説明

環境試験方法及び環境試験装置

【課題】自然界で生じる着霜と略同一の現象を再現できる環境試験方法、及び被試験物に着霜させることができる環境試験装置の提供を目的とする。
【解決手段】環境試験装置1の試験室2内に被試験物20を配置し、試験室2内の被試験物20の表面温度を摂氏零度近傍以下に低下させ、その後に少なくとも被試験物20の近傍の絶対湿度を上昇させ、被試験物20の表面及び/又はその近傍で空気中の水蒸気を相変化させて被試験物20の表面に着霜させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然界で生じる着霜と略同一の現象を再現できる環境試験方法、及び被試験物に着霜させることができる環境試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
放射冷却現象による気温の低下により、屋外に置かれている車両等に霜が着くことがある。車両に着霜するとエンジンが暖まりにくくなる等、車両が何らかの影響を受ける。このため、従来は着霜による車両への影響を調べるため、寒冷地にて車両試験を実施しているが、試験環境が気象条件や場所、時間帯等によって大きく変動するので、所望する着霜を実現することは容易ではない。
【0003】
そこで類似した試験環境を得るための発明が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されている着雪装置では、車両に着雪させることで、着雪による車両への影響を調べることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−140934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された着雪装置は、天然雪又は人工雪の一部を加熱源により液化させ、湿り雪へと変化したものを目的物に吹き付けて、着雪させるものである。このため、着雪装置で発生させた湿り雪による着雪は、水蒸気(気体)が霜(固体)に相変化して生じる着霜とは異なる。よって、従来技術の着雪装置では、自然界で生じる着霜と同じものを再現することは困難である。
【0006】
そこで、本発明は、自然界で生じる着霜と略同一の現象を再現できる環境試験方法、及び被試験物に着霜させることができる環境試験装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、環境試験装置の試験室内に被試験物を配置し、当該試験室内の被試験物の表面温度を摂氏零度近傍以下に低下させ、その後に少なくとも被試験物の近傍の絶対湿度を上昇させ、被試験物の表面及び/又はその近傍で空気中の水蒸気を相変化させて被試験物の表面に着霜させることを特徴とする環境試験方法である。
【0008】
本発明の環境試験方法は、環境試験装置の試験室内に配置された被試験物の表面に着霜できるものである。
詳細に説明すると、当該試験室内の被試験物の表面温度を摂氏零度近傍以下に低下させ、その状況下において、少なくとも被試験物の近傍の絶対湿度を上昇させ、被試験物の近傍の空気中に含まれる水蒸気量を増加させる。増加した水蒸気は、摂氏零度近傍以下に冷やされた被試験物の表面及び/又はその近傍の空気と接触することで、熱を奪われて相変化し、被試験物の表面で霜(氷の結晶)となる。つまり、水蒸気が気体から固体へと相変化して凝結したものが霜であり、本発明によると霜を被試験物の表面に発生させることができる。なお、摂氏零度近傍以下にまで冷却された水蒸気の内、霜へと相変化しなかったものについては、過冷却状態の水蒸気か、又は過冷却状態の水滴となり、不安定な状態となる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、露点温度が被試験物の表面温度以上である空気を、被試験物の近傍で無風状態又は風速4m/s以下の微風状態になるよう供給して少なくとも被試験物の近傍の絶対湿度を上昇させることを特徴とする請求項1に記載の環境試験方法である。
【0010】
本発明の環境試験方法は、被試験物の表面に安定して着霜させるか又は着霜に掛かる時間を短縮できるものである。
ここで、露点温度が被試験物の表面温度以上である空気を、「被試験物の近傍で無風状態となるように供給する」とは、例えば原則として、送風機等を使用せず、気体の拡散現象や対流現象を利用して徐々に被試験物の近傍の絶対湿度を上昇させる様な状態を指している。「被試験物の近傍で無風状態となるように供給する」場合は、多くの場合、人為的に試験室内に空気の流れや空気の混合を生じさせない。このことにより、被試験物の表面に安定して着霜させることができる。
一方、「被試験物の近傍で風速4m/s以下の微風状態になるよう供給する」とは、人為的に試験室内に空気の流れや空気の混合を生じさせる場合である。このことにより、被試験物の表面への着霜に掛かる時間を短縮することが可能となる。
なお、「露点温度が被試験物の表面温度以上である空気」とは、「被試験物の表面温度にまで冷却した場合に水蒸気量が飽和状態か又は過飽和状態となる空気」を指している。被試験物の表面で容易に霜を発生させるためには、水蒸気が過剰に必要であり、試験物の表面温度にまで冷却した場合に水蒸気量が飽和状態か又は過飽和状態となる空気が必要となる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、被試験物の表面温度を摂氏零度近傍以下であって且つ置かれた試験室の平均気温よりも低い温度に低下させることを特徴とする請求項1又は2に記載の環境試験方法である。
【0012】
本発明の環境試験方法は、被試験物の表面温度を摂氏零度近傍以下であって且つ置かれた試験室の平均気温よりも低い温度に低下させるものである。なお、本発明の実施する際において、環境試験装置の試験室は、温度や湿度を任意に制御できるものであることが望ましいが、温度や湿度をコントロールする機能を持たないものであってもよい。
