説明

環境監視システム、環境監視方法及び環境監視プログラム

【課題】
開示の環境監視システムは、計測機器及び計測結果の点検作業において、担当者の技能によらず人為的過誤の発生を低下させると共に、該点検作業を省力化することができる。
【解決手段】
開示の環境監視システムは、計測機器と、通信ネットワークを介して計測機器と接続されるサーバ装置と、を含む環境監視システムであって、計測機器は、計測データと機器状態パラメータとをサーバ装置に送信する送信手段を備え、サーバ装置は、計測データと機器状態パラメータとを受信する受信手段と、計測データが正常であるか否かを判定する計測データ判定手段と、機器状態パラメータに基づいて計測機器の稼働状態が正常であるか否かを判定する機器状態判定手段と、計測データ判定手段又は機器状態判定手段により正常ではないと判定された場合、所定の異常発生報知動作を行う異常発生報知手段と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
環境監視を行う機器の管理を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気象情報や公害情報を分析・調査するため、環境情報を取得する計測機器(測定局)を各地に設置し、当該計測機器が各地で計測した環境情報を一箇所に収集することが行われている。そして、収集された計測データは、リアルタイムで公的機関のホームページなどに公開され、又は統計的な処理を施された後、分析・調査が行われる。
【0003】
ここで、上記計測データは、計測機器により規定の条件下で計測されていることが求められており、計測機器が規定の条件外において計測した計測データは、信頼性が担保されないデータとなる。したがって、計測データの信頼性が担保されるためには、計測機器が環境情報を計測する際、どのような条件下で計測を行ったかを示す機器状態パラメータを点検する必要がある。
【0004】
また、上記計測データには一定の頻度でエラー値が含まれることが通常であり、計測データの信頼性が担保されるためには、所定の基準を適用して当該エラー値を排除する必要がある。
現在、上記のような機器状態パラメータ及び計測データの点検は人手により行われ、場合によっては、オンサイトでの点検が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−230200号公報
【特許文献2】特開2004−108857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような状況では、計測機器及び計測結果の点検に人為的過誤(ヒューマンエラー)が含まれる可能性があるという問題点がある。一方、人為的過誤に至らないまでも、計測機器及び計測結果の点検において、監視担当者の技能の高低が点検結果の巧拙に直結するという問題点がある。
【0007】
また、多数の計測機器が各地に点在していることと、計測機器のオンサイトでの点検には人手が必要になることとを考慮すると、計測機器の点検には大きなコスト(人件費)が必要になるという問題点が有る。
【0008】
そこで本発明では、上記問題点に鑑み、計測機器及び計測結果の点検作業において、担当者の技能によらず人為的過誤の発生を低下させると共に、該点検作業を省力化する環境監視システム、環境監視方法及び環境監視プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示の環境監視システムは、計測機器と、通信ネットワークを介して該計測機器と接続されるサーバ装置と、を含む環境監視システムであって、前記計測機器は、環境を調査するための計測結果である計測データと、該計測データを計測する際の前記計測機器の状態を示す機器状態パラメータと、を前記サーバ装置に送信する送信手段を備え、前記サーバ装置は、前記計測データと前記機器状態パラメータとを受信する受信手段と、前記計測データに基づいて、該計測データが正常であるか否かを判定する計測データ判定手段と、前記機器状態パラメータに基づいて、前記計測機器の状態が正常であるか否かを判定する機器状態判定手段と、前記計測データ判定手段により正常ではないと判定された場合、又は、前記機器状態判定手段により正常ではないと判定された場合、所定の異常発生報知動作を行う異常発生報知手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、開示の環境監視システムの一形態において、前記サーバ装置は、前記計測データ判定手段により正常ではないと判定された場合、又は、前記機器状態判定手段により正常ではないと判定された場合、前記計測機器に対し校正指示を送信する遠隔操作手段を備え、前記計測機器は、前記遠隔操作手段により送信される前記校正指示に従い、前記計測機器の校正を行う遠隔被操作手段を備えることを特徴とする。
【0011】
また、開示の環境監視システムの一形態において、前記遠隔操作手段は、前記計測機器の動作を規定する動作規定パラメータを送信し、前記遠隔被操作手段は、前記遠隔操作手段により送信される前記動作規定パラメータに基づき、前記計測機器が保持する動作規制パラメータを更新することを特徴とする。
