説明

生ごみ処理装置

【課題】 生ごみ処理材の処理槽内の生ごみ処理材に常に新鮮な空気を供給して生ごみ処理を効率的に行うことのできる生ごみ処理装置を提供する。
【解決手段】 生ごみ処理槽内に投入された生ごみ処理材を好気性の菌で処理する生ごみ処理装置であって、生ごみ処理装置内部に配置され、生ごみ処理材を収容する生ごみ処理槽10と、生ごみ処理装置外部から空気を処理槽に導入する空気導入口41と、生ごみ処理槽に導入された空気を再び生ごみ処理装置外部に排出する空気排出口42とを備え、空気導入口と空気排出口は生ごみ処理槽に収容された生ごみの上限位置より上方に配置されるとともに、空気導入口から生ごみ処理槽に導入される空気の流れを生ごみ処理槽内に収容された生ごみ処理材の表面に向かわせるガイド材100を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば食堂やレストランなどにおいて生じた多量の生ごみを確実に処理することができる生ごみ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から例えば食堂やレストランなどにおいて生じた多量の生ごみを処理するに当たっていくつかのタイプの生ごみ処理装置が使用されている。かかる生ごみ処理装置の種類について説明すると、生ごみを堆肥化させるコンポスタイプの生ごみ処理装置、好気性の菌の作用を利用して生ごみを消滅(厳密には減量)させる消滅タイプの生ごみ処理装置、生ごみを乾燥させて処理する乾燥タイプの生ごみ処理装置、生ごみを炭化させて処理する炭化タイプの生ごみ処理装置などがあげられる。
【0003】
そして、現状ではコンポスタイプの生ごみ処理装置は、残渣を頻繁に取り出す必要がある。また、これを二次処理業者に送る手間やコストがかかる。また、乾燥タイプや炭化タイプの生ごみ処理装置はヒータ加熱に際して大きな消費電力を必要とするため、省エネの観点から現状では余り普及していない。一方、消滅タイプの生ごみ処理装置は生ごみを毎日連続投入できる高減量率(90%乃至95%)の生ごみ処理装置であり、残渣取り出し量の少ない特徴があるので現在注目されつつある。
【0004】
かかる消滅タイプの生ごみ処理装置は生ごみ処理槽底部に菌床(母材)をひき、菌床に繁殖した好気性の中温菌や高温菌(微生物)による生ごみ処理作用を利用するとともに生ごみ自体に付着した好気性の中温菌や高温菌による生ごみ処理作用を利用して生ごみの処理を行う。すなわち、生ごみ処理部内が適当な温度に保たれるとともに生ごみ処理部内の生ごみの水分率が例えば重量水分率で20%乃至60%と適切な範囲内に保たれるようにする。これによって、好気性の中温菌や高温菌が誘導期、対数増幅期、定常期、死滅期を繰り返して生ごみや母材中に常に理想的な密度で分布し、かつ好気性の中温菌や高温菌がそれ自身適当に発熱しながら発酵し、生ごみを効率的に処理していく。理想的には生ごみ処理装置に投入した生ごみの90%乃至95%程度が例えば丸一日で減量するのが望ましい。
【0005】
このようにいわゆるバイオ式生ごみ処理機では、母材に生ごみを毎日連続投入し、母材と生ごみからなる生ごみ処理材を適当な温度で温めるとともに適当な水分率を保つことで微生物の発酵を促進し、有機物質を水と炭水化物に分解することで生ごみを減量するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−178879号公報(第2−3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
生ごみ処理装置の生ごみ処理槽内における好気性の菌の発酵を促進して生ごみ処理材を効率的に処理するためには、上述したように処理槽内の生ごみ処理材の適切な温度と水分率の維持に加えて、生ごみ処理材に含まれる好気性の菌に常に新鮮な空気(酸素)を供給することが必要である。
【0007】
図6は、このような従来の生ごみ処理装置5を概略的に示した断面図である。図6から明らかなように、生ごみ処理装置内には生ごみを収容する生ごみ処理槽10と、当該処理槽内の生ごみ処理材を攪拌する攪拌シャフト21及び攪拌パドル22と、生ごみ処理槽10の下部に配置された温水ジャケット70を備えるとともに、生ごみ処理装置上部の一方に空気導入口41、生ごみ処理装置上部の他方に空気排出口42を設け、生ごみ処理装置外部から生ごみ処理槽内に空気を供給するようになっている。
【0008】
