説明

環境汚染物質分析キット

【課題】環境汚染を調査するために処理しなければならない大量検体の迅速な測定等が可能であり、不都合を伴わずに生物学的影響評価が可能な環境汚染物質測定用形質転換体並びにそれを用いた環境汚染物質の検出方法、定量分析方法を提供する。
【解決手段】環境汚染物質に対するレセプターを恒常的に産生又は導入し、環境汚染物質及びレセプターを含む複合体の転写制御領域への結合を介して、レポータータンパク質を産生する環境汚染物質測定用形質転換体キットを提供する。上記形質転換体キットを用い、レポータータンパク質の発現・発現量より環境汚染物質を定性・定量分析を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗原 抗体反応・レポータージーンアッセイ法を応用した環境汚染物質分析キットに関する。
【背景技術】
【0002】
環境分析を行う場合、ガスクロマトグラフィー等の分析機器が必要となる。したがって、外部の環境分析施設等への委託が必要となり、簡単な操作で頻繁に環境分析を行うことが困難でなる。また、外部委託を行う場合、費用・時間の面で大きな負担が発生する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以上に述べた従来の環境汚染物質分析法の問題点は、環境分析を行う場合費用・時間を必要とすること。また分析機器を使用することで分析の容易性を低下させているということである。以前までは環境分析施設といった特定の施設でのみでしか環境分析を行うことが出来ず、またガスクロマトグラフィー等の分析機器を用いることで時間・費用の面で大きな負担が発生し、容易にまた頻繁に環境分析を行うことが困難であった。
本発明では、この様な従来のシステムが有していた問題を解決しようとするものであり、時間的・費用的な負担を軽減し容易な操作のもとに得る測定方法で環境分析を行うことを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
汚染物質と受容体(レセプター)の抗原・抗体反応とレポータージーンアッセイ法を応用したもので、土壌中・空気中に含まれる環境汚染物質を汚染物質に対し特異的に結合する受容体(レセプター)遺伝子・レポーター遺伝子を動物細胞中に導入した形質転換体から蛍光タンパク質(レポータータンパク質)を発現させ、その蛍光の有無から定性分析を容易に行うことでき、発現したレポータータンパク質量より濃度測定を行うことが可能な環境汚染物質分析キット。形質転換体は環境汚染物質受容体を恒常的に産生又は導入し、環境汚染物質・環境汚染物質受容体複合体の転写制御領域への結合を介して、GFPを産生することを特徴とする。
【0005】
上記の課題解決手段による作用は次の通りである。すなわちレポータータンパク(GFP;Green Florence protein)の発現の有無から定性分析、蛍光の発光強度から定量分析を行うことが可能なため、分析機器の必要性が無くなり、時間的・費用的負担も充分に軽減することができる。また、GFPはルシフェラーゼのような他の蛍光タンパク質とは異なりGFP単独で蛍光を放つことができ発光時間も長時間のため分析結果を評価しやすい。したがって、環境分析を容易にまた頻繁に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0006】
上述したように本発明の環境汚染物質分析キットは、容易な分析操作で分析を行うことができる上、精度の高い環境汚染物質分析を行うことが可能である。
また分析を行う際、時間的・コスト的負担を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態として一実施例を図1〜図2に基づいて説明する。本発明において図1は抗原抗体反応・レポータージーンアッセイ法を応用した環境分析機構を示す。図1から明らかなように、遺伝子工学の技術を用いることで、汚染物質と結合する受容体(レセプター)や汚染物質・受容体の結合体を認識し蛍光物質であるGFP(;Green Florence Protein)を合成する遺伝子の動物細胞中への導入が可能となり、容易にレポータージーンアッセイ法で環境評価、特に定性・定量を行うことが可能である。
【0008】
また本発明において図2は環境汚染物質分析キットの形状を示すものである。環境汚染物質分析キットの形状は、環境汚染物質の定性分析を行うため数種類の受容体(レセプター)を個別に保存することが可能な形態を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】抗原抗体反応・レポータージーンアッセイ法を応用した環境分析機構を示す図である。Step1…動物細胞内の汚染物質受容体(レセプター)が環境中に存在する汚染物質と結合することで複合体を形成する。Step2…複合体が複合体認識配列と結合し蛍光物質合成遺伝子を活性化させることで、発光・蛍光物質(GFP;Green Florence Protein)が合成される。Step3…発光・蛍光物質の発光強度を測定することで環境汚染物質の定性・定量分析することが可能。
【0010】
【図2】環境汚染物質分析キットの形状を示す図である。各ウェルに、環境汚染物質に対し特異的に結合する各受容体を個別に準備することによって定性分析を行うことが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染物質と受容体(レセプター)の抗原・抗体反応とレポータージーンアッセイ法を応用したもので、土壌中・空気中に含まれる環境汚染物質を汚染物質に対し特異的に結合する受容体(レセプター)遺伝子・レポーター遺伝子を動物細胞中に導入した形質転換体から蛍光タンパク質(レポータータンパク質)を発現させ、その蛍光の有無から定性分析を行い発現したレポータータンパク質量より濃度測定を行うことが可能な環境汚染物質分析キット。
【請求項2】
形質転換体は環境汚染物質受容体を恒常的に産生又は導入し、環境汚染物質・環境汚染物質受容体複合体の転写制御領域への結合を介して、GFPを産生することを特徴とする請求項1記載の環境汚染物質分析キット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−191127(P2008−191127A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−28892(P2007−28892)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(307005771)
【Fターム(参考)】