即ち環境試験装置の試験室は、ヒータ、冷凍機、加湿器等によって、これらの温度や湿度を任意に制御することができるものが多いが、本発明に関しては、これらの温度や湿度をコントロールする機能は必須ではない。
例えば、試験室の温度は、外部環境や被試験物の表面温度、あるいは被試験物を冷却するための冷風等に依存し、成り行きによって決まるものであってもよい。
要するに、被試験物の表面温度が、摂氏零度近傍以下であって且つ試験室の平均気温よりも低い温度に低下しておれば本発明の要件を満足する。
【0013】
請求項4に記載の発明は、一定時間に渡って冷風を吹き当てて被試験物の表面温度を摂氏零度近傍以下に低下させ、その後、冷風の吹き当てを一時的に又は恒久的に停止し、その後に少なくとも被試験物の近傍の空気の露点温度が、被試験物の表面温度以上となるよう絶対湿度を上昇させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の環境試験方法である。
【0014】
本発明の環境試験方法は、寒冷地で起こる放射冷却と略同一の環境を試験室内に作り出すものである。すなわち、自然界で起こる放射冷却現象は、上空よりも地表が冷却されているという気温の逆転現象であり、本発明によると放射冷却と略同一の現象を試験室内で再現し、霜を被試験物の表面に発生させることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、一定時間に渡って冷風を吹き当てて被試験物の表面温度を摂氏零度近傍以下に低下させ、その後、単位時間当たりの被試験物に与えられる冷熱量を減少させ、その後に少なくとも被試験物の近傍の空気の露点温度が、被試験物の表面温度以上となるよう絶対湿度を上昇させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の環境試験方法である。
【0016】
本発明の環境試験方法は、請求項4に記載の発明と同様に、寒冷地で起こる放射冷却と略同一の環境を試験室内に作り出すものである。
【0017】
請求項6に記載の発明は、試験室内部に被試験物の上方から、その露点温度が被試験物の表面温度以上である空気を、被試験物の近傍で無風又は微風状態になるよう供給することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の環境試験方法である。
【0018】
本発明の環境試験方法は、寒冷地で起こる放射冷却と略同一の環境を試験室内に作り出すものである。本発明では、試験室内の上方から自然対流に近い状態で、露点温度が被試験物の表面温度以上である空気を供給する。つまり、寒冷地で起こる放射冷却と略同一の現象を試験室内で再現することができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、湿度を含む空気を被試験物の近傍に供給して被試験物の近傍の絶対湿度を上昇させるものであり、被試験物の表面温度と、被試験物の近傍に供給する前記空気の乾球温度及び露点温度と、被試験物の近傍の風速と、被試験物に冷熱を与える冷風の強度とを制御可能であることを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載の環境試験方法である。
【0020】
本発明の環境試験方法は、被試験物に供給する空気の性状(温度や露点温度等)を制御するものである。
「被試験物の近傍に供給する前記空気の乾球温度」は、被試験物の表面への着霜に掛かる時間に影響を与えるパラメータである。
「被試験物の近傍に供給する前記空気の露点温度」は、空気中に含まれる水蒸気量に影響を与えるパラメータである。
「被試験物の表面温度」は、霜の結晶の形状に影響を与えるパラメータである。
「被試験物の近傍の風速」は、被試験物の表面への着霜に掛かる時間に影響を与えるパラメータである。
「被試験物に冷熱を与える冷風の強度」は、被試験物の表面に着霜するかしないかに影響を与えるパラメータである。ここで「強度」とは、冷風の持つエネルギーであり、風温と、風速と、風量を表す。
【0021】
請求項8に記載の発明は、被試験物の表面温度と、被試験物の近傍における空気の乾球温度と、被試験物の近傍における空気の露点温度と、被試験物の近傍の風速と、被試験物に冷熱を与える冷風の強度とを制御可能であることを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載の環境試験方法である。
【0022】
本発明の環境試験方法は、被試験物近傍の環境を視点とした制御方法であり、厳密な温度制御等を目的とするものである。また、請求項7の発明と同様に、空気の性状を制御するものである。
「被試験物の近傍における空気の乾球温度」は、被試験物の表面への着霜に掛かる時間に影響を与えるパラメータである。
「被試験物の近傍における空気の露点温度」は、被試験物近傍の空気中に含まれる水蒸気量に影響を与えるパラメータである。
【0023】
請求項9に記載の発明は、被試験物を収容する試験室と、少なくとも被試験物の表面温度を低下させる冷却手段と、少なくとも被試験物の近傍の空気の露点温度が被試験物の表面温度以上となるように絶対湿度を上昇させる加湿手段とを備え、前記冷却手段で被試験物の表面温度を摂氏零度近傍以下に低下させ、被試験物の表面及び/又はその近傍で空気中の水蒸気を相変化させて、被試験物の表面に着霜させる能力を有することを特徴とする環境試験装置である。
【0024】
本発明の環境試験装置は、請求項1に記載の環境試験方法を実現するための装置であり、請求項1と同様に試験室内に配置された被試験物の表面に着霜させるものである。
