説明

生コン打設用バイブレータ及びバイブレータホース

【課題】鉄筋が密に組まれているような場合であっても、型枠内に流し込まれた生コンに対して良好に振動を与えることができる生コン打設用バイブレータを提供する。
【解決手段】扁平形状のゴムホース26を主要素としたバイブレータホース12を、型枠内部に流し込んだ生コンK中に挿入し、バイブレータホース12内部への加圧エアの導入によりバイブレータホース12を軸直角方向に膨張させるとともにホース軸方向に収縮させ、エアの排出によりバイブレータホース12を軸直角方向に収縮させるとともにホース軸方向に伸長させ、それら膨張と収縮とを繰り返すことによって生コンKに振動を加えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生コン打設に際して型枠内部に流し込んだ生コンを流動化させたり内部のエアを抜くために生コンに振動を与える生コン打設用バイブレータ及びこれに用いるバイブレータホースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、生コンの打設に際して型枠内部に流し込んだ生コン(生コンクリート)に振動を与え、これにより生コンを流動化させたり、生コン中に混入しているエアを抜き出す(追い出す)ことが行われている。
このように型枠内部に流し込んだ生コンに振動を与えることで生コンを流動化させ得、これにより生コンを型枠内部の隅々にまで充填することができる。
また生コンに振動を与えることで、生コンに混入したエアを追い出し、エアが生コン中に混入したまま固まることによって生じる空洞の発生を防止することができる。
【0003】
従来、型枠内部に流し込んだ生コンに対し振動を与えるものとして、生コン中に挿入した振動体を高周波振動させる高周波バイブレータ(振動周波数は例えば200〜240Hz)が広く用いられている。
例えば下記特許文献1に、この種の生コン打設用の高周波バイブレータが開示されている。
【0004】
しかしながらこの高周波バイブレータの場合、鉄筋が密に組まれていると高周波バイブレータを高周波振動させても生コンを十分に流動化させられない問題がある。
例えば図7に示しているように地中深く150mにも達するような縦孔200を穿設する場合、孔壁を構成するコンクリート壁202はその強度を極めて強いものとする必要があり、そのためにこのようなコンクリート壁202には図7(B)に示しているように鉄筋204が密に組み込まれる。
【0005】
この場合鉄筋204と204とで囲まれた内部に高周波バイブレータを挿入して振動させても、その振動が鉄筋204を超えて他の鉄筋204と鉄筋204とで囲まれた内部の生コンまで十分に伝播せず、振動が速やかに減衰してしまって生コン全体が良好に振動せず、そのためたとえ高流動性の生コンを用いた場合であっても、生コンが十分に流動化せずに型枠内部への生コンの充填不足が生じたりエア抜きが不十分となってしまうのである。
【0006】
その原因は高周波振動の場合振幅が小さいことによるものと考えられ、従ってこうした場合には寧ろ作業者が棒を持ってこれを生コン中に押し込み、且つ突く動作を繰返し行う方が有効である。
但し孔壁200が大きい場合(例えば孔径が10mに達するような大きな場合)には極めて多数の作業者が同時に手に棒を持って並んで生コンを突っ付くといったことになり、実際にはこうしたことは実現困難である。
【0007】
そこで鉄筋204が密に組まれている場合であっても生コン全体を十分に振動させ得、これを良好に流動化させることのできる生コン打設用バイブレータが求められていた。
尚、本発明に対する先行技術として特許文献2に、扁平なゴムホースを用いたゴム膨張管ユニットについての発明が開示されている。
しかしながらこの特許文献2に開示のものは、ゴムホースを用いる点で本発明と共通しているがその用い方,構成において本発明とは異なったものである。
【0008】
【特許文献1】特開平10−292628号公報
【特許文献2】特開2005−104646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は以上のような事情を背景とし、鉄筋が密に組まれているような場合であっても、型枠内部に流し込まれた生コンに対して良好に振動を与えることができる生コン打設用バイブレータ及びこれに用いるバイブレータホースを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
