説明

生コンクリートの性状監視装置および生コンクリートの性状監視方法

【課題】アジテータ車のドラム内でアジテートされている生コンクリートの性状を監視する。
【解決手段】アジテータ車1が有するドラム3の回転軸と直交すると共に鉛直方向とも直交する直線と平行となるようにドラム3の開口部に設けられ、開口部3の一端から他端に渡るシャーシ部4a、4bと、水準器4cを有し、シャーシ部4a、4bを鉛直方向と直交する水平面上に位置決めする水準装置4dと、シャーシ部4a、4bに固定され、ドラム3内へレーザ光を照射するレーザ墨出し器4eと、シャーシ部4a、4bに固定され、ドラム3内の画像を撮影する撮像装置4fと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生コンクリートプラントから出荷され、アジテータ車のドラムでアジテートされながら運搬される生コンクリートの性状監視装置および性状監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、生コンクリートを製造工場から荷卸し地点である建設現場まで運搬するために、アジテータ車(生コンクリートミキサー車)が利用されている。生コンクリートは、運搬している間に、外気温などの環境条件や使用材料の違いによって、フレッシュ性状が変化することが分かっているため、予め運搬中の生コンクリートの性状の変化を予測して、出荷時に配合修正が行なわれている。そして、現場でスランプコーンを用いたスランプ試験を行ない、運搬中の生コンクリートの性状の変化が許容範囲にあるかどうかを確認する作業が行なわれている。そして、許容範囲を超えた変化が認められた場合には、工場に連絡し、改めて出荷時の配合修正を行なうこととしている。
【0003】
また、特開2006−159658号公報(特許文献1)には、複数のアジテータ車の生コンクリートのコンシステンシーや材料分離抵抗性などの性状を、出荷管理事務所にて一括してリアルタイムに管理するための生コンクリート品質管理装置が開示されている。この生コンクリート品質管理装置では、アジテータ車に、ドラム内の生コンクリートの動きや付着具合を撮影するテレビカメラと、この画像データを含む生コンクリート管理情報を出荷管理事務所のサーバに送信する送信端末を設ける。一方、出荷管理事務所のサーバは、複数のアジテータ車より送信されてくる生コンクリート管理情報を受信する受信端末と、この生コンクリート管理情報を表示するモニタとを備えている。そして、出荷管理事務所の管理者がモニタに映し出される撮影画像等の生コンクリート管理情報を見て、各アジテータ車の生コンクリートのコンシステンシーや材料分離抵抗性などの性状が目標性状と適合しているかどうかを判定する。
【0004】
なお、コンシステンシー(consistency)とは、まだ固まらない生コンクリートの性質の種類で、主として水量の多少による柔らかさの程度を意味するものである。通常、スランプの値によって表す。コンシステンシーは、スランプの値が作業に適する範囲で出来る限り小さいものでなければならないとされている。
【特許文献1】特開2006−159658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来、スランプコーンを用いたスランプ試験を行なう場合、試験の精度を確保するためには熟練した技術者が試験を行なう必要があると共に、打設現場へ出向き試験を実施するため、人件費がかかってしまう。また、試験結果を工場での配合修正に反映させる時間もかかることとなり、次のアジテータ車の出発までに時間を要してしまう。さらに、熟練した技術者が減少していると共に、運搬業務の分業化により、スランプ試験を行なうための技術者を確保することも容易ではなくなってきている。さらに、混和剤を使用する場合のように、材料が多様化すると共に、フライアッシュや再生骨材などの廃棄物を利用した特殊生コンクリートも増加してきているため、生コンクリートの性状を監視する体制を整えることは容易ではない。また、生コンクリート打設現場において、生コンクリートの性状を十分に把握できなかった場合は、信頼性およびブランドイメージの低下を招くと共に、施工・製造工程の遅延、さらにはいわゆる「戻りコン」などの廃棄物が増加してしまう。このように、従来の手法では、出荷から生コンクリートの打設までに、効率化を図る余地が多く存在している。
