環状に配置されたリングバンプ電極を使用した、灌注を伴う二重目的ラッソーカテーテル
【課題】心臓の電気マッピング及び焼灼のためのシステムで使用される、ラッソーカテーテルを含む心臓カテーテルを提供する。
【解決手段】この心臓カテーテルは、隆起した環状リングバンプ電極の配列を有し、各環状電極は複数の穿孔を有し、それらの穿孔は、環状リングの表面の下方に形成された空洞又はチャンバーと流体連通している。空洞は、カテーテルのラッソーセグメントの外部表面又はループルーメンの周りに360°にわたって形成されており、その空洞は、ループルーメンを通じて穿設されたブリーチホールと流体連通し、かつ灌注ルーメンと流体連通している。各環状リングは、一実施形態において、ループセグメントの近位端部からループセグメントの遠位端部に向かって、小さいものから大きいものへと変化するブリーチホールを有する。
【解決手段】この心臓カテーテルは、隆起した環状リングバンプ電極の配列を有し、各環状電極は複数の穿孔を有し、それらの穿孔は、環状リングの表面の下方に形成された空洞又はチャンバーと流体連通している。空洞は、カテーテルのラッソーセグメントの外部表面又はループルーメンの周りに360°にわたって形成されており、その空洞は、ループルーメンを通じて穿設されたブリーチホールと流体連通し、かつ灌注ルーメンと流体連通している。各環状リングは、一実施形態において、ループセグメントの近位端部からループセグメントの遠位端部に向かって、小さいものから大きいものへと変化するブリーチホールを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓のマッピング及び焼灼システムに関する。より具体的には、本発明は、心臓のマッピング及び焼灼システムにおいて使用するためのラッソーカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
心房細動などの心不整脈は、心臓組織の各領域が電気信号を隣接組織に変則的に伝達し、それによって、正常な心周期を乱れさせ、非周期的な律動を引き起こしたときに生じるものである。望ましくない信号の重大な発生源は、左心房の肺静脈沿い及び上肺静脈内の組織領域内に位置する。この条件下において、望ましくない信号が肺静脈内で生成されるか、あるいは他の発生源から肺静脈を通して伝達された後、それらの信号は左心房の中に伝達され、ここで不整脈を誘起又は存続させ得る。
【0003】
不整脈を治療するための手技には、不整脈を発生させる信号の発生源を外科的に遮断すること、並びにそのような信号の伝導経路を遮断することが挙げられる。更に最近では、心内膜の電気特性と心容積をマッピングし、エネルギーの印加により心組織を選択的に焼灼することによって、心臓のある部位から別の部位への望ましくない電気信号の伝播を中断させるかあるいは修正することが場合によっては可能となると判明している。焼灼プロセスは、非伝導性の病変部を形成することによって、望ましくない電気的経路を破壊するものである。
【0004】
マッピングに焼灼が続くという、この2工程の手技においては、通常、1個以上の電気センサーを収容したカテーテルを心臓の中に前進させ、多数の点でデータを取得することによって、心臓内の各点における電気活動が感知及び測定される。次いでこれらのデータが利用されて、焼灼が実施される標的領域が選択される。
【0005】
本特許出願の譲受人に譲渡されており、参照によって本願に組み込まれる、ベン・ハイム(Ben-Haim)への米国特許第6,063,022号には、プローブの遠位端部に対して既知の一定な関係にある2つの位置センサーを含む侵襲プローブについて記載されている。これらの位置センサーは、それぞれの対応する位置座標に応答する信号を発生させ、プローブの放射状表面に沿った少なくとも1個の接触センサーが、プローブ上の電極によって焼灼される体組織との接触を示す信号を発生させる。
【0006】
ベン・ハイム(Ben-Haim)への米国特許第6,272,371号は、本特許出願の譲受人に譲渡されており、参照によって本願に組み込まれるものであるが、この米国特許第6,272,371号には、力が加えられたときに所定の湾曲形状を呈する可撓性部分を含む侵襲プローブについて記載されている。それらのセンサーのうちの少なくとも1個のセンサーの位置及び向きの座標を判定するために、また、プローブの遠位部分の長さ方向に沿った複数の点の配置を判定するために、既知の位置でプローブの遠位部分に固定された2個の位置センサーが使用される。
【0007】
ベン・ハイム(Ben-Haim)らへのPCT特許公開第96/05768号及びそれに対応する米国特許出願公開第2002/0065455号は、本特許出願の譲受人に譲渡されており、参照によって本願に組み込まれるものであるが、これらには、カテーテルの先端に関する位置と向きの6次元の情報を発生させるシステムについて記載されている。このシステムは、カテーテル内の特定可能な部位に隣接する、例えばカテーテルの遠位端部の近くにある複数のセンサーコイルと、外部の基準系に固定された複数のラジエータコイルを使用する。これらのコイルは、ラジエータコイルによって発生された磁場に応答して信号を発生させるものであり、これらの信号により、位置と向きの6次元を算出することが可能となり、それにより、カテーテルの位置と向きは、カテーテルを撮像する必要なしに知られる。
【0008】
本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6,973,339号に、あるラッソーカテーテルが開示されており、この米国特許第6,973,339号は参照によって本願に組み込まれる。このラッソーカテーテルは、肺静脈のマッピング及び焼灼に特に適合されている。このカテーテルは、6次元未満の位置と向きの情報を発生させることが可能な第1の位置センサーを有する湾曲区間と、肺静脈の電気特性を測定するように適合された1個以上の電極と、湾曲区間の近位端部に取り付けられた基部区間とを備える。基部区間上の、その遠位端部から3mm以内のところに、6次元の位置と向きの情報を発生させることが可能な第2の位置センサーが配設される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
ラッソーカテーテルは一般に、肺静脈の小孔などの解剖学的構造を囲む円弧に沿って組織を焼灼するために使用される。従来より、ラッソーカテーテルの湾曲区間又はループは、操作性の目的で、一般に薄い「ぺらぺら」のものであり、一方で、ラッソー上に配設されるリング電極は、電気抵抗を最小にするために、比較的大きなものである。
【0010】
本発明の実施形態は、焼灼と感知の両方に使用され得るラッソーカテーテルを提供するが、このカテーテルは他の有利な特徴も有する。その遠位湾曲部分は、時に「ループ」又は「ループセグメント」と本願では呼ばれるが、典型的には従来のラッソーカテーテルよりも厚くかつ硬いものである。ラッソーカテーテルは、リング電極ではなく、比較的小さな隆起した突起型電極を有している。これらの電極の寸法が小さいことは、局所的な電気活動を良好な空間解像度で測定することを可能にする上で有利である。電極が隆起することにより、心臓組織と接触する表面積が増加し、したがって、電極が焼灼に使用されるときの電気抵抗が低下する。
【0011】
焼灼の間、局所的な冷却をもたらし、固着を防止するために、電極は複数の穿孔によって窓をなしていてもよい。それらの穿孔はルーメンと流体連通しており、そのルーメンは、灌注流体をカテーテル内から電極の外部表面へ、そして隣接組織へと運ぶ。別のルーメンが、電極の各々に接続されたワイヤーを収容してもよい。
【0012】
本発明の実施形態は、挿入チューブと、その挿入チューブの遠位端部に固定された弾性遠位区間とを含むカテーテルを提供する。遠位区間は、内部灌注ルーメンと、外部表面の上方に隆起する複数の電極とを有する。電極は、それを貫いて形成された複数の穿孔を有し、外部表面は、それらの穿孔を通して灌注ルーメンと流体連通する。
【0013】
カテーテルの一態様によれば、挿入チューブは、血管を通じて被験者の心臓の中へと挿入するように構成されており、弾性遠位区間は、心臓内に配置されると、開ループを画定する。
【0014】
本発明の一実施形態は、生体の心臓内にある不整脈惹起性の領域を特定するための方法を提供する。この方法は更に、あるカテーテルを心腔の中に挿入することによって実施され、そのカテーテルは、挿入チューブと、弾性遠位区間とを含み、その弾性遠位区間は、内部灌注ルーメンを有し、挿入チューブの遠位端部に固定されている。遠位区間はまた、外部表面の上方に隆起する複数の電極を含み、それらの電極は、電極を貫いて形成された複数の穿孔を有する。遠位区間の外部表面は、穿孔を通して灌注ルーメンと流体連通している。この方法は更に、心腔内の標的に近接してカテーテルを配置し、カテーテルを通して標的から受信した電気信号を解析して、それらの電気信号が心臓内の異常な電気伝導を示すものであると判断し、その判断に応答して、エネルギーを心臓の中に伝達し、それによって異常な電気伝導に変化をもたらすことによって実施される。
【0015】
別の好ましい実施形態によれば、本発明は、遠位端部を有する挿入チューブと、その挿入チューブの遠位端部に固定された弾性遠位区間とを備えるカテーテルである。その遠位区間はまた、「ループ」又は「ループセグメント」の形態をなし得る。遠位区間は、外部表面と内部灌注ルーメンとを有し、外部表面の上方に隆起する複数のリング電極を備え、その複数のリング電極は、外部表面の円周全体に環状に配置される。各リング電極は、その下方に空洞を画定する。リング電極は、それらを貫通して形成された複数の穿孔を有し、外部表面はその中にブリーチホールを有し、それらのブリーチホールは、各リング電極の下に配置され、灌注ルーメンと流体連通する。各リング電極の空洞及び穿孔により、各リング電極を通じて遠位区間から灌注流体を分配することが容易となる。
【0016】
本発明によれば、各リング電極のブリーチホールの直径は、寸法が変化する。例えば、一実施形態において、各リング電極のブリーチホールの直径は、弾性遠位区間に沿って近位側から遠位側に向かって、小さいものから大きいものへと寸法が変化する。別法として、本発明の別の実施形態において、各リング電極のブリーチホールの直径は、弾性遠位区間に沿って近位側から遠位側に向かって、大きいものから小さいものへと寸法が変化する。
【0017】
ブリーチホールは、円形又は他の形状(例えば、矩形)をなすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明を更に理解するために、一例として、以下の図面と共に通読される本発明の詳細な説明を参照する。以下の図面において、同様の要素には同様の参照符号が与えられている。
【図1】開示する本発明の実施形態による、電気活動の異常な領域を検出し生体の心臓に焼灼手技を実施するためのシステムの絵画的表現図。
【図2】開示する本発明の実施形態による、構成され動作可能となったラッソーカテーテルの側面図。
【図3】線3−3に沿った、図2に示すカテーテルの横断面図。
【図4】開示する本発明の実施形態による、構成され動作可能となったカテーテルのシャフトの断片立面図。
【図5】本発明の別の実施形態による、構成され動作可能となったカテーテルのシャフトの断片立面図。
【図6】本発明の別の実施形態による、構成され動作可能となったカテーテルのシャフトの断片立面図。
【図7】本発明の別の実施形態による、心臓カテーテルの概略図。
【図8】本発明の別の実施形態による、構成され動作可能となった複数の線形電極配列を有するカテーテルのシャフトの断片立面図。
【図9】本発明の別の実施形態による、構成され動作可能となったカテーテルのシャフトの断片立面図。
【図10】本発明による環状リングバンプ電極を貫く、図9に示すカテーテルの横断面図。
【図11】本発明による図9に示すカテーテルの環状リングバンプ電極を貫く縦断面とした側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の説明において、本発明の様々な原理が完全に理解されるように、多数の具体的な詳細が記載されている。しかしながら、これらのすべての詳細が本発明の実施に必ずしも必要ではないことが、当業者には明らかとなろう。この場合、周知の回路、制御ロジック、並びに通常のアルゴリズム及びプロセスに対するコンピュータプログラム命令の詳細は、一般的な概念を不必要に不明確にしないようにするために、詳細には示されていない。
