説明

環状オレフィン重合体製造用ホスホニウム化合物の製造方法

【課題】環状オレフィンを製造する触媒システムの助触媒であるホスホニウム化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】ホスホニウム化合物助触媒製造方法に係り、詳細には、[(R)−P(R(R’)]HXで表示されるプロティック(Protic)ホスホニウム化合物と、[C][Ani]で表示される塩化合物との反応により、ホスホニウムを有する塩化合物からなる助触媒を製造する方法を提供する。これにより、該ホスホニウム助触媒化合物の製造方法は、極性環状オレフィン重合用助触媒であるホスホニウム塩化合物を高収率で製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスホニウム化合物の製造方法に係り、さらに具体的には、極性官能基を含む環状オレフィン単量体を重合させ、該極性官能基を含む環状オレフィン重合体を製造する触媒システムの助触媒であるホスホニウム化合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環状オレフィン重合体は、ノルボルネンのような環状単量体からなる重合体であって、既存のオレフィン系重合体に比べ、透明性、耐熱性、耐薬品性にすぐれ、かつ複屈折率と水分吸収率とが非常に低く、CD、DVD、POF(Plastic Optical Fiber)のような光学素材、キャパシタ・フィルム、低誘電体のような情報電子素材、低吸水性注射器、ブリスタ・パッケージング(Blister Packaging)のような医療用素材として多様に応用されうる。
【0003】
ところで、一般的に、高分子が情報電子素材の用途に使われるためには、シリコン、シリコン酸化物、シリコン窒化物、アルミナ、銅、アルミニウム、金、銀、白金、チタン、ニッケル、タンタル、クロムのような金属表面に対する接着性が要求されるので、かかるノルボルネン系重合体の金属付着性及びさまざまな電気的、光学的、化学的物理的特性を調節するために、ノルボルネン系単量体に極性官能基を導入しようとする試みがなされた。しかし、ノルボルネン系単量体に、かかる極性官能基を導入する場合、触媒活性が低下したり、または過量の触媒が必要とされるという問題が浮き彫りにされた。
【0004】
例えば、米国特許第5,705,503号明細書には、触媒複合体として、((Allyl)PdCl)/AgSbFを使用し、極性官能基のあるノルボルネン系単量体を重合する方法が開示されているが、触媒対モノマーの比率が1:100ないし1:250であって、触媒使用量が過量であるために、最終的に得られる重合体内に、前記触媒残渣が多量に残っているようになり、前記重合体が、その後の熱的酸化によって劣化される心配があり、光透過もやはり劣悪になるという心配があった。
【0005】
また、陽イオン型[Pd(CHCN)][BF触媒により、エステルノルボルネン単量体を重合する場合、重合収率が低く、エキソ(exo)異性体のみ選択的に重合される傾向を示し(Sen, A.; Lai, T.-W. J. Am. Chem. Soc. 1981, Vol. 103, 4627-4629)、エステル基またはアセチル基を含むノルボルネンを重合する場合、触媒を単量体対比で約1/100から1/400までの過量に使用しなければならないので、重合後に触媒残渣を除去し難いという問題点があった。
【0006】
ところで、前記環状オレフィン重合用触媒に助触媒を使用する場合、触媒活性がさらに向上するという事実が知られることになった。かかる助触媒として、金属と強いシグマ結合を行える化合物として、中性ホスフィン化合物、アンモニウム化合物などが使われた。
例えば、Sen et al.[Organometallics 2001, Vol.20, 2802-2812]では、[(1,5−シクロオクタジエン)(CH)Pd(Cl)]をPPhのようなホスフィン、及び[Na][B(3,5−(CFのような助触媒で活性化してエステルノルボルネンを重合する反応で、単量体対比で約1/400ほどの過量の触媒を使用し、40%以下の重合収率で6,500ほどの分子量を有した重合体を得たと報告している。
【0007】
米国特許第6,455,650号明細書には、触媒複合体として、[(R’)M(L’)(L’’)[WCA]などを使用し、ここに使われる配位子としては、ホスフィン及びアリル基のようなヒドロカルビル基を含む炭化水素を使用し、官能基のあるノルボルネン系単量体を重合する方法が開示されているが、カルボニル基などの極性官能基のあるノルボルネン系単量体を重合する場合には、その収率が5%と非常に低いために、カルボニル基などの極性官能基を有する重合体の製造には不適であるという問題点があった。かかる低い収率は、米国特許第5,468,819号明細書、同第5,569,730号明細書、同第5,912,313号明細書、同第6,031,058号明細書などの場合にも同様であった。
【0008】
上記で分かるように、極性官能基を有する環状オレフィン重合用触媒システムの場合に、さまざまな助触媒を使用して触媒システムを製造したが、触媒が単量体に敏感に反応し、反応性が低下するという問題が相変らずあった。
【0009】
前記助触媒の代案として、ホスホニウム化合物を助触媒として使用する方法が新しく提案されたが(WO 2005/019277号パンフレット、大韓民国出願第2004−0052612号、同第2004−0074307号)、前記ホスホニウム化合物の効果的な製造方法については、特別な記載がなかった。
【0010】
従って、前記極性官能基を含む環状オレフィン単量体を重合し、極性官能基を含む環状オレフィンを製造する触媒システムの助触媒として使われるホスホニウム化合物を簡単に、かつ高収率で製造する方法が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5,705,503号明細書
【特許文献2】米国特許第6,455,650号明細書
【特許文献3】米国特許第5,468,819号明細書
【特許文献4】米国特許第5,569,730号明細書
【特許文献5】米国特許第5,912,313号明細書
【特許文献6】米国特許第6,031,058号明細書
【特許文献7】国際公開WO 2005/019277号パンフレット
【特許文献8】大韓民国出願第2004−0052612号
【特許文献9】大韓民国出願第2004−0074307号
【非特許文献1】Sen, A.; Lai, T.-W. J. Am. Chem. Soc. 1981, Vol. 103, 4627-4629
【非特許文献2】Sen et al., Organometallics 2001, Vol.20, 2802-2812
