説明

生体信号計測方法及び装置

【課題】生体断面における生体信号の強度分布を容易に計測することができる生体信号計測装置を提供する。
【解決手段】計測される生体断面の周囲に沿って配置され、それぞれ生体信号を検出する3つ以上の電極10aと、各電極10aの検出に基づき、生体断面における生体信号の強度分布を測定する強度分布測定手段26とを備え、強度分布測定手段26は、配置された各電極10aから抽出される複数の選択電極について、それぞれの検出信号の信号強度に基づき仮信号源の位置情報を算出し、これを選択電極の他の組み合わせについても行い得られた複数の仮信号源の位置情報から、生体信号の強度分布を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心電図、脳波、筋電図などの生体信号を計測する生体信号計測方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
心電図や脳波などを計測する装置として、例えば特許文献1及び2に開示された構成が知られている。特許文献1に記載された心電図装置は、生体に装着した複数の電極を用いて体表面心電図のマッピングデータを生成するものである。また、特許文献2に記載された脳波計測装置は、複数の電極を用いて測定した脳波データから、トポグラフィマップを生成するものである。
【特許文献1】特開2002−224069号公報
【特許文献2】特開平10−262943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1及び2に開示された生体信号の解析装置は、体や頭部の立体表面の電位を2次元化して表示するものであるため、体内や頭内の深部における電位を計測することができず、生体断面の電位分布を把握することが困難であった。このため従来においては、生体断面の計測にMRI(磁気共鳴画像診断装置)などの大がかりな装置を必要としており、これを簡便に行うことが望まれていた。
【0004】
そこで、本発明は、生体断面における生体信号の強度分布を容易に計測することができる生体信号計測方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の前記目的は、計測される生体断面の周囲に沿って3つ以上の電極を配置する電極配置ステップと、配置された前記各電極により生体信号を検出する信号検出ステップと、前記各電極の検出に基づき、前記生体断面における生体信号の強度分布を測定する強度分布測定ステップとを備え、前記強度分布測定ステップは、配置された前記各電極から抽出される複数の選択電極について、それぞれの検出信号の信号強度に基づき仮信号源の位置情報を算出し、これを選択電極の他の組み合わせについても行い得られた複数の仮信号源の位置情報から、生体信号の強度分布を求めることを特徴とする生体信号計測方法により達成される。
【0006】
また、本発明の前記目的は、計測される生体断面の周囲に沿って配置され、それぞれ生体信号を検出する3つ以上の電極と、前記各電極の検出に基づき、前記生体断面における生体信号の強度分布を測定する強度分布測定手段とを備え、前記強度分布測定手段は、配置された前記各電極から抽出される複数の選択電極について、それぞれの検出信号の信号強度に基づき仮信号源の位置情報を算出し、これを選択電極の他の組み合わせについても行い得られた複数の仮信号源の位置情報から、生体信号の強度分布を求めることを特徴とする生体信号計測装置により達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、生体断面における生体信号の強度分布を容易に計測することができる生体信号計測方法及び装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実態の形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る生体信号計測装置の概略構成を示すブロック図である。図1に示す生体信号計測装置1は、測定ベルト10と、信号処理装置20とを備えて構成されている。
【0009】
測定ベルト10は、生体信号を測定するための複数の電極10aが、裏面側に略等間隔に設けられており、胸部や頭部などに巻き付け固定することで、計測対象となる生体断面の周囲に沿って各電極10aが配置される。電極10aの個数は、3つ以上であれば特に制限されないが、計測精度を高める観点からは、小型のものをなるべく多く配置することが好ましい。また、各電極10aの配置は、本実施形態のように略等間隔であることが好ましい。
【0010】
電極10aを生体断面の周囲に配置するための構成としては、必ずしも本実施形態のようなベルト状のものに限定されない。例えば、脳波などを測定する場合には、キャップ状部材の内面に複数の電極10aを環状に配置してもよく、或いは、各電極10aを個別に配置するようにしてもよい。また、電極10aの配置は、皮膚に直接貼り付ける以外に、導電体を絶縁材でコーティングした絶縁電極を衣類の上から固定する等して人体表面と非接触に配置することも可能である。絶縁電極の具体例としては、アルミ板を酸化アルミニウムでコーティングしたものを挙げることができるが、これに限定されるものではない。また、測定対象となる生体断面の方向についても、特に限定はない。
【0011】
信号処理装置20は、測定ベルト10の各電極10aおよび接地電極12が接続されており、各電極10aにより検出された生体信号の電位と接地電極12の電位との差を増幅する差動増幅部22と、増幅された各データをデジタルデータに変換するA/D変換部24と、変換後の各デジタルデータの信号強度に基づいて、生体断面における生体信号の強度分布を求める強度分布測定部26とを備えている。
【0012】
電極10aが絶縁電極からなる場合には、信号処理装置20を、各絶縁電極と人体との間の静電容量結合による電圧変化をそれぞれ検出する複数のボルテージフォロワと、各ボルテージフォロワの出力端が接続された差動増幅器とを備えた構成とすることにより、電極10aを人体に電気的絶縁状態で配置することができる。
【0013】
次に、上述した生体信号計測装置1を用いて、生体信号の強度分布を求める方法を説明する。まず、計測対象となる任意の生体断面に沿って各電極10aが配置されるように、測定ベルト10を所定位置(例えば、胸部、頭部、前腕部など)に巻き付け、接地電極12を、各電極10aから略等距離となるように測定ベルト10から離れた位置(例えば、心電図の場合は右足首)に装着する。そして、各電極10aにおける生体信号の検出に基づき、信号処理装置20の強度分布測定部26において、生体信号の強度分布を測定する。