【0006】
また、上記特許文献1記載の技術では、テレビカメラでアジテータ車のドラム内を撮影し、それを出荷管理事務所のモニタに表示するものであるが、生コンクリートの性状を把握するためには、回転するドラム内を流動する生コンクリートの動きや、ドラム内壁への付着具合などを目視すればその生コンクリートのコンシステンシーがおおよそ判断できる管理者がいなければならない。特許文献1記載の技術では、熟練技術者の減少から生ずる課題を解決することは容易ではない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、アジテータ車のドラム内でアジテートされている生コンクリートの性状を監視する生コンクリートの性状監視装置および生コンクリートの性状監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の生コンクリートの性状監視装置は、アジテータ車が有するドラムの開口部で鉛直方向と直交する水平面上に位置決めされ、前記ドラム内へレーザ光を照射するレーザ墨出し器と、前記ドラム内の画像を撮影する撮像装置と、を備え、前記撮像装置は、レーザ光および前記ドラム内の生コンクリート表面を撮影することを特徴としている。
【0009】
このように、アジテータ車が有するドラムの開口部で鉛直方向と直交する水平面上に位置決めされたレーザ墨出し器から、前記ドラム内へレーザ光を照射し、撮像装置によってドラム内の画像を撮影する。この場合、撮像装置は、レーザ光および前記ドラム内の生コンクリート表面を撮影するので、撮影した画像中に基準線を表わすことが可能となる。すなわち、レーザ墨出し器が水平面上に位置決めされているため、画像中に正確な水平線や垂直線を表わすことができる。また、生コンクリートは、ドラムが回転しているときにはその性状によって、表面が水平線から一定の角度を有するようになる。撮影した画像中には正確な水平線または垂直線を表わすことができるので、画像を表示装置で表示することによって、生コンクリートの表面と水平線とのなす角度を容易に求めることができる。また、ドラムが回転しているときは、生コンクリートの表面の形状(例えば、凹凸の高さまたは深さ)もその性状に応じて変化する。撮影した画像中には正確な水平線または垂直線を表わすことができるので、画像を表示装置で表示することによって、生コンクリートの表面の形状を容易に把握することが可能となる。これにより、生コンクリートのコンシステンシーを特定することが可能となる。
【0010】
(2)また、本発明の生コンクリートの性状監視装置は、アジテータ車が有するドラムの回転軸と直交すると共に鉛直方向とも直交する直線と平行となるように前記ドラムの開口部に設けられ、前記開口部の一端から他端に渡るシャーシ部と、水準器を有し、前記シャーシ部を鉛直方向と直交する水平面上に位置決めする水準装置と、前記シャーシ部に固定され、前記ドラム内へレーザ光を照射するレーザ墨出し器と、前記ドラム内の画像を撮影する撮像装置と、を備え、前記撮像装置は、レーザ光および前記ドラム内の生コンクリート表面を撮影することを特徴としている。
【0011】
このように、シャーシ部を鉛直方向と直交する水平面上に位置決めし、そのシャーシ部に固定されたレーザ墨出し器によってドラム内へレーザ光を照射し、撮像装置によってドラム内の画像を撮影する。この場合、撮像装置は、レーザ光および前記ドラム内の生コンクリート表面を撮影するので、撮影した画像中に基準線を表わすことが可能となる。すなわち、レーザ墨出し器が水平面上に位置決めされているため、画像中に正確な水平線や垂直線を表わすことができる。また、生コンクリートは、ドラムが回転しているときにはその性状によって、表面が水平線から一定の角度を有するようになる。撮影した画像中には正確な水平線または垂直線を表わすことができるので、画像を表示装置で表示することによって、生コンクリートの表面と水平線とのなす角度を容易に求めることができる。そして、生コンクリートのコンシステンシーと、生コンクリートの表面と水平線とのなす角度とを予め対応付けておくことによって、画像に基づいて生コンクリートの表面と水平線とのなす角度を計測することにより、容易に生コンクリートのコンシステンシーを特定することが可能となる。また、ドラムが回転しているときは、生コンクリートの表面の形状(例えば、凹凸の高さまたは深さ)もその性状に応じて変化する。従って、生コンクリートのコンシステンシーと、生コンクリートの表面の形状とを予め対応付けておくことによって、画像に基づいて生コンクリートの表面の形状を把握することができ、容易に生コンクリートのコンシステンシーを特定することが可能となる。また、撮影した画像を電子データとして遠隔地へ送信することによって、技術者がスランプ試験のために生コンクリート打設現場へ出向く必要がなくなる。その結果、人件費の削減を図ることが可能となる。