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明がなそうとする技術的課題は、上記従来技術の問題点を解決するために、環状オレフィンを製造する触媒システムの助触媒であるホスホニウム化合物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記技術的課題を達成するために、下記化学式1で表示されるホスホニウム助触媒化合物の製造方法であって、下記化学式2で表示されるホスホニウム化合物と下記化学式3で表示される塩化合物とを接触させる段階とを含むことを特徴とする製造方法を提供する。
【0014】
<化学式1>
[(R)−P(R(R’)[Z(R][Ani]
前記化学式1で、a、b及びcは、それぞれ0ないし3の整数であり、a+b+c=3であり、Zは、酸素、硫黄、シリコン、または窒素であり、dは、Zが酸素または硫黄である場合に1であり、Zが窒素である場合に2であり、Zがシリコンである場合に3であり、Rは、水素、アルキルまたはアリール基であり、R、R’及びRはそれぞれ独立的に、水素;炭化水素、C1−20の線形または分枝型アルキル、アルコキシ、アリル、アルケニル、またはビニル;炭化水素、ハロゲンまたはC1−20のハロアルキルで置換または非置換のC3−12のシクロアルキル;炭化水素、ハロゲンまたはC1−20のハロアルキルで置換または非置換のC6−40のアリール;炭化水素、ハロゲンまたはC1−20のハロアルキルで置換または非置換のC7−15のアラルキル;炭化水素、ハロゲンまたはC1−20のハロアルキルで置換または非置換のC3−20のアルキニル;トリ(C1−10の線形または分枝型アルキル)シリル、トリ(C1−10の線形または分枝型アルコキシ)シリル;トリ(炭化水素、ハロゲンまたはC1−20のハロアルキルで置換または非置換のC3−12のシクロアルキル)シリル;トリ(炭化水素、ハロゲンまたはC1−20のハロアルキルで置換または非置換のC6−40のアリール)シリル;トリ(炭化水素、ハロゲンまたはC1−20のハロアルキルで置換または非置換のC6−40のアリールオキシ)シリル;トリ(C1−10の線形または分枝型アルキル)シロキシ;トリ(炭化水素、ハロゲンまたはC1−20のハロアルキルで置換または非置換のC3−12のシクロアルキル)シロキシ;またはトリ(炭化水素、ハロゲンまたはC1−20のハロアルキルで置換または非置換のC6−40のアリール)シロキシであり、[Ani]は、ボレート、アルミネート、[SbF、[PF、[AsF、パーフルオロアセテート([CFCO)、パーフルオロプロピオネート([CCO)、パーフルオロブチレート([CFCFCFCO)、過塩素酸塩([ClO)、パラ−トルエンスルホン酸塩([p−CHSO)、[SOCF、ボラタベンゼン、またはハロゲンで置換または非置換のカルボランであり、
<化学式2>
[(R)−P(R(R’)]HX
前記化学式2で、Hは水素、Xはハロゲン原子であり、R、R、R’、a及びbは、前記で定義された通りであり、
<化学式3>
[C][Ani]
前記化学式3で、Cはアルカリ金属またはMgXであり、[Ani]は、前記で定義された通りである。
【0015】
本発明の一具現例によれば、前記化学式2で表示されるホスホニウム化合物を製造する方法であって、下記化学式4で表示されるホスフィン化合物及び酸を接触させる段階をさらに含むことが望ましい。
<化学式4>
[(R)−P(R(R’)
前記化学式4で、R、R、R’、a及びbは、前記で定義された通りである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によるホスホニウム助触媒化合物の製造方法は、極性環状オレフィン重合用助触媒であるホスホニウム塩化合物を高収率で製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】トリシクロヘキシルホスホニウム(テトラキスペンタフルオロフェニル)ボレートの分子構造を表すX線結晶構造分析の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、下記化学式1で表示されるホスホニウム助触媒化合物の製造方法であって、下記化学式2で表示されるホスホニウム化合物と下記化学式3で表示される塩化合物とを接触させる段階を含む製造方法を提供する。
【0019】
<化学式1>
[(R)−P(R(R’)[Z(R][Ani]
前記化学式1で、a、b及びcは、それぞれ0ないし3の整数であり、a+b+c=3であり、Zは、酸素、硫黄、シリコン、または窒素であり、dは、Zが酸素または硫黄である場合に1であり、Zが窒素である場合に2であり、Zがシリコンである場合に3であり、Rは、水素、アルキルまたはアリール基であり、R、R’及びRはそれぞれ独立的に、水素;炭化水素、C1−20の線形または分枝型アルキル、アルコキシ、アリル、アルケニル、またはビニル;炭化水素、ハロゲンまたはC1−20のハロアルキルで置換または非置換のC3−12のシクロアルキル;炭化水素、ハロゲンまたはC1−20のハロアルキルで置換または非置換のC6−40のアリール;炭化水素、ハロゲンまたはC1−20のハロアルキルで置換または非置換のC7−15のアラルキル;炭化水素、ハロゲンまたはC1−20のハロアルキルで置換または非置換のC3−20のアルキニル;トリ(C1−10の線形または分枝型アルキル)シリル、トリ(C1−10の線形または分枝型アルコキシ)シリル;トリ(炭化水素、ハロゲンまたはC1−20のハロアルキルで置換または非置換のC3−12のシクロアルキル)シリル;トリ(炭化水素、ハロゲンまたはC1−20のハロアルキルで置換または非置換のC6−40のアリール)シリル;トリ(炭化水素、ハロゲンまたはC1−20のハロアルキルで置換または非置換のC6−40のアリールオキシ)シリル;トリ(C1−10の線形または分枝型アルキル)シロキシ;トリ(炭化水素、ハロゲンまたはC1−20のハロアルキルで置換または非置換のC3−12のシクロアルキル)シロキシ;またはトリ(炭化水素、ハロゲンまたはC1−20のハロアルキルで置換または非置換のC6−40のアリール)シロキシであり、[Ani]は、ボレート、アルミネート、[SbF、[PF、[AsF、パーフルオロアセテート([CFCO)、パーフルオロプロピオネート([CCO)、パーフルオロブチレート([CFCFCFCO)、過塩素酸塩([ClO)、パラ−トルエンスルホン酸塩([p−CHSO)、[SOCF、ボラタベンゼン、またはハロゲンで置換または非置換のカルボランであり、
<化学式2>
[(R)−P(R)a(R’)]HX
前記化学式2で、Hは水素、Xはハロゲン原子であり、R、R、R’、a及びbは、前記で定義された通りであり、
<化学式3>
[C][Ani]
前記化学式3で、Cはアルカリ金属またはMgXであり、[Ani]は、前記で定義された通りである。
【0020】
