説明

生体サンプル中の微生物を分類する方法

【課題】生体サンプル中の微生物を分類する方法の提供。
【解決手段】本発明は、血球試料(例えば、Limulus変形細胞溶解物)を用いて、対象のサンプル中に、グラム陰性菌、グラム陽性菌、および真菌のうちの少なくとも1つの存在を、1回のアッセイで検出する方法を提供する。この方法は、グラム陰性菌、グラム陽性菌、および真菌の血球試料との異なる反応性を利用して、混合物の特性(例えば、光学特性)の測定可能な変化を生成する。グラム陰性菌、グラム陽性菌、および真菌のそれぞれは、所与の特性(例えば、光学特性)において、異なる変化を生成するので、対象のサンプル中に存在する微生物のタイプを分類することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、米国特許出願第60/643,697号(2005年1月13日出願)の利益およびその優先権を主張するものであり、該特許出願の開示は、本明細書にて参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般的に、テストサンプル中の微生物を分類する方法に関する。より具体的には、本発明は、テストサンプル中の微生物(例えば、グラム陽性菌、グラム陰性菌、および真菌)を分類するために、血球試料を用いる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
例えば、グラム陽性菌、グラム陰性菌、および真菌(例えば、酵母菌および糸状菌)による微生物汚染は、人間において、深刻な病気の原因となり得、一部の場合において、死の原因とまでなり得る。例えば、医薬、医療機器、水、および食品産業などの一部の産業のメーカは、厳しい標準を満足して、自社の製品が微生物汚染物質のレベルを含まないことを検証しなくてはならない。この微生物汚染物質のレベルを含む場合は、受容者の健康に害を及ぼす。これらの産業は、特定の標準(例えば、米国食品医薬品局(USFDA)または環境保護庁によって課された標準)を満足するために、このような微生物汚染物質の存在に対して、頻繁に、正確で高感度なテストを要求する。例として、USFDAは、薬品および侵襲(invasive)医療機器の特定のメーカに、自社製品が検出可能なレベルのグラム陰性菌内の内毒素を有さないことを確立するように要求している。
【0004】
今日まで、テストサンプルの中に、微生物汚染物質の存在および/または量を検出するために、様々なアッセイが開発されてきた。アッセイの1つのファミリは、甲殻類(例えば、カブトガニ)の血リンパに由来する血球試料を使用する。これらのアッセイは、典型的には、血球溶解物が微生物汚染物質に露出されるときに生じる凝固カスケード(clotting cascade)を何らかの方法で探索する。例えば、図1は、カブトガニ(Limulus polyphemus)の血リンパから生成された血球溶解物に存在することで公知の特定の凝固カスケードの模式図を示す。このような溶解物は、Limulus変形細胞溶解物すなわちLALとして、当分野で公知である。
【0005】
図1に示されるように、LALの凝固システムは、哺乳類の血液凝固システムのように、内毒素またはリポ多糖類(LPS)仲介(mediated)経路(C因子経路)と、(1→3)−β−Dグルカン仲介経路(G因子経路)との少なくとも2つの凝固カスケードを備える。例えば、非特許文献1および非特許文献2を参照されたい。
【0006】
グラム陰性菌は、LALベースのアッセイを用いて検出され得ることは、理解されるべきである。例えば、グラム陰性菌は、内毒素またはLPSを生成し、LPSを結合タンパク質に結合した後、LAL中のC因子経路を活性化する(図1参照)。LALの内毒素またはLPS仲介活性化は、当分野で徹底的に文献に表わされてきた。例えば、非特許文献3〜非特許文献6を参照されたい。微生物内毒素がLALと接触されたとき、内毒素は、C因子経路として公知の一連の酵素反応を開始する。この一連の反応は、C因子、B因子、およびプロ凝固酵素(pro−clotting enzyme)と呼ばれる3つのセリンプロテアーゼ酵素原が関わるものと理解されている(図1参照)。簡単に言えば、内毒素に露出されると、内毒素に敏感な因子であるC因子が活性化される。活性型C因子は、その後、加水分解し、B因子を活性化し、活性型B因子は、プロ凝固酵素を活性化し、凝固酵素を生成する。その後、凝固酵素は、特異的部位(例えば、コアグロゲンのArg18−Thr19およびArg46−Gly47、無脊椎動物のフィブリノゲン状の凝固可能なタンパク質)を加水分解し、コアグリンゲルを生成する。例えば、特許文献1を参照されたい。
【0007】
さらに、例えば、真菌(例えば、酵母菌および糸状菌)によって生成される(1→3)−β−Dグルカンおよび他のLAL反応性グルカンは、G因子経路として公知の異なる酵素経路を介して、LALの凝固カスケードをまた活性化し得る(図1参照)ことも、また理解される。G因子は、(1→3)−β−Dグルカンまたは他のLAL反応性グルカンによって活性化されたセリンプロテアーゼ酵素原であることは、理解される。(1→3)−β−Dグルカンに露出させると、例えば、G因子は、活性化され、活性型G因子を生成する。活性型G因子は、その後、プロ凝固酵素を凝固酵素に変換し、この変換によって、凝固酵素は、コアグロゲンをコアグリンに変換することは、理解される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,605,806号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Moritaら、FEBS LETT.、1981年、129:318−321
【非特許文献2】Iwanagaら、J.PROTEIN CHEM.、1986年、5:255−268
【非特許文献3】Levinら、THROMB.DIATH.HAEMORRH.、1968年、19:186
【非特許文献4】Nakamuraら、EUR.J.BIOCHEM.、1986年、154:511
【非特許文献5】Mutaら、J.BIOCHEM、1987年、101:1321
【非特許文献6】Hoら、BIOCHEM.& MOL.BlOL.INT.、1993年、29:687
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
微生物および真菌による汚染の検出は、非常に重要であり得るが、これらの異なる生物(organism)間を区別する能力は、個体への感染の原因となっている感染物質、あるいはテストサンプル中に存在する汚染源および汚染タイプに関する有用な情報を提供し得る。例えば、一度、感染物質が同定されると、医師は、感染を処置するのに最も適切な投薬を処方し得る。さらに、一度、微生物または真菌の汚染のタイプが同定されると、このタイプの情報は、例えば、水の供給における汚染源を同定するプロセスをスピードアップし得る。その結果、一度、汚染源が同定されると、さらなる汚染が軽減され得る。しかしながら、一回のアッセイで、対象とするサンプル中のグラム陰性菌、グラム陽性菌、および真菌の間を区別し得る、シンプルで、ルーチンな方法に対するニーズは、今日もなお継続して存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、その一部は、生体サンプル中に存在する微生物を分類し得る一回のルーチンアッセイに血球試料を用いることが可能であるという発見に基づく。換言すれば、本発明の方法は、対象のサンプルから隔離された微生物が、グラム陰性菌、グラム陽性菌、または真菌であるかどうかを判断することを可能にする。
【0012】
一局面において、本発明は、テストサンプル中に存在する微生物を分類する方法を提供する。該方法は、(a)テストされるべき該サンプルを血球試料と結合して、混合物を生成するステップと、(b)(i)所定の時間における該混合物の光学特性と、あるいは(ii)該混合物の光学特性に、所定の変化が生じる時間とのうちのいずれかを測定するステップと、(c)ステップ(b)(i)の該光学特性、またはステップ(b)(ii)の該時間値を1つ以上(例えば、2つまたは3つ)の標準値と比較し、該サンプル中に、グラム陰性菌、グラム陽性菌、または真菌(例えば、酵母菌または糸状菌)が含まれるかどうかを判断するステップとを包含する。
【0013】
