説明

瓶詰め培地の調製方法

【課題】
栽培に適した水分量に調整すると粘度が大になって流動性が失われてしまう焼酎粕等の栄養材を混合してなる培地を、従来から用いられている流動性を有する培地を培養瓶に詰めるための詰め込み装置により瓶詰めできるようにして、培地の瓶詰めや栽培を効率よくかつ安定して行える瓶詰め培地の調製方法を提供できるようにする。
【解決手段】
詰め込み装置によって培地を培養瓶に詰める瓶詰め培地の調製方法において、栄養材と水を含む所要の材料を混合する際、混合後の培地の水分量を栽培に要する所要の水分量よりも減じておき、その後前記詰め込み装置2にて培養瓶に詰め、同培養瓶に詰めた培地に加水装置5によって水分を加えて同培地の水分量を前記所要の水分量となるように調整するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培地を詰め込み装置によって培養瓶に詰めた後、同培養瓶内の培地を加水して栽培に適する水分量に調整する瓶詰め培地の調製方法に関し、特に、きのこの栽培に適した瓶詰め培地の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、きのこの人工栽培は、基材になるおがくずあるいはコーンコブに栄養材となる米糠を混合して培地を調整し、同培地に水分を加えて培地の水分率をきのこの人工栽培に適する63〜65重量%に調整したもの(培地)を詰め込み装置によってポリプロピレン製の培養瓶に詰め、同培養瓶内の培地に種菌を植え付け、子実体を育成させて収穫している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、近年のグルメブームを背景に今まで以上に美味しいきのこが求められるようになり、従来の栄養材として用いていた米糠に代わり他の栄養材、例えば焼酎粕が用いられるようになってきている。(例えば、特許文献2参照)
【0004】
しかしながら焼酎粕を栄養材に用いた場合は、培地の水分率をきのこの人工栽培に適する63〜65重量%に調整すると粘性が生じて培地が粘土状になってしまい、詰め込み装置による培地の瓶詰めができなくなった。
【0005】
また、詰め込み装置を用いた培地の瓶詰めができなくなったことから培地の瓶詰めを人手により行わなければならなくなり、したがって瓶詰め効率の大なる低下、さらには栽培効率の大なる低下を招く恐れがあった。
【0006】
【特許文献1】特開2004−73054号公報(第1〜8頁、図5)
【特許文献2】特開2006−129767号公報(第1〜6頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、栽培に適した水分量に調整すると粘度が大になって流動性が失われてしまう焼酎粕等の栄養材を混合してなる培地を、従来から用いられている流動性を有する培地を培養瓶に詰めるための詰め込み装置により瓶詰めできるようにして、培地の瓶詰めや栽培を効率よくかつ安定して行える瓶詰め培地の調製方法を提供できるようにした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明に係る瓶詰め培地の調製方法は、詰め込み装置によって培地を培養瓶に詰める瓶詰め培地の調製方法において、栄養材と水を含む所要の材料を混合する際、混合後の培地の水分量を栽培に要する所要の水分量よりも減じておき、その後前記詰め込み装置にて培養瓶に詰め、同培養瓶に詰めた培地に外部から水分を加えて同培地の水分量を前記所要の水分量となるように調整するものとしてある。
【0009】
また前記培地の瓶詰め前における水分量を同培地の全重量に対して58重量%未満となるように設定するものとしてある。
【0010】
また前記栄養材を焼酎粕としたものとしてある。
【0011】
さらに前記瓶詰め後における培地に殺菌用の蒸気を吹き込み、この蒸気により供給される水分量をも加味して培地の水分量が前記所要の水分量となるようにしたものとしてある。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る瓶詰め培地の調製方法によれば、栄養材を混合した培地の水分調整を、培地を培養瓶に詰めた後で栽培に適する水分量に加水調整するようにしているため、培地を培養瓶に詰める際は培地の水分量を減じておくことができるので、栽培に適した水分量に調整すると粘度が大になって流動性が失われる焼酎粕等の栄養材を混合してなる培地も、同培地を培養瓶に詰める段階では流動性を有している状態を保ち、したがって従来から用いられている流動性を有する培地を培養瓶に詰めるための詰め込み装置により瓶詰めすることができて、培地の瓶詰めや栽培を効率よくかつ安定して行うことができる。
【0013】
また、瓶詰め前における培地の混合の際においても、水分量を減じておくことによって混合に要する動力を格段に低減せしめることができるとともに確実かつ十分な混合を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る瓶詰め培地の調製方法を添付図面に基づいて説明する。
図1は、自動化ラインを示していて、本発明に係る方法すなわち栄養材と水(湯を含む)を含む所要の材料を混合する際、混合後の培地の水分量を栽培に要する所要の水分量よりも減じて調整した培地を培養瓶に詰めるための詰め込み装置2と、培養瓶に詰めた培地に外部から水分を加えて同培地の水分量を所要の水分量となるように調整するための加水装置5を組み込んでいる。
【0015】
前記栄養材と水を含む所要の材料、例えばおが屑あるいはコーンコブとを混合する場合は、普通、攪拌装置を使用するが、手作業で攪拌する場合もある。
【0016】
また栄養材には焼酎粕が適するが、焼酎粕とともに他の栄養材を混合する場合もあり、また焼酎粕以外の栄養材を用いる場合もある。
【0017】
そして、栄養材と水を含む所要の材料とを混合した後における培地の水分量は同培地の全重量に対して58重量%未満となるように設定している。
すなわち、詰め込み装置2にセットする際の培地水分量は、培地の全重量に対して58重量%未満の水分量である。
【0018】
この水分量を58重量%以上とすると、瓶詰め時における培地の流動性が格段に低下し、詰め込み装置2による培地の瓶詰めが困難となる。
このように瓶詰め前の培地の水分量を58重量%未満とし、この値が閾値となることについては、発明者が実験による多数の実例を基に解明したものである。
【0019】
また、図1に示す自動化ラインでは、詰め込み装置2により瓶詰めした培養瓶内の培地に外部から水分を加えて同培地の水分量を所要の水分量となるように調整するための加水装置5の前段に蒸気注入装置4を配していて、したがって加水装置5によって行う加水は、培地の水分量がきのこの人工栽培に適する63〜65重量%になるようにしている。
【0020】
一方、図2に示す自動化ラインでは、前述した加水装置5の後段に蒸気注入装置4を配しており、この場合、加水装置5によって行う加水は、蒸気注入装置4による培地の蒸気殺菌の際に加わる水分量が加味されて加水されていて、したがって培地の水分量をきのこの人工栽培に適する63〜65重量%に調整するのは蒸気注入装置4によって行うようにしている。
【0021】
以下、表1に、本発明に係る瓶詰め培地の調製方法を用いて調整した培地で子実体を育成させて収穫したエリンギ茸と、培地の水分量を瓶詰めの前に栽培に適する63〜65重量%に調整して人手によって瓶詰めした培地(比較例)で子実体を育成させて収穫したエリンギ茸との試食(人)による味の比較試験の結果を示す。
【0022】
【表1】