【0012】
(3)また、本発明の生コンクリートの性状監視装置において、前記シャーシ部は、前記ドラムの開口部に固定される第1シャーシ部と、前記ドラムの回転軸と直交すると共に鉛直方向とも直交する直線と平行な回転軸で回転可能な第2シャーシ部と、前記第2シャーシ部の回転面上で前記第2シャーシ部を固定する固定装置と、を備え、前記レーザ墨出し器および前記撮像装置は、前記第2シャーシ部に固定されていることを特徴としている。
【0013】
このように、第2シャーシ部が、ドラムの回転軸と直交すると共に鉛直方向とも直交する直線と平行な回転軸で回転可能であるので、不使用時に折りたたむことが可能となる。これにより、本装置の不使用時に体裁よく保管することができると共に、使用状態への準備が容易となる。
【0014】
(4)また、本発明の生コンクリートの性状監視装置において、前記第2シャーシ部に固定され、前記ドラム内へ投光する照明装置を更に備えることを特徴としている。
【0015】
このように、ドラム内へ投光することができるので、レーザ光および生コンクリートを鮮明に撮影することが可能となる。
【0016】
(5)また、本発明の生コンクリートの性状監視装置において、前記第2シャーシ部に固定され、前記ドラム内の生コンクリートの温度を測定する照射温度計を更に備えることを特徴としている。
【0017】
このように、生コンクリートの温度を測定することができるので、温度情報も性状判断に使用することが可能となる。その結果、生コンクリートの性状をより正確に特定することが可能となる。
【0018】
(6)また、本発明の生コンクリートの性状監視方法は、アジテータ車が有するドラムの開口部で鉛直方向と直交する水平面上に位置決めしたレーザ墨出し器から前記ドラム内へレーザ光を照射し、撮像装置を用いて前記ドラム内の画像を撮影し、前記撮影した画像を表示装置に表示し、前記表示された画像におけるレーザ光とアジテータ車のドラム内の生コンクリート表面とのなす角度、または生コンクリート表面の形状に基づいて、前記ドラム内の生コンクリートのコンシステンシーを特定することを特徴としている。
【0019】
このように、アジテータ車が有するドラムの開口部で鉛直方向と直交する水平面上に位置決めされたレーザ墨出し器から、前記ドラム内へレーザ光を照射し、撮像装置によってドラム内の画像を撮影する。この場合、前記撮像装置は、レーザ光および前記ドラム内の生コンクリート表面を撮影するので、撮影した画像中に基準線を表わすことが可能となる。すなわち、レーザ墨出し器が水平面上に位置決めされているため、画像中に正確な水平線や垂直線を表わすことができる。また、生コンクリートは、ドラムが回転しているときにはその性状によって、表面が水平線から一定の角度を有するようになる。撮影した画像中には正確な水平線または垂直線を表わすことができるので、画像を表示装置で表示することによって、生コンクリートの表面と水平線とのなす角度を容易に求めることができる。また、ドラムが回転しているときは、生コンクリートの表面の形状(例えば、凹凸の高さまたは深さ)もその性状に応じて変化する。撮影した画像中には正確な水平線または垂直線を表わすことができるので、画像を表示装置で表示することによって、生コンクリートの表面の形状を容易に把握することが可能となる。これにより、生コンクリートのコンシステンシーを特定することが可能となる。
【0020】
(7)また、本発明の生コンクリートの性状監視方法は、前記表示された画像におけるレーザ光とアジテータ車のドラム内の生コンクリート表面とのなす角度、または生コンクリート表面の形状と、前記角度または生コンクリート表面の形状と一対一に対応付けられた生コンクリートのコンシステンシーとから構成されるテーブルを用いて、前記撮影した画像から前記ドラム内の生コンクリートのコンシステンシーを特定することを特徴としている。
