説明

環状ブロックコポリマーを含むプラスチック光ファイバ

光減衰損失に対する良好な高温耐性を有するプラスチック光ファイバまたはプラスチック光ファイバコアが、(A)35:65から10:90の水素化共役ジエンポリマーブロック:水素化ビニル芳香族ポリマーブロックの重量比、(B)40,000グラム/モル(g/mol)から150,000g/molの数平均分子量(Mn)、ならびに(C)各水素化ビニル芳香族ポリマーブロックおよび各水素化共役ジエンポリマーブロックが少なくとも95パーセントの水素化レベルを有している水素化レベルを特徴とする環状ブロックコポリマーから調製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック光ファイバ(POF)に関する。一態様において、本発明は、環状ブロックコポリマー(CBC)から作製されるPOFに関し、別の態様において、本発明は、POFを作製するために使用されるCBC組成物に関する。さらに別の態様において、本発明は、自動車、工業、医療および消費者向け用途におけるそのようなPOFの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック光ファイバは、特に狭い範囲の用途(例えば100メートル以内)において、光信号を伝送するために使用されている。プラスチック光ファイバは、取扱いの容易性、軽量性および良好な延性の点で、ガラスファイバよりも有利である。POFはまた、その大きいコア(core)径および高い開口数のため、互いに繋ぐことも光源に繋ぐこともより容易である。さらに、プラスチック光ファイバは一般にガラスファイバより製造コストが低い。
【0003】
プラスチック光ファイバのコアとしての使用に好適なポリマー材料は、例えば優れた透明性および低い光学的損失、良好な熱安定性、良好な化学安定性、ならびに屈曲のための可撓性等の、一連の厳しい特性要件を有さなければならない。さらに、ポリマーは、光ファイバを作製するための典型的なファイバ紡糸工程に対して矯正可能であるべきである。POFに関して調査された各種ポリマーの最近の進展は、Lawrence A. Hornak著、「Polymers for Lightwave and Integrated Optics」、Marcel Dekker, Inc (1992)という表題のモノグラフにおいて見出すことができる。従来、プラスチック光ファイバのコアを製造するための材料として、主にポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)が選択されてきた。しかしながら、PMMAは、水分を吸収する傾向があり、これは信号強度を低下させる(または減衰を増加させる)可能性がある。さらに、PMMAは、85℃を超える温度に対する十分な耐性を提供しない。85℃を超える温度では、PMMAプラスチック光ファイバにおける光学的損失が、望ましくないレベルまで増加する。
【0004】
多くの用途は、85℃を超える温度に対する耐熱性を有するプラスチック光ファイバを必要とし、一部の用途、例えば、自動車向け用途は、125℃までの耐熱性を必要とする。したがって、耐熱性能(heat performance)の高いPOFが極めて望ましい。100℃を超える温度でのプラスチック光ファイバの使用に好適なPMMA以外の新たな光学材料の開発に向けて、相当な量の研究がなされてきた。例えば、米国特許第5,599,897号は、芳香族ポリカーボネートを使用した耐熱プラスチック光ファイバ(high temperature plastic optical fiber)組成物を教示している。米国特許第4,798,445号は、溶融紡糸製造工程を用いて作製されたポリカーボネートを使用した耐熱プラスチック光ファイバ組成物を教示している。米国特許第4,999,141号および欧州特許第0,264,818B1号は、シリコーンゴムおよび電子ビーム照射架橋工程を使用した耐熱プラスチック光ファイバ組成物を教示している。欧州特許第0,171,294B1号は、電子ビーム照射に曝露したPMMAを用いた耐熱プラスチック光ファイバ組成物を教示している。米国特許第4,810,055号は、モノマー単位としての脂肪族N−置換マレイミド、ならびにメチルメタクリレートおよび/またはスチレンモノマーから作製された耐熱プラスチック光ファイバ組成物を教示している。米国特許第7,512,309号は、良好な耐熱性および透明性を有するプラスチック光ファイバの構成単位としての、5質量%から100質量%のラクトン化合物の単位(A)と、0質量%から95質量%のメタクリレートの単位(B)とを含むポリマー組成物を教示している。
【0005】
特に、ポリカーボネート、非晶質環状オレフィンポリマー(COP)または環状オレフィンコポリマー(COC)、および脂肪族N−置換マレイミドが、POFへの使用に提案されている。しかしながら、これらの材料はいずれも、POFの性能要件を完全に満たすことはできない。特開平6−200004に教示されるように、ポリカーボネートは、密度の不均一性およびポリマー中の不純物による光散乱に起因して、大きな光学的損失を有する。COPまたはCOCは、主鎖に脂環式基を含有し、高い耐熱性を示す(特開平04−365003)が、不純物の完全除去が困難であること等の問題もまた有する。さらに、環状オレフィン材料は、脆性であり屈曲可撓性に欠ける傾向がある。米国特許第4,810,055号に記載のような脂肪族N−置換マレイミドに関しては、材料からファイバへの加工が困難であることが判明している。さらに、ポリカーボネートおよびマレイミドの手法は、潜在的に、信号伝送に有害な水分吸収を生じ易い。
【0006】
米国特許第6,815,475号は、水素化ブロックコポリマーを含む組成物が、フィルム、形材、シート、引抜成形品、ファイバ、被覆物品、射出成形品および吹込成形品または回転成形品を含む、数多くの用途を有することを教示している。組成物は、水素化重合ビニル芳香族モノマーの少なくとも2つの異なるブロック、および水素化重合共役ジエンモノマーの1つのブロックを有する、完全または実質的に完全に水素化された硬質ブロックコポリマーを含む。水素化ジエンブロック(複数可)および水素化ビニル芳香族ブロックは、40:60以下の重量比で存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態において、本発明は、
