説明

生ゴミ処理装置

【課題】生ゴミの処理時間を短縮できるとともに、回転処理槽内に油分が残留することを防止できる生ゴミ処理装置を提供する。
【解決手段】有底円筒形の回転処理槽2と、回転処理槽2の内周面に取り付けた内面抵抗板3と、回転処理槽2を後方下がりの傾斜状に回転自在に支持する回転支持手段と、回転処理槽2を回転駆動する駆動手段と、回転処理槽2に投入される破砕用セラミックスと、回転処理槽2内において生ゴミを圧縮して、破砕用セラミックスとの協働により生ゴミを破砕する圧縮板6と、駆動手段を制御する制御手段とを備え、回転処理槽2の後端外周部に、圧縮板6による生ゴミの圧縮方向に対して圧縮板6に対面しないように、生ゴミに含まれる水分及び油分のみを回転処理槽2外へ排出するための排水孔を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物を担持したセラミックスを用いて生ゴミを処理するための生ゴミ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食店、給食センター、旅館やホテルの厨房などから排出される生ゴミを処理する生ゴミ処理装置として、固定設置した処理槽の中央部に回転軸を設けて、この回転軸に処理槽の内周面付近まで延びる複数の攪拌羽根を放射状に設け、これら複数の攪拌羽根を回転軸とともに回転させて、処理槽に投入した生ゴミを攪拌しながら、微生物で生ゴミを堆肥に処理するように構成したものが種々提案されている(例えば、特許文献1〜6参照。)。
【0003】
ところが、前述のように攪拌羽根を回転させる場合には、攪拌羽根に異物が絡まって、作動不良が発生したり、攪拌羽根が変形したりするという問題があるとともに、投入した生ゴミが処理槽内においてそのままの形状で転がって、微生物による分解処理が円滑になされず、多くの処理時間を要したり、処理後の残渣が比較的大きな塊状になり、残渣の減容化が十分になされなかったりするという問題があった。
【0004】
そこで、本出願人は、前記問題を解決するため、特許文献7記載のように、生ゴミをそのまま投入しても、効率良く短時間で処理でき、しかも残渣の減容化が可能な生ゴミ処理装置として、生ゴミを処理するための有底円筒形の回転処理槽と、前記回転処理槽の内周面に取り付けた内面抵抗板と、前記回転処理槽の底板が下側に位置するように回転中心を水平に対して傾斜させて前記回転処理槽を回転自在に支持する回転支持手段と、前記回転処理槽を回転駆動する駆動手段と、前記回転処理槽に投入される破砕用セラミックスと、前記回転処理槽内において生ゴミを圧縮して、前記破砕用セラミックスとの協働により生ゴミを破砕する圧縮板とを備えた生ゴミ処理装置を提案した。
【0005】
また、生ゴミ処理装置として、回転ドラムの円筒状の胴体部に複数の排水孔を形成し、生ゴミに含まれる水分を回転ドラムの下方に設置した排水槽へ排出するように構成した生ゴミ処理装置も提案されている(例えば、特許文献8参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−84975号公報
【特許文献2】特開平11−277040号公報
【特許文献3】特開2000−61429号公報
【特許文献4】特開平11−319778号公報
【特許文献5】特開2001−70922号公報
【特許文献6】特開2001−212544号公報
【特許文献7】特開2006−61881号公報
【特許文献8】特開2010−104959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、前記特許文献7記載の生ゴミ処理装置においては、回転処理槽に排水孔が形成されていないので、生ゴミに含まれる水分により処理時間が長くなったり、生ゴミに含まれる油分が回転処理槽内に残留したりするという問題があった。また、例えばスーパーから排出される25kgの生ゴミを粉末状の残渣に分解処理するまでには、18時間もの処理時間を要することから、更なる処理時間の短縮が要望されていた。