【0021】
このように、生コンクリートのコンシステンシーと、生コンクリートの表面と水平線とのなす角度とを予め対応付けておくことによって、画像に基づいて生コンクリートの表面と水平線とのなす角度を計測することにより、容易に生コンクリートのコンシステンシーを特定することが可能となる。また、ドラムが回転しているときは、生コンクリートの表面の形状(例えば、凹凸の高さまたは深さ)もその性状に応じて変化する。従って、生コンクリートのコンシステンシーと、生コンクリートの表面の形状とを予め対応付けておくことによって、画像に基づいて生コンクリートの表面の形状を把握することができ、容易に生コンクリートのコンシステンシーを特定することが可能となる。また、撮影した画像を電子データとして遠隔地へ送信することによって、技術者がスランプ試験のために生コンクリート打設現場へ出向く必要がなくなる。その結果、人件費の削減を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、アジテータ車が有するドラムの開口部で鉛直方向と直交する水平面上に位置決めされたレーザ墨出し器から、前記ドラム内へレーザ光を照射し、撮像装置によってドラム内の画像を撮影する。この場合、撮像装置は、レーザ光および前記ドラム内の生コンクリート表面を撮影するので、撮影した画像中に基準線を表わすことが可能となる。すなわち、レーザ墨出し器が水平面上に位置決めされているため、画像中に正確な水平線や垂直線を表わすことができる。また、生コンクリートは、ドラムが回転しているときにはその性状によって、表面が水平線から一定の角度を有するようになる。撮影した画像中には正確な水平線または垂直線を表わすことができるので、画像を表示装置で表示することによって、生コンクリートの表面と水平線とのなす角度を容易に求めることができる。また、ドラムが回転しているときは、生コンクリートの表面の形状(例えば、凹凸の高さまたは深さ)もその性状に応じて変化する。撮影した画像中には正確な水平線または垂直線を表わすことができるので、画像を表示装置で表示することによって、生コンクリートの表面の形状を容易に把握することが可能となる。これにより、生コンクリートのコンシステンシーを特定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態に係るアジテータ車は、生コンクリートの性状監視装置を備えており、生コンクリートプラントから出荷され、アジテータ車のドラムでアジテートされながら運搬される生コンクリートの性状を監視することができるように構成されている。
【0024】
図1は、本実施形態に係るアジテータ車の概略構成を示す側面図である。アジテータ車1は、運転席、エンジン等の動力部、シャーシ、タイヤ、および燃料タンクなどから構成される車両本体2と、生コンクリートをアジテートするドラム3とを備えている。さらに、ドラム3の開口端部には、生コンクリートの性状を監視するための監視装置4が設けられている。なお、図1において、紙面の上から下へ向かう方向をz軸方向(鉛直方向)とし、また、紙面の右から左へ向かう方向、すなわち、鉛直方向と直交すると共にドラム3の回転軸と同一平面上にあるベクトルの方向をx軸方向と定めるものとする。
【0025】
図2は、監視装置4の平面図である。図2は、z軸方向から監視装置を見た場合の図であり、紙面の上側がx軸方向である。また、図3は、監視装置4の正面図である。図3は、x軸方向と反対側から監視装置4を見た場合の図であり、紙面の下側がz軸方向である。第1シャーシ部4aは、ドラム3の回転軸dと直交すると共に鉛直方向とも直交する直線eと平行となるようにドラム3の開口部3aに設けられる。第1シャーシ部4aは、開口部3aの一端から他端に渡るように開口部3aに設置される。なお、開口部3aは、ホッパに該当する。第2シャーシ部4bは、ドラム3の回転軸dと直交すると共に鉛直方向とも直交する直線eと平行な回転軸4b−1で回転可能に第1シャーシ部4aに接続されている。
【0026】