なお、この空気導入口41と空気排出口42を生ごみ処理槽10に堆積した生ごみ処理材の表面近傍に配置すると、空気導入口41から導入された空気が生ごみ処理材表面にほぼ平行に移動し、この空気の流れとともに生ごみ処理材中の生ごみがそのまま空気排出口42から生ごみ処理装置外部に出て行き、生ごみ処理装置周囲の環境を悪化させる。そのため、空気導入口41と空気排出口42を図6に示すように生ごみ処理装置5の上部、すなわち生ごみ処理材の上限位置より上方に配置して、生ごみ処理材中の生ごみが空気の流れとともにそのまま空気排出口42から生ごみ処理装置外部に排出されないようにしている。
【0009】
しかしながら、このような空気導入口41と空気排出口42が生ごみ処理材表面のかなり上方に位置していると、生ごみ処理装置外部から導入された空気が生ごみ処理材表面にあたる度合いも低く、生ごみ処理材に接する部分の風速も小さくなったまま空気排出口42から生ごみ処理装置外部に排出されてしまう。このような状態になると、生ごみ処理材表面近傍の空気の換気が十分行われず、生ごみ処理材中に含まれる好気性の菌から発生した二酸化炭素によって生ごみ処理材表面が覆われたままとなる。これによって、好気性の菌の発酵度合いが次第に低下するとともに生ごみ処理材内における嫌気性の菌の発酵度合いが活発になる。その結果、生ごみ処理材中のpH値が次第に低くなり、例えば石灰などの投入による強制的なpH値の上昇を試みないと生ごみ処理材中の好気性の菌がかなり死滅してしまい、効率的な生ごみ処理を行えなくなる。
【0010】
本発明の目的は、生ごみ処理材の処理槽内の生ごみ処理材に常に新鮮な空気を供給して生ごみ処理を効率的に行う生ごみ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明にかかる生ごみ処理装置は、
生ごみ処理槽内に投入された生ごみ処理材を好気性の菌で処理する生ごみ処理装置であって、
生ごみ処理装置内部に配置され、生ごみ処理材を収容する生ごみ処理槽と、前記生ごみ処理装置外部から空気を前記処理槽に導入する空気導入口と、前記生ごみ処理槽に導入された空気を再び生ごみ処理装置外部に排出する空気排出口とを備え、前記空気導入口と空気排出口は前記生ごみ処理槽に収容された生ごみ処理材の上限位置より上方に配置されるとともに、前記空気導入口から前記生ごみ処理槽に導入される空気の流れを当該生ごみ処理槽内に収容された生ごみ処理材の表面に向かわせるガイド材を備えたことを特徴としている。
【0012】
このようなガイド材を備えることで、空気導入口から生ごみ処理槽内に導入された空気が生ごみ処理材の表面に積極的にあたり、生ごみ処理槽内の生ごみ処理材の上部に溜まった二酸化炭素を空気排出口から排出する。これによって、生ごみ処理材内の好気性の菌に酸素を供給して好気性の菌の発酵を促進させるとともに、生ごみ処理材を適度な水分率になるように乾燥させる。
【0013】
また、上限位置まで堆積した生ごみ処理材の表面からさらにある程度離間した上方に空気排気口が配置されているので、生ごみ処理材中の生ごみが空気の流れとともに生ごみ処理装置外部に排出されることはない。
【0014】
また、本発明の請求項2に記載の生ごみ処理装置は、請求項1に記載の生ごみ処理装置において、
前記ガイド材の少なくとも一部が可撓性を有する材質でできたことを特徴としている。
【0015】
このようなガイド材を備えることで、生ごみ処理槽内の生ごみ処理材がガイド材の下端部に達するまで堆積してもこれによってガイド材の支持部に無理な応力がかかることはなく、ガイド材の破損を防止することができる。
【0016】
また、本発明の請求項3に記載の生ごみ処理装置は、請求項2に記載の生ごみ処理装置において、
前記ガイド材の生ごみ処理材接触側端部から上方に向かって空気通過用の複数のスリットが形成されていることを特徴としている。
【0017】
このようなスリットが形成されたガイド材を備えることで、生ごみ処理槽内の生ごみ処理材がガイド材の下端部に達するまで堆積しても、生ごみ処理槽内に導入された空気の多くがこのスリットを通過して生ごみ処理材の表面に沿って移動していく。これによって、生ごみ処理材表面に溜まった二酸化炭素を生ごみ処理材の堆積度合いの如何に係わらず生ごみ処理槽内から確実に排出する。その結果、生ごみ処理材がかなり堆積しても生ごみ処理材中の好気性の菌に常に十分な酸素を供給することができるとともに、生ごみ処理材表面をより速く乾燥させて最適な水分率維持させることができる。
【0018】