【0008】
一方、前記特許文献7記載の生ゴミ処理装置に、特許文献8記載の発明を適用して、回転処理槽の胴体部に複数の排水孔を形成し、生ゴミに含まれる水分や油分を排出することも考えられるが、圧縮板による生ゴミの圧縮時に、分解処理されていない生ゴミの一部が排水孔を通って回転処理槽外へ漏れ出したり、生ゴミが排水孔に詰まったりするという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、生ゴミの処理時間を短縮できるとともに、回転処理槽内に油分が残留することを防止できる生ゴミ処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、特許文献7記載の生ゴミ処理装置において、回転処理槽内に水分が残留することによる処理時間の増大や、油分が残留することによるメンテナンスの煩雑さを防止するための構造について鋭意検討した結果、回転処理槽の後端外周部に、圧縮板による生ゴミの圧縮方向に対して圧縮板に対面しないように、水分及び油分のみを排出可能な排水孔を形成することで、粉砕した生ゴミが排水孔に詰まったり、排水孔から排出されてしまったりすることを防止しつつ、生ゴミに含まれる水分や油分などの液体を回転処理槽外へ効率的に排出できることを見出して本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明に係る生ゴミ処理装置は、生ゴミを処理するための有底円筒形の回転処理槽と、前記回転処理槽の内周面に取り付けた内面抵抗板と、前記回転処理槽の底板が下側に位置するように回転中心を水平に対して後方下がりに傾斜させて前記回転処理槽を回転自在に支持する回転支持手段と、前記回転処理槽を回転駆動する駆動手段と、前記回転処理槽に投入される破砕用セラミックスと、前記回転処理槽内において生ゴミを圧縮して、前記破砕用セラミックスとの協働により生ゴミを破砕する圧縮板と、前記駆動手段を制御する制御手段とを備え、前記回転処理槽の後端外周部に、前記圧縮板による生ゴミの圧縮方向に対して圧縮板に対面しないように、生ゴミに含まれる水分及び油分のみを回転処理槽外へ排出するための排水孔を形成したものである。
【0012】
この生ゴミ処理装置では、水平に対して傾斜する回転中心回りに回転処理槽を回転させるので、回転処理槽に投入した生ゴミに空気を巻き込みながら、該生ゴミを効率よく混合でき、微生物の活性を高めて、生ゴミを効率良く分解処理できる。また、生ゴミの一部は、回転処理槽の内周面と圧縮板間へ送り込まれて順次圧縮され、このときに破砕用セラミックスが生ゴミに強く押し付けられて、生ゴミが細かく破砕される。そして、この破砕により生ゴミの表面積を増やして、微生物による生ゴミの処理時間を大幅に短縮できるとともに、生ゴミを粉末状の残渣にまで容易に分解処理でき、大幅な残渣の減容化が可能となる。しかも、後方下がりに傾斜させた回転処理槽の後端外周部に、生ゴミに含まれる水分及び油分のみを回転処理槽外へ排出するための排水孔を形成しているので、生ゴミに含まれる水分や油分を円滑に排出することが可能となり、水分を排出できることで、生ゴミの分解処理時間を短縮でき、油分を排出できることで、回転処理槽内に油分が残留することを防止して、残留した油分の排出作業が不要になる。また、回転処理槽の後端外周部に、前記圧縮板による生ゴミの圧縮方向に対して圧縮板に対面しないように排水孔を形成しているので、圧縮板で圧縮された生ゴミが、排水孔を通って外部に排出されたり、排水孔に詰まったりするという不具合を効果的に防止できる。
【0013】
ここで、前記回転処理槽を、円筒状の胴体部と、胴体部の後端部に固定した円板状の後面板とを有する有底円筒状に構成し、後面板と胴体部とを円周方向に間隔をあけて溶接し、非溶接部において後面板と胴体部間に排水孔としての隙間を形成することが好ましい実施の形態である。このように構成すると、生ゴミが通過できないような微細な隙間を回転処理槽の後端外周部に容易に形成することが可能となる。
