説明

環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法

【課題】
汎用的な原料から短時間で経済的な方法且つ高い選択率で環式ポリアリーレンスルフィドを得る製造方法を提供する。
【解決手段】
スルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物および周期表第8族から第11族かつ第4周期から第6周期の金属を含む錯体を、スルフィド化剤のイオウ原子1モルに対して1.25リットル以上の有機極性溶媒中で接触させることを特徴とする環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法に関し、特にスルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物を出発原料(モノマー)とする製造方法において、触媒として周期表第8族から第11族かつ第4周期から第6周期の金属を含む錯体を用いることで、高い選択率で得ることができる環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
芳香族環式化合物はその環状であることから生じる特性に基づく高機能材料や機能材料への応用展開可能性、たとえば包接能を有する化合物としての特性や、開環重合による高分子量直鎖状高分子の合成のための有効なモノマーとしての活用など、その構造に由来する特異性で近年注目を集めている。環式ポリアリーレンスルフィド(以下、ポリアリーレンスルフィドをPASと略する場合もある)も芳香族環式化合物の範疇に属し、上記同様に注目に値する化合物である。
【0003】
環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法としては、たとえばジアリールジスルフィド化合物を超希釈条件下で酸化重合する方法が提案されている(たとえば特許文献1参照。)。この方法では環式ポリアリーレンスルフィドが高選択で生成し、線状ポリアリーレンスルフィドはごく少量しか生成しないと推測され、確かに環式ポリアリーレンスルフィドが高収率で得られると考えられる。しかしながら、この方法では超希釈条件で反応を行うことが必須とされており、反応容器単位容積あたりに得られる環式ポリアリーレンスルフィドはごくわずかであり、効率的に環式ポリアリーレンスルフィドを得るとの観点では課題の多い方法であった。また該方法の反応温度は室温近傍であるため、反応に数十時間の長時間が必要であり生産性に劣る方法であった。さらに該方法で副生するポリアリーレンスルフィドは原料のジアリールジスルフィド由来のジスルフィド結合を含む分子量の低いものであり、熱安定性の低い実用価値の無いものであった。また、この方法で副生するポリアリーレンスルフィドは、目的物である環式ポリアリーレンスルフィドと分子量が近いために、環式ポリアリーレンスルフィドと副生するポリアリーレンスルフィドの分離が困難であり高純度な環式ポリアリーレンスルフィドを効率よく得ることは極めて困難であった。加えて、該方法では酸化重合の進行のために例えばジクロロジシアノベンゾキノンなど高価な酸化剤が原料のジアリールジスルフィドと等量必要であり、安価に環式ポリアリーレンスルフィドを得ることはできなかった。酸化重合を金属触媒の存在下、酸化剤として酸素を利用する方法も提案されており、この方法では酸化剤が安価であるが、反応の制御が困難で多種多量の副生オリゴマーが生成し、また他方では反応に極めて長時間が必要など課題が多く、いずれの場合でも純度の高い環式ポリアリーレンスルフィドを安価に効率良く得ることはできなかった。
【0004】
環式ポリアリーレンスルフィドの他の製造方法として、4−ブロモチオフェノールの銅塩をキノリン中の超希釈条件下で加熱する方法が開示されている。この方法も前記特許文献1と同様に超希釈条件が必須であり、また反応に長時間が必要であり生産性の極めて低い方法であった。さらにこの方法では副生する臭化銅を生成物である環式ポリアリーレンスルフィドから分離することが困難であり、得られる環式ポリアリーレンスルフィドは純度の低いものであった(例えば特許文献2参照。)。
【0005】
また、ポリアリーレンスルフィドを得る方法として、少なくとも1個の核置換ハロゲンを含有する芳香族化合物またはチオフェンとアルカリ金属モノスルフィドとを極性有機溶媒中で高められた温度において反応せしめる方法が開示されている(例えば特許文献3、特許文献4,特許文献5参照)。これらの方法は本発明の目的と異なりポリアリーレンスルフィドを得ることを目的としているため、スルフィド化剤に対する有機極性溶媒の使用量を少なくしており、有機極性溶媒をスルフィド化剤のイオウ原子1モルあたり1.25リットル以上用いた反応については何ら開示されていないのみならず、スルフィド化剤のイオウ原子1モルに対し有機極性溶媒を1リットルを越えて用いた場合には、有用な生成物が得られないことが明示されている。
【0006】
さらに、ポリアリーレンスルフィドを得る方法として、アルカリ金属硫化物および/またはアルカリ金属水硫化物と、ポリハロゲン化芳香族化合物と、周期表の第VIII族金属を含む金属化合物とを、有機極性溶媒中で反応せしめる方法が開示されている(たとえば特許文献6参照)。この方法は高純度のポリアリーレンスルフィドを短い重合プロセス時間で効率的に製造することを目的としているため、スルフィド化剤に対する有機極性溶媒の使用量を少なくしており、スルフィド化剤のイオウ原子1モルあたりの有機極性溶媒の量は、0.048〜0.965リットルの範囲にあると開示されており、さらにこの範囲を超えると、有用な生成物が得られないことが明示されている。
【0007】
汎用的な原料からの環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法として、ジハロゲン化芳香族化合物としてp−ジクロロベンゼンと、アルカリ金属硫化物として硫化ナトリウムを有機極性溶媒であるN−メチルピロリドン中で反応させ、ついで加熱減圧下で溶媒を除去後、水で洗浄することで得られたポリフェニレンスルフィドを、塩化メチレンで抽出して得られた抽出液の飽和溶液部分から回収する方法が開示されている(たとえば特許文献7参照。)。この方法では生成物の大部分が高分子量ポリフェニレンスルフィドであり、環式ポリアリーレンスルフィドが極微量(収率1%未満)しか得られないという問題があった。
【特許文献1】特許第3200027号公報
【特許文献2】米国特許第5869599号公報
【特許文献3】特公昭45−3368号公報
【特許文献4】特公昭52−12240号公報
【特許文献5】特公昭63−3375号公報
【特許文献6】特開2001−247676
【特許文献7】特開平05−163349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来技術の課題を解決し、環式ポリアリーレンスルフィドを汎用的な原料から高い選択率で製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はかかる課題を解決するために、次の手段を採用するものである。
【0010】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
1.スルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物および周期表第8族から第11族かつ第4周期から第6周期の金属を含む錯体を、スルフィド化剤のイオウ原子1モルに対して1.25リットル以上の有機極性溶媒中で接触させることを特徴とする環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
2.前記金属を含む錯体が、周期表第10族の金属を含む錯体であることを特徴とする1記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
3.前記金属を含む錯体が、パラジウムを含む錯体であることを特徴とする2記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
4.前記金属を含む錯体が、2座以上で配位する配位子を含む錯体であることを特徴とする1〜3のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
5.前記金属を含む錯体が、剛直な骨格を有する配位子を含む錯体であることを特徴とする4記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
6.スルフィド化剤と周期表第8族から第11族かつ第4周期から第6周期の金属を含む錯体とのモル比が、1:0.00001〜1:0.2の範囲であることを特徴とする1〜5のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、汎用的な原料から短時間で経済的な方法且つ高い選択率で環式ポリアリーレンスルフィドを得る製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
(1)環式ポリアリーレンスルフィド
本発明における環式ポリアリーレンスルフィドとは、式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする環式化合物であり、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有する下記一般式(A)のごとき化合物である。
【0014】
【化1】

【0015】
ここでArとしては下記式(B)〜式(M)などで表される単位を例示できるが、このなかでも式(B)〜式(K)が好ましく、式(B)及び式(C)がより好ましく、式(B)が特に好ましい。
【0016】
【化2】

【0017】
【化3】

【0018】
【化4】

【0019】
なお、環式ポリアリーレンスルフィドにおいては前記式(B)〜式(M)などの繰り返し単位をランダムに含んでも良いし、ブロックで含んでも良く、それらの混合物のいずれかであってもよい。これらの代表的なものとして、環式ポリフェニレンスルフィド、環式ポリフェニレンスルフィドスルホン、環式ポリフェニレンスルフィドケトン、これらが含まれる環式ランダム共重合体、環式ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましい環式ポリアリーレンスルフィドとしては、主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位
【0020】
【化5】

【0021】
を80モル%以上、特に90モル%以上含有する環式ポリフェニレンスルフィド(以下、環式PPSと略すこともある)が挙げられる。
【0022】
環式ポリアリーレンスルフィドの前記(A)式中の繰り返し数mに特に制限はないが、2〜50が好ましく、2〜25がより好ましく、3〜20が更に好ましい範囲として例示できる。
【0023】
また、環式ポリアリーレンスルフィドは、単一の繰り返し数を有する単独化合物、異なる繰り返し数を有する環式ポリアリーレンスルフィドの混合物のいずれでも良い。
【0024】
(2)スルフィド化剤
本発明で用いるスルフィド化剤とは、ジハロゲン化芳香族化合物にスルフィド結合を導入できるものであれば良く、例えばアルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。
【0025】
アルカリ金属硫化物の具体例としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムおよびこれら2種類以上の混合物を挙げることができ、なかでも硫化リチウムおよび/または硫化ナトリウムが好ましく、硫化ナトリウムがより好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。なお、水性混合物とは水溶液、もしくは水溶液と固体成分の混合物、もしくは水と固体成分の混合物のことをさす。一般的に入手できる安価なアルカリ金属硫化物は水和物または水性混合物であるので、この様な形態のアルカリ金属硫化物を用いることが好ましい。