さらに具体的には、前記化学式1で表示されるホスホニウム助触媒化合物を製造する方法であって、前記化学式2で表示されるプロティック(Protic)ホスホニウム化合物と、前記化学式3で表示される塩化合物とを反応させ、[C][X]の副産物が沈殿物として生成される反応を介して、前記化学式1で表示されるホスホニウム化合物を製造する方法である。前記化学式3で表示される塩化合物は、主にアルカリ金属あるいはハロマグネシウム(MgX)を含む陰イオン形態である[Ani]に係る塩化合物である。
【0021】
前記化学式2で表示されるホスホニウム化合物と、化学式3で表示される塩化合物との反応での溶媒としては、ヘキサンのような炭化水素溶媒、またはジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ベンゼン、トルエンクロロベンゼンのような一般有機溶媒を使用することが可能であり、望ましくは、ジクロロメタン、クロロホルム及びクロロベンゼンのようなハロゲン溶媒である。化学式2のホスホニウム化合物と化学式3の塩化合物との反応は、二種の塩化合物が有機溶媒に溶解された溶液状で反応するか、またはいずれか一方の塩化合物が溶解されていないスラリ状で反応しうる。化学式2のホスホニウム化合物と化学式3の塩化合物とが反応する間、[C][X]が副産物として生成される。前記[C][X]は反応溶媒で沈殿し、濾過を介して除去される。従って、追加的な精製過程なしに、前記化学式1で表示されるホスホニウム助触媒化合物を得ることができる。反応温度は0〜100℃が望ましく、さらに望ましくは常温である。
また、本発明の製造方法で、前記化学式2で表示されるホスホニウム化合物を製造する方法であって、下記化学式4で表示されるホスフィン化合物及び酸を接触させる段階をさらに含むことが望ましい。
【0022】
<化学式4>
[(R)−P(R(R’)
前記化学式4で、R、R、R’、a及びbは、前記で定義された通りである。
【0023】
さらに具体的には、前記化学式2で表示されるホスホニウム化合物は、前記化学式4で表示されるホスフィン化合物とプロトン酸との反応を介して製造可能である。ここで、プロトン酸は、HCl、HBr、HI、HF、HPFのように、Hを提供できる酸であり、その範囲は特に限定されず、当技術分野で一般的に使われる酸のいずれも含む。前記製造方法で、溶媒としてヘキサンのような炭化水素とエーテルとを使用し、化学式4のホスフィン化合物とプロトン酸との反応で、化学式2のプロティックホスホニウム化合物が沈殿物として生成されて反応が進められる。その結果、プロティックホスホニウム化合物を追加的な精製過程なしに得ることができる。反応温度は0〜100℃が望ましく、さらに望ましくは常温である。
【0024】
前記化学式1のホスホニウム化合物で、[Ani]のボレートまたはアルミネートは、下記化学式1aまたは化学式1bで表示される陰イオンであることが望ましい。
<化学式1a>
[M’(R
<化学式1b>
[M’(OR
前記化学式1a、化学式1bで、M’はボロンまたはアルミニウムであり、Rはそれぞれ独立的に、ハロゲン;炭化水素、ハロゲンまたはC1−20のハロアルキルで置換または非置換のC1−20の線形または分枝型アルキル、アルケニル;炭化水素、ハロゲンまたはC1−20のハロアルキルで置換または非置換のC3−12のシクロアルキル;炭化水素、ハロゲン、C1−20のハロアルキルで置換または非置換のC6−40のアリール;C3−20の線形または分枝型トリアルキルシロキシまたはC18−48の線形または分枝型トリアリールシロキシが置換されたC6−40のアリール;炭化水素、ハロゲンまたはC1−20のハロアルキルで置換または非置換のC7−15のアラルキルである。
【0025】
前記本発明の製造方法により製造された助触媒化合物を使用し、環状オレフィン単量体を付加重合して重合体を製造できる。
【0026】
前記本発明の製造方法により製造された助触媒化合物を含む触媒システムは、優れた熱的化学的安定性によって、モノマーの極性官能基による触媒の不活性化を抑制できるために、高収率で高分子量の重合体を製造でき、単量体対比の触媒使用量を低減させることができ、触媒残渣を除去する段階が別途必要ない。
【0027】
前記本発明の製造方法により製造された助触媒化合物を含む触媒システムは、下記化学式5で表示される10族有機金属化合物の前触媒、及び前記化学式1で表示されるホスホニウム化合物助触媒からなることが望ましい。前記前触媒は、極性反応基を有するモノマーに対して安定性が高く、前記助触媒は、既存の助触媒であるアンモニウムボレートなどと比較してみたとき、ホスホニウムによる触媒システムを安定化し、かつ極性モノマーの極性基による触媒の不活性化を防ぐ役割を果たせる。
【0028】
<化学式5>
(R(R
前記化学式5で、Mは10族金属であり、x及びyは0ないし2であり、R及びRは、水素;ハロゲン;C1−20の線形または分枝型アルキル、C6−20のアリール、C7−20のアラルキル、C2−20のアルケニル;またはハロゲン、Si、Ge、S、O、Nのようなヘテロ原子、アルキル、アルケニル及びアルキニルからなる群から選択された原子あるいは官能基を含むC1−20の線形、環状または分枝型アルキル、C6−20のアリール、C1−20のアルコキシ、カルボキシル基、アミン、C7−20のアラルキル、C2−20のアルケニル基;C1−20の線形または分枝型ハロアルキル;C1−20のハロアルケニル;C3−20のハロアルキニル;または炭化水素で置換または非置換のC6−40のハロアリールである。
【0029】
さらに具体的に、前記本発明の製造方法により製造された助触媒化合物を含む触媒システムを使用した環状オレフィン系重合体の製造方法は、前記化学式5で表示される10族金属含有の前触媒、及び前記化学式1で表示されるホスホニウムを含有する塩化合物を含む助触媒からなる触媒混合物を製造する段階と、前記触媒混合物存在下で、80℃ないし150℃の温度で、一つ以上の極性官能基を含む環状オレフィン系単量体を含む単量体溶液を付加重合させる段階とを含む。
【0030】
本発明の方法により製造された助触媒を含む触媒システムの場合、80℃以上の温度で分解されないほどに熱的に安定しており、高温で環状オレフィン単量体の極性官能基と陽イオン型触媒との相互作用を妨害することによって、触媒活性サイトを形成したり、または回復させることができるために、高分子量の一つ以上の極性官能基を含む環状オレフィン系重合体を高収率で製造できる。一方、重合温度が150℃を超えるときには、前記触媒成分が熱分解されて活性が低くなり、高分子量の一つ以上の極性官能基を含む環状オレフィン系重合体を製造し難い。
【0031】