また、本発明の請求項4に記載の生ごみ処理装置は、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の生ごみ処理装置において、
前記ガイド材が生ごみ処理槽内への給気側に近い第1のガイド板と当該第1のガイド板より生ごみ処理槽内からの排気側に近い第2のガイド板とから少なくとも構成され、前記第1のガイド板の下端が前記生ごみ処理槽内において上限値まで堆積した生ごみ処理材に接触しないように配置され、かつ前記第2のガイド板の下端が前記第1のガイド板の下端よりも前記生ごみ処理槽底部側に配置されていることを特徴としている。
【0019】
第1のガイド板と第2のガイド板を生ごみ処理装置にこのように配置することで、第1のガイド板にあたった空気を更に第2のガイド板にあてて生ごみ処理材の表面に確実に導くことができる。これによって、生ごみ処理材の表面に溜まった二酸化炭素を生ごみ処理装置外部に効率的に排出して生ごみ処理材中の好気性の菌に酸素を十分に供給できるとともに、生ごみ処理材をより速く最適な水分率になるまで乾燥させることができる。生ごみ処理材の乾きが遅いと水分が滞って生ごみ処理材内に空気が入りにくくなり、嫌気性の菌が増殖してしまうが、上述のような構成とすることで生ごみ処理材に空気を十分に供給することができるため、好気性の菌を増殖させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、生ごみ処理材の処理槽内の生ごみ処理材に常に新鮮な空気を供給して生ごみ処理を効率的に行う生ごみ処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態にかかる生ごみ処理装置について図面に基づいて説明する。本発明の一実施形態にかかる生ごみ処理装置1は、図1に示すように、生ごみ処理装置内に配置された生ごみ処理槽10と、投入された生ごみを処理する攪拌機20と、攪拌機20の上方に配置され、生ごみ処理装置内部に導入された空気の向きを生ごみ処理材の表面に変えるガイド板100を備えている。
【0022】
生ごみ処理槽10は例えば鉄やステンレス鋼でできた箱型形状を有し、内部に生ごみ処理用の一定の空間を備えている。そして、生ごみ処理槽10の下方には生ごみ処理槽内の温度を一定に保つための温水ジャケット70が備わっている。また、生ごみ処理槽内の下方部分には生ごみを処理するための例えばやし殻などからなる母材(菌床)がひかれている。すなわち、生ごみ処理槽10は生ごみを分解する処理槽としての役目を果たしている。
【0023】
また、生ごみ処理槽内には投入される生ごみを攪拌する攪拌機20が生ごみ処理材に少なくとも一部埋まるように備わっている。攪拌機20は、生ごみ処理槽内に水平に設置された攪拌シャフト21と、当該攪拌シャフト21に一定の間隔で結合された複数の攪拌パドル22と、当該攪拌シャフト21及び攪拌パドル22を一定の回転数で回転させるモータ23とから構成されている。なお、攪拌機20は、母材及び生ごみに含まれた好気性の菌(中温菌や高温菌)が発酵しやすくするための役割を果たし、槽内において生ごみが混入した母材に空気を供給して生ごみ処理を促進させるようになっている。そして、生ごみ処理槽内に投入された生ごみは攪拌機20で攪拌されることで母材と混合し残渣になる(以下、これを「生ごみ処理材」とする)。この生ごみ処理材の攪拌中、菌の発酵熱によりこれに含まれる水分が水蒸気になり、有機物は発酵で分解されて減少する処理がなされる。
【0024】
一方、生ごみ処理槽10にはダクト40が配設されており、ダクト40の一方の端部には空気排出口42が備わるとともに、生ごみ処理装置1の所定部分に生ごみ処理槽10に外気を導入する空気導入口41が備わっている。なお、空気導入口41及び空気排出口42は生ごみ処理槽内の上部であって生ごみ処理材の上限位置からある程度上方の位置に設けられている。なお、ここで言う生ごみ処理材の上限位置とは、各生ごみ処理槽10への許容される生ごみ処理材の投入量によって生ごみ処理槽ごとに自明的に決められる位置であるが、本発明において厳密な位置として規定されるものでないことは言うまでもない。
【0025】
また、生ごみ処理装置1の上面であってダクト40の他端には外部排気口43が備わっている。また、ダクト40には排気ファン44が備わっている。なお、ダクト40及び空気導入口41、空気排出口42、外部排気口43は、発酵した生ごみ処理材の発酵熱を処理機外部に逃がすと共に外気を取り込む役目を果たしている。すなわち、生ごみ処理材が発酵する際に発生する高温の二酸化炭素と水蒸気は空気排出口42、ダクト40を介して外部排気口43から排気され(図1中、ダクト40内の矢印参照)、温水ジャケット70と協働して生ごみ処理部内の生ごみ処理材の温度をほぼ一定に保つようになっている。