【0026】
アルカリ金属水硫化物の具体例としては、例えば水硫化リチウム、水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化リチウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウムおよびこれら2種類以上の混合物を挙げることができ、なかでも水硫化リチウムおよび/または水硫化ナトリウムが好ましく、水硫化ナトリウムがより好ましく用いられる。
【0027】
また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系中で調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、あらかじめアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を接触させて調製したアルカリ金属硫化物も用いることができる。これらのアルカリ金属水硫化物およびアルカリ金属水酸化物は水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができ、水和物または水性混合物が入手のしやすさ、コストの観点から好ましい。
【0028】
さらに、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素から反応系内で調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、あらかじめ水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素を接触させて調製したアルカリ金属硫化物を用いることもできる。硫化水素は気体状態、液体状態、水溶液状態のいずれの形態で用いても差し障り無い。
【0029】
本発明において、スルフィド化剤の量は、脱水操作などによりジハロゲン化芳香族化合物との反応開始前にスルフィド化剤の一部損失が生じる場合には、実際の仕込み量から当該損失分を差し引いた残存量を意味するものとする。
【0030】
なお、スルフィド化剤と共に、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物を併用することも可能である。アルカリ金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムおよびこれら2種類以上の混合物を好ましいものとして挙げることができ、アルカリ土類金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどが挙げられ、なかでも水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。
【0031】
スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいが、この使用量はアルカリ金属水硫化物1モルに対し0.95モルから1.50モル、好ましくは1.00モルから1.25モル、更に好ましくは1.005から1.200モルの範囲が例示できる。スルフィド化剤として硫化水素を用いる場合にはアルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましく、この場合のアルカリ金属水酸化物の使用量は硫化水素1モルに対し2.0〜3.0モル、好ましくは2.01モル〜2.50モル、更に好ましくは2.04〜2.40モルの範囲が例示できる。
【0032】
(3)ジハロゲン化芳香族化合物
本発明で用いるジハロゲン化芳香族化合物としては、p−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジブロモベンゼン、o−ジブロモベンゼン、m−ジブロモベンゼン、1−ブロモ−4−クロロベンゼン、1−ブロモ−3−クロロベンゼンなどのジハロゲン化ベンゼン、及び1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼン、1−メチル−2,5−ジクロロベンゼン、1,4−ジメチル−2,5−ジクロロベンゼン、1,3−ジメチル−2,5−ジクロロベンゼン、3,5−ジクロロ安息香酸などのハロゲン以外の置換基を含むジハロゲン化芳香族化合物などを挙げることができる。なかでも、p−ジクロロベンゼンに代表されるp−ジハロゲン化ベンゼンを主成分にするジハロゲン化芳香族化合物が好ましい。特に好ましくは、p−ジクロロベンゼンを80〜100モル%含むものであり、さらに好ましくは90〜100モル%含むものである。また、環式ポリアリーレンスルフィド共重合体を製造するために異なる2種以上のジハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて用いることも可能である。
【0033】
ジハロゲン化芳香族化合物の使用量は、スルフィド化剤のイオウ成分1モル当たり0.9〜2.0モルの範囲であることが好ましく、0.95〜1.5モルの範囲がより好ましく、1.005〜1.2モルの範囲が更に好ましい。
【0034】
(4)有機極性溶媒
本発明の環式ポリアリーレンスルフィドの製造においては反応溶媒として有機極性溶媒を用いるが、なかでも有機アミド溶媒を用いるのが好ましい。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミドなどに代表されるアプロチック有機溶媒、及びこれらの混合物などが、反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでもN−メチル−2−ピロリドンが好ましく用いられる。
【0035】
本発明において環式ポリアリーレンスルフィドの製造における反応溶媒として用いる有機極性溶媒の使用量は、スルフィド化剤のイオウ性分1モルに対し1.25リットル以上であり、好ましくは1.5リットル以上、より好ましくは2リットル以上である。使用量の上限に特に制限はないが、より効率よく環式ポリアリーレンスルフィドを製造するとの観点から、スルフィド化剤のイオウ成分1モルに対し50リットル以下とすることが好ましく、20リットル以下がより好ましく、15リットル以下が更に好ましい。なお、ここでの溶媒使用量は常温常圧下における溶媒の体積を基準とする。有機極性溶媒の使用量を多くすると、環式ポリアリーレンスルフィド生成の選択率が向上するが、多すぎる場合、反応容器の単位体積当たりの環式ポリアリーレンスルフィドの生成量が低下する傾向に有り、更に、反応に要する時間が長時間化する傾向がある。環式ポリアリーレンスルフィドの生成選択率と生産性を両立するとの観点で前記した有機極性溶媒の使用量範囲とすることが好ましい。なお、一般的な環式化合物の製造における溶媒の使用量は極めて多い場合が多く、本発明の好ましい使用量範囲では効率よく環式化合物を得られないことが多い。本発明では一般的な環式化合物製造の場合と比べて、溶媒使用量が比較的少ない条件下、即ち前記した好ましい溶媒使用量上限値以下の場合でも、効率よく環式ポリアリーレンスルフィドが得られる。ここで、反応混合物における有機極性溶媒の使用量とは、反応系内に導入した有機極性溶媒から、反応系外に除去された有機極性溶媒を差し引いた量である。
【0036】
(5)周期表第8族から第11族かつ第4周期から第6周期の金属を含む錯体
本発明においては、主に環式ポリアリーレンスルフィドの選択率を向上させる目的で周期表第8族から第11族かつ第4周期から第6周期の金属を含む錯体を用いることを特徴とする。
【0037】
周期表第8族から第11族かつ第4周期から第6周期の金属の具体例としては、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金などが挙げられるが、中でもルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金が好ましく、特にパラジウムが好ましい。
【0038】
ここで用いる金属を含む錯体とは、具体的にはエチレン、プロペン、シクロオクテン、1,5−ヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、2,5−ノルボルナジエン、1,3,5,7−シクロオクタテトラエンなどに代表されるアルケン配位子、N,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン、2,2’−ビピリジン、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N、Nジメチルアミノ)ビフェニルなどに代表されるアミン配位子、一酸化炭素配位子、トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ(p−トリル)ホスフィン、トリ(p−アニシル)ホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、フェニルジメチルホスフィン、p−メチルホスホレン、p−メチルホスホール、9−メチル−9−ホスファビシクロ[4,2,1]ノナン、1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジエチルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,1’−ビス(ジメチルホスフィノ)フェロセン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテンなどに代表されるホスフィン配位子、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、1−ホスファ−2,6,7−トリオキサ−4−エチルビシクロ[2,2,2]オクタンなどに代表されるホスファイト配位子、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどに代表されるニトリル配位子、メチルイソニトリル、フェニルイソニトリルなどに代表されるイソニトリル配位子から選ばれる配位子、好ましくは、N,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン、2,2’−ビピリジン、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジエチルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテンなどに代表される金属に対して2座以上で配位可能な配位子、更に好ましくは2,2’−ビピリジン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニルなどに代表される剛直な骨格を有する配位子と、周期表第8族から第11族かつ第4周期から第6周期の金属との錯体および/または周期表第8族から第11族かつ第4周期から第6周期の金属の酢酸塩、アセチルアセトナート塩、ジベンジリデンアセトナート塩、ハライド塩、硫酸塩、硝酸塩、有機塩、無機塩などから選ばれる少なくとも1種、好ましくは酢酸塩、アセチルアセトナート塩、ジベンジリデンアセトナート塩から選ばれる1種である。ここで言う剛直な骨格を有する配位子とは、とり得る立体配座が熱力学的に限定される骨格を持ち、金属に配位し得る元素の配向を固定できる構造を有する配位子のことを示す。
【0039】