【0014】
前記回転処理槽の下方に生ゴミ処理後の残渣を受ける残渣受け箱を設け、前記水分及び油分を排水孔から残渣受け箱内に排出可能となすことが好ましい実施の形態である。この場合には、生ゴミを分解処理した後の粉末状の残渣を収納する残渣受け箱に、回転処理槽から排出される水分及び油分を収容できるので、水分及び油分を収容する容器等を別途設ける必要がないし、該容器等から定期的に水分や油分を排出する作業も省略できる。
【0015】
前記制御手段により前記駆動手段を制御して、前記回転処理槽の回転方向を、前記圧縮板で生ゴミを圧縮可能な正転方向と、前記圧縮板で生ゴミを圧縮不能な逆転方向とに順次切換えて生ゴミを処理することもできる。この場合には、制御手段により回転処理槽の回転方向を切換えて、圧縮板で生ゴミを圧縮可能な正転方向だけでなく、圧縮板で生ゴミを圧縮不能な逆転方向へも、回転処理槽を回転させるので、生ゴミの処理時間をより一層短縮できる。生ゴミの処理時間を短縮できる仕組みは明確ではないが、逆転方向に回転させることで、回転処理槽内の生ゴミが一様に攪拌されて、正転方向への回転だけでは、圧縮板により圧縮されなかった生ゴミが、逆転方向に回転させることで、次回の正転方向への回転時に圧縮板で圧縮されて、破砕されることによるものと推定できる。
【0016】
前記回転処理槽の回転中心が水平に対して5度乃至25度傾斜するように、前記回転支持手段により前記回転処理槽を回転自在に支持することができる。このように構成することで、回転処理槽に投入した生ゴミに空気を巻き込みながら、該生ゴミを効率よく混合でき、微生物の活性を高めて、生ゴミを効率良く分解処理できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る生ゴミ処理装置によれば、水平に対して傾斜する回転中心回りに回転処理槽を回転させるので、回転処理槽に投入した生ゴミに空気を巻き込みながら、該生ゴミを効率よく混合でき、微生物の活性を高めて、生ゴミを効率良く分解処理できる。また、生ゴミの一部は、回転処理槽の内周面と圧縮板間へ送り込まれて順次圧縮され、このときに破砕用セラミックスが生ゴミに強く押し付けられて、生ゴミが細かく破砕される。そして、この破砕により生ゴミの表面積を増やして、微生物による生ゴミの処理時間を大幅に短縮できるとともに、生ゴミを粉末状の残渣にまで容易に分解処理でき、大幅な残渣の減容化が可能となる。しかも、後方下がりに傾斜させた回転処理槽の後端外周部に、生ゴミに含まれる水分及び油分のみを回転処理槽外へ排出するための排水孔を形成しているので、生ゴミに含まれる水分や油分を円滑に排出することが可能となり、水分を排出できることで、生ゴミの分解処理時間を短縮でき、油分を排出できることで、回転処理槽内に油分が残留することを防止して、残留した油分の排出作業が不要になる。また、回転処理槽の後端外周部に、前記圧縮板による生ゴミの圧縮方向に対して圧縮板に対面しないように排水孔を形成しているので、圧縮板で圧縮された生ゴミが、排水孔を通って外部に排出されたり、排水孔に詰まったりするという不具合を効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】前面カバーを取り外した状態での生ゴミ処理装置の正面図
【図2】側面カバーを取り外した状態での生ゴミ処理装置の側面図
【図3】回転処理槽の断面図
【図4】回転処理槽の斜視図
【図5】回転処理槽と圧縮板と補強板の分解斜視図
【図6】(a)は図5のa−a線断面図、(b)は図5のb−b線断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