而して請求項1は生コン打設用バイブレータに関するもので、ゴムホースを含んだバイブレータホースを、型枠内部に流し込んだ生コン中に挿入し、該バイブレータホース内部への流体の導入により該バイブレータホースをホース軸に対して軸直角方向に膨張させるとともにホース軸方向に収縮させ、該流体の排出により該バイブレータホースを該軸直角方向に収縮させるとともに該ホース軸方向に伸長させ、それら膨張と収縮とを交互に繰り返すことによって前記生コンに振動を与えるようになしてあることを特徴とする。
【0011】
請求項2はバイブレータホースに関するもので、型枠内部に流し込んだ生コン中に挿入されて該生コンに振動を与えるバイブレータホースであって、(a)ゴムホースと、(b)該ゴムホースの先端部を閉塞する状態に且つ前記ゴムホースからホース軸方向に突き出す状態に該先端部に装着された先端部材と、(c)該ゴムホースの該先端部と反対側の基端部に装着された、該ゴムホース内部への流体の導入口を有する端部部材と、を有しており、且つ該ゴムホースは自由形状状態で横断面形状が扁平形状をなしていることを特徴とする。
【0012】
請求項3のものは、請求項2において、前記先端部材が、横断面形状が円形で且つ先端に向って漸次小径化する形状をなしていることをことを特徴とする。
【0013】
請求項4のものは、請求項2,3の何れかにおいて、前記生コン中に吊下状態に縦向き且つ下向きに挿入されるバイブレータホースであって、前記先端部材が金属材料で構成されていて、該先端部材が錘を成していることを特徴とする。
【0014】
請求項5のものは、請求項2,3の何れかにおいて、前記生コン中に横向きに挿入されるバイブレータホースであって、前記ゴムホース内部においてホース軸方向に伸び、該ゴムホースを直線状に形状保持する剛性の芯体部材を備えていることを特徴とする。
【0015】
請求項6のものは、請求項5において、前記先端部材が樹脂材料で構成されていることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0016】
以上のように請求項1の生コン打設用バイブレータは、ゴムホースを含んだバイブレータホースを型枠内部に流し込んだ生コン中に挿入し、バイブレータホース内部への流体の導入によりバイブレータホースを軸直角方向に膨張,ホース軸方向に収縮させ、また流体の排出によりバイブレータホースを軸直角方向に収縮,ホース軸方向に伸長させ、それらを交互に繰り返すことによって生コンに振動を与えるようになしたものである。
【0017】
この請求項1の生コン打設用バイブレータでは、バイブレータホースを低周波(5〜10回/分)でゆっくりと且つ大きく軸直角方向に膨張及び収縮させることができ、またこれに伴ってバイブレータホースを軸方向にゆっくりと且つ大きく収縮及び伸長させることができる。
【0018】
そしてその繰返しにより、型枠内部の生コンに対し大きな振幅で軸直角方向とホース軸方向とに振動を与えることができ、鉄筋が密に組まれている場合であっても生コンを有効に流動化させ得て、型枠内部の隅々にまで生コンを充填することが可能となる。
また同時に、生コン中に混入しているエアをその大きな振動に伴って生コンから追い出し、抜き出すことが可能となる。
【0019】
請求項2は、この生コン打設用バイブレータに用いられるバイブレータホースについてのもので、ゴムホースと、その先端部を閉塞する状態に且つゴムホースからホース軸方向に突き出す状態に先端部に装着された先端部材と、反対側の基端部に装着された、ゴムホース内部への流体の導入口を有する端部部材とを含んでバイブレータホースを構成し、且つそのゴムホースを自由形状状態で横断面形状が扁平形状となるようにしたものである。
【0020】
請求項1の生コン打設用バイブレータにおけるバイブレータホースとしては、横断面形状が円形状をなすものを用いることも可能であるが、この請求項2に従ってゴムホースの横断面形状を扁平形状となした場合、内部に流体を導入してこれを軸直角方向に膨張させたとき、横断面形状が円形状をなすゴムホースに比べてより大きく、詳しくは扁平面と直角方向により大きくこれを膨張変形させることができ、従って横断面円形状のゴムホースを用いた場合に比べて生コンに対しより効果的に且つ大きな振動を与えることが可能となる。
【0021】
また横断面形状が円形状のゴムホースの場合、軸直角方向の膨張時に全外周面が均等に軸直角方向に膨張するが、この扁平形状のゴムホースの場合、軸直角方向の膨張時に扁平面の部分が他部に対して軸直角方向に大きく膨張し、ゴムホースの外周面が扁平面の部分と他部とで軸直角方向に不均等な動きを生ずる。
そしてその不均等な動きによって生コンを効果的に撹拌流動せしめることができ、生コンの流動を助長することができる。
【0022】