【0025】
請求項10に記載の発明は、冷却手段は、被試験物に冷風を吹き当てて被試験物の表面温度を低下させるものであることを特徴とする請求項9に記載の環境試験装置である。
【0026】
本発明の環境試験装置は、請求項4に記載の環境試験方法を実現するための装置であり、請求項4と同様に寒冷地で起こる放射冷却と略同一の環境を試験室内に作り出すものである。
【0027】
請求項11に記載の発明は、冷却手段と加湿手段はそれぞれ個別の送風手段を有し、前記加湿手段は加湿空気を生成し、送風手段で被試験物の近傍に前記加湿空気を送風するものであることを特徴とする請求項9又は10に記載の環境試験装置である。
【0028】
本発明の環境試験装置は、請求項2又は3に記載の環境試験方法を実現するための装置であり、請求項2又は3と同様に寒冷地で起こる放射冷却と略同一の環境を試験室内に作り出すものである。また、冷却手段と加湿手段がそれぞれ個別の送風手段を有するので、個々に送風手段を制御することで、制御性が良くなる。
【0029】
請求項12に記載の発明は、冷風の強度を変更するか、或いは冷風を間欠的に被試験物に吹き当てることによって、単位時間当たりの被試験物に与えられる冷熱量を増減させることが可能であることを特徴とする請求項10又は11に記載の環境試験装置である。
【0030】
本発明の環境試験装置は、請求項4又は5に記載の環境試験方法を実現するための装置であり、請求項4又は5と同様に寒冷地で起こる放射冷却と略同一の環境を試験室内に作り出すものである。
【0031】
請求項13に記載の発明は、試験室の上方に高湿度空気供給口があり、当該高湿度空気供給口から、露点温度が被試験物の表面温度以上となる絶対湿度の空気を試験室内に供給し、被試験物の周囲の湿度を上昇させることを特徴とする請求項9乃至12のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0032】
本発明の環境試験装置は、請求項6に記載の環境試験方法を実現するための装置であり、請求項6と同様に寒冷地で起こる放射冷却と略同一の環境を試験室内に作り出すものである。
【0033】
請求項14に記載の発明は、加湿手段は加湿空気を生成して当該加湿空気を被試験物の近傍に供給するものであり、被試験物の近傍の風速を検知する風速検知手段と、被試験物の表面温度を検知する表面温度検知手段と、加湿手段によって被試験物の近傍に供給される加湿空気の露点温度を検知する露点検知手段と、加湿手段によって被試験物の近傍に供給される加湿空気の乾球温度を検知する供給空気温度検知手段とを有し、被試験物の表面温度と、被試験物の近傍に供給する前記加湿空気の露点温度と、被試験物の近傍に供給する前記加湿空気乾球温度と、被試験物の近傍の風速と、被試験物に冷熱を与える冷風の強度とを制御する制御手段を有することを特徴とする請求項10乃至13のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0034】
本発明の環境試験装置は、請求項7に記載の環境試験方法を実現するための装置であり、請求項7と同様に空気の性状を制御するものである。
【0035】
請求項15に記載の発明は、被試験物の近傍の風速を検知する風速検知手段と、被試験物の表面温度を検知する表面温度検知手段と、被試験物の近傍における空気の露点温度を検知する露点検知手段と、被試験物の近傍における空気の乾球温度を検知する近傍温度検知手段とを有し、被試験物の表面温度と、被試験物の近傍における空気の露点温度と、被試験物の近傍における空気の乾球温度と、被試験物の近傍の風速と、冷風の強度とを制御する制御手段を有することを特徴とする請求項10乃至13のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0036】
本発明の環境試験装置は、請求項8に記載の環境試験方法を実現するための装置であり、請求項8と同様に空気の性状を制御するものである。
【0037】
請求項16に記載の発明は、被試験物が自動車であり、被試験物の前方から被試験物に冷風を吹き付けて、被試験物の表面温度を摂氏零度近傍以下にした後に、所定の温湿度の空気を1m/s以下の風速で被試験物の上表面の略全体を覆うように供給することを特徴とする請求項9乃至15のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0038】
本発明の環境試験装置は、本発明の開発趣旨に沿ったものであり、自動車に着霜させることができ、霜による自動車への影響を調べることが可能となる。
「所定の温湿度の空気を1m/s以下の風速で」とは、気体の拡散現象や対流現象を利用して徐々に被試験物の近傍の絶対湿度を上昇させる様な状態を指しており、多くの場合、人為的に試験室内に空気の流れや空気の混合を生じさせない。このことにより、被試験物の表面に安定して着霜させることができる。
「被試験物の上表面の略全体を覆うように供給する」とは、試験室内の上方から自然対流に近い状態で、過飽和状態の空気を供給することを指している。つまり、寒冷地で起こる放射冷却と略同一の現象を試験室内で再現することができる。
【0039】
請求項17に記載の発明は、試験室内の空気中に含まれる微小な液体及び微小な固体の量を制御する微粒子制御手段を有することを特徴とする請求項9乃至16のいずれかに記載の環境試験装である。
【0040】
本発明の環境試験装置は、より自然環境に近い状態を再現できるものである。例えば、ダストやミスト等が霜に及ぼす影響を調べることも可能である。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、自然界で生じる着霜と略同一の現象を再現できる環境試験方法、及び被試験物に着霜させることができる環境試験装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態に係る環境試験装置の概略構成図である。