前記極性官能基を含む環状オレフィン重合体の製造方法で使われる単量体は、一つ以上の極性官能基を含むノルボルネン系単量体である。環状のノルボルネン系単量体またはノルボルネン誘導体は、少なくとも1つのノルボルネン(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン)単位を含む単量体を意味する。
【0032】
前記極性官能基を有する環状オレフィン系の付加重合体は、少なくとも一つ以上の極性官能基を含むノルボルネン系単量体を、前述の触媒システムの存在下で付加重合して単独重合体を製造するか、または互いに異なる極性官能基を含むノルボルネン系単量体を付加重合し、極性官能基を含むノルボルネン系単量体からなるコポリマーまたはターポリマーを製造するか、または一つ以上の極性官能基を含むノルボルネン系単量体と、極性官能基を含まないノルボルネンとを付加重合して共重合し、コポリマーまたはターポリマーを製造できる。
前記のような極性官能基を有するノルボルネン系単量体は、下記化学式6で表示される化合物である。
【0033】
【化1】

【0034】
前記化学式6で、mは0ないし4の整数であり、R、R’、R’’及びR’’’のうちの少なくとも一つは極性官能基を表し、残りは非極性官能基であり、R、R’、R’’及びR’’’は互いに連結され、C4−12の飽和または不飽和環基、またはC6−24の芳香族環を形成でき、前記非極性官能基は、水素;ハロゲン;C1−20の線形または分枝型アルキル、ハロアルキル、アルケニル、ハロアルケニル;C3−20の線形または分枝型アルキニル、ハロアルキニル;アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルケニル、またはハロアルキニルで置換または非置換のC3−12のシクロアルキル;アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルケニル、またはハロアルキニルで置換または非置換のC6−40のアリール;またはアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルケニル、またはハロアルキニルで置換または非置換のC7−15のアラルキルであり、前記極性官能基は、少なくとも一つ以上の酸素、窒素、リン、硫黄、シリコン、またはボロンを含む非炭化水素極性基であり、前記非炭化水素極性基は、−ROR、−OR、−C(O)OR、−RC(O)OR、−OC(O)OR、−ROC(O)OR、−C(O)R、−RC(O)R、−OC(O)R、−ROC(O)R、−(RO)−OR、−(OR−OR、−C(O)−O−C(O)R、−RC(O)−O−C(O)R、−SR、−RSR、−SSR、−RSSR、−S(=O)R、−RS(=O)R、−RC(=S)R、−RC(=S)SR、−RSO、−SO、−RN=C=S、−N=C=S、−NCO、R−NCO、−CN、−RCN、−NNC(=S)R、−RNNC(=S)R、−NO、−RNO、−P(R、−RP(R、−P(=O)(R、−RP(=O)(R
【化2】

【化3】

からなる群から選択される一つ以上の官能基であり、前記極性官能基で、それぞれのR及びR11は、C1−20の線形または分枝型アルキレン、ハロアルキレン、アルケニレン、ハロアルケニレン;C3−20の線形または分枝型アルキニレン、ハロアルキニレン;アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニルで置換または非置換のC3−12のシクロアルキレン;アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニルで置換または非置換のC6−40のアリーレン;またはアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニルで置換または非置換のC7−15のアラルキレンであり、前記極性官能基でそれぞれのR、R12、R13及びR14は、水素;ハロゲン;C1−20の線形または分枝型アルキル、ハロアルキル、アルケニル、ハロアルケニル;C3−20の線形または分枝型アルキニル、ハロアルキニル;アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルケニル、またはハロアルキニルで置換または非置換のC3−12のシクロアルキル;アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルケニル、またはハロアルキニルで置換または非置換のC6−40のアリール;アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルケニル、またはハロアルキニルで置換または非置換のC7−15のアラルキル;アルコキシ;ハロアルコキシ;カルボキシル基;またはハロカルボキシル基であり、kは、0ないし10の間の整数である。
【0035】
前記極性官能基を含む環状オレフィンの付加重合体を製造する方法で、前記10族の遷移金属を含有する前触媒に対する助触媒の比率は、前触媒1モルに対して0.5ないし10モルであるが、前記助触媒のモル数が0.5モル未満であるときには、前触媒の活性化効果が微弱であり、10モルを超えるときには、過量のホスホニウムが前触媒の金属に配位することにより、電子的に陽イオン形態の触媒活性種が立体選択的に妨害を受けて過度に安定化され、前記単量体の二重結合との相互作用が弱くなり、その結果、重合収率と分子量とがいずれも低下するという問題点があるために望ましくない。
【0036】
前記極性官能基を含む環状オレフィンの付加重合体を製造する方法で、前記触媒混合物は、微粒子支持体上に担持させて使用することができ、前記微粒子支持体は、シリカ、チタニア、シリカ/クロミア、シリカ/クロミア/チタニア、シリカ/アルミナ、リン酸アルミニウム・ゲル、シラン化されたシリカ、シリカヒドロ・ゲル、モンモリトナイト・クレイまたはゼオライトでありうる。このように微粒子支持体上に担持させて使用する場合には、用途によって分子量分布を調節でき、得られる高分子の見かけ密度を向上させることができるという利点がある。
【0037】
前記触媒混合物は、溶媒を使用せずに、固体状で直接投入することができるが、溶媒相にそれらを混合し、活性化された触媒溶液を製造した後で投入でき、前記前触媒と助触媒とを別途の溶液に溶解させて重合して投入することもできる。前記触媒混合物を溶媒に溶解させる場合に使われうる溶媒としては、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トルエン、クロロベンゼンまたはその混合物などを挙げることができる。
【0038】
反応系中の有機溶媒の総量は、前記単量体溶液中の総単量体重量に対して50%ないし800%であって、50%ないし400%であることが望ましいが、50%未満であるときには、重合反応中に溶液粘度が高すぎて撹拌が困難になり、未反応単量体が残るようになって重合収率が低下し、粘度が高すぎて過量の溶媒を入れて溶液を薄めなければならないために、商業化に対する問題点があって、800%を超えるときには、重合反応速度が遅く、重合収率と分子量とがいずれも低下する傾向がある。