周期表第8族から第11族かつ第4周期から第6周期の金属を含む錯体としては、上記の配位子と周期表第8族から第11族かつ第4周期から第6周期の金属との錯体および/または周期表第8族から第11族かつ第4周期から第6周期の金属の酢酸塩、ジベンジリデンアセトナート塩、ハライド塩、硫酸塩、硝酸塩、有機塩、無機塩などから選ばれる少なくとも1種からなる錯体であり、好ましくはルテニウムアセチルアセトナートとN,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン、ルテニウムアセチルアセトナートと2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、ルテニウムアセチルアセトナートと2,2’−ビピリジン、ルテニウムアセチルアセトナートと1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、ルテニウムアセチルアセトナートと1,2−ビス(ジエチルホスフィノ)エタン、ルテニウムアセチルアセトナートと1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、ルテニウムアセチルアセトナートと1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、ルテニウムアセチルアセトナートと1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、ルテニウムアセチルアセトナートと4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウムダイマーとN,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウムダイマーと2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウムダイマーと2,2’−ビピリジン、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウムダイマーと1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウムダイマーと1,2−ビス(ジエチルホスフィノ)エタン、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウムダイマーと1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウムダイマーと1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウムダイマーと1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウムダイマーと4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、クロロノルボルナジエンロジウムダイマーとN,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン、クロロノルボルナジエンロジウムダイマーと2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、クロロノルボルナジエンロジウムダイマーと2,2’−ビピリジン、クロロノルボルナジエンロジウムダイマーと1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、クロロノルボルナジエンロジウムダイマーと1,2−ビス(ジエチルホスフィノ)エタン、クロロノルボルナジエンロジウムダイマーと1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、クロロノルボルナジエンロジウムダイマーと1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、クロロノルボルナジエンロジウムダイマーと1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、クロロノルボルナジエンロジウムダイマーと4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムとN,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムと2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムと2,2’−ビピリジン、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムと1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムと1,2−ビス(ジエチルホスフィノ)エタン、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムと1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムと1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムと1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムと4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、酢酸ロジウムダイマーとN,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン、酢酸ロジウムダイマーと2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、酢酸ロジウムダイマーと2,2’−ビピリジン、酢酸ロジウムダイマーと1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、酢酸ロジウムダイマーと1,2−ビス(ジエチルホスフィノ)エタン、酢酸ロジウムダイマーと1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、酢酸ロジウムダイマーと1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、酢酸ロジウムダイマーと1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、酢酸ロジウムダイマーと4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、ロジウムアセチルアセトナートとN,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン、ロジウムアセチルアセトナートと2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、ロジウムアセチルアセトナートと2、2’−ビピリジン、ロジウムアセチルアセトナートと1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、ロジウムアセチルアセトナートと1,2−ビス(ジエチルホスフィノ)エタン、ロジウムアセチルアセトナートと1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、ロジウムアセチルアセトナートと1、4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、ロジウムアセチルアセトナートと1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、ロジウムアセチルアセトナートと4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、クロロカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)イリジウムとN,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン、クロロカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)イリジウムと2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N、Nジメチルアミノ)ビフェニル、クロロカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)イリジウムと2,2’−ビピリジン、クロロカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)イリジウムと1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、クロロカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)イリジウムと1,2−ビス(ジエチルホスフィノ)エタン、クロロカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)イリジウムと1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、クロロカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)イリジウムと1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、クロロカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)イリジウムと1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、クロロカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)イリジウムと4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、クロロ−1,5−シクロオクタジエンイリジウムダイマーとN,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン、クロロ−1,5−シクロオクタジエンイリジウムダイマーと2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、クロロ−1,5−シクロオクタジエンイリジウムダイマーと2,2’−ビピリジン、クロロ−1,5−シクロオクタジエンイリジウムダイマーと1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、クロロ−1,5−シクロオクタジエンイリジウムダイマーと1,2−ビス(ジエチルホスフィノ)エタン、クロロ−1,5−シクロオクタジエンイリジウムダイマーと1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、クロロ−1,5−シクロオクタジエンイリジウムダイマーと1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、クロロ−1,5−シクロオクタジエンイリジウムダイマーと1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、クロロ−1,5−シクロオクタジエンイリジウムダイマーと4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、1,5−シクロオクタジエン(アセチルアセトナート)イリジウムとN.NN,N−テトラメチルエチレンジアミン、1,5−シクロオクタジエン(アセチルアセトナート)イリジウムと2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、1,5−シクロオクタジエン(アセチルアセトナート)イリジウムと2,2’−ビピリジン、1,5−シクロオクタジエン(アセチルアセトナート)イリジウムと1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、1,5−シクロオクタジエン(アセチルアセトナート)イリジウムと1,2−ビス(ジエチルホスフィノ)エタン、1,5−シクロオクタジエン(アセチルアセトナート)イリジウムと1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,5−シクロオクタジエン(アセチルアセトナート)イリジウムと1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,5−シクロオクタジエン(アセチルアセトナート)イリジウムと1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、1,5−シクロオクタジエン(アセチルアセトナート)イリジウムと4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、イリジウムアセチルアセトナートとN,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン、イリジウムアセチルアセトナートと2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、イリジウムアセチルアセトナートと2,2’−ビピリジン、イリジウムアセチルアセトナートと1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、イリジウムアセチルアセトナートと1,2−ビス(ジエチルホスフィノ)エタン、イリジウムアセチルアセトナートと1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、イリジウムアセチルアセトナートと1、4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、イリジウムアセチルアセトナートと1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、イリジウムアセチルアセトナートと4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9、9−ジメチルキサンテン、酢酸ニッケルとN,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン、酢酸ニッケルと2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、酢酸ニッケルと2,2’−ビピリジン、酢酸ニッケルと1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、酢酸ニッケルと1、2−ビス(ジエチルホスフィノ)エタン、酢酸ニッケルと1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、酢酸ニッケルと1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、酢酸ニッケルと1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、酢酸ニッケルと4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、ニッケルアセチルアセトナートとN,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン、ニッケルアセチルアセトナートと2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、ニッケルアセチルアセトナートと2,2’−ビピリジン、ニッケルアセチルアセトナートと1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、ニッケルアセチルアセトナートと1、2−ビス(ジエチルホスフィノ)エタン、ニッケルアセチルアセトナートと1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、ニッケルアセチルアセトナートと1、4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、ニッケルアセチルアセトナートと1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、ニッケルアセチルアセトナートと4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケルとN,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケルと2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケルと2,2’−ビピリジン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケルと1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、テトラキス(トリフェニ

ルホスフィン)ニッケルと1、2−ビス(ジエチルホスフィノ)エタン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケルと1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケルと1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケルと1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケルと4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケルとN、N、N、N−テトラメチルエチレンジアミン、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケルと2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケルと2,2’−ビピリジン、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケルと1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケルと1,2−ビス(ジエチルホスフィノ)エタン、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケルと1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケルと1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケルと1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケルと4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、酢酸パラジウムとN,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン、酢酸パラジウムと2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、酢酸パラジウムと2、2’−ビピリジン、酢酸パラジウムと1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、酢酸パラジウムと1,2−ビス(ジエチルホスフィノ)エタン、酢酸パラジウムと1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、酢酸パラジウムと1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、酢酸パラジウムと1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、酢酸パラジウムと4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、パラジウムアセチルアセトナートとN,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン、パラジウムアセチルアセトナートと2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、パラジウムアセチルアセトナートと2,2’−ビピリジン、パラジウムアセチルアセトナートと1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、パラジウムアセチルアセトナートと1,2−ビス(ジエチルホスフィノ)エタン、パラジウムアセチルアセトナートと1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、パラジウムアセチルアセトナートと1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、パラジウムアセチルアセトナートと1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、パラジウムアセチルアセトナートと4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムとN,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムと2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムと2,2’−ビピリジン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムと1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムと1,2−ビス(ジエチルホスフィノ)エタン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムと1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムと1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムと1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムと4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9、9−ジメチルキサンテン、アリルパラジウムクロライドダイマーとN,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン、アリルパラジウムクロライドダイマーと2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、アリルパラジウムクロライドダイマーと2,2’−ビピリジン、アリルパラジウムクロライドダイマーと1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、アリルパラジウムクロライドダイマーと1,2−ビス(ジエチルホスフィノ)エタン、アリルパラジウムクロライドダイマーと1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、アリルパラジウムクロライドダイマーと1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、アリルパラジウムクロライドダイマーと1