生体内留置用ステント
【課題】十分な拡張力ならびに全体として均等な拡張力を有するステントを提供するものである。
【解決手段】生体内留置用ステント1は、軸方向に複数の波線状環状体2を備えるステントであって、波線状環状体2は、ステント1の軸方向の一端側に頂点2aを有する複数の一端側屈曲部およびステント1の軸方向の他端側に頂点2bを有する複数の他端側屈曲部を有し、かつ、ステント1の軸方向基端側に隣り合う波線状環状体2は、ステント1の軸方向一端側の波線状環状体2における他端側屈曲部の1つの頂点2bもしくはその付近に始端22を有し、他端側屈曲部の頂点2bと一端側屈曲部の頂点2a間に終端23を有する共有線状部21を有し、共有線状部21により、隣り合う波状環状体が一体化している。
【解決手段】生体内留置用ステント1は、軸方向に複数の波線状環状体2を備えるステントであって、波線状環状体2は、ステント1の軸方向の一端側に頂点2aを有する複数の一端側屈曲部およびステント1の軸方向の他端側に頂点2bを有する複数の他端側屈曲部を有し、かつ、ステント1の軸方向基端側に隣り合う波線状環状体2は、ステント1の軸方向一端側の波線状環状体2における他端側屈曲部の1つの頂点2bもしくはその付近に始端22を有し、他端側屈曲部の頂点2bと一端側屈曲部の頂点2a間に終端23を有する共有線状部21を有し、共有線状部21により、隣り合う波状環状体が一体化している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管、胆管、気管、食道、尿道、その他の臓器などの管腔内に生じた狭窄部もしくは閉塞部の治療に使用する生体内留置用ステントに関する。
【背景技術】
【0002】
ステントは、血管あるいは他の生体内管腔が狭窄若しくは閉塞する事によって生じる様々な疾患を治療するために、その狭窄若しくは閉塞部位を拡張し、その内腔を確保するために留置される管状の医療用具である。ステントは、体外から体内に挿入するため、挿入時には直径が小さく、目的の狭窄若しくは閉塞部位で拡張もしくは復元させて直径を大きくし、大きくなった状態にて管腔を保持するものである。ステントは、機能及び拡張様式によって、セルフエクスパンダブルステントとバルーンエクスパンダブルステントに区別される。バルーンエクスパンダブルステントはステント自体に拡張機能はなく、ステントを目的部位に挿入した後、ステント内にバルーンを位置させてバルーンを拡張させ、バルーンの拡張力によりステントを拡張(塑性変形)させ目的管腔の内面に密着させて固定する。
【0003】
このタイプのステントでは、上記のようなステントの拡張作業が必要になる。一方、セルフエクスパンダブルステントは基本的に弾性のある素材で作られており、大きさは拡張された最終形状で作られる。セルフエクスパンダブルステントは、ステントを体内に導入するためには、小さく折りたたんで、その形状を拘束する部材(ほとんどの場合はプラスチック製チューブ)の中に入れられ、その部材即ちチューブごと体内に導入し、目的部位でチューブから放出することで、ステントがその弾性により自分自身で拡張する。
【0004】
セルフエクスパンダブルステントとしては、複数の支柱部を複数のループ部で接続してなる概ジグザグ状のパターンで形成された環状体を互いに接続部で連結して略円筒状に形成した形状のものが主流となっている。
特開平11−505441号公報(特許文献1)のものでは、波状環状体が、斜めに形成されたコネクターによって連結された構造となっている。
また、隣り合う蛇行要素若しくはジグザグ要素の頂点が隣り合う蛇行要素若しくはジグザグ要素の中に侵入しているタイプのステントもある。このタイプのものとして、例えば、特表2000−506753号公報(特許文献2)のものがある。また、特表2002−518087号公報(特許文献3)のものでは、上記の蛇行要素の頂点同士が軸に平行なコネクターにより接続されている。
また、蛇行要素若しくはジグザグ要素が平ループではなく螺旋状となっているタイプのステントがある。このタイプのステントとしては、先端から後端まで1本若しくは複数本で構成されているものである。例えば、特表2001−509702号公報(特許文献4)では、ステントの形状を保つためにジグザグ要素間を軸に平行なコネクターにより接続している。また、特開平8−196642号公報(特許文献5)のものでは、波線状環状体ではなく、複数の螺旋により構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平11−505441号公報
【特許文献2】特表2000−506753号公報
【特許文献3】特表2002−518087号公報
【特許文献4】特表2001−509702号公報
【特許文献5】特開平8−196642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術で述べた最近の全てのステントは、各要素間を接続するためにコネクターを用いている。コネクターは、単に要素間を接続するためのもので拡張力には貢献しない。
そこで、発明者が鋭意検討したところ、拡張力に貢献する要素だけで構成され、且つコネクターの働きも共有できる構成であれば、一定以上の拡張力を保持しつつ且つカバレッジの良いステントとなる可能性が有ることを知見した。
本発明の目的は、拡張力を実質的発現せず、かつ、ステントの湾曲時に影響を与える可能性のある接続部を持たず、十分な拡張力ならびに全体として均等な拡張力を有するステントを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 軸方向に複数の波線状環状体を備えるステントであって、前記波線状環状体は、前記ステントの軸方向の一端側に頂点を有する複数の一端側屈曲部および前記ステントの軸方向の他端側に頂点を有する複数の他端側屈曲部を有し、かつ、ステントの軸方向基端側に隣り合う波線状環状体は、前記ステントの軸方向一端側の波線状環状体における前記他端側屈曲部の1つの頂点もしくはその付近に始端を有し、該他端側屈曲部の前記頂点と前記一端側屈曲部の頂点間に終端を有する共有線状部を有し、該共有線状部により、隣り合う波状環状体が一体化している生体内留置用ステント。
(2) 前記ステントは、前記共有線状部の前記始端部位が形成する始端分岐部と、前記共有線状部の前記終端部位が形成する終端分岐部とを有するものである上記(1)に記載の生体内留置用ステント。
(3) 前記波線状環状体は、前記共有線状部の始端と他端側屈曲部の頂点間を連結する短線状部を有している上記(1)または(2)に記載の生体内留置用ステント。
(4) 前記波線状環状体は、前記共有線状部の終端と一端側屈曲部の頂点間を連結する短線状部を有している上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【0008】
(5) 前記波線状環状体は、他の一端側屈曲部の頂点より一端側に突出する突出一端側頂点および他の他端側屈曲部の頂点より他端側に突出する突出他端側頂点を形成する大波部を有している上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(6) 前記大波部における前記突出一端側頂点と前記突出他端側頂点間が、前記長線状部を構成している上記(5)に記載の生体内留置用ステント。
(7) 前記波線状環状体は、前記共有線状部の終端と他端側屈曲部の頂点間を連結する長線状部を有している上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(8) 前記隣り合う波線状環状体間には、複数の共有線状部を備えている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(9) 前記隣り合う波線状環状体間には、複数の共有線状部を備えており、該複数の共有線状部は、前記ステントの中心軸に対して、向かい合うようにもしくはほぼ等角度となるように形成されている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(10) 前記波線状環状体は、複数の大波部を備えている上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(11) 前記波線状環状体は、複数の大波部を備えており、該複数の大波部は、前記ステントの中心軸に対して、向かい合うようにもしくはほぼ等角度となるように形成されている上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(12) 前記共有線状部の始端と他端側屈曲部の頂点間を連結する短線状部は、前記ステントの軸方向に連続せず、かつ複数の該短線状部は、ほぼ直線状となるように形成されている上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(13) 前記波線状環状体の前記一端側屈曲部の頂点は、隣り合う一方の波線状環状体の他端側屈曲部間に形成される空間に侵入し、前記波線状環状体の他端側屈曲部の頂点は、隣り合う他方の波線状環状体の一端側屈曲部間に形成される空間に侵入している上記(1)ないし(12)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(14) 前記ステントは、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には縮径され、生体内留置時には縮径前の形状に復元可能な自己拡張型である上記(1)ないし(13)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(15) 前記ステントは、略管状体に形成され、生体内管腔への挿入のための直径を有し、該管状体の内部より半径方向に広がる力が付加されたときに拡張可能なステントである上記(1)ないし(13)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【0009】
(16) 前記ステントは、前記ステントの中心軸に対して所定角度斜めに延びる第1パターン共有線状部と、前記ステントの中心軸に対して所定角度斜めにかつ前記第1パターン共有線状部と異なる方向に延びる第2パターン共有線状部を備えている(1)ないし(15)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(17) 前記第1パターン共有線状部と前記第2パターン共有線状部は、前記ステントの軸方向に対して交互となるように配置されている(16)に記載の生体内留置用ステント。
(18) 前記第2パターン共有線状部は、前記第1パターン共有線状部の配置位置に対して、ステントの外周方向にずれた位置に配置されている(16)または(17)に記載の生体内留置用ステント。
(19) 前記ステントは、両端に位置する波線状環状体と隣り合う波線状環状体とを接続する連結部を備えている(1)ないし(18)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(20) 前記ステントは、両端に位置する波線状環状体と隣り合う波線状環状体間には、他の部分の波線状環状体間より多い前記共有線状部が設けられている(1)ないし(18)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(21) 前記ステントは、該ステントの端部に設けられた造影性マーカーを備え、該造影性マーカー配置部位の端部は、前記ステントの端部より突出していない(1)ないし(20)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(22) 前記ステントは、該ステントの端部に設けられた造影性マーカーを備え、さらに、前記マーカー配置部位より、前記ステントの中央方向に延びかつ離間する2本の脚部を有しており、収縮状態において、該2本の脚部は、離間しかつ近接する線状部とほぼ平行となっている(1)ないし(20)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【発明の効果】