【0039】
前記触媒混合物は、前記前触媒と助触媒とからなる金属触媒錯化合物であるが、前記触媒混合物の使用量は、前記前触媒成分を基準に、前記単量体溶液中の総単量体モル量対比で1/2,500ないし1/200,000の範囲でありうる。すなわち、従来の触媒システムよりはるかに少量の触媒を使用しつつも、極性官能基を有するノルボルネン系単量体を高収率で重合できるのである。前記使用量は、さらに望ましくは、1/5,000ないし1/20,000である。
【0040】
前記一つ以上の極性官能基を含む環状オレフィンの付加重合体を製造する方法によって製造される一つ以上の極性官能基を含むノルボルネン付加重合体は、一つ以上の極性官能基を含むノルボルネン系単量体を、少なくとも0.1ないし99.9モル%含み、このとき、極性基を含むノルボルネンは、エンド(endo)、エキソ異性体混合物からなっており、混合物組成比には制限がない。
【0041】
前記極性官能基を含む環状オレフィンの付加重合体を製造する方法は、一般的なノルボルネン系重合体の製造方法のように、ノルボルネン系単量体及び触媒を溶媒に溶解混合して重合する。本発明の製造方法でもって極性官能基を含む環状オレフィン系の付加重合体を製造すれば、少なくとも40%以上の高収率で製造でき、製造される付加重合体の重量平均分子量Mwは、100,000以上の高分子量を有することができる。また、付加重合体を利用して光学フィルムに製造するならば、分子量は100,000ないし1,000,000に調節することが望ましい。
【0042】
前記製造方法によって製造された極性官能基を有するノルボルネン系重合体は、透明で、金属や他の極性官能基を有する重合体に対する付着性にすぐれ、絶縁性電子材料などに使われうる低い誘電定数をもち、熱安定性及び強度にすぐれる環状オレフィン重合体である。また、該重合体は、カップリング剤なしに電子素材の基材に付着され、銅、銀または金のような金属基質に良好に付着され、偏光板の保護フィルムなどに使われうるほどに光学的特性にすぐれ、集積回路、回路印刷基板または多重チップモジュールのような電子素材に使われうる。
【0043】
一方、一般的な環状オレフィンの形態的な(conformational)ユニットは、1つまたは2つの安定した回転状態を有するので、剛直な(rigid)フェニル環を主鎖としたポリイミドのように延びた形態(コンフォメーション)をなすことができる。かかる延びた形態を有するノルボルネン系高分子に極性基を導入すれば、単純な環状オレフィンポリマーの場合よりも、極性基の導入によって分子間の相互作用が増大するようになり、従って分子間の充填(packing)に指向秩序を有するようになって、光学的及び電気的に異方性を有することができる。
【実施例】
【0044】
以下、望ましい実施例を挙げて、発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は、以下により制限されるものではない。
【0045】
下記の実施例及び比較例で、空気や水に敏感な化合物を扱うあらゆる作業は標準シュレンク技術(standard Schlenk technique)またはドライボックス技術を使用して実施した。核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、ブルカー 600スペクトロメータ(Bruker 600 spectrometer)を使用して得た。重合体の分子量と分子量分布は、ウォーターズ(Waters)社のGPC(Gel Permeation Chromatography)装置を使用して測定し、このとき、ポリスチレンサンプルを標準とした。トルエンとジエチルエーテルは、カリウム/ベンゾフェノンで蒸留して精製し、ジクロロメタンとクロロベンゼンは、CaHで蒸留精製して使用した。
【0046】
実施例1
(Cy)PHClの製造
(Cy)P(2.02g、7.2mmol、Cyはシクロヘキシル)を250mLシュレンク・フラスコに投入し、ジエチルエーテル(150mL)を入れて溶解させた。次に、常温で無水HCl(14.4mL、エーテル中で1.0M)を投入し、反応が進められる間、白色沈殿物が形成され、20分ほど反応させて白色沈殿をガラスフィルタを介して濾過し、ジエチルエーテル(80mL)で三回ほど洗浄した後、常温で残留溶媒を真空下で溶媒を除去し、(Cy)PHCl(86%、1.95g)を得た。
H−NMR(600MHz、CDCl):δ7.02〜6.23(d、1H、JH−P=470Hz)、2.56〜1.30(m、33H);13C−NMR(600MHz、CDCl):δ28.9(d)、28.5(d)、26.8(d)、25.6(s)。31P−NMR(600MHz、CDCl):δ22.98(d、JP−H=470Hz)。
【0047】
実施例2
(n−Bu)PHClの製造
(n−Bu)P(2.0g、10.0mmol)を250mLシュレンク・フラスコに投入し、ジエチルエーテル(100mL)を入れて溶解させた。次に、常温で無水HCl(20.0mL、エーテル中に1.0M)を投入し、反応が進められる間、白色沈殿物が形成され、20分ほど反応させて白色沈殿をガラスフィルタを介して濾過し、ジエチルエーテル(80mL)で洗浄した後、常温で残留溶媒を真空下で溶媒を除去し、(n−Bu)PHCl(90%、2.15g)を得た。
【0048】
実施例3
[(Cy)PH][B(C]の製造
グローブボックス内で、実施例1で得た(Cy)PHCl(0.56g、1.75mmol)と[Li][B(C](1.0g、1.46mmol)とをそれぞれの100mLシュレンク・フラスコに投入し、ジクロロメタン(20mL)を入れて溶解させた。次に、常温で、(Cy)PHCl溶液を[Li][B(C]溶液側に徐々に滴加した。1時間ほどの反応後、未反応物をガラスフィルタを介して濾過し、真空下で溶媒を除去した後、[(Cy)PH][B(C](90%、1.26g)を得た。
H−NMR(600MHz、CDCl):δ5.32〜4.65(d、1H、JH−P=440Hz)、2.43〜1.33(m、33H);13C−NMR(600MHz、CDCl):δ149.7、148.1、139.7、139.2、138.1、138.0、137.8、136.2、125.1、124.9、29.0、28.8、26.7(d)、25.4(s)。31P−NMR(600MHz、CDCl):31.14(d、JP−H=440Hz)。19F−NMR(600MHz、CDCl):−130.90、−161.51、−163.37。