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、アリルパラジウムクロライドダイマーと4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、トリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムとN,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン、トリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムと2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、トリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムと2,2’−ビピリジン、トリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムと1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、トリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムと1,2−ビス(ジエチルホスフィノ)エタン、トリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムと1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、トリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムと1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、トリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムと1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、トリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムと4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、酢酸白金とN,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン、酢酸白金と2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、酢酸白金と2,2’−ビピリジン、酢酸白金と1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、酢酸白金と1,2−ビス(ジエチルホスフィノ)エタン、酢酸白金と1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、酢酸白金と1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、酢酸白金と1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、酢酸白金と4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、白金アセチルアセトナートとN,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン、白金アセチルアセトナートと2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、白金アセチルアセトナートと2,2’−ビピリジン、白金アセチルアセトナートと1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、白金アセチルアセトナートと1,2−ビス(ジエチルホスフィノ)エタン、白金アセチルアセトナートと1、3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、白金アセチルアセトナートと1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、白金アセチルアセトナートと1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、白金アセチルアセトナートと4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金とN,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金と2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金と2,2’−ビピリジン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金と1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金と1,2−ビス(ジエチルホスフィノ)エタン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金と1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金と1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金と1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金と4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテンからなる錯体であり、中でもクロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウムダイマーと2,2’ビピリジン、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウムダイマーとトリシクロヘキシルホスフィン、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウムダイマーと1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウムダイマーと4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9、9−ジメチルキサンテン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケルと2,2’−ビピリジン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケルと1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケルと4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケルと2,2’−ビピリジン、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケルと1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケルと4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9、9−ジメチルキサンテン、酢酸パラジウムと2,2’−ビピリジン、酢酸パラジウムと1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、酢酸パラジウムと4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムと2,2’−ビピリジン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムと1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムと4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、アリルパラジウムクロライドダイマーと2,2’−ビピリジン、アリルパラジウムクロライドダイマーと1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、アリルパラジウムクロライドダイマーと4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、トリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムと2,2’−ビピリジン、トリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムと1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、トリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムと4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテンからなる錯体がより好ましい。
【0040】
本発明で使用する金属を含む錯体は、以上述べたような金属塩と配位子を反応系に添加し、反応系中での配位子交換反応により系中で調製してもよいし、あらかじめ上記の金属塩と配位子から別途調製した錯体を反応系に添加してもよい。
【0041】
触媒系中の上記配位子の割合は、例えば、周期表第8族から第11族かつ第4周期から第6周期の金属1モルに対して、0.1〜1000モル、好ましくは0.5〜500モル、さらに好ましくは1〜100程度であり、特に1〜50モル程度が好ましい。
【0042】
本発明に使用される触媒系は、均一触媒、不均一触媒のいずれであってもよい。また、必要に応じて触媒系は、活性炭、アルミナ、シリカなどの担体に前記触媒成分が担持された固相系を構成してもよい。触媒系を構成する各成分の割合は、各触媒成分の種類などに応じて、好ましい触媒活性及び安定性が提供される範囲で選択できる。
【0043】
使用する周期表第8族から第11族かつ第4周期から第6周期の金属を含む錯体の好ましい使用量は、用いる金属錯体により異なるが、触媒活性と経済性の観点から、スルフィド化剤と金属錯体のモル比が、1:0.00001〜1:0.2、好ましくは1:0.0001〜1:0.18、より好ましくは1:0.001〜1:0.16、さらに好ましくは1:0.005〜1:0.15の範囲を例示できる。金属錯体の量が上記の範囲未満では、十分な金属錯体添加の効果が得られにくくなる傾向にあり、上記の範囲を超える場合、それ以上の効果は発現しにくくなるため、経済性の観点で上記上限以下が好ましい。
【0044】
(6)環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法
本発明の環式ポリアリーレンスルフィドの製造における反応温度は、反応混合物中の種類、量によって多様化するため一意的に決めることはできないが、通常120〜350℃、好ましくは180〜320℃、より好ましくは220〜310℃、さらに好ましくは225〜300℃の範囲を例示できる。この好ましい温度範囲ではより高い反応速度が得られ、反応が均一で進行しやすい傾向にあり、効率よく環式ポリアリーレンスルフィドが得られる傾向にある。また、反応は一定温度で行なう1段反応、段階的に温度を上げていく多段反応、あるいは連続的に温度を変化させていく形式の反応のいずれでもかまわない。
【0045】