【0020】
ここで図面を参照するが、まず図1を参照すると、図1は、開示する本発明の実施形態による、電気活動の異常な領域を検出し生体の心臓12に焼灼手技を実施するためのシステム10の絵画的表現図である。このシステムはラッソーカテーテル14を備えており、このラッソーカテーテル14は、典型的には医師である操作者16によって、患者の脈管系を通じて心臓のチャンバー又は脈管構造の中に経皮的に挿入される。操作者16は、評価される標的部位にて、カテーテルの遠位先端部18(「18」は、ループにより近づけて、つまり、カテーテルの遠位先端部(ループ)ではなく心腔を示すように移動されなければならない)を心臓壁と接触させる。次いで、開示内容が参照によって本願に組み込まれる、上記の米国特許第6,226,542号及び同第6,301,496号並びに本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6,892,091号に開示された方法に従って、電気活動マップが作成される。
【0021】
電気活動マップの評価によって異常と判断された領域は、電気エネルギーを印加することによって、例えばカテーテル内のワイヤーを通じて遠位先端部18にある1個以上の電極に高周波電流を送ることによって焼灼されることができ、その遠位先端部18は高周波エネルギーを心筋に印加する。このエネルギーは組織に吸収され、電気興奮性を永久的に失う点(典型的には約50℃)までその組織を加熱する。成功した場合、この手技により心臓組織内に非伝導性の病変部が生じ、その病変部は、不整脈を引き起こす異常な電気的経路を遮断する。別法として、その開示内容が参照によって本願に組み込まれる米国特許出願公開第2004/0102769号に開示されているように、焼灼エネルギー、例えば、超音波エネルギーを印加する他の既知の方法が用いられ得る。本発明の原理は、種々の心腔に、また洞調律のマッピングに応用され得るものであり、多数の種々の心不整脈が存在する場合に応用され得る。
【0022】
カテーテル14は通常、ハンドル20を備えており、焼灼のために所望に応じてカテーテルの遠位端部を操作者16が操向し、定置し、方向付けることを可能にする好適な制御器をハンドル上に有している。操作者16を支援するために、カテーテル14の遠位部分は、操作卓24に設置された位置決めプロセッサ22に信号を供給する位置センサー(図示せず)を収容している。操作卓24は通常、焼灼電力発生器25を収容している。カテーテル14は、任意の既知の焼灼技法、例えば、高周波エネルギー、超音波エネルギー、及びレーザーエネルギーを用いて、焼灼エネルギーを心臓に伝達するように適合されていてもよい。そのような方法が、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6,814,733号、同第6,997,924号、及び同第7,156,816号に開示されており、これらの特許は参照によって本願に組み込まれる。
【0023】
位置決めプロセッサ22は、カテーテル14の配置と向きの座標を測定する位置決めシステム26の一要素である。本特許出願の全体を通じて、「配置」という用語はカテーテルの空間座標を指し、「向き」という用語はその角座標を指す。「位置」という用語は、カテーテルのすべての位置情報を指すものであり、配置と向きの両方の座標を含むものである。
【0024】
一実施形態において、位置決めシステム26は、カテーテル14の位置と向きを判定する磁気式位置追跡システムを備える。位置決めシステム26は、近接する所定の作業範囲に磁場を発生させ、これらの磁場をカテーテルにて感知する。位置決めシステム26は通常、磁場発生コイル28などの1組の外部ラジエータを備えており、それらの外部ラジエータは、患者の体外にある一定の既知の位置に配置されている。コイル28は、心臓12の付近において、磁場、典型的には電磁場を発生させる。
【0025】
別の実施形態において、コイルなど、カテーテル14内のラジエータが電磁場を発生させ、その電磁場は、患者の体外にあるセンサー(図示せず)によって受容される。
【0026】
この目的で使用され得るいくつかの位置追跡システムが、例えば、上記の米国特許第6,690,963号、並びに、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6,618,612号及び同第6,332,089号、並びに、米国特許出願公開第2004/0147920号及び同第2004/0068178号に記載されており、それらの開示内容はすべて参照によって本願に組み込まれる。図1に示す位置決めシステム26は磁場を用いているが、以下に述べる方法は、電磁場、音響又は超音波測定に基づくシステムなど、任意の他の好適な位置決めシステムを使用して実現され得る。位置決めシステム26は、91765カリフォルニア州ダイヤモンドバー(Diamond Bar)、ダイヤモンドキャニオンロード(Diamond Canyon Road)3333のバイオセンス・ウェブスター社(Biosense Webster Inc.)から入手可能なCARTO XP EP Navigation and Ablation Systemとして実現されてもよい。
【0027】
上記のように、カテーテル14は操作卓24に連結されており、操作卓24により操作者16は、カテーテル14の機能を観測及び調節することが可能である。操作卓24は、プロセッサ、好ましくは適切な信号処理回路を有するコンピュータを含んでいる。プロセッサは、モニター29を駆動するように連結されている。信号処理回路は通常、センサー31、33及び複数の感知電極35によって発生された信号を含めて、カテーテル14から得られた信号を受信し、増幅し、フィルタ処理し、デジタル化する。デジタル化された信号は、カテーテル14の位置と向きを算出するために、また電極から得られた電気信号を解析するために、操作卓24によって受信され使用される。この解析で導出された情報は、心臓内の不整脈惹起性の領域を特定するなどの診断上の目的で心臓12又は肺静脈口(pulmonary venous ostia)などの構造の少なくとも一部分の電気生理学的マップを発生させるために、あるいは、治療的焼灼を促進するために使用される。
【0028】
通常、システム10は他の要素も含むが、それらは簡潔にするために図には示されていない。例えば、システム10は心電図(ECG)モニターを含んでもよく、そのECGモニターは、ECG同期信号を操作卓24に供給するために、1個以上の体表面電極から信号を受信するように連結される。上述のように、システム10はまた、通常、被験者の身体の外側に貼り付けられる外貼り基準パッチ上かあるいは内置きカテーテル上に、基準位置センサーを含んでおり、内置きカテーテルは、心臓12の中に挿入され、心臓12に対して一定の位置に維持される。カテーテル14の位置を基準カテーテルの位置と比較することにより、カテーテル14の座標は、心臓の動作とは無関係に、心臓12を基準として正確に判定される。別法として、任意の他の好適な方法を用いて心臓の動作による影響を補正してもよい。
【0029】
ここで図2を参照するが、図2は、開示する本発明の実施形態による、構成され動作可能となったラッソーカテーテル37の側面図である。カテーテル37は操向可能な装置である。そのハンドル、制御及び操向機構(図示せず)は通常のものであり、簡潔にするために図2では省略されている。カテーテル37は基部セグメント39を特徴としており、基部セグメント39は、操向機構によって加えられた力に応答して屈曲可能である。本願においてループセグメント41と呼ばれる遠位湾曲区間で、ラッソーの構成が完了している。このループセグメント41は、関節43にて、範囲を制限された角度αをなして基部セグメント39に接合されている。ループセグメント41と基部セグメント39との間の角度αは、最適には約90度である。関節43は、初期には別々である部材(基部セグメント39とループセグメント41)が接合される点を画定してもよく、あるいは別法として、関節43は、基部セグメント39とループセグメント41を形成するように単一の部材が屈曲する点をカテーテル37上に画定してもよい。ループセグメント41は、既知の固定長のものであり、特定の医療用途に応じた大きさをなす湾曲を有している。この湾曲は、カテーテルの操向及び制御機構(図示せず)を使用して調節可能にされてもよい。7〜15mmの間で調節可能な半径45が、心臓の用途に好適である。しかしながら、半径45は、いくつかの用途において最大25mmにまで変更されてもよい。いずれの場合も、ループセグメント41は、肺静脈の小孔又は冠状動脈洞などの構造に適合するような大きさをなし得る。
【0030】
ループセグメント41は、好ましくは捻り可能であるが、医療行為において遭遇する典型的な力を受けたときに伸張可能でない材料から構成されている。好ましくは、ループセグメント41は、所定の湾曲した形態を、すなわち、力が加えられていないときには、開いた円形又は半円形の形態を呈し、力が加えられているときには、所定の湾曲した形態から屈曲するように、十分な弾性を有している。好ましくは、ループセグメント41は、当該技術分野において知られているように、湾曲区間を弾性の長手部材で内部補強することにより、その全長の少なくとも一部分にわたって概ね一定である弾性を有する。ループセグメント41は、従来のラッソーよりも概して薄くかつ硬いものである。例えば、ループセグメント41はポリウレタンで作られていてもよく、直径が少なくとも1mmであってもよい。
【0031】
心臓組織の電気特性を感知するように適合された1個以上の電極35が、ループセグメント41に固定されている。ここで図3を参照すると、図3は、線3−3に沿ったカテーテル37(図2)の横断面図であり、電極35のうちの1つを示している。電極35は、外部表面47の上方に約0.1〜0.5mm隆起し、概して丸みを帯びた輪郭を有して、表面47上にキャップを形成していてもよい。いくつかの実施形態において、電極35は、表面の上方に最大で1mmに及ぶ、より大きな隆起を有してもよい。電極35は、円周の100%を覆う通常のリング電極とは対照的に、表面47の円周の25〜270パーセントにわたって延びていてもよい。電極35は円形の境界線を有してもよい。別法として、以下で更に述べるように、輪郭が楕円形状であってもよい。これらの構成により、電極35と心臓組織が相当に接触し、通常の電極と比較して電気抵抗が低下することになる。電極35は、寸法が2〜5mmであってもよい。電極35はまた焼灼に使用されてもよく、その場合、電気抵抗が低下することは特に有利となる。一実施形態において、電極35のうちの2個は、双極焼灼、例えば高周波焼灼を実施するために選択されるものであり、その場合、ケーブル57は、個々に電極35に通じるワイヤーを含んでもよい。
【0032】
電極35の外部表面は、その外部表面を貫いて形成された多数の小さな穿孔49によって窓をなしている。通常、0.05〜0.4mmの直径を有する1〜50個の穿孔がある。穿孔はまた、任意の他の形状の領域(円形でない)、例えば矩形であってもよく、これらの他の形状をなす領域は、直径0.05〜0.4mmの円形の穿孔の面積に等価なものである。穿孔49は、チャネル53を通じて灌注ルーメン51と流体連通している。第2のルーメン55はケ―ブル57を通しており、ケーブル57は、電極35を操作卓24(図1)に連結する1本以上の導電性ワイヤー、例えばワイヤー59を備えている。ルーメン55はまた、以下で述べるように、更なるワイヤーを導いてもよい。
【0033】
ここで図4を参照するが、図4は、開示する本発明の実施形態による、構成され動作可能となったカテーテルのシャフト61の断片立面図である。電極63は輪郭が円形であり、穿孔49の表面分布は実質的に均一である。
【0034】