第1シャーシ部4aには、水準器4cと、この水準器4cに基づいて、第1シャーシ部4aを鉛直方向と直交する水平面上に位置決めする水準装置4dとが設けられている。水準装置4dは、左右に一つずつ設けられており、例えば、ネジ式のものを用いることができる。技術者は、水準器4cを参照しながら水準装置4dのネジを調節して第1シャーシ部4aの水平位置を決定する。レーザ墨出し器4eは、第2シャーシ部4bに固定されており、ドラム3内へレーザ光を照射する。また、撮像装置4fは、第2シャーシ部4bに固定されており、ドラム3内の画像を撮影する。なお、撮像装置4fは、撮影した画像を記録する記録装置(メモリカード)が着脱可能となっている。また、固定装置4gは、第2シャーシ部4bの回転面上で第2シャーシ部4bを固定する。さらに、第2シャーシ部4bには、ドラム3内へ投光する照明装置4hと、ドラム3内の生コンクリートの温度を測定する照射温度計4iが固定されている。これらのレーザ墨出し器4e、撮像装置4f、照明装置4h、および照射温度計4iは、すべて電池(バッテリ)で駆動可能であるため、外部電源や配線は不要である。
【0027】
図3に示すように、これらのレーザ墨出し器4e、撮像装置4f、照明装置4h、および照射温度計4iは、第2シャーシ部4bによって、生コンクリートの積み込み口となるドラム開口部3bのほぼ中央に位置付けられ、撮像装置4fはドラム3内の画像を撮影することができるように構成されている。
【0028】
図4は、本実施形態に係る監視装置4の側面図であり、図1において点線で囲まれた部分を拡大して表わしている。第2シャーシ部4bは、回転軸4b−1を中心に図中に示した矢印の方向に自由に回転することが可能である。図4は、監視装置4の使用状態の位置を示している。図5は、監視装置4の不使用時の状態を示す側面図である。図5に示すように、監視装置4は、不使用時には回転軸4b−1を中心に折りたたむことができる。なお、レーザ墨出し器4eを設ける代わりに、撮像装置4fのレンズに基準線を設けることによっても同様な効果を得ることが可能である。この場合は、撮像装置4fの水平位置を正確に決定する必要がある。
【0029】
次に、以上のように構成された本実施形態に係る生コンクリートの性状監視装置の動作について説明する。図6は、監視装置を備えたアジテータ車と生コンクリート製造管理装置の動作の概略を示したフローチャートである。図6に示すように、まず、生コンクリート製造管理装置では、生コンクリートを製造し、アジテータ車へ積み込みを行なう(ステップS1)。次に、アジテータ車は、生コンクリートの積み込みが終了すると建設現場へ向けて出荷する(ステップS2)。アジテータ車では、5〜8rpmの回転速度でドラムを回転させて、生コンクリートのアジテートが行なわれる。
【0030】
次に、アジテータ車では、生コンクリートの搬送途中、または現場に到着したときに、運転手または作業員が、監視装置4を開口部3a(ホッパ)にセットして、ドラム3内の撮影を行なう。(ステップS3)。この際、水準器4c、水準装置4dを用いて第1シャーシ部4aの水平位置を決定する。そして、レーザ墨出し器4e、撮像装置4f、照明装置4h、および照射温度計4iの電源を投入して、撮像装置4fによってドラム3内の撮影を行なう。レーザ墨出し器4eでは、生コンクリートのコンシステンシーの測定を精度よく行なうことができるようにするため、生コンクリートの表面に十字(井形)が描かれるようにレーザ光を照射すると良い。撮影の際、ドラム3の回転速度は、例えば、6rpmとする。また、動画を撮影する際の撮影時間は、20秒程度でよい。次に、撮像装置4fによって撮影された画像(動画または静止画)を、例えば、メモリーカードに記録し、携帯電話機の電子メール機能やデータアップロード機能などを用いて生コンクリート製造管理装置へ送信する(ステップS4)。なお、この場合の通信手段は、どのようなものであっても良い。例えば、ノート型PCなどの携帯情報端末を用いることが可能である。
【0031】
画像データを受信した生コンクリート製造管理装置では、画像データを表示装置の画面に表示し、生コンクリートのコンシステンシーを確認する(ステップS5)。図7は、監視装置4で撮影した画像の一例を示す図である。図7中、直線L1は、レーザ墨出し器4eが照射したレーザ光が撮影され、画面上に再現されたものである。また、直線L2は、生コンクリートの表面の凸部をトレースした補助線である。直線L1とL2との傾きは、24.5度であることが分かる。また、生コンクリートは、アジテートされることによって、表面が波状に連続した凹凸状態を呈するが、直線L2の間隔を測ることによって、生コンクリートの表面の凸部と凸部との距離を把握することができる。さらに、照射温度計4iの測定結果を加味して、生コンクリートのコンシステンシーを確認することが可能となる。