※比較試験における供試数(培養瓶)は160本。
※味、食感、評価におけるランク(A:上、B:中、C:下)は、10人中8
人以上が良いと感じた場合はA、6〜7人の場合はB、それ以下の場合はC
とした。
【0023】
表1の結果からもわかるように、本発明に係る瓶詰め培地の調製方法を用いて培養瓶内で水分量を調整した培地で子実体を育成させて収穫したエリンギ茸は、味、食感、評価において、培地の水分量を培養瓶に詰める前に調整して人手により瓶詰めした培地で子実体を育成させて収穫したエリンギ茸と同等である。
【0024】
また、1瓶の平均収量においては、前述の人手により瓶詰めした培地で子実体を育成させて収穫したエリンギ茸よりも収量が大であり、さらに栽培日数においては、人手により瓶詰めした培地で栽培するよりも1日短縮でき、したがって本発明に係る瓶詰め培地の調製方法は、数値上からも安定した栽培ができることが立証された。
【0025】
実施例における図中の符号1は、空の培養瓶を入れたコンテナを後段の詰め込み装置2に送り込むための送り込み装置、図中の符号3は、詰め込み装置2によって培養瓶に詰められた培地に種菌の植え付け穴をあけるための穴あけ装置、図中の符号6は、図1の場合は加水装置5、また図2の場合は蒸気注入装置4によって処理された培養瓶にキャップを装着するためのキャップ装着装置、図中の符号7は、培養瓶を入れたコンテナの搬送用コンベアである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】培地の詰め込み装置と水分の加水装置を組み込んだ自動化ラインの一例を示す装置構成図。
【図2】自動化ラインの装置構成における他の装置配置形態を示す配置形態図。
【符号の説明】
【0027】
1 送り込み装置
2 詰め込み装置
3 穴あけ装置
4 蒸気注入装置
5 加水装置
6 キャップ装着装置
7 搬送用コンベア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
詰め込み装置によって培地を培養瓶に詰める瓶詰め培地の調製方法において、栄養材と水を含む所要の材料を混合する際、混合後の培地の水分量を栽培に要する所要の水分量よりも減じておき、その後前記詰め込み装置にて培養瓶に詰め、同培養瓶に詰めた培地に外部から水分を加えて同培地の水分量を前記所要の水分量となるように調整する瓶詰め培地の調製方法。
【請求項2】
前記培地の瓶詰め前における水分量を同培地の全重量に対して58重量%未満となるように設定することを特徴とする請求項1に記載の瓶詰め培地の調製方法。
【請求項3】
前記栄養材を焼酎粕としてなる請求項1に記載の瓶詰め培地の調製方法。
【請求項4】
前記瓶詰め後における培地に殺菌用の蒸気を吹き込み、この蒸気により供給される水分量をも加味して培地の水分量が前記所要の水分量となるようにすることを特徴とする請求項1に記載の瓶詰め培地の調製方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−240244(P2009−240244A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91819(P2008−91819)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、経済産業省九州経済産業局、地域資源開発活用型研究開発事業、きのこ生産を核とした焼酎粕乾燥固形物の多用途再生技術の委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【出願人】(390027454)協全商事株式会社 (13)
【出願人】(504410686)株式会社植村組 (3)
【Fターム(参考)】