この請求項2のバイブレータホースではまた、ゴムホースの先端部に装着された先端部材が、ゴムホースからホース軸方向に突き出す状態に設けられており、従ってゴムホースがホース軸方向に伸縮する際、詳しくは収縮後に伸長する際、その先端部材によって生コン中にゴムホースが良好にホース軸方向に突き進む(突き込む)ことができる。
このときのゴムホース即ちバイブレータホースの動きは、あたかも作業者が棒を生コン中に突き込むのと同様な動きとなる。
【0023】
この場合においてその先端部材は、横断面形状が円形で且つ先端に向って漸次小径化する形状となしておくことができる(請求項3)。
この場合、先端部材は砲弾様形状となって抵抗少なく生コン中に突き進む(突き込む)ことができる利点が得られる。
【0024】
本発明のバイブレータホースは、生コン中に吊下状態に縦向き且つ下向きに挿入した状態で使用することができる。
この場合において上記先端部材を金属材料(好ましくは鉄材料)で構成し、かかる先端部材を錘として作用させるようになすことができる(請求項4)。
このようになした場合、ゴムホース(即ちバイブレータホース)のホース軸方向の伸長時に先端部が生コン中に突き進み易くなり、生コンに対して良好に縦方向に振動を加え、撹拌作用を及ぼすことが可能となる。
【0025】
本発明ではまた、バイブレータホースを生コン中に横向きに挿入して用いることもでき、この場合においてゴムホース内部でホース軸方向に伸び、ゴムホースを直線状に形状保持する剛性の芯体部材を備えておくことができる(請求項5)。
【0026】
このようにバイブレータホースを横向きに生コン内部に挿入してバイブレーション動作させる場合、ゴムホースの先端側が垂れ下がるような変形を生じてしまう恐れがある。
しかるにこの請求項5によれば、剛性の芯体部材による形状保持効果によって、そうした垂れ下がり変形を良好に防止でき、ゴムホース(バイブレータホース)を真っ直ぐに横向きに伸ばした状態でバイブレーション動作させることが可能となる。
【0027】
この場合において上記先端部材を樹脂材料にて構成しておくことができる(請求項6)。
バイブレータホースを横向きで使用する場合、先端部が重いと先端側が垂れ下がり易くなるが、この請求項6に従って先端部材を軽い樹脂材料で構成しておくことで、そうした不都合を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は本実施形態の生コン打設用バイブレータ(以下単にバイブレータとする)で、複数のバイブレータホース12を有している。
バイブレータホース12はバイブレータ10の主要素をなすもので、このバイブレータホース12は、型枠内部に流し込まれた生コン中に挿入され、自身のバイブレーション動作によって生コンに振動を与える。
【0029】
14は流体(ここではエア)の供給源であるエアコンプレッサで、16はこのエアコンプレッサ14で生ぜしめられた加圧エアを各バイブレータホース12へと供給する供給路である。
この供給路16上には、加圧エアの圧力を制御する圧力制御機18,バイブレータホース12への単位時間当りの加圧エアの導入回数即ちバイブレータホース12内部に対する加圧回数を調整し、その振動数を調整する振動数調整機20,バイブレータホース12内を加圧及び減圧する加圧・減圧機22が設けられている。
【0030】
供給路16からは複数の分岐路16Aが分岐しており、その分岐部に、加圧エアを各バイブレータホース12に分配する分配機24が設けられている。
ここで分配機24はエアコンプレッサ14で生じた加圧エアを各バイブレータホース12に分配する。
分配機24は加圧・減圧機22で生じた減圧も分配し、各バイブレータホース12の内部を加圧エアの排出によって減圧する。
【0031】
図2は、生コン内に吊下状態に縦向き且つ下向きに挿入されるバイブレータホース12を示したもので、26はその主要素をなすゴムホースである。
ゴムホース26は内面ゴム層28と、補強層30と、外面ゴム層32との積層構造をなしている。
ここで内面ゴム層28,補強層30,外面ゴム層32は一体に加硫接着されている。
また補強層30は化学繊維からなる補強糸を編組(ブレード編組,スパイラル編組)して構成してある。
【0032】
ゴムホース26の先端部、即ち図中右端部には先端部材34が装着され、この先端部材34によってゴムホース26の先端部が閉塞されている。
この実施形態において、先端部材34は重量の重い金属材料(ここでは鉄材料)で構成されており、かかる先端部材34が錘として働くようになしてある。
【0033】
この先端部材34は、嵌入部36と突出し部38とからなっており、その嵌入部36がゴムホース26の先端部に嵌入され、固定されている。
嵌入部36の外周面には断面形状が鋸歯形状をなす係合歯40が形成されており、この係合歯40がゴムホース26の内面に喰い込むことによって、先端部材34がゴムホース26から抜け防止されている。