ステップ(b)(i)で測定される上記光学特性は、所定の波長での光の吸収率であり得る。代替として、ステップ(b)(i)で測定される該光学特性は、所定の波長での光の透過率であり得る。代替として、ステップ(b)(i)で測定される該光学特性は、上記サンプルの濁度であり得る。この方法において、該光学特性の第一の標準値は、該サンプル中のグラム陰性菌の存在の指標である。該光学特性の第二の標準値は、該サンプル中の真菌の存在の指標である。該光学特性の第三の標準値は、該サンプル中のグラム陽性菌の存在の指標である。各標準値は、指標(例えば、グラム陰性菌、グラム陽性菌、または真菌の指標)となる所与の光学特性の範囲を備え得る。
【0014】
ステップ(b)(ii)で測定される上記光学特性は、所定の波長での光の吸収率であり得る。代替として、ステップ(b)(ii)で測定される該光学特性は、所定の波長での光の透過率であり得る。代替として、ステップ(b)(ii)で測定される該光学特性は、上記サンプルの濁度であり得る。この方法において、時間の第一の標準値は、該サンプル中のグラム陰性菌の存在の指標である。時間の第二の標準値は、該サンプル中の真菌の存在の指標である。時間の第三の標準値は、該サンプル中のグラム陽性菌の存在の指標である。時間の各標準値は、指標(例えば、グラム陰性菌、グラム陽性菌、または真菌の指標)となる時間の範囲を備え得る。
【0015】
生物の各タイプの存在は、個別のアッセイで、あるいは組み合わせたアッセイで分析され得る。例えば、上記アッセイは、(i)グラム陽性菌、(ii)グラム陰性菌、(iii)真菌、(iv)グラム陰性菌とグラム陽性菌との組み合わせ、(v)グラム陰性菌と真菌との組み合わせ、(vi)グラム陽性菌と真菌との組み合わせ、ならびに(vii)グラム陰性菌、グラム陽性菌、および真菌の組み合わせを検出し得る。
【0016】
ステップ(a)で有用な血球試料は、変形細胞溶解物(例えば、Limulus変形細胞溶解物)であり得る。さらに、実行されるアッセイに依存して、ステップ(a)において、上記混合物は、発色基質をさらに備え得る。例として、該発色基質は、パラニトロアニリン発色団を備え得る。また、例として、該発色基質は、Ile−Glu−Ala−Arg−pNAを備え得、ここで、pNAは、パラニトロアニリン基である。
【0017】
本発明の方法は、様々な動的アッセイまたはエンドポイントアッセイを用いて、容易になされ得ることは、理解される。例示的なエンドポイントアッセイには、エンドポイント色素形成アッセイ、およびエンドポイント比濁アッセイを含む。例示的な動的アッセイには、ワンステップ動的アッセイ、マルチステップ動的アッセイ、および動的比濁アッセイを含む。上記のアッセイは、カートリッジの中で、あるいは堅固なサポート(solid
support)よって規定されるウェルの中のいずれかにおいて実行され得ることは、理解される。
【0018】
本発明の上記および他の対象、特徴および利点は、以下の図面および本発明の好ましい実施形態の詳細な説明から、より明らかにされる。
【0019】
本発明の対象および特徴は、以下に示される添付図面を参照して、より良く理解され得る。
【0020】
図面において、図面は、必ずしも縮尺通りに描かれておらず、同様な記号は、図面全体を通して、同じまたは類似のパーツを意味する。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
テストサンプル中の微生物を分類する方法であって、該方法は、
(a)該テストサンプルを血球試料と結合して、混合物を生成するステップと、
(b)(i)所定の時間における該混合物の光学特性と、あるいは(ii)該混合物の光学特性に所定の変化が生じる時間とのうちのいずれかを測定するステップと、
(c)ステップ(b)(i)の該光学特性、あるいはステップ(b)(ii)の時間値を1つ以上の標準値と比較して、該サンプル中に、グラム陰性菌、グラム陽性菌、または真菌が存在するかどうかを判断するステップと
を包含する、方法。
(項目2)
ステップ(c)において、前記光学特性の第一の標準値が、前記サンプル中のグラム陰性菌の存在の指標となり、
該光学特性の第二の標準値が、該サンプル中の真菌の存在の指標となり、
該光学特性の第三の標準値が、該サンプル中のグラム陽性菌の存在の指標となる、項目1に記載の方法。
(項目3)
ステップ(c)において、時間の第一の標準値が、前記サンプル中のグラム陰性菌の存在の指標となり、
値の第二の標準値が、該サンプル中の真菌の存在の指標となり、
時間の第三の標準値が、該サンプル中のグラム陽性菌の存在の指標となる、項目1に記載の方法。
(項目4)
ステップ(b)(i)において、前記光学特性は、所定の波長での光の吸収率、または所定の波長での光の透過率である、項目1〜項目3のいずれか1項に記載の方法。
(項目5)
ステップ(b)(i)において、前記光学特性は、前記サンプルの濁度である、項目1〜項目3のいずれか1項に記載の方法。
(項目6)
ステップ(b)(ii)において、前記光学特性は、所定の波長での光の吸収率、または所定の波長での光の透過率である、項目1〜項目3のいずれか1項に記載の方法。
(項目7)
ステップ(b)(ii)において、前記光学特性は、前記サンプルの濁度である、項目1〜項目3のいずれか1項に記載の方法。
(項目8)
ステップ(a)において、前記血球試料は、変形細胞溶解物である、項目1〜項目7のいずれか1項に記載の方法。
(項目9)
前記変形細胞溶解物は、Limulus変形細胞溶解物である、項目8に記載の方法。
(項目10)
テストサンプル中の微生物を分類する方法であって、該方法は、
(a)該テストサンプルを血球試料と結合して、混合物を生成するステップと、
(b)所定の時間に、該混合物の光学特性を測定するステップと、
(c)ステップ(b)の該光学特性を標準値と比較して、該サンプル中に、グラム陰性菌、グラム陽性菌、または真菌が存在するかどうかを判断するステップと
を包含する、方法。
(項目11)
ステップ(c)において、前記光学特性の第一の標準値が、前記サンプル中のグラム陰性菌の存在の指標となり、
該光学特性の第二の標準値が、該サンプル中の真菌の存在の指標となり、
該光学特性の第三の標準値が、該サンプル中のグラム陽性菌の存在の指標となる、項目10に記載の方法。
(項目12)
ステップ(b)において、前記光学特性は、所定の波長での光の吸収率、または所定の波長での光の透過率である、項目10または項目11に記載の方法。
(項目13)
ステップ(b)において、前記光学特性は、前記サンプルの濁度である、項目10または項目11に記載の方法。
(項目14)
ステップ(a)において、前記血球試料は、変形細胞溶解物である、項目10〜項目13のいずれか1項に記載の方法。
(項目15)
前記変形細胞溶解物は、Limulus変形細胞溶解物である、項目14に記載の方法。
(項目16)
テストサンプル中の微生物を分類する方法であって、該方法は、
(a)該サンプルを血球試料と結合して、混合物を生成するステップと、
(b)該混合物の光学特性に所定の変化が生じる時間を測定するステップと、
(c)ステップ(b)で測定された該時間を標準値と比較して、該サンプル中に、グラム陰性菌、グラム陽性菌、または真菌が存在するかどうかを判断するステップと
を包含する、方法。
(項目17)
ステップ(c)において、第一の標準値が、前記サンプル中のグラム陰性菌の存在の指標となり、
第二の標準値が、該サンプル中の真菌の存在の指標となり、
第三の標準値が、該サンプル中のグラム陽性菌の存在の指標となる、項目16に記載の方法。
(項目18)
ステップ(b)において、前記光学特性は、所定の波長での光の吸収率、または所定の波長での光の透過率である、項目16または項目17に記載の方法。
(項目19)
ステップ(b)において、前記光学特性は、前記サンプルの濁度である、項目16または項目17に記載の方法。
(項目20)
ステップ(a)において、前記血球試料は、変形細胞溶解物である、項目16〜項目19のいずれか1項に記載の方法。
(項目21)
前記変形細胞溶解物は、Limulus変形細胞溶解物である、項目20に記載の方法。
(項目22)
ステップ(a)は、カートリッジの中で実行される、項目1〜項目21のいずれか1項に記載の方法。
(項目23)
ステップ(a)は、堅固なサポートによって規定されるウェルの中で実行される、項目1〜項目21のいずれか1項に記載の方法。
