説明

生ゴミ処理装置

【課題】 生ゴミなどの固体成分を積極的に分解処理することで、従来のような固液分離装置やコンポスト装置の設置を不要とし、生ゴミ処理装置のコンパクト化及び簡易な処理手段を実現するものである。
【解決手段】 ディスポーザで粉砕された生ごみを含む排水を一旦貯留する流量調整槽8と、貯留された固体成分を含む排水を曝気処理する連続する複数の接触曝気槽9と、曝気処理された処理水に含まれる汚泥と上澄み水とを分離する沈殿槽10と、記沈殿槽10に堆積した汚泥を移し替えるシーディング剤培養槽11と、このシーディング剤培養槽内の汚泥の一部を流量調整槽に戻す返送配管56とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人住宅や集合住宅などの台所から出る生ゴミをディスポーザで粉砕した後、排水と共に浄化処理する生ゴミ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の生ゴミ処理装置として特許文献1に開示の技術が知られている。この生ゴミ処理槽は、ディスポーザにより粉砕された生ゴミと台所排水との混合物を固体分と液体分とに分離する固液分離装置と、分離された固体分を堆肥にするためのコンポスト装置と、ディスポーザから出た前記混合物および固液分離装置より分離された液体分を一旦溜めるための流量調整槽と、この流量調整槽を出た液体分に生物処理を施して処理水及び汚泥を得るための処理槽とを備えたものである。
【0003】
ディスポーザにより粉砕された生ゴミと台所排水との混合物は、まず流量調整槽に入れて溜められる。この混合物は流量調整槽で沈殿物と懸濁物と液体分とに分けられたのち固液分離装置に移され、分離された固体分はコンポスト装置に入り、液体分は再び流量調整槽に戻される。このように、流量調整槽と固液分離装置との間における循環を繰り返すことによって、固液分離装置に入る1回当たりの混合物の量を減らすことが可能となり、固液分離装置およびコンポスト装置の小型化を図るとともに、良好な固液分離の実現を可能としている。
【0004】
しかしながら、上記従来の生ゴミ処理装置にあっては、ディスポーザからの粉砕生ゴミと排水との混合物を固体分と液体分とに分離し、固体分はコンポスト装置で堆肥にし、液体分のみ生物処理を施すものであるために、固液分離装置やコンポスト装置を処理装置本体とは別に設置する必要があり、処理装置全体が大型化してしまうなどの問題があった。
【特許文献1】特開平11−104601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、固体成分の分解処理能力を上げることで固体成分も積極的に分解し、従来のような固液分離装置やコンポスト装置の設置を不要とし、生ゴミ処理装置のコンパクト化及び簡易な処理を実現するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、本発明に係る生ゴミ処理装置は、ディスポーザで粉砕された生ごみを含む排水を一旦貯留する流量調整槽と、貯留された生ゴミを含む排水を曝気処理する連続する複数の接触曝気槽と、曝気処理された処理水に含まれる汚泥と上澄み液とを分離する沈殿槽とを備えることを特徴とする。
【0007】
特に、流量調整槽に貯留された生ゴミを排水と共に接触曝気槽に送り込むために、前記流量調整槽内にリフターを備え、このリフターによって流量調整槽内の下層域の貯留水を所定量ずつ接触曝気槽に送り込むようにしている。
【0008】
また、生ゴミを含む曝気処理が良好に行われるように、流量調整槽と沈殿槽との間に3連の曝気処理槽を設けている。
【0009】
さらに、接触曝気槽の内部に曝気処理された処理水を次の槽に送り込む長い隔壁通路を設け、接触曝気槽の下層域の処理水が隔壁通路を介して次の槽に送り込まれる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の生ゴミ処理装置は、流量調整槽に貯留された生ゴミなどの固体成分を排水と一緒に連続する複数の接触曝気槽に送り込み、固体成分の分解処理を積極的に且つ段階的に行うことで、簡易な処理手段であってコンパクトな生ゴミ処理装置を実現することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面に基づいて、本発明に係る生ゴミ処理装置の実施形態を詳細に説明する。図1乃至図4には本発明に係る生ゴミ処理装置(以下、処理装置と略称する。)の一実施形態が示されており、図1は処理装置の内部構造を示す斜視図、図2は処理装置の平面図、図3は図1のA−A線断面図、図4は図1のB−B線断面図、図5は処理装置のブロック構成図である。