【0034】
突出し部38は、ゴムホース26の先端部から図中右方即ちホース軸方向に突き出している。
この突出し部38は全体形状が砲弾様形状、詳しくは横断面形状が円形状をなし且つ図中右方即ち先端に進むにつれて漸次小径化する形状をなしている。ここでは先端が丸味形状をなしている。
ゴムホース26の先端部には、金属製の締付スリーブ42が外挿されており、この締付スリーブ42が縮径方向に締め付けられることで、先端部材34とゴムホース26の先端部とが強固に固定状態とされている。
【0035】
ゴムホース26の図中左端部、即ち上記先端部とは反対側の基端部には金属製の端部部材44が装着されている。
この端部部材44は円筒部46を有していて、この円筒部46がゴムホース26の基端部に嵌入されている。
この端部部材44においても、円筒部46の外周面に断面形状が鋸歯形状をなす係合歯40が形成されており、この係合歯40がゴムホース26の内面に喰い込むことによって、端部部材44がゴムホース26から抜け防止されている。
【0036】
ゴムホース26の基端部においても金属製の締付スリーブ42が外挿されており、その締付スリーブ42が縮径方向に締め付けられることによって端部部材44がゴムホース26の基端部に強固に固定状態とされている。
この端部部材44はカプラ48を備えており、そのカプラ48がゴムホース26の基端部から図中左方に突出せしめられている。
尚、端部部材44には中心部に加圧エアの導入口50が備えられている。ゴムホース26内部即ちバイブレータホース12内部への加圧エアの導入はこの導入口50を通じて行われる。
【0037】
この実施形態において、ゴムホース26は長さLが約1mである。
またゴムホース26は、成形時の形状即ち自由形状の状態で、軸方向両端部の一部を除いた大部分、即ち先端部材34及び端部部材44近傍の一部を除いたほぼ全体部分が横断面扁平形状をなしている。
具体的にはここでは図2(B)に示す厚み寸法Tが15mmであるのに対し、幅寸法Wが80mmとされている。
尚本発明において、ゴムホース26は少なくとも幅寸法Wに対し厚み寸法Tが15mm以下になるような扁平形状となしておくことが望ましい。
【0038】
図3は、型枠内部に流し込まれた生コン内に横向きに挿入されて使用されるバイブレータホースを示したもので、この図3のバイブレータホース12では、ゴムホース26内においてホース軸方向に伸びるプレート状の金属製の剛性の芯体部材52が備えられている。
ここで芯体部材52は、図3(B)に示しているように図中左端部が金属製の端部部材44の円筒部46に固定され一体化されている。
【0039】
この横向きで使用される図3のバイブレータホース12の場合、図2に示すのと同様の形状の先端部材34を備えているが、ここではかかる先端部材34が樹脂材料で構成され、かかる先端部材34が軽量のものとされている。
【0040】
またこの図3に示すバイブレータホース12では、芯体部材52がゴムホース26内部に設けられていることから、成形時の形状即ち自由形状の状態で厚み寸法Tが図2に示すバイブレータホース12よりも若干厚くなっている。
尚、他の構成については図2に示したバイブレータホース12と同様であり、対応する部分に符号のみを記して詳しい説明は省略する。
【0041】
図4は、バイブレータホース12のバイブレーション動作の際の作用を表している。
図2及び図3に示しているように、バイブレータホース12はゴムホース26の略全体が自由形状時において扁平形状をなしている。
この状態の下で導入口50を通じて内部に加圧エアを導入すると、バイブレータホース12が、詳しくはゴムホース26が内部からの加圧により形状変化する。
詳しくは、図4の(I)(A)と(II)(A)との比較から分るように、加圧エアの導入によりゴムホース26が軸直角方向に膨張し、膨張後において横断面形状が円形状となる。
このときゴムホース26は扁平面と直角方向に最も大きく軸直角方向に膨張し、幅方向の両端部分ではそれほど軸直角方向に膨張変化しないか又は場合によって軸直角方向に僅かに小寸法化する。
【0042】
扁平面以外の部分即ち図4(I)(A)中幅方向の両端部分が軸直角方向に膨張するか否かはゴムホース26内部に導入される加圧エアの圧力、つまりゴムホース26の膨張量によって定まる。
何れにしても加圧エアの導入によるゴムホース26の膨張変形によって内部の横断面の面積は大きく拡大し、その分ゴムホース26即ちバイブレータホース12周りの生コンは軸直角方向に大きく排除される。
【0043】
