説明

瓦保持具

【課題】少ない部品点数で、各種形態の隅瓦に対応可能とする瓦保持具を提供する。
【解決手段】本発明の瓦保持具は、略四角形の板材41、41を、頭部42を支点にして脚部43を開き、隅瓦1を上方から載置させて面接触で支持するようにした支承板4と、その支承板4を載置する平らな基板面31を有する平面状の基板3とを主部品として構成される。その基板面31には、隣接した多数の直線刻み目状の凹溝(31a)凸条(31b)を形成しており、この凹溝(31a)凸条(31b)には、頭部42を係合させ支点として山形に開脚した支承板4の各脚部43先端を自重によって係止させているが、支持対象の隅瓦1の屈曲開き角度11に開脚角度44を一致させるよう、各脚部43先端を開いて所定の間隔に開脚させて載置することができるように構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の角度をもって折り曲げられた面を持つ隅瓦を保持するための瓦保持具の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、隅瓦のような、断面傘型の折り曲げ面を持つ瓦は、主として平板面で形成される平桟瓦とは異なり、焼成する際に立てかけた姿勢が不安定で転倒しやすいという問題の他、折り曲げられた中央部分が熱変形し易く、焼成後の歪みが大きくなるという不具合があった。この問題解決のため、本発明出願人は、先に隅瓦焼成用保持台を提案している。(特許文献1を参照のこと)
【0003】
【特許文献1】特開2000−234870号公報「隅瓦焼成用保持台」:特許請求の範囲、段落0005〜0008の記載、図1
【0004】
この特許文献1の隅瓦焼成用保持台は、セラミック角形基板の対角線上にセラミックパイプからなる複数の受け部材を所定の高さになるよう着脱自在に取り付け、この受け部材で隅瓦の折り曲げ裏部分を支持するようにし、さらに、隅瓦の前縁および後縁の下面を支持する受け部材も同様に着脱自在に取り付けたものである。
【0005】
このような隅瓦焼成用保持台の場合は、屈曲角度の異なる形状の隅瓦に適合するよう、長さ寸法の異なるセラミックパイプ受け部材を多数準備する必要があったうえ、焼成対象物が異なる都度、多数のセラミックパイプ受け部材を交換しなければならないという問題もあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、少ない部品点数で、各種形態の隅瓦に対応可能とする瓦保持具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の問題は、板材を山形に開脚させて隅瓦を支持するようにした支承板と、その支承板を載置する基板面を有する基板とからなる瓦保持具であって、その基板面の両側近傍に頭部を係合させて山形に開脚した支承板の各脚部を係止させる係止部を形成し、その支承板を所定の間隔に開脚させて載置可能としたことを特徴とする本発明の瓦保持具によって、解決することができる。
【0008】
また、本発明は次の形態に好ましく具体化できる。
a)前記係止部が、前記基板面の中央に向かって、凹溝凸条を繰り返し形成したものである形態。
b)前記凹溝凸条を繰り返し形成した基板の両端部分に対称形の側面板を形成して、前記基板を上下に間隔を設けて段積可能とした形態。
c)前記基板の表裏の基板面に前記係止部が設けられている形態。
d)前記支承板を構成する一対の板材の頭部に、組合せ可能な切り欠き部が形成され、その頭部を組み合せて山形に開脚可能であり、かつその板面には貫通開口が設けられている形態。
【発明の効果】
【0009】