(項目24)
ステップ(a)において、前記混合物は、発色基質をさらに備える、項目1〜項目23のいずれか1項に記載の方法。
(項目25)
前記発色基質は、パラニトロアニリン発色団を備える、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記発色基質は、Ile−Glu−Ala−Arg−pNAを備え、pNAは、パラニトロアニリン基である、項目24に記載の方法。
(項目27)
ステップ(c)は、ステップ(b)での前記測定結果と、前記サンプル中におけるグラム陰性菌の存在の指標となる前記光学特性の標準値とを比較することを包含する、項目1〜項目26のいずれか1項に記載の方法。
(項目28)
ステップ(c)は、ステップ(b)での前記測定結果と、前記サンプル中におけるグラム陽性菌の存在の指標となる前記光学特性の標準値とを比較することを包含する、項目1〜項目27のいずれか1項に記載の方法。
(項目29)
ステップ(c)は、ステップ(b)での前記測定結果と、前記サンプル中における真菌の存在の指標となる前記光学特性の標準値とを比較することを包含する、項目1〜項目28のいずれか1項に記載の方法。
(項目30)
前記標準値は、前記光学特性の値の範囲である、項目1、項目10、または項目16のいずれか1項に記載の方法。
(項目31)
前記標準値は、前記光学特性に、所定の変化が生じる時間の範囲である、項目1、項目10、または項目16のいずれか1項に記載の方法。
(項目32)
前記真菌は、酵母菌または糸状菌である、項目1〜項目30のいずれか1項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、Limulus変形細胞溶解物に存在するC因子およびG因子カスケードの模式図である。
【図2】図2は、例示的なマルチステップ動的アッセイを示す流れ図である。
【図3】図3A〜図3Dは、例示的なカートリッジの模式図であり、斜視図(図3A)、上面図(図3B)、側面図(図3C)、および端面図(図3D)である。
【図4−1】図4A〜図4Dは、例示的なカートリッジの模式図である。図4Aは、本発明の例示的なカートリッジの下部半体の図であり、固定化血球試料および発色基質の位置を示し、図4Bは、本発明の例示的なカートリッジの上部半体の図を示し、図4Cは、製造されたカートリッジの断面A−A’を通る断面図であり、図4Dは、製造されたカートリッジの断面B−B’を通る断面図である。
【図4−2】図4A〜図4Dは、例示的なカートリッジの模式図である。図4Aは、本発明の例示的なカートリッジの下部半体の図であり、固定化血球試料および発色基質の位置を示し、図4Bは、本発明の例示的なカートリッジの上部半体の図を示し、図4Cは、製造されたカートリッジの断面A−A’を通る断面図であり、図4Dは、製造されたカートリッジの断面B−B’を通る断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(発明の詳細な説明)
本発明は、その一部は、テストサンプル中に存在する微生物を分類し得る一回のルーチンアッセイに、血球試料を用いることが可能であるという発見に基づく。例えば、本方法は、対象サンプルから採取または隔離された微生物が、グラム陰性菌、グラム陽性菌、または真菌(例えば、酵母菌または糸状菌)であるかどうかを判断することを可能にする。
【0023】
上記方法は、(a)上記対象サンプルを血球試料と結合して、混合物を生成するステップと、(b)(i)所定の時間における該混合物の光学特性と、あるいは(ii)該混合物の光学特性に、所定の変化が生じる時間とのうちのいずれかを測定するステップと、(c)ステップ(b)(i)の該光学特性、またはステップ(b)(ii)の該時間値を1つ以上(例えば、2つまたは3つ)の標準値と比較し、該サンプル中に、グラム陰性菌、グラム陽性菌、または真菌(例えば、酵母菌または糸状菌)が存在するかどうかを判断するステップとを包含する。
【0024】
上記測定ステップは、所定の時間における上記混合物の光学特性を測定することを含む一つのアッセイフォーマット(すなわち、ステップ(b)(i))において、該光学特性の第一の値が、該サンプル中のグラム陰性菌の存在の指標となり得、該光学特性の第二の値が、該サンプル中の真菌の存在の指標となり得、該光学特性の第三の値が、該サンプル中のグラム陽性菌の存在の指標となり得ることは、キャリブレーションアッセイから理解される。様々な異なる光学特性が、本発明の実施に使用され得る。該光学特性は、例えば、所定の波長での光の吸収ユニットまたは透過ユニットであり得る。代替として、測定された該光学特性は、該サンプルの懸濁であり得る。
【0025】
上記測定ステップは、所定の変化が上記混合物の光学特性に生じる時間を測定することを含む場合(すなわち、ステップ(b)(ii))の別のアッセイフォーマットにおいて、第一の時間値が、上記サンプル中のグラム陰性菌の存在の指標となり得、第二の時間値が、該サンプル中の真菌の存在の指標となり得、第三の時間値が、該サンプル中のグラム陽性菌の存在の指標となり得るキャリブレーションアッセイから理解される。該光学特性は、例えば、所定の波長での光の吸収ユニットまたは透過ユニットであり得、あるいは該サンプルの懸濁であり得る。
【0026】
生物の各タイプの存在は、個別のアッセイで、あるいは組み合わせたアッセイで分析され得る。例えば、上記アッセイは、(i)グラム陽性菌、(ii)グラム陰性菌、(iii)真菌、(iv)グラム陰性菌とグラム陽性菌との組み合わせ、(v)グラム陰性菌と真菌との組み合わせ、(vi)グラム陽性菌と真菌との組み合わせ、ならびに(vii)グラム陰性菌、グラム陽性菌、および真菌の組み合わせを検出し得る。
【0027】
様々な血球試料が、本発明の実施に有用であり得ることは理解される。血球は、様々な生物(例えば、昆虫および甲殻類)から採取され得る。例示的な昆虫には、カイコの幼虫を含む。例示的な甲殻類には、Cancer属に属するカニ、例えば、Cancer borealis、Cancer irratus、Carcinus maenas、Hemigrapsus sanguineus(日本のイソガニ)、Limulus属に属するカニ(例えば、Limulus polyphemus)、Tachypleus属に属するカニ(例えば、Tachypleus gigas、例えば、Tachypleus tridentatus)、およびCarcinoscorpius属に属するカニ(例えば、Carcinoscorpius rotundicauda)を含む。
【0028】
本発明の実施で有用な血球試料は、当分野で公知の従来技術(例えば、浸透圧衝撃、均質化、超音波化(ultrasonication)、および超遠心分離)を用いる溶解による血球に由来し得る。例えば、粗溶解物(crude lysate)は、Levinら(1968)「THROMB.DlATH.HAEMORRH.」19:186、またはPrior (1990)「Clinical Applications of the Limulus Amebocyte Lysate Test」CRC Press 28−36および159−166、ならびに米国特許第4,322,217号明細書に当初記載されたような手順に改変を加えて、生成され得る。
【0029】
一実施形態において、有用な血球試料は、血球溶解物を含む。血球溶解物は、任意の溶解物、あるいはその溶解物のフラクション(fraction)または成分を含み、血球の溶解および/または膜の浸透化によって生成され、例えば、(i)甲殻類または昆虫から抽出された変形細胞または血リンパ細胞、および/または(ii)宿主(host)から抽出された後、試験管で培養された変形細胞または血リンパ細胞を含む。Ca2+イオン透過担体などのような膜浸透化物質で接触することによって、血リンパ細胞から押し出された(すなわち、溶解以外によって押し出された)血球細胞材料、あるいは、さもなくば、細胞の溶解なしに抽出された血球細胞材料も、また、血球溶解物であると考えられる。好ましい血球溶解物は、甲殻類(例えば、カブトガニ)の血液から調製された変形細胞溶解物である。血球溶解物が、図1に示される酵素カスケードの1つ以上の天然(純化された)成分または合成成分のカクテルを含み得ることは、また考慮される。
【0030】
