを操作しても、該回動片7cによってスイッチがオン状態とならないので、モータポンプ2への通電が行われず、従って、ラム3aが上昇すくことなく停止することになる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の理美容椅子等の昇降装置の初期状態を示す斜視図である。
【図2】同上の側面図である。
【図3】ラムを上昇している状態の側面図である。
【図4】ラムを下降させている状態の側面図である。
【図5】ラムを回転可能としているアンロック状態の側面図である。
【図6】ラムの下降時において上昇するのを阻止するための回路図である。
【図7】同上の油圧によって上昇するのを阻止するための油圧回路である。
【図8】ペダルの戻り時にスイッチをオンしないようにしたスイッチの動作説明図図であり、(a)はペダルを踏み込んだ時の側面図、(b)はペダルの戻り時の側面図である。
【符号の説明】
【0033】
2 モータポンプ
3a ラム
12 アキュムレータ
5 ペダル
7 検出手段(スイッチ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期位置にある1つのペダルを所望位置まで踏み込むことでマイクロスイッチ等の検出手段が動作してモータポンプを動作させ油をシリンダ内に供給し椅子等の昇降部材を上昇させ、さらに、前記ペダルを前記所望位置よりも踏み込むことで前記シリンダ内の油を排油する操作杆を操作して前記昇降部材を下降させるようにしたことを特徴とする理美容椅子等の昇降装置。
【請求項2】
初期位置にある1つのペダルを所望位置まで踏み込むことでマイクロスイッチ等の検出手段が動作してモータポンプを動作させ油をシリンダ内に供給し椅子等の昇降部材を上昇させ、さらに、前記ペダルを前記所望位置よりも踏み込むことで前記シリンダ内の油を排油する操作杆を操作して前記昇降部材を下降させ、また、前記初期位置にあるペダルを蹴上げることで前記シリンダのラムの回転をロックするようにしたことを特徴とする理美容椅子等の昇降装置。
【請求項3】
前記ペダルの踏み込み時に前記検出手段が操作されると所定の遅延時間の後に前記モータポンプを駆動するようにしてシリンダのラムの下降操作時にラムが上昇しないようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の理美容椅子等の昇降装置。
【請求項4】
前記モータポンプと前記シリンダとの間にアキュムレータを接続し、ペダルの踏み込み時に前記検出手段が動作しても前記アキュムレータに油が充填された後に前記シリンダに油が供給されることでシリンダの下降時にラムが上昇しないようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の理美容椅子等の昇降装置。
【請求項5】
前記モータポンプと前記シリンダとの間にアキュムレータを接続し、ペダルの踏み込み時に前記検出手段が動作しても前記アキュムレータに油が充填された後に前記シリンダに油が供給されることでシリンダの下降時にラムが上昇しないようにし、かつ、ラムの下降を停止しペダルが戻る時に検出手段が動作しないようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の理美容椅子等の昇降装置。
【請求項6】
前記ペダルは平面視でコ字状に形成され踏み込み部の幅が長く形成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の理美容椅子等の昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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