【図2】図1の環境試験装置の運転状態を示すタイムチャートの一例であって、加湿手段6でつくられる空気の湿度と、冷却手段5でつくられる空気の冷風の温度と風速の関係を示す。
【図3】本発明の実施形態の変形例1に係る環境試験装置の概略構成図である。
【図4】図3の本発明の実施形態の変形例1とはダンパの構成が異なる環境試験装置の概略構成図である。
【図5】本発明の実施形態の変形例2に係る環境試験装置の概略構成図である。
【図6】本発明の実施形態の変形例3に係る環境試験装置の概略構成図である。
【図7】本発明の実施形態の変形例4に係る環境試験装置の概略構成図である。
【図8】(a)は露点温度が氷点以上の際の霜の形成過程の模式図であり、(b)は露点温度が氷点以下の際の霜の形成過程の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の実施形態の環境試験方法、及び環境試験装置の構成について、図面を参照しながら説明する。なお、説明は、実施形態の理解を容易にするためのものであり、これによって、本願発明が制限して理解されるべきではない。
【0044】
はじめに、自然界における霜の形成条件について説明する。
寒冷地において実際に屋外に自動車を放置し、自動車の表面に付着した霜を観察すると、実に様々な形状のものがある。代表的なものとして、自動車の表面に点状に付着した霜や、枝状の大きな結晶を構成して表面に広がっている霜がある。これらは、霜の形成過程が相違するが故に生じる相違であると予想される。
以下説明する。
【0045】
例えば、放射冷却によって地表にある自動車の表面が、上空の外気の露点温度より低温となる。その後、風や空気の自然対流等で、自動車の表面近傍に上空の空気が流れ込み、自動車の表面の低温にさらされて空気の温度が低下する。その結果、自動車の表面近傍で、前記空気が露点温度より低下し、空気中の水蒸気が相変化して、結露や霜となる。
しかしながら自動車の表面から一定の距離だけ離れると、自動車の表面温度による影響が皆無となり、屋外の気温と同一の温度となる。
【0046】
つまり、自動車の表面近傍では、自動車の表面温度、空気の流動状態、空気の露点温度、空気の乾球温度、空気の絶対湿度、自動車に冷熱を与える冷風の強度(風速、風量、風温)、空気の清浄度等の影響で、結露や着霜を起こしやすい不安定な領域(以下、中間領域と称する)を形成することになる。
この中間領域は、内部の温度や絶対湿度は均一ではなく、自動車表面に向かう勾配を持つか、風や自然対流の影響などで混沌としており、不均一なものと予想される。
【0047】
この状況を自動車の表面温度が摂氏零度近傍以下である場合で説明すると、高湿度の空気が自動車の近傍に接近すると、空気は温度低下し、中間領域を形成しはじめる。中間領域の温度が空気の露点温度以下になると、空気中の水蒸気は飽和して凝縮しようとする。そして、さらに自動車に近づいて、温度低下し過飽和となり、遂には摂氏零度近傍以下となり過冷却状態となる。このような状況下で空気中のダストや自動車表面の異物に接触すると、それぞれの状態によって相変化し、凝縮(結露)や凝結(着霜)し、最終的に自動車表面で霜を形成する。
また、自動車表面近傍で前記のように、空気中の水蒸気が相変化し体積を減少させると、周辺の気圧が低下し、さらに上空の空気を吸引するような気流が発生することになり、霜の形成を促進すると考えられる。
【0048】
従って、空気の流動状態や中間領域と他の位置との温度偏差、自動車表面温度、空気の相対湿度によって、さまざまなプロセスで霜が形成される。
流動状態が激しい、つまり風速が大きい場合は、自動車の表面に相変化を十分し終わらない状態の空気が衝突し、水滴の状態から着露する場合や、水蒸気の状態から結露する場合もある。
【0049】
また、無風に近い自然対流の場合は、自動車表面のダストや異物を核として、過飽和状態や過冷却状態の水蒸気が結露し、さらにそれを核として霜が成長していく場合がある。
さらに、自動車表面温度が摂氏零度近傍以下より十分に低い場合には、自動車表面近傍で過飽和状態や過冷却状態となり、それが空気中のダストと衝突して相変化し、霜を形成及び成長させ、多種多様な霜を生み出す。
【0050】
この様な状況を再現するためには、図8(a)の霜の形成過程の模式図に示すように、試験室90内に配置された被試験物100に冷風を吹き当てて、被試験物100の表面温度を例えば摂氏−5度に低下させ、試験室90内の上方から供給する空気の温度と湿度を摂氏5度、3.4g/m3(絶対湿度)≒50%RH(摂氏5度における相対湿度)とすれば、前記空気の露点温度は、摂氏−4.5度程度になる。
無風又は微風状態で被試験物100の近傍に前記空気が接近すると、被試験物100の放射冷却によって前記空気の温度は、摂氏−4.5度以下となり、被試験物100の表面又は異物等に接触し、水蒸気が相変化して凝結し、被試験物100に霜95が形成される。
あるいは、前記空気が被試験物100の近傍の空気中の塵99に接触し、水蒸気が相変化して凝結し、被試験物100に付着する。
前記の状況下では、被試験物100の表面に接触して相変化する割合が高いと思われる。
【0051】
また別の例として、図8(b)の霜の形成過程の模式図に示すように、試験室90内に配置された被試験物100に冷風を吹き当てて、被試験物100の表面温度を例えば摂氏−30度に低下させ、試験室90内の上方から供給する空気の温度と湿度を摂氏15度、11.5g/m3(絶対湿度)≒90%RH(摂氏15度における相対湿度)とすれば、前記空気の露点温度は、約摂氏14度となる。