図1〜図5に示すように、生ゴミ処理装置1は、生ゴミを処理するための有底円筒形の回転処理槽2と、回転処理槽2の内周面に取り付けた内面抵抗板3と、回転処理槽2の後面板(底板)12が下側に位置するように回転中心Cを水平面Pに対して後方下がりに傾斜させて回転処理槽2を回転自在に支持する回転支持手段4と、回転処理槽2を回転駆動する駆動手段5と、回転処理槽2に投入される破砕用セラミックスと、回転処理槽2内において生ゴミを圧縮して、破砕用セラミックスとの協働により生ゴミを破砕する圧縮板6と、駆動手段5を制御する制御手段7とを備え、制御手段7により駆動手段5を制御して、回転処理槽2の回転方向を、圧縮板6で生ゴミを圧縮可能な正転方向と、圧縮板6で生ゴミを圧縮不能な逆転方向とに順次切換えて生ゴミを処理するものである。ただし、回転処理槽2が正転方向にのみ回転するように、制御手段7により駆動手段5を制御することも可能である。
【0020】
回転処理槽2内には、生ゴミの分解能力を有する菌体を担持した菌床が、生ゴミ処理に先立って作製される。具体的には、生ゴミの分解能力を有する菌株の培養液を、ヒノキチップ、硬質多孔質セラミックス、ヒドロキシアパタイトなどに吸着させ、これらを回転処理槽2に投入して菌床を作製することになる。硬質多孔質セラミックスとしては、株式会社ミヤオカンパニーリミテッド製のRT及びGCを、ヒドロキシアパタイトとしては、株式会社ミヤオカンパニーリミテッド製の製品を例示することができる。また、生ゴミ及び夾雑物を破砕するために、超硬質セラミックスからなる破砕用セラミックスを回転処理槽2に投入するが、破砕用セラミックスとしては株式会社ミヤオカンパニーリミテッド製のアルミクロン及びアルミナ焼結体などを採用できる。
【0021】
回転処理槽2は、円筒状の胴体部10と、胴体部10の前端部に固定した円板状の前面板11と、胴体部10の後端部に固定した円板状の後面板12とを有し、前面板11の中央部に生ゴミ投入用の開口部13を形成したものである。回転処理槽2は、その回転中心Cが水平面Pに対して傾斜角度θだけ後方下がりに傾斜するように、回転支持手段4に回転自在に支持されている。傾斜角度θは、回転処理槽2の大きさにもよるが、回転処理槽2に投入した生ゴミが、回転処理槽2の回転により、空気を巻き込みながら効率よく混合されるように、例えばθ=5度〜25度に設定されている。
【0022】
図5、図6に示すように、後面板12と胴体部10とは円周方向に間隔をあけて溶接され、溶接部14では後面板12と胴体部10とは液密状に接続されるが、非溶接部15では後面板12と胴体部10間には回転処理槽2内から外部へ通じる排水孔としての隙間16が形成されている。この隙間16は、回転処理槽2内に投入される生ゴミや菌床、破砕用セラミックスや生ゴミの分解処理後の残渣などが通過しない微細な通路幅の隙間で構成され、回転処理槽2に投入された生ゴミに含まれる水分や油分のみが、傾斜状に配置された回転処理槽2の後端部の下部から隙間16を通じて、生ゴミ処理装置1の下部に配置した残渣受け箱17に排出されるように構成されている。また、隙間16は、圧縮板6による生ゴミの圧縮方向、即ち回転処理槽2の半径方向に対して圧縮板6に対面しないように、圧縮板6よりも回転処理槽2の後部側に配置され、圧縮板6にて圧縮された生ゴミが隙間16内へ押し込まれないように構成されている。なお、溶接部14及び非溶接部15の個数や長さは、胴体部10と後面板12との接合強度を確保できる範囲で任意に設定できる。また、溶接部15は回転処理槽2の外面側に設けることも可能であるし、内面側及び外面側の両面に設けることもできる。更に、隙間16に代えて、後面板12や胴体部10の後部に、圧縮板6による生ゴミの圧縮方向、即ち回転処理槽2の半径方向に対して圧縮板6に対面しないように、スリットや孔を形成して、水分や油分のみを排出できるように構成することも可能である。
【0023】