【0010】
本発明の生体内留置用ステントは、軸方向に複数の波線状環状体を備えるステントであって、前記波線状環状体は、前記ステントの軸方向の一端側に頂点を有する複数の一端側屈曲部および前記ステントの軸方向の他端側に頂点を有する複数の他端側屈曲部を有し、かつ、ステントの軸方向基端側に隣り合う波線状環状体は、前記ステントの軸方向一端側の波線状環状体における前記他端側屈曲部の1つの頂点もしくはその付近に始端を有し、該他端側屈曲部の前記頂点と前記一端側屈曲部の頂点間に終端を有する共有線状部を有し、該共有線状部により、隣り合う波状環状体が一体化している。ステントは、拡張力を実質的発現せず、かつ、ステントの湾曲時に影響を与える可能性のある接続部を持たず、隣り合う波線状環状体が、共有線状部により一体化されているため、十分な拡張力ならびに全体として均等な拡張力を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施例のステントの正面図である。
【図2】図2は、図1に示したステントの展開図である。
【図3】図3は、図1に示したステントを縮径させた状態のステントの展開図である。
【図4】図4は、図1に示したステントの部分拡大図である。
【図5】図5は、本発明のステントの他の実施例の縮径状態の展開図である。
【図6】図6は、本発明のステントの他の実施例の縮径状態の展開図である。
【図7】図7は、本発明のステントの他の実施例のパターンを説明するための説明図である。
【図8】図8は、本発明のステントの他の実施例のパターンを説明するための説明図である。
【図9】図9は、本発明のステントの他の実施例の正面図である。
【図10】図10は、図9に示したステントの展開図である。
【図11】図11は、図9に示したステントを縮径させた状態のステントの展開図である。
【図12】図12は、本発明のステントの他の実施例の正面図である。
【図13】図13は、図12に示したステントの展開図である。
【図14】図14は、図13に示したステントを縮径させた状態のステントの展開図である。
【図15】図15は、本発明のステントの他の実施例の正面図である。
【図16】図16は、図15に示したステントの展開図である。
【図17】図17は、図15に示したステントを縮径させた状態のステントの展開図である。
【図18】図18は、本発明のステントの他の実施例の展開図である。
【図19】図19は、図18に示したステントを縮径させた状態のステントの展開図である。
【図20】図20は、本発明のステントの他の実施例の展開図である。
【図21】図21は、図20に示したステントを縮径させた状態のステントの展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施例のステントについて図面に示した実施例を用いて説明する。
図1は、本発明の実施例のステントの正面図である。図2は、図1に示したステントの展開図である。図3は、図1に示したステントを縮径させた状態のステントの展開図である。図4は、図1に示したステントの部分拡大図である。
本発明の生体内留置用ステント1は、軸方向に複数の波線状環状体2を備えるステントであって、波線状環状体2は、ステント1の軸方向の一端側に頂点2aを有する複数の一端側屈曲部およびステント1の軸方向の他端側に頂点2bを有する複数の他端側屈曲部を有し、かつ、ステント1の軸方向基端側に隣り合う波線状環状体2は、ステント1の軸方向一端側の波線状環状体2における他端側屈曲部の1つの頂点2bもしくはその付近に始端22を有し、他端側屈曲部の頂点2bと一端側屈曲部の頂点2a間に終端23を有する共有線状部21を有し、共有線状部21により、隣り合う波状環状体が一体化している。
本発明のステントは、部分的共有部を有することにより、隣り合う波線状環状体が一体化した複数の環状体からなるものであり、いわゆる接続部としてのみ設けられた部分を備えず、すべてが、拡張力を発揮する部分のみにより構成されている。
【0013】
また、この実施例のステントは、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には縮径され、生体内留置時には縮径前の形状に復元可能なステント、いわゆる自己拡張型ステントである 図1は、ステント1の拡張時の外観形状を示している。
ステント1を形成する波線状環状体2の数としては、図1に示すものでは、11となっている。波線状環状体2の数としては、ステントの長さによって相違するが、2〜150が好ましく、特に、5〜100が好ましい。
そして、各波線状環状体2は、ステント1の軸方向の一端側に頂点を有する複数の一端側屈曲部およびステント1の軸方向の他端側に頂点を有する複数の他端側屈曲部を有するとともに、環状に連続した無端の波線状体により構成されている。環状体2における一端側屈曲部と他端側屈曲部は、交互に形成されており、かつそれぞれの数は同じとなっている。1つの波線状環状体2における一端側屈曲部(他端側屈曲部)の数としては、図1に示すものでは、9つとなっている。一端側屈曲部(他端側屈曲部)の数としては、4〜20が好ましく、特に、6〜12が好ましい。そして、この実施例1のステントにおける波線状環状体2を形成する線状体は、常に湾曲しており、直線状部分が極めて少ないものとなっている。このため、環状体2を形成する線状体は十分な長さを有するため、拡張時における高い拡張力を発揮する。また、波線状環状体2の軸方向の長さとしては、1〜10mmが好ましく、特に、1.5〜5mmが好ましい。
【0014】
そして、この実施例のステント1では、図1、図2、図3および図4に示すように、各波線状環状体2は、他の一端側屈曲部の頂点2aより一端側に突出する突出一端側頂点2a1および他の他端側屈曲部の頂点より他端側突出する突出他端側頂点(この実施例では、始点と一致する)22を形成する大波部を有している。さらに、この実施例では、波線状環状体は、複数の大波部を備えている。このステントでは、1つの環状体が、9つの一端側屈曲部を備えており、大波部は、1つの環状体内に、3つ設けられている。そして、3つの大波部は、ステント1の中心軸に対して、ほぼ等角度となるように形成されている。
そして、ステント1の軸方向基端側に隣り合う波線状環状体2は、ステント1の軸方向一端側の波線状環状体2における他端側屈曲部の1つの頂点2bもしくはその付近に始端22を有し、他端側屈曲部の頂点2aと一端側屈曲部の頂点2b間に終端23を有する共有線状部21を有し、共有線状部21により、隣り合う波状環状体が一体化している。
【0015】
具体的には、共有線状部21は、ステント1の軸方向一端側の波線状環状体2における他端側屈曲部の1つの頂点2bを始端22とするものであり、始端22と頂点2bは同じものとなっている。また、共有線状部21は、上記の頂点2b(始端22でもある)と連続する一端側屈曲部の頂点2a間に終端23を有する。特に、この実施例では、共有線状部21は、上記の頂点2b(始端22でもある)と連続する一端側屈曲部の頂点2a間のほぼ中点付近に終端を有するものとなっている。なお、この終端23の位置としては、中点に位置することが好ましいが、上記の頂点2b(始端22でもある)と連続する一端側屈曲部の頂点2a間の全長の1/100〜49/100程度いずれかの頂点側となる位置であってもよい。なお、この場合、この終端23の位置としては、中点より、頂点2a側にずれることが好ましい。
ステント1は、上記のような構成を有するため、共有線状部21の始端部位が形成する始端分岐部と、共有線状部21の終端部位が形成する終端分岐部とを有する。具体的には、始端分岐部は、始端22を分岐点として、一端側に向かって二股に分岐する形態となっており、終端分岐部は、終端23を分岐点として、他端側に向かって二股に分岐する形態となっている。
【0016】
さらに、この実施例のステント1では、大波部における突出一端側頂点2a1と突出他端側頂点(始端22と一致)間が、他の各頂点間を接続する線状部より長い長線状部となっている。そして、この長線状部の他端側端が、上記のように共有線状部の始端となっている。そして、この実施例では、大波部の一部に、共有線状部21が形成されている。
また、この実施例のステント1では、図2に示すように、各波線状環状体2は、共有線状部21の終端23と一端側屈曲部の頂点2a間を連結する短線状部26を有している。また、上記の短線状部26を有する環状体2と共有線状部21により一体化した環状体2は、図2に示すように、共有線状部21の始端22と他端側屈曲部の頂点2b間を連結する短線状部25と、共有線状部21の終端23と他端側屈曲部の他の頂点2b間を連結する長線状部24とを有している。
よって、大波部における突出一端側頂点(終端23と一致)と突出他端側頂点(他端側に隣り合う環状体と共有線状部の始端22と一致)間が、長線状部を構成している。つまり、ステント1では、軸方向に隣り合う共有線状部21は、軸方向一端側から見て、共有線状部21の終端23と隣り合う共有線状部21の始端22とが、長線状部24により接続された形態となっている。このため、図2に示すように、このステント1では、長線状部24と共有線状部21が繰り返されることにより構成されたジグザグ形態が、ステントの一端から他端側に向かって螺旋を形成するものとなっている。
【0017】
そして、このステントでは、いわゆる接続部がなく、接続部に起因する湾曲障害および拡張力低下といったことがなく、ステント全体として、均質な拡張保持力を発揮する。
そして、この実施例のステント1では、隣り合う波線状環状体間には、複数の共有線状部21を備えている。具体的には、隣り合う波線状環状体間には、3つの共有線状部21が設けられている。そして、3つの共有線状部21は、ステント1の中心軸に対して、ほぼ等角度となるように形成されている。
そして、ステント1では、共有線状部21の始端22と他端側屈曲部の頂点2b間を連結する短線状部25は、ステント1の軸方向に連続せず、かつ複数の短線状部25が、ほぼ直線状となるように形成されている。また、このステント1では、上述した短線状部25、26を除く線状部(長線状部およびその他線状部)は、図4に示すように、中間部付近に線状体の進行方向をほぼ平行にかつ若干変更する偏曲部32を備えている。この偏曲部32を有することにより、線状部長さも長くなるととともに、拡張力も高くなる。
【0018】
さらに、このステント1では、長線状部24の長さ(すなわち、共有線状部21の終端23と共有線状部21の始端22間の長さ)と、共有線状部21と短線状部25を合わせた長さ(すなわち、共有線状部21の終端23から始端21を越えて頂点2bまでの長さ)を比較すると、長線状部24の方が若干長いものとなっている。このようにすることにより、頂点2bを隣り合う環状体の線状部33(具体的には、頂点2aと頂点2bを繋ぎ、線状共有部、分岐部のない通常の線状部)との過剰な近接を防止することができ、線状体が形成する閉鎖空間(図2に示すように、この実施例では、V字とM字を接続した閉鎖空間が形成されている)における幅のかたよりを少ないものとすることができ、高い拡張維持力を発揮する。