図2に戻ると、少なくとも第1の単コイル位置センサー31がループセグメント41に固定されている。好ましくは、センサー31は、ループセグメント41の遠位端部(基部セグメント39に対して遠位側)に固定されており、第2の単コイル位置センサー33は、ループセグメント41のほぼ中央に固定されている。所望により、1つ以上の更なる単コイル位置センサー(図示せず)が、ループセグメント41に固定される。加えて、多コイル位置センサー65が、好ましくは基部セグメント39の遠位端部付近に、典型的には遠位端部から10mm以内の関節43の近傍に固定されている。センサー65は好ましくは、上で引用したベン・ハイム(Ben-Haim)らへのPCT特許公開に記載されている技法、又は当該技術分野において既知の他の技法を用いて、位置と向きの6つの次元を発生させることが可能である。センサー65は好ましくは2個又は3個のコイルを備え、それらのコイルは一般に、6次元の位置情報を発生させるのに十分なものである。センサー31、33は好ましくは、位置と向きの5次元を発生させることが可能である。ある好ましい電磁マッピングセンサーが、バイオセンス・ウェブスター(イスラエル)社(Biosense Webster(Israel)Ltd.)(イスラエル国ティラット・ハカーメル(Tirat Hacarmel))によって製造されており、NOGA(商標)の商標名で市販されている。別法として、センサー31、33、65は、ホール効果装置又は他のアンテナなど、コイル以外の電界センサーを備え、その場合、センサー31、33は好ましくはセンサー65よりも小さなものである。
【0035】
センサー31、33、65は、任意の好適な方法で、例えばポリウレタン接着剤などを使用して、カテーテル37に固定される。センサー31、33、65は、ケーブル57(図3)に電気的に接続されており、ケーブル57は、カテーテル本体を通じてカテーテル37の制御ハンドル(図示せず)の中へと延びている。ケーブル57は好ましくは、プラスチックで被覆されたシースに包まれた複数のワイヤーを備えている。カテーテル本体内で、ケーブル57は、ワイヤー59(図3)と共に保護シース内に封入されていてもよい。好ましくは、制御ハンドル内で、センサーケーブルのワイヤーは回路基板(図示せず)に接続されており、その回路基板は、位置センサーから受信した信号を増幅し、コンピュータにとって解釈可能な形態で、それらの信号を、操作卓24(図1)に収容されたコンピュータに伝送する。別法として、ノイズの影響を低減するために、増幅回路がカテーテル37の遠位端部に含められる。
【0036】
再び図1を参照する。位置センサー31、33、65を使用するために、例えば、磁場を発生させるための磁場発生コイル28を収容するパッドを被験者の下方に据えることによって、被験者は発生させた磁場に置かれる。基準電磁センサー(図示せず)が好ましくは、被験者に対して固定され、例えば被験者の背中にテープで付けられ、カテーテル37は、被験者の心臓の中に、そして心腔の一方の中又は付近の所望の部位、例えば肺静脈のうちの1つの中に前進される。ここで図2に戻るが、センサー31、33、65内のコイルは、それらの磁場における位置を示す弱い電気信号を発生させる。固定された基準センサーによって発生された信号と、心臓内のセンサー31、33、65によって発生された信号は共に、増幅され、コイル28(図1)に伝送され、これにより、基準センサーに対するセンサー31、33、65の正確な配置の判定及び視覚表示が容易となるように、その信号が解析される。
【0037】
センサー31、33の各々は好ましくは、1個のコイルを備え、センサー65は好ましくは、上で引用したPCT特許公開第96/05768号に記載されているコイルなど、典型的には相互に直交する3個の非同心型のコイルを備える。これらのコイルは、コイル28によって発生された磁場を感知するが、コイル28は、発生器25(図1)内の駆動回路によって駆動される別法として、これらのセンサーは、固定された感知コイル(図示せず)によって検出される磁場を発生させてもよく、その場合、コイル28は除かれ得る。システム10はしたがって、センサー31、33の各々に対する位置と向きの5次元の情報、及びセンサー65の位置に対する6次元の情報の連続的な発生を達成する。
【0038】
ここで図5を参照するが、図5は、本発明の別の実施形態による、構成され動作可能となったカテーテルのシャフト67の断片立面図である。電極69は、輪郭が楕円形である。シャフト67の長手軸線71は、楕円形電極の長軸と一直線に並んでいる。先の実施形態と同様に、穿孔49の表面分布は実質的に均一である。
【0039】
ここで図6を参照するが、図6は、本発明の別の実施形態による、構成され動作可能となったカテーテルのシャフト73の断片立面図である。電極75は、輪郭が楕円形である。シャフト73の長手軸線71は、楕円形電極の短軸と一直線に並んでいる。先の実施形態と同様に、穿孔49の表面分布は実質的に均一である。
【0040】
図に示す灌注式バンプ電極はまた、カテーテル又はラッソーカテーテル以外の種類のプローブの全長に沿って配列されてもよい。ここで図7を参照するが、図7は、本発明の別の実施形態による心臓カテーテル77の概略図である。
【0041】
カテーテル77は、可撓性本体79を含んでいる。心臓組織の電気特性を測定するための又は欠陥心組織を焼灼するための電極81が、遠位部分83に配設されている。遠位部分83は、非接触電極85の配列を更に含んでおり、これら非接触電極85は、心腔における非近接場の電気信号を測定するためのものである。電極85は、先の実施形態のいずれかに従って構成されてよい。その詳細については、簡略にするため繰り返さない。
【0042】
非接触電極38が遠位部分83の長手軸線に沿って線形配列されていることから、配列87は線形配列となっている。遠位部分83は、少なくとも1つの位置センサー89を更に含んでおり、この位置センサー89は、体内における遠位先端部91の位置と向きを判定するために用いられる信号を発生させる。位置センサー89は、好ましくは先端部91に隣接している。位置センサー89、先端部91、及び電極81の位置と向きの関係は一定したものである。
【0043】
カテーテル14のハンドル93は、遠位部分83を操向又は屈曲させるために、あるいは遠位部分を望み通りに方向付けるために、制御器95を含んでいる。ケーブル97は、ハンドル93に結合されるレセプタクル99を備えている。ケーブル97は、カテーテル77を操作卓24(図1)から電気的に絶縁する1つ以上の絶縁トランス(図示せず)を備えていてもよい。別法として、この絶縁トランスは、レセプタクル99内に、あるいは操作卓24のシステム電子回路内に収容されていてもよい。
【0044】
3個以上の電極85が存在する実施形態において、それらの電極85は、図7に示すように、遠位部分83のシャフトに沿った単一の線形配列として一直線に並んでもよい。
【0045】
ここで図8を参照するが、図8は、本発明の別の実施形態による、構成され動作可能となったカテーテルのシャフト103の断片立面図である。別法として、電極85は、円周方向に整列されるかあるいは食い違い状にされた電極(シャフト103の円周に分布する)を有するシャフト103を中心として螺旋を描く1つ以上の配列として配設されてもよく、また、複数の線形配列を形成してもよい。例えば、図8に示すように、電極105、107は、破線109に沿って第1の線形配列の一部分を形成している。電極111、113は、破線115に沿って第2の線形配列の一部分を形成している。
【0046】
図9は、本発明の別の実施形態による、広げた構成をなし説明の目的で長手軸線に沿って描かれたカテーテル37のシャフト又はループセグメント41の断片立面図である。図9に示すように、ループ区間41は、図10に最良に示すように、ラッソーカテーテル37、77(図2及び図7)の外部表面又はループルーメン47の周りに360°にわたって環状に延びる複数の環状リング(「リング」は定義により「環状」である)バンプ電極36A〜36Jを有している。
【0047】
この実施形態において、ループ区間41は、外部表面又はループルーメン47の全体に環状に360°にわたって延びる、別々の10個の環状リングバンプ電極36A〜36Jを有している。
【0048】
図10及び図11に最良に示すように、各環状リングバンプ電極36(図9には総じて36A〜36Jとして示す)は、ある好ましい実施形態においては90重量%の白金、10重量%のイリジウム、別の実施形態においては80重量%のパラジウム、20重量%の白金でできている。
【0049】
各環状リングバンプ電極36は、各リング36の材料で作られた複数の穿孔49を有しており、各穿孔49は、外部表面又はループルーメン47を環状に囲む空洞又はチャンバー38と流体連通している好ましくは、各リング36に2〜25個の別々の穿孔49があり、より好ましくは、各リング36全体にわたって環状に配置された10個の別個の穿孔49がある。
【0050】
生理食塩水などの流体が、バンプリング電極36のチャンバー38の中に直接流体を供給するブリーチホール53の中へ、灌注ルーメン51を通じて運ばれ、リング電極36の周りに環状に分散又は配置された穿孔49を通じて、最終的にバンプリング電極36を通じて分配されるように、各リング電極36内の空洞又はチャンバー38は、チャネル又はブリーチホール53と流体連通しており、すなわち、食塩水は、ブリーチホール53を去り、チャンバー38の周りを循環し、次いでリング36内の穿孔49を通してカテーテル37、77を去ることができる。好ましくは、1個以上のブリーチホール53が各リング電極36に使用される。
【0051】
図9に最良に示すように、カテーテル37、77のループセグメント41は、セグメント41に沿って近位側から遠位側に向かってOD(外径)が約0.0127cm(0.005インチ)〜0.953cm(0.375インチ)へと変化するブリーチホールパターン(53A〜53J)を有している。より好ましくは、ブリーチホールパターン(53A〜53J)は、セグメント41に沿って近位側から遠位側に向かって約0.0305cm(0.12インチ)〜0.0635cm(0.25インチ)のODに変化する。
【0052】
例えば、環状リングバンプ電極36A内のブリーチホール53Aは、ODが約0.0305cm(0.0120インチ)であり、環状リングバンプ電極36B内のブリーチホール53Bは、ODが約0.0325cm(0.0128インチ)であり、環状リングバンプ電極36C内のブリーチホール53Cは、ODが約0.0345cm(0.0136インチ)であり、環状リングバンプ電極36D内のブリーチホール53Dは、ODが約0.0361cm(0.0142インチ)であり、環状リングバンプ電極36E内のブリーチホール53Eは、ODが約0.0391cm(0.0154インチ)であり、環状リングバンプ電極36F内のブリーチホール53Fは、ODが約0.0442cm(0.0174インチ)であり、環状リングバンプ電極36G内のブリーチホール53Gは、ODが約0.0488cm(0.0192インチ)であり、環状リングバンプ電極36H内のブリーチホール53Hは、ODが約0.0544cm(0.0214インチ)であり、環状リングバンプ電極36I内のブリーチホール53Iは、ODが約0.0599cm(0.0236インチ)であり、環状リングバンプ電極36J内のブリーチホール53Jは、ODが約0.0635cm(0.0250インチ)である(すべてのブリーチホール53A〜53Jは±0.0013cm(0.0005インチ)のOD誤差又は変動を伴う)。
【0053】
図9に示し説明するように、このパターンは、各リング36A〜36Jの各ブリーチホール53A〜53Jに対して、ループセグメント41の全長に沿って近位側から遠位側に向かって、直径の小さな寸法から大きな寸法へと変化するODを有する。このパターンは、システム10(図1)のポンプ(図示せず)が60mL/minで操作されるとき、各リング36からの流量を比較的バランスのとれたものにすることが実験的に判明している。図9に示すブリーチホールパターン(53A〜53J)は本発明に従う一例に過ぎず、パターン(53A〜53J)は、遠位側のリング、例えばリング36F〜36Jに、優先的な流量を与えるように更に偏ったものにされ得る。
【0054】
図10及び図11に最良に示すように、ブリーチホール53は、外部表面又はループルーメン47を通じて、ループルーメン47の灌注ルーメン51へと、また環状リング電極36のバンプによって形成された空洞/チャンバー38へと正確に穿設されている。各リング36A〜36Jが受け、最終的にそれぞれの穿孔49を通じて分配する流量を制御するために、各リング36A〜36J(一般に、近位側から遠位側に向かって寸法の大きなブリーチホール53)の真下又は下方でブリーチホール53A〜53Jの寸法に変化が設けられている。
【0055】
したがって、留意すべき重要なこととして、本発明によって規定される方式でブリーチホール53A〜53Jの寸法を調節することにより、リング自体の穿孔49を調節する必要性が排除され、それにより、すべて同じリング構成要素でカテーテルを構成することが可能となっている。これは、製造及び価格設定に関してより費用効果的かつ効率的である。