変形細胞溶解物は、甲殻類(例えば、カブトガニ)から抽出された変形細胞からの細胞含有物(cellular contents)の溶解、押し出し(extrusion)、抽出によって生成される任意の溶解物、あるいはそのフラクションまたは成分である。変形細胞溶解物は、(例えば、図1に示される)酵素カスケードの少なくとも1つの成分を備え、および/または、酵母菌または糸状菌によって生成された内毒素(例えば、グラム陰性菌内毒素)および/またはグルカン(例えば、(1→3)−β−Dグルカン)の存在する中で凝固を生成する。好ましい変形細胞溶解物は、カブトガニに由来し得る。カブトガニには、Limulus属に属するカニ(例えば、Limulus polyphemus)、Tachypleus属に属するカニ(例えば、Tachypleus gigas、およびTachypleus tridentatus)、Carcinoscorpius属に属するカニ(例えば、Carcinoscorpius rotundicauda)を含む。
【0031】
また、米国特許第6,391,570号、同第6,270,982号に記載された方法によって生成されたG因子劣化溶解物のような溶解物から、G因子活動を除去して、内毒素特有の溶解物を生成することが、可能である。また、溶解物は、G因子活動の特定のインヒビタ(inhibitor)またはモジュレータ(modulator)(例えば、米国特許第5,155,032号、同第5,179,006号、同5,318,893号、同5,474,984号、同5,641,643号、同6,270,982号、および同6,341,570号に記載された特定の洗剤、糖類、多糖類、および他の試薬)を追加して、G因子活動を劣化させ得る。内毒素特有の溶解物は、微生物内毒素と反応可能な溶解物であるが、この内毒素において、(1→3)−β−Dグルカンへの反応性は、内毒素特有の溶解物が調製される粗溶解物に対して、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも約90%、そして、より好ましくは、少なくとも約95%劣化される。
【0032】
C因子活動の劣化した溶解物を生成して、(1→3)−β−Dグルカン特有の溶解物を生成することが、可能である。米国特許出願公開第2004/0241788号(2004年12月2日公開)は、G因子特有の溶解物を生成する方法を記載している。この方法において、グルカン特有の溶解物は、少なくとも0.15Mの塩、より好ましくは0.25Mの塩(例えば、ナトリウムイオンまたはカリウムイオンのような一価の陽イオンを含む塩)の存在する中で変形細胞を溶解することによって調製される。グルカン特有の溶解物は、グリカン(例えば、(1→3)−β−Dグルカン)と反応することが可能であるが、微生物内毒素またはリポ多糖類に対するその反応性は、グルカン特有の溶解物が調製される粗溶解物に対して、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも90%、そして、より好ましくは、好ましくは95%劣化される。
【0033】
さらに、有用な血球試料が、異なる溶解物の組み合わせをまた含み得ることは、理解される。例えば、G因子活動は劣化したが、C因子活動は保持している溶解物を、C因子活動は劣化したが、G因子活動は保持している異なる溶解物と結合することによって、本発明の実施に有用な溶解物を生成することが可能である。その結果得られる溶解混合物は、C因子活動とG因子活動との双方を含む。
【0034】
当業者には明らかなように、血球溶解物のプロ凝固酵素の活性化を促進することで公知の二価の金属塩は、凝固酵素を不活性にし得るpHが極端になるのを避けるためのバッファとともに、血球試料に含まれることが好ましい。変形細胞溶解物システムと互換性のある当分野で理解されている任意のバッファと塩とが、使用され得る。典型的な調製添加物は、約100〜300mMのNaCl、約10〜100mMの二価の陽イオン(例えば、Mg2+またはCa2+)、生体適合性のあるバッファ(例えば、Tris(トリス(ヒドロキシ)アミノメタン)を含み得るが、これらに限定されず、最終pH約6.0〜約8.0を与え、溶解物が、凍結乾燥される場合、糖(例えば、マンニトールまたはデキストラン)である。適切な調製添加剤の選択は、ルーチンの実験によって、また決定され得る。
【0035】
合成発色基質は、Tachypleus tridentatusおよびLimulus polyphemusという双方のカブトガニの血液リンパから調製されたLALにおける内毒素で活性化されたプロ凝固酵素のレベルを測定するために使用されてきた(Iwanagaら(1978)HEMOSTASIS 7:183−188)。発色基質を使用するLALアッセイの間に、LALにおけるプロ凝固酵素(セリンプロテアーゼ)は、内毒素によって活性化され、その基質からその色素形成基を遊離するように、アルギニンのカルボキシル側でその基質のペプチド鎖を切断し、それにより、例えば、分光光度計によって容易に検出され得るマーカー化合物を遊離する。従来のLALゲル化テストの代わりに、LALアッセイにおいて合成発色基質を使用する一つの利点は、活性化された凝固酵素の量が定量され得、そのサンプル中の内毒素レベルに相関付けられ得ることである。
【0036】
血球試料の凝固酵素により切断される任意の発色基質は、本発明の実施において使用され得る。米国特許第5,310,657号は、例えば、式R−A−A−A−A−B−Rを有する例示的発色基質を記載し、ここでRは、水素、ブロックしている芳香族炭化水素またはアシル基を表し;Aは、Ile、ValまたはLeuから選択されるL−アミノ酸またはD−アミノ酸を表し;Aは、GluまたはAspを表し;Aは、AlaまたはCysを表し;Aは、Argを表し;Bは、エステルおよびアミドから選択される連結を表し;そしてRは、B連結を介してアルギニンのCカルボキシル末端に共有結合される色素形成基または蛍光発生基を表し、その蛍光発生部分または色素形成部分は、発色基質の残りから切断されて、発色団または発蛍光団を生成し得る。例示的な発色基質は、コンセンサス配列アセテート−Ile−Glu−Ala−Arg−pNAを有する。ここでpNAは、パラニトロアニリン基を表す。
【0037】
米国特許第4,188,264号は、配列R−Gly−Arg−RにおけるL−アミノ酸からなる構造を有するペプチド基質を記載する。ここでRは、N−ブロックされたアミノ酸を表し、Rは、酵素加水分解によって遊離されて、着色化合物HRを生じ得る基である。米国特許第4,510,241号は、色素形成性ペプチド基質を開示し、この基質は、Gly部分がAlaまたはCysによって配列中で置換されているという点で、以前の基質とは異なる。代替として、その発色基質は、発蛍光団(例えば、7−アミノ−4−メチルクマリン、7−アミノ−4−トリフルオロメチルクマリン、および4−メトキシ−2−ナフタルアミン(naphthalyamine)を含み得る。
【0038】
(アッセイの考察)
本発明の方法は、様々なエンドポイントアッセイまたは動的アッセイを用いて、容易にされ得ることは、理解される。例示的なエンドポイントアッセイは、エンドポイント色素形成アッセイまたはエンドポイント比濁アッセイを含む。例示的な動的アッセイには、動的比濁アッセイ、ワンステップ動的アッセイまたはマルチステップ動的アッセイを含む。アッセイのそれぞれは、以下に、より詳細に検討される。さらに、アッセイは、特定のアッセイフォーマット(例えば、カートリッジまたはプレートのウェルにおいて、例えば、96ウェルプレート)で実行されるように改変され得ることは、理解される。
【0039】
(1)動的アッセイ
例示的な動的アッセイには、マルチステップ動的アッセイ、シングルステップ動的アッセイ、および動的比濁アッセイを含む。
【0040】
(i)マルチステップ動的アッセイ
マルチステップ動的アッセイに関わる様々なステップが、図2に模式的に示される。アッセイは、サンプルを大量の血球試料と結合することによって開始され、サンプル−血球試料の混合物を生成する。この混合物は、次いで、所定の期間にわたって、インキュベートされる。混合物は、次いで、基質(例えば、発色基質)と接触され、サンプル−血球試料−基質の混合物を生成する。その後、光学的性質の所定の変化(例えば、吸収の値の特定の変化、または透過の値の特定の変化)における時間が、測定される。
【0041】