(A)35:65から10:90、好ましくは30:70から10:90、より好ましくは30:70から15:85の水素化共役ジエンポリマーブロック:水素化ビニル芳香族ポリマーブロックの重量比、
(B)40,000グラム/モル(g/mol)から150,000g/mol、好ましくは50,000g/molから90,000g/mol、より好ましくは60,000g/molから90,000g/molの数平均分子量(Mn)、ならびに
(C)各水素化ビニル芳香族ポリマーブロックおよび各水素化共役ジエンポリマーブロックが少なくとも95パーセント、好ましくは少なくとも98パーセント、より好ましくは少なくとも99パーセントの水素化レベルを有している水素化レベル
を特徴とする環状ブロックコポリマーを含む、好ましくは本質的にそのような環状ブロックコポリマーからなる、プラスチック光ファイバコアである。
【0008】
一実施形態において、環状ブロックコポリマーは、ビニル芳香族および共役ジエンブロックコポリマーを実質的に完全に水素化することにより調製される。
【0009】
一実施形態において、本発明は、コア−クラッディング構成を有するプラスチック光ファイバであって、コアが、
(A)35:65から10:90、好ましくは30:70から10:90、より好ましくは30:70から15:85の水素化共役ジエンポリマーブロック:水素化ビニル芳香族ポリマーブロックの重量比、
(B)40,000g/molから150,000g/mol、好ましくは50,000g/molから90,000g/mol、より好ましくは60,000g/molから90,000g/molの数平均分子量(Mn)、ならびに
(C)各水素化ビニル芳香族ポリマーブロックおよび各水素化共役ジエンポリマーブロックが少なくとも95パーセント、好ましくは少なくとも98パーセント、より好ましくは少なくとも99パーセントの水素化レベルを有している水素化レベル
を特徴とする環状ブロックコポリマーを含む、好ましくは本質的にそのような環状ブロックコポリマーからなる、プラスチック光ファイバである。
【0010】
一実施形態において、本発明は、コアの屈折率よりも低い、例えば少なくとも0.012低い屈折率を有する外側クラッディング層をさらに備える、プラスチック光ファイバコアである。一実施形態において、本発明は、650ナノメートル(nm)の波長で測定して1デシベル/メートル(dB/m)以下の105℃から25℃の間の減衰の変化をさらに特徴とする、プラスチック光ファイバコアである。
【0011】
一実施形態において、プラスチック光ファイバコアが作製される環状ブロックコポリマーは、(D)少なくとも120℃のガラス転移温度、(E)1380キロパスカル(kPa)(200,000ポンド/平方インチ(psi))を超える引張係数(tensile modulus)、および(F)少なくとも110ジュール/メートル(J/m)(2フィート−ポンド/インチ(ft−lb/in.))の室温(23℃)ノッチ無しアイゾッド衝撃靭性のうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つ、さらにより好ましくは少なくとも4つをさらに特徴とする。
【0012】
一実施形態において、本発明は、上述のようなプラスチック光ファイバコアを備える、自動車、工業、医療または消費者向けシステムである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
反対の意味が示されない、文脈から暗示されない、または当技術分野において慣習的でない限り、全ての部およびパーセントは重量を基準とし、全ての試験法は本開示の出願日の時点で最新のものである。米国特許上の慣例のため、任意の参照される特許、特許出願または出版物の内容は、特に合成技術、生成物およびプロセス設計、ポリマー、触媒、定義(本開示において具体的に示される任意の定義と一致する限り)、ならびに当技術分野における一般的知識に関して、参照によりその全体が組み込まれる(またはその対応する米国版が同様に参照により組み込まれる)。
【0014】
本開示における数値および数値範囲は近似値であり、したがって、別段に指定されない限り、その範囲外の値を含み得る。数値範囲は、任意のより低い値と任意のより高い値との間が少なくとも2単位離れている限り、1単位刻みのより低い値およびより高い値からの、およびそれらを含む全ての値を含む。例えば、組成特性、物理的特性または他の特性、例えば分子量、重量パーセント等が、100から1,000である場合、全ての個々の値、例えば100、101、102等、および部分範囲、例えば100から144、155から170、197から200等が、明示的に列挙されることが意図される。1未満の値、または1より大きい分数を含む値(例えば、0.01、0.1、1.1等)を含む範囲の場合、1単位は、必要に応じて0.001、0.01または0.1であるとみなされる。10未満の1桁の数字を含む範囲(例えば、1から5)の場合、1単位は、典型的には0.1であるとみなされる。これらは、具体的に意図されることの例に過ぎず、列挙される最低値と最高値との間の数値の全ての可能な組合せが、本開示において明示的に示されるとみなされる。本開示内において、数値範囲は、特に、本発明の組成物中の各種成分の量、ならびにこれらの組成物を定義する様々な特徴および特性に関して示される。
【0015】
「含む」、「含有する」、「有する」および同様の用語は、任意の追加の成分、ステップまたは手順が具体的に開示されているか否かに関わらず、それらの存在を除外することを意図しない。いかなる疑念も排除するために、「含む」という用語の使用により請求される全ての組成物は、反対の意味が示されない限り、1つまたは複数の追加の成分物質、部および/または材料を含み得る。一方、「本質的に〜からなる」という用語は、それに続く任意の列挙の範囲から、実施可能性に不可欠でないものを除く任意の他の成分、ステップまたは手順を除外する。「〜からなる」という用語は、具体的に明確な記載も列挙もされていない任意の成分、ステップまたは手順を除外する。「または」という用語は、別段に示されない限り、個別に、および任意の組合せとして列挙された要素を示す。