【0012】
図1には処理装置1の外観が示されている。この処理装置1は強化プラスチックなどで成形された箱形の槽本体2を備え、槽本体2の左右の側壁3,4には流入口5と流出口6とが形成される。流入口5と流出口6との間には、無機分離槽7、流量調整槽8、接触曝気槽9、沈殿槽10、シーディング剤培養槽11及び再接触曝気槽12が並設され、これら各槽間は仕切壁13〜19によって仕切られている。また、槽本体2の上部には内部点検用の3個の開口窓が設けられ、常時は蓋体20によって閉塞されている。この蓋体20は槽本体2全体を地中に埋設したときに地面と略同一平面上に露出する。なお、図2及び図3に示したように、前記流入口5にはディスポーザ21から延びる排水管22が接続され、流出口6は公共用下水道に延びる放流管23が接続される。
【0013】
前記無機分離槽7は、ディスポーザ21によって粉砕された生ごみを含む排水が最初に流入する槽であり、前記槽本体2に設けられた流入口5と連通している。この無機分離槽7では、ディスポーザ21によって粉砕された生ごみの中に含まれる魚の骨、貝殻、卵の殻など比較的重量のある生ゴミを沈殿する。無機分離槽7と流量調整槽8との間を仕切る仕切壁13の上部には、魚の骨や貝殻などを取り除いた後の生ゴミを含む排水を流量調整槽8に送り込む流出孔24が開設される。無機分離槽7での排水の液面25は流量調整槽8の液面26より高く設定されており、無機分離槽7内に排水が溜まると流出孔24を通じて流量調整槽8内に溢れ出るようになっている。なお、無機分離槽7の中程には散気管27が配置され、槽内を曝気することで悪臭の発生を抑えている。
【0014】
前記流量調整槽8は、ディスポーザ21で粉砕された生ごみを含む排水を一旦貯留して、接触曝気槽9内での排水の処理量が一定となるように調整するためのものである。この実施形態では無機分離槽7の下流側に並設され、無機分離槽7で魚の骨、貝殻、卵の殻など処理負担の大きい生ゴミを取り除かれてから流入される。流量調整槽8内には接触曝気槽9との間を仕切る仕切壁14の付近にリフター30が配設されている。このリフター30は、縦長の管状部材31と、この管状部材31の上端に設けられたボックス状の排水溜り32と、この排水溜り32から仕切壁14に延びるガイド管33とを備える。前記仕切壁14にはガイド管33との接続部分に送出孔34が開設され、排水溜り32と送出孔34とがガイド管34によって連通している。また、管状部材31の下端は流量調整槽8の底面35付近まで延びており、先端部36が開口している。さらに、管状部材31には先端部36の少し上部側に管状部材31内に駆動用エアーを供給するためのエアー供給管37が接続されている。
【0015】
なお、流量調整槽8の底面35付近には一対の散気管38が配置され、槽内を曝気することで悪臭の発生を抑えている。また、流量調整槽8の中ほどには好気性微生物が付着しやすい接触ろ材39が配置され、生ゴミの消化能力を高めている。流量調整槽8内では貯留される排水が概ね三層域に分かれ、上層域は比較的軽い生ゴミを含む排水によって占められ、下層域は比較的重い生ゴミを含む排水によって占められ、そして中層域は上下層に比べて生ゴミの量が少ない排水によって占められている。
【0016】
次に、上記リフター30の作用について説明する。リフター30の管状部材31にはエアー供給管37から駆動用エアーが常時吹き込まれている。駆動用エアーの作用によって流量調整槽8の下層域の排水が管状部材31内に先端部36から吸引され、管状部材31内を上昇して排水溜り32に到達し、一定量ずつガイド管33から接触曝気槽9内に送出される。上述したように、流量調整槽8の下層域の排水には生ゴミや汚泥など固体成分が多く含まれることから、これらの固体成分も排水と一緒にリフター30によって接触曝気槽9内に送り出されることになる。
【0017】
本発明において特徴的な点は、接触曝気槽9を複数連接している点であり、この実施形態では特に同一形状の3連の接触曝気槽9a,9b,9cを配している。接触曝気槽9は、散気管からエアーを噴出して槽内を曝気し、好気性微生物の働きによって生ゴミを分解処理するものであるが、このように接触曝気槽9を連接することで、生ゴミが段階的に分解されるために接触曝気槽9の処理負荷が軽減され、トータル的に分解処理能力が上がる。また、同時に軽い生ゴミなどの浮遊物を曝気槽ごとに少しずつ減らしていくことができる。
【0018】