【0056】
また、留意すべき重要なこととして、ブリーチホール53A〜53Jは、任意の所望の方式で流量のバランスを取るように(図9に示し、上で説明したように)、あるいは、必要に応じて、ループセグメント41の近位端部付近でより多くの流体容積を必要とする用途に対しては近位側に流量を偏らせるように調節され得る。したがって、ブリーチホール53A〜53Jは、寸法の大きなブリーチホールODをより近位側に、寸法の小さなブリーチホールをより遠位側にして、すなわち図9にて示し説明した配置とは反対の配置で構成されることになる。
【0057】
したがって、遠位区間又はループセグメント41は、ループセグメント41の一方の端部又はループセグメント41のその反対の端部に灌注流体を偏らせるか、あるいは灌注流体の流れを優先的に与えるために任意の所望の方式で特注されるブリーチホールパターン(53A〜53J)を有している。更に、本発明によれば、ループセグメント41の中間部分にある又はその近くにあるブリーチホール、例えばブリーチホール53D〜53Jは、ループセグメント41の中間部分にて灌注の流れを均等に分布させるために、同様の寸法のホールを有することができ、一方で、ブリーチホール53A〜53C及び53H〜53Jは、この種の灌注流体のパターンを必要とする医療用途に対し、中央に位置するブリーチホール53D〜53Jよりも大きな寸法又は小さな寸法のホールを有することができる。
【0058】
別法として、単一のリング電極36が、複数のブリーチホール53から灌注流体を供給される。ホール53の形状は、矩形の形状、楕円形の形状、三角形の形状など、任意の所望の形状をなすことができ、円形以外のいずれの形状も、上で既に述べたODを有する円形ホールの面積に等しい面積を有する。
【0059】
好ましい実施形態によれば、図10に示すように、ループセグメント41は、少なくとも1個の位置センサー89(図2)のための位置センサールーメン50と、ニチノール屈曲ワイヤー及びプーラーワイヤー(図示せず)のための第3のルーメン52を有している。ニチノールワイヤーは、カテーテル27、77が「ラッソー(投げ縄)」又は円形の形状をなすことを可能にするものである。ルーメン52を貫くワイヤーはニチノールでできているので超弾性をなしており、それにより、遠位セグメント41は、遠位セグメント41が案内カテーテルシースの中に移動するのを容易にするために直線状となり、次いで、シースを去ると、永久的に撓曲することなく円形の形状を取ることが可能となる。遠位セグメント41は、いかなる大きさの静脈、例えば、直径が25〜15mmの大きさの静脈にも適合するように容易に調節される可変ループである。静脈の直径に適応し、環状リングバンプ電極36と静脈の内部表面(又は、対象となる他の心腔内の組織標的部)との良好な接触を確実にするために、第3のルーメン52内のプーラーワイヤーが使用されて、円形の遠位セグメント41(ラッソー)の直径が収縮される。
【0060】
本発明は、上に具体的に図示し説明した内容に限定されるものではないことが、当業者には明らかとなろう。むしろ、本発明の範囲には、上で説明した様々な特徴の組み合わせと部分的組み合わせの双方、並びに、先行技術にはないそれらの変更形態及び修正形態が含まれ、それらは上記の説明を読めば当業者には思いつくものである。
【0061】
〔実施の態様〕
(1) カテーテルであって、
遠位端部を有する挿入チューブと、
前記挿入チューブの前記遠位端部に固定された弾性遠位区間であって、前記遠位区間は、外部表面と内部灌注ルーメンとを有し、前記外部表面の上方に隆起する複数のリング電極を備え、前記複数のリング電極は、前記外部表面の円周全体に環状に配置されており、各リング電極は、その下方に空洞を画定し、前記リング電極は、それらを貫通して形成された複数の穿孔を有し、前記外部表面は、その中に少なくとも1つのブリーチホールを有し、前記ブリーチホールは、各リング電極の下に配置され、かつ前記灌注ルーメンと流体連通しており、各リング電極の前記空洞及び前記穿孔は、各リング電極を通じて前記弾性遠位区間から灌注流体を分配するためのものである、弾性遠位区間と、を備える、カテーテル。
(2) 前記挿入チューブは、血管を通じて被験者の心臓の中へと挿入するために構成されており、前記弾性遠位区間は、前記心臓内に配置されると、開ループを画定する、実施態様1に記載のカテーテル。
(3) 各リング電極の前記少なくとも1つのブリーチホールの直径は寸法が変化する、実施態様2に記載のカテーテル。
(4) 各リング電極の前記少なくとも1つのブリーチホールの前記直径は、前記弾性遠位区間に沿って近位側から遠位側に向かって、小さいものから大きいものへと寸法が変化する、実施態様3に記載のカテーテル。
(5) 各リング電極の前記少なくとも1つのブリーチホールの前記直径は、前記弾性遠位区間に沿って近位側から遠位側に向かって、大きいものから小さいものへと寸法が変化する、実施態様3に記載のカテーテル。
(6) 前記遠位区間の中間部分における各リング電極の前記少なくとも1つのブリーチホールの直径は、寸法が類似しており、前記中央部分の近位側及び遠位側の各ブリーチホールの前記直径は、前記弾性遠位区間の前記中間部分の各ブリーチホールとは寸法が異なる、実施態様1に記載のカテーテル。
(7) 前記弾性遠位区間は、少なくとも3個のリング電極を有する、実施態様4に記載のカテーテル。
(8) 前記弾性遠位区間は、10個のリング電極を有する、実施態様7に記載のカテーテル。
(9) 前記弾性遠位区間は、少なくとも3個のリング電極を有する、実施態様5に記載のカテーテル。
(10) 前記弾性遠位区間は、10個のリング電極を有する、実施態様9に記載のカテーテル。
【0062】
(11) 前記弾性遠位区間は、少なくとも3個のリング電極を有する、実施態様6に記載のカテーテル。
(12) 前記弾性遠位区間は、10個のリング電極を有する、実施態様11に記載のカテーテル。
(13) 前記リング電極は、90重量%の白金、10重量%のイリジウムでできている、実施態様1に記載のカテーテル。
(14) 前記リング電極は、80重量%のパラジウム、20重量%の白金でできている、実施態様1に記載のカテーテル。
(15) 前記遠位セグメントは、前記セグメントに沿って近位側から遠位側に向かってOD(外径)が約0.0127cm(0.005インチ)〜0.953cm(0.375インチ)へと変化するブリーチホールパターンを有する、実施態様4に記載のカテーテル。
(16) 前記遠位セグメントは、前記セグメントに沿って近位側から遠位側に向かって約0.0305cm(0.012インチ)〜0.0635cm(0.025インチ)のOD(外径)に変化するブリーチホールパターンを有する、実施態様15に記載のカテーテル。
(17) 前記遠位セグメントは、前記セグメントに沿って近位側から遠位側に向かってOD(外径)が約0.0127cm(0.005インチ)〜0.953cm(0.375インチ)へと変化するブリーチホールパターンを有する、実施態様8に記載のカテーテル。
(18) 前記遠位セグメントは、前記セグメントに沿って近位側から遠位側に向かって約0.0305cm(0.012インチ)〜0.0635cm(0.025インチ)のOD(外径)に変化するブリーチホールパターンを有する、実施態様17に記載のカテーテル。
(19) 前記リング電極は、90重量%の白金、10重量%のイリジウムでできている、実施態様18に記載のカテーテル。
(20) 前記リング電極は、80重量%のパラジウム、20重量%の白金でできている、実施態様18に記載のカテーテル。
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓のマッピング及び焼灼システムに関する。より具体的には、本発明は、心臓のマッピング及び焼灼システムにおいて使用するためのラッソーカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
心房細動などの心不整脈は、心臓組織の各領域が電気信号を隣接組織に変則的に伝達し、それによって、正常な心周期を乱れさせ、非周期的な律動を引き起こしたときに生じるものである。望ましくない信号の重大な発生源は、左心房の肺静脈沿い及び上肺静脈内の組織領域内に位置する。この条件下において、望ましくない信号が肺静脈内で生成されるか、あるいは他の発生源から肺静脈を通して伝達された後、それらの信号は左心房の中に伝達され、ここで不整脈を誘起又は存続させ得る。
【0003】
不整脈を治療するための手技には、不整脈を発生させる信号の発生源を外科的に遮断すること、並びにそのような信号の伝導経路を遮断することが挙げられる。更に最近では、心内膜の電気特性と心容積をマッピングし、エネルギーの印加により心組織を選択的に焼灼することによって、心臓のある部位から別の部位への望ましくない電気信号の伝播を中断させるかあるいは修正することが場合によっては可能となると判明している。焼灼プロセスは、非伝導性の病変部を形成することによって、望ましくない電気的経路を破壊するものである。
【0004】
マッピングに焼灼が続くという、この2工程の手技においては、通常、1個以上の電気センサーを収容したカテーテルを心臓の中に前進させ、多数の点でデータを取得することによって、心臓内の各点における電気活動が感知及び測定される。次いでこれらのデータが利用されて、焼灼が実施される標的領域が選択される。
【0005】
本特許出願の譲受人に譲渡されており、参照によって本願に組み込まれる、ベン・ハイム(Ben-Haim)への米国特許第6,063,022号には、プローブの遠位端部に対して既知の一定な関係にある2つの位置センサーを含む侵襲プローブについて記載されている。これらの位置センサーは、それぞれの対応する位置座標に応答する信号を発生させ、プローブの放射状表面に沿った少なくとも1個の接触センサーが、プローブ上の電極によって焼灼される体組織との接触を示す信号を発生させる。
【0006】
ベン・ハイム(Ben-Haim)への米国特許第6,272,371号は、本特許出願の譲受人に譲渡されており、参照によって本願に組み込まれるものであるが、この米国特許第6,272,371号には、力が加えられたときに所定の湾曲形状を呈する可撓性部分を含む侵襲プローブについて記載されている。それらのセンサーのうちの少なくとも1個のセンサーの位置及び向きの座標を判定するために、また、プローブの遠位部分の長さ方向に沿った複数の点の配置を判定するために、既知の位置でプローブの遠位部分に固定された2個の位置センサーが使用される。
【0007】
ベン・ハイム(Ben-Haim)らへのPCT特許公開第96/05768号及びそれに対応する米国特許出願公開第2002/0065455号は、本特許出願の譲受人に譲渡されており、参照によって本願に組み込まれるものであるが、これらには、カテーテルの先端に関する位置と向きの6次元の情報を発生させるシステムについて記載されている。このシステムは、カテーテル内の特定可能な部位に隣接する、例えばカテーテルの遠位端部の近くにある複数のセンサーコイルと、外部の基準系に固定された複数のラジエータコイルを使用する。これらのコイルは、ラジエータコイルによって発生された磁場に応答して信号を発生させるものであり、これらの信号により、位置と向きの6次元を算出することが可能となり、それにより、カテーテルの位置と向きは、カテーテルを撮像する必要なしに知られる。
【0008】
本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6,973,339号に、あるラッソーカテーテルが開示されており、この米国特許第6,973,339号は参照によって本願に組み込まれる。このラッソーカテーテルは、肺静脈のマッピング及び焼灼に特に適合されている。このカテーテルは、6次元未満の位置と向きの情報を発生させることが可能な第1の位置センサーを有する湾曲区間と、肺静脈の電気特性を測定するように適合された1個以上の電極と、湾曲区間の近位端部に取り付けられた基部区間とを備える。基部区間上の、その遠位端部から3mm以内のところに、6次元の位置と向きの情報を発生させることが可能な第2の位置センサーが配設される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
ラッソーカテーテルは一般に、肺静脈の小孔などの解剖学的構造を囲む円弧に沿って組織を焼灼するために使用される。従来より、ラッソーカテーテルの湾曲区間又はループは、操作性の目的で、一般に薄い「ぺらぺら」のものであり、一方で、ラッソー上に配設されるリング電極は、電気抵抗を最小にするために、比較的大きなものである。