回転処理槽2は、生ゴミ処理装置1の処理能力などにより、後面板12の直径D、深さH、後面板12の直径Dと深さHとの比率、前面板11の幅L、傾斜角度θなどが異なってくる。1日当たりに処理可能な生ゴミの処理量が10kg乃至50kgの場合には、後面板12の直径Dは450mm乃至750mm、深さHは200mm乃至600mm、後面板12の直径Dと深さHとの比率は1:0.3乃至1:0.8、前面板11の幅Lは200mm乃至450mm、傾斜角度θは5度乃至25度に設定することが好ましい。
【0024】
回転支持手段4について説明すると、生ゴミ処理装置1の下部には支持フレーム20が後方下がりの傾斜状に設けられ、支持フレーム20の前部には前後方向に延びる1対の支持軸21が左右に間隔をあけて設けられ、両支持軸21の前後両端部には支持ローラ22が回転自在に設けられ、回転処理槽2は、その前面板11及び後面板12の外周部が左右に間隔をあけて配置された左右1対の支持ローラ22によりそれぞれ下側から受け止められて、回転自在に支持されている。
【0025】
支持フレーム20の後部には、回転処理槽2を回転するとともに、回転処理槽2の後方への移動を規制する駆動手段5が設けられている。駆動手段5について説明すると、回転処理槽2の後面板12の中央部には後方へ突出する軸部材23が設けられ、支持フレーム20の後部には減速機24及びモータ25が設置され、減速機24及びモータ25により軸部材23を減速回転することで、回転処理槽2を減速回転できるように構成されている。また、軸部材23の後方への移動が減速機24を介して規制されることで、回転処理槽2の後方への移動が規制されている。なお、回転処理槽2を回転自在に支持する手段及び回転処理槽2を回転する手段としては、上記以外の任意の構成のものを採用することが可能である。
【0026】
回転処理槽2の内周面には内面抵抗板3が周方向に一定間隔おきに固定されている。内面抵抗板3は、回転処理槽2の回転時に、回転処理槽2の下部側に配置される生ゴミ及び破砕用セラミックスを、上側へ掻き起こして移動させることで、生ゴミ及び破砕用セラミックスを効率良く一様に混合するためのものである。具体的には、厚さが2mm乃至5mm、長さが回転処理槽2の深さHの3/4乃至4/4である内面抵抗板3が周方向に一定間隔おきに4箇所乃至12箇所取り付けられている。
【0027】
回転処理槽2の前側には前部気密保持板30が設けられ、回転処理槽2の上側には上部気密保持板31が設けられ、生ゴミ処理装置1の内部は、両気密保持板30,31により、前部空間32と後部空間33と上部空間34とに区画されている。前記回転処理槽2と回転支持手段4と駆動手段5とは後部空間33に配置されている。
【0028】
生ゴミ処理装置1の外板の前面には生ゴミ投入口40が形成されるとともに、生ゴミ投入口40を開閉する開閉扉41が開閉自在に設けられている。前部気密保持板30には回転処理槽2の開口部13に対面させて保持板開口部42が形成され、前部気密保持板30における保持板開口部42の下側には生ゴミ投入口40側へ向けて前方上がりの傾斜状に延びるシュート43が設けられ、生ゴミ投入口40から投入された生ゴミは、シュート43により案内されて回転処理槽2内へ投入されることになる。
【0029】
前部気密保持板30の前側には補強板44が固定され、補強板44の左右方向の中央部には切欠部45が保持板開口部42に対応させて形成されている。補強板44には保持板開口部42及び回転処理槽2の開口部13を通って回転処理槽2内に配置される半円板状の支持板46が3つのスペーサ部材47を介して固定され、支持板46には回転処理槽2内を前面板11に沿って左側へ略水平に延びる支持腕48が設けられ、支持腕48の端部には圧縮板6が取り付けられている。圧縮板6は、厚さが6mm乃至15mmで、長さが回転処理槽2の深さHの1/2乃至3/4の板状部材で構成され、回転処理槽2の回転中心Cより傾斜角度α=5度乃至20度だけ下部方向へ向けて傾斜状に支持腕48に取り付けられている。このような圧縮板6を設けることで、生ゴミを効率的に破砕できるとともに、投入された生ゴミ中に、ビニル、プラスチックトレイ、発泡スチロールの断片、割り箸などが少量混在していても、それらを破砕できる。