【0032】
例えば、図8は、スランプ試験におけるスランプ量(cm)と、図7に示す直線L1(レーザ墨出し器によるレーザ光)および生コンクリート表面の角度との対応関係を示す図である。縦軸は、図7に示す直線L1(レーザ墨出し器によるレーザ光)および生コンクリート表面の角度を示し、横軸は、スランプ試験におけるスランプ量を示している。また、表1では、これらの関係をテーブルとして表現している。このように、予めスランプ量と角度とを測定し、対応付けておくことによって、熟練した技術者でなくても生コンクリートのコンシステンシーを確認することが可能となる。なお、ステップS5において、必要に応じてスランプ試験を行なっても良い。
【0033】
【表1】

次に、生コンクリートの性状が適正であるかどうかを判断する(ステップS6)。適正である場合は、その旨を現場へ連絡する。一方、適正でない場合は、現場で対応可能であるかどうかを判断し(ステップS7)、対応可能である場合は、対応方法を現場へ連絡する。ステップS7において、現場で対応できない場合は、生コンクリートを持ち帰るよう指示する(ステップS8)。ステップS9において、生コンクリート製造管理装置では、配合を修正し、混和剤の増量または減量を行なって(ステップS10)、ステップS1へ移行する。
【0034】
一方、アジテータ車では、生コンクリート製造管理装置からの指示が適正であるかどうかを判断し(ステップS11)、適正である場合は、この処理を終了し、運搬してきた生コンクリートを打設する。また、適正でない場合は、戻り指示であったかどうかを判断し(ステップS12)、戻り指示でない場合は、現場にて調整を行なう(ステップS13)。この調整は、例えば、レオパック(ライオン社製)などの流動化剤を投入することによって行なわれる。一方、ステップS12において、戻り指示であった場合には、運搬してきた生コンクリートを打設せずに、持ち帰る。
【0035】
以上説明したように、本実施形態に係る監視装置によれば、第1シャーシ部4aを鉛直方向と直交する水平面上に位置決めし、第2シャーシ部4bに固定されたレーザ墨出し器4eによってドラム3内へレーザ光を照射し、撮像装置4fによってドラム3内の画像を撮影するので、撮影した画像中に基準線を表わすことが可能となる。すなわち、レーザ墨出し器4eが水平面上に位置決めされているため、画像中に正確な水平線や垂直線を表わすことができる。また、生コンクリートは、ドラム3が回転しているときにはその性状によって、表面が水平線から一定の角度を有するようになる。撮影した画像中には正確な水平線または垂直線を表わすことができるので、画像を表示装置で表示することによって、生コンクリートの表面と水平線とのなす角度を容易に求めることができる。
【0036】
そして、生コンクリートのコンシステンシーと、生コンクリートの表面と水平線とのなす角度とを予め対応付けておくことによって、画像に基づいて生コンクリートの表面と水平線とのなす角度を計測することにより、容易に生コンクリートのコンシステンシーを特定することが可能となる。また、ドラムが回転しているときは、生コンクリートの表面の形状(例えば、凹凸の高さまたは深さ)もその性状に応じて変化する。従って、生コンクリートのコンシステンシーと、生コンクリートの表面の形状とを予め対応付けておくことによって、画像に基づいて生コンクリートの表面の形状を把握することができ、容易に生コンクリートのコンシステンシーを特定することが可能となる。また、撮影した画像を電子データとして遠隔地へ送信することによって、熟練した技術者がスランプ試験のために生コンクリート打設現場へ出向く必要がなくなる。その結果、人件費の削減を図ることが可能となる。さらに、廃棄物の発生による経済的損失を回避すると共に、ブランドイメージの向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】アジテータ車の概略構成を示す側面図である。
【図2】監視装置の平面図である。
【図3】監視装置の正面図である。
【図4】監視装置の側面図である。
【図5】監視装置の側面図である。