また、図2に示すように、波線状環状体2の一端側屈曲部の頂点2aは、隣り合う一方の波線状環状体の他端側屈曲部の頂点2b間に形成される空間に侵入しており、波線状環状体2の他端側屈曲部の頂点2bは、隣り合う他方の波線状環状体の一端側屈曲部の頂点2a間に形成される空間に侵入している。このようにすることにより、ステントを構成する線状体の長さを長くでき、かつ、線状体が形成する閉鎖空間(図2に示すように、この実施例では、V字とM字を接続した閉鎖空間が形成されている)の面積を小さいものとすることができ、高い拡張維持力を発揮する。
【0019】
さらに、この実施例のステント1では、図3に示す収縮状態では、周方向における隙間が殆どなく、各要素が並んでいる。このため、高いカバレッジを持つ。
また、図5に示すステント10のように、造影用マーカー11を設けることが好ましい。造影用マーカー11は、ステントの端部側に設けることが好ましい。特に、両端部側にそれぞれ設けることが好ましい。具体的には、図5に示すように、両端側にそれぞれ複数のマーカー11を設けることが好ましい。
この実施例のステント10では、ステントの一端部に位置する頂点部に形成された開口部27を有し、この開口部27を閉塞するようにマーカー11が固定されている。
このようなマーカーは、例えば、ステントに形成された小開口に、この小開口より若干小さい部分と大きい部分を有するX線造影用物質の円盤状部材を配置し両面より押圧して、リベット状に、かしめることにより取り付けられることが好ましい。
なお、造影用マーカーとしては、X線造影用、超音波造影用などどのようなものであってもよい。マーカーとしては、X線造影性物質、超音波造影性物質などの造影性物質により形成される。マーカーの形成材料としては、例えば、金、白金、タングステン、タンタル、イリジウム、パラジウムあるいはそれらの合金、あるいは金−パラジウム合金、白金−イリジウム、NiTiPd、NiTiAu等が好適である。
【0020】
また、ステントとしては、図6に示すようなパターンのステント20であってもよい。図6は、本発明のステントの他の実施例のパターンを説明するための説明図である。
このステント20と上述したステント1との相違は、各波線状環状体2において、いわゆる大波部が形成されておらず、各波がほぼ同じ大きさとなっている点である。また、図6の圧縮状体において、共有線状部21となっている部分の側面に空隙部が形成されている。
【0021】
また、ステントとしては、図7に示すようなパターンのステント30であってもよい。図7は、本発明のステントの他の実施例のパターンを説明するための説明図である。
このステント30と上述したステント1との相違は、1つの波線状環状体2における一端側屈曲部および他端側屈曲部の数、隣り合う環状体を一体化する共有線状部21の数のみである。このステント30では、1つの環状体2における一端側屈曲部および他端側屈曲部の数もステント1より少ない(具体的には、それぞれ8)ものとなっている。そして、1つの環状体2は、2つの大波部を有しており、2つの大波部は、ステントの中心軸に対して、向かい合う位置に設けられている。さらに、隣り合う2つの環状体2は、2つの共有線状部21により一体化されている。そして、2つの共有線状部21は、ステントの中心軸に対して、向かい合う位置に設けられている。
【0022】
また、ステントとしては、図8に示すようなパターンのステント40であってもよい。図8は、本発明のステントの他の実施例のパターンを説明するための説明図である。
このステント40と上述したステント1との相違は、1つの波線状環状体2における一端側屈曲部および他端側屈曲部の数、隣り合う環状体を一体化する共有線状部21の数のみである。このステント40では、1つの環状体2における一端側屈曲部および他端側屈曲部の数もステント1より少ない(具体的には、それぞれ8)ものとなっている。そして、1つの環状体2は、4つの大波部を有しており、4つの大波部は、ステントの中心軸に対して、ほぼ等角度となるように設けられている。さらに、隣り合う2つの環状体2は、4つの共有線状部21により一体化されている。そして、4つの共有線状部21は、ステントの中心軸に対して、ほぼ等角度となるように設けられている。
そして、上述した全ての実施例のステントは、ステントの側面全体よりステントの中心方向に負荷をかけると縮径する。
【0023】
また、ステントとしては、図9ないし11に示すような、パターンのステント50であってもよい。図9は、本発明のステントの他の実施例の正面図である。図10は、図9に示したステントの展開図である。図11は、図9に示したステントを縮径させた状態のステントの展開図である。
このステント50と上述したステント1との相違は、1つの波線状環状体2における一端側屈曲部および他端側屈曲部の数、隣り合う環状体を一体化する共有線状部21の数、共有線状部の配置形態およびその向きなどである。
このステント50では、1つの環状体2における一端側屈曲部および他端側屈曲部の数はステント1より少ない(具体的には、それぞれ8)ものとなっており、軸方向には、11の環状体が配置されたものとなっており、隣り合う2つの環状体2、2つの共有線状部21(第1パターン共有線状部)もしくは2つの共有線状部41(第2パターン共有線状部)により一体化されている。そして、2つの共有線状部21は、ステントの中心軸に対して、向かい合う位置に設けられている。同様に、2つの共有線状部41も、ステントの中心軸に対して、向かい合う位置に設けられている。
【0024】
このステント50では、第1パターン共有線状部21と第2パターン共有線状部41が、ステントの軸方向に対して交互となるように配置されており、かつ、第1パターン共有線状部21と第2パターン共有線状部41が、軸方向に連続しないように配置されている。具体的には、第2パターン共有線状部41は、第1パターン共有線状部21の配置位置に対して、ステントの外周方向にずれた位置に配置されている。
また、ステント50では、第1パターン共有線状部21と第2パターン共有線状部41は、ステントの軸方向に対して斜めに延びるととともに、両者の向きが異なるものとなっている。
具体的に説明すると、このステント50では、1つの環状体2は、2つの大波部を有しており、2つの大波部は、ステントの中心軸に対して、向かい合う位置に設けられている。さらに、隣り合う2つの環状体2は、2つの共有線状部により一体化されている。さらに、このステント50では、第1パターン共有線状部21の終端は、線状部24により、他端側屈曲部と連結する形態となっており、同様に、第2のパターン共有線状部41の終端も、線状部24により、他端側屈曲部と連結する形態となっている。つまり、上述したステント1では、長線状部24は、軸方向に隣り合う2つの共有線状部(正確には、一方の共有線状部の終端と他方の線状共有部の始端)を連結していたのに対し、ステント50では、共有線状部同士を連結する形態とはなっていない。なお、共有線状部と連結する線状部24は、上述したステント1に比べて明確な長線状部となっていない。なお、この線状部24は、他の線状部より若干長い程度である。なお、この線状部24は、長線状部であってもよい。
【0025】
また、このステント50では、第1パターン共有線状部21に対して、ステントの軸方向に隣り合う第2パターン共有線状部41は、1つの一端側屈曲部と1つの他端側屈曲部分ずれた位置に設けられている。そして、ステントの軸方向に隣り合う2つの第1パターン共有線状部21および2つの第2パターン共有線状部41は、ステント50の中心軸に対してほぼ等角度に配置された状態となっている。このため、ステントは、全体においてほぼ均一の拡張力を発現可能である。
また、このステント50では、図10に示すように、第1パターン共有線状部21は、ステントの軸方向に対して、螺旋状となるように配置されたものとなっており、同様に、第2パターン共有線状部41も、ステントの軸方向に対して、螺旋状となるように配置されたものとなっている。
また、このステント50では、図10に示すように、ステントの軸方向に配置された11の波線状環状体を備えている。そして、第1パターン共有線状部21は、ステントの軸方向に対して、螺旋状となるように配置されたものとなっており、同様に、第2パターン共有線状部41も、ステントの軸方向に対して、螺旋状となるように配置されたものとなっている。具体的には、一つおきに隣り合う波線状環状体は、2つの第1パターン共有線状部21より連結されており、それぞれの第1パターン共有線状部21は、ステントの軸方向に螺旋状となるように配置されている。このため、第1パターン共有線状部21による2つの螺旋が形成されている。そして、一つの螺旋は、5つの第1パターン共有線状部21により構成される。また、同様に、一つおきに隣り合う波線状環状体(第1パターン共有線状部21により連結されていない)は、2つの第2パターン共有線状部41により連結されており、それぞれの第2パターン共有線状部41は、ステントの軸方向に螺旋状となるように配置されている。このため、第2パターン共有線状部41による2つの螺旋が形成されている。そして、一つの螺旋は、5つの第2パターン共有線状部41により構成されている。
【0026】
また、上述したように、第1パターン共有線状部21と第2パターン共有線状部41は、ステントの軸方向に対して斜めに延びるとともに、両者の向きが異なるものとなっており、特に、両者の向きは、ステントの中心軸に対して、ほぼ対称であることが好ましい。このようにすることにより、ステントは、全体においてほぼ均一の拡張力を発現可能である。
なお、この実施例のステント50では、図10に示すように、波線状環状体2は、第1パターン共有線状部21の終端23と一端側屈曲部の頂点2a間を連結する短線状部26を有している。そして、この波線状環状体と隣り合う波線状環状体は、第1パターン共有線状部21の始端22と他端側屈曲部の頂点2b間を連結する短線状部25と、第2パターン共有線状部41の終端42と一端側屈曲部の頂点間を連結する短線状部47を有している。
そして、この実施例のステント50は、上述したステント1と構造が異なることにより、軸方向の伸び縮みに対する抵抗力を小さいものとすることができ、血管の変形に対する追従性が良好なものとなる。
【0027】
また、ステントとしては、図12ないし14に示すようなパターンのステント60であってもよい。図12は、本発明のステントの他の実施例の正面図である
。図13は、図12に示したステントの展開図である。図14は、図12に示したステントを縮径させた状態のステントの展開図である。
このステント60と上述したステント1との相違は、共有線状部の配置形態およびその向きなどである。このステント60では、共有線状部21(第1パターン共有線状部)および共有線状部41(第2パターン共有線状部)は、ステントの軸方向に対してほぼ直線上に配置されている。
このステント60では、1つの環状体2における一端側屈曲部および他端側屈曲部の数はステント1と同じ(具体的には、それぞれ9)であり、軸方向には、13の環状体が配置されたものとなっている。隣り合う2つの環状体2は、3つの共有線状部21(第1パターン共有線状部)もしくは3つの共有線状部41(第2パターン共有線状部)により一体化されている。そして、3つの共有線状部21は、ステントの中心軸に対して、ほぼ等角度に設けられている。同様に、3つの共有線状部41も、ステントの中心軸に対して、ほぼ等角度に設けられている。
【0028】
また、ステント60では、共有線状部21(第1パターン共有線状部)と共有線状部41(第2パターン共有線状部)は、ステントの軸方向に対して斜めに延びるとともに、両者の向きが異なるものとなっている。