【0016】
「組成物」および同様の用語は、2種以上の成分の混合物またはブレンドを意味する。
【0017】
「ポリマーブレンド」および同様の用語は、2種以上のポリマーのブレンドを意味する。そのようなブレンドは、混和性であってもよく、または混和性でなくてもよい。そのようなブレンドは、層分離していてもよく、または層分離していなくてもよい。そのようなブレンドは、電子透過分光法、光散乱、X線散乱、および当技術分野において知られている任意の他の方法から決定されるように、1つまたは複数のドメイン構成を含有してもよく、または含有しなくてもよい。
【0018】
「ポリマー」および同様の用語は、同じまたは異なる種類のモノマーを反応(すなわち重合)させることにより調製される、高分子化合物を意味する。「ポリマー」は、ホモポリマーおよびインターポリマーを含む。
【0019】
「インターポリマー」、「コポリマー」および同様の用語は、少なくとも2種の異なるモノマーの重合により調製されるポリマーを意味する。これらの一般用語は、古典的なコポリマー、すなわち、2種の異なるモノマーから調製されるポリマー、および3種以上の異なるモノマーから調製されるポリマー、例えば、ターポリマー、テトラポリマー等を含む。
【0020】
「オレフィン系ポリマー」および同様の用語は、1種または複数種のオレフィンモノマー、例えばエチレンまたはプロピレンから得られる単位を過半数の重量パーセントで含有するポリマーを意味する。オレフィン系ポリマーの非限定的例には、エチレン系ポリマー、プロピレン系ポリマーおよびエチレン/プロピレン系ポリマーが含まれる。
【0021】
本発明に関連して使用される「ブロック」は、コポリマーの構造的または組成的に異なるポリマーセグメントからのミクロ相分離を示す、コポリマーのポリマーセグメントを意味する。ミクロ相分離は、ブロックコポリマー中のポリマーセグメントの不適合性に起因して生じる。ミクロ相分離およびブロックコポリマーは、「Block Copolymers-Designer Soft Materials」、PHYSICS TODAY、1999年2月号、32〜38頁において広く議論されている。
【0022】
環状ブロックコポリマー
環状ブロックコポリマー(CBC)は、ビニル芳香族/共役ジエンブロックコポリマーを実質的に完全に水素化することにより調製される。水素化の前、ビニル芳香族/共役ジエンブロックコポリマーは、異なるブロック、テーパ状ブロック、および放射状ブロックを含む任意の既知の構造を有し得る。ビニル芳香族ブロックおよび共役ジエンブロックを交互に含む異なるブロック構造は、特に、そのようなブロック構造が、それぞれビニル芳香族末端ブロックを有するトリブロックコポリマーまたはペンタブロックコポリマーをもたらす場合、好ましい結果をもたらす。ペンタブロックコポリマーは、特に好ましいブロックコポリマーを構成する。ビニル芳香族ブロックは、所望により同じまたは異なる分子量を有し得る。同様に、共役ジエンブロックは、同じまたは異なる分子量を有し得る。
【0023】
典型的なビニル芳香族モノマーは、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンの全ての異性体(特にパラ−ビニルトルエン)、エチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等の全ての異性体、またはこれらの混合物を含む。ブロックコポリマーは、1種または2種以上の重合ビニル芳香族モノマーを各ビニル芳香族ブロックに含有し得る。ビニル芳香族ブロックは、好ましくはスチレンを含み、より好ましくは本質的にスチレンからなり、さらにより好ましくはスチレンからなる。
【0024】
共役ジエンブロックは、2つの共役二重結合を有する任意のモノマーを含み得る。共役ジエンモノマーの例示的であるが非限定的な例には、ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、イソプレン、またはこれらの混合物が含まれる。ビニル芳香族ブロックと同様に、ブロックコポリマーは、1種(例えばブタジエンもしくはイソプレン)または2種以上(例えばブタジエンおよびイソプレンの両方)を含有し得る。水素化前のブロックコポリマー中の好ましい共役ジエンポリマーブロックは、ポリブタジエンブロック、ポリイソプレンブロック、または混合ポリブタジエン/ポリイソプレンブロックを含み得る。水素化前のブロックコポリマーは、1つのポリブタジエンブロックおよび1つのポリイソプレンブロックを含み得るが、ポリブタジエンブロックのみ、またはポリイソプレンブロックのみである共役ジエンブロックを水素化前に有するブロックコポリマーを使用すると、好ましい結果が得られる。単一ジエンモノマーが好ましいのは、主に製造が単純であるためである。いずれにしても、ポリマー骨格へのジエン組込みの微細構造は、実質的に、または完全に非晶質であるCBCポリマーを達成するように制御可能である。
【0025】
各ビニル芳香族ブロックがスチレン(S)を含み、各共役ジエンブロックがブタジエン(B)またはイソプレン(I)を含む例示的な好ましいビニル芳香族/共役ジエンブロックコポリマーは、SBSおよびSISトリブロックコポリマーならびにSBSBSおよびSISISペンタブロックコポリマーを含む。ブロックコポリマーは、トリブロックコポリマー、またはより好ましくはペンタブロックコポリマーであってもよいが、ブロックコポリマーは、1つもしくは複数の追加のビニル芳香族ポリマーブロック、1つもしくは複数の追加の共役ジエンポリマーブロック、または1つもしくは複数の追加のビニル芳香族ポリマーブロックおよび1つもしくは複数の追加の共役ジエンポリマーブロックの両方を有するマルチブロックであってもよく、あるいは、星型ブロックコポリマー(例えばカップリングにより生成されるもの)であってもよい。所望により、2種のブロックコポリマー(例えば、2種のトリブロックコポリマー、2種のペンタブロックコポリマー、または1種のトリブロックコポリマーおよび1種のペンタブロックコポリマー)のブレンドが使用されてもよい。また、単一ブロック内に2種の異なるジエンモノマーが使用されてもよく、これにより、例えばSIBSとして示し得る構造が提供される。これらの代表的な構造は、本発明の実施形態における第1のポリマーとしての使用に好適となり得るブロックコポリマーを例示するものであり、それを限定するものではない。