【0030】
生ゴミ処理装置1の後部には吸気口50が形成され、吸気口50には前部気密保持板30の前側まで延びてシュート43へ向けて開口する送風ダクト51が形成されている。送風ダクト51の途中部には送風ファン52と加熱手段53とが上流側から順番に設けられ、吸気口50から送風ダクト51内に導入された外気は、加熱手段53により加熱された後、送風ダクト51からシュート43に向けて放出され、シュート43により案内されて回転処理槽2内へ供給される。このように、送風ダクト51から回転処理槽2内へ温風を供給することで、回転処理槽2内の雰囲気温度を菌体の活性が高くなる40℃前後に維持して、菌体による生ゴミの処理速度を高めるように構成されている。なお、送風ダクト51の端部を回転処理槽2内に挿入して、送風ダクト51から回転処理槽2内へ直接的に外気を導入することも可能である。
【0031】
本生ゴミ処理装置1では、生ゴミを破砕しながら菌体で分解処理するので、生ゴミは粉末状の残渣にまで分解処理されることになり、分解処理された後の残渣は送風ダクト51から供給される温風により比重選別されるように構成されている。つまり、分解処理の完了していない生ゴミや菌床や破砕用セラミックスなどは、回転処理槽2内に残留した状態となるが、分解処理が完了した後の粉末状の残渣は、図2に矢印Xで示すように、送風ダクト51から供給される温風により空気輸送されて、回転処理槽2から前部空間32内へ排出され、生ゴミ処理装置1の下部に配置した残渣受け箱17に落下して、残渣受け箱17に収納される。このように、分解処理後の残渣を回転処理槽2から残渣受け箱17へ自動的に空気輸送できるので、回転処理槽2からの残渣の排出作業を大幅に軽減できる。
【0032】
上部空間34内にはフィルタ54及び脱臭装置55と排気ファン56とが設けられ、前部空間32内の空気は、図2に矢印Yで示すように、前部空間32からフィルタ54へ供給されて、空気中に浮遊する微細な残渣が除去された後、脱臭装置55を通って脱臭され、その後排気口57から外部へ排出される。フィルタ54としては、不織布などを用いたフィルタを採用することもできるし、サイクロン方式のフィルタを用いることもできる。脱臭装置55としては、吸着式の活性炭、触媒型の脱臭剤などを備えたものを用いることができるが、脱臭装置55としてオゾン発生機を設けて、オゾンにより臭気を分解することもできる。
【0033】
生ゴミ処理装置1の制御手段7では、送風ファン52と排気ファン56と加熱手段53の制御に加えて、モータ25の回転方向を設定時間毎に切換えて、回転処理槽2の回転方向を、圧縮板6で生ゴミを圧縮可能な正転方向Aだけでなく、圧縮板6で生ゴミを圧縮不能な逆転方向Bへも回転させ、正転と逆転とを交互に行うことによって、生ゴミの処理時間を短縮できるように構成されている。正転時間と逆転時間とは任意に設定できるが、正転時間を逆転時間の1〜3倍、好ましくは1.5〜2.5倍に設定すると、生ゴミの処理時間を短縮できるので好ましい。具体的には、2時間正転させた後、1時間逆転させる処理を繰り返し行ったり、4時間正転させた後、2時間逆回転させる処理を繰り返し行うことになる。ただし、投入する生ゴミの特性や、生ゴミ処理装置1での生ゴミの処理状況等に応じて、正転時間と逆転時間とを設定できるように構成することも可能である。
【0034】
なお、生ゴミの処理時間は、生ゴミの投入量などに応じて予め設定することになるが、生ゴミの処理が完了すると、回転処理槽2内の湿度が低くなるので、回転処理槽2内に水分センサを設けて、該水分センサが一定の閾値以下になったときに、生ゴミ処理を完了することもできる。
【0035】
次に、生ゴミ処理装置1を用いた生ゴミ処理方法について説明する。
先ず、生ゴミ処理装置1を稼働する前に、菌床及び破砕用セラミックスを生ゴミ投入口40より投入する。この菌床及び破砕用セラミックスの投入は、基本的には初回のみ行うことになり、その後は菌床及び破砕用セラミックスが減少したときにのみ、必要量を補充することになる。