具体的に説明すると、このステント60では、第1パターン共有線状部21の終端は、線状部24により、他端側屈曲部と連結する形態となっており、同様に、第2のパターン共有線状部41の終端も、線状部24により、他端側屈曲部と連結する形態となっている。つまり、上述したステント1では、線状部24は、軸方向に隣り合う2つの共有線状部(正確には、一方の共有線状部の終端と他方の線状共有部の始端)を連結していたのに対し、ステント60では、共有線状部同士を連結する形態とはなっていない。なお、共有線状部と連結する線状部24は、上述したステント1に比べて明確な長線状部となっていない。なお、この線状部24は、他の線状部より若干長い程度である。なお、この線状部24は、長線状部であってもよい。
【0029】
また、このステント60では、第1パターン共有線状部21に対して、ステントの軸方向に隣り合う第2パターン共有線状部41は、1つの一端側屈曲部と1つの他端側屈曲部分ずれた位置に設けられている。そして、ステントの軸方向に隣り合う2つの第1パターン共有線状部21および2つの第2パターン共有線状部41は、ステント60の中心軸に対してほぼ等角度に配置された状態となっている。このため、ステントは、全体においてほぼ均一の拡張力を発現可能である。
また、このステント60では、図13に示すように、ステントの軸方向に配置された13の波線状環状体を備えている。そして、第1パターン共有線状部21は、ステントの軸方向に対して、螺旋状となるように配置されたものとなっており、同様に、第2パターン共有線状部41も、ステントの軸方向に対して、螺旋状となるように配置されたものとなっている。具体的には、一つおきに隣り合う波線状環状体は、3つの第1パターン共有線状部21により連結されており、それぞれの第1パターン共有線状部21は、ステントの軸方向に螺旋状となるように配置されている。このため、第1パターン共有線状部21による3つの螺旋が形成されている。そして、一つの螺旋は、6つの第1パターン共有線状部21により構成される。同様に、一つおきに隣り合う波線状環状体(第1パターン共有線状部21により連結されていない)は、3つの第2パターン共有線状部41により連結されており、それぞれの第2パターン共有線状部41は、ステントの軸方向に螺旋状となるように配置されている。このため、第2パターン共有線状部41による3つの螺旋が形成されている。そして、一つの螺旋は、6つの第2パターン共有線状部21により構成されている。
【0030】
また、上述したように、第1パターン共有線状部21と第2パターン共有線状部41は、ステントの軸方向に対して斜めに延びるととともに、両者の向きが異なるものとなっており、特に、両者の向きは、ステントの中心軸に対して、ほぼ対称であることが好ましい。このようにすることにより、ステントは、全体においてほぼ均一の拡張力を発現可能である。
ステントの軸方向での並びで言うと、まず第1パターン共有線状部21が3つ円周方向に均等に存在し、次のステント軸方向では、第2パターン共有線状部41が3つ円周方向に均等に存在する。次のステント軸方向では、第2パターン共有線状部41が3つ円周方向に均等に存在する。
次のステント軸方向では、第1パターン共有線状部21が3つ円周方向に均等に存在する。繰り返すと、21、41,41,21、21、41,41・・・・・・という並び方をしているのが特徴である。
そして、この実施例のステント60は、上述したステント1と構造が異なることにより、軸方向の伸び縮みに対する抵抗力を小さいものとすることができ、血管の変形に対する追従性が良好なものとなる。
【0031】
また、ステントとしては、図15ないし17に示すようなパターンのステント70であってもよい。図15は、本発明のステントの他の実施例の正面図である
。図16は、図15に示したステントの展開図である。図17は、図15に示したステントを縮径させた状態のステントの展開図である。
このステント70と上述したステント1との相違は、共有線状部の配置形態およびその向きなどである。
このステント70では、1つの環状体2における一端側屈曲部および他端側屈曲部の数はステント1と同じ(具体的には、それぞれ9)であり、軸方向には、10の環状体が配置されたものとなっている。隣り合う2つの環状体2は、3つの共有線状部21(第1パターン共有線状部)もしくは3つの共有線状部41(第2パターン共有線状部)により一体化されている。そして、3つの共有線状部21は、ステントの中心軸に対して、ほぼ等角度に設けられている。同様に、3つの共有線状部41も、ステントの中心軸に対して、ほぼ等角度に設けられている。
【0032】
このステント70では、共有線状部21(第1パターン共有線状部)と共有線状部41(第2パターン共有線状部)が、ステントの軸方向に対して交互となるように配置されており、かつ、共有線状部21(第1パターン共有線状部)と共有線状部41(第2パターン共有線状部)が、軸方向に連続しないように配置されている。具体的には、共有線状部41(第2パターン共有線状部)は、共有線状部21(第1パターン共有線状部)の配置位置に対して、ステントの外周方向にずれた位置に配置されている。また、共有線状部21(第1パターン共有線状部)同士は、ステントの軸方向に対してほぼ直線上に配置されている。同様に、共有線状部41(第2パターン共有線状部)同士も、ステントの軸方向に対してほぼ直線上に配置されている。
【0033】
また、ステント70では、共有線状部21(第1パターン共有線状部)と共有線状部41(第2パターン共有線状部)は、ステントの軸方向に対して斜めに延びるととともに、両者の向きが異なるものとなっている。
具体的に説明すると、このステント70では、第1パターン共有線状部21の終端は、線状部24により、他端側屈曲部と連結する形態となっており、同様に、第2のパターン共有線状部41の終端も、線状部24により、他端側屈曲部と連結する形態となっている。つまり、上述したステント1では、長線状部24は、軸方向に隣り合う2つの共有線状部(正確には、一方の共有線状部の終端と他方の線状共有部の始端)を連結していたのに対し、ステント70では、共有線状部同士を連結する形態とはなっていない。なお、共有線状部と連結する線状部24は、上述したステント1に比べて明確な長線状部となっていない。なお、この線状部24は、他の線状部より若干長い程度である。なお、この線状部24は、長線状部であってもよい。
【0034】
また、このステント70では、第1パターン共有線状部21に対して、ステントの軸方向に隣り合う第2パターン共有線状部41は、1つの一端側屈曲部と1つの他端側屈曲部分ずれた位置に設けられている。そして、ステントの軸方向に隣り合う2つの第1パターン共有線状部21および2つの第2パターン共有線状部41は、ステント70の中心軸に対してほぼ等角度に配置された状態となっている。このため、ステントは、全体においてほぼ均一の拡張力を発現可能である。
また、上述したように、第1パターン共有線状部21と第2パターン共有線状部41は、ステントの軸方向に対して斜めに延びるとともに、両者の向きが異なるものとなっており、特に、両者の向きは、ステントの中心軸に対して、ほぼ対称であることが好ましい。このようにすることにより、ステントは、全体においてほぼ、均一の拡張力を発現可能である。ステントの軸方向での並びで言うと、まず、1パターン共有線状部21が3つ円周方向に均等に存在し、次のステント軸方向では、第2パターン共有線状部41が3つ円周方向に均等に存在する。次のステント軸方向では、第1パターン共有線状部21が3つ円周方向に均等に存在する。
次のステント軸方向では、第2パターン共有線状部41が3つ円周方向に均等に存在する。繰り返すと、21、41,21,41、21、41,21・・・・・・という並び方をしているのが特徴である。
【0035】
そして、この実施例のステント70は、上述したステント1と構造が異なることにより、軸方向の伸び縮みに対する抵抗力を小さいものとすることができ、血管の変形に対する追従性が良好なものとなる。
なお、この実施例のステント70では、図16に示すように、波線状環状体2は、第1パターン共有線状部21の終端23と一端側屈曲部の頂点2a間を連結する短線状部26を有している。そして、この波線状環状体と隣り合う波線状環状体は、第1パターン共有線状部21の始端22と他端側屈曲部の頂点間を連結する短線状部25と、第2パターン共有線状部41の終端42と一端側屈曲部の頂点間を連結する短線状部47を有している。
【0036】
また、ステントとしては、図18および図19に示すような、パターンのステント80であってもよい。図18は、本発明のステントの他の実施例の展開図である。図19は、図18に示したステントを縮径させた状態のステントの展開図である。
このステント80と上述したステント1との相違は、1つの波線状環状体2における一端側屈曲部および他端側屈曲部の数、隣り合う環状体を一体化する共有線状部の数、共有線状部の配置形態およびその向き、両端部に設けられたマーカー、両端部に位置する波状線体に設けられた連結部などである。
このステント80の形態は、上述したステント50と基本構成は同じである。
このステント80では、1つの環状体2における一端側屈曲部および他端側屈曲部の数はステント1より少ない(具体的には、それぞれ8)ものとなっており、軸方向には、11の環状体が配置されたものとなっており、隣り合う2つの環状体2、2つの共有線状部21(第1パターン共有線状部)もしくは2つの共有線状部41(第2パターン共有線状部)により一体化されている。そして、2つの共有線状部21は、ステントの中心軸に対して、向かい合う位置に設けられている。同様に、2つの共有線状部41も、ステントの中心軸に対して、向かい合う位置に設けられている。
【0037】
このステント80では、第1パターン共有線状部21と第2パターン共有線状部41が、ステントの軸方向に対して交互となるように配置されており、かつ、第1パターン共有線状部21と第2パターン共有線状部41が、軸方向に連続しないように配置されている。具体的には、第2パターン共有線状部41は、第1パターン共有線状部21の配置位置に対して、ステントの外周方向にずれた位置に配置されている。
また、ステント80では、第1パターン共有線状部21と第2パターン共有線状部41は、ステントの軸方向に対して斜めに延びるととともに、両者の向きが異なるものとなっている。
このステント80では、第1パターン共有線状部21に対して、ステントの軸方向に隣り合う第2パターン共有線状部41は、1つの一端側屈曲部と1つの他端側屈曲部分ずれた位置に設けられている。そして、ステントの軸方向に隣り合う2つの第1パターン共有線状部21および2つの第2パターン共有線状部41は、ステント80の中心軸に対してほぼ等角度に配置された状態となっている。このため、ステントは、全体においてほぼ均一の拡張力を発現可能である。
【0038】
また、このステント80では、図18に示すように、第1パターン共有線状部21は、ステントの軸方向に対して、螺旋状となるように配置されたものとなっており、同様に、第2パターン共有線状部41も、ステントの軸方向に対して、螺旋状となるように配置されたものとなっている。
また、このステント80では、図18に示すように、ステントの軸方向に配置された11の波線状環状体を備えている。そして、第1パターン共有線状部21は、ステントの軸方向に対して、螺旋状となるように配置されたものとなっており、同様に、第2パターン共有線状部41も、ステントの軸方向に対して、螺旋状となるように配置されたものとなっている。具体的には、一つおきに隣り合う波線状環状体は、2つの第1パターン共有線状部21より連結されており、それぞれの第1パターン共有線状部21は、ステントの軸方向に螺旋状となるように配置されている。このため、第1パターン共有線状部21による2つの螺旋が形成されている。そして、一つの螺旋は、5つの第1パターン共有線状部21により構成される。また、同様に、一つおきに隣り合う波線状環状体(第1パターン共有線状部21により連結されていない)は、2つの第2パターン共有線状部41により連結されており、それぞれの第2パターン共有線状部41は、ステントの軸方向に螺旋状となるように配置されている。このため、第2パターン共有線状部41による2つの螺旋が形成されている。そして、一つの螺旋は、5つの第2パターン共有線状部41により構成されている。