【0026】
「実質的に完全に水素化された」とは、水素化前のビニル芳香族ブロック内に存在する二重結合の少なくとも95パーセントが水素化または飽和しており、水素化前のジエンブロック内に存在する二重結合の少なくとも97パーセントが水素化または飽和していることを意味する。ブロックの相対的長さ、全分子量、ブロック構造(例えば、ジブロック、トリブロック、ペンタブロック、複数の腕を持つ放射状ブロック等)およびプロセス条件を変更することにより、このブロックコポリマーから様々な種類のナノ構造形態を得ることができ、それにより主要相の光学特性を改質することができる。特定の非限定的例には、層状形態、共連続ジャイロイド形態(bi-continuous gyroid morphology)、円筒形態、および球状形態等が含まれる。ブロックコポリマーの形態およびミクロ相分離挙動は周知であり、例えば、The Physics of Block Copolymers、Ian Hamley著、Oxford University Press、1998に見出すことができる。特に好ましいCBCポリマーは、水素化前に65wt%から90wt%未満までのスチレン量および10wt%を超え35wt%までの共役ジエン量を有するCBCポリマーである。
【0027】
数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は共に、CBCを説明するために使用できる。これらのポリマーは非常に狭い分子量多分散性を有する傾向があるため、MnとMwとの間の差は僅かである。Mnに対するMwの比は、典型的には1.1以下である。実際に、いくつかの場合において、数平均分子量および数平均分子量は、ほぼ同じである。したがって、本出願全体を通して、MnはMwとみなすこともできる。
【0028】
ブロックコポリマーの作製方法は、当技術分野において周知である。典型的には、ブロックコポリマーはアニオン重合により作製され、その例は、Anionic Polymerization: Principles and Practical Applications、H. L. HsiehおよびR. P. Quirk、Marcel Dekker、New York、1996に挙げられている。一実施形態において、ブロックコポリマーは、sec−ブチルリチウムまたはn−ブチルリチウム等のカルボアニオン開始剤への逐次モノマー付加により作製される。別の実施形態において、コポリマーは、1,2−ジブロモエタン、ジクロロジメチルシラン、またはフェニルベンゾエート等の二価カップリング剤を用いてトリブロック材料をカップリングすることにより作製される。この実施形態において、共役ジエンポリマーの小さい鎖(10モノマー反復単位未満)をビニル芳香族ポリマーカップリング末端と反応させ、カップリング反応を促進することができる。ビニル芳香族ポリマーブロックは、典型的にはカップリングが困難であるため、この技術は、ビニル芳香族ポリマー末端のカップリングを達成するために一般的に使用される。ジエンポリマーの小さい鎖は、ミクロ相分離が達成されないため異なるブロックを構成しない。様々なアニオン重合において実証されているカップリング試薬およびカップリング方法は、HsiehおよびQuirk、第12章、307〜331頁で議論されている。別の実施形態において、二官能性アニオン開始剤を使用してブロック系の中心から重合を開始し、それに続くモノマー付加は、成長ポリマー鎖の両端に同等に付加する。そのような二官能性開始剤の例は、米国特許第4,200,718号および米国特許第4,196,154号に記載のような、有機リチウム化合物で処理された1,3−ビス(1−フェニルエテニル)ベンゼンである。
【0029】
ブロックコポリマーの調製後、コポリマーの共役ジエンポリマーブロックおよびビニル芳香族ポリマーブロックセグメントの両方の不飽和部位を除去するために、コポリマーは水素化される。任意の水素化方法を使用することができ、そのような方法は、典型的には、BaSO上のPd(米国特許第5,352,744号)および珪藻土上のNi(米国特許第3,333,024号)等の、無機基材上に担持された金属触媒の使用を含む。さらに、Die Makromolekulare Chemie、第160巻、291頁、1972に記載のように、2−エチルヘキサン酸の遷移金属塩およびアルキルリチウムの組合せから調製される触媒等の、可溶性の均質系触媒を使用して、ブロックコポリマーを完全に飽和させることができる。コポリマーの水素化はまた、水素および不均一系触媒、例えば米国特許第5,352,744号、米国特許第5,612422号および米国特許第5,645,253号に記載のもの等を使用して達成することができる。
【0030】
水素化反応は、溶媒の非存在下で行うことができるが、好ましくは、ポリマーが可溶であり、水素化反応を妨げない炭化水素溶媒中で行われる。好ましくは、溶媒は、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロオクタン、シクロヘプタン、ドデカン、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、イソペンタン、デカヒドロナフタレンまたは2種以上のそのような溶媒の混合物等の飽和溶媒であり、シクロヘキサンが最も好ましい。
【0031】
典型的な水素化温度は、40℃から、好ましくは100℃から、より好ましくは200℃から、最も好ましくは120℃から、250℃まで、好ましくは200℃まで、より好ましくは180℃まで、最も好ましくは170℃までである。水素化反応の圧力は重要ではないが、水素化速度は圧力の増加と共に増加する。典型的な圧力は、大気圧から70MPaの範囲であり、0.7MPaから10.3MPaが好ましい。