X線回折分析に適した結晶がジクロロメタン溶液から得られた。X線結晶構造分析の結果は、図1に示してある。特異なことに、前記構造は、[(Cy)PH]部分のP原子と、[B(C]部分のF原子との間に非結合性相互作用(nonbonding interaction)が存在するということを示している。
【0049】
実施例4
[(Cy)PH][B(C]の製造
[Li][B(C]の代わりに、[Na][B(C]あるいは[MgBr][B(C]を使用し、実施例3と同じ方法で[(Cy)PH][B(C]を製造した。合成収率は、実施例3とほぼ同様に90%ほどで得た。
【0050】
実施例5
[(n−Bu)PH][B(C]の製造
グローブボックス内で、実施例2で得た(n−Bu)PHCl(0.42g、1.75mmol)と[Li][B(C](1.0g、1.46mmol)とをそれぞれの100mLシュレンク・フラスコに投入し、ジクロロメタン(20mL)を入れて溶解させた。次に、常温で(n−Bu)PHCl溶液を[Li][B(C]溶液側に徐々に滴加した後、1時間ほどの反応後に未反応物をガラスフィルタを介して濾過し、溶媒を真空下で除去し、[(n−Bu)PH][B(C](87%、1.12g)を得た。
【0051】
実施例6
[(t−Bu)PH][B(C]の製造
(t−Bu)P(0.35g、1.73mmol)を250mLシュレンク・フラスコに投入し、ジエチルエーテル(30mL)を入れて溶解させた。次に、常温で無水HCl(1.9mL、エーテル中に1.0M)を投入し、反応が進められる間、白色沈殿物が形成され、20分ほど反応させて白色沈殿をガラスフィルタを介して濾過し、ジエチルエーテル(30mL)で洗浄した後、常温で真空下で残留溶媒を除去し、(t−Bu)PHClを白色固体として得た。
(t−Bu)PHClを、ジクロロメタン(10mL)を入れて溶解させ、グローブボックス内で、[Li][B(C](1.07g、1.56mmol)を100mLシュレンク・フラスコに投入し、ジクロロメタン(20mL)を入れて溶解させる。次に、常温で(t−Bu)PHCl溶液を[Li][B(C]溶液側に徐々に滴加した。1時間ほどの反応後、副反応物であるLiClをガラスフィルタを介して濾過し、溶媒を真空下で除去した後、[(t−Bu)PH][B(C](67%、1.05g)を得た。
H−NMR(600MHz、CDCl):δ5.34〜4.63(d、1H、JH−P=440Hz)、1.61(d、27H);13C−NMR(600MHz、CDCl):δ149.5、147.9、139.6、138.0、137.7、136.0、124.4、38.3、30.4。31P−NMR(600MHz、CDCl):63.0(d、JP−H=440Hz)。19F−NMR(600MHz、CDCl):−133.3、−163.9、−167.8。
【0052】
実施例7
[(Et)PH][B(C]の製造
(Et)P(0.8g、6.77mmol)を250mLシュレンク・フラスコに投入し、ジエチルエーテル(50mL)を入れて溶解させた。次に、常温で無水HCl(7.4mL、エーテル中に1.0M)を投入し、反応が進められる間、白色沈殿物が形成され、20分ほど反応させて溶媒を真空下で除去し、ヘキサン(30mL)で洗浄した後、常温で残留溶媒を真空下で除去し、(Et)PHClを白色固体として得た。
(Et)PHClをジクロロメタン(10mL)を入れて溶解させ、グローブボックス内で、[Li][B(C](4.41g、6.43mmol)を100mLシュレンク・フラスコに投入し、ジクロロメタン(50mL)を入れて溶解させる。次に、常温で(Et)PHCl溶液を[Li][B(C]溶液側に徐々に滴下して加えた。1時間ほどの反応後、副反応物であるLiClをガラスフィルタを介して濾過し、溶媒を真空下で除去した後、[(Et)PH][B(C](54%、2.91)を得た。
H−NMR(600MHz、CDCl):δ6.06(m、0.5H)、5.30(m、0.5H)、2.28(m、6H)、1.40(m、9H);13C−NMR(600MHz、CDCl):δ149.5、147.9、139.7、138.0、137.9、137.7、136.1、124.6、10.6(d)、6.8(d)。31P−NMR(600MHz、CDCl):26.3(d)。19F−NMR(600MHz、CDCl):−133.5、−163.7、−167.8。
【0053】
実施例8
5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチルエステルの重合
5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチルエステル(10mL、55.6mmol)を250mLシュレンク・フラスコに投入し、Pd(OAc)(OAc=アセテート、2.5mg、11μmol)と[(Cy)PH][B(C](21.1mg、22μmol)とを250mLシュレンク・フラスコに投入し、ジクロロメタン1mlを入れて溶解させた。次に、90℃で触媒溶液をシリンジを介して前記単量体に滴下して加え、90℃で10時間反応させた後、50mLトルエンを入れて固まった重合体を溶解させた後、過量のエタノールに投入して白色の重合体沈殿物を得た。該沈殿物をガラスじょうごで濾過して回収した重合体を真空オーブンで80℃で24時間乾燥させ、5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチルエステルの重合体8.4g(投入された単量体総量基準で80.5重量%)を得た。分子量Mwは200,400であり、Mw/Mnは2.02であった。
【0054】
実施例9〜15
5−ノルボルネン−2−メチルアセテートの重合
[(Cy)PH][B(C]量をPd(OAc)モル対比で2:1、1:1、2:3、1:2、1:4、1:8に変化させ、5−ノルボルネン−2−メチルアセテートを重合した。5−ノルボルネン−2−メチルアセテート(4mL、24.7mmol)とトルエン(12ml)とを100mlシュレンク・フラスコに投入し、触媒としてPd(OAc)(1.1mg、4.9μmol)と、さまざまな当量比で変化させた[(Cy)PH][B(C]とをジクロロメタン(1ml)に溶かした後で単量体溶液に投入し、4時間90℃で撹拌しつつ反応させた。重合反応とポリマー回収の過程は、実施例8と同じ方法で実施し、5−ノルボルネン−2−メチルアセテートの重合体を製造し、その結果を表1に示した。
【0055】
【表1】

【0056】
実施例16
5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチルエステル/ノルボルネン付加共重合体の製造