特定の量のグラム陰性菌、グラム陽性菌、または真菌が、このアッセイに導入されるときに、光学特性に所定の変化が生じる時間を測定することによって、このアッセイは、キャリブレーションされ得る。グラム陰性菌が第一の値(例えば、第一の時点の範囲)を与え、真菌が第二の値(例えば、第二の時点の範囲)を与え、グラム陽性菌が第三の値(例えば、第三の時点の範囲)を与えることは、理解される。第一、第二、および第三の値は、互いにオーバーラップしないことが好ましい。テストサンプルによって得られた結果を第一、第二、および第三の値のうちの1つ以上と比較することによって、テストサンプル中に存在する微生物が、グラム陰性菌、グラム陽性菌、または真菌であるかどうかを判断することが可能になる。
【0042】
マルチステップ動的アッセイは、カートリッジフォーマット内で実行され得ることは、理解される。カートリッジは、光学検出器(例えば、米国特許第Des.390,661号に図示され、記載されたような携帯光学検出器)とともに使用されることが好ましい。
【0043】
例示として、図3A〜図3Dに示されるように、カートリッジ1は、例えば、成形可能で(moldable)生体適合可能な材料から製造される実質的に平面の筺体を有する。筺体は、任意の材料から製造され得るが、透明および/または半透明のガラスまたはポリマが好ましい。好ましいポリマには、例えば、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル、ポリエステル、光学グレードのポリマ、または光学セル(optical cell)が実質的に透明である任意のプラスチックを含む。筺体は、少なくとも1つの入口ポート4と、少なくとも1つの光学セル6と、この入口ポート4と光学セル6との間で流体流れ連絡を提供する流体接触表面を有する少なくとも1つの導管(conduit)8とを含む。光学セル6に対して、ただ要求されることは、この光学セル6が、テストされるべきサンプルを含むことの可能なボイドを規定することと、光学セル6の部分が光透過性であることのみである。カートリッジ1は、また、そのカートリッジ1をポンプに取り付けるために、流体入口ポート4および光学セル6とが流体流れ連絡にある少なくとも1つのポンプポート12を有し得る。次いで、そのポンプは、ポンプポート12を介して陰圧を付与して、そのサンプルを流体入口ポート4から光学セル6へと引っ張り得る。血球溶解物は、導管8の流体接触表面の第一の領域14上に配置され、その結果、サンプルが流体入口ポート4に付与されるとき、そのサンプルは、領域14を横断し、そのサンプルが光学セル6に向かって動く際に、その血球溶解物をサンプルに可溶化または再構成する。
【0044】
導管8の流体接触表面の第二の領域16は、第一の領域14から間隔を空けて離れ、第一の領域14の下流にある。この構成において、血球溶解物は、第一の領域14に配置され、発色基質は、第二の領域に配置される。それは、サンプルが、領域14で血球溶解物と接触された後、サンプル−溶解物の混合物が、導管8を横切って、領域16の発色基質に接触するようにするためである。サンプル−溶解物−基質の混合物は、次いで、導管8を横切って、光学セル6に向かう。
【0045】
これらのカートリッジは、必要とされるテストのタイプおよび/または回数に従って、設計され、使用され得る。例えば、単一のサンプルは、例えば、研究実験用途または医療用機器および生物薬剤テストのために、例えば、二連(duplicate)または三連(triplicate)でテストされ得る。代替として、2つ以上の異なるサンプルが、例えば、水および透析液の透析施設でのテストのために、個々にテストされ得る。このカートリッジは、好ましくは、一度使用したら処分される一回使用使い捨てカートリッジである。このカートリッジは、マルチウェルプレートにおいて行われる従来型のエンドポイント色素形成アッセイまたは動的色素形成アッセイにおいて使用されているものよりも、1サンプルあたりに使用する血球溶解物が、約20分の1〜100分の1と少ないので、したがって、より低コストでかつより環境に優しいテストを提供する。
【0046】
図3Aを参照すると、例示的なカートリッジ1におけるマルチステップ動的アッセイを実行するために、サンプルは、例えば、最初に、ポンプ動作によって、血球試料を含む第一の領域14に移動し、ここで、混合され、所定の期間にわたって、インキュベートされる。サンプル−血球試料の混合物は、次いで、例えば、ポンプ動作によって基質(例えば、発色基質)を含む第二の領域16に移動し、ここで、可溶化される。サンプル−発色基質の混合物は、次いで、光学特性測定のために、光学セル6に移動する。混合するステップに要する時間インターバルとインキュベートするステップに要する時間インターバルとは、最適な感度と微生物汚染物質濃度範囲とに対して事前にプログラムされる。例示的なカートリッジベースのマルチステップ動的アッセイは、実施例1に記載される。
【0047】
マルチステップアッセイが、以上で検討されたタイプのカートリッジで実行され得るが、様々な他のフォーマット(例えば、マイクロタイター(microtiter)プレートのウェル内)でも、また使用され得る。このタイプのアッセイにおいて、対象のサンプルは、血球試料と結合され、所定の期間にわたって、インキュベートされる。次いで、所定の期間経過後、発色基質が、ウェルに追加される。混合後、光学特性における所定の変化が生じる時間が、測定される。その結果が、次いで、1つ以上の標準値に対して比較され得、対象のサンプル中に、グラム陰性菌、グラム陽性菌、または真菌が存在するかどうかが判断される。
【0048】
ウェルタイプのフォーマットにおいて、好ましくは、ロボットのような自動化システムを用いて、サンプルおよび試薬は、ウェルのそれぞれに追加され、プレートは、繰り返して、各ウェルの吸光度を連続的に読むようにプログラムされ得るマイクロプレートリーダによって処理される。
【0049】
(ii)シングルステップ動的アッセイ
シングルステップ動的アッセイ(例えば、シングルステップ色素形成アッセイ)は、米国特許第5,310,657号に記載されている。簡単に言えば、その動的色素形成アッセイは、(i)血球試料を分析されるべきサンプルおよび基質(例えば、発色基質)とともに、同時に可溶化するステップと、(ii)その結果得られた混合物を、約0℃〜約40℃、好ましくは約25℃〜約40℃の温度で、所定の時間範囲にわたってインキュベートするステップと、(iii)従来型の分光光度計を用いて、測色値の読みの所定の値または変化に到達する測色変化に要する時間を測定するステップとを含む。
【0050】
このタイプのアッセイは、マルチステップの動的アッセイのように、カートリッジタイプまたはウェルタイプのフォーマットで実行され得る。マルチステップ動的アッセイに対して上述されたのと同様なカートリッジが、シングルステップ動的アッセイで使用するように改変され得る。図3Aを参照すると、発色基質が、例えば、血球溶解物とともに、導管8の表面に、第一の領域14で付与される。カートリッジ1内の動的色素形成アッセイを実行するために、図3Aを参照して、サンプルが、例えば、ポンプ動作によって、血球試料と発色基質との双方を含む導管8の第一の領域14に移動し、ここで、この双方は、例えば、順方向および逆方向のポンプ動作の間の循環によって可溶化される。サンプル−血球試料−基質の混合物は、次いで、光学特性の測定(例えば、光学検出器によるサンプルの吸光度または透過率特性)のために、光学セル6に移動する。検出器は、各光学特性に対して、例えば、光学透過率が5%の低下を示すのに要する時間を決定し得る。複数回のアッセイ(例えば、2回のアッセイ)からの結果は、平均化され得る。
【0051】
特定の量のグラム陰性菌、グラム陽性菌、または真菌が、このアッセイに導入されるときに、光学特性に所定の変化が生じる時間を測定することによって、このアッセイは、キャリブレーションされ得る。グラム陰性菌が第一の値(例えば、第一の時点の範囲)を与え、真菌が第二の値(例えば、第二の時点の範囲)を与え、グラム陽性菌が第三の値(例えば、第三の時点の範囲)を与えることは、理解される。第一、第二、および第三の値は、互いにオーバーラップしないことが好ましい。テストサンプルによって得られた結果を第一、第二、および第三の値のうちの1つ以上と比較することによって、テストサンプル中に存在する微生物が、グラム陰性菌、グラム陽性菌、または真菌であるかどうかを判断することが可能になる。