【0039】
また、上述したように、第1パターン共有線状部21と第2パターン共有線状部41は、ステントの軸方向に対して斜めに延びるとともに、両者の向きが異なるものとなっており、特に、両者の向きは、ステントの中心軸に対して、ほぼ対称であることが好ましい。このようにすることにより、ステントは、全体においてほぼ均一の拡張力を発現可能である。
なお、この実施例のステント80では、図18に示すように、波線状環状体2は、第1パターン共有線状部21の終端23と一端側屈曲部の頂点2a間を連結する短線状部26を有している。そして、この波線状環状体と隣り合う波線状環状体は、第1パターン共有線状部21の始端22と他端側屈曲部の頂点2b間を連結する短線状部25と、第2パターン共有線状部41の終端42と一端側屈曲部の頂点間を連結する短線状部47を有している。
【0040】
このステント80では、図18および図19に示すように、造影用マーカー11が設けられている。造影用マーカー11は、ステントの端部に設けることが好ましい。特に、両端部にそれぞれ設けることが好ましい。具体的には、図18および図19に示すように、両端部にそれぞれ複数のマーカー11を設けることが好ましい。この実施例のステント80では、ステントの端部に位置する頂点部に形成された開口部27を有し、この開口部27を閉塞するようにマーカー11が固定されている。造影マーカーとしては、ステント10において説明したものと同じである。
そして、開口部27の外側端は、図18および図19に示すように、ステントの端部に位置する他の頂点部の外側端と同じ位置となっている。つまり、このステント80では、マーカーが設けられる開口部27の外側端は、ステントの端部に位置する他の頂点部の外側端より突出していない。ステントの端部の位置を揃えることにより、ステントが曲がった状態でも確実に、ステントを押し出すことができる。
また、ステントは、マーカー配置部位より、ステントの中央方向に延びかつ離間する2本の脚部を有している。図19に示すように収縮状態(マウント時)において、これら2本の脚部は、離間しかつ近接する線状部とほぼ平行となっている。
具体的には、このステント80では、マーカーが配置される開口部27を有する屈曲部における開口部27より延びる2本の脚部は、開口部27のステントの内側部位でありかつ所定距離離間した2つの位置を始端として、ステントの内側方向に延びるものとなっている。開口部27より延びる2本の脚部は、離間したものとなっている。つまり、このステント80では、開口部27より延びる脚部は、図5に示したステント10のように近接していない。このように、開口部27より延びる2本の脚部を離間させることにより、マーカー形成部(開口部27)付近の形状が安定する。このため、マーカー形成部(開口部27)付近に強い力(ステント押出時)が負荷されても、ステントの変形がない。このため、ステントを確実に押し出すことができる。
【0041】
さらに、このステント80では、図18および図19に示すように、両端に位置する波線状環状体2には、この波状環状体2と隣り合う波線状環状体2とを連結する連結部81が設けられている。ステント80では、両端に位置する波線状環状体2とこれと隣り合う波線状環状体2間には、2本の連結部81が設けられている。なお、ステント80では、両端部に位置する2つの波線状環状体間にのみ連結部81が設けられている。そして、2本の連結部81は、ステントの中心軸に対して、向かい合う位置に設けられている。そして、図18および図19に示すように、ステント80の一端部(上端部)では、上述した2つの共有線状部21および上述した2本の連結部81が、ステントの中心軸に対して、ほぼ等角度となるように配置されている。同様に、ステント80の他端部(下端部)では、上述した2つの共有線状部41および上述した2本の連結部81が、ステントの中心軸に対して、ほぼ等角度となるように配置されている。
このようにステント80では、ステントの両端部に共有線状部とともに連結部を有するため、ステントの拡張後における両端部の形態安定性が良好なものとなる。なお、上述した実施例のステント80では、ステントの両端部に2つの連結部を有するが、これに限定されるものではなく、1つもしくは3つであってもよい。
そして、この実施例のステント80は、上述したステント1と構造が異なることにより、軸方向の伸び縮みに対する抵抗力を小さいものとすることができ、血管の変形に対する追従性が良好なものとなる。
【0042】
また、ステントとしては、図20および図21に示すような、パターンのステント90であってもよい。図20は、本発明のステントの他の実施例の展開図である。図21は、図20に示したステントを縮径させた状態のステントの展開図である。
このステント90と上述したステント1との相違は、1つの波線状環状体2における一端側屈曲部および他端側屈曲部の数、隣り合う環状体を一体化する共有線状部の数、共有線状部の配置形態およびその向き、両端部に設けられたマーカーなどである。
このステント90の形態は、上述したステント50と似ている。
このステント90では、1つの環状体2における一端側屈曲部および他端側屈曲部の数はステント1より少ない(具体的には、それぞれ8)ものとなっており、軸方向には、21個の環状体が配置されたものとなっている。ステント90では、隣り合う2つの環状体2、共有線状部91(第1パターン共有線状部)もしくは共有線状部92(第2パターン共有線状部)により一体化されている。そして、ステント90では、隣り合う2つの環状体2は、少なくとも2つの共有線状部により一体化されている。そして、2つの共有線状部91は、ステントの中心軸に対して、向かい合う位置に設けられている。同様に、2つの共有線状部92も、ステントの中心軸に対して、向かい合う位置に設けられている。
【0043】
なお、このステント90では、図20および図21に示すように、両端に位置する波線状環状体2と隣り合う波線状環状体2とは、4つの共有線状部により一体化されている。そして、ステント90の一端部(上端部)では、上述した4つの共有線状部91が、ステントの中心軸に対して、ほぼ等角度となるように配置されている。同様に、ステント90の他端部(下端部)では、上述した4つの共有線状部92が、ステントの中心軸に対して、ほぼ等角度となるように配置されている。
このようにステント90では、ステントの両端部にのみ、他の部分より多くの共有線状部を有するため、ステントの拡張後における両端部の形態安定性が良好なものとなる。
そして、このステント90では、第1パターン共有線状部91と第2パターン共有線状部92が、ステントの軸方向に対して交互となるように配置されており、かつ、第1パターン共有線状部91と第2パターン共有線状部92が、軸方向に連続しないように配置されている。具体的には、第2パターン共有線状部92は、第1パターン共有線状部91の配置位置に対して、ステントの外周方向にずれた位置に配置されている。
【0044】
また、ステント90では、第1パターン共有線状部91と第2パターン共有線状部92は、ステントの軸方向に対して斜めに延びるととともに、両者の向きが異なるものとなっている。
また、このステント90では、ステント90の両端部を除き、第1パターン共有線状部91に対して、ステントの軸方向に隣り合う第2パターン共有線状部92は、1つの一端側屈曲部と1つの他端側屈曲部分ずれた位置に設けられている。そして、ステントの軸方向に隣り合う2つの第1パターン共有線状部91および2つの第2パターン共有線状部92は、ステント90の中心軸に対してほぼ等角度に配置された状態となっている。このため、ステントは、全体においてほぼ均一の拡張力を発現可能である。
また、このステント90では、図20に示すように、第1パターン共有線状部91は、ステントの軸方向に対して、螺旋状となるように配置されたものとなっており、同様に、第2パターン共有線状部92も、ステントの軸方向に対して、螺旋状となるように配置されたものとなっている。
【0045】
また、このステント90では、図20に示すように、ステントの軸方向に配置された21個の波線状環状体を備えている。そして、第1パターン共有線状部91は、ステントの軸方向に対して、螺旋状となるように配置されたものとなっており、同様に、第2パターン共有線状部92も、ステントの軸方向に対して、螺旋状となるように配置されたものとなっている。具体的には、一つおきに隣り合う波線状環状体は、2つの第1パターン共有線状部91より連結されており、それぞれの第1パターン共有線状部91は、ステントの軸方向に螺旋状となるように配置されている。このため、第1パターン共有線状部91による2つの螺旋が形成されている。また、同様に、一つおきに隣り合う波線状環状体(第1パターン共有線状部91により連結されていない)は、2つの第2パターン共有線状部92により連結されており、それぞれの第2パターン共有線状部92は、ステントの軸方向に螺旋状となるように配置されている。このため、第2パターン共有線状部92による2つの螺旋が形成されている。
また、上述したように、第1パターン共有線状部91と第2パターン共有線状部92は、ステントの軸方向に対して斜めに延びるとともに、両者の向きが異なるものとなっており、特に、両者の向きは、ステントの中心軸に対して、ほぼ対称であることが好ましい。このようにすることにより、ステントは、全体においてほぼ均一の拡張力を発現可能である。
【0046】
なお、この実施例のステント90では、図20に示すように、波線状環状体2は、第1パターン共有線状部91の終端23と一端側屈曲部の頂点2a間を連結する短線状部26を有している。そして、この波線状環状体と隣り合う波線状環状体は、第1パターン共有線状部91の始端22と他端側屈曲部の頂点2b間を連結する短線状部25と、第2パターン共有線状部92の終端42と一端側屈曲部の頂点間を連結する短線状部を有している。
このステント90では、図20および図21に示すように、造影用マーカー11が設けられている。造影用マーカー11は、ステントの端部に設けることが好ましい。特に、両端部にそれぞれ設けることが好ましい。具体的には、図20および図21に示すように、両端部にそれぞれ複数のマーカー11を設けることが好ましい。この実施例のステント90では、ステントの端部に位置する頂点部に形成された開口部27を有し、この開口部27を閉塞するようにマーカー11が固定されている。造影マーカーとしては、ステント10において説明したものと同じである。
【0047】
そして、開口部27の外側端は、図20および図21に示すように、ステントの端部に位置する他の頂点部の外側端と同じ位置となっている。つまり、このステント90では、マーカーが設けられる開口部27の外側端は、ステントの端部に位置する他の頂点部の外側端より突出していない。ステントの端部の位置を揃えることにより、ステントが曲がった状態でも確実に、ステントを押し出すことができる。さらに、このステント90では、開口部27を有する屈曲部における開口部27より延びる2本の脚部は、開口部27のステントの内側部位でありかつ所定距離離間した2つの位置を始端として、ステントの内側方向に延びるものとなっている。開口部27より延びる2本の脚部は、離間したものとなっている。つまり、このステント90では、開口部27より延びる脚部は、図5に示したステント10のように近接していない。このように、開口部27より延びる2本の脚部を離間させることにより、マーカー形成部(開口部27)付近の形状が安定する。このため、マーカー形成部(開口部27)付近に強い力(ステント押出時)が負荷されても、ステントの変形がない。このため、ステントを確実に押し出すことができる。