【0012】
また、開示の環境監視システムの一形態において、前記遠隔操作手段は、前記計測機器の初期化指示を送信し、前記遠隔被操作手段は、前記遠隔操作手段により送信される前記初期化指示に基づき、前記計測機器の初期化動作を行うことを特徴とする。
【0013】
また、開示の環境監視システムの一形態において、当該環境監視システムの監視担当者が使用し、通信ネットワークを介して前記サーバ装置と接続される端末を含み、前記異常発生報知手段は、前記端末に、前記計測機器において異常事態が発生した旨を報知することを特徴とする。
【0014】
また、開示の環境監視システムの一形態において、前記異常発生報知手段は、前記サーバ装置が備える出力装置を用いて、前記計測機器において異常事態が発生した旨を報知することを特徴とする。
【0015】
また、開示の環境監視システムの一形態において、前記計測データ判定手段は、前記計測データが所定の上限値より大きい場合、又は、該計測データが所定の下限値より小さい場合、該計測データは正常ではないと判定することを特徴とする。
【0016】
また、開示の環境監視システムの一形態において、前記機器状態判定手段は、前記機器状態パラメータが所定の上限値より大きい場合、又は、該機器状態パラメータが所定の下限値より小さい場合、前記計測機器の状態は正常ではないと判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
開示の環境監視システムは、計測機器及び計測結果の点検作業において、担当者の技能によらず人為的過誤の発生を低下させると共に、該点検作業を省力化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施の形態に係る環境監視システムの概要を示す図である。
【図2】本実施の形態に係る環境監視ステムの機能ブロック図である。
【図3】本実施の形態に係る環境監視システムが取扱う計測データの種類を示す図である。
【図4】本実施の形態に係る環境監視システムが取扱う機器状態パラメータの種類を示す図である。
【図5】本実施の形態に係る計測データの一例を示す図である。
【図6】本実施の形態に係る計測データ判定手段による判定処理を説明する図である。
【図7】本実施の形態に係る機器状態パラメータの一例を示す図である。
【図8】本実施の形態に係る機器状態判定手段による判定処理を説明する図である。
【図9】本実施の形態に係る計測機器によるデータ送信処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】本実施の形態に係るサーバ装置による判定処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】本実施の形態に係る計測機器による制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】本実施の形態に係る計測機器のハードウェア構成の一例を示す図である。
【図13】本実施の形態に係るサーバ装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【図14】本実施の形態に係る端末のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
(本実施の形態に係る環境監視システムの概要)
【0020】
図1を用いて、本実施の形態に係る環境監視システム100の概要について説明する。図1は、環境監視システム100の概要を説明するための図である。図1で示すように、環境監視システム100は、各地に設置した測定局A、B、Cなどにおいて大気・気象・水質などの環境に関するデータ362を計測し、当該計測データ362をサーバ装置300にて分析・調査を行うシステムである。
【0021】
ここで、測定局A、B、Cには、計測対象となる環境情報に応じて1台以上の計測機器200が備えられる。また、計測機器200は、各種計測データを収集する際、自身の稼働状態を示す機器状態パラメータ364を記録する。機器状態パラメータ364とは、例えば、温度、気圧、流量などである。
【0022】
各測定局A、B、Cにおける計測データ362及び機器状態パラメータ364は、通信ネットワークを介してサーバ装置300へ送信される。そして、サーバ装置300は、受信した計測データ362に基づき計測データ362が正常であるか否かを判定すると共に、受信した機器状態パラメータ364に基づき計測機器200の動作状態が正常であるか否かを判定する。計測データ362及び機器状態パラメータ364に基づく判定処理は、予め用意された所定の基準と比較する形態で自動的に実行される。
【0023】
上記の判定処理において、計測データ362又は機器200の動作状態に異常があると判定された場合、サーバ装置300は、通信ネットワークを介して監視担当者が有する端末400へ、その旨を通知する。これにより、監視担当者は、特定の計測機器200において異常が発生したことを知ることができ、必要が有れば、該当する測定局へ赴き対処することができる。