【0010】
本発明の実施形態は、焼灼と感知の両方に使用され得るラッソーカテーテルを提供するが、このカテーテルは他の有利な特徴も有する。その遠位湾曲部分は、時に「ループ」又は「ループセグメント」と本願では呼ばれるが、典型的には従来のラッソーカテーテルよりも厚くかつ硬いものである。ラッソーカテーテルは、リング電極ではなく、比較的小さな隆起した突起型電極を有している。これらの電極の寸法が小さいことは、局所的な電気活動を良好な空間解像度で測定することを可能にする上で有利である。電極が隆起することにより、心臓組織と接触する表面積が増加し、したがって、電極が焼灼に使用されるときの電気抵抗が低下する。
【0011】
焼灼の間、局所的な冷却をもたらし、固着を防止するために、電極は複数の穿孔によって窓をなしていてもよい。それらの穿孔はルーメンと流体連通しており、そのルーメンは、灌注流体をカテーテル内から電極の外部表面へ、そして隣接組織へと運ぶ。別のルーメンが、電極の各々に接続されたワイヤーを収容してもよい。
【0012】
本発明の実施形態は、挿入チューブと、その挿入チューブの遠位端部に固定された弾性遠位区間とを含むカテーテルを提供する。遠位区間は、内部灌注ルーメンと、外部表面の上方に隆起する複数の電極とを有する。電極は、それを貫いて形成された複数の穿孔を有し、外部表面は、それらの穿孔を通して灌注ルーメンと流体連通する。
【0013】
カテーテルの一態様によれば、挿入チューブは、血管を通じて被験者の心臓の中へと挿入するように構成されており、弾性遠位区間は、心臓内に配置されると、開ループを画定する。
【0014】
本発明の一実施形態は、生体の心臓内にある不整脈惹起性の領域を特定するための方法を提供する。この方法は更に、あるカテーテルを心腔の中に挿入することによって実施され、そのカテーテルは、挿入チューブと、弾性遠位区間とを含み、その弾性遠位区間は、内部灌注ルーメンを有し、挿入チューブの遠位端部に固定されている。遠位区間はまた、外部表面の上方に隆起する複数の電極を含み、それらの電極は、電極を貫いて形成された複数の穿孔を有する。遠位区間の外部表面は、穿孔を通して灌注ルーメンと流体連通している。この方法は更に、心腔内の標的に近接してカテーテルを配置し、カテーテルを通して標的から受信した電気信号を解析して、それらの電気信号が心臓内の異常な電気伝導を示すものであると判断し、その判断に応答して、エネルギーを心臓の中に伝達し、それによって異常な電気伝導に変化をもたらすことによって実施される。
【0015】
別の好ましい実施形態によれば、本発明は、遠位端部を有する挿入チューブと、その挿入チューブの遠位端部に固定された弾性遠位区間とを備えるカテーテルである。その遠位区間はまた、「ループ」又は「ループセグメント」の形態をなし得る。遠位区間は、外部表面と内部灌注ルーメンとを有し、外部表面の上方に隆起する複数のリング電極を備え、その複数のリング電極は、外部表面の円周全体に環状に配置される。各リング電極は、その下方に空洞を画定する。リング電極は、それらを貫通して形成された複数の穿孔を有し、外部表面はその中にブリーチホールを有し、それらのブリーチホールは、各リング電極の下に配置され、灌注ルーメンと流体連通する。各リング電極の空洞及び穿孔により、各リング電極を通じて遠位区間から灌注流体を分配することが容易となる。
【0016】
本発明によれば、各リング電極のブリーチホールの直径は、寸法が変化する。例えば、一実施形態において、各リング電極のブリーチホールの直径は、弾性遠位区間に沿って近位側から遠位側に向かって、小さいものから大きいものへと寸法が変化する。別法として、本発明の別の実施形態において、各リング電極のブリーチホールの直径は、弾性遠位区間に沿って近位側から遠位側に向かって、大きいものから小さいものへと寸法が変化する。
【0017】
ブリーチホールは、円形又は他の形状(例えば、矩形)をなすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明を更に理解するために、一例として、以下の図面と共に通読される本発明の詳細な説明を参照する。以下の図面において、同様の要素には同様の参照符号が与えられている。
【図1】開示する本発明の実施形態による、電気活動の異常な領域を検出し生体の心臓に焼灼手技を実施するためのシステムの絵画的表現図。
【図2】開示する本発明の実施形態による、構成され動作可能となったラッソーカテーテルの側面図。
【図3】線3−3に沿った、図2に示すカテーテルの横断面図。
【図4】開示する本発明の実施形態による、構成され動作可能となったカテーテルのシャフトの断片立面図。
【図5】本発明の別の実施形態による、構成され動作可能となったカテーテルのシャフトの断片立面図。
【図6】本発明の別の実施形態による、構成され動作可能となったカテーテルのシャフトの断片立面図。
【図7】本発明の別の実施形態による、心臓カテーテルの概略図。
【図8】本発明の別の実施形態による、構成され動作可能となった複数の線形電極配列を有するカテーテルのシャフトの断片立面図。
【図9】本発明の別の実施形態による、構成され動作可能となったカテーテルのシャフトの断片立面図。
【図10】本発明による環状リングバンプ電極を貫く、図9に示すカテーテルの横断面図。
【図11】本発明による図9に示すカテーテルの環状リングバンプ電極を貫く縦断面とした側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の説明において、本発明の様々な原理が完全に理解されるように、多数の具体的な詳細が記載されている。しかしながら、これらのすべての詳細が本発明の実施に必ずしも必要ではないことが、当業者には明らかとなろう。この場合、周知の回路、制御ロジック、並びに通常のアルゴリズム及びプロセスに対するコンピュータプログラム命令の詳細は、一般的な概念を不必要に不明確にしないようにするために、詳細には示されていない。
【0020】
ここで図面を参照するが、まず図1を参照すると、図1は、開示する本発明の実施形態による、電気活動の異常な領域を検出し生体の心臓12に焼灼手技を実施するためのシステム10の絵画的表現図である。このシステムはラッソーカテーテル14を備えており、このラッソーカテーテル14は、典型的には医師である操作者16によって、患者の脈管系を通じて心臓のチャンバー又は脈管構造の中に経皮的に挿入される。操作者16は、評価される標的部位にて、カテーテルの遠位先端部18(「18」は、ループにより近づけて、つまり、カテーテルの遠位先端部(ループ)ではなく心腔を示すように移動されなければならない)を心臓壁と接触させる。次いで、開示内容が参照によって本願に組み込まれる、上記の米国特許第6,226,542号及び同第6,301,496号並びに本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6,892,091号に開示された方法に従って、電気活動マップが作成される。
【0021】
電気活動マップの評価によって異常と判断された領域は、電気エネルギーを印加することによって、例えばカテーテル内のワイヤーを通じて遠位先端部18にある1個以上の電極に高周波電流を送ることによって焼灼されることができ、その遠位先端部18は高周波エネルギーを心筋に印加する。このエネルギーは組織に吸収され、電気興奮性を永久的に失う点(典型的には約50℃)までその組織を加熱する。成功した場合、この手技により心臓組織内に非伝導性の病変部が生じ、その病変部は、不整脈を引き起こす異常な電気的経路を遮断する。別法として、その開示内容が参照によって本願に組み込まれる米国特許出願公開第2004/0102769号に開示されているように、焼灼エネルギー、例えば、超音波エネルギーを印加する他の既知の方法が用いられ得る。本発明の原理は、種々の心腔に、また洞調律のマッピングに応用され得るものであり、多数の種々の心不整脈が存在する場合に応用され得る。
【0022】
カテーテル14は通常、ハンドル20を備えており、焼灼のために所望に応じてカテーテルの遠位端部を操作者16が操向し、定置し、方向付けることを可能にする好適な制御器をハンドル上に有している。操作者16を支援するために、カテーテル14の遠位部分は、操作卓24に設置された位置決めプロセッサ22に信号を供給する位置センサー(図示せず)を収容している。操作卓24は通常、焼灼電力発生器25を収容している。カテーテル14は、任意の既知の焼灼技法、例えば、高周波エネルギー、超音波エネルギー、及びレーザーエネルギーを用いて、焼灼エネルギーを心臓に伝達するように適合されていてもよい。そのような方法が、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6,814,733号、同第6,997,924号、及び同第7,156,816号に開示されており、これらの特許は参照によって本願に組み込まれる。
【0023】
位置決めプロセッサ22は、カテーテル14の配置と向きの座標を測定する位置決めシステム26の一要素である。本特許出願の全体を通じて、「配置」という用語はカテーテルの空間座標を指し、「向き」という用語はその角座標を指す。「位置」という用語は、カテーテルのすべての位置情報を指すものであり、配置と向きの両方の座標を含むものである。
【0024】
一実施形態において、位置決めシステム26は、カテーテル14の位置と向きを判定する磁気式位置追跡システムを備える。位置決めシステム26は、近接する所定の作業範囲に磁場を発生させ、これらの磁場をカテーテルにて感知する。位置決めシステム26は通常、磁場発生コイル28などの1組の外部ラジエータを備えており、それらの外部ラジエータは、患者の体外にある一定の既知の位置に配置されている。コイル28は、心臓12の付近において、磁場、典型的には電磁場を発生させる。
【0025】
別の実施形態において、コイルなど、カテーテル14内のラジエータが電磁場を発生させ、その電磁場は、患者の体外にあるセンサー(図示せず)によって受容される。
【0026】
この目的で使用され得るいくつかの位置追跡システムが、例えば、上記の米国特許第6,690,963号、並びに、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6,618,612号及び同第6,332,089号、並びに、米国特許出願公開第2004/0147920号及び同第2004/0068178号に記載されており、それらの開示内容はすべて参照によって本願に組み込まれる。図1に示す位置決めシステム26は磁場を用いているが、以下に述べる方法は、電磁場、音響又は超音波測定に基づくシステムなど、任意の他の好適な位置決めシステムを使用して実現され得る。位置決めシステム26は、91765カリフォルニア州ダイヤモンドバー(Diamond Bar)、ダイヤモンドキャニオンロード(Diamond Canyon Road)3333のバイオセンス・ウェブスター社(Biosense Webster Inc.)から入手可能なCARTO XP EP Navigation and Ablation Systemとして実現されてもよい。
【0027】
上記のように、カテーテル14は操作卓24に連結されており、操作卓24により操作者16は、カテーテル14の機能を観測及び調節することが可能である。操作卓24は、プロセッサ、好ましくは適切な信号処理回路を有するコンピュータを含んでいる。プロセッサは、モニター29を駆動するように連結されている。信号処理回路は通常、センサー31、33及び複数の感知電極35によって発生された信号を含めて、カテーテル14から得られた信号を受信し、増幅し、フィルタ処理し、デジタル化する。デジタル化された信号は、カテーテル14の位置と向きを算出するために、また電極から得られた電気信号を解析するために、操作卓24によって受信され使用される。この解析で導出された情報は、心臓内の不整脈惹起性の領域を特定するなどの診断上の目的で心臓12又は肺静脈口(pulmonary venous ostia)などの構造の少なくとも一部分の電気生理学的マップを発生させるために、あるいは、治療的焼灼を促進するために使用される。
【0028】