このため、前記空気は、摂氏零度近傍以下にまで冷却される間に、空気中の塵99等に衝突して結露(相変化は凝縮)するか、又は過飽和の水蒸気となる。
【0052】
そして、摂氏零度近傍以下から、被試験物100の表面温度である摂氏−30度に冷却される間に、被試験物100の近傍の空気中の塵99等に衝突し、凝結して落下するか、過冷却状態で被試験物100に接触し、被試験物100の表面で瞬時に凝結する。
前記の過冷却状態では、空気中の塵99等が多ければ、被試験物100の近傍の空気中で相変化する割合が高くなる。
【0053】
上述した通り、被試験物100の表面温度と、試験室90内の上方から供給する空気の乾球温度及び露点温度と、被試験物100近傍の露点温度と乾球温度と絶対湿度と、被試験物100に吹き当てる冷風の強度(風速、風量、風温)を個別に制御することによって、被試験物100への着霜状態を変化させることが可能である。さらに、試験室90内の上方から供給する空気の被試験物100近傍での風速を制御することも望ましい。
前記パラメータ(変動要素)を所定の値に設定することによって、空気の性状を制御することができ、被試験物100の表面への着霜状態を自在に制御することが可能となる。
【0054】
続いて、本発明の実施形態に係る環境試験装置1の構成について、詳述する。
なお、本実施形態では図1に示すように、自動車を被試験物20としている。
図1に示すように、環境試験装置1は、試験室2と、冷却室3と、加湿室4と、制御装置65(制御手段)と、表示器66と、検知手段69を備えている。
【0055】
試験室2は、断熱壁30で囲まれた断熱箱31の内側の空間である。断熱壁30は、断熱材32を備えている。環境試験装置1は、被試験物20を出し入れするための扉(図示しない)を有している。
【0056】
冷却室3は、試験室2内に設けられ、送風管10と吸気管12を有している。冷却室3と試験室2は、送風管10と吸気管12によって連通している。送風管10の末端部11はラッパ状に大きく広がって開放されている。冷却室3内には、蒸発器44と送風機47が配置されている。
冷却室3は、一点鎖線で示す構成からなる冷却手段5を備えている。冷却手段5は、被試験物20を冷却するためのものであり、冷凍回路40(冷凍サイクル)を備えている。
冷凍回路40は、被試験物20を冷却するための装置であり、圧縮機41、凝縮器42、膨張弁43、蒸発器44から構成される。圧縮機41から蒸発器44に至る各装置は冷媒配管45によって接続されている。蒸発器44の近傍には送風機47が配置されており、凝縮器42の近傍にはファン48が配置されている。なお、冷凍回路40は公知の冷凍サイクルであるため、詳細な説明は省略する。
【0057】
加湿室4は、試験室2の天井の外側に設けられ、高湿度空気供給口13と吸気管14を有している。高湿度空気供給口13と吸気管14は、試験室2の天井面に開口している。ここで高湿度空気供給口13を試験室2の天井面に設けた理由は、試験室2の最も高い位置に高湿度空気供給口13を設け、高湿度空気供給口13から低温高湿度の空気が供給されることにより、自然対流に近い状態で試験室2内の湿度を上昇させ、被試験物20の近傍に拡散させることを意図したものである。
本実施形態では、上記した理由から、高湿度空気供給口13を試験室2の天井面に設けることが望ましいが、本発明は、高湿度空気供給口13の位置を天井面に限定するものではない。
しかしながら、高湿度空気供給口13の位置は、できるだけ高い位置に設けることが望ましい。少なくとも、被試験物たる自動車の全高以上の高さの位置に設けることが望ましい。より望ましくは、被試験物の全高の1.5倍以上の高さに設けることが推奨され、理想的には、被試験物の全高の3倍以上の高さに設けることが望ましい。
【0058】
加湿室4は、一点鎖線で示す構成からなる加湿手段6を備えている。加湿手段6は、試験室2内に低温高湿度の空気を送り込むための装置であり、冷凍回路50(冷凍サイクル)と加湿器60と、ヒーター61を備えている。
また、加湿室4内には、蒸発器54と、ヒーター61と、送風機57と、加湿器60が配置されている。
【0059】
ここで、加湿室4から試験室2内に供給される低温高湿度の空気の温度は、常温よりも低いものであり、おおよそ摂氏15度未満に調整された空気である。低温高湿度の空気のより望ましい温度は、摂氏10度前後である。低温高湿度の空気の温度は、試験室2内全体が摂氏零度近傍以下に冷却されることを防止するために、摂氏0度以上であることが望ましい。
低温高湿度の空気の湿度は、被試験物の表面で、容易に着霜する程度の湿度であることが望ましい。この観点から、低温高湿度の湿度は、5.6g/m3(絶対湿度)≒60%RH(摂氏10度における相対湿度)以上であることが推奨される。
ただし、試験中、試験室内が低温にさらされるから、試験室内において、無闇に結露することを防ぐため、低温高湿度の湿度は、8.9g/m3(絶対湿度)≒95%RH(摂氏10度における相対湿度)以下であることが望ましい。
【0060】
冷凍回路50は、加湿室4内の温度を調整するために設置されており、圧縮機51、凝縮器52、膨張弁53、蒸発器54から構成される。圧縮機51から蒸発器54に至る各装置は冷媒配管55によって接続されている。蒸発器54の近傍には送風機57が配置されており、凝縮器52の近傍にはファン58が配置されている。なお、冷凍回路50は公知の冷凍サイクルであるため、詳細な説明は省略する。
加湿器60は、加湿室4内の湿度を調整するために設置されている。なお、加湿器60は、公知のものであるため、詳細な説明は省略する。
ヒーター61は、加湿室4内の温度を調整するために設置されている。なお、ヒーター61は、公知のものであるため、詳細な説明は省略する。
【0061】