また、反応時間は、使用した原料の種類や量あるいは反応温度に依存するので一概に規定できないが、0.1時間以上が好ましく、0.5時間以上がより好ましい。この好ましい時間以上とすることで、未反応の原料成分を十分に減少できるため、生成した環式ポリアリーレンスルフィドの回収がしやすくなる傾向にある。一方、反応時間に特に上限は無いが、本発明の方法は極めて高い反応速度が得られやすい特徴を有するため、40時間以内でも十分に反応が進行し、好ましくは10時間以内、より好ましくは6時間以内も採用できる。
【0046】
本発明の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法において、反応混合物を重合させる際の圧力は、反応混合物の常圧下における還流温度を越えることが可能であれば特に制限はなく、また反応混合物を構成する原料およびその組成、反応温度等により変化するため一意的に規定することはできないが、好ましい圧力の下限としてゲージ圧で0.05MPa以上、より好ましくは0.3MPa以上が例示できる。なお、本発明の好ましい反応温度においては反応混合物の自圧による圧力上昇が発生するため、この様な反応温度における好ましい圧力の下限としてゲージ圧で0.25MPa以上、より好ましくは0.3MPa以上を例示できる。また好ましい圧力の上限としては10MPa以下、より好ましくは5MPa以下が例示できる。この様な好ましい圧力範囲では、環式ポリアリーレンスルフィドの製造に要する時間が短くできる傾向にある。また、環式ポリアリーレンスルフィドの製造における有機極性溶媒の使用量を多くする場合、すなわち反応混合物における原料であるスルフィド化剤およびジハロゲン化芳香族化合物の濃度が低い条件において、前記好ましい圧力範囲で反応を行うことの効果が特に大きい傾向にあり、原料消費率および/または目的物である環式ポリアリーレンスルフィドの選択率をより向上できる傾向にある。この理由については現時点定かでないが、本発明では反応混合物を常圧における還流温度を越えて加熱することが特徴であり、このような加熱条件下で揮発性を有するジハロゲン化芳香族化合物など原料はその一部が反応系内で気相に存在し、液相部の反応基質との反応が進行しにくくなる可能性があり、前記好ましい圧力範囲とすることでこのような原料の反応系内での揮発を抑制できるため、より効率よく反応が進行するようになると推測している。また、反応混合物を加熱する際の圧力を前記好ましい圧力範囲とするために、反応を開始する前や反応中など随意の段階で、好ましくは反応を開始する前に、後述する不活性ガスにより反応系内を加圧することも好ましい方法である。なお、ここでゲージ圧とは大気圧を基準とした相対圧力のことであり、絶対圧から大気圧を差し引いた圧力差と同意である。
【0047】
本発明の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法においては、反応容器に有機極性溶媒、ジハロゲン化芳香族化合物、スルフィド化剤および周期表第8族から第11族かつ第4周期から第6周期の金属を含む錯体を仕込み、これらを必須成分とし、好ましくは2,2’−ビピリジン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテンから選ばれる配位子を添加し、反応混合物として反応を行う。反応混合物には前記必須成分以外に反応を著しく阻害しない第三成分や、反応を加速する効果を有する第三成分を加えることも可能である。反応を行う方法に特に制限は無いが、撹拌条件下行なうことが好ましい。
【0048】
なお、本発明の環式ポリアリーレンスルフィドの製造には、バッチ式および連続方法など公知の各種重合方式、反応方式を採用することができる。また、製造における雰囲気は非酸化性雰囲気下が望ましく、窒素、ヘリウム、およびアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行なうことが好ましく、経済性および取り扱いの容易さの面からは窒素雰囲気下が好ましい。
【0049】
(7)環式ポリアリーレンスルフィドの回収方法
本発明の環式ポリアリーレンスルフィドの製造においては前記した反応により得られた、反応混合物から環式ポリアリーレンスルフィドを分離回収することも可能である。反応により得られた反応混合物には環式ポリアリーレンスルフィド、線状ポリアリーレンスルフィド及び有機極性溶媒が含まれ、その他成分として未反応原料や水、副生塩、金属錯体などが含まれる場合もある。この様な反応混合物からポリアリーレンスルフィド成分を回収する方法に特に制限はなく、例えば必要に応じて有機極性溶媒の一部もしくは大部分を蒸留等の操作により除去した後に、ポリアリーレンスルフィド成分に対する溶解性が低く且つ有機極性溶媒と混和し、副生塩に対して溶解性を有する溶剤と必要に応じて加熱下で接触させて、環式ポリアリーレンスルフィドを線状ポリアリーレンスルフィドとの混合固体として回収する方法が例示できる。この様な特性を有する溶剤は一般に比較的極性の高い溶剤であり、用いた有機極性溶媒や副生塩の種類により好ましい溶剤は異なるので限定はできないが、例えば水やメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノールに代表されるアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンに代表されるケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどに代表される酢酸エステル類が例示でき、入手性、経済性の観点から水、メタノール及びアセトンが好ましく、水が特に好ましい。
【0050】
このような溶剤による処理を行なうことで、環式ポリアリーレンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィドとの混合固体に含有される有機極性溶媒や副生塩の量を低減することが可能である。この処理により環式ポリアリーレンスルフィド及び線状ポリアリーレンスルフィドは共に固形成分として析出するので、公知の固液分離法を用いて環式ポリアリーレンスルフィド及び線状ポリアリーレンスルフィドの混合物を回収することが可能である。固液分離方法としては、例えば濾過による分離、遠心分離、デカンテーション等を例示できる。なお、これら一連の処理は必要に応じて数回繰り返すことも可能であり、これにより環式ポリアリーレンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィドとの混合固体に含有される有機極性溶媒や副生塩の量がさらに低減される傾向にある。
【0051】
また、上記の溶剤による処理の方法としては、溶剤と反応混合物を混合する方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。溶剤による処理を行なう際の温度に特に制限はないが、20℃〜220℃が好ましく、50℃〜200℃がさらに好ましい。この様な範囲では例えば副生塩の除去が容易となり、また比較的低圧の状態で処理を行なうことが可能であるため好ましい。ここで、溶剤として水を用いる場合、水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましいが、必要に応じてギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、アクリル酸、クロトン酸、安息香酸、サリチル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸などの有機酸性化合物及びそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、硫酸、リン酸、塩酸、炭酸、珪酸などの無機酸性化合物およびアンモニウムイオンなどを含む水溶液を用いることも可能である。この処理後に得られた環式ポリアリーレンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィドとの混合固体が処理に用いた溶剤を含有する場合には必要に応じて乾燥などを行い、溶剤を除去することも可能である。
【0052】
上で例示した回収方法では、環式ポリアリーレンスルフィドは線状ポリアリーレンスルフィドとの混合物(以下ポリアリーレンスルフィド混合物と称する場合もある)として回収される。環式ポリアリーレンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィドの分離を所望する場合には、公知の方法を採用して分離を行なってもよい。この方法としては、例えば環式ポリアリーレンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィドの溶解性の差を利用した分離方法、より具体的には環式ポリアリーレンスルフィドに対する溶解性が高く、一方で環式ポリアリーレンスルフィドの溶解を行なう条件下では線状ポリアリーレンスルフィドに対する溶解性に乏しい溶剤を必要に応じて加熱下でポリアリーレンスルフィド混合物と接触させて、溶剤可溶部分として環式ポリアリーレンスルフィドを得る方法が例示できる。ここで、本発明の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法では、反応混合物を常圧における還流温度以上に加熱するために、前述したようにポリアリーレンスルフィド混合物に含まれる線状ポリアリーレンスルフィドが高分子量として得られやすいという特徴があり、環式ポリアリーレンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィドの溶剤への溶解性の違いが大きいため、上記の溶解性を利用した分離方法により効率よく環式ポリアリーレンスルフィドを得ることが可能である。線状ポリアリーレンスルフィドの分子量は後述する環式ポリアリーレンスルフィドを溶解可能な溶剤に溶解しにくい、好ましくは溶解しない特性を有する分子量であることが好ましく、重量平均分子量で2500以上が例示でき、5000以上がより好ましく例示できる。
【0053】
ここで用いる溶剤としては環式ポリアリーレンスルフィドを溶解可能な溶剤であれば特に制限はないが、溶解を行なう環境において環式ポリアリーレンスルフィドは溶解するが、線状ポリアリーレンスルフィドは溶解しにくい溶剤が好ましく、線状ポリアリーレンスルフィドは溶解しない溶剤がより好ましい。ポリアリーレンスルフィド混合物を前記溶剤と接触させる際の反応系圧力は常圧もしくは微加圧が好ましく、特に常圧が好ましく、このような圧力の反応系はそれを構築する反応器の部材が安価であるという利点がある。この観点から反応系圧力は、高価な耐圧容器を必要とする加圧条件は避けることが望ましい。用いる溶剤としてはポリアリーレンスルフィド成分の分解や架橋など好ましくない副反応を実質的に引き起こさないものが好ましく、ポリアリーレンスルフィド混合物を溶剤と接触させる操作を、例えば常圧還流条件下で行なう場合に好ましい溶剤としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒、クロロホルム、ブロモホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、2,6−ジクロロトルエンなどのハロゲン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トリメチルリン酸、N,N−ジメチルイミダゾリジノンなどの極性溶媒を例示できるが、中でもベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ブロモホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、2,6−ジクロロトルエン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トリメチルリン酸、N,N−ジメチルイミダゾリジノンが好ましく、トルエン、キシレン、クロロホルム、塩化メチレン、テトラヒドロフランがより好ましく例示できる。