250mlシュレンク・フラスコに、単量体としてノルボルネンカルボン酸メチルエステル(16.74g)、ノルボルネン(4.44g)及び溶媒として精製されたトルエン37mlを投入した。このフラスコに、ジクロロメタン(2ml)に溶かしたPd(OAc)(4.79mg)と[(Cy)PH][B(C](40.4mg)とを投入し、10時間90℃で撹拌しつつ反応させた。反応10時間後に、前記反応物を過量のエタノールに投入して白色の共重合体沈殿物を得た。この沈殿物をガラスじょうごで濾過して回収した共重合体を真空オーブンで65℃で24時間乾燥させ、ノルボルネン/5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチルエステルの共重合体14.86gを得た(収率:投入されたモノマー総量基準で70.2重量%)。この重合体の重量平均分子量Mwは184,000であり、Mw/Mnは2.12であった。
【0057】
実施例17
5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチルエステル/ブチルノルボルネン付加共重合体の製造
250mlシュレンク・フラスコに、単量体として5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチルエステル(14.64g)、ブチルノルボルネン(6.14g)及びトルエン(37ml)を投入した。このフラスコに、ジクロロメタン(2ml)に溶かしたPd(acac)(4.19mg、acac=アセチルアセトネート)と[(Cy)PH][B(C](32.8mg)とを投入し、10時間90℃で撹拌しつつ反応させた。反応10時間後に、前記反応物を過量のエタノールに投入して白色の共重合体沈殿物を得た。この沈殿物をガラスじょうごで濾過して回収した共重合体を真空オーブンで65℃で4時間乾燥させ、ブチルノルボルネン/5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチルエステル共重合体13.7gを得た(収率:投入されたモノマー総量基準で65.9重量%)。この重合体の重量平均分子量Mwは157,000であり、Mw/Mnは2.13であった。
【0058】
実施例18
5−ノルボルネン−2−メチルアセテート/ブチルノルボルネン付加共重合体の製造(触媒:Pd(acac)
250mlシュレンク・フラスコに、5−ノルボルネン−2−メチルアセテート(8.2g)、ブチルノルボルネン(3.2g)及びトルエン(36ml)を投入した。このフラスコに、ジクロロメタン(2ml)に溶かした触媒としてPd(OAc)(3.2mg)と[(Cy)PH][B(C](27.0mg)とを投入し、4時間90℃で撹拌しつつ反応させた。反応4時間後に、前記反応物を過量のエタノールに投入して白色の共重合体沈殿物を得た。この沈殿物をガラスじょうごで濾過して回収した共重合体を真空オーブンで65℃で4時間乾燥させ、ブチルノルボルネンと5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチルアセテートとの共重合体9.30gを得た(収率:投入されたモノマー総量基準で81.7重量%)。この重合体の重量平均分子量Mwは218,300であり、Mw/Mnは3.52であった。
【0059】
比較例1
5−ノルボルネン−2−カルボン酸の重合
5−ノルボルネン−2−カルボン酸10gと[Pd(CCN)Cl 100mgとを反応フラスコに満たして140℃で10.5時間反応させ、5.75gの重合体を得て、重量平均分子量は1,129であった。
【0060】
比較例2
5−ノルボルネン−2−メチル−デカニルアセテートの重合
5−ノルボルネン−2−メチル−デカニルアセテート(1.03g、3.7mmol)をシュレンクフラスコに入れ、他のフラスコに[(Allyl)PdCl](13.15mg、3.60×10−2mmol、Allyl=アリル)とAgSbF(35mg、10.1×10−2mmol)とを入れてクロロベンゼン2mLを入れて溶かす。AgCl沈殿物を濾過し、残された触媒溶液を常温で単量体側に滴下して加えて24時間反応させる。重合収率は1.01g(98%)であり、重量平均分子量は58,848であった。
【0061】
比較例3
5−ノルボルネン−2−メチルアセテートの重合
シュレンク・フラスコ中、5−ノルボルネン−2−メチルアセテート(5.0g、30mmol)にLi[B(C]を入れる。[(Allyl)PdCl](0.55mg、0.0015mmol)とP(Cy)(0.84mg、0.0030mmol)とをトルエン0.1mLに溶かし、単量体側に滴下して加える。65℃で4時間反応させたとき、0.25g(5%)の重合体を得た。
【0062】
比較例4
Pd(OAc)とジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートとの触媒系による5−ノルボルネン−2−メチルアセテートの重合
250mlシュレンク・フラスコに、5−ノルボルネン−2−メチルアセテート(5mL、30.9mmol)とトルエン(15ml)とを投入した。このフラスコに、ジクロロメタン(1ml)に溶かした触媒としてPd(OAc)(1.4mg、6.2mol)とジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(10.9mg、13.6mol)とを投入し、18時間90℃で撹拌しつつ反応させた。18時間反応させた後、反応物を過量のエタノールに投入したが、重合体沈殿物を得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明によるホスホニウム助触媒化合物の製造方法は、極性環状オレフィン重合用助触媒であるホスホニウム塩化合物を高収率で製造できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表示されるホスホニウム化合物の製造方法であって、
下記化学式2で表示されるホスホニウム化合物と下記化学式3で表示される塩化合物とを接触させる段階を含むことを特徴とするホスホニウム化合物の製造方法:
<化学式1>
[(R)−P(R(R’)[Z(R][Ani]
前記式1で、a、b及びcは、それぞれ0ないし3の整数であり、a+b+c=3であり、
Zは、酸素、硫黄、シリコン、または窒素であり、
dは、Zが酸素または硫黄である場合に1であり、Zが窒素である場合に2であり、Zがシリコンである場合に3であり、
は、水素、アルキルまたはアリール基であり、