【0052】
このタイプのアッセイフォーマットは、様々な他のフォーマット(例えば、マイクロタイタープレートのウェル内)で使用され得る。このタイプのアッセイにおいて、対象のサンプルは、血球試料および発色基質とともに混合される。混合後、光学特性における所定の変化が生じる時間が、測定される。その結果が、標準値に対して比較され、対象のサンプル中に、グラム陰性菌、グラム陽性菌、または真菌が存在するかどうかが判断され得る。例示的なウェルベースのシングルステップ動的アッセイは、実施例3に記載される。
【0053】
(iii)動的比濁アッセイ
動的比濁アッセイは、前述のPrior(1990)のpp.28〜34に記載されている。簡単に言えば、その動的比濁アッセイは、(i)血球溶解物を分析されるべきサンプルとともに可溶化するステップと、(ii)その結果得られた混合物を、約0℃〜約40℃、好ましくは約25℃〜約40℃の温度で、所定の時間範囲にわたってインキュベートするステップと、(iii)従来型の凝固測定計、比濁計、または分光光度計を用いて凝固によって生じた濁度の変化が、所定の値に達するまでに要する時間か、あるいは濁度の変化の比かのいずれかを測定するステップとを含む。
【0054】
このタイプのアッセイは、上述のアッセイと同様に、カートリッジタイプまたはウェルタイプのフォーマットで実行され得る。マルチステップまたはシングルステップの動的アッセイに対して上述されたのと同様のカートリッジが、動的比濁アッセイにおける使用のために、改変され得る。図3Aを参照すると、発色基質が、第一の領域14または第二の領域16のいずれかに付与される必要は一切ない。
【0055】
図3Aを参照すると、動的比濁アッセイを実行するために、サンプルが、例えば、血球試料を含む導管8の第一の領域14に移動し、ここで、例えば、順方向および逆方向のポンプ動作の間の循環によって可溶化される。サンプル−溶解物の混合物は、次いで、光学特性(例えば、濁度)の測定のために、光学セル6に移動する。この濁度は、例えば、光学検出器を用いて、サンプル−溶解物の混合物の吸光度または透過率を測定することによる。検出器は、各光学特性に対して、例えば、光学透過率が5%の低下を示すのに要する時間を決定し得る。複数回のアッセイ(例えば、2回のアッセイ)からの結果は、平均化され得る。
【0056】
特定の量のグラム陰性菌、グラム陽性菌、または真菌が、このアッセイに導入されるときに、光学特性(例えば、濁度)に所定の変化が生じる時間を測定することによって、このアッセイは、キャリブレーションされ得る。グラム陰性菌が第一の値(例えば、第一の時点の範囲)を与え、真菌が第二の値(例えば、第二の時点の範囲)を与え、グラム陽性菌が第三の値(例えば、第三の時点の範囲)を与えることは、理解される。第一、第二、および第三の値は、互いにオーバーラップしないことが好ましい。テストサンプルによって得られた結果を第一、第二、および第三の値に対して比較することによって、テストサンプル中に存在する微生物が、グラム陰性菌、グラム陽性菌、または真菌であるかどうかを判断することが可能になる。
【0057】
このタイプのアッセイフォーマットは、様々な他のフォーマット(例えば、マイクロタイタープレートのウェル内)で使用され得る。このタイプのアッセイにおいて、対象のサンプルは、血球試料と混合される。混合後、光学特性(例えば、濁度)における所定の変化が生じる時間が、測定される。その結果が、次いで、標準値に対して比較され得、対象のサンプル中に、グラム陰性菌、グラム陽性菌、または真菌が存在するかどうかが判断される。例示的なウェルベースの動的比濁アッセイは、実施例2に記載される。
【0058】
(2)エンドポイントアッセイ
例示的なエンドポイントアッセイは、エンドポイント色素形成アッセイおよびエンドポイント比濁アッセイを含む。
【0059】
(i)エンドポイント色素形成アッセイ
エンドポイント色素形成アッセイは、上述のPrior(1990)、pp.28−34、米国特許第4,301,245号、および同第4,717,658号に記載されている。簡単に言えば、そのエンドポイント色素形成アッセイは、(i)血球試料を分析されるべきサンプルと可溶化するステップと、(ii)その結果得られた混合物を、約0℃〜約40℃、好ましくは約25℃〜約40℃の温度で、所定の時間にわたってインキュベートするステップと、(iii)基質(例えば、発色基質)をインキュベートされたサンプル−血球試料の混合物と接触するステップと、(iv)オプションとして、反応インヒビタ(例えば、酢酸)を追加するステップと、(v)酵素活性によって、基質から生成された物質(substance)を、例えば、測色変化によって測定するステップとを含む。
【0060】
このタイプのアッセイは、カートリッジタイプまたはウェルタイプのフォーマットで実行され得る。エンドポイント色素形成アッセイが、カートリッジ1(図3A参照)で実行されるとき、サンプルは、例えば、血球試料を含む導管8の第一の領域14に移動し、ここで、例えば、順方向および逆方向のポンプ動作の間の循環によって可溶化される。所定のインキュベーション期間に引き続き、サンプル−血球試料の混合物は、次いで、例えば、ポンプ動作によって、発色基質を含む導管8の第二の領域16に移動し、ここで、例えば、順方向および逆方向のポンプ動作の間の循環によって、可溶化される。サンプル−血球試料−基質の混合物は、オプションとして、次いで、反応インヒビタを含む第三の領域に移動する。その後、サンプル−血球試料−基質の混合物は、光学検出器によって、サンプルの光学特性(例えば、吸光度または透過率)を測定するために、光学セル6に移動する。しかしながら、カートリッジ内でエンドポイント色素形成アッセイを実行するとき、反応インヒビタを用いて、反応を停止することは必ずしも必要はないことは、考慮される。このタイプのアッセイでは、最終的な光学の読み(エンドポイントでの読み)は、所定の時間に記録される。
【0061】
特定の量のグラム陰性菌、グラム陽性菌、または真菌が、このアッセイに導入されるときに、光学特性(例えば、吸光度または透過率)を測定することによって、このアッセイは、キャリブレーションされ得る。グラム陰性菌が第一の値(例えば、吸光度または透過率の第一の値の範囲)を与え、真菌が第二の値(例えば、吸光度または透過率の第二の値の範囲)を与え、グラム陽性菌が第三の値(例えば、吸光度または透過率の第三の値の範囲)を与えることは、理解される。第一、第二、および第三の値は、互いにオーバーラップしないことが好ましい。テストサンプルによって得られた結果を第一、第二、および第三の値のうちの1つ以上に対して比較することによって、テストサンプル中に存在する微生物が、グラム陰性菌、グラム陽性菌、または真菌であるかどうかを判断することが可能になる。
【0062】
検討されたように、このタイプのアッセイフォーマットは、様々な他のフォーマット(例えば、マイクロタイタープレート内)で使用され得る。このタイプのアッセイにおいて、対象のサンプルは、血球試料と混合され、所定の期間にわたって、インキュベートされる。次いで、発色基質が、別の所定の期間にわたってインキュベートされた混合物およびサンプルに追加される。次いで、反応インヒビタ(例えば、酢酸)が、サンプルに追加され、サンプルの光学特性(例えば、吸光度または透過率)が測定される。その結果が、標準値に対して比較され得、対象のサンプル中に、グラム陰性菌、グラム陽性菌、または真菌が存在するかどうかが判断される。例示的なウェルベースの色素形成アッセイは、実施例4に記載される。
【0063】
(ii)エンドポイント比濁度アッセイ
エンドポイント比濁アッセイは、上述のPrior(1990)、pp.28−34に記載されている。簡単に言えば、そのエンドポイント比濁アッセイは、(i)血球溶解物を分析されるべきサンプルとともに可溶化するステップと、(ii)その結果得られた混合物を、約0℃〜約40℃、好ましくは約25℃〜約40℃の温度で、所定の時間にわたってインキュベートするステップと、(iii)オプションとして、反応インヒビタ(例えば、酢酸)を追加するステップと、(iv)凝固の結果としての濁度の増加がある場合、それを従来型の凝固測定計、比濁計、または分光測光計を用いて測定するステップとを含む。
【0064】