【0024】
また、サーバ装置300は、異常があると判定された計測機器200に対し通信ネットワークを介して、機器の校正、制御パラメータの更新、機器の初期化などの実行指示を通知する。一方で、実行指示を受けた計測機器200は、当該実行指示に従った制御を行い、自機のメンテナンスを行う。これにより、異常が有ると判定された計測機器200は、遠隔地にあるサーバ装置300からの操作によって、通常動作への復帰が可能となる。
【0025】
上記のように、開示の環境監視システム100は、計測機器及び計測結果の点検作業において、担当者の技能によらず人為的過誤の発生を低下させると共に、該点検作業を省力化することができる。
【0026】
(本実施の形態に係る環境監視システムの動作原理)
図2乃至8を用いて、本実施の形態に係る環境監視システム100の動作原理を説明する。図2は、環境監視システム100の機能ブロック図である。図2で示すように、環境監視システム100は、計測機器200、サーバ装置300、端末400を有し、計測機器200、サーバ装置300、端末400はそれぞれ通信ネットワークを介して接続される。
【0027】
図2で示すように、計測機器200は、送信手段210、遠隔被操作手段220を有する。ここで計測機器200は、環境に関する情報を計測する装置である。そして、図3で示すように計測機器200は、計測データ362として、大気系データ3620、気象・水象系データ3622、水質系データ3624、制御系データ3626を計測する。なお、大気系データ3620とは、例えば、窒素酸化物(NO)、二酸化硫黄(SO)、一酸化炭素(CO)、オゾン(O)、浮遊粒子状物質(SPM:Suspended Particulate Matter)、大気エアロゾル粒子(PM10、PM2.5)、炭化水素(HC)、塩化水素(HCl)、二酸化炭素(CO)などの物質の空気中濃度に関するデータである。
【0028】
また、気象・水象系データ3622とは、例えば、温度、湿度、日射量、放射収支量、風向、風速、水温、流速、水方向、雨量、気圧などに関するデータである。水質系データ3624とは、例えば、水素イオン指数(pH:potential Hydrogen)、溶存酸素、電気伝導度、濁度、窒素、リン、化学的酸素要求量、浮遊物質などに関するデータである。そして、制御系データ3626とは、例えば、水素イオン指数(pH)、電気伝導度、圧力、酸素、水分量、ガス音、ガス量、水量などに関するデータである。
【0029】
他方、計測機器200は、各種の環境情報を計測する際の、自機の稼働状態を示す機器状態パラメータ364を記録する。なお、図4で示すように機器状態パラメータ364とは、例えば、温度、気圧、流量、校正係数(不図示)などに関するデータである。ここで、データ362を計測した時点の計測機器200の動作状態を記録するのは、計測機器200による計測データ362の信頼性を担保するためである。つまり、機器状態パラメータ364が所定の範囲内にあるという条件の下で計測された計測データ362は、信頼性を有することになる。また、校正係数とは、検量線の傾き及びゼロ位などを設定する係数であり、例えば、計測した電気信号や光量(x)などを環境濃度(y)に変換する検量線がy=Ax+Bで表される場合、検量線の傾きは係数Aであり、検量線のゼロ位は係数Bとなる。
【0030】
次は、計測機器200が有する各手段について説明する。送信手段210は、通信ネットワークを介して、計測データ362、機器状態パラメータ364をサーバ装置300へ送信する。送信手段210は、サーバ装置300から送信要求が有った際に当該送信処理を行う形態でも良く、定期的に当該送信処理を行う形態(リアルタイム送信を含む)でも良い。遠隔被操作手段220は、後述する遠隔操作手段350による制御指示に従い、計測機器200自身を制御する。
【0031】
一方、図2で示すようにサーバ装置300は、受信手段310、計測データ判定手段320、機器状態判定手段330、異常発生報知手段340、遠隔操作手段350、受信データデータベース(以下、受信データDBと言う。)360を有する。ここで、受信データDB360は、計測機器200より受信した計測データ362及び機器状態パラメータ364を蓄積するデータベースである。なお、受信データDB360は必須の構成要件ではなく、また、受信データDB360は、サーバ装置300と接続される外部装置が備える形態であっても良い。
【0032】
受信手段310は、計測機器200により送信される計測データ362及び機器状態パラメータ364を受信する。サーバ装置300が受信データDB360を備える場合、受信手段310は、受信した計測データ362及び機器状態パラメータ364を受信データDB360に記憶させる。
【0033】