制御装置65(制御手段)は、環境試験装置1を制御するためのものであり、冷却手段5や加湿手段6を制御可能な装置である。また、プログラム等で試験室2内の温度と湿度を制御可能な装置である。
制御装置65は、プログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)やマイクロコンピュータ(マイコン)等で構成されることが望ましい。
また、制御装置65には表示器66が接続されており、表示器66に環境試験装置1の動作状態が表示される。
なお、表示器66は、タッチパネル機能を有した表示器で構成し、タッチパネル操作で環境試験装置1の動作モードを選択し、環境試験装置1を制御しても構わない。
【0062】
検知手段69は、温度計70、温湿度計71、温湿度計72、風速計75を有しており、各々制御装置65に接続され、各々の測定値は、制御装置65に出力される。なお、温度計70、温湿度計71、温湿度計72、風速計75と制御装置65との配線の図示は省略する。
詳述すると、温度計70は被試験物20の表面温度を測定するためのものであり、熱電対等の温度センサで構成することが望ましい。
温湿度計71は被試験物20の近傍の乾球温度と、絶対湿度と、露点温度等を測定するためのものであり、温湿度計72は、試験室2内の略中央付近の乾球温度と、絶対湿度と、露点温度等を測定するためのものである。温湿度計71と温湿度計72は、乾球温度と、湿球温度と、露点温度と、絶対湿度等が測定可能な装置であることが望ましく、検知プローブで測定した値をデジタル信号として出力可能な装置で構成されている。
風速計75は被試験物20の近傍の風速を測定するためのものであり、熱線式の風速計で構成することが望ましい。
【0063】
つぎに、本実施形態の環境試験装置1を用いた環境試験方法において、試験開始から被試験物20への着霜までの過程について、図2を参照しながら説明する。なお、下記試験方法の説明における各温度と各湿度は、検知手段69による検知結果に基づいて、制御装置65で検知及び計算等により求められるものとする。
【0064】
図2は、冷却手段5と加湿手段6の運転状態を示すタイムチャートである。
図2(a)は、加湿手段6における試験室2内に送り込む低温高湿度の空気の絶対湿度(g/m3)を縦軸に示している。なお、低温高湿度の空気は、摂氏10度(℃)に設定されているものとし、被試験物20の近傍で1m/s以下の風速となるよう試験室2内に送風されるものとする。
【0065】
図2(b)は冷却手段5における被試験物20を冷却するための冷風の温度(℃)を縦軸に示しており、図2(c)は冷却手段5における被試験物20を冷却するための冷風の風速(km/h)を縦軸に示している。
なお、図2(a)〜(c)の横軸は時間軸(min)を表している。
【0066】
図2のA〜Cは、各々試験開始、低温到達、着霜完了を示している。
まず、試験開始Aで、冷却手段5でつくられた風速20km/h、摂氏−35度(℃)の乾燥した冷風が、送風管10を介して被試験物20に向けて送風される。なお、この時、加湿手段6は動作させない。また、試験が開始される前は、試験室2内は低湿度環境に設定されている。
【0067】
続いて、試験開始Aから80分後の低温到達Bで、冷却手段5による送風を停止する。この時点で、被試験物20の表面温度は摂氏零度近傍以下の摂氏−35度(℃)まで冷やされている。
その結果、試験室2内の空気の温度が摂氏10度(℃)であるのに対して、被試験物20の温度だけが摂氏零度近傍以下の摂氏−35度(℃)にまで低下した状況、すなわち自然界で起こるような放射冷却現象である、上方よりも下方が冷却されているという気温の逆転現象が試験室内に再現される。
冷却手段5による送風の停止と同時に、加湿手段6でつくられた絶対湿度8.5g/m3≒90%RH(摂氏10度における相対湿度)、摂氏10度(℃)の低温高湿度の空気が、試験室2の天井側に備わった加湿室4から高湿度空気供給口13を介して試験室2内に供給され、試験室2内で拡散し、被試験物20の周囲に到達する。
【0068】
試験開始Aから90分後(低温到達Bから10分後)に、冷却手段5でつくられた風速5km/h、摂氏−30度(℃)の乾燥した冷風が、送風管10を介して被試験物20に向けて10分間送風され、その後に10分間停止する。その後、冷却手段5による送風と停止が10分おきに繰り返される。
被試験物20の周囲に絶対湿度8.5g/m3≒90%RH(摂氏10度における相対湿度)、摂氏10度(℃)の低温高湿度の空気を試験室2の天井側から供給し続け、被試験物20の周囲の空気中に含まれる水蒸気が、被試験物20の表面に付着して摂氏零度近傍以下まで冷却されて氷結し、着霜する。
【0069】
そして、試験開始Aから320分後(低温到達Bから240分後)まで着霜工程が続けられ、着霜完了Cに至り、冷却手段5による冷風の送風と、加湿手段6による低温高湿度の空気の供給を停止する。
【0070】
以上の説明のように、本実施形態の環境試験方法、及び環境試験装置1によれば、寒冷地と略同一の環境を、環境試験装置1内に作り出すことが可能である。よって、本発明を実施すると、自然界で生じる着霜と略同一の現象を再現でき、被試験物20(目的物)に着霜させることが可能となる。すなわち、本発明を実施すると、寒冷地に行くことなく、環境試験装置1にて容易に被試験物に着霜させることが可能である。
【0071】
本実施形態では、図2に示すタイムチャートを採用した環境試験方法を例に示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、被試験物20の表面温度と、試験室2内の上方から供給する空気の乾球温度及び露点温度と、被試験物20近傍の露点温度と乾球温度と絶対湿度と、冷却手段5による冷風の強度(風速、風量、風温)を個別に制御することによって、被試験物20への着霜状態を制御可能である。さらに、試験室20内の上方から供給する空気の被試験物100近傍での風速を制御することも望ましい。