【0048】
そして、ステントは、留置対象部位により異なるが、一般的に、拡張時(非縮径時、復元時)の外径が2.0〜30mm、好ましくは2.5〜20mm、肉厚が0.04〜1.0mm、好ましくは0.06〜0.5mmのものであり、長さは、10〜150mm、より好ましくは15〜100mmである。特に、血管内留置用ステントの場合には、外径が2.0〜14mm、好ましくは2.5〜12mm、肉厚が0.04〜0.3mm、好ましくは0.06〜0.22mmのものであり、長さは5〜100mm、より好ましくは10〜80mmである。
そして、ステントは、生体内挿入前および生体内挿入後のいずれにおいても超弾性を示す超弾性金属により略円筒形状に一体に形成されている。
【0049】
超弾性金属としては、超弾性合金が好適に使用される。ここでいう超弾性合金とは一般に形状記憶合金といわれ、少なくとも生体温度(37℃付近)で超弾性を示すものである。特に好ましくは、49〜54原子%NiのTiNi合金、38.5〜41.5重量%ZnのCu−Zn合金、1〜10重量%XのCu−Zn−X合金(X=Be,Si,Sn,Al,Ga)、36〜38原子%AlのNi−Al合金等の超弾性金属体が好適に使用される。特に好ましくは、上記のTiNi合金である。また、Ti−Ni合金の一部を0.01〜10.0%Xで置換したTi−Ni−X合金(X=Co,Fe,Mn,Cr,V,Al,Nb,W,B、Au,Pdなど)とすること、またはTi−Ni合金の一部を0.01〜30.0%原子で置換したTi−Ni−X合金(X=Cu,Pb,Zr)とすること、また、冷間加工率または/および最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。
【0050】
また、上記のTi−Ni−X合金を用いて冷間加工率および/または最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。そして、使用される超弾性合金の座屈強度(負荷時の降伏応力)は、5〜200kg/mm2(22℃)、より好ましくは、8〜150kg/mm2、復元応力(除荷時の降伏応力)は、3〜180kg/mm2(22℃)、より好ましくは、5〜130kg/mm2である。ここでいう超弾性とは、使用温度において通常の金属が塑性変形する領域まで変形(曲げ、引張り、圧縮)させても、荷重の解放後、加熱を必要とせずにほぼ元の形状に回復することを意味する。
そして、ステントは、例えば、超弾性金属パイプを用いて、ステント非構成部分を除去(例えば、切削、溶解)することに作製され、これにより、一体形成物となっている。なお、本発明のステントの形成に用いられる超弾性金属パイプは、不活性ガスまたは真空雰囲気にて溶解しTi−Ni合金などの超弾性合金のインゴットを形成し、このインゴットを機械的に研磨し、続いて、熱間プレスおよび押し出しにより、太径パイプを形成し、その後順次ダイス引き抜き工程および熱処理工程を繰り返すことにより、所定の肉厚、外径のパイプに細径化し、最終的に表面を化学的または物理的に研磨することにより製造することができる。そして、この超弾性金属パイプによるステント基材の形成は、切削加工(例えば、機械研磨、レーザー切削加工)、放電加工、化学エッチングなどにより行うことができ、さらにそれらの併用により行ってもよい。
【0051】
また、本発明のステントは、内面または外面、さらには両面に生体適合性材料を被覆してもよい。生体適合性材料としては、生体適合性を有する合成樹脂または金属が考えられる。ステントの表面を不活性な金属で被覆する方法としては、電気メッキ法を用いた金メッキ、蒸着法を用いたステンレスメッキ、スパッタ法を用いたシリコンカーバイド、ダイヤモンドライクカーボン、窒化チタンメッキ、金メッキなどが考えられる。また、合成樹脂としては、熱可塑系または熱硬化系の樹脂から選択できるが、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体など)、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリエステル、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等が使用でき、好ましくは、ポリオレフィン、ポリアミドエラストマー、ポリエステルあるいはポリウレタン、シリコーン樹脂、また、生体内分解性樹脂(例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、両者のコポリマー)である。合成樹脂被膜は、ステントを構成するフレームの湾曲の妨げにならない程度に柔軟であることが好ましい。合成樹脂被膜の肉厚は、3〜300μm、好ましくは、5〜100μmである。
【0052】
ステントの表面に合成樹脂を薄く被覆する方法としては、例えば、溶融状態または溶液状態の合成樹脂の中に、ステントを挿入して被覆する方法、モノマーを超弾性金属パイプの表面で重合させながら被覆する化学蒸着などがある。極薄な樹脂被覆が要求される場合は、希薄溶液を用いた被覆、または化学蒸着が好適である。さらに、より生体適合性材料を向上させるために、上記樹脂被膜に抗血栓性材料を被覆または固定してもよい。抗血栓性材料として、公知の各種の樹脂を単独または混合して使用することができるが、例えば、ポリヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートとスチレンの共重合体(例えば、HEMA−St−HEMAブロック共重合体)などが好適に使用できる。
【0053】
また、上述したすべての実施例におけるステントは、略管状体に形成され、生体内管腔への挿入のための直径を有し、該管状体の内部より半径方向に広がる力が付加されたときに拡張可能なステント、いわゆるバルーン拡張型ステントであってもよい。
バルーン拡張型ステントの形成材料としては、ある程度の生体適合性を有するものが好ましく、例えば、ステンレス鋼、タンタルもしくはタンタル合金、プラチナもしくはプラチナ合金、金もしくは金合金、コバルトベース合金、コバルトクロム合金、チタン合金、ニオブ合金等が考えられる。
またステント形状を作製した後に貴金属メッキ(金、プラチナ)をしてもよい。ステンレス鋼としては、最も耐腐食性のあるSUS316Lが好適である。
【0054】
さらに、ステントの最終形状を作製したのち、焼なましすることが好ましい。焼きなましを行うことにより、ステント全体の柔軟性および可塑性が向上し、屈曲した血管内での留置性が良好となる。焼きなましを行わない場合に比べて、ステントを拡張した後の拡張前形状に復元しようとする力、特に、屈曲した血管部位で拡張したときに発現する直線状に復帰しようとする力が減少し、屈曲した血管内壁に与える物理的な刺激が減少し、再狭窄の要因を減少させることができる。焼きなましは、ステント表面に酸化被膜が形成されないように、不活性ガス雰囲気下(例えば、窒素と水素の混合ガス)にて、900〜1200℃に加熱したのち、ゆっくりと冷却することにより行うことが好ましい。
また、ステントの非拡張時の直径は、0.8〜1.8mm程度が好適であり、特に、0.9〜1.6mmがより好ましい。また、ステントの非拡張時の長さは、8〜40mm程度が好適である。また、一つの波線状環状体2の長さは、8〜25mm程度が好適である。
そして、ステントの成形は、管状体(具体的には、金属パイプ)よりフレーム構造体となる部分以外を除去することにより行われる。具体的には、金属パイプを、例えば、フォトファブリケーションと呼ばれるマスキングと化学薬品を使用したエッチング方法、切削加工(例えば、機械研磨、レーザー切削加工)、放電加工などにより行うことができ、さらにそれらの併用により行ってもよい。
【0055】
また、上述したすべての実施例において、図5に示すステント10のように、造影用マーカー11を設けることが好ましい。造影用マーカー11は、ステントの端部側に設けることが好ましい。特に、両端部側にそれぞれ設けることが好ましい。具体的には、図5に示すように、両端側にそれぞれ複数のマーカー11を設けることが好ましい。マーカーについては、上述した通りである。
【実施例】
【0056】
次に、本発明のステントの具体的実施例について述べる。
(実施例1)
TiNi合金(51原子%Ni)の合金パイプを冷間加工して、外径約1.9mm、肉厚0.25mm、長さ約100mmの超弾性金属パイプを作製した。そして、金属パイプを軸がぶれないようにファスナー機構の付いた回転モーター付治具にセットし、さらにこれを数値制御可能なXテーブル上にセットした。そして、Xテーブルおよび回転モーターをパーソナルコンピュータに接続し、パーソナルコンピュータの出力が、Xテーブルの数値制御コントローラーおよび回転モーターに入力されるものとした。パーソナルコンピュータ内には図面ソフトが記憶されており、ここに図3に示すような構図のステントの展開図面を入力した。このような構成により、パーソナルコンピュータより出力される図面データに基づいて、Xテーブルおよび回転モーターが駆動する。
このようにして金属パイプにレーザーを照射することにより、図3のような展開図を有する形状のステント基材を作製した。
上記金属パイプのレーザー加工条件としては、平均出力5.5W、駆動スピード180mm/分にて行った。そして、上記のステント基材に内面研削加工を行った。
【0057】
次に、ステント基材内腔に、ステント基材内腔よりやや太い直径の芯金を挿入することによりステント基材を拡径し、芯金を挿入したままステント基材を熱処理して拡径した形状を記憶させた。この拡径熱処理工程により、ステント基材は元の直径よりやや太い(元の直径+1mm前後)形状に成形される。なお、芯金の材質は例えばステンレス等の金属が適当であり、熱処理温度は450℃〜550℃、時間は2分〜30分程度が好適である。続いて、さらにやや太い(拡径後の直径+2mm前後)芯金をステント基材内腔に挿入して拡径し、熱処理を施す。このようにして、ステント基材が目的とする外径に達するまで拡径熱処理を繰り返すことにより、図1に示すようなステント基材を作製する。なお、一つの熱処理工程を経る毎に、必要に応じて化学研磨工程を施しても良い。
目的とする形状に成形したステント基材は、このあと適宜、ブラスト処理、化学研磨工程と電解研磨工程を経て、表面を平滑にし、かつ金属光沢を付与する工程を施した。
このようにして作製したステントは、外径約8mm、全長約45mm、肉厚約0.2mm、各環状体における線状部の幅約0.11mm、環状体の軸方向の長さ約3mm、共有線状部の長さ約1.6mm、長線状部の長さ約3.4mmであった。
このステントは、十分な拡張力を有するとともに、接続部に歪みの集中が生じにくいものであった。
【0058】
(実施例2)
TiNi合金(51原子%Ni)の合金パイプを冷間加工して、外径約1.9mm、肉厚0.25mm、長さ約100mmの超弾性金属パイプを作製した。そして、金属パイプを軸がぶれないようにファスナー機構の付いた回転モーター付治具にセットし、さらにこれを数値制御可能なXテーブル上にセットした。そして、Xテーブルおよび回転モーターをパーソナルコンピュータに接続し、パーソナルコンピュータの出力が、Xテーブルの数値制御コントローラーおよび回転モーターに入力されるものとした。パーソナルコンピュータ内には図面ソフトが記憶されており、ここに図11に示すような構図のステントの展開図面を入力した。このような構成により、パーソナルコンピュータより出力される図面データに基づいて、Xテーブルおよび回転モーターが駆動する。