【0032】
反応容器は、反応領域から酸素を除去するために不活性ガスでパージされる。不活性ガスとしては、窒素、ヘリウムおよびアルゴンが挙げられるがこれらに限定されず、窒素が好ましい。
【0033】
水素化剤は、不飽和ポリマーを効率的に水素化する任意の水素生成化合物であり得る。水素化剤としては、水素ガス、ヒドラジンおよび水素化ホウ素ナトリウムが挙げられるがこれらに限定されない。好ましい実施形態において、水素化剤は水素ガスである。
【0034】
「水素化のレベル」および同様の用語は、水素化の際に飽和になる元の不飽和結合のパーセンテージを意味する。水素化ビニル芳香族ポリマーにおける水素化レベルはUV−VIS分光光度法を使用して決定され、水素化ジエンポリマーにおける水素化レベルはプロトンNMRを使用して決定される。
【0035】
一実施形態において、組成物は、ビニル芳香族および共役ジエンの水素化ブロックコポリマーを含み、ブロックコポリマーは、3ブロックの水素化ビニル芳香族ポリマーおよび2ブロックの共役ジエンポリマーを含むペンタブロックコポリマーである。水素化ペンタブロックコポリマーは、水素化ブロックコポリマーの全重量を基準として90重量パーセント未満の水素化ビニル芳香族ポリマーブロックを含み、少なくとも95パーセントの芳香族およびジエン水素化レベルを有する。
【0036】
プラスチック光ファイバ
プラスチック光ファイバは、コア−クラッディング構成を有し、コア材料、例えばポリマーは、より高い屈折率および優れた光透過性を有し、クラッディング材料、例えばより低い屈折率を有する透明ポリマーで被覆される。一実施形態において、クラッディングは、(i)フッ素修飾を有する、実質的に完全に水素化されたビニル芳香族ブロックコポリマー、(ii)環状オレフィンポリマー、および(iii)フッ素修飾環状オレフィンコポリマーのうちの少なくとも1種を含む。コアの外周上に施されるクラッディング材料は、単層に制限されず、2つ以上の層を備えてもよい。構成は、中心軸様のコアがコアより低い屈折率を有するクラッドで囲まれているコア/クラッド構造を備えてもよく、または、複数のコアもしくはコア/クラッド構造を含む島部分がクラッドを含む海部分内に散在した、海島構造を有するマルチコアであってもよい。構成はこれらの例に制限されない。プラスチック光ファイバの他の構成としては、マルチコアステップインデックスファイバ(multi-core step index fiber)、微細構造ファイバ、ブラッグファイバ、空孔アシストファイバ、およびグレイデッドインデックスファイバ(graded index fiber)が挙げられる。これらの構成は、O. Ziemann、J Krauser、P. E. Zamzow、およびW. Daum、「POF Handbook: Optical Short Range Transmission Systems」、第2版、Springer-Verlag、Berlin、2008の文献に見出すことができる。
【0037】
光ファイバのクラッド成分は、フッ素含有オレフィン樹脂、フッ素化メタクリレートポリマー、シリコーン樹脂、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、エチレン酢酸ビニル等から適切に選択できる。そのような樹脂の例には、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー、エチレン/テトラフルオロエチレン、E.I.du Pont de Nemours&Co.Inc製のTeflon(登録商標)AF、旭硝子株式会社製のCYTOP、ならびにDyneon社製のTHVP2030G、THV220AおよびTHV500Gが挙げられる。クラッディング層はまた、CBCコアをフッ素化CBCでコーティングすることにより形成できる。さらに、クラッディング層はまた、CBCで作製されたコアの表面を直接フッ素化することにより形成できる。
【0038】
クラッドに使用されるフッ素含有オレフィン樹脂は、好ましくは、テトラフルオロエチレン(TFE)単位を含む。そのようなフッ素含有オレフィン樹脂の例には、10質量%から60質量%のフッ化ビニリデン(VdF)単位、20質量%から70質量%のTFE単位、および5質量%から35質量%のヘキサフルオロプロピレン(HFP)単位からなるターポリマー、5質量%から25質量%のVdF単位、50質量%から80質量%のTFE単位、および5質量%から25質量%のパーフルオロ(フルオロ)アルキルビニルエーテル単位からなるターポリマー、10質量%から30質量%のVdF単位、40質量%から80質量%のTFE単位、5質量%から40質量%のHFP単位、および0.1質量%から15質量%のパーフルオロ(フルオロ)アルキルビニルエーテル単位からなるテトラポリマー、40質量%から90質量%のTFE単位および10質量%から60質量%のパーフルオロ(フルオロ)アルキルビニルエーテル単位からなるバイポリマー(bipolymer)、30質量%から75%質量%のTFE単位および25質量%から70質量%のHFP単位からなるバイポリマー等を挙げることができる。
【0039】
プラスチック光ファイバは、その外周上に保護層を備えてもよい。保護層用の材料の例としては、限定されることなく、上述のクラッディング材料用の材料、例えばVdFおよびTFEのコポリマー、VdF、TFEおよびHFPのコポリマー、VdF、TFE、HFP、およびパーフルオロ(フルオロ)アルキルビニルエーテルのコポリマー、VdF、TFE、およびパーフルオロ(フルオロ)アルキルビニルエーテルのコポリマー、エチレン、TFE、およびHFPのコポリマー、TFEおよびHFPのコポリマー、またはVdF、TFE、およびヘキサフルオロアセトンのコポリマーが挙げられる。保護層は、コーティング法または浸漬法により、コア/クラッド構造上に形成させることができる。保護層はまた、コンジュゲートファイバ紡糸ノズルを用いた押出により、コアおよびクラッドと共に形成させることができる。
【0040】