エンドポイント比濁アッセイは、カートリッジタイプのフォーマットで実行され得る。図3Aを参照すると、サンプルは、カートリッジ1に付与され、例えば、血球溶解物を含む導管8の第一の領域14に移動し、ここで、例えば、順方向および逆方向のポンプ動作の間の循環によって可溶化される。サンプル−溶解物の混合物は、次いで、サンプルの光学特性(例えば、濁度)を光学検出器を用いて測定するために、光学セル6に移動する。複数回のアッセイ(例えば、2回のアッセイ)からの結果は、平均化され得る。
【0065】
特定の量のグラム陰性菌、グラム陽性菌、または真菌が、このアッセイに導入される所定の時間に、例えば、濁度を測定することによって、このアッセイは、キャリブレーションされ得る。グラム陰性菌が第一の値(例えば、第一の濁度値の範囲)を与え、真菌が第二の値(例えば、第二の濁度値の範囲)を与え、グラム陽性菌が第三の値(例えば、第三の濁度値の範囲)を与えることは、理解される。第一、第二、および第三の値は、互いにオーバーラップしないことが好ましい。テストサンプルによって得られた結果を第一、第二、および第三の値のうちの1つ以上に対して比較することによって、テストサンプル中に存在する微生物が、グラム陰性菌、グラム陽性菌、または真菌を含むかどうかを判断することが可能になる。
【0066】
このタイプのアッセイフォーマットは、他のフォーマット(例えば、マイクロタイタープレートのウェル内)で実行され得る。このタイプのアッセイにおいて、対象のサンプルは、血球試料と混合され、所定の期間にわたって、インキュベートされる。次いで、インヒビタの追加によって、反応が停止され得る。サンプルの光学特性(例えば、濁度)は、次いで、所定の時点に測定される。その結果は、次いで、標準値に対して比較され得、対象のサンプル中に、グラム陰性菌、グラム陽性菌、または真菌が存在するかどうかが判断される。
【0067】
(検体収集および調整の考察)
一般に、テストされるべきサンプルを採取、保存、またはさもなければ接触するために使用される材料、ならびにテスト試薬は、微生物汚染がないべきであり、例えば、発熱物質がないべきである。材料は、例えば、250℃で30分間加熱することによって、発熱物質がないようにされ得る。発熱物質除去した材料が、その後の環境による汚染から保護されるべく、適切な予防措置がとられるべきである。
【0068】
一度、サンプルが採取されると、微生物汚染物質は、好ましくは、無菌条件下で培養され、個々のコロニーを提供する。18時間〜24時間の隔離培養の使用が、最適な結果を提供し得る。コロニーは、次いで、培養が成長媒体のフラグメントで汚染されるのを防止するために、培養プレートから注意深く除去される。セルは、次いで、リポ多糖類のない溶液(例えば、生理食塩水または水)に懸濁される。その結果得られる懸濁液は、次いで、本明細書に記載されたアッセイのうちの1つ以上を用いて、アッセイされ得る。
【0069】
これらのアッセイは、例えば、流体(例えば、哺乳動物に、局所的または全身に(例えば、非経口的に)投与されるべき流体、または感染についてテストされるべき体液(例えば、血液、リンパ液、尿、血清、血漿、腹水、肺吸引液などを含む))中の対象のサンプル中に存在する微生物のタイプを分類するために使用され得る。さらに、このアッセイは、水の供給(例えば、飲料水の供給)中に存在する微生物のタイプを分類するために使用され得る。さらに、本発明のこのアッセイは、食品、医薬品または医療用機器に存在する微生物汚染物質のタイプを分類するために使用され得る。さらに、本発明のアッセイは、表面上に存在する微生物のタイプを分類するために使用され得る。例えば、対象の表面は、スワッブ(swab)され、このスワッブは、液体中に導入されるか、あるいは液体中で溶解される。この液体は、次いで、本明細書に記載されたように、アッセイされ得る。
【実施例】
【0070】
本発明の実施は、以下の実施例からより十分に理解される。これらの実施例は、例示目的でのみ本明細書に示されるのであって、決して本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0071】
(実施例1:カートリッジベースのマルチステップ動的アッセイ)
図3に示される例示的なカートリッジが、以下のように準備された。図4Aを参照すると、LALおよび発色基質が、Champion 3700自動カートリッジフィラー(Creative Automation Company、カリフォルニア州Sun Valley)を用いて、カートリッジ1の下部半体2の導管8’のそれぞれの領域14’および16’に付与された。簡単に言えば、1%マンニトール(Osmitrol、Baxter、イリノイ州Deerfield)および0.1%デキストラン(MW10〜100K、Sigma−Aldrich、ミズーリ州St.Louis)を含む4〜5.0μLのEndosafe LAL(Charles River Endosafe、サウスカロライナ州Charleston)が、領域14’に付与された。1%ポリビニルアルコール(PVA)(MW 7K〜30K、Sigma−Aldrich、ミズーリ州St.Louis)を含む4〜5.0μLの(1.3mg/mL)発色基質Ile−Glu−Ala−Arg−pNA Chromogenix S−2423(Instrumentation Laboratories、イタリアMilan)が、領域16’に付与された。そのカートリッジ1の下部半体2は、Lunaire Environmental Steady State&Stability Test Chamber(Lunaire Environmental、ペンシルベニア州Williamsport)中で、Puregas HF200 Heatless Dryer(MTI
Puregas、コロラド州Denver)で1時間、25℃±2℃の制御された温度および5%±5%の湿度下で乾燥された。温度および湿度は、Watlow Series 96 1/16 DIN Temperature Controller(Watlow Electric Manufacturing Company、ミズーリ州St.Louis)によって、制御された。
【0072】
製造後、その2つの半体2および3は、領域14’および14”が一方を他方の上部に並び、そのカートリッジ半体2および3の縁が、Dukane Dynamic Process Controller(Dukane Corporation、イリノイ州St.Charles)の制御下で、Dukane Model 210 Ultrasonic Sealer(Dukane Corporation、イリノイ州St.Charles)を用いて超音波でシールされるように、アセンブリされた。
【0073】
マルチステップ動的アッセイは、以下により詳細に記載されるように、次いで、カートリッジを用いて実行された。簡単に言えば、表1に列挙された微生物の幾つかの種が、America Type Culture Collection(ATCC)から入手され、標準条件下で、ペトリ皿に寒天を含む標準微生物成長媒体上で成長された。一晩成長させた後、個々のコロニーが、滅菌ループを用いて、寒天の表面から取り出された。次いで、コロニーは、滅菌した清浄な(LPSまたは他の微生物汚染のない)生理食塩水に懸濁された。懸濁密度は、McFarland等価懸濁標準上で、0.5ユニットの密度を与えるように、調整された。
【0074】
次いで、カートリッジは、Charles River Endosafe(サウスカロライナ州Charleston)から入手したEndosafe Portable Test System(PTS)に挿入された。次いで、25μLの各懸濁液が、カートリッジの個々のサンプルウェルに置かれた。サンプルは、PTSによってカートリッジの中に引っ張られた。最初に、サンプルは、血球試料と結合された。所定の期間の後に、サンプルは、発色基質(p−ニトロアニリン)と混合された。各サンプルにおける反応性の度合いは、395nmでの発色の動的な読みによって測定された。結果は、表1に総括され、特定の色密度(オンセット(onset)O.D.)に到達するまでに要した時間を(秒で)示す。
【0075】
【表1】