このようにして金属パイプにレーザーを照射することにより、図11のような展開図を有する形状のステント基材を作製した。
上記金属パイプのレーザー加工条件としては、平均出力5.5W、駆動スピード180mm/分にて行った。そして、上記のステント基材に内面研削加工を行った。
【0059】
次に、ステント基材内腔に、ステント基材内腔よりやや太い直径の芯金を挿入することによりステント基材を拡径し、芯金を挿入したままステント基材を熱処理して拡径した形状を記憶させた。この拡径熱処理工程により、ステント基材は元の直径よりやや太い(元の直径+1mm前後)形状に成形される。なお、芯金の材質は例えばステンレス等の金属が適当であり、熱処理温度は450℃〜550℃、時間は2分〜30分程度が好適である。続いて、さらにやや太い(拡径後の直径+2mm前後)芯金をステント基材内腔に挿入して拡径し、熱処理を施す。このようにして、ステント基材が目的とする外径に達するまで拡径熱処理を繰り返すことにより、図9に示すようなステント基材を作製する。なお、一つの熱処理工程を経る毎に、必要に応じて化学研磨工程を施しても良い。
目的とする形状に成形したステント基材は、このあと適宜、ブラスト処理、化学研磨工程と電解研磨工程を経て、表面を平滑にし、かつ金属光沢を付与する工程を施した。
このようにして作製したステントは、外径約8mm、全長約45mm、肉厚約0.2mm、各環状体における線状部の幅約0.11mm、環状体の軸方向の長さ約3mm、共有線状部の長さ約1.6mmであった。
このステントは、十分な拡張力を有するとともに、接続部に歪みの集中が生じにくいものであった。
【0060】
(実施例3)
TiNi合金(51原子%Ni)の合金パイプを冷間加工して、外径約1.9mm、肉厚0.25mm、長さ約100mmの超弾性金属パイプを作製した。そして、金属パイプを軸がぶれないようにファスナー機構の付いた回転モーター付治具にセットし、さらにこれを数値制御可能なXテーブル上にセットした。そして、Xテーブルおよび回転モーターをパーソナルコンピュータに接続し、パーソナルコンピュータの出力が、Xテーブルの数値制御コントローラーおよび回転モーターに入力されるものとした。パーソナルコンピュータ内には図面ソフトが記憶されており、ここに図14に示すような構図のステントの展開図面を入力した。このような構成により、パーソナルコンピュータより出力される図面データに基づいて、Xテーブルおよび回転モーターが駆動する。
このようにして金属パイプにレーザーを照射することにより、図14のような展開図を有する形状のステント基材を作製した。
上記金属パイプのレーザー加工条件としては、平均出力5.5W、駆動スピード180mm/分にて行った。そして、上記のステント基材に内面研削加工を行った。
【0061】
次に、ステント基材内腔に、ステント基材内腔よりやや太い直径の芯金を挿入することによりステント基材を拡径し、芯金を挿入したままステント基材を熱処理して拡径した形状を記憶させた。この拡径熱処理工程により、ステント基材は元の直径よりやや太い(元の直径+1mm前後)形状に成形される。なお、芯金の材質は例えばステンレス等の金属が適当であり、熱処理温度は450℃〜550℃、時間は2分〜30分程度が好適である。続いて、さらにやや太い(拡径後の直径+2mm前後)芯金をステント基材内腔に挿入して拡径し、熱処理を施す。このようにして、ステント基材が目的とする外径に達するまで拡径熱処理を繰り返すことにより、図12に示すようなステント基材を作製する。なお、一つの熱処理工程を経る毎に、必要に応じて化学研磨工程を施しても良い。
目的とする形状に成形したステント基材は、このあと適宜、ブラスト処理、化学研磨工程と電解研磨工程を経て、表面を平滑にし、かつ金属光沢を付与する工程を施した。
このようにして作製したステントは、外径約8mm、全長約45mm、肉厚約0.2mm、各環状体における線状部の幅約0.11mm、環状体の軸方向の長さ約3mm、共有線状部の長さ約1.6mmであった。
このステントは、十分な拡張力を有するとともに、接続部に歪みの集中が生じにくいものであった。
【0062】
(実施例4)
TiNi合金(51原子%Ni)の合金パイプを冷間加工して、外径約1.9mm、肉厚0.25mm、長さ約100mmの超弾性金属パイプを作製した。そして、金属パイプを軸がぶれないようにファスナー機構の付いた回転モーター付治具にセットし、さらにこれを数値制御可能なXテーブル上にセットした。そして、Xテーブルおよび回転モーターをパーソナルコンピュータに接続し、パーソナルコンピュータの出力が、Xテーブルの数値制御コントローラーおよび回転モーターに入力されるものとした。パーソナルコンピュータ内には図面ソフトが記憶されており、ここに図17に示すような構図のステントの展開図面を入力した。このような構成により、パーソナルコンピュータより出力される図面データに基づいて、Xテーブルおよび回転モーターが駆動する。
このようにして金属パイプにレーザーを照射することにより、図17のような展開図を有する形状のステント基材を作製した。
上記金属パイプのレーザー加工条件としては、平均出力5.5W、駆動スピード180mm/分にて行った。そして、上記のステント基材に内面研削加工を行った。
【0063】
次に、ステント基材内腔に、ステント基材内腔よりやや太い直径の芯金を挿入することによりステント基材を拡径し、芯金を挿入したままステント基材を熱処理して拡径した形状を記憶させた。この拡径熱処理工程により、ステント基材は元の直径よりやや太い(元の直径+1mm前後)形状に成形される。なお、芯金の材質は例えばステンレス等の金属が適当であり、熱処理温度は450℃〜550℃、時間は2分〜30分程度が好適である。続いて、さらにやや太い(拡径後の直径+2mm前後)芯金をステント基材内腔に挿入して拡径し、熱処理を施す。このようにして、ステント基材が目的とする外径に達するまで拡径熱処理を繰り返すことにより、図15に示すようなステント基材を作製する。なお、一つの熱処理工程を経る毎に、必要に応じて化学研磨工程を施しても良い。
目的とする形状に成形したステント基材は、このあと適宜、ブラスト処理、化学研磨工程と電解研磨工程を経て、表面を平滑にし、かつ金属光沢を付与する工程を施した。
このようにして作製したステントは、外径約8mm、全長約45mm、肉厚約0.2mm、各環状体における線状部の幅約0.11mm、環状体の軸方向の長さ約3mm、共有線状部の長さ約1.6mmであった。
このステントは、十分な拡張力を有するとともに、接続部に歪みの集中が生じにくいものであった。
【0064】
(実験)
ステントは、体内管腔の様々な部位に植え込まれるが、その場所によって求められる機能が異なる場合がある。例えば頚動脈や腎動脈等の場合は、ステントの軸方向の伸びや圧縮に対しては比較的抵抗力があって強い方が良い。その理由は、これらの血管は生体の動きによって伸び縮みが少なく、ステントも伸び縮みの少ない、且つしっかり血管をホールドするタイプが良い。
一方、浅大腿動脈や膝禍動脈は、生体の動きによって、血管が大きく伸び縮みし、且つ多くの場合病変が長いため長いステントを植え込む必要がある。求められるステントの機能としては、ステントの軸方向の伸び縮みに対しては比較的抵抗力がなく、軸方向に柔軟な方が良い。そこで、鋭意研究した結果、ほぼ同じステント構造であっても、軸方向の伸び縮みに対する抵抗性(柔軟性)の異なるステントを開発した。
実施例1のステント、実施例2のステント、実施例3のステント、実施例4のステントについて、軸方向の伸び縮みに対する抵抗力を測定した。具体的には、外径8mm、長さ45の各ステントの両端部7.5mmを把持し、残りの30mmの20%、即ち6mm縮めた時の抵抗力を測定した。その結果は、表1に示す通りであった。
【0065】
(表1)
┌──────┬─────┬─────┬─────┬─────┐
│ ステント │実施例1 │実施例2 │実施例3 │実施例4 │
├──────┼─────┼─────┼─────┼─────┤
│ 抵抗力 │ 43.5gf │ 11.5gf │ 18.3gf │ 17.2gf │
└──────┴─────┴─────┴─────┴─────┘
【0066】
この結果から、実施例1に示すステントは、軸方向の伸び縮みに対する抵抗力は比較的強く、しっかり血管をホールドできることから、頚動脈、腎動脈などへの埋込用に適していることがわかった。なお、抵抗力が比較的強い理由は、長線状部24が2回の屈曲即ち始点22と終点23を結ぶ線状体を介してらせん状に連続しているためと思われる。
また、実施例2ないし4の3種類のステントの軸方向の伸び縮みに対する抵抗力は、実施例1のステントの半分以下であった。従って、これらのステントは、伸び縮みの激しい浅大腿動脈や、膝禍動脈等の下肢動脈への埋込に適していることがわかった。これらのステントの軸方向の伸び縮みに対する抵抗力が比較的弱い理由は、実施例1のステントのような明確な長線状部がなく、また、共有線状部が連続していないからである。特に、実施例2のステントは、共有線状部が2個ずつしかなく、且つそれらが180度離れているため、最も低い抵抗力を示した。
【符号の説明】
【0067】
1 ステント
2 環状体
21 共有線状部
24 長線状部
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管、胆管、気管、食道、尿道、その他の臓器などの管腔内に生じた狭窄部もしくは閉塞部の治療に使用する生体内留置用ステントに関する。
【背景技術】
【0002】
ステントは、血管あるいは他の生体内管腔が狭窄若しくは閉塞する事によって生じる様々な疾患を治療するために、その狭窄若しくは閉塞部位を拡張し、その内腔を確保するために留置される管状の医療用具である。ステントは、体外から体内に挿入するため、挿入時には直径が小さく、目的の狭窄若しくは閉塞部位で拡張もしくは復元させて直径を大きくし、大きくなった状態にて管腔を保持するものである。ステントは、機能及び拡張様式によって、セルフエクスパンダブルステントとバルーンエクスパンダブルステントに区別される。バルーンエクスパンダブルステントはステント自体に拡張機能はなく、ステントを目的部位に挿入した後、ステント内にバルーンを位置させてバルーンを拡張させ、バルーンの拡張力によりステントを拡張(塑性変形)させ目的管腔の内面に密着させて固定する。
【0003】
このタイプのステントでは、上記のようなステントの拡張作業が必要になる。一方、セルフエクスパンダブルステントは基本的に弾性のある素材で作られており、大きさは拡張された最終形状で作られる。セルフエクスパンダブルステントは、ステントを体内に導入するためには、小さく折りたたんで、その形状を拘束する部材(ほとんどの場合はプラスチック製チューブ)の中に入れられ、その部材即ちチューブごと体内に導入し、目的部位でチューブから放出することで、ステントがその弾性により自分自身で拡張する。
【0004】
セルフエクスパンダブルステントとしては、複数の支柱部を複数のループ部で接続してなる概ジグザグ状のパターンで形成された環状体を互いに接続部で連結して略円筒状に形成した形状のものが主流となっている。
特開平11−505441号公報(特許文献1)のものでは、波状環状体が、斜めに形成されたコネクターによって連結された構造となっている。
また、隣り合う蛇行要素若しくはジグザグ要素の頂点が隣り合う蛇行要素若しくはジグザグ要素の中に侵入しているタイプのステントもある。このタイプのものとして、例えば、特表2000−506753号公報(特許文献2)のものがある。また、特表2002−518087号公報(特許文献3)のものでは、上記の蛇行要素の頂点同士が軸に平行なコネクターにより接続されている。