一方図4(II)に示す状態、即ち内部に加圧エアを導入し、ゴムホース26を軸直角方向に膨らませた状態から、次に内部のエアを排出すると、ゴムホース26は自身の弾性による復元力で元の形状に戻り、このときゴムホース26は軸直角方向に収縮変形する一方で、ホース軸方向に伸長変形する。
【0044】
尚ゴムホース26内部の加圧エアを排出してゴムホース26を原形状に復元する際、単に内部のエアを自然排出させるだけでなく、場合によって強制的に内部のエアを吸引排出するようになすこともできる。
この場合には、ゴムホース26の有する復元力に加えて、外部からの強制的な復元力が加わることとなり、生コンの内部においてゴムホース26が生コンの抵抗力に拘らず強制的に図4(I)(B)に示す原形状の長さに復帰し、その際に先端部が生コンに対してホース軸方向に突き込まれる。
【0045】
バイブレータホース12に対し、以上のようにして加圧エアの導入と排出とを交互に所定周期で行うと、バイブレータホース12は軸直角方向においては図4(I)(A)に示す形状と、図4(II)(A)に示す形状との間で交互に且つ繰返し変形を生じ、またホース軸方向においては図4(I)(B)に示す形状と、図4(II)(B)に示す形状との間で交互に且つ周期的に形状変化し、かかるバイブレータホース12がその周期的な加圧エアの導入と排出とによってバイブレーション動作を行う。そしてそのことによって、型枠内部に流し込まれた生コンに対し大きな振幅で且つゆっくりとした大きな振動を与える。
尚この実施形態では、1分間に5回〜10回程度の周期でバイブレータホース12が膨張と収縮とを交互に繰り返すように、加圧エアの供給と排出即ち内部加圧と減圧とが行われる。
【0046】
図5,図6は生コン内部での上記図2に示すバイブレータホース12,図3に示すバイブレータホース12の実際の作用を表わしたものである。
但し図5は図2に示すバイブレータホース12による作用を、図6は図3に示すバイブレータホース12による作用をそれぞれ表している。
【0047】
図5は図2のバイブレータホース12を吊下状態で縦向き且つ下向きに生コンK中に挿入し(図5中54は例えば60〜100mmピッチで密に組まれた鉄筋を示している)、加圧エアの供給と排出とによって即ち内部加圧と減圧とによってこれを膨張・収縮させ、バイブレータホース12をバイブレーション動作させたときの作用を表したもので、図5(I)に示している原形状の扁平形状にあるバイブレータホース12を、加圧エアの導入により図5(II)に示すように形状変化させることで、バイブレータホース12の周りの生コンが軸直角方向に押し出される。
また内部の減圧によりバイブレータホース12を図5(II)に示す状態から図5(I)に示す状態に軸方向に伸長することで、バイブレータホース12が図中下向きに突き出され、生コンKが下向きに押し出される。
【0048】
そしてその繰返しによって、生コンKに対し軸直角方向とホース軸方向とに振動が加えられる。
尚バイブレータホース12の先端部には重量の重い砲弾様の金属製の先端部材34が装着されているため、バイブレータホース12が生コンK内でホース軸伸長する際、抵抗少なく伸長動作し得て生コンK内に先端部を突き込むことができ、生コンKに対して効果的にホース軸方向に振動を加えることができる。
【0049】
一方、図6に示すように図3に示すバイブレータホース12を生コンK内部に横向きに挿入し(このときには基端側を固定状態としておく)、その状態で内部加圧と減圧とを周期的に交互に繰り返した場合においても、バイブレータホース12周りの生コンに対して軸直角方向(ここでは上下方向)と、ホース軸方向(ここでは横方向である図中左右方向)とに振動が加えられる。
【0050】
尚横向きで用いられる図3のバイブレータホース12にあっては、先端部材34が軽量の樹脂材料で構成されているため、更にはこの図3のバイブレータホース12においては、その内部にプレート状の芯体部材52が配設され、かかる芯体部材52によってバイブレータホース12が直線状に形状保持されるため、先端側が垂れ下がりを生じるのが良好に抑制される。
【0051】
以上のように本実施形態によれば、バイブレータホース12を低周波(5〜10回/分)でゆっくりと且つ大きく軸直角方向に交互に膨張及び収縮させるとともに、併せてホース軸方向に収縮及び伸長させることで、型枠内部の生コンに対し大きな振幅で軸直角方向とホース軸方向とに振動を加えることができる。
【0052】
従って鉄筋が密に組まれている場合であっても、生コンを有効に流動化させ得て、型枠内部の隅々にまで生コンを充填することが可能となる。
また同時に、生コン中に混入しているエアをその大きな振動に伴って生コンから追い出し、抜き出すことが可能となる。
【0053】