コアおよびクラッディング材料は共に、その屈折率を変更するため、1種または複数種のドーパント、例えばナノサイズの二酸化チタン、ZrO、CuOもしくはSiO粒子、または、例えばブロモベンゼン、ベンジルn−ブチルフタレート、硫化ジフェニル、リン酸トリフェニル、安息香酸ベンジル等の有機染料を含んでもよい。また、コアおよびクラッディング材料は共に、1種または複数種の他の添加剤、例えば、酸化防止剤、UV安定剤等を含んでもよい。ドーパントおよび添加剤は、既知の量および既知の様式で使用される。
【0041】
プラスチック光ファイバを製造するための方法の一例は、コアを形成し、次いで任意の従来のコーティング技術または浸漬技術によりクラッディング材料の溶液を適用することである。この溶液は、代表的には、酢酸エチル、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミド等の溶媒に溶解したクラッディング材料を含む。光ファイバを製造する方法の別の例は、コアがクラッディング材料でコーティングされている光ファイバを形成するための、コンジュゲートファイバ紡糸ノズルを用いたコンジュゲート紡糸法による押出である。プラスチック光ファイバはまた、O. Ziemann、J Krauser、P. E. Zamzow、およびW. Daum、「POF Handbook: Optical Short Range Transmission Systems」、第2版、Springer-Verlag、Berlin、2008の文献に記載される一般的に知られている技術に基づく、1台のコア押出機および1台のクラッド押出機を用いた共押出工程により製造することができる。所望により、CBCコアを照射に晒してCBCを架橋させ、その耐熱性をさらに増加させることができる。
【0042】
光ファイバの耐摩耗性、耐熱性、耐湿性および耐燃性を改善するために、プラスチック光ファイバのクラッドの外周上または保護層の外周上に外側コーティング層を施してもよい。コーティング層は、例えば光ファイバが使用される環境に依存して、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、湿気架橋(moisture-crosslinked)ポリエチレン樹脂、湿気架橋ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、および各種UVまたは紫外線硬化樹脂からなる群から選択される、1種または2種以上の材料の混合物であってもよい。コーティング層は、コアに直接接触しない。この外側コーティング材料はまた、酸化防止剤、加工助剤、UV安定剤、難燃剤等の様々な成分を含有し得る。
【0043】
以下の例により本発明をより十分に説明する。別段に指定されない限り、全ての部およびパーセンテージは重量基準である。
【実施例】
【0044】
材料
樹脂A−1、A−2、CR−1およびCR−2はCBC材料である。これらは、溶媒としてのシクロヘキサン中でのスチレンと共役ジエンとの逐次アニオン重合により調製される。逐次重合は、第1のポリマーブロックを完成するために必要な第1の精製モノマー(例えばスチレン)のシクロヘキサン溶液を調製し、その溶液を重合温度まで加熱し、アルキルリチウム開始剤を添加することにより行う。重合はモノマーが尽きるまで進行し、その後、第2の精製モノマー(例えば共役ジエン)を添加し、第2のモノマーが尽きるまで重合を継続する。ブロックコポリマー配列(例えばトリブロックまたはペンタブロック)が達成されるまで第1モノマーと第2モノマーとを交互させることによりこの工程を繰り返し、その後、アルコール等の酸性種で重合を停止させ、ブロックコポリマー配列のリビング端部または連鎖端部を効果的にプロトン化し、副生成物としてリチウム塩を生成させる。
【0045】
A−1は、85wt%の水素化前スチレン含量および15wt%のブタジエン含量、75,000g/molの水素化前数平均分子量(Mn)、10wt%の水素化前1,2−ビニル含量を有するペンタブロックコポリマーである。
【0046】
A−2は、70wt%の水素化前スチレン含量および30wt%のブタジエン含量、75,000g/molの水素化前数平均分子量(Mn)、8wt%の水素化前1,2−ビニル含量を有するペンタブロックコポリマーである。
【0047】
CR−1は、90wt%の水素化前スチレン含量および10wt%のイソプレン含量、65,000g/molの水素化前数平均分子量(Mn)、10wt%の水素化前1,2−ビニル含量を有するペンタブロックコポリマーである。
【0048】
CR−2は、60wt%の水素化前スチレン含量および40wt%のブタジエン含量、68,000g/molの水素化前数平均分子量(Mn)、8wt%の水素化前1,2−ビニル含量を有するペンタブロックコポリマーである。
【0049】
CR−3は、Ticona社からTOPAS(商標)5013の商品名で市販されている環状オレフィンコポリマーである。
【0050】
CR−4は、Arkema社からPlexiglas V825の商品名で市販されているポリメチルメタクリレート樹脂である。
【0051】
環状ブロックコポリマー(A−1、A−2、CR−1およびCR−2)ならびに環状オレフィンコポリマー(材料CR−3)のガラス転移温度(T)は、示差走査熱量測定法(DSC)により10℃/分の走査速度で測定し、報告値は2回目の熱走査を使用したものである。
【0052】