【0054】
ポリアリーレンスルフィド混合物を溶剤と接触させる際の雰囲気に特に制限はないが、接触させる際の温度や時間などの条件によってポリアリーレンスルフィド成分や溶剤が酸化劣化するような場合には、非酸化性雰囲気下で行なうことが望ましい。なお、非酸化性雰囲気とは気相の酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、更に好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気であることを指し、この中でも特に経済性及び取り扱いの容易さの面からは窒素雰囲気が好ましい。
【0055】
ポリアリーレンスルフィド混合物を溶剤と接触させる温度に特に制限はないが、一般に温度が高いほど環式ポリアリーレンスルフィドの溶剤への溶解は促進される傾向にある。前記したように、ポリアリーレンスルフィド混合物の溶剤との接触は大気圧下で行なうことが好適であるので、上限温度は使用する溶剤の大気圧下での還流条件温度にすることが望ましく、前述した好ましい溶剤を用いる場合は例えば20〜150℃を具体的な温度範囲として例示できる。
【0056】
ポリアリーレンスルフィド混合物を溶剤と接触させる時間は、用いる溶剤種や温度などによって異なるため一意的には限定できないが、たとえば1分〜50時間が例示でき、この様な範囲では環式ポリアリーレンスルフィドの溶剤への溶解が十分になる傾向にある。
【0057】
ポリアリーレンスルフィド混合物を溶剤と接触させる方法は、公知の一般的な手法を用いれば良く、特に限定はないが、例えばポリアリーレンスルフィド混合物と溶剤を混合し、必要に応じて撹拌した後に溶液部分を回収する方法、各種フィルター上のポリアリーレンスルフィド混合物に溶剤をシャワーすると同時に環式ポリアリーレンスルフィドを溶剤に溶解させる方法、ソックスレー抽出法原理による方法などいかなる方法も用いることができる。ポリアリーレンスルフィド混合物と溶剤を接触させる際の溶剤の使用量に特に制限はないが、例えばポリアリーレンスルフィド混合物重量に対する浴比で0.5〜100の範囲が例示できる。浴比がこの様な範囲の場合、ポリアリーレンスルフィド混合物と溶剤を均一に混合し易く、また、環式ポリアリーレンスルフィドが溶剤へ十分に溶解し易くなる傾向にある。一般に浴比が大きい方が環式ポリアリーレンスルフィドの溶剤への溶解には有利であるが、大きすぎてもそれ以上の効果は望めず、逆に溶剤使用量増大による経済的不益が生じることがある。なお、ポリアリーレンスルフィド混合物と溶剤の接触を繰り返し行なう場合は、小さい浴比でも十分な効果を得られる場合が多い。また、ソックスレー抽出法は、その原理上、ポリアリーレンスルフィド混合物と溶剤の接触を繰り返し行なう場合と類似の効果が得られるので、この場合も小さい浴比で十分な効果が得られる場合が多い。
【0058】
ポリアリーレンスルフィド混合物を溶剤と接触させた後に、環式ポリアリーレンスルフィドを溶解した溶液が固形状の線状ポリアリーレンスルフィドを含む固液スラリー状態で得られた場合、公知の固液分離法を用いて溶液部を回収することが好ましい。固液分離方法としては、たとえば濾過による分離、遠心分離、デカンテーション等を例示できる。このようにして分離した溶液から溶剤の除去を行なうことで環式ポリアリーレンスルフィドの回収が可能となる。一方、固体成分については、環式ポリアリーレンスルフィドがまだ残存している場合、再度溶剤との接触及び溶液の回収を繰り返し行なうことでより収率よく環式ポリアリーレンスルフィドを得ることも可能である。また、環式ポリアリーレンスルフィドがほとんど残存していない場合には、残存溶剤を除去することで高純度な線状ポリアリーレンスルフィドとして好適にリサイクル可能である。
【0059】
前述のようにして得られた環式ポリアリーレンスルフィドを含む溶液から溶剤の除去を行い、環式ポリアリーレンスルフィドを固形成分として得ることも可能である。ここで溶剤の除去は、例えば加熱し、常圧以下で処理する方法や、膜を利用した溶剤の除去を例示できるが、より収率よく、また効率よく環式ポリアリーレンスルフィドを得るとの観点では常圧以下で加熱して溶剤を除去する方法が好ましい。なお、前述のようにして得られた環式ポリアリーレンスルフィドを含む溶液は温度によっては固形物を含む場合もあるが、この場合の固形物も環式ポリアリーレンスルフィド混合物に属するものであるので、溶剤の除去時に溶剤に可溶の成分とともに回収することが望ましく、これにより収率よく環式ポリアリーレンスルフィドを得られるようになる。ここで溶剤の除去は、少なくとも50重量%以上、好ましくは70重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、よりいっそう好ましくは95重量%以上の溶剤を除去することが望ましい。加熱による溶剤の除去を行なう際に温度は用いる溶剤の特性に依存するため一意的には限定できないが、通常、20〜150℃、好ましくは40〜120℃の範囲が選択できる。また、溶剤の除去を行なう圧力は常圧以下が好ましく、これにより溶剤の除去をより低温で行なうことが可能になる。
【0060】
(8)環式ポリアリーレンスルフィドの特性
かくして得られた環式ポリアリーレンスルフィドは、通常、環式ポリアリーレンスルフィドを50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上含む純度の高いものであり、一般的に得られる線状のポリアリーレンスルフィドとは異なる特性を有する工業的にも利用価値の高いものである。また、本発明の製造方法により得られる環式ポリアリーレンスルフィドは前記式(A)におけるmが単一ではなく、m=4〜50の異なるmを有する前記式(A)が得られやすいという特徴を有する。ここで好ましいmの範囲は4〜25、より好ましくは4〜20である。
【0061】
なお、mが単一の環式ポリアリーレンスルフィドは単結晶として得られるため、極めて高い融解温度を有するが、本発明では環式ポリアリーレンスルフィドは異なるmを有する混合物が得られやすく、これにより環式ポリアリーレンスルフィドの融解温度が低いという特徴があり、このことは例えば環式ポリアリーレンスルフィドを溶融して用いる際の加熱温度を低くできるという優れた特徴を発現することになる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例を持って本発明を具体的に説明する。なお、この発明は以下の実施例により限定されるものではない。なお、以下の実施例は次に記載する試薬を用いて検討を行った。
【0063】
〈使用試薬〉
p−ジクロロベンゼン(東京化成)NMP(関東化学)
水酸化ナトリウム(関東化学 特級)
トリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(aldrich)
4、5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン(aldrich)
酢酸パラジウム(和光純薬 特級)
テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(aldrich)
【0064】
〈原料消費量測定〉
反応原料のジハロゲン芳香族化合物の消費量はガスクロマトグラフィー(GC)分析により定量分析を行なった。GCの測定条件を以下に示す。
装置:島津株式会社製 GC17−A
カラム:TC−17 0.32mmφ×60m 0.5μm thickness(GLサイエンス社製)
キャリアガス流量:1.44mL/min
カラム入り口圧:40kPa
カラムオーブン:280℃
スプリット比: 10:1
検出器:水素炎イオン化検出法(FID法)
注入量:5μL(反応溶液をクロロホルムにより約10倍に希釈したものを注入)
【0065】
〈構造決定〉
得られた環状ポリアリーレンスルフィド化合物の構造は、赤外線吸収スペクトル(IR)分析、NMP分析により行なった。
IRの測定条件を以下に示す。
装置:Perkin Elmer System2000FT−IR
サンプル調製:KBr法
NMRの測定条件を以下に示す。
装置:日本電子社製 FT−NMR JNM−AL400
測定溶媒:重水素化クロロホルム
測定核:1H、13C
【0066】
〈環状ポリアリーレンスルフィド生成率測定〉
環状ポリアリーレンスルフィド化合物の生成率は、HPLCを用いて定性定量分析を行なった。HPLCの測定条件を以下に示す。
HPLCの測定条件を以下に示す。
装置:島津株式会社製 LC−10Avpシリーズ
カラム:Mightysil RP−18 GP 150−4.6(5μm)
検出器:フォトダイオードアレイ検出器(UV=270nm)。
【0067】
[実施例1]
50mLオートクレーブにp−ジクロロベンゼン294.0mg(2.0mmol)、48重量%の水硫化ナトリウム水溶液234mg(2.0mmol)、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液175mg(2.1mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム46mg(0.05mmol)、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン58mg(0.1mmol)、N−メチル−2−ピロリドン10mLを仕込んだ。スルフィド化剤である水硫化ナトリウムのイオウ1モル当たりの溶媒量は5.0Lであった。
【0068】
その後、オートクレーブ内部を窒素置換した後、窒素で0.3MPa加圧を行なった。その後、270℃に加温し、270℃で1時間反応させた。反応中に、トリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムにおけるジベンジリデンアセトナート配位子と4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテンとの配位子交換反応が起こり、パラジウムに4、5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテンが配位した錯体が反応系中で形成され、触媒として作用している。反応終了後、反応溶液を1gサンプリングし、イオン交換水10gを加え、更に1N塩酸を加えて中和した後、クロロホルム10gで希釈し、GC分析によりp−ジクロロベンゼンの消費率、HPLC分析により環状ポリフェニレンスルフィド(4〜12員環)の生成量を算出し、その値から環状ポリフェニレンスルフィドの選択率を算出すると27%であることを確認した。
【0069】
[実施例2]
50mLオートクレーブにp−ジクロロベンゼン294.0mg(2.0mmol)、48重量%の水硫化ナトリウム水溶液234mg(2.0mmol)、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液175mg(2.1mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム115.6mg(0.1mmol)、N−メチル−2−ピロリドン10mLを仕込んだ。スルフィド化剤である水硫化ナトリウムのイオウ1モル当たりの溶媒量は5.0Lであった。
【0070】
その後、オートクレーブ内部を窒素置換した後、窒素で0.3MPa加圧を行なった。その後、270℃に加温し、270℃で1時間反応させた。反応終了後、反応溶液を1gサンプリングし、イオン交換水10gを加え、更に1N塩酸を加えて中和した後、クロロホルム10gで希釈し、GC分析によりp−ジクロロベンゼンの消費率、HPLC分析により環状ポリフェニレンスルフィド(4〜12員環)の生成量を算出し、その値から環状ポリフェニレンスルフィドの選択率を算出すると23%であることを確認した。
【0071】
[実施例3]