【図6】本実施形態に係る生コンクリートの性状監視装置および生コンクリート製造管理装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】画像表示例を示す図である。
【図8】スランプ試験におけるスランプ量(cm)と、図7に示す直線L1(レーザ墨出し器によるレーザ光)および生コンクリート表面の角度との対応関係を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1 アジテータ車
2 車両本体
3 ドラム
3a 開口部(ホッパ)
3b ドラム開口部
4 監視装置
4a 第1シャーシ部
4b 第2シャーシ部
4b−1 回転軸
4c 水準器
4d 水準装置
4e レーザ墨出し器
4f 撮像装置
4g 固定装置
4h 照明装置
4i 照射温度計
d 回転軸
e 直線
L1 直線
L2 直線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アジテータ車が有するドラムの開口部で鉛直方向と直交する水平面上に位置決めされ、前記ドラム内へレーザ光を照射するレーザ墨出し器と、
前記ドラム内の画像を撮影する撮像装置と、を備え、
前記撮像装置は、レーザ光および前記ドラム内の生コンクリート表面を撮影することを特徴とする生コンクリートの性状監視装置。
【請求項2】
アジテータ車が有するドラムの回転軸と直交すると共に鉛直方向とも直交する直線と平行となるように前記ドラムの開口部に設けられ、前記開口部の一端から他端に渡るシャーシ部と、
水準器を有し、前記シャーシ部を鉛直方向と直交する水平面上に位置決めする水準装置と、
前記シャーシ部に固定され、前記ドラム内へレーザ光を照射するレーザ墨出し器と、
前記ドラム内の画像を撮影する撮像装置と、を備え、
前記撮像装置は、レーザ光および前記ドラム内の生コンクリート表面を撮影することを特徴とする生コンクリートの性状監視装置。
【請求項3】
前記シャーシ部は、前記ドラムの開口部に固定される第1シャーシ部と、
前記ドラムの回転軸と直交すると共に鉛直方向とも直交する直線と平行な回転軸で回転可能な第2シャーシ部と、
前記第2シャーシ部の回転面上で前記第2シャーシ部を固定する固定装置と、を備え、
前記レーザ墨出し器および前記撮像装置は、前記第2シャーシ部に固定されていることを特徴とする請求項2記載の生コンクリートの性状監視装置。
【請求項4】
前記第2シャーシ部に固定され、前記ドラム内へ投光する照明装置を更に備えることを特徴とする請求項3記載の生コンクリートの性状監視装置。
【請求項5】
前記第2シャーシ部に固定され、前記ドラム内の生コンクリートの温度を測定する照射温度計を更に備えることを特徴とする請求項3または請求項4記載の生コンクリートの性状監視装置。
【請求項6】
アジテータ車が有するドラムの開口部で鉛直方向と直交する水平面上に位置決めしたレーザ墨出し器から前記ドラム内へレーザ光を照射し、
撮像装置を用いて前記ドラム内の画像を撮影し、
前記撮影した画像を表示装置に表示し、
前記表示された画像におけるレーザ光とアジテータ車のドラム内の生コンクリート表面とのなす角度、または生コンクリート表面の形状に基づいて、前記ドラム内の生コンクリートのコンシステンシーを特定することを特徴とする生コンクリートの性状監視方法。
【請求項7】
前記表示された画像におけるレーザ光とアジテータ車のドラム内の生コンクリート表面とのなす角度、または生コンクリート表面の形状と、前記角度または生コンクリート表面の形状と一対一に対応付けられた生コンクリートのコンシステンシーとから構成されるテーブルを用いて、前記撮影した画像から前記ドラム内の生コンクリートのコンシステンシーを特定することを特徴とする請求項6記載の生コンクリートの性状監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−852(P2009−852A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−162324(P2007−162324)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【出願人】(504209655)国立大学法人佐賀大学 (176)
【Fターム(参考)】