各接触曝気槽9a,9b,9cの底面40付近には散気管41がそれぞれ配置されており、常時エアーを吹き込むことで槽内を曝気している。また、各接触曝気槽9a,9b,9cを仕切る仕切壁15a,15b及び下段曝気槽9cと沈殿槽10との間を仕切る仕切壁16にはそれぞれ隔壁通路42a,42b,42cが互い違いに設けられている。この隔壁通路42a,42b,42cは、断面コ字状の長尺部材を各仕切板15a,15b,16に溶接することで閉塞された通路を形成するものである。いずれの隔壁通路42a,42b,42cも上端は液面26の上方位置まで延び、下端は散気管41のすぐ上方位置まで延びている。液面26付近では各隔壁通路42a,42b,42cを構成する仕切板15a,15b,16に流出孔43a,43b,43cが開設され、この流出孔43a,43b,43cを通じて隔壁通路42a,42b,42c内の排水が次の槽に流出する。
【0019】
隔壁通路42a,42b,42c内を通過する処理液は曝気の影響を受けることなく静止した状態にあるが、本実施例では各隔壁通路42a,42b,42cが長く形成されているために汚泥など固体成分の沈殿効果が得られる。そのため、流出孔43a,43b,43cからは汚泥の少ない処理液が次の槽に送り込まれると共に、下降した汚泥は曝気槽の中で再び分解処理される。このように、接触曝気槽9a,9b,9cを3連させると共に、隔壁通路42a,42b,42cを長く形成したことで、上段の接触曝気槽9aから下段の接触曝気槽9cに向かって汚泥濃度および浮遊物濃度が段階的に低くなり、接触曝気槽での処理負荷が大きくなることなく、処理能力を上げることができる。なお、各隔壁通路42a,42b,42cの先端の位置は散気管41の少し上方が望ましく、また、各隔壁通路42a,42b,42cの長さは底面40から液面26までの高さの少なくとも1/2上の長さを有することが望ましい。
【0020】
下段の接触曝気槽9cでの処理水は、隔壁通路42cを通って沈殿槽10内に送り込まれる。沈殿槽10では前記の接触曝気槽9で分解処理された処理水を汚泥と上澄水とに分離し、汚泥は沈降させ、上澄水は樋溝45を通じて再接触曝気槽12に送り込む。沈殿槽10の底部には汚泥を溜めやすくするためロート状の汚泥溜り46が形成されている。また、この沈殿槽10内には汚泥溜り46に堆積する汚泥を定期的に吸い上げて隣接するシーディング剤培養槽11に移し替える汚泥吸上管47が配設されており、この汚泥吸上管47の先端が汚泥溜り46内に挿入されている。また、汚泥吸上管47の上端にはシーディング剤培養槽11に延びる排出管48が接続されている。なお、汚泥吸上管47の先端近傍に設けられたエアー取入口49にはエアー供給管50が接続されている。このエアー供給管50による汚泥の吸い上げの回数や時間は、処理装置1の処理能力や生ゴミの処理量などに応じて適宜決められる。なお、前記下段の接触曝気槽9cから沈殿槽10内に処理水を送り込む際、処理水中に含まれる汚泥が沈殿槽10の底に溜り易くするために、仕切壁16の沈殿槽10側にも前記接触曝気槽の隔壁通路と同様の隔壁通路42dが設けられ、この隔壁通路42dの下端は沈殿溜り46のすぐ上方まで延びている。
【0021】
シーディング剤培養槽11は、汚泥の中に含まれる好気性微生物を培養してこれを再利用すると共に汚泥消化を促進するために設けられるものである。シーディング剤培養槽11の底面付近には散気管55が配設されており、シーディング剤培養槽11に堆積する汚泥にエアーを供給して好気性と流動性を確保している。また、シーディング剤培養槽11と前記流量調整槽8との間にはシーディング剤培養槽11内で培養した好気性微生物を含む汚泥の一部を、シーディング剤として流量調整槽8に戻すための返送配管56が配設されている。この返送配管56は両端部が流量調整槽8とシーディング剤培養槽11とに接続されている。特に、シーディング剤培養槽11側では先端部分が下向きに90度屈曲され、その屈曲管57の先端が汚泥内に挿入されている。また、返送配管56は流量調整槽8側に側に少し下がるように全体が僅かに傾斜して配設されている。
【0022】
シーディング剤培養槽11内で培養された汚泥が屈曲管57の先端より上方まで堆積すると屈曲管57の中にも汚泥が侵入し、さらに堆積が進んで屈曲57の屈曲部分まで達すると余分の汚泥が返送配管56側に流れ込み、返送配管56の僅かな傾斜を利用して自然に流量調整槽8側に流れ、管先端から流量調整槽8内に返送される。このように、汚泥の一部を流量調整槽8に戻し、これをシーディング剤として作用させることで流量調整槽8内においても生ゴミの分解効果が得られることになる。
【0023】