表1に総括された結果は、テストされた条件下で、グラム陰性菌が、オンセットO.D.に到達するのに、18秒〜20秒を要し、酵母菌および糸状菌が、オンセットO.D.に到達するのに、250秒〜271秒を要し、グラム陽性菌が、オンセットO.D.に到達するのに、1200秒を要したことを示す。様々な研究の結果、グラム陰性菌に対するオンセット時間は、ルーチンで150秒未満であり得、酵母菌および糸状菌に対するオンセット時間は、ルーチンで151秒〜399秒の範囲であり得、グラム陽性菌に対するオンセット時間は、ルーチンで400秒以上を要し得ることが見出された。テストサンプルによって得られたオンセット時間に基づいて、このアッセイは、対象のサンプル中に、グラム陰性菌、真菌、またはグラム陽性菌が存在するかどうかを判断するために、使用され得る。
【0076】
(実施例2:ウェルベースの動的比濁アッセイ)
多数のサンプルが、動的比濁アッセイ技術を用いて、マルチウェルのマイクロプレートで実行され得る。KTA試薬LAL Lot U2251L(R1900 KTA,Charles River Endosafe、サウスカロライナ州Charleston)が、メーカの手引書に従って、調製され、等しい体積の微生物懸濁液(0.5McFarlandユニット)と混合された。反応は、メーカの手引書に従って、実行された。オンセットO.D.に到達するまでの時間は、個々の懸濁液E.coli(グラム陰性)、S.aureus(グラム陽性)、およびC.albicans(酵母)に対して、(秒で)記録された。サンプルは、三連で実行された。その結果は、表2に総括される。
【0077】
【表2】

標準動的懸濁方法は、実施例1で使用されたマルチステップ動的色素形成方法よりも遅かったが、全体的な結果は、同じであった。グラムのタイプは、LALとの反応性の度合いによって解釈された。その結果は、テストされた条件下で、グラム陰性菌が、オンセットO.D.に到達するのに、384秒〜388秒を要し、酵母菌が、オンセットO.D.に到達するのに、1464秒〜1509秒を要し、グラム陽性菌が、オンセットO.D.に到達するのに、3600秒超を要したことを示す。このアッセイは、テストサンプル中の微生物を分類するために使用され得る。例えば、このアッセイは、テストサンプルによって得られたオンセット時間に基づいて、対象のサンプル中に、グラム陰性菌、真菌、またはグラム陽性菌が存在するかどうかを判断するために、使用され得る。
【0078】
(実施例3:ウェルベースの動的色素形成アッセイ)
多数のサンプルが、動的色素形成LALアッセイを用いて、マルチウェルのマイクロプレートで実行され得る。LAL Lot U4132E(R170 Endochrome−k,Charles River Endosafe、サウスカロライナ州Charleston)が、メーカの手引書に従って、調製され、等しい体積の微生物懸濁液(0.5McFarlandユニット)と混合された。反応は、メーカの手引書に従って、実行された。オンセットO.D.に到達するまでの時間は、個々の懸濁液E.coli(グラム陰性)、S.aureus(グラム陽性)、およびC.albicans(酵母)に対して、(秒で)記録された。サンプルは、三連で実行された。その結果は、表3に総括される。
【0079】
【表3】

標準動的色素形成方法は、実施例1で使用されたマルチステップ動的色素形成方法よりも遅かったが、全体的な結果は、同じであった。グラムのタイプは、LALとの反応性の度合いによって解釈された。その結果は、テストされた条件下で、グラム陰性菌が、オンセットO.D.に到達するのに、213秒〜218秒を要し、酵母菌が、オンセットO.D.に到達するのに、874秒〜889秒を要し、グラム陽性菌が、オンセットO.D.に到達するのに、2463秒〜3061秒を要したことを示す。したがって、このアッセイは、テストサンプル中の微生物を分類するために使用され得る。例えば、このアッセイは、テストサンプルによって得られたオンセット時間に基づいて、対象のサンプル中に、グラム陰性菌、真菌、またはグラム陽性菌が存在するかどうかを判断するために、使用され得る。
【0080】
(実施例4:ウェルベースのエンドポイント色素形成アッセイ)
サンプルは、エンドポイント色素形成LALアッセイを用いて、マルチウェルのマイクロプレートで実行された。LAL Lot T2092CT(R160 Endochrome,Charles River Endosafe、サウスカロライナ州Charleston)が、メーカの手引書に従って、調製され、等しい体積の微生物懸濁液(0.5McFarlandと等価な懸濁標準で)と混合された。反応は、メーカの手引書に従って、実行された。テストの終わりに、反応は、等しい体積の20%酢酸を追加して、中止させ、405nmでの光学密度が、個々の懸濁液E.coli(グラム陰性)、S.aureus(グラム陽性)、およびC.albicans(酵母)に対して、記録された。サンプルは、三連で実行された。この場合における反応の度合いは、各サンプルに対する最終光学密度で測定された。この結果は、表4に総括される。
【0081】
【表4】

テストされた条件下で、グラム陰性菌は、そのLPS含有のために、かなり大きな反応性を有し、その結果、O.D.の読みは、1.97〜2.43であった。酵母菌は、より低い反応性(0.18〜0.19)を有し、グラム陽性菌は、非常に低い反応性(〜0.02)を有した。グラムのタイプは、LALとの反応性の度合いによって解釈された。したがって、このアッセイは、テストサンプル中の微生物を分類するために使用され得る。例えば、このアッセイは、テストサンプルによって得られたO.D.値に基づいて、対象のサンプル中に、グラム陰性菌、真菌、またはグラム陽性菌が存在したかどうかを判断するために、使用され得る。
【0082】
(実施例5:カートリッジベースのマルチステップ動的アッセイのさらなるテスト)
カートリッジが準備され、本質的に実施例1に記載されたように使用された。この実施例において、テストされ、正しく同定された微生物の隔離集団(isolate)は、表5に列挙される。
【0083】
【表5−1】

【0084】
【表5−2】

【0085】
【表5−3】

実験中、Bacillus cereus(長時間(aged)培養で細胞外プロテアーゼを生成することで公知のグラム陽性菌)は、24時間を超えて成長された培養での擬似結果を与えることが見出された。24時間までの培養の繰り返しテストは、正しいグラム同定を与えた。さらに、Sphingomonas paucimobilisは、期待された結果を生成しないことが見出された。理論によって束ねることを欲しないと、リポ多糖類を欠く珍しいグラム陰性菌の種であるこの生物は、この実験に対して使用された条件下で、LALと反応しなかったことが、考慮される。
【0086】
それにも関わらず、本実施例で総括される結果は、この方法が、対象のサンプル中に、グラム陽性菌、グラム陰性菌、または真菌が存在するかどうかを同定するのに、一般的な適用性を有することを証明する。
【0087】
(均等物)
本発明は、その精神またはその本質的な特徴から逸脱することなく、他の具体的な形態において具現化され得る。上述の実施形態は、したがって、全ての点において、本明細書に記載された発明を限定するのではなく、例示するものと考えられるべきである。よって、本発明の範囲は、上述の説明によって示されるのではなく、添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および均等の範囲内に入る全ての変化は、その範囲内に包含されると意図される。
【0088】
(参考として援用)
本出願で引用された刊行物および特許文献の全ては、個々の各刊行物または各特許文献の全内容が本明細書に組み込まれるかのように、同じ程度に、あらゆる目的で、その全体を参考として援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【公開番号】特開2012−68266(P2012−68266A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−290242(P2011−290242)
【出願日】平成23年12月29日(2011.12.29)
【分割の表示】特願2007−551414(P2007−551414)の分割
【原出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(505350260)チャールズ リバー ラボラトリーズ, インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】