計測データ判定手段320は、計測データ362に基づき、計測データ362が正常な計測値であるか否かを判定する。計測データ判定手段320の一形態は、計測データ362が所定の範囲内である場合、当該計測データ362が正常な計測値であると判定し、計測データ362が所定の範囲外である場合、当該計測データ362が正常な計測値ではないと判定する。つまり、上記所定の範囲に対応する上限値及び下限値を設ける場合、計測データ判定手段320は、計測データ362が当該上限値より大きい場合、又は、計測データ362が当該下限値より小さい場合、当該計測データ362が正常な計測値ではないと判定する。
【0034】
過去に受信した一定個数の計測データ362に基づき算出した平均値をT、標準偏差をσとする場合、例えば、上記所定の範囲を規定する上限値はT+3σ、下限値はT−3σなどと設定する。また、母集団の更新に伴い平均値T、標準偏差σが定期的に更新されると共に、上記所定の範囲を規定する上限値及び下限値も更新される形態としても良い。
【0035】
図5に、計測データ判定手段320の処理対象となる計測データ362の一例として、気象系データ3622(温度計測定値)を示す。一方、図6に、過去に受信した計測データ362(平均値T(=26.1℃)、標準偏差σ(=2.0))の度数分布図を示す。この場合、上記上限値は32.1℃(=26.1+3×2.0)、上記下限値は20.1℃(=26.1−3×2.0)となる。
【0036】
図5及び図6で示す例において、計測データ判定手段320は、上限値32.1℃より大きい値である「8月1日(土)1時〜8月2日(日)2時」の計測データ362を正常な計測値ではないと判定する。
【0037】
機器状態判定手段330は、機器状態パラメータ364に基づき、計測機器200の動作状態が正常であるか否かを判定する。機器状態判定手段330の一形態は、計測機器パラメータ364が所定の範囲内である場合、計測機器200の動作状態が正常であると判定し、機器状態パラメータ364が所定の範囲外である場合、計測機器200の動作状態が正常ではないと判定する。つまり、上記所定の範囲を規定する上限値及び下限値を設定する場合、機器状態判定手段330は、機器状態パラメータ364が当該上限値より大きい場合、又は、機器状態パラメータ364が当該下限値より小さい場合、計測機器200の動作状態が正常ではないと判定する。
【0038】
図7に、機器状態判定手段330の処理対象である機器状態パラメータ364の一例を示す。一方、図8に、図7で示した機器状態パラメータ364を時刻順に図示する。なお、上記上限値は20.0とし、上記下限値は15.0とする。図7及び図8で示す例において機器状態判定手段330は、上限値20.0より大きな値を示している「B地点のt〜t10時点」に関し、計測機器200の動作状態が正常ではないと判定する。他方、機器状態判定手段330は、下限値15.0より小さな値を示している「C地点のt〜t時点」に関し、計測機器200の動作状態が正常ではないと判定する。
【0039】
異常発生報知手段340は、計測データ判定手段320により計測データ362が正常な計測値ではないと判定された場合、又は、機器状態判定手段330により計測機器200の動作状態が正常ではないと判定された場合、所定の異常発生報知動作を行う。ここで、所定の異常発生報知動作とは、環境監視システム100の監視担当者が使用する端末400に対し、計測データ判定手段320による判定結果又は機器状態判定手段330による判定結果を通知する動作である。また、所定の異常発生報知動作とは、サーバ装置300が備える表示装置3007に、計測データ判定手段320による判定結果又は機器状態判定手段330による判定結果を表示(報知)する動作である。
【0040】
遠隔操作手段350は、計測データ判定手段320により計測データ362が正常な計測値ではないと判定された場合、又は、機器状態判定手段330により計測機器200の動作状態が正常ではないと判定された場合、計測機器200に対し、所定の制御指示を通知する。ここで、所定の制御指示は、計測機器200において校正動作を行わせる制御指示であっても良く、計測機器200の動作を規定するパラメータの設定動作を行わせる制御指示であっても良い。さらには、所定の制御指示は、計測機器200に初期化動作を行わせる制御指示であっても良い。
【0041】
ここで、校正動作とは、計測機器200に標準物質を計測させた場合、計測機器200による計測値が標準値を正しく示すか否かを確認すると共に、当該計測値が標準値を正しく示すように計測機器200の調整を行う動作を言う。そして、当該計測機器200の調整とは、計測機器200による計測動作で使用する検量線のパラメータを適切な値に修正することを言う。
【0042】
(本実施の形態に係る環境監視システムによる処理例)
(1)計測機器200によるデータ送信処理
図9を用いて、計測機器200のデータ送信処理の流れについて説明する。図9は、計測機器200によるデータ送信処理の流れを示すフローチャートである。ここで、計測機器200は、図5で示す気象系データ3622を計測すると共に、図7で示す機器状態パラメータ364を記録するものとする。