50mLオートクレーブにp−ジクロロベンゼン294.0mg(2.0mmol)、48重量%の水硫化ナトリウム水溶液234mg(2.0mmol)、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液175mg(2.1mmol)、酢酸パラジウム22.5mg(0.1mmol)、4、5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9、9−ジメチルキサンテン58mg(0.1mmol)、N−メチル−2−ピロリドン10mLを仕込んだ。スルフィド化剤である水硫化ナトリウムのイオウ1モル当たりの溶媒量は5.0Lであった。
【0072】
その後、オートクレーブ内部を窒素置換した後、窒素で0.3MPa加圧を行なった。その後、270℃に加温し、270℃で1時間反応させた。反応中に、酢酸パラジウムにおけるアセテート配位子と4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテンとの配位子交換反応が起こり、パラジウムに4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテンが配位した錯体が反応系中で形成され、触媒として作用している。反応終了後、反応溶液を1gサンプリングし、イオン交換水10gを加え、更に1N塩酸を加えて中和した後、クロロホルム10gで希釈し、GC分析によりp−ジクロロベンゼンの消費率、HPLC分析により環状ポリフェニレンスルフィド(4〜12員環)の生成量を算出し、その値から環状ポリフェニレンスルフィドの選択率を算出すると24%であることを確認した。
【0073】
[実施例4]
50mLオートクレーブにp−ジクロロベンゼン294.0mg(2.0mmol)、48重量%の水硫化ナトリウム水溶液234mg(2.0mmol)、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液175mg(2.1mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム46mg(0.05mmol)、N,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン11.6mg(0.1mmol)、N−メチル−2−ピロリドン10mLを仕込んだ。スルフィド化剤である水硫化ナトリウムのイオウ1モル当たりの溶媒量は5.0Lであった。
【0074】
その後、オートクレーブ内部を窒素置換した後、窒素で0.3MPa加圧を行なった。その後、270℃に加温し、270℃で1時間反応させた。反応中に、トリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムにおけるジベンジリデンアセトナート配位子とN,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミンとの配位子交換反応が起こり、パラジウムにN,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミンが配位した錯体が反応系中で形成され、触媒として作用している。反応終了後、反応溶液を1gサンプリングし、イオン交換水10gを加え、更に1N塩酸を加えて中和した後、クロロホルム10gで希釈し、GC分析によりp−ジクロロベンゼンの消費率、HPLC分析により環状ポリフェニレンスルフィド(4〜12員環)の生成量を算出し、その値から環状ポリフェニレンスルフィドの選択率を算出すると23%であることを確認した。
【0075】
[実施例5]
50mLオートクレーブにp−ジクロロベンゼン294.0mg(2.0mmol)、48重量%の水硫化ナトリウム水溶液234mg(2.0mmol)、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液175mg(2.1mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンニッケル21mg(0.05mmol)、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン58mg(0.1mmol)、N−メチル−2−ピロリドン10mLを仕込んだ。スルフィド化剤である水硫化ナトリウムのイオウ1モル当たりの溶媒量は5.0Lであった。
【0076】
その後、オートクレーブ内部を窒素置換した後、窒素で0.3MPa加圧を行なった。その後、270℃に加温し、270℃で1時間反応させた。反応中に、テトラキストリフェニルホスフィンニッケルにおけるトリフェニルホスフィン配位子と4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテンとの配位子交換反応が起こり、ニッケルに4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテンが配位した錯体が反応系中で形成され、触媒として作用している。反応終了後、反応溶液を1gサンプリングし、イオン交換水10gを加え、更に1N塩酸を加えて中和した後、クロロホルム10gで希釈し、GC分析によりp−ジクロロベンゼンの消費率、HPLC分析により環状ポリフェニレンスルフィド(4〜12員環)の生成量を算出し、その値から環状ポリフェニレンスルフィドの選択率を算出すると23%であることを確認した。
【0077】
[比較例1]
50mLオートクレーブにp−ジクロロベンゼン294.0mg(2.0mmol)、48重量%の水硫化ナトリウム水溶液234mg(2.0mmol)、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液175mg(2.1mmol)、NMP10mLをいれ、オートクレーブ内部を窒素置換した後、窒素で0.3MPa加圧を行なった。その後、270℃に加温し、270℃で1時間反応させた。反応終了後、反応溶液を1gサンプリングし、イオン交換水10gを加え、更に1N塩酸を加えて中和した後、クロロホルム10gで希釈し、GC分析によりp−ジクロロベンゼンの消費率、HPLC分析により環状ポリフェニレンスルフィド(4〜12員環)の生成量を算出し、その値から環状ポリフェニレンスルフィドの選択率を算出すると20%であることを確認した。
【0078】
実施例1〜5と比較例1の比較により、本発明の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法によれば、金属錯体を添加することで環状ポリフェニレンスルフィドの選択率が向上していることがわかる。
【0079】
[実施例6]
50mLオートクレーブにp−ジクロロベンゼン73.5mg(0.5mmol)、48重量%の水硫化ナトリウム水溶液58.7mg(0.5mmol)、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液43.9mg(0.525mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム22.9mg(0.025mmol)、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン28.9mg(0.05mmol)、N−メチル−2−ピロリドン10mLを仕込んだ。スルフィド化剤である水硫化ナトリウムのイオウ1モル当たりの溶媒量は20Lであった。
【0080】
その後、オートクレーブ内部を窒素置換した後、窒素で0.3MPa加圧を行なった。その後、270℃に加温し、270℃で3時間反応させた。反応中に、トリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムにおけるジベンジリデンアセトナート配位子と4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテンとの配位子交換反応が起こり、パラジウムに4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテンが配位した錯体が反応系中で形成され、触媒として作用している。反応終了後、反応溶液を1gサンプリングし、イオン交換水10gを加え、更に1N塩酸を加えて中和した後、クロロホルム10gで希釈し、GC分析によりp−ジクロロベンゼンの消費率、HPLC分析により環状ポリフェニレンスルフィド(4〜12員環)の生成量を算出し、その値から環状ポリフェニレンスルフィドの選択率を算出すると42%であることを確認した。
【0081】
[比較例2]
50mLオートクレーブにp−ジクロロベンゼン73.5mg(0.5mmol)、48重量%の水硫化ナトリウム水溶液58.7mg(0.5mmol)、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液43.9mg(0.525mmol)、NMP10mLをいれ、オートクレーブ内部を窒素置換した後、窒素で0.3MPa加圧を行なった。その後、270℃に加温し、270℃で1時間反応させた。反応終了後、反応溶液を1gサンプリングし、イオン交換水10gを加え、更に1N塩酸を加えて中和した後、クロロホルム10gで希釈し、GC分析によりp−ジクロロベンゼンの消費率、HPLC分析により環状ポリフェニレンスルフィド(4〜12員環)の生成量を算出し、その値から環状ポリフェニレンスルフィドの選択率を算出すると37%であることを確認した。
【0082】
実施例6と比較例2の比較により、本発明の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法によれば、スルフィド化剤のイオウ原子1モルに対して有機極性溶媒を20Lという超希薄条件下でも金属錯体を添加する効果が現れていることがわかる。
【0083】
以上説明した通り、本発明では周期表第8族から第11族かつ第4周期から第6周期の金属を含む錯体を用いることで、汎用的な原料から短時間で経済的な方法且つ高い選択率で環式ポリアリーレンスルフィドを得る製造方法を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物および周期表第8族から第11族かつ第4周期から第6周期の金属を含む錯体を、スルフィド化剤のイオウ原子1モルに対して1.25リットル以上の有機極性溶媒中で接触させることを特徴とする環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
【請求項2】
前記金属を含む錯体が、周期表第10族の金属を含む錯体であることを特徴とする請求項1記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
【請求項3】
前記金属を含む錯体が、パラジウムを含む錯体であることを特徴とする請求項2記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
【請求項4】
前記金属を含む錯体が、2座以上で配位する配位子を含む錯体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
【請求項5】
前記金属を含む錯体が、剛直な骨格を有する配位子を含む錯体であることを特徴とする請求項4記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
【請求項6】
スルフィド化剤と周期表第8族から第11族かつ第4周期から第6周期の金属を含む錯体とのモル比が、1:0.00001〜1:0.2の範囲であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。

【公開番号】特開2009−7521(P2009−7521A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172191(P2007−172191)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】