本発明の瓦保持具は、断面傘型の折り曲げ面を持つ隅瓦を、山形に開脚した支承板の板材が支承するので、所定の屈曲角度を維持しつつ、乾燥時、あるいは焼成時における歪みの発生を抑制することができる。また、支承板の各脚部を適宜に選択した凹溝凸条など係止部に自重によって係止させることによって、支承板の開脚角度を拡縮自在に調整できるから、支持対象の隅瓦の屈曲角度に対応させて支持させることができる。従って、基板と支承板の品点で各種形状の隅瓦に応用可能となる。さらに、基板の両端部分に対称形の側面板を設けたものでは、乾燥および焼成工程において段積み作業を可能にできる。かくして、本発明の瓦保持具は、乾燥工程および焼成工程における保持具として共用できるという優れた効果がある。よって本発明は、従来の問題点を解消した瓦保持具として、技術的価値はきわめて大なるものがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の瓦保持具に係る第1実施形態について図1〜3を、第2実施形態について図4〜6を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
第1実施形態では、図1において、本発明の瓦保持具2と支持される隅瓦1との関係を示しているが、隅瓦1はごく単純な形状を事例として示した。
本発明の瓦保持具は、略四角形の板材41、41を、頭部42を支点にして脚部43を開き、すなわち、山形に開脚させて、隅瓦1を上方から載置させて面接触で支持するようにした支承板4と、その支承板4を載置する平らな基板面31を有する平面状の基板3とを主部材として構成される。
【0011】
そして、本発明の特徴は、その基板面31には、隣接した多数の直線刻み目状の凹溝(31a)凸条(31b)を形成しており、この凹溝(31a)凸条(31b)には、頭部42を係合させ支点として山形に開脚した支承板4の各脚部43先端を自重によって係止させているが、支持対象の隅瓦1の屈曲開き角度11に開脚角度44を一致させるよう、各脚部43先端を開いて所定の間隔に開脚させて載置することができるように構成してある点にあり、かくして、支持用の支承板4とそれを載置する基板3との2品点で、屈曲開き角度11の異なる形状の隅瓦1にも対応可能となり、隅瓦1を面支持するので乾燥工程や焼成工程で歪みが生じ難くなるという利点も得られるのである。
【0012】
この凹溝(31a)凸条(31b)は、基板面31に、中央に向かって設けられた凹凸繰り返し直線状の溝と条であって、支承板4の脚部43先端部分が引っかかって係止され容易に動かず位置決めできる程度の深さと幅が必要であるが、そのピッチは5〜20mmが適当である。なお、基板面31の平面サイズは、特に限定されないが、載置する隅瓦1の平面サイズに余裕をプラスした程度でよく、一般的には、最小300×500mm、最大500×800mm程度が実用的である。
【0013】
この前記凹溝(31a)凸条(31b)を設けた基板3の両端部分に、上下辺が基板面に並行な左右対称形の側面板5、5を直角に形成し、例えば、断面H字形状に形成しておけば、図2に示すように、前記基板3を上下に間隔を設けて段積することができるので好ましい。このように段積みすることによって、成形後の対象隅瓦を乾燥炉で乾燥する工程および焼成炉内で焼成する工程、あるいは運搬工程などにおいて、多数の対象隅瓦を同時に加工、処理できるなどの利点が得られる。
【0014】
この場合、前記基板面31の反対側の基板面32にも前記に同様な凹溝(32a)凸条(32b)(図2を参照)など係止部を設けておけば、基板3を側面板5、5を含めて上下反転させて使用することが可能となる。特に、焼成工程においては、このような保持具は焼成温度の影響で徐々に変形することがあるが、このように上下反転させることにより、変形を矯正、修正できるので、長期間使用できるようになるという利点が得られる。
【0015】
またさらに、左右対称形の側面板5、5を上下にも対称形(断面H字形状)に形成しておけば、任意の保持具だけを上下反転させ入れ替えても、段積み形態が変わらないので、焼成変形の大きな基板だけを上下反転させて矯正、修正できるという利点も得られるのである。
【0016】
本発明の瓦保持具の構成部材である支承板4の板材41および隅瓦1を支持する基板3には、いずれもシャモット質、アルミナ質、炭化珪素質などの耐火セラミック製で、厚さが5〜30mm程度の焼結板材を用いれば、乾燥工程、焼成工程ともに共用できるので好ましい。