前記パラメータ(変動要素)を所定の値に設定することによって、空気の性状を制御でき、被試験物20の表面への着霜状態を自在に制御可能となる。
【0072】
本実施形態の環境試験装置1は図1に示す構成を有しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本実施形態の変形例として、図3〜7に示すような構成を採用してもよく、環境試験装置1の各構成部材と同一のものについては、同じ構成番号を使用するものとする。
詳述すると、図3に示す変形例1に係る環境試験装置101では、加湿室4を試験室2の天井の外側に設けた構成を採用しており、試験室2の天井部分にダンパ80を配置し、加湿室4内から試験室2内へ送風する空気の量を、ダンパ80の開閉度や送風機57の送風量で調整する。
また、加湿室4は、加湿室4内に仕切り板88を配置し、空気循環流路87を設けている。空気循環流路87は、試験室2に供給するための空気が目的とする温度や湿度、及び風速となるまで空気を循環させ、調整することができるものである。
さらに、送風機57は、インバータ92で制御を行い、被試験物20の近傍で無風拡散状態となるよう低速運転を実施することができる。
なお、ダンパ80の代わりに、図4に示すような湾曲した形状のダンパ85を採用してもよい。
【0073】
図5に示す変形例2に係る環境試験装置102では、加湿室4を試験室2の天井の外側に設けた構成を採用しており、試験室2の天井にスリット81を設け、スリット81の下側にファン82を複数台配置し、ファン82で送風する空気の風量を調整する。
なお、ファン82で送風する空気は1m/s以下の風速とし、加湿室4の空気は、被試験物20の近傍では、ほぼ無風に近くなるようになっている。
【0074】
図6に示す変形例3に係る環境試験装置103では、加湿室4を試験室2内に設けた構成を採用しており、加湿室4を冷却室3の上部側に配置し、加湿室4内の空気を天井に向けられた送風機57の先端から送風して、拡散させる。
【0075】
図7に示す変形例4に係る環境試験装置104では、加湿室4を試験室2内に設けた構成を採用しており、加湿室4を試験室2内の天井側に配置し、加湿室4にスリット81を設けて、加湿室4内の空気をスリット81の複数の開口から拡散させる。
【0076】
上記した実施形態では、冷却手段5による冷風の吹き出し口である送風管10を、試験室2の1箇所に設けた例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、2箇所以上に送風管10を設けた冷却手段や、被試験物20の周囲全周から送風する冷却手段を採用してもよい。
また、上記した実施形態では、冷却手段5を試験室2内に設けた例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、冷却手段5を試験室2の外側に置き、ダクト接続することで冷風を供給する構成としてもよい。
【0077】
上記した実施形態では、自動車を被試験物20とする例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、あらゆる車両を被試験物とすることができ、また車両以外のものを被試験物としてもよい。
【0078】
上記した実施形態では、環境試験装置1を用いて被試験物の表面に「着霜」させる例を示したが、環境試験装置1は着霜以外の用途にも使用できる。例えば、被試験物20に雨氷を付着させる試験や、被試験物20に霧氷を付着させる試験等に本発明の環境試験装置を用いてもよい。
ちなみに、雨氷とは、一般に均質で透明な氷層が地物に付着する現象であり、過冷却した雨(着氷性の雨)等が、摂氏零度又は摂氏零度よりわずかに高い温度の地物に接触して凍結したものである。
霧氷とは、白色又は半透明の氷層が地物に付着する現象であり、樹霜と、樹氷と、粗氷の3種類をまとめた総称である。
樹霜は、主に水蒸気の凝結によって生じた氷の結晶からなり、針形状や平形状、杯形状等の結晶形が認められることが多いとされている。
樹氷は、主に過冷却した霧粒等が、地物に吹き付けられてできる白色半透明の脆い氷である。
粗氷は、樹氷と同様にしてできるとされており、半透明又は透明の氷の塊である。
【0079】
本実施形態では、図2に示すタイムチャートを採用した環境試験方法を例に示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、加湿手段6により予め加湿室4内を所定の湿度に保つ運転を行い、冷却手段5の停止と同時に試験室2内への送風を開始するものであってもよい。
【0080】
本実施形態では、冷却手段5による送風を例に示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ペルチェ素子を複数用いて、被試験物を冷却しても構わない。
【符号の説明】
【0081】
1 環境試験装置
2 試験室
3 冷却室
4 加湿室
5 冷却手段
6 加湿手段
20 被試験物
65 制御装置(制御手段)
95 霜
99 塵
100 被試験物
101 環境試験装置
102 環境試験装置
103 環境試験装置
104 環境試験装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境試験装置の試験室内に被試験物を配置し、当該試験室内の被試験物の表面温度を摂氏零度近傍以下に低下させ、その後に少なくとも被試験物の近傍の絶対湿度を上昇させ、被試験物の表面及び/又はその近傍で空気中の水蒸気を相変化させて被試験物の表面に着霜させることを特徴とする環境試験方法。
【請求項2】