【0026】
なお、ダクト40には脱臭用の白金触媒45が備わっており、悪臭がそのまま外気に放出されるのを阻止している。また、ダクト40には、流量絞り部46が備わるとともに、熱交換機47、排熱回収部48が備わっている。
【0027】
生ごみ処理材を収容する生ごみ処理槽10の上方には、図1及び図2に示すようにガイド板100が備わっている。このガイド板100は例えばステンレス鋼の板材でできており、生ごみ処理槽10の空気導入口41の近傍に設けられている。ガイド板100は、空気導入口41から導入された空気がそのまま空気排出口42に向かわずにその板面に当たるように空気導入口41の開口部とその板面とが対向するような向きで配置されている。また、ガイド板100は、生ごみ処理槽10の幅方向全体にわたって生ごみ処理槽10の上面から垂下してその下端部100a(図2参照)が生ごみ処理材の上面と一定間隔離間するように配置されている。これによって、生ごみ処理装置外部から導入され生ごみ処理槽10を通って再び生ごみ処理装置外部に排出される空気の流れを生ごみ処理槽内に収容された生ごみ処理材の表面に向かわせるようにしている。
【0028】
一方、攪拌機近傍には温度センサ(図示せず)が備わり、生ごみ処理部内の母材の温度を測定して生ごみ処理部内の温度管理を行うようになっている。温度センサは例えば熱電対や白金測温体からなり、母材の温度を適時測定可能となっている。
【0029】
また、温水ジャケット70内には温水ジャケットヒータ71が設置され、この温水ジャケットヒータ71の動作/非動作によって生ごみ処理部本体内の温度をある程度積極的に管理可能としている。
【0030】
また、生ごみ処理部内部の攪拌部近傍に水分率計52が設けられるとともに、生ごみ処理装置1の下面に重量計(図示せず)が備わっている。また、生ごみ処理部内の上方には距離センサが備わっている。なお、同図に示す水分率計52は生ごみ処理材すなわち母材と生ごみの重量水分率(単位体積当りの生ごみ処理材に含まれている水分重量/生ごみ処理材重量)を測定するためのものであり、重量計及び距離センサは生ごみ処理装置1の重量や生ごみ処理材上面の高さを測定することで生ごみ処理後の残渣の増加分を算出するためのものである。そして、上述の水分率計52で測定した水分率を確認しながらこの水分率が20%〜60%の範囲内に収まるように生ごみ処理槽内に空気を送り込む排気ファン44の回転数を制御するようになっている。
【0031】
続いて、上述した本実施形態にかかる生ごみ処理装置1の作用について説明する。生ごみ処理装置1を作動させるにあたって、例えばやし殻などの母材を生ごみ処理装置1の生ごみ処理槽下部にひくとともに生ごみ(図1中の生ごみG参照)を投入し、攪拌シャフト21を駆動することによって攪拌パドル22を回転させ、生ごみ処理槽内の生ごみ処理材の攪拌を開始する。
【0032】
そして、水分率計52による水分率の測定を開始するとともに、排気ファン44を回転させて空気導入口41から生ごみ処理装置外部の空気を生ごみ処理槽内に導入する。導入された空気は図2の矢印に示すようにガイド板100の板面にあたり、そのまま空気排出口42に向かわずに降下して生ごみ処理材の表面に積極的に導かれる。生ごみ処理装置1の作動後しばらくすると生ごみ処理材の上面には好気性の菌の発酵によって二酸化炭素が溜まって二酸化炭素の層を形成するが、外部から導入された空気の流れはガイド板100によって生ごみ処理材の表面に向かってその向きを積極的に変えられるので、この空気の流れとともに生ごみ処理材の上部に溜まった二酸化炭素を空気排出口42から排出する(図2の矢印参照)。これによって生ごみ処理材内の好気性の菌に酸素を供給してこの菌の発酵を促進させることができるとともに、生ごみ処理材をより速く適度な水分率になるように乾燥させる。
【0033】
なお、空気排出口42は、生ごみ処理材の表面から上方にある程度離間した位置に配置されているので、生ごみ処理材の生ごみが空気の流れとともに生ごみ処理装置外部に排出されることはない。
【0034】