【0036】
次に、生ゴミを生ゴミ投入口40より投入するとともに、モータ25、加熱手段53、送風ファン52、排気ファン56を作動させる。これにより回転処理槽2が、例えば2乃至7rpmで減速回転することになるが、回転処理槽2の回転中心Cが水平面Pに対して傾斜角度θだけ傾斜しているので、回転処理槽2に投入した生ゴミは、空気を巻き込みながら、菌床及び破砕用セラミックスと一様に混合される。また、内面抵抗板3により、回転処理槽2の下部側に配置される生ゴミ及び破砕用セラミックスが上側へ掻き起されることによっても、生ゴミ及び破砕用セラミックスが一様に混合される。一方、生ゴミの一部は、回転処理槽2の内壁と圧縮板6間へ送り込まれて順次圧縮され、このときに破砕用セラミックスが生ゴミに強く押し付けられて、生ゴミが細かく破砕されることになる。こうして、投入された生ゴミが、菌床及び破砕用セラミックスと一様に混合されるとともに、細かく破砕され、しかも回転処理槽2内へ供給される温風により、菌体の活性温度に温調されることで、微生物により効率良くる分解処理されることになる。また、生ゴミに含まれる水分や油分は、回転処理槽2の後端部の下部から隙間16を通じて、生ゴミ処理装置1の下部に配置した残渣受け箱17に排出され、水分が除去されることで、生ゴミの処理時間を短縮でき、油分が除去されることで、該油分が回転処理槽2に残留することを防止できる。なお、水分及び油分の排出を促進するため、回転処理槽2の回転を生ゴミ処理の途中で一定時間だけ停止させることもできる。
【0037】
こうして、回転処理槽2を設定時間正転させた後、回転処理槽2を設定時間逆転させ、その後は生ゴミの処理が完了するまで、正転と逆転とを設定時間毎に繰り返し行うことで、生ゴミを微生物により順次分解処理することになる。なお、回転処理槽2の逆転時には、圧縮板6により生ゴミが破砕されることはないが、回転処理槽2内の生ゴミが一様に攪拌されて、正転方向への回転だけでは、圧縮板6により圧縮されなかった生ゴミが、逆転方向に回転させることで一様に攪拌されて、次回の正転方向への回転時に圧縮板6で圧縮されて、破砕されることになる。
【0038】
このように、回転処理槽2を水平面Pに対して傾斜させること、回転処理槽2に内面抵抗板3を設けること、回転処理槽2を正転及び逆転させること、などにより回転処理槽2内の生ゴミと菌床と破砕用セラミックスとが一様に混合され、また圧縮板6により生ゴミを細かく破砕して、その表面積を増やすとともに、回転処理槽2内の温度を菌体の活性温度に設定することで、投入した生ゴミを短時間で粉末状の残渣になるまで分解処理することが可能となる。
【0039】
また、分解処理が完了した粉末状の残渣は、回転処理槽2内へ供給される温風とともに回転処理槽2から前部空間32内へ順次空気輸送されて、自重により残渣受け箱17内に落下して、残渣受け箱17内に収容され、また回転処理槽2から前部空間32内へ排出される空気は、フィルタ54及び脱臭装置55を経て排気口57から外部へ排出されることになる。
【0040】
次に、生ゴミ処理装置の評価試験について説明する。
生ゴミ処理装置として、株式会社環境機器開発製のKD−30を用い、この生ゴミ処理装置の回転処理槽に、6kgのヒノキチップ及び3kgの硬質多孔質セラミックス(株式会社ミヤオカンパニーリミテッド製GC)にBacillus amyloliquefaciens(NBRC 14141)の培養液を浸漬させた菌床並びに破砕用セラミックス(株式会社ミヤオカンパニーリミテッド製アルミクロン)3kgを投入し、回転処理槽内の温度を40℃に保持するとともに、回転処理槽を1分間に3回転(3rpm)させながら、レストランより生じる生ゴミを25kg投入した。
【0041】