【0043】
S10で計測機器200が、環境情報の計測データ362として気象系データ3622を計測する(図5参照)と共に、計測時点の計測機器200の動作状態を示す機器状態パラメータ364を記録する(図7参照)。計測データ362は、気象系データ3622の他に、大気系データ3620、水質系データ3624、制御系データ3626であっても良い。
【0044】
S20で送信手段210が、通信ネットワークを介してサーバ装置300に対し、計測データ362及び機器状態パラメータ364を送信する。この処理は、サーバ装置300からの送信要求に応じて行われても良く、一定時間毎に自動的に実行されても良い。
【0045】
このように、環境監視システム100は、計測データ362と共に、データ計測時点の計測機器200の動作状態を示す機器状態パラメータ364をサーバ装置300に通知することにより、データ管理及び機器管理をオンサイトではなく、サーバ装置300一箇所で集中的に行うことができる。
【0046】
(2)サーバ装置300によるデータ判定処理
図10を用いて、サーバ装置300のデータ判定処理の流れについて説明する。図10は、サーバ装置300によるデータ判定処理の流れを示すフローチャートである。ここで、サーバ装置300は、図5で示す気象系データ3622と図7で示す機器状態パラメータ364とを判定処理の対象とする。また、気象系データ3622(気温)の正常値の範囲は20.1(=平均値26.1−3×標準偏差2.0)℃〜32.1(=平均値26.1+3×標準偏差2.0)℃とし(図6参照)、機器状態パラメータ364の正常値の範囲は15.0〜20.0とする(図8参照)。
【0047】
S110で受信手段310が、計測機器200から計測データ362及び機器状態パラメータ364を受信する。ここで、受信手段310は、受信した計測データ362及び機器状態パラメータ364を受信データDB360に記憶させても良い。
【0048】
S120で計測データ判定手段320が、図5で示す気象系データ3622が正常値の範囲内にあるか否かを判定する。また、S120で機器状態判定手段330が、図7で示す機器状態パラメータ364が正常値の範囲内にあるか否かを判定する。
【0049】
S130で計測データ判定手段320により気象系データ3622が正常値の範囲内にないと判定された場合、又は、機器状態判定手段330により機器状態パラメータ364が正常値の範囲内にないと判定された場合(S130でYes)、処理はS140に移行する。一方、S130で計測データ判定手段320により気象系データ3622が正常値の範囲内にあると判定され、かつ、機器状態判定手段330により機器状態パラメータ364が正常値の範囲内にあると判定された場合(S130でNo)、処理はS110に移行する。
【0050】
本処理例では、計測データ判定手段320による判定対象が「8月1日(土)1時〜8月2日(日)2時」の計測データ362であった場合、又は、機器状態判定手段330による判定対象が「B地点のt〜t10時点」「C地点のt〜t時点」の機器状態パラメータ364であった場合、S140の処理に移行する。
【0051】
S140で異常発生報知手段340が、所定の異常発生報知動作を行う。ここで所定の異常発生報知動作は、監視担当者端末400に対し、計測機器200において異常事態が発生した旨を通知する形態であっても良く、サーバ装置300が備える表示装置3007で、計測機器200において異常事態が発生した旨を通知する形態であっても良い。こうすることによって、計測機器200において異常事態が発生したことを監視担当者へ自動的に、かつ、遅滞なく知らせることができ、計測機器200の復旧を早めることができる。
【0052】
S150で遠隔操作手段350が、通信ネットワークを介して計測機器200に対し、所定の制御指示を通知する。ここで所定の制御指示は、計測機器200において校正を行わせる制御指示であっても良く、計測機器200の動作を規定するパラメータの設定を行わせる制御指示であっても良い。さらに、所定の制御指示は、計測機器200に初期化を行わせる制御指示であっても良い。こうすることによって、計測機器200において異常事態が発生した場合、計測機器200の復旧処理を遠隔地から行うことができる。
【0053】
S160で処理終了の命令があれば(S160でYes)、サーバ装置300は処理を終了し、処理終了の命令がなければ(S160でNo)、サーバ装置300はS110の処理に移行する。
【0054】
(3)計測機器200による復旧処理
図11を用いて、計測機器200の復旧処理の流れについて説明する。図11は、計測機器200による復旧処理の流れを示すフローチャートである。
S210で遠隔被操作手段220が、サーバ装置300より送信された制御指示を取得する。S220で遠隔被操作手段220が、取得した制御指示に従い、計測機器200自身を制御する。ここで遠隔被操作手段220は、校正指示を取得した場合、計測機器200において校正を行う制御を行い、パラメータ設定の制御指示を取得した場合、取得したパラメータを計測機器200において設定する制御を行う。また、遠隔被操作手段220は、初期化指示を取得した場合、計測機器200において初期化動作を行う制御を行う。