なお、このようにガイド板100を設けることによって、空気導入口41から導入された空気を積極的に生ごみ処理材の表面に導くことで、生ごみ処理槽内における空気の流れの経路がこのようなガイド板100を備えない場合に比べて長くなるとともに、ガイド板100が生ごみ処理槽内で一種の絞り部の役目を果たすようになる。また、ガイド板100を備えない場合に比べて生ごみ処理材表面近傍に空気の滞留が生じにくくなる。その結果、具体的には、例えばこのようなガイド板100を備えない場合に比べて生ごみ処理材表面近傍の空気の流速が少なくとも20%以上大きくなることが確認されている。
【0035】
以上のガイド板100の作用に加えて、水分率計52を用いて生ごみ処理材中の水分率を例えば20%乃至60%の範囲に収めるように送風量(排気ファン44の回転数)を制御するとともに、その他の条件、具体的には適度な酸素供給量、中温菌と高温菌の生育できる適度な温度、好気性発酵に求められる中性乃至微アルカリ性(pH6〜pH8)の環境、通気性や保水性が良く単位体積あたり数多くの微生物が生育する母材の利用によって、たんぱく質や単糖類などの易分解性有機物が分解され、生成された残渣が堆肥の元となる状態である一次発酵を経てこれらの分解が更に進み、セルロースなどの難分解性有機物が分解し、有機質肥料として使用できるC/N比が10前後になる二次発酵まで導くことができる。
【0036】
続いて、本実施形態にかかる生ごみ処理装置1の第1の変形例について説明する。なお、本変形例はガイド板の構造のみが上述の実施形態と異なっているので、他の構造については対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
【0037】
この変形例にかかる生ごみ処理装置2は、図3に示すように、ガイド板200が上述の実施形態と同様に生ごみ処理槽上部であって空気導入口41から生ごみ処理槽内部側に一定距離離間した位置から垂下している。また、ガイド板200のガイド面は、空気導入口41の開口部と対向する向きで設けられて、空気導入口41から導入された空気がそのまま生ごみ処理槽上部を通過して空気排出口42から排出されるのを阻止している。
【0038】
なお、ガイド板200は、上述の実施形態と異なり、ゴムやエラストマ、軟質塩化ビニル樹脂、ポリエチレンなどの弾力性(可撓性)に優れた材質でできており、その下端部が上述の実施形態のガイド板100に較べてより生ごみ処理槽底部側に位置している。これによって、ガイド板の下端部200aは、生ごみ処理材の堆積量が若干増加した段階においてこの生ごみ処理材の上面に接触し、その堆積量が増えるに従って、図3に示すように適度に撓むようになっている。
【0039】
また、ガイド板200の下端部からは生ごみ処理材堆積方向、すなわちガイド板200の上方向に複数のスリット210がその幅方向に適当な間隔をおいて形成されている(図4参照)。このスリット210は、適当な幅を有する細長矩形状の切欠きからなり、図3に示すように、生ごみ処理材が堆積してガイド板下端が生ごみ処理材上部に接触して撓んでも、ガイド板200によって下降した空気の流れをこのスリット210を介してガイド板反対側の生ごみ処理材表面上に導くようになっている。
【0040】
このようなガイド板200を備えることで、上述の実施形態のように生ごみ処理装置2を作動させて生ごみ処理材を攪拌しながら排気ファン44を回転させて空気導入口41から生ごみ処理装置外部の新鮮な空気を導入すると、この空気がガイド板200によってそのまま生ごみ処理槽上方を通過することなく、ガイド板200に遮られて下降する。
【0041】
そして、この下降した空気は、生ごみ処理材の堆積量が少ない場合は、ガイド板の下端部200aと生ごみ処理材上面との隙間を通って生ごみ処理材表面上に沿って移動した後、再び上昇して空気排出口42から排出される。
【0042】
一方、生ごみ処理材の堆積量が増加すると、図3に示すように、ガイド板の下端部200aが生ごみ処理材に接触するとともにガイド板全体が撓み始めるが、上述したようにガイド板200には空気通過用のスリット210が形成されているので、生ごみ処理槽内に導入された空気の多くは、図3及び図4の矢印に示すようにこのスリット210を通って生ごみ処理材表面上に沿って移動した後、再び上昇して空気排出口42から排出される。
【0043】
本変形例においては、図3に示すようにある程度生ごみ処理材が堆積した状態になって堆積した生ごみ処理材がガイド板200を無理に押しても、ガイド板200が可撓性を有しているのでガイド板200と生ごみ処理装置1の接続部にそのまま直接大きな応力が発生することなく、ガイド板200を破損することもない。