【0017】
図示した支承板4を構成する一対の板材41の頭部42は、軸心を有する蝶番状のかみ合わされた構造の場合が例示してあるが、本発明では、この構成に限定されることはない。なお、図示の軸心は必須の構造ではなく、要は、一対の板材41の頭部42に、相互に組合せ可能な切り欠き凹凸部42aを形成しておき、それぞれの凹凸部42aを組み合せて、頭部42を支点としてお互いにもたれかけさせて、脚部43、43を開いて山形に開脚可能な構成とすればよい。かくして、本発明では単純形状の板材からなり、部品点数を少なくすみ部品管理も容易となる利点が得られる。
【0018】
なお、この場合、凹部と凸部の横幅寸法を一致させた1種類の切り欠き凹凸部42aからなる2枚の板材41を準備し、その一枚を裏返して組み合せれば、図1、3に示すような、それぞれの凹凸部42aをかみ合わせ、頭部42を支点としてお互いにもられかけさせる構造を得ることができる。かくして、1種類の形状の切り欠き凹凸部42aを持った板材41を準備すればよいので、部品品点を少なくできるから特に好ましいものとなる。
【0019】
また、図1の事例に示すように、前記板材41の板面には表裏に貫通した貫通開口45が設けておけば、載置する袖瓦1の裏面にも加熱雰囲気が回るので加熱温度むらを低減するのに大いに寄与することとなる。このような貫通開口45は、本発明では必ずしも必須ではないが、実用化に当っては、予めテストによってその形(四角、円、楕円、スリット形状など)、大きさ、設定個数などを定めればよい。
【0020】
(第2実施形態)
第2実施形態では、図4に示すように、対象隅瓦1は、前端の屈曲形状の曲り見付け部12を備えている実際の製品によく見られるものである。
第1実施形態の瓦保持具は、略四角形の板材41、41を、頭部42を支点にして脚部43を開き、すなわち、山形に開脚させて、隅瓦1を上方から載置させて支持するようにした支承板4と、その支承板4を載置する平らな基板面31を有する平面状の基板3とを主部材として構成される(図5、6参照)点で、第1実施形態と同様である。
なお、図6では、隅瓦1の輪郭は実線、破線の2重線で示した。
【0021】
この実施形態の第1の特徴は、隅瓦1を上方から載置させる支承板4の板材41、41にはそれぞれ突出させた凸面41aを設けていて、載置した隅瓦1の裏面平面部に面接触して支持するように構成され、かつこの凸面44、44の上に隅瓦1を載置することにより、その曲り見付け部12が板材41、41と干渉しないよう浮かせた状態で載置している点にある。
【0022】
また、この実施形態では、支承板4の各脚部43先端を係止する係止部として、基板面31の両側近傍に突起33、33を、開脚方向に2個、脚部に沿って2個、形成しており、この突起33、33には、頭部42を係合させ支点として山形に開脚した支承板4の各脚部43先端を自重によって係止させている。
【0023】
この場合、脚部43に沿って設けられる突起33の個数は特に限定されないが、開脚方向には、支持対象の隅瓦1の屈曲開き角度に開脚角度44を一致させるため、各脚部43先端を開いて所定の間隔に開脚させる位置に突起33、33を形成している。そして、隅瓦1の屈曲開き角度は、瓦の葺き勾配によって定まるが、慣用される葺き勾配基準、例えば3寸、4寸、5寸などの勾配基準に対応する位置に、所要個数の突起33、33を開脚方向に配列することで本発明の目的を達することができる。
【0024】
かくして、支持用の支承板4とそれを載置する基板3との2品点で、葺き勾配の異なる形状の隅瓦1にも対応可能となり、隅瓦1を面支持するので乾燥工程や焼成工程で歪みが生じ難くなるという、第1実施形態と同様な利点も得られるのである。
【0025】