【0055】
このように、環境監視システム100は、計測機器200及び計測結果362、364の点検作業において、担当者の技能に依らない処理を行い人為的過誤の発生を低下させると共に、該点検作業を省力化することができる。
【0056】
(本実施の形態に係る環境監視システムのハードウェア構成の一例)
(1)計測機器のハードウェア構成例
図12を用いて、本実施の形態に係る計測機器200のハードウェア構成の一例について説明する。図12は、計測機器200のハードウェア構成の一例を示す図である。図12で示すように、計測機器200は、CPU(Central Processing Unit)2001、ROM(Read-Only Memory)2002、RAM(Random
Access Memory)2003、HDD(Hard Disc Drive)2004、通信I/F(Interface)2005、媒体I/F2006、入出力装置2007、計測用装置2008を有する。
【0057】
CPU2001は、ROM2002に記憶されたプログラムを実行する装置であり、RAM2003に展開(ロード)されたデータを、プログラムの命令に従って演算処理し、計測機器200全体を制御する。ROM2002は、CPU2001が実行するプログラムやデータを記憶している。RAM2003は、CPU2001でROM2002に記憶されたプログラムを実行する際に、実行するプログラムやデータが展開(ロード)され、演算の間、演算データを一時的に保持する。
【0058】
HDD2004は、基本ソフトウェアであるOSや本実施の形態に係るアプリケーションプログラムなどを、関連するデータとともに記憶する装置である。例えば、HDD2004には、計測データ362、機器状態パラメータ364などが記憶される。通信I/F2005は、無線又は有線の通信ネットワークを介して接続された他の通信制御機能を備えた周辺機器とデータを送受信するためのインタフェースである。
【0059】
媒体I/F2006は、CD−ROM、DVD−ROM、USBメモリなどの記憶媒体2009とデータの送受信を行うためのインタフェースである。入出力装置2007は、キーボードなどの入力装置やLCD(Liquid Crystal Display)等で構成される表示装置を含む、計測機器200が有する機能をユーザが利用する際や各種設定を行う際のユーザインタフェースとして機能する装置である。計測用装置2008は、環境情報を計測するための装置であり、特に制限は無い。
【0060】
(2)サーバ装置のハードウェア構成例
図13を用いて、本実施の形態に係るサーバ装置300のハードウェア構成の一例について説明する。図13は、サーバ装置300のハードウェア構成の一例を示す図である。図13で示すように、サーバ装置300は、CPU3001、ROM3002、RAM3003、HDD3004、通信I/F3005、媒体I/F3006、入出力装置3007、その他の装置3008を有する。
【0061】
CPU3001は、ROM3002に記憶されたプログラムを実行する装置であり、RAM3003に展開(ロード)されたデータを、プログラムの命令に従って演算処理し、サーバ装置300全体を制御する。ROM3002は、CPU3001が実行するプログラムやデータを記憶している。RAM3003は、CPU3001でROM3002に記憶されたプログラムを実行する際に、実行するプログラムやデータが展開(ロード)され、演算の間、演算データを一時的に保持する。
【0062】
HDD3004は、基本ソフトウェアであるOSや本実施の形態に係るアプリケーションプログラムなどを、関連するデータとともに記憶する装置である。例えば、HDD3004には、計測データ362、機器状態パラメータ364などが記憶される。通信I/F3005は、無線又は有線の通信ネットワークを介して接続された他の通信制御機能を備えた周辺機器とデータを送受信するためのインタフェースである。
【0063】
媒体I/F3006は、CD−ROM、DVD−ROM、USBメモリなどの記憶媒体3009とデータの送受信を行うためのインタフェースである。入出力装置3007は、キーボードなどの入力装置やLCD等で構成される表示装置を含む、サーバ装置300が有する機能をユーザが利用する際や各種設定を行う際のユーザインタフェースとして機能する装置である。その他の装置3008は、上記以外の装置であり特に制限は無い。
【0064】
(3)監視担当者端末のハードウェア構成例
図14を用いて、本実施の形態に係る端末400のハードウェア構成の一例について説明する。図14は、端末400のハードウェア構成の一例を示す図である。図14で示すように、端末400は、CPU4001、ROM4002、RAM4003、HDD4004、通信I/F4005、媒体I/F4006、入出力装置4007、その他の装置4008を有する。
【0065】