通常、システム10は他の要素も含むが、それらは簡潔にするために図には示されていない。例えば、システム10は心電図(ECG)モニターを含んでもよく、そのECGモニターは、ECG同期信号を操作卓24に供給するために、1個以上の体表面電極から信号を受信するように連結される。上述のように、システム10はまた、通常、被験者の身体の外側に貼り付けられる外貼り基準パッチ上かあるいは内置きカテーテル上に、基準位置センサーを含んでおり、内置きカテーテルは、心臓12の中に挿入され、心臓12に対して一定の位置に維持される。カテーテル14の位置を基準カテーテルの位置と比較することにより、カテーテル14の座標は、心臓の動作とは無関係に、心臓12を基準として正確に判定される。別法として、任意の他の好適な方法を用いて心臓の動作による影響を補正してもよい。
【0029】
ここで図2を参照するが、図2は、開示する本発明の実施形態による、構成され動作可能となったラッソーカテーテル37の側面図である。カテーテル37は操向可能な装置である。そのハンドル、制御及び操向機構(図示せず)は通常のものであり、簡潔にするために図2では省略されている。カテーテル37は基部セグメント39を特徴としており、基部セグメント39は、操向機構によって加えられた力に応答して屈曲可能である。本願においてループセグメント41と呼ばれる遠位湾曲区間で、ラッソーの構成が完了している。このループセグメント41は、関節43にて、範囲を制限された角度αをなして基部セグメント39に接合されている。ループセグメント41と基部セグメント39との間の角度αは、最適には約90度である。関節43は、初期には別々である部材(基部セグメント39とループセグメント41)が接合される点を画定してもよく、あるいは別法として、関節43は、基部セグメント39とループセグメント41を形成するように単一の部材が屈曲する点をカテーテル37上に画定してもよい。ループセグメント41は、既知の固定長のものであり、特定の医療用途に応じた大きさをなす湾曲を有している。この湾曲は、カテーテルの操向及び制御機構(図示せず)を使用して調節可能にされてもよい。7〜15mmの間で調節可能な半径45が、心臓の用途に好適である。しかしながら、半径45は、いくつかの用途において最大25mmにまで変更されてもよい。いずれの場合も、ループセグメント41は、肺静脈の小孔又は冠状動脈洞などの構造に適合するような大きさをなし得る。
【0030】
ループセグメント41は、好ましくは捻り可能であるが、医療行為において遭遇する典型的な力を受けたときに伸張可能でない材料から構成されている。好ましくは、ループセグメント41は、所定の湾曲した形態を、すなわち、力が加えられていないときには、開いた円形又は半円形の形態を呈し、力が加えられているときには、所定の湾曲した形態から屈曲するように、十分な弾性を有している。好ましくは、ループセグメント41は、当該技術分野において知られているように、湾曲区間を弾性の長手部材で内部補強することにより、その全長の少なくとも一部分にわたって概ね一定である弾性を有する。ループセグメント41は、従来のラッソーよりも概して薄くかつ硬いものである。例えば、ループセグメント41はポリウレタンで作られていてもよく、直径が少なくとも1mmであってもよい。
【0031】
心臓組織の電気特性を感知するように適合された1個以上の電極35が、ループセグメント41に固定されている。ここで図3を参照すると、図3は、線3−3に沿ったカテーテル37(図2)の横断面図であり、電極35のうちの1つを示している。電極35は、外部表面47の上方に約0.1〜0.5mm隆起し、概して丸みを帯びた輪郭を有して、表面47上にキャップを形成していてもよい。いくつかの実施形態において、電極35は、表面の上方に最大で1mmに及ぶ、より大きな隆起を有してもよい。電極35は、円周の100%を覆う通常のリング電極とは対照的に、表面47の円周の25〜270パーセントにわたって延びていてもよい。電極35は円形の境界線を有してもよい。別法として、以下で更に述べるように、輪郭が楕円形状であってもよい。これらの構成により、電極35と心臓組織が相当に接触し、通常の電極と比較して電気抵抗が低下することになる。電極35は、寸法が2〜5mmであってもよい。電極35はまた焼灼に使用されてもよく、その場合、電気抵抗が低下することは特に有利となる。一実施形態において、電極35のうちの2個は、双極焼灼、例えば高周波焼灼を実施するために選択されるものであり、その場合、ケーブル57は、個々に電極35に通じるワイヤーを含んでもよい。
【0032】
電極35の外部表面は、その外部表面を貫いて形成された多数の小さな穿孔49によって窓をなしている。通常、0.05〜0.4mmの直径を有する1〜50個の穿孔がある。穿孔はまた、任意の他の形状の領域(円形でない)、例えば矩形であってもよく、これらの他の形状をなす領域は、直径0.05〜0.4mmの円形の穿孔の面積に等価なものである。穿孔49は、チャネル53を通じて灌注ルーメン51と流体連通している。第2のルーメン55はケ―ブル57を通しており、ケーブル57は、電極35を操作卓24(図1)に連結する1本以上の導電性ワイヤー、例えばワイヤー59を備えている。ルーメン55はまた、以下で述べるように、更なるワイヤーを導いてもよい。
【0033】
ここで図4を参照するが、図4は、開示する本発明の実施形態による、構成され動作可能となったカテーテルのシャフト61の断片立面図である。電極63は輪郭が円形であり、穿孔49の表面分布は実質的に均一である。
【0034】
図2に戻ると、少なくとも第1の単コイル位置センサー31がループセグメント41に固定されている。好ましくは、センサー31は、ループセグメント41の遠位端部(基部セグメント39に対して遠位側)に固定されており、第2の単コイル位置センサー33は、ループセグメント41のほぼ中央に固定されている。所望により、1つ以上の更なる単コイル位置センサー(図示せず)が、ループセグメント41に固定される。加えて、多コイル位置センサー65が、好ましくは基部セグメント39の遠位端部付近に、典型的には遠位端部から10mm以内の関節43の近傍に固定されている。センサー65は好ましくは、上で引用したベン・ハイム(Ben-Haim)らへのPCT特許公開に記載されている技法、又は当該技術分野において既知の他の技法を用いて、位置と向きの6つの次元を発生させることが可能である。センサー65は好ましくは2個又は3個のコイルを備え、それらのコイルは一般に、6次元の位置情報を発生させるのに十分なものである。センサー31、33は好ましくは、位置と向きの5次元を発生させることが可能である。ある好ましい電磁マッピングセンサーが、バイオセンス・ウェブスター(イスラエル)社(Biosense Webster(Israel)Ltd.)(イスラエル国ティラット・ハカーメル(Tirat Hacarmel))によって製造されており、NOGA(商標)の商標名で市販されている。別法として、センサー31、33、65は、ホール効果装置又は他のアンテナなど、コイル以外の電界センサーを備え、その場合、センサー31、33は好ましくはセンサー65よりも小さなものである。
【0035】
センサー31、33、65は、任意の好適な方法で、例えばポリウレタン接着剤などを使用して、カテーテル37に固定される。センサー31、33、65は、ケーブル57(図3)に電気的に接続されており、ケーブル57は、カテーテル本体を通じてカテーテル37の制御ハンドル(図示せず)の中へと延びている。ケーブル57は好ましくは、プラスチックで被覆されたシースに包まれた複数のワイヤーを備えている。カテーテル本体内で、ケーブル57は、ワイヤー59(図3)と共に保護シース内に封入されていてもよい。好ましくは、制御ハンドル内で、センサーケーブルのワイヤーは回路基板(図示せず)に接続されており、その回路基板は、位置センサーから受信した信号を増幅し、コンピュータにとって解釈可能な形態で、それらの信号を、操作卓24(図1)に収容されたコンピュータに伝送する。別法として、ノイズの影響を低減するために、増幅回路がカテーテル37の遠位端部に含められる。
【0036】
再び図1を参照する。位置センサー31、33、65を使用するために、例えば、磁場を発生させるための磁場発生コイル28を収容するパッドを被験者の下方に据えることによって、被験者は発生させた磁場に置かれる。基準電磁センサー(図示せず)が好ましくは、被験者に対して固定され、例えば被験者の背中にテープで付けられ、カテーテル37は、被験者の心臓の中に、そして心腔の一方の中又は付近の所望の部位、例えば肺静脈のうちの1つの中に前進される。ここで図2に戻るが、センサー31、33、65内のコイルは、それらの磁場における位置を示す弱い電気信号を発生させる。固定された基準センサーによって発生された信号と、心臓内のセンサー31、33、65によって発生された信号は共に、増幅され、コイル28(図1)に伝送され、これにより、基準センサーに対するセンサー31、33、65の正確な配置の判定及び視覚表示が容易となるように、その信号が解析される。
【0037】
センサー31、33の各々は好ましくは、1個のコイルを備え、センサー65は好ましくは、上で引用したPCT特許公開第96/05768号に記載されているコイルなど、典型的には相互に直交する3個の非同心型のコイルを備える。これらのコイルは、コイル28によって発生された磁場を感知するが、コイル28は、発生器25(図1)内の駆動回路によって駆動される別法として、これらのセンサーは、固定された感知コイル(図示せず)によって検出される磁場を発生させてもよく、その場合、コイル28は除かれ得る。システム10はしたがって、センサー31、33の各々に対する位置と向きの5次元の情報、及びセンサー65の位置に対する6次元の情報の連続的な発生を達成する。
【0038】
ここで図5を参照するが、図5は、本発明の別の実施形態による、構成され動作可能となったカテーテルのシャフト67の断片立面図である。電極69は、輪郭が楕円形である。シャフト67の長手軸線71は、楕円形電極の長軸と一直線に並んでいる。先の実施形態と同様に、穿孔49の表面分布は実質的に均一である。
【0039】
ここで図6を参照するが、図6は、本発明の別の実施形態による、構成され動作可能となったカテーテルのシャフト73の断片立面図である。電極75は、輪郭が楕円形である。シャフト73の長手軸線71は、楕円形電極の短軸と一直線に並んでいる。先の実施形態と同様に、穿孔49の表面分布は実質的に均一である。
【0040】
図に示す灌注式バンプ電極はまた、カテーテル又はラッソーカテーテル以外の種類のプローブの全長に沿って配列されてもよい。ここで図7を参照するが、図7は、本発明の別の実施形態による心臓カテーテル77の概略図である。
【0041】
カテーテル77は、可撓性本体79を含んでいる。心臓組織の電気特性を測定するための又は欠陥心組織を焼灼するための電極81が、遠位部分83に配設されている。遠位部分83は、非接触電極85の配列を更に含んでおり、これら非接触電極85は、心腔における非近接場の電気信号を測定するためのものである。電極85は、先の実施形態のいずれかに従って構成されてよい。その詳細については、簡略にするため繰り返さない。
【0042】
非接触電極38が遠位部分83の長手軸線に沿って線形配列されていることから、配列87は線形配列となっている。遠位部分83は、少なくとも1つの位置センサー89を更に含んでおり、この位置センサー89は、体内における遠位先端部91の位置と向きを判定するために用いられる信号を発生させる。位置センサー89は、好ましくは先端部91に隣接している。位置センサー89、先端部91、及び電極81の位置と向きの関係は一定したものである。
【0043】
カテーテル14のハンドル93は、遠位部分83を操向又は屈曲させるために、あるいは遠位部分を望み通りに方向付けるために、制御器95を含んでいる。ケーブル97は、ハンドル93に結合されるレセプタクル99を備えている。ケーブル97は、カテーテル77を操作卓24(図1)から電気的に絶縁する1つ以上の絶縁トランス(図示せず)を備えていてもよい。別法として、この絶縁トランスは、レセプタクル99内に、あるいは操作卓24のシステム電子回路内に収容されていてもよい。
【0044】
3個以上の電極85が存在する実施形態において、それらの電極85は、図7に示すように、遠位部分83のシャフトに沿った単一の線形配列として一直線に並んでもよい。
【0045】