そして、表1に示すような条件で、回転処理槽を正転方向にのみ回転させた比較例と、正転方向に設定時間だけ回転させた後、逆転方向に設定時間だけ回転させるという回転処理を繰り返し行った実施例1〜6における、生ゴミの処理時間をそれぞれ測定した。その結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
表1から、回転処理槽を正転方向にのみ回転させながら生ゴミを処理する場合よりも、正転方向と逆転方向とに切換えながら生ゴミを処理する場合の方が、処理時間を短縮できることが判る。また、正転時間を逆転時間の2倍に設定した実施例3、5は他の実施例よりも処理時間が短く、特に正転時間を2時間に設定し逆転時間を1時間に設定した実施例3が最も短時間で処理でき、正転方向にのみ回転させる場合の67%の処理時間で処理できることが判る。
【符号の説明】
【0044】
1 生ゴミ処理装置 2 回転処理槽
3 内面抵抗板 4 回転支持手段
5 駆動手段 6 圧縮板
7 制御手段
10 胴体部 11 前面板
12 後面板 13 開口部
14 溶接部 15 非溶接部
16 隙間 17 残渣受け箱
20 支持フレーム 21 支持軸
22 支持ローラ 23 軸部材
24 減速機 25 モータ
30 前部気密保持板 31 上部気密保持板
32 前部空間 33 後部空間
34 上部空間
40 生ゴミ投入口 41 開閉扉
42 保持板開口部 43 シュート
44 補強板 45 切欠部
46 支持板 47 スペーサ部材
48 支持腕
50 吸気口 51 送風ダクト
52 送風ファン 53 加熱手段
54 フィルタ 55 脱臭装置
56 排気ファン 57 排気口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生ゴミを処理するための有底円筒形の回転処理槽と、前記回転処理槽の内周面に取り付けた内面抵抗板と、前記回転処理槽の底板が下側に位置するように回転中心を水平に対して後方下がりに傾斜させて前記回転処理槽を回転自在に支持する回転支持手段と、前記回転処理槽を回転駆動する駆動手段と、前記回転処理槽に投入される破砕用セラミックスと、前記回転処理槽内において生ゴミを圧縮して、前記破砕用セラミックスとの協働により生ゴミを破砕する圧縮板と、前記駆動手段を制御する制御手段とを備え、
前記回転処理槽の後端外周部に、前記圧縮板による生ゴミの圧縮方向に対して圧縮板に対面しないように、生ゴミに含まれる水分及び油分のみを回転処理槽外へ排出するための排水孔を形成した、
ことを特徴とする生ゴミ処理装置。
【請求項2】
前記回転処理槽を、円筒状の胴体部と、胴体部の後端部に固定した円板状の後面板とを有する有底円筒状に構成し、後面板と胴体部とを円周方向に間隔をあけて溶接し、非溶接部において後面板と胴体部間に排水孔としての隙間を形成した請求項1記載の生ゴミ処理装置。
【請求項3】
前記回転処理槽の下方に生ゴミ処理後の残渣を受ける残渣受け箱を設け、前記水分及び油分を排水孔から残渣受け箱内に排出可能となした請求項1又は2記載の生ゴミ処理装置。
【請求項4】
前記制御手段により前記駆動手段を制御して、前記回転処理槽の回転方向を、前記圧縮板で生ゴミを圧縮可能な正転方向と、前記圧縮板で生ゴミを圧縮不能な逆転方向とに順次切換えて生ゴミを処理する請求項1〜3のいずれか1項記載の生ゴミ処理装置。
【請求項5】
前記回転処理槽の回転中心が水平に対して5度乃至25度傾斜するように、前記回転支持手段により前記回転処理槽を回転自在に支持した請求項1〜4のいずれか1項記載の生ゴミ処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−61420(P2012−61420A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207475(P2010−207475)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(503186157)株式会社 環境機器開発 (3)
【Fターム(参考)】