CPU4001は、ROM4002に記憶されたプログラムを実行する装置であり、RAM4003に展開(ロード)されたデータを、プログラムの命令に従って演算処理し、端末400全体を制御する。ROM4002は、CPU4001が実行するプログラムやデータを記憶している。RAM4003は、CPU4001でROM4002に記憶されたプログラムを実行する際に、実行するプログラムやデータが展開(ロード)され、演算の間、演算データを一時的に保持する。
【0066】
HDD4004は、基本ソフトウェアであるOSや本実施の形態に係るアプリケーションプログラムなどを、関連するデータとともに記憶する装置である。通信I/F4005は、無線又は有線の通信ネットワークを介して接続された他の通信制御機能を備えた周辺機器とデータを送受信するためのインタフェースである。
【0067】
媒体I/F4006は、CD−ROM、DVD−ROM、USBメモリなどの記憶媒体4009とデータの送受信を行うためのインタフェースである。入出力装置4007は、キーボードなどの入力装置やLCD等で構成される表示装置を含む、端末400が有する機能をユーザが利用する際や各種設定を行う際のユーザインタフェースとして機能する装置である。その他の装置4008は、上記以外の装置であり特に制限は無い。
【0068】
環境監視システム100が有する各手段は、各CPU2001、3001、4001が、各ROM2002、3002、4002又は各HDD2004、3004、4004に記憶された各手段に対応するプログラムを実行することにより実現される形態としても良い。また、環境監視システム100が有する各手段は、当該各手段に関する処理をハードウェアとして実現する形態としても良い。また、各媒体I/F2006、3006、4006を介して、記憶媒体2009、3009、4009から本発明に係る環境監視プログラムを読み込ませ、計測機器200、サーバ装置300、端末400の各装置に当該環境監視プログラム実行させる形態としても良い。
【0069】
(総括)
開示の環境監視システムは、計測機器及び計測結果の点検作業において、担当者の技能によらず人為的過誤の発生を低下させると共に、該点検作業を省力化することができる。
【0070】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0071】
100 環境監視システム
200 計測機器
210 送信手段
220 遠隔被操作手段
300 サーバ装置
310 受信手段
320 計測データ判定手段
330 機器状態判定手段
340 異常発生報知手段
350 遠隔操作手段
360 受信データDB
362 計測データ
364 機器状態パラメータ
400 監視担当者端末


【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測機器と、通信ネットワークを介して該計測機器と接続されるサーバ装置と、を含む環境監視システムであって、
前記計測機器は、
環境情報の計測結果である計測データと、該計測データを計測する際の前記計測機器の稼働状態を示す機器状態パラメータと、を前記サーバ装置に送信する送信手段を備え、
前記サーバ装置は、
前記計測データと前記機器状態パラメータとを受信する受信手段と、
前記計測データに基づいて、該計測データが正常であるか否かを判定する計測データ判定手段と、
前記機器状態パラメータに基づいて、前記計測機器の稼働状態が正常であるか否かを判定する機器状態判定手段と、
前記計測データ判定手段により正常ではないと判定された場合、又は、前記機器状態判定手段により正常ではないと判定された場合、所定の異常発生報知動作を行う異常発生報知手段と、を備えることを特徴とする環境監視システム。
【請求項2】
前記サーバ装置は、
前記計測データ判定手段により正常ではないと判定された場合、又は、前記機器状態判定手段により正常ではないと判定された場合、前記計測機器に対し校正指示を送信する遠隔操作手段を備え、
前記計測機器は、
前記遠隔操作手段により送信される前記校正指示に従い、前記計測機器の校正を行う遠隔被操作手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の環境監視システム。
【請求項3】
前記遠隔操作手段は、前記計測機器の動作を規定する動作規定パラメータを送信し、
前記遠隔被操作手段は、前記遠隔操作手段により送信される前記動作規定パラメータを用いて、前記計測機器が保持する動作規定パラメータを更新することを特徴とする請求項2に記載の環境監視システム。
【請求項4】
前記遠隔操作手段は、前記計測機器の初期化指示を送信し、
前記遠隔被操作手段は、前記遠隔操作手段により送信される前記初期化指示に基づき、前記計測機器の初期化動作を行うことを特徴とする請求項2に記載の環境監視システム。
【請求項5】
当該環境監視システムの監視担当者が使用し、通信ネットワークを介して前記サーバ装置と接続される端末を含み、