【0044】
なお、ガイド板200は、全体がゴムまたはエラストマなどの弾力性のある材質でできていても良く、その上方部分がステンレス鋼の板材でできてかつその下方部分がゴムやエラストマなどの弾力性のある可撓性材料でできて、これらがガイド板中間部で接続されていても良い。
【0045】
続いて、本発明の実施形態の第2変形例について説明する。この第2変形例も第1変形例と同様に、生ごみ処理装置のガイド板の構造のみが異なっているので、他の構造については対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
【0046】
この第2変形例にかかる生ごみ処理装置3は、給気側に近い第1ガイド板と当該第1ガイド板より排気側に近い第2ガイド板とを少なくとも備えている。そして、第1ガイド板の下端が生ごみ処理槽内において上限値まで堆積した生ごみ処理材に接触しないように配置されているとともに、第2ガイド板の下端がこの第1ガイド板の下端よりも生ごみ処理槽底部側に配置されている。
【0047】
具体的には、この第2変形例にかかる生ごみ処理装置3は、図5に示すように、生ごみ処理槽上方部に配置した空気導入口41の近傍であってこの空気導入口41から一定距離離間した位置に配置された第1ガイド板310と、この第1ガイド板310よりも生ごみ処理槽内部側に配置された第2ガイド板320と、生ごみ処理槽内部において第2ガイド板320と対向配置された第3ガイド板330と、第3ガイド板330と空気排出口42との間に配置された第4ガイド板340を備えている。
【0048】
そして、第1ガイド板310と第4ガイド板340は例えばステンレス鋼などの板材でできており、その両端部が生ごみ処理槽内の内壁に溶接やネジ締めなどの適当な締結手段によって固定され、いわゆる両持ち梁構造によって支持されている。なお、第1ガイド板310はその板面が空気導入口41の開口部と対向するように向けられており、空気導入口41から導入された空気は第1ガイド板310にあたって第1ガイド板310に隣接する第2ガイド板320に向かうようになっている。
【0049】
第2ガイド板320は、その下端部が第1ガイド板310の下端部よりも生ごみ処理槽底部に近くなるように配置されており、第1ガイド板310によって流れの向きが変えられた空気がこの第2ガイド板320にあたって、更にこの第2ガイド板320と生ごみ処理材表面との間を通るようにその空気の流れの向きが変えられる。なお、第2ガイド板320は、上述した第1変形例と同様の材質すなわちゴム又はエラストマ、軟質塩化ビニル樹脂、ポリエチレンなどの弾力性でできた材質でできていても良く、又は、例えばステンレス鋼(SUS)などの金属でできていても良い。これによって、生ごみ処理材が堆積してその表面が第2ガイド板下端部320aに接触しても、この第2ガイド板320が撓むことで第2ガイド板320と生ごみ処理装置3と接続部に無理な応力が発生してこの部分が破損するのを防止することができる。
【0050】
なお、第2ガイド板320に上述の第1変形例のようなスリットを設けることで、第2ガイド板下端部320aが生ごみ処理材表面に接触しても、空気導入口41から導入された空気の多くをこのスリットを介して第3ガイド板330と生ごみ処理材表面との間に導くようにしても良い。
【0051】
以上のようにして、第2ガイド板320を介して流れる空気は更に第3ガイド板330と生ごみ処理材表面との間を通って、第4ガイド板340と生ごみ処理材表面との間に導かれる。そして、この空気は生ごみ処理槽10の空気排出口42からダクト40を通って生ごみ処理装置外部に排出される。
【0052】
このように生ごみ処理槽内に複数のガイド板310〜340を所定の間隔隔てて配置することによって、空気導入口41から導入された生ごみ処理装置外部の新鮮な空気の流れを生ごみ処理材の表面に沿うように導くことができ、上述した実施形態及びその第1変形例と同等かそれ以上の作用を得ることが可能となる。
【0053】
すなわち、生ごみ処理材表面の上部に溜まった二酸化炭素をこの空気の流れによって生ごみ処理装置外部に排出するとともに、生ごみ処理材に充分な酸素を供給し、好気性の菌の発酵を促進させることができる。これとともに、生ごみ処理材が適度な水分率を保つように乾燥させることによってこの好気性の菌の発酵度合いを更に促進させることができる。
【0054】