ここで図8を参照するが、図8は、本発明の別の実施形態による、構成され動作可能となったカテーテルのシャフト103の断片立面図である。別法として、電極85は、円周方向に整列されるかあるいは食い違い状にされた電極(シャフト103の円周に分布する)を有するシャフト103を中心として螺旋を描く1つ以上の配列として配設されてもよく、また、複数の線形配列を形成してもよい。例えば、図8に示すように、電極105、107は、破線109に沿って第1の線形配列の一部分を形成している。電極111、113は、破線115に沿って第2の線形配列の一部分を形成している。
【0046】
図9は、本発明の別の実施形態による、広げた構成をなし説明の目的で長手軸線に沿って描かれたカテーテル37のシャフト又はループセグメント41の断片立面図である。図9に示すように、ループ区間41は、図10に最良に示すように、ラッソーカテーテル37、77(図2及び図7)の外部表面又はループルーメン47の周りに360°にわたって環状に延びる複数の環状リング(「リング」は定義により「環状」である)バンプ電極36A〜36Jを有している。
【0047】
この実施形態において、ループ区間41は、外部表面又はループルーメン47の全体に環状に360°にわたって延びる、別々の10個の環状リングバンプ電極36A〜36Jを有している。
【0048】
図10及び図11に最良に示すように、各環状リングバンプ電極36(図9には総じて36A〜36Jとして示す)は、ある好ましい実施形態においては90重量%の白金、10重量%のイリジウム、別の実施形態においては80重量%のパラジウム、20重量%の白金でできている。
【0049】
各環状リングバンプ電極36は、各リング36の材料で作られた複数の穿孔49を有しており、各穿孔49は、外部表面又はループルーメン47を環状に囲む空洞又はチャンバー38と流体連通している好ましくは、各リング36に2〜25個の別々の穿孔49があり、より好ましくは、各リング36全体にわたって環状に配置された10個の別個の穿孔49がある。
【0050】
生理食塩水などの流体が、バンプリング電極36のチャンバー38の中に直接流体を供給するブリーチホール53の中へ、灌注ルーメン51を通じて運ばれ、リング電極36の周りに環状に分散又は配置された穿孔49を通じて、最終的にバンプリング電極36を通じて分配されるように、各リング電極36内の空洞又はチャンバー38は、チャネル又はブリーチホール53と流体連通しており、すなわち、食塩水は、ブリーチホール53を去り、チャンバー38の周りを循環し、次いでリング36内の穿孔49を通してカテーテル37、77を去ることができる。好ましくは、1個以上のブリーチホール53が各リング電極36に使用される。
【0051】
図9に最良に示すように、カテーテル37、77のループセグメント41は、セグメント41に沿って近位側から遠位側に向かってOD(外径)が約0.0127cm(0.005インチ)〜0.953cm(0.375インチ)へと変化するブリーチホールパターン(53A〜53J)を有している。より好ましくは、ブリーチホールパターン(53A〜53J)は、セグメント41に沿って近位側から遠位側に向かって約0.0305cm(0.12インチ)〜0.0635cm(0.25インチ)のODに変化する。
【0052】
例えば、環状リングバンプ電極36A内のブリーチホール53Aは、ODが約0.0305cm(0.0120インチ)であり、環状リングバンプ電極36B内のブリーチホール53Bは、ODが約0.0325cm(0.0128インチ)であり、環状リングバンプ電極36C内のブリーチホール53Cは、ODが約0.0345cm(0.0136インチ)であり、環状リングバンプ電極36D内のブリーチホール53Dは、ODが約0.0361cm(0.0142インチ)であり、環状リングバンプ電極36E内のブリーチホール53Eは、ODが約0.0391cm(0.0154インチ)であり、環状リングバンプ電極36F内のブリーチホール53Fは、ODが約0.0442cm(0.0174インチ)であり、環状リングバンプ電極36G内のブリーチホール53Gは、ODが約0.0488cm(0.0192インチ)であり、環状リングバンプ電極36H内のブリーチホール53Hは、ODが約0.0544cm(0.0214インチ)であり、環状リングバンプ電極36I内のブリーチホール53Iは、ODが約0.0599cm(0.0236インチ)であり、環状リングバンプ電極36J内のブリーチホール53Jは、ODが約0.0635cm(0.0250インチ)である(すべてのブリーチホール53A〜53Jは±0.0013cm(0.0005インチ)のOD誤差又は変動を伴う)。
【0053】
図9に示し説明するように、このパターンは、各リング36A〜36Jの各ブリーチホール53A〜53Jに対して、ループセグメント41の全長に沿って近位側から遠位側に向かって、直径の小さな寸法から大きな寸法へと変化するODを有する。このパターンは、システム10(図1)のポンプ(図示せず)が60mL/minで操作されるとき、各リング36からの流量を比較的バランスのとれたものにすることが実験的に判明している。図9に示すブリーチホールパターン(53A〜53J)は本発明に従う一例に過ぎず、パターン(53A〜53J)は、遠位側のリング、例えばリング36F〜36Jに、優先的な流量を与えるように更に偏ったものにされ得る。
【0054】
図10及び図11に最良に示すように、ブリーチホール53は、外部表面又はループルーメン47を通じて、ループルーメン47の灌注ルーメン51へと、また環状リング電極36のバンプによって形成された空洞/チャンバー38へと正確に穿設されている。各リング36A〜36Jが受け、最終的にそれぞれの穿孔49を通じて分配する流量を制御するために、各リング36A〜36J(一般に、近位側から遠位側に向かって寸法の大きなブリーチホール53)の真下又は下方でブリーチホール53A〜53Jの寸法に変化が設けられている。
【0055】
したがって、留意すべき重要なこととして、本発明によって規定される方式でブリーチホール53A〜53Jの寸法を調節することにより、リング自体の穿孔49を調節する必要性が排除され、それにより、すべて同じリング構成要素でカテーテルを構成することが可能となっている。これは、製造及び価格設定に関してより費用効果的かつ効率的である。
【0056】
また、留意すべき重要なこととして、ブリーチホール53A〜53Jは、任意の所望の方式で流量のバランスを取るように(図9に示し、上で説明したように)、あるいは、必要に応じて、ループセグメント41の近位端部付近でより多くの流体容積を必要とする用途に対しては近位側に流量を偏らせるように調節され得る。したがって、ブリーチホール53A〜53Jは、寸法の大きなブリーチホールODをより近位側に、寸法の小さなブリーチホールをより遠位側にして、すなわち図9にて示し説明した配置とは反対の配置で構成されることになる。
【0057】
したがって、遠位区間又はループセグメント41は、ループセグメント41の一方の端部又はループセグメント41のその反対の端部に灌注流体を偏らせるか、あるいは灌注流体の流れを優先的に与えるために任意の所望の方式で特注されるブリーチホールパターン(53A〜53J)を有している。更に、本発明によれば、ループセグメント41の中間部分にある又はその近くにあるブリーチホール、例えばブリーチホール53D〜53Jは、ループセグメント41の中間部分にて灌注の流れを均等に分布させるために、同様の寸法のホールを有することができ、一方で、ブリーチホール53A〜53C及び53H〜53Jは、この種の灌注流体のパターンを必要とする医療用途に対し、中央に位置するブリーチホール53D〜53Jよりも大きな寸法又は小さな寸法のホールを有することができる。
【0058】
別法として、単一のリング電極36が、複数のブリーチホール53から灌注流体を供給される。ホール53の形状は、矩形の形状、楕円形の形状、三角形の形状など、任意の所望の形状をなすことができ、円形以外のいずれの形状も、上で既に述べたODを有する円形ホールの面積に等しい面積を有する。
【0059】
好ましい実施形態によれば、図10に示すように、ループセグメント41は、少なくとも1個の位置センサー89(図2)のための位置センサールーメン50と、ニチノール屈曲ワイヤー及びプーラーワイヤー(図示せず)のための第3のルーメン52を有している。ニチノールワイヤーは、カテーテル27、77が「ラッソー(投げ縄)」又は円形の形状をなすことを可能にするものである。ルーメン52を貫くワイヤーはニチノールでできているので超弾性をなしており、それにより、遠位セグメント41は、遠位セグメント41が案内カテーテルシースの中に移動するのを容易にするために直線状となり、次いで、シースを去ると、永久的に撓曲することなく円形の形状を取ることが可能となる。遠位セグメント41は、いかなる大きさの静脈、例えば、直径が25〜15mmの大きさの静脈にも適合するように容易に調節される可変ループである。静脈の直径に適応し、環状リングバンプ電極36と静脈の内部表面(又は、対象となる他の心腔内の組織標的部)との良好な接触を確実にするために、第3のルーメン52内のプーラーワイヤーが使用されて、円形の遠位セグメント41(ラッソー)の直径が収縮される。
【0060】
本発明は、上に具体的に図示し説明した内容に限定されるものではないことが、当業者には明らかとなろう。むしろ、本発明の範囲には、上で説明した様々な特徴の組み合わせと部分的組み合わせの双方、並びに、先行技術にはないそれらの変更形態及び修正形態が含まれ、それらは上記の説明を読めば当業者には思いつくものである。
【0061】
〔実施の態様〕
(1) カテーテルであって、
遠位端部を有する挿入チューブと、
前記挿入チューブの前記遠位端部に固定された弾性遠位区間であって、前記遠位区間は、外部表面と内部灌注ルーメンとを有し、前記外部表面の上方に隆起する複数のリング電極を備え、前記複数のリング電極は、前記外部表面の円周全体に環状に配置されており、各リング電極は、その下方に空洞を画定し、前記リング電極は、それらを貫通して形成された複数の穿孔を有し、前記外部表面は、その中に少なくとも1つのブリーチホールを有し、前記ブリーチホールは、各リング電極の下に配置され、かつ前記灌注ルーメンと流体連通しており、各リング電極の前記空洞及び前記穿孔は、各リング電極を通じて前記弾性遠位区間から灌注流体を分配するためのものである、弾性遠位区間と、を備える、カテーテル。
(2) 前記挿入チューブは、血管を通じて被験者の心臓の中へと挿入するために構成されており、前記弾性遠位区間は、前記心臓内に配置されると、開ループを画定する、実施態様1に記載のカテーテル。
(3) 各リング電極の前記少なくとも1つのブリーチホールの直径は寸法が変化する、実施態様2に記載のカテーテル。
(4) 各リング電極の前記少なくとも1つのブリーチホールの前記直径は、前記弾性遠位区間に沿って近位側から遠位側に向かって、小さいものから大きいものへと寸法が変化する、実施態様3に記載のカテーテル。
(5) 各リング電極の前記少なくとも1つのブリーチホールの前記直径は、前記弾性遠位区間に沿って近位側から遠位側に向かって、大きいものから小さいものへと寸法が変化する、実施態様3に記載のカテーテル。
(6) 前記遠位区間の中間部分における各リング電極の前記少なくとも1つのブリーチホールの直径は、寸法が類似しており、前記中央部分の近位側及び遠位側の各ブリーチホールの前記直径は、前記弾性遠位区間の前記中間部分の各ブリーチホールとは寸法が異なる、実施態様1に記載のカテーテル。
(7) 前記弾性遠位区間は、少なくとも3個のリング電極を有する、実施態様4に記載のカテーテル。
(8) 前記弾性遠位区間は、10個のリング電極を有する、実施態様7に記載のカテーテル。
(9) 前記弾性遠位区間は、少なくとも3個のリング電極を有する、実施態様5に記載のカテーテル。
(10) 前記弾性遠位区間は、10個のリング電極を有する、実施態様9に記載のカテーテル。
【0062】
(11) 前記弾性遠位区間は、少なくとも3個のリング電極を有する、実施態様6に記載のカテーテル。
(12) 前記弾性遠位区間は、10個のリング電極を有する、実施態様11に記載のカテーテル。
(13) 前記リング電極は、90重量%の白金、10重量%のイリジウムでできている、実施態様1に記載のカテーテル。
(14) 前記リング電極は、80重量%のパラジウム、20重量%の白金でできている、実施態様1に記載のカテーテル。
(15) 前記遠位セグメントは、前記セグメントに沿って近位側から遠位側に向かってOD(外径)が約0.0127cm(0.005インチ)〜0.953cm(0.375インチ)へと変化するブリーチホールパターンを有する、実施態様4に記載のカテーテル。