前記異常発生報知手段は、前記端末に、前記計測機器において異常事態が発生した旨を報知することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一に記載の環境監視システム。
【請求項6】
前記異常発生報知手段は、前記サーバ装置が備える出力装置を用いて、前記計測機器において異常事態が発生した旨を報知することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一に記載の環境監視システム。
【請求項7】
前記計測データ判定手段は、前記計測データが所定の上限値より大きい場合、又は、該計測データが所定の下限値より小さい場合、該計測データは正常ではないと判定することを特徴とする請求項1乃至6の何れか一に記載の環境監視システム。
【請求項8】
前記機器状態判定手段は、前記機器状態パラメータが所定の上限値より大きい場合、又は、該機器状態パラメータが所定の下限値より小さい場合、前記計測機器の状態は正常ではないと判定することを特徴とする請求項1乃至7の何れか一に記載の環境監視システム。
【請求項9】
計測機器と、通信ネットワークを介して該計測機器と接続されるサーバ装置と、を含む環境監視システムにおける環境監視方法であって、
前記計測機器は、
送信手段が、環境情報の計測結果である計測データと、該計測データを計測する際の前記計測機器の稼働状態を示す機器状態パラメータと、を前記サーバ装置に送信するステップを備え、
前記サーバ装置は、
受信手段が、前記計測データと前記機器状態パラメータとを受信するステップと、
計測データ判定手段が、前記計測データに基づいて、該計測データが正常であるか否かを判定するステップと、
機器状態判定手段が、前記機器状態パラメータに基づいて、前記計測機器の稼働状態が正常であるか否かを判定するステップと、
異常発生報知手段が、前記計測データ判定手段により正常ではないと判定された場合、又は、前記機器状態判定手段により正常ではないと判定された場合、所定の異常発生報知動作を行うステップと、を備えることを特徴とする環境監視方法。
【請求項10】
前記サーバ装置は、
遠隔操作手段が、前記計測データ判定手段により正常ではないと判定された場合、又は、前記機器状態判定手段により正常ではないと判定された場合、前記計測機器に対し校正指示を送信するステップを備え、
前記計測機器は、
遠隔被操作手段が、前記遠隔操作手段により送信される前記校正指示に従い、前記計測機器の校正を行うステップを備えることを特徴とする請求項9に記載の環境監視方法。
【請求項11】
前記遠隔操作手段は、前記計測機器の動作を規定する動作規定パラメータを送信し、
前記遠隔被操作手段は、前記遠隔操作手段により送信される前記動作規定パラメータを用いて、前記計測機器が保持する動作規定パラメータを更新することを特徴とする請求項10に記載の環境監視方法。
【請求項12】
前記遠隔操作手段は、前記計測機器の初期化指示を送信し、
前記遠隔被操作手段は、前記遠隔操作手段により送信される前記初期化指示に基づき、前記計測機器の初期化動作を行うことを特徴とする請求項10に記載の環境監視方法。
【請求項13】
前記環境監視システムは、該環境監視システムの監視担当者が使用し、通信ネットワークを介して前記サーバ装置と接続される端末を含み、
前記異常発生報知手段は、前記端末に、前記計測機器において異常事態が発生した旨を報知することを特徴とする請求項9乃至12の何れか一に記載の環境監視方法。
【請求項14】
前記異常発生報知手段は、前記サーバ装置が備える出力装置を用いて、前記計測機器において異常事態が発生した旨を報知することを特徴とする請求項9乃至13の何れか一に記載の環境監視方法。
【請求項15】
前記計測データ判定手段は、前記計測データが所定の上限値より大きい場合、又は、該計測データが所定の下限値より小さい場合、該計測データは正常ではないと判定することを特徴とする請求項9乃至14の何れか一に記載の環境監視方法。
【請求項16】
前記機器状態判定手段は、前記機器状態パラメータが所定の上限値より大きい場合、又は、該機器状態パラメータが所定の下限値より小さい場合、前記計測機器の状態は正常ではないと判定することを特徴とする請求項9乃至15の何れか一に記載の環境監視方法。
【請求項17】
コンピュータに、請求項9乃至16の何れか一に記載の環境監視方法を実行させるための環境監視プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−237959(P2011−237959A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107977(P2010−107977)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【特許番号】特許第4683671号(P4683671)
【特許公報発行日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(510127653)
【Fターム(参考)】