この第2実施形態の基板3の両端部分に、左右対称形の側面板5、5を直角に形成し、例えば、断面H字形状に形成しておけば、第1実施形態の場合と同様に、前記基板3を上下に間隔を設けて段積することができるので好ましい。このように段積みすることによって、成形後の対象隅瓦を乾燥炉で乾燥する工程および焼成炉内で焼成する工程、あるいは運搬工程などにおいて、多数の対象隅瓦を同時に加工、処理できるなどの利点が得られるのも同様である。
【0026】
また、図6(B)に示すように、前記基板面31の反対側の基板面32にも前記に同様な突起33a、33aを複数個、配列した係止部を設けておけば、基板3を側面板5、5を含めて上下反転させて使用することが可能となり、第1実施形態の場合に同様な変形を矯正、修正できる利点が得られる。またさらに、左右対称形の側面板5、5を上下にも対称形(断面H字形状)に形成しておけば、任意の保持具だけを上下反転させ入れ替えても、段積み形態が変わらないので、焼成変形の大きな基板だけを上下反転させて矯正、修正できるという利点も得られる。
【0027】
また、支承板4を構成する一対の板材41の頭部42は、軸心を有する蝶番状の組合せ構造である必要はなく、一対の板材41の頭部42に、相互に組合せ可能な切り欠き凹凸部42aを形成しておき、それぞれの凹凸部42aを組み合せて、頭部42を支点としてお互いにもたれかけさせて、脚部43、43を開いて山形に開脚可能な構成とすればよい。
【0028】
また、図5、6の事例に示すように、前記板材41の凸面41aには表裏に貫通した貫通開口45aを設けておけば(図6(A)では、貫通開口の部分を斜線で示している)、載置する袖瓦1の裏面にも加熱雰囲気が回るので、乾燥時および焼成時の温度むらを低減するのに大いに寄与することとなる。また、凸面41a以外の部分にも必要に応じて、同様な貫通開口45bを設けるのも同様な理由で好ましい。この貫通開口形状は、四角、円、楕円、スリット形状など適宜に定めればよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1実施形態の瓦保持具の態様を説明するための要部斜視図。
【図2】同瓦保持具の段積み状態を示す正面図。
【図3】同瓦保持具の上面図。
【図4】見付け部を備えた隅瓦の要部斜視図。
【図5】第2実施形態の瓦保持具の構造を示す要部斜視図。
【図6】隅瓦を載置した同瓦保持具の上面図(A)、断面図(B)。
【符号の説明】
【0030】
1:隅瓦、11:屈曲開き角度
2:瓦保持具
3:基板、31:基板面、31a:凹溝、31b:凸条
4:支承板、41:板材、42:頭部、43:脚部、44:開脚角度、
5:側面板



【特許請求の範囲】
【請求項1】
板材を山形に開脚させて隅瓦を支持するようにした支承板と、その支承板を載置する基板面を有する基板とからなる瓦保持具であって、その基板面の両側近傍に、頭部を係合させて山形に開脚した支承板の各脚部を係止させる係止部を形成し、その支承板を所定の間隔に開脚させて載置可能としたことを特徴とする瓦保持具。
【請求項2】
前記係止部が、前記基板面の中央に向かって、凹溝凸条を繰り返し形成したものである請求項1に記載の瓦保持具。
【請求項3】
前記基板の両端部分に対称形の側面板を形成して、前記基板を上下に間隔を設けて段積可能とした請求項1または2に記載の瓦保持具。
【請求項4】
前記基板の基板面の表裏に前記係止部が形成されている請求項1、2または3に記載の瓦保持具。
【請求項5】
前記支承板を構成する一対の板材の頭部に、組合せ可能な切り欠き部が形成され、その頭部を組み合せて山形に開脚可能であり、かつその板面には貫通開口が設けられている請求項1から4のいずれかに記載の瓦保持具。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−298336(P2008−298336A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−143231(P2007−143231)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(392005470)新東株式会社 (15)
【Fターム(参考)】