水素化後の完全水素化ビニル芳香族−共役ジエンブロックコポリマーの分子量分析の測定は、示差屈折率検出器(PL210DRI)、粘度計(Viscotek(商標)モデルPL210−R)およびデュアルアングルレーザ光散乱検出器(Precision Detectors,Inc.製、モデルPD2020)を装備した高温GPC機器(Polymer Laboratories,Inc.製、モデルPL210)を用いて行う。Polymer Laboratories Plgel Olexisカラムを使用してGPC分離を実行する。カラムを、分子量分布の狭いポリスチレン標準(Polymer Laboratories,Inc.製)を使用して較正する。機器は、145℃の温度設定点で操作し、1,2,4−トリクロロベンゼンを使用し、1,2,4−トリクロロベンゼン100万重量部当たり約100重量部(ppm)の、担持溶媒としての2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールで安定化する。1,2,4−トリクロロベンゼン(200ppmの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールで安定化)中、1.0mg/mLの濃度で試料を調製する。160℃の温度設定点で動作する炉内で1時間加熱することにより試料を溶解する。試料瓶を20分毎に手で撹拌する。溶解したら、1.8mLの一定分量の試料溶液を高温ガラスピペットでPL210システム用の注入バイアルに移す。各試料瓶から2つの注入バイアルを充填する。クロマトグラフシステムに各バイアルから200マイクロリットル(μL)の注入を行う。水素化ブロックコポリマー(水素化後)の数平均分子量(Mn)または重量平均分子量(Mw)を、ポリスチレン当量値として報告する。
【0053】
ASTM D−256に従い、室温でのノッチ無しアイゾッド衝撃を測定する。110J/m(2ft−lb/in)以上のノッチ無しアイゾッド(UNI)を良好とする。ノッチ無しアイゾッド衝撃試験に使用する検体を、厚さ0.125インチ(0.3cm)の射出成形引張試験片から、長さ2.5インチ(6.4cm)および幅0.5インチ(1.3cm)に切り出す。
【0054】
ASTM D−638に従い、厚さ0.125インチ(0.3cm)の引張試験片を使用して室温での引張係数を測定する。引張検体は、250℃の溶融温度および38℃の金型温度で射出成形する。
【0055】
ポリマーの溶融粘度は、平行板レオメータ、例えばTA Instruments社製ARESレオメータを使用して、250℃で測定する。複素せん断粘度(η)は、1rad/sの発振周波数で測定する。複素せん断粘度ηの測定には、直径25mmおよび厚さ約2mmの圧縮成形ディスクを使用する。複素せん断粘度測定の実験手順は、当技術分野において周知であり、Rheology: Principles, Measurements, and Applications、Christopher W. Macosko著(VCH、1994)等のモノグラフにおいて見出すことができる。
【0056】
材料の屈折率は、ABBE屈折計(Atago D2)を使用して、厚さ約150ミクロン(μm)の圧縮成形フィルムに対して測定する。屈折率は、25℃でのナトリウムD線で測定する。
【0057】
各コア材料の屈折率は1.51であり、コア材料より低い屈折率を有するフッ素ポリマーで各コアをコーティングする。対照として、Arkema社から入手可能なPMMA Plexiglas V825からも光ファイバコアを作製し、PMMAは1.49の屈折率を有する。ポリマーAからEの主要な特性を表1に示す。
【表1】

【0058】
光ファイバは、コア材料およびクラッディング材料の両方に対して3/4インチ、アスペクト比24:1のスクリューを有する2台の押出機を使用した共押出工程で作製する。両方の押出機をクラス1000クリーンルーム内に収容する。ポリマー(クラッディング/コア)は、ポリマー溶融物をシース/コア複合構造として形成するように設計された、独立に温度制御されたダイブロックで合流する。光ファイバは、1mmの直径および25ミクロンのクラッディング厚さを有する。A−1、CR−1およびCR−3光ファイバは、233℃のダイ温度で押し出される。A−2およびCR−2光ファイバは、244℃のダイ温度で押し出される。Plexiglas V825(CR−4)光ファイバは、214℃で押し出される。
【0059】
減衰の測定には、距離の全てにわたって強度の変化を測定しながら、ファイバを通して既知の波長の光を伝達させることが必要である。「カットバック法」として知られる従来技術の方法は、ファイバを光源に連結し、他端で出力を測定することを含む。次いで、試験ファイバを光源の近くで切断し、出力を再測定する。光源での出力およびファイバ端部での出力、ならびにファイバの長さを知ることにより、以下の式を用いた計算によって減衰係数を決定することができる。長さLのファイバにおけるデシベル(dB)単位の光学的損失は、以下:
【数1】

[式中、IおよびIは、それぞれ、入力光および出力光の出力である]
により与えられる。この「カットバック法」は、ファイバの減衰を測定するために使用される。例えば、長さ6メートル(m)のPOFにより伝達される光強度を測定し、値を記録し、次いで2mの長さに切断し、これもまた測定する。次いで、6mでの値と2mでの値との間の差を、長さの差、すなわち4mで除算すると、1メートル当たりの最終的損失が得られる。光減衰を測定するために使用される機器は、光源(S760)および検出器(M702A)からなるFotec Mini Test Kit701である。M702Aは、シリコンフォトダイオード検出器を使用し、S760は、665ナノメートル(nm)のLEDを有する。光検出器は、650nmでの測定値を読み取るように設定される。
【0060】
光ファイバコアの1メートル当たりの光学損失または減衰(dB/m)は、炉の設定温度で10分間光ファイバコアを平衡化した後、室温(約25℃)、85℃、95℃、105℃、および125℃で測定する。コアの減衰の温度安定性は、設定温度で測定した減衰と室温で測定した減衰との間の差を考慮することにより評価する。表2は、各プラスチック光ファイバ試料に対する、高温対室温での減衰の差(Δα)を報告している。結果は、A−1およびA−2の減衰の変化が、125℃までCR−4の減衰の変化より大幅に小さいことを示している。また、A−1は、105℃までA−2よりも非常に良好な減衰安定性を示す。
【表2】

【0061】
表2の結果は、好ましい範囲のCBC組成物のみが耐熱プラスチック光ファイバの製造に好適であることを示している。比較例Aの場合のようにCBCの引張係数が高過ぎると、材料は非常に脆性である。ファイバ紡糸工程は困難であり、ファイバは実用的となるにはあまりに脆性である。比較例Bの場合のようにCBCの引張係数が低過ぎると、材料は、典型的には過度に高い粘度を有し、これはファイバ紡糸における困難をもたらす。実際、CR−2材料から調製されたファイバは、プラスチック光ファイバコアの表面上における押出に関連した欠陥によって完全に透明ですらなかった。