前記沈殿槽10の下流側には、沈殿槽10において汚泥と分離された上澄水をさらに曝気処理するための再接触曝気槽12が配置される。この再接触曝気槽12は上下二段の曝気槽12a,12bで構成され、各曝気槽12a,12b内には底面近くに散気管60a,60bが配設されている。また、両方の曝気槽12a,12bを仕切る仕切壁19には上段の曝気槽12a側に長尺の隔壁通路61が設けられ、また槽本体2の側壁4の内面にも流出口6に連通する隔壁通路62が形成されている。このような構成からなる再接触曝気槽12を沈殿槽10の下流側に配置したことによって、沈殿槽10から流れ出た上澄水はさらに浄化され、流出口6から公共用下水道などに放流される。
【0024】
なお、上記各槽内に配置された散気管27,38,41,55,60a,60b、リフター30のエアー供給管37及び汚泥吸上管47のエアー供給管50には、槽本体2内に配管された共通のエアー配管からエアーが供給されている。
【0025】
上述した本発明の生ゴミ処理装置は、上記の図1〜図3に示された実施形態に限られないことは勿論であり、例えば流量調整槽8と沈殿槽10との間に配置された接触曝気槽9は、上記実施例の3連に限定されるものではなく、2連あるいは4連以上であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
上述したように、上記構成からなる生ゴミ処理装置はコンパクトでありながら処理能力が大きく且つコンポスト装置を必要としないなど簡便であり、また槽本体の清掃掃除の回数も少なくて済むなど扱いが容易であるので、個人住宅や小規模集合住宅などで利用する生ゴミ処理装置として最適である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る生ゴミ処理装置の内部構造を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る生ゴミ処理装置の内部構造を示す平面図である。
【図3】前記図1におけるA−A線断面図である。
【図4】前記図1におけるB−B線断面図である。
【図5】本発明に係る生ゴミ処理装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0028】
1 生ゴミ処理装置
2 槽本体
8 流量調整槽
9 接触曝気槽
10 沈殿槽
11 シーディング剤培養槽
12 再接触曝気槽
21 ディスポーザ
30 リフター
42a,42b,42c 隔壁通路
56 返送配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスポーザで粉砕された生ごみを含む排水を一旦貯留する流量調整槽と、
貯留された固体成分を含む排水を曝気処理する連続する複数の接触曝気槽と、曝気処理された処理水に含まれる汚泥と上澄み水とを分離する沈殿槽とを備えることを特徴とする生ゴミ処理装置。
【請求項2】
前記流量調整槽は、内部にリフターを備え、このリフターによって流量調整槽内の下層域の貯留水が引き上げられ所定量ずつ接触曝気槽に送り込まれる請求項1に記載の生ゴミ処理装置。
【請求項3】
前記接触曝気槽は、流量調整槽と沈殿槽との間に3連配置されている請求項1に記載の生ゴミ処理装置。
【請求項4】
前接触曝気槽は、曝気処理された処理水を次の槽に送り込む隔壁通路を接触曝気槽内に備え、接触曝気槽の下層域の処理水が隔壁通路内に流入するよう構成され、隔壁通路内を通って次の槽に送り込まれる請求項1又は3に記載の生ゴミ処理装置。
【請求項5】
前記隔壁通路には、接触曝気槽の下層域の処理水が流入する入口が接触曝気槽の下部付近に設けられ、隔壁通路内を通過した処理水の出口が接触曝気槽内の処理水の液面付近に設けられる請求項4に記載の生ゴミ処理装置。
【請求項6】
前記隔壁通路は接触曝気槽の底面から液面までの高さの1/2上の長さを有している請求項4又は5に記載の生ゴミ処理装置。
【請求項7】
前記沈殿槽に堆積した汚泥を移し替えるシーディング剤培養槽と、このシーディング剤培養槽内の汚泥の一部を流量調整槽に戻す返送配管とをさらに備えている請求項1記載の生ゴミ処理装置。
【請求項8】
前記流量調整槽には、好気性微生物が付着する接触ろ材が配置されている請求項1記載の生ゴミ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−45534(P2009−45534A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212600(P2007−212600)
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【出願人】(507278627)株式会社富士環境整備 (1)
【Fターム(参考)】