以上説明したガイド板は、その下端部と生ごみを処理材表面との間を生ごみ処理装置外部から導入された空気が通過するようになっているが、このガイド板は生ごみ処理槽内に導入された空気の流れを生ごみ処理材表面に向けて変える役目を果たしていれば良く、例えばガイド板の下端部が生ごみ処理材に一部埋まることで、ガイド板の下端部と生ごみ処理材表面との間に空気の流れを導かずにこの空気を生ごみ処理材中に直接浸透させるように空気の流れの向きを変えても良い。
【0055】
また、上述の実施形態及びその第1変形例にかかるガイド板は、生ごみ処理装置内部上面から垂下した構成をとっていたが、この第2変形例のように生ごみ処理装置内部側壁面に両持ち梁構造で支持されていても良いことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態にかかる生ごみ処理装置の概略構成を示した断面図である。
【図2】図1に示した生ごみ処理装置の生ごみ処理槽内におけるガイド板の配置状態及びこのガイド板による空気導入口からの空気の流れを概略的に示した生ごみ処理装置の部分的断面図である。
【図3】本発明の一実施形態の第1変形例を示した、図2に対応する部分的断面図である。
【図4】図3に示した第1変形例のガイド板のみを幅方向に一部切断し、これを通る空気の流れとともに示した拡大斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態の第2変形例を示した、図2に対応する部分的断面図である。
【図6】従来の生ごみ処理装置を示した、図2に対応する部分的断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1,2,3,5 生ごみ処理装置
10 生ごみ処理槽
20 攪拌機
21 攪拌シャフト
22 攪拌パドル
23 モータ
40 ダクト
41 空気導入口
42 空気排出口
43 外部排気口
44 排気ファン
45 白金触媒
46 流量絞り部
47 熱交換機
48 排熱回収部
52 水分率計
70 温水ジャケット
71 温水ジャケットヒータ
100 ガイド板
100a 下端部
200 ガイド板
200a 下端部
210 スリット
310 第1ガイド板
320 第2ガイド板
320a 第2ガイド板下端部
330 第3ガイド板
340 第4ガイド板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生ごみ処理槽内に投入された生ごみ処理材を好気性の菌で処理する生ごみ処理装置において、
生ごみ処理装置内部に配置され、生ごみ処理材を収容する生ごみ処理槽と、前記生ごみ処理装置外部から空気を前記生ごみ処理槽に導入する空気導入口と、前記生ごみ処理槽に導入された空気を再び生ごみ処理装置外部に排出する空気排出口とを備え、
前記空気導入口と空気排出口は前記生ごみ処理槽に収容された生ごみ処理材の上限位置より上方に配置されるとともに、前記空気導入口から前記生ごみ処理槽に導入される空気の流れを当該生ごみ処理槽内に収容された生ごみ処理材の表面に向かわせるガイド材を備えたことを特徴とする生ごみ処理装置。
【請求項2】
前記ガイド材の少なくとも一部が可撓性を有する材質でできたことを特徴とする、請求項1に記載の生ごみ処理装置。
【請求項3】
前記ガイド材の生ごみ処理材接触側端部から上方に向かって空気通過用の複数のスリットが形成されていることを特徴とする、請求項2に記載の生ごみ処理装置。
【請求項4】
前記ガイド材が生ごみ処理槽内への給気側に近い第1のガイド板と当該第1のガイド板より生ごみ処理槽内からの排気側に近い第2のガイド板とから少なくとも構成され、前記第1のガイド板の下端が前記生ごみ処理槽内において上限値まで堆積した生ごみ処理材に接触しないように配置され、かつ前記第2のガイド板の下端が前記第1のガイド板の下端よりも前記生ごみ処理槽底部側に配置されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の生ごみ処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−289160(P2006−289160A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−109256(P2005−109256)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】