【0014】
一例として、図2に示すように、略楕円形の生体断面の周囲に10個の電極10aを略等間隔に配置する場合、まず、各電極10aの配置座標を入力し、これを位置情報としてメモリに格納する。そして、図3に示す各電極10aにおいて測定された生体信号(心電図)に対し、強度分布測定部26は、電位の絶対値の最大値を電極10a毎に抽出し、これを検出信号の信号強度として各電極10aに対応付けてメモリに格納する。この後、10個の電極10aから抽出される2つの選択電極について、各選択電極に対応する信号強度に基づき仮信号源の位置情報を算出する。
【0015】
仮信号源の位置情報は、実際の信号源から電極10aまでの距離が増加するに伴い電極10aで検出される電位が低下することに基づいて、算出することができる。例えば、選択電極がE1とE5であり、選択電極E1に対応する信号強度がa(mV)、選択電極E5に対応する信号強度がb(mV)である場合、選択電極E1及びE5の組み合わせに対応する仮信号源の位置情報P1−5は、選択電極E1と選択電極E5とを結ぶ線分を、信号強度の逆比(すなわち、b:a)で内分した位置座標となる。このような仮信号源の特定を、選択可能な全ての選択電極の組み合わせ(すなわち、E1とE2、E1とE3、・・・、E9とE10の計45通り)に対して行うことにより、本実施形態では45個の仮信号源の位置情報(P1−2、P1−3、・・・、P9−10)が得られる。
【0016】
それぞれの仮信号源の位置情報は、実際の信号源の位置を表すものではないが、実際の信号源に近づくほど、より多くの仮信号源が集中する。したがって、各仮信号源の配置分布を、実際の信号源から発生する生体信号の強度分布とみることが可能である。
【0017】
生体信号の強度分布は、仮信号源の位置を平面上に単にプロットするだけでも把握することができるが、図2に示す生体断面モデルを複数のメッシュに分割し、メッシュ毎に帰属する仮信号源をカウントすることにより、より正確に把握することができる。図4は、メッシュ毎の仮信号源のカウント数を濃淡で表した場合の一例を示すものであり、色が濃い部分ほど、カウント数の多い部分(すなわち、信号強度が高い部分)であることを表している。
【0018】
以上のように、本実施形態によれば、生体断面における生体信号の強度分布の計測を、生体表面に配置した電極の検出により行うことができ、大掛かりな装置を用いることなく容易に計測可能である。
【0019】
また、生体信号の強度分布から、最も信号強度が高い位置を実際の信号発生源として把握することができるので、例えば、心臓の配置の特定や、脳深部の活動部位の特定などが可能となる。
【0020】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されない。例えば、本実施形態においては、各電極10aにおいて検出された電位の絶対値の最大値に基づき、生体信号の強度分布を計測するようにしたが、各時刻における各電極10aの検出電位の値から生体信号の強度分布をリアルタイムに計測して、この時間変化を把握できるようにすることも可能である。
【0021】
また、本実施形態においては、生体断面の組織が一様であるという前提の下に、抽出された2つの選択電極を結ぶ線分を検出信号の信号強度の逆比で内分することにより、仮信号源の位置情報を簡便に算出するようにしているが、血管、脂肪層、骨組織、表皮組織などの各組織における電気抵抗率の違いを考慮して、仮信号源の位置情報を算出するようにしてもよい。
【0022】
また、本実施形態においては、仮信号源を特定するための選択電極の数を2つとしているが、3つ以上の選択電極を使用し、各選択電極を結んで得られる多角形内の仮信号源の位置を、それぞれの検出信号強度から算出することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る生体信号計測装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】生体断面に電極を配置した状態を示す模式図である。
【図3】各電極における検出信号波形の一例を示す図である。
【図4】前記生体信号計測装置により計測される生体信号の強度分布の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
1 生体信号計測装置
10 測定ベルト
10a 電極
20 信号処理装置
26 強度分布測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測される生体断面の周囲に沿って3つ以上の電極を配置する電極配置ステップと、
配置された前記各電極により生体信号を検出する信号検出ステップと、
前記各電極の検出に基づき、前記生体断面における生体信号の強度分布を測定する強度分布測定ステップとを備え、
前記強度分布測定ステップは、配置された前記各電極から抽出される複数の選択電極について、それぞれの検出信号の信号強度に基づき仮信号源の位置情報を算出し、これを選択電極の他の組み合わせについても行い得られた複数の仮信号源の位置情報から、生体信号の強度分布を求めることを特徴とする生体信号計測方法。
【請求項2】
前記強度分布測定ステップにおいて、仮信号源の位置情報の算出は、抽出された2つの選択電極を結ぶ線分を、検出信号の信号強度の逆比で内分することにより行われる請求項1に記載の生体信号計測方法。
【請求項3】
前記強度分布測定ステップにより得られた生体信号の強度分布から、生体信号源の位置情報を取得する信号源特定ステップを更に備える請求項1または2に記載の生体信号計測方法。
【請求項4】
計測される生体断面の周囲に沿って配置され、それぞれ生体信号を検出する3つ以上の電極と、
前記各電極の検出に基づき、前記生体断面における生体信号の強度分布を測定する強度分布測定手段とを備え、
前記強度分布測定手段は、配置された前記各電極から抽出される複数の選択電極について、それぞれの検出信号の信号強度に基づき仮信号源の位置情報を算出し、これを選択電極の他の組み合わせについても行い得られた複数の仮信号源の位置情報から、生体信号の強度分布を求めることを特徴とする生体信号計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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