露点温度が被試験物の表面温度以上である空気を、被試験物の近傍で無風状態又は風速4m/s以下の微風状態になるよう供給して少なくとも被試験物の近傍の絶対湿度を上昇させることを特徴とする請求項1に記載の環境試験方法。
【請求項3】
被試験物の表面温度を摂氏零度近傍以下であって且つ置かれた試験室の平均気温よりも低い温度に低下させることを特徴とする請求項1又は2に記載の環境試験方法。
【請求項4】
一定時間に渡って冷風を吹き当てて被試験物の表面温度を摂氏零度近傍以下に低下させ、その後、冷風の吹き当てを一時的に又は恒久的に停止し、その後に少なくとも被試験物の近傍の空気の露点温度が、被試験物の表面温度以上となるよう絶対湿度を上昇させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の環境試験方法。
【請求項5】
一定時間に渡って冷風を吹き当てて被試験物の表面温度を摂氏零度近傍以下に低下させ、その後、単位時間当たりの被試験物に与えられる冷熱量を減少させ、その後に少なくとも被試験物の近傍の空気の露点温度が、被試験物の表面温度以上となるよう絶対湿度を上昇させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の環境試験方法。
【請求項6】
試験室内部に被試験物の上方から、その露点温度が被試験物の表面温度以上である空気を、被試験物の近傍で無風又は微風状態になるよう供給することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の環境試験方法。
【請求項7】
湿度を含む空気を被試験物の近傍に供給して被試験物の近傍の絶対湿度を上昇させるものであり、被試験物の表面温度と、被試験物の近傍に供給する前記空気の乾球温度及び露点温度と、被試験物の近傍の風速と、被試験物に冷熱を与える冷風の強度とを制御可能であることを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載の環境試験方法。
【請求項8】
被試験物の表面温度と、被試験物の近傍における空気の乾球温度と、被試験物の近傍における空気の露点温度と、被試験物の近傍の風速と、被試験物に冷熱を与える冷風の強度とを制御可能であることを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載の環境試験方法。
【請求項9】
被試験物を収容する試験室と、少なくとも被試験物の表面温度を低下させる冷却手段と、少なくとも被試験物の近傍の空気の露点温度が被試験物の表面温度以上となるように絶対湿度を上昇させる加湿手段とを備え、前記冷却手段で被試験物の表面温度を摂氏零度近傍以下に低下させ、被試験物の表面及び/又はその近傍で空気中の水蒸気を相変化させて、被試験物の表面に着霜させる能力を有することを特徴とする環境試験装置。
【請求項10】
冷却手段は、被試験物に冷風を吹き当てて被試験物の表面温度を低下させるものであることを特徴とする請求項9に記載の環境試験装置。
【請求項11】
冷却手段と加湿手段はそれぞれ個別の送風手段を有し、前記加湿手段は加湿空気を生成し、送風手段で被試験物の近傍に前記加湿空気を送風するものであることを特徴とする請求項9又は10に記載の環境試験装置。
【請求項12】
冷風の強度を変更するか、或いは冷風を間欠的に被試験物に吹き当てることによって、単位時間当たりの被試験物に与えられる冷熱量を増減させることが可能であることを特徴とする請求項10又は11に記載の環境試験装置。
【請求項13】
試験室の上方に高湿度空気供給口があり、当該高湿度空気供給口から、露点温度が被試験物の表面温度以上となる絶対湿度の空気を試験室内に供給し、被試験物の周囲の湿度を上昇させることを特徴とする請求項9乃至12のいずれかに記載の環境試験装置。
【請求項14】
加湿手段は加湿空気を生成して当該加湿空気を被試験物の近傍に供給するものであり、被試験物の近傍の風速を検知する風速検知手段と、被試験物の表面温度を検知する表面温度検知手段と、加湿手段によって被試験物の近傍に供給される加湿空気の露点温度を検知する露点検知手段と、加湿手段によって被試験物の近傍に供給される加湿空気の乾球温度を検知する供給空気温度検知手段とを有し、被試験物の表面温度と、被試験物の近傍に供給する前記加湿空気の露点温度と、被試験物の近傍に供給する前記加湿空気乾球温度と、被試験物の近傍の風速と、被試験物に冷熱を与える冷風の強度とを制御する制御手段を有することを特徴とする請求項10乃至13のいずれかに記載の環境試験装置。
【請求項15】
被試験物の近傍の風速を検知する風速検知手段と、被試験物の表面温度を検知する表面温度検知手段と、被試験物の近傍における空気の露点温度を検知する露点検知手段と、被試験物の近傍における空気の乾球温度を検知する近傍温度検知手段とを有し、被試験物の表面温度と、被試験物の近傍における空気の露点温度と、被試験物の近傍における空気の乾球温度と、被試験物の近傍の風速と、冷風の強度とを制御する制御手段を有することを特徴とする請求項10乃至13のいずれかに記載の環境試験装置。
【請求項16】
被試験物が自動車であり、被試験物の前方から被試験物に冷風を吹き付けて、被試験物の表面温度を摂氏零度近傍以下にした後に、所定の温湿度の空気を1m/s以下の風速で被試験物の上表面の略全体を覆うように供給することを特徴とする請求項9乃至15のいずれかに記載の環境試験装置。
【請求項17】
試験室内の空気中に含まれる微小な液体及び微小な固体の量を制御する微粒子制御手段を有することを特徴とする請求項9乃至16のいずれかに記載の環境試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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