(16) 前記遠位セグメントは、前記セグメントに沿って近位側から遠位側に向かって約0.0305cm(0.012インチ)〜0.0635cm(0.025インチ)のOD(外径)に変化するブリーチホールパターンを有する、実施態様15に記載のカテーテル。
(17) 前記遠位セグメントは、前記セグメントに沿って近位側から遠位側に向かってOD(外径)が約0.0127cm(0.005インチ)〜0.953cm(0.375インチ)へと変化するブリーチホールパターンを有する、実施態様8に記載のカテーテル。
(18) 前記遠位セグメントは、前記セグメントに沿って近位側から遠位側に向かって約0.0305cm(0.012インチ)〜0.0635cm(0.025インチ)のOD(外径)に変化するブリーチホールパターンを有する、実施態様17に記載のカテーテル。
(19) 前記リング電極は、90重量%の白金、10重量%のイリジウムでできている、実施態様18に記載のカテーテル。
(20) 前記リング電極は、80重量%のパラジウム、20重量%の白金でできている、実施態様18に記載のカテーテル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルであって、
遠位端部を有する挿入チューブと、
前記挿入チューブの前記遠位端部に固定された弾性遠位区間であって、前記遠位区間は、外部表面と内部灌注ルーメンとを有し、前記外部表面の上方に隆起する複数のリング電極を備え、前記複数のリング電極は、前記外部表面の円周全体に環状に配置されており、各リング電極は、その下方に空洞を画定し、前記リング電極は、それらを貫通して形成された複数の穿孔を有し、前記外部表面は、その中に少なくとも1つのブリーチホールを有し、前記ブリーチホールは、各リング電極の下に配置され、かつ前記灌注ルーメンと流体連通しており、各リング電極の前記空洞及び前記穿孔は、各リング電極を通じて前記弾性遠位区間から灌注流体を分配するためのものである、弾性遠位区間と、を備える、カテーテル。
【請求項2】
前記挿入チューブは、血管を通じて被験者の心臓の中へと挿入するために構成されており、前記弾性遠位区間は、前記心臓内に配置されると、開ループを画定する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
各リング電極の前記少なくとも1つのブリーチホールの直径は寸法が変化する、請求項2に記載のカテーテル。
【請求項4】
各リング電極の前記少なくとも1つのブリーチホールの前記直径は、前記弾性遠位区間に沿って近位側から遠位側に向かって、小さいものから大きいものへと寸法が変化する、請求項3に記載のカテーテル。
【請求項5】
各リング電極の前記少なくとも1つのブリーチホールの前記直径は、前記弾性遠位区間に沿って近位側から遠位側に向かって、大きいものから小さいものへと寸法が変化する、請求項3に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記遠位区間の中間部分における各リング電極の前記少なくとも1つのブリーチホールの直径は、寸法が類似しており、前記中央部分の近位側及び遠位側の各ブリーチホールの前記直径は、前記弾性遠位区間の前記中間部分の各ブリーチホールとは寸法が異なる、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記弾性遠位区間は、少なくとも3個のリング電極を有する、請求項4に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記弾性遠位区間は、10個のリング電極を有する、請求項7に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記弾性遠位区間は、少なくとも3個のリング電極を有する、請求項5に記載のカテーテル。
【請求項10】
前記弾性遠位区間は、10個のリング電極を有する、請求項9に記載のカテーテル。
【請求項11】
前記弾性遠位区間は、少なくとも3個のリング電極を有する、請求項6に記載のカテーテル。
【請求項12】
前記弾性遠位区間は、10個のリング電極を有する、請求項11に記載のカテーテル。
【請求項13】
前記リング電極は、90重量%の白金、10重量%のイリジウムでできている、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項14】
前記リング電極は、80重量%のパラジウム、20重量%の白金でできている、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項15】
前記遠位セグメントは、前記セグメントに沿って近位側から遠位側に向かってOD(外径)が約0.0127cm(0.005インチ)〜0.953cm(0.375インチ)へと変化するブリーチホールパターンを有する、請求項4に記載のカテーテル。
【請求項16】
前記遠位セグメントは、前記セグメントに沿って近位側から遠位側に向かって約0.0305cm(0.012インチ)〜0.0635cm(0.025インチ)のOD(外径)に変化するブリーチホールパターンを有する、請求項15に記載のカテーテル。
【請求項17】
前記遠位セグメントは、前記セグメントに沿って近位側から遠位側に向かってOD(外径)が約0.0127cm(0.005インチ)〜0.953cm(0.375インチ)へと変化するブリーチホールパターンを有する、請求項8に記載のカテーテル。
【請求項18】
前記遠位セグメントは、前記セグメントに沿って近位側から遠位側に向かって約0.0305cm(0.012インチ)〜0.0635cm(0.025インチ)のOD(外径)に変化するブリーチホールパターンを有する、請求項17に記載のカテーテル。
【請求項19】
前記リング電極は、90重量%の白金、10重量%のイリジウムでできている、請求項18に記載のカテーテル。
【請求項20】
前記リング電極は、80重量%のパラジウム、20重量%の白金でできている、請求項18に記載のカテーテル。
【請求項1】
カテーテルであって、
遠位端部を有する挿入チューブと、
前記挿入チューブの前記遠位端部に固定された弾性遠位区間であって、前記遠位区間は、外部表面と内部灌注ルーメンとを有し、前記外部表面の上方に隆起する複数のリング電極を備え、前記複数のリング電極は、前記外部表面の円周全体に環状に配置されており、各リング電極は、その下方に空洞を画定し、前記リング電極は、それらを貫通して形成された複数の穿孔を有し、前記外部表面は、その中に少なくとも1つのブリーチホールを有し、前記ブリーチホールは、各リング電極の下に配置され、かつ前記灌注ルーメンと流体連通しており、各リング電極の前記空洞及び前記穿孔は、各リング電極を通じて前記弾性遠位区間から灌注流体を分配するためのものである、弾性遠位区間と、を備える、カテーテル。
【請求項2】
前記挿入チューブは、血管を通じて被験者の心臓の中へと挿入するために構成されており、前記弾性遠位区間は、前記心臓内に配置されると、開ループを画定する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
各リング電極の前記少なくとも1つのブリーチホールの直径は寸法が変化する、請求項2に記載のカテーテル。
【請求項4】
各リング電極の前記少なくとも1つのブリーチホールの前記直径は、前記弾性遠位区間に沿って近位側から遠位側に向かって、小さいものから大きいものへと寸法が変化する、請求項3に記載のカテーテル。
【請求項5】
各リング電極の前記少なくとも1つのブリーチホールの前記直径は、前記弾性遠位区間に沿って近位側から遠位側に向かって、大きいものから小さいものへと寸法が変化する、請求項3に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記遠位区間の中間部分における各リング電極の前記少なくとも1つのブリーチホールの直径は、寸法が類似しており、前記中央部分の近位側及び遠位側の各ブリーチホールの前記直径は、前記弾性遠位区間の前記中間部分の各ブリーチホールとは寸法が異なる、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記弾性遠位区間は、少なくとも3個のリング電極を有する、請求項4に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記弾性遠位区間は、10個のリング電極を有する、請求項7に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記弾性遠位区間は、少なくとも3個のリング電極を有する、請求項5に記載のカテーテル。
【請求項10】
前記弾性遠位区間は、10個のリング電極を有する、請求項9に記載のカテーテル。
【請求項11】
前記弾性遠位区間は、少なくとも3個のリング電極を有する、請求項6に記載のカテーテル。
【請求項12】
前記弾性遠位区間は、10個のリング電極を有する、請求項11に記載のカテーテル。
【請求項13】
前記リング電極は、90重量%の白金、10重量%のイリジウムでできている、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項14】
前記リング電極は、80重量%のパラジウム、20重量%の白金でできている、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項15】
前記遠位セグメントは、前記セグメントに沿って近位側から遠位側に向かってOD(外径)が約0.0127cm(0.005インチ)〜0.953cm(0.375インチ)へと変化するブリーチホールパターンを有する、請求項4に記載のカテーテル。
【請求項16】
前記遠位セグメントは、前記セグメントに沿って近位側から遠位側に向かって約0.0305cm(0.012インチ)〜0.0635cm(0.025インチ)のOD(外径)に変化するブリーチホールパターンを有する、請求項15に記載のカテーテル。
【請求項17】
前記遠位セグメントは、前記セグメントに沿って近位側から遠位側に向かってOD(外径)が約0.0127cm(0.005インチ)〜0.953cm(0.375インチ)へと変化するブリーチホールパターンを有する、請求項8に記載のカテーテル。
【請求項18】
前記遠位セグメントは、前記セグメントに沿って近位側から遠位側に向かって約0.0305cm(0.012インチ)〜0.0635cm(0.025インチ)のOD(外径)に変化するブリーチホールパターンを有する、請求項17に記載のカテーテル。
【請求項19】
前記リング電極は、90重量%の白金、10重量%のイリジウムでできている、請求項18に記載のカテーテル。
【請求項20】
前記リング電極は、80重量%のパラジウム、20重量%の白金でできている、請求項18に記載のカテーテル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−224373(P2011−224373A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−93728(P2011−93728)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(511099630)バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド (50)
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
【住所又は居所原語表記】4 Hatnufa Street, Yokneam 20692, Israel
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93728(P2011−93728)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(511099630)バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド (50)
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
【住所又は居所原語表記】4 Hatnufa Street, Yokneam 20692, Israel
【Fターム(参考)】
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