、R’及びRはそれぞれ独立的に、水素;炭化水素、C1−20の線形または分枝型アルキル、アルコキシ、アリル、アルケニル、またはビニル;炭化水素、ハロゲンまたはC1−20のハロアルキルで置換または非置換のC3−12のシクロアルキル;炭化水素、ハロゲンまたはC1−20のハロアルキルで置換または非置換のC6−40のアリール;炭化水素、ハロゲンまたはC1−20のハロアルキルで置換または非置換のC7−15のアラルキル;炭化水素、ハロゲンまたはC1−20のハロアルキルで置換または非置換のC3−20のアルキニル;トリ(C1−10の線形または分枝型アルキル)シリル;トリ(C1−10の線形または分枝型アルコキシ)シリル;トリ(炭化水素、ハロゲンまたはC1−20のハロアルキルで置換または非置換のC3−12のシクロアルキル)シリル;トリ(炭化水素、ハロゲンまたはC1−20のハロアルキルで置換または非置換のC6−40のアリール)シリル;トリ(炭化水素、ハロゲンまたはC1−20のハロアルキルで置換または非置換のC6−40のアリールオキシ)シリル;トリ(C1−10の線形または分枝型アルキル)シロキシ;トリ(炭化水素、ハロゲンまたはC1−20のハロアルキルで置換または非置換のC3−12のシクロアルキル)シロキシ;またはトリ(炭化水素、ハロゲンまたはC1−20のハロアルキルで置換または非置換のC6−40のアリール)シロキシであり、
[Ani]は、ボレート、アルミネート、[SbF、[PF、[AsF、パーフルオロアセテート([CFCO)、パーフルオロプロピオネート([CCO)、パーフルオロブチレート([CFCFCFCO)、過塩素酸塩([ClO)、パラ−トルエンスルホン酸塩([p−CHSO)、[SOCF、ボラタベンゼン、またはハロゲンで置換または非置換のカルボランであり、
<化学式2>
[(R)−P(R(R’)]HX
前記化学式2で、Hは水素、Xはハロゲン原子であり、R、R、R’、a及びbは、上で定義された通りであり、
<化学式3>
[C][Ani]
前記化学式3で、Cは、アルカリ金属またはMgXであり、[Ani]は、上で定義された通りである。
【請求項2】
前記化学式2で表示されるホスホニウム化合物を製造する方法であって、
下記化学式4で表示されるホスフィン化合物及び酸を接触させる段階をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のホスホニウム化合物の製造方法:
<化学式4>
[(R)−P(R(R’)
前記化学式4で、R、R、R’、a及びbは、前記請求項1に定義された通りである。
【請求項3】
請求項1に記載の方法で準備されたホスホニウム化合物を使用して製造される重合体であって、下記化学式6で表示される極性官能基を含む環状オレフィン単量体の付加重合体であり、重量平均分子量Mwが100,000ないし1, 000,000である重合体:
【化1】

前記化学式6で、mは0ないし4の整数であり、R、R’、R’’及びR’’’のうちの少なくとも一つは極性官能基を表し、残りは非極性官能基であり、R、R’、R’’及びR’’’は互いに連結され、C4−12の飽和または不飽和環基、またはC6−24の芳香族環を形成でき、前記非極性官能基は、水素;ハロゲン;C1−20の線形または分枝型アルキル、ハロアルキル、アルケニル、ハロアルケニル;C3−20の線形または分枝型アルキニル、ハロアルキニル;アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルケニル、またはハロアルキニルで置換または非置換のC3−12のシクロアルキル;アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルケニル、またはハロアルキニルで置換または非置換のC6−40のアリール;またはアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルケニル、またはハロアルキニルで置換または非置換のC7−15のアラルキルであり、前記極性官能基は、少なくとも一つ以上の酸素、窒素、リン、硫黄、シリコン、またはボロンを含む非炭化水素極性基であり、前記非炭化水素極性基は、−ROR、−OR、−C(O)OR、−RC(O)OR、−OC(O)OR、−ROC(O)OR、−C(O)R、−RC(O)R、−OC(O)R、−ROC(O)R、−(RO)−OR、−(OR−OR、−C(O)−O−C(O)R、−RC(O)−O−C(O)R、−SR、−RSR、−SSR、−RSSR、−S(=O)R、−RS(=O)R、−RC(=S)R、−RC(=S)SR、−RSO、−SO、−RN=C=S、−N=C=S、−NCO、R−NCO、−CN、−RCN、−NNC(=S)R、−RNNC(=S)R、−NO、−RNO、−P(R、−RP(R、−P(=O)(R、−RP(=O)(R
【化2】

【化3】

からなる群から選択される一つ以上の官能基であり、
前記極性官能基でそれぞれのR及びR11は、C1−20の線形または分枝型アルキレン、ハロアルキレン、アルケニレン、ハロアルケニレン;C3−20の線形または分枝型アルキニレン、ハロアルキニレン;アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニルで置換または非置換のC3−12のシクロアルキレン;アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニルで置換または非置換のC6−40のアリーレン;またはアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニルで置換または非置換のC7−15のアラルキレンであり、
前記極性官能基でそれぞれのR、R12、R13及びR14は、水素;ハロゲン;C1−20の線形または分枝型アルキル、ハロアルキル、アルケニル、ハロアルケニル;C3−20の線形または分枝型アルキニル、ハロアルキニル;アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルケニル、またはハロアルキニルで置換または非置換のC3−12のシクロアルキル;アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルケニル、またはハロアルキニルで置換または非置換のC6−40のアリール;アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルケニル、またはハロアルキニルで置換または非置換のC7−15のアラルキル;アルコキシ;ハロアルコキシ;カルボキシル基;またはハロカルボキシル基であり、
kは、0ないし10間の整数である。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−36218(P2012−36218A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243511(P2011−243511)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【分割の表示】特願2008−523793(P2008−523793)の分割
【原出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】