【0062】
実施例1および2ならびに比較例Cを比較することにより、プラスチック光ファイバ用途におけるランダムコポリマー(すなわち環状オレフィンコポリマーCR−3)に対するブロックコポリマー設計の利点は明白である。
【0063】
表2の結果はまた、耐熱性の改善の点で、PMMA光ファイバ(比較例D)に対するCBCプラスチック光ファイバ(実施例1および2)の優れた性能を示している。
【0064】
上記の具体的実施形態により、本発明をある程度詳細に説明したが、この詳細は例示を主な目的とする。当業者によって、以下の特許請求の範囲に記載されるような本発明の精神および範囲から逸脱せずに、多くの変形および修正がなされてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)35:65から10:90の水素化共役ジエンポリマーブロック:水素化ビニル芳香族ポリマーブロックの重量比、
(B)40,000g/molから150,000g/molの数平均分子量(Mn)、ならびに
(C)各水素化ビニル芳香族ポリマーブロックおよび各水素化共役ジエンポリマーブロックが少なくとも95パーセントの水素化レベルを有している水素化レベル
を特徴とする環状ブロックコポリマーを備える、プラスチック光ファイバコア。
【請求項2】
環状ブロックコポリマーが、(D)少なくとも120℃のガラス転移温度、(E)1380キロパスカル(kPa)(200,000ポンド/平方インチ(psi))を超える引張係数、および(F)少なくとも110ジュール/メートル(J/m)(2フィート−ポンド/インチ(ft−lb/in.))の室温(23℃)ノッチ無しアイゾッド衝撃靭性のうちの少なくとも1つをさらに特徴とする、請求項1に記載のプラスチック光ファイバコア。
【請求項3】
コア上面でコアと接触しているクラッディングをさらに備え、コアおよびクラッディングの各々が屈折率を有し、クラッディングの屈折率がコアの屈折率とは異なっている、請求項2に記載のプラスチック光ファイバコア。
【請求項4】
クラッディングの屈折率が、コアの屈折率より少なくとも0.012低い、請求項3に記載のプラスチック光ファイバコア。
【請求項5】
クラッディングが、フッ素含有オレフィン樹脂、フッ素化メタクリレートポリマー、シリコーン樹脂、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)およびエチレン酢酸ビニルのうちの少なくとも1種を含む、請求項4に記載のプラスチック光ファイバコア。
【請求項6】
クラッディングが、(i)フッ素修飾を有する、実質的に完全に水素化されたビニル芳香族ブロックコポリマー、(ii)環状オレフィンポリマー、および(iii)フッ素修飾環状オレフィンコポリマーのうちの少なくとも1種を含む、請求項4に記載のプラスチック光ファイバコア。
【請求項7】
環状ブロックコポリマーが、650nmの波長で測定して1dB/m以下の105℃から25℃の間の減衰の変化をさらに特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載のプラスチック光ファイバコア。
【請求項8】
水素化前の環状ブロックコポリマーが、共役ジエンを含む少なくとも1つのブロック、およびビニル芳香族モノマーを含む少なくとも2つのブロックを有する、請求項7に記載のプラスチック光ファイバコア。
【請求項9】
ビニル芳香族ポリマーブロックが、スチレンおよびα−メチルスチレンのうちの少なくとも1種から得られる単位を含む、請求項8に記載のプラスチック光ファイバコア。
【請求項10】
水素化前のスチレンブロックコポリマーが、スチレン−ブタジエン−スチレン−ブタジエン−スチレンペンタブロックコポリマーである、請求項9に記載のプラスチック光ファイバコア。
【請求項11】
水素化前の環状ブロックコポリマーの重合ビニル芳香族含量が70wt%から85wt%であり、各重量パーセントが水素化前の全ブロックコポリマー重量に基づく、請求項10に記載のプラスチック光ファイバコア。
【請求項12】
環状ブロックコポリマーの数平均分子量(Mn)が、50,000g/molから90,000g/molである、請求項11に記載のプラスチック光ファイバコア。
【請求項13】
(A)水素化共役ジエンポリマーブロック:水素化ビニル芳香族ポリマーブロックの重量比が30:70から15:85であり、
(B)数平均分子量(Mn)が60,000g/molから90,000g/molであり、
(C)各水素化ビニル芳香族ポリマーブロックおよび各水素化共役ジエンポリマーブロックが少なくとも98パーセントの水素化レベルを有している、
請求項12に記載のプラスチック光ファイバコア。
【請求項14】
請求項13に記載のプラスチック光ファイバコアを備える、自動車、工業、医療または消費者向けシステム。
【請求項15】
コア−クラッディング構成を備えるプラスチック光ファイバであって、コアが、
(A)35:65から10:90の水素化共役ジエンポリマーブロック:水素化ビニル芳香族ポリマーブロックの重量比、
(B)40,000g/molから150,000g/molの数平均分子量(Mn)、ならびに
(C)各水素化ビニル芳香族ポリマーブロックおよび各水素化共役ジエンポリマーブロックが少なくとも95パーセントの水素化レベルを有している水素化レベル
を特徴とする環状ブロックコポリマーを含む、プラスチック光ファイバ。

【公表番号】特表2013−514547(P2013−514547A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544511(P2012−544511)
【出願日】平成22年11月3日(2010.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/055249
【国際公開番号】WO2011/075229
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】