また本実施形態のバイブレータホース12は、ゴムホース26の横断面形状が扁平形状となしてあるため、横断面円形状のゴムホースを用いた場合に比べて軸直角方向及びホース軸方向にバイブレータホース12を大きく膨張・収縮させることができ、生コンに効果的に大きな振動を与えることができる。
【0054】
本実施形態のバイブレータホース12ではまた、ゴムホース26の先端部に先端部材34がホース軸方向に突出状態で装着されているため、且つそのその先端部材34が砲弾様形状をなしているため、バイブレータホース12が収縮状態から伸長する際に、その先端部材34によってバイブレータホース12が生コン中に良好に突き進む(突き込む)ことができる。
【0055】
また生コンK中に吊下状態に縦向き且つ下向きに挿入状態で使用される図2のバイブレータホース12にあっては、先端部材34が金属材料(好ましくは鉄材料)で構成されているため、これを錘として働かせることができる。
【0056】
一方生コンK中に横向きに挿入して用いられる図3のバイブレータホース12にあっては、ゴムホース26を直線状に形状保持する剛性の芯体部材52が備えられているため、ゴムホース26の先端側が垂れ下がり変形してしまうのを、芯体部材52による形状保持効果によって良好に防止でき、バイブレータホース12を真っ直ぐに横向きにした状態でバイブレーション動作させることができる。
更にこの場合において先端部材34は軽量な樹脂材料にて構成してあるため、先端側の垂下りをより良好に防止することができる。
【0057】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれらはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態である生コン打設用バイブレータの図である。
【図2】同バイブレータにおける縦向き使用のバイブレータホースの図である。
【図3】同バイブレータにおける横向き使用のバイブレータホースの図である。
【図4】図2のバイブレータホースの動作の説明図である。
【図5】図2のバイブレータホースを生コン内で使用したときの実際の作用説明図である。
【図6】図3のバイブレータホースを生コン内で使用したときの実際の作用説明図である。
【図7】本発明の背景説明のための説明図である。
【符号の説明】
【0059】
10 生コン打設用バイブレータ
12 バイブレータホース
26 ゴムホース
34 先端部材
44 端部部材
50 導入口
52 芯体部材
K 生コン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムホースを含んだバイブレータホースを、型枠内部に流し込んだ生コン中に挿入し、該バイブレータホース内部への流体の導入により該バイブレータホースをホース軸に対して軸直角方向に膨張させるとともにホース軸方向に収縮させ、該流体の排出により該バイブレータホースを該軸直角方向に収縮させるとともに該ホース軸方向に伸長させ、それら膨張と収縮とを交互に繰り返すことによって前記生コンに振動を与えるようになしてあることを特徴とする生コン打設用バイブレータ。
【請求項2】
型枠内部に流し込んだ生コン中に挿入されて該生コンに振動を与えるバイブレータホースであって
(a)ゴムホースと
(b)該ゴムホースの先端部を閉塞する状態に且つ前記ゴムホースからホース軸方向に突き出す状態に該先端部に装着された先端部材と
(c)該ゴムホースの該先端部と反対側の基端部に装着された、該ゴムホース内部への流体の導入口を有する端部部材と
を有しており、且つ該ゴムホースは自由形状状態で横断面形状が扁平形状をなしていることを特徴とするバイブレータホース。
【請求項3】
前記先端部材が、横断面形状が円形で且つ先端に向って漸次小径化する形状をなしていることをことを特徴とする請求項2に記載のバイブレータホース。
【請求項4】
前記生コン中に吊下状態に縦向き且つ下向きに挿入されるバイブレータホースであって、前記先端部材が金属材料で構成されていて、該先端部材が錘を成していることを特徴とする請求項2,3の何れかに記載のバイブレータホース。
【請求項5】
前記生コン中に横向きに挿入されるバイブレータホースであって、前記ゴムホース内部においてホース軸方向に伸び、該ゴムホースを直線状に形状保持する剛性の芯体部材を備えていることを特徴とする請求項2,3の何れかに記載のバイブレータホース。
【請求項6】
前記先端部材が樹脂材料で構成されていることを特徴とする請求項5に記載のバイブレータホース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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