また、蛇行要素若しくはジグザグ要素が平ループではなく螺旋状となっているタイプのステントがある。このタイプのステントとしては、先端から後端まで1本若しくは複数本で構成されているものである。例えば、特表2001−509702号公報(特許文献4)では、ステントの形状を保つためにジグザグ要素間を軸に平行なコネクターにより接続している。また、特開平8−196642号公報(特許文献5)のものでは、波線状環状体ではなく、複数の螺旋により構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平11−505441号公報
【特許文献2】特表2000−506753号公報
【特許文献3】特表2002−518087号公報
【特許文献4】特表2001−509702号公報
【特許文献5】特開平8−196642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術で述べた最近の全てのステントは、各要素間を接続するためにコネクターを用いている。コネクターは、単に要素間を接続するためのもので拡張力には貢献しない。
そこで、発明者が鋭意検討したところ、拡張力に貢献する要素だけで構成され、且つコネクターの働きも共有できる構成であれば、一定以上の拡張力を保持しつつ且つカバレッジの良いステントとなる可能性が有ることを知見した。
本発明の目的は、拡張力を実質的発現せず、かつ、ステントの湾曲時に影響を与える可能性のある接続部を持たず、十分な拡張力ならびに全体として均等な拡張力を有するステントを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 軸方向に複数の波線状環状体を備えるステントであって、前記波線状環状体は、前記ステントの軸方向の一端側に頂点を有する複数の一端側屈曲部および前記ステントの軸方向の他端側に頂点を有する複数の他端側屈曲部を有し、かつ、ステントの軸方向基端側に隣り合う波線状環状体は、前記ステントの軸方向一端側の波線状環状体における前記他端側屈曲部の1つの頂点もしくはその付近に始端を有し、該他端側屈曲部の前記頂点と前記一端側屈曲部の頂点間に終端を有する共有線状部を有し、該共有線状部により、隣り合う波状環状体が一体化している生体内留置用ステント。
(2) 前記ステントは、前記共有線状部の前記始端部位が形成する始端分岐部と、前記共有線状部の前記終端部位が形成する終端分岐部とを有するものである上記(1)に記載の生体内留置用ステント。
(3) 前記波線状環状体は、前記共有線状部の始端と他端側屈曲部の頂点間を連結する短線状部を有している上記(1)または(2)に記載の生体内留置用ステント。
(4) 前記波線状環状体は、前記共有線状部の終端と一端側屈曲部の頂点間を連結する短線状部を有している上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【0008】
(5) 前記波線状環状体は、他の一端側屈曲部の頂点より一端側に突出する突出一端側頂点および他の他端側屈曲部の頂点より他端側に突出する突出他端側頂点を形成する大波部を有している上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(6) 前記大波部における前記突出一端側頂点と前記突出他端側頂点間が、前記長線状部を構成している上記(5)に記載の生体内留置用ステント。
(7) 前記波線状環状体は、前記共有線状部の終端と他端側屈曲部の頂点間を連結する長線状部を有している上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(8) 前記隣り合う波線状環状体間には、複数の共有線状部を備えている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(9) 前記隣り合う波線状環状体間には、複数の共有線状部を備えており、該複数の共有線状部は、前記ステントの中心軸に対して、向かい合うようにもしくはほぼ等角度となるように形成されている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(10) 前記波線状環状体は、複数の大波部を備えている上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(11) 前記波線状環状体は、複数の大波部を備えており、該複数の大波部は、前記ステントの中心軸に対して、向かい合うようにもしくはほぼ等角度となるように形成されている上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(12) 前記共有線状部の始端と他端側屈曲部の頂点間を連結する短線状部は、前記ステントの軸方向に連続せず、かつ複数の該短線状部は、ほぼ直線状となるように形成されている上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(13) 前記波線状環状体の前記一端側屈曲部の頂点は、隣り合う一方の波線状環状体の他端側屈曲部間に形成される空間に侵入し、前記波線状環状体の他端側屈曲部の頂点は、隣り合う他方の波線状環状体の一端側屈曲部間に形成される空間に侵入している上記(1)ないし(12)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(14) 前記ステントは、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には縮径され、生体内留置時には縮径前の形状に復元可能な自己拡張型である上記(1)ないし(13)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(15) 前記ステントは、略管状体に形成され、生体内管腔への挿入のための直径を有し、該管状体の内部より半径方向に広がる力が付加されたときに拡張可能なステントである上記(1)ないし(13)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【0009】
(16) 前記ステントは、前記ステントの中心軸に対して所定角度斜めに延びる第1パターン共有線状部と、前記ステントの中心軸に対して所定角度斜めにかつ前記第1パターン共有線状部と異なる方向に延びる第2パターン共有線状部を備えている(1)ないし(15)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(17) 前記第1パターン共有線状部と前記第2パターン共有線状部は、前記ステントの軸方向に対して交互となるように配置されている(16)に記載の生体内留置用ステント。
(18) 前記第2パターン共有線状部は、前記第1パターン共有線状部の配置位置に対して、ステントの外周方向にずれた位置に配置されている(16)または(17)に記載の生体内留置用ステント。
(19) 前記ステントは、両端に位置する波線状環状体と隣り合う波線状環状体とを接続する連結部を備えている(1)ないし(18)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(20) 前記ステントは、両端に位置する波線状環状体と隣り合う波線状環状体間には、他の部分の波線状環状体間より多い前記共有線状部が設けられている(1)ないし(18)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(21) 前記ステントは、該ステントの端部に設けられた造影性マーカーを備え、該造影性マーカー配置部位の端部は、前記ステントの端部より突出していない(1)ないし(20)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(22) 前記ステントは、該ステントの端部に設けられた造影性マーカーを備え、さらに、前記マーカー配置部位より、前記ステントの中央方向に延びかつ離間する2本の脚部を有しており、収縮状態において、該2本の脚部は、離間しかつ近接する線状部とほぼ平行となっている(1)ないし(20)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【発明の効果】
【0010】
本発明の生体内留置用ステントは、軸方向に複数の波線状環状体を備えるステントであって、前記波線状環状体は、前記ステントの軸方向の一端側に頂点を有する複数の一端側屈曲部および前記ステントの軸方向の他端側に頂点を有する複数の他端側屈曲部を有し、かつ、ステントの軸方向基端側に隣り合う波線状環状体は、前記ステントの軸方向一端側の波線状環状体における前記他端側屈曲部の1つの頂点もしくはその付近に始端を有し、該他端側屈曲部の前記頂点と前記一端側屈曲部の頂点間に終端を有する共有線状部を有し、該共有線状部により、隣り合う波状環状体が一体化している。ステントは、拡張力を実質的発現せず、かつ、ステントの湾曲時に影響を与える可能性のある接続部を持たず、隣り合う波線状環状体が、共有線状部により一体化されているため、十分な拡張力ならびに全体として均等な拡張力を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施例のステントの正面図である。
【図2】図2は、図1に示したステントの展開図である。
【図3】図3は、図1に示したステントを縮径させた状態のステントの展開図である。
【図4】図4は、図1に示したステントの部分拡大図である。
【図5】図5は、本発明のステントの他の実施例の縮径状態の展開図である。
【図6】図6は、本発明のステントの他の実施例の縮径状態の展開図である。
【図7】図7は、本発明のステントの他の実施例のパターンを説明するための説明図である。
【図8】図8は、本発明のステントの他の実施例のパターンを説明するための説明図である。
【図9】図9は、本発明のステントの他の実施例の正面図である。
【図10】図10は、図9に示したステントの展開図である。
【図11】図11は、図9に示したステントを縮径させた状態のステントの展開図である。
【図12】図12は、本発明のステントの他の実施例の正面図である。
【図13】図13は、図12に示したステントの展開図である。
【図14】図14は、図13に示したステントを縮径させた状態のステントの展開図である。
【図15】図15は、本発明のステントの他の実施例の正面図である。
【図16】図16は、図15に示したステントの展開図である。
【図17】図17は、図15に示したステントを縮径させた状態のステントの展開図である。
【図18】図18は、本発明のステントの他の実施例の展開図である。
【図19】図19は、図18に示したステントを縮径させた状態のステントの展開図である。
【図20】図20は、本発明のステントの他の実施例の展開図である。
【図21】図21は、図20に示したステントを縮径させた状態のステントの展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施例のステントについて図面に示した実施例を用いて説明する。
図1は、本発明の実施例のステントの正面図である。図2は、図1に示したステントの展開図である。図3は、図1に示したステントを縮径させた状態のステントの展開図である。図4は、図1に示したステントの部分拡大図である。
本発明の生体内留置用ステント1は、軸方向に複数の波線状環状体2を備えるステントであって、波線状環状体2は、ステント1の軸方向の一端側に頂点2aを有する複数の一端側屈曲部およびステント1の軸方向の他端側に頂点2bを有する複数の他端側屈曲部を有し、かつ、ステント1の軸方向基端側に隣り合う波線状環状体2は、ステント1の軸方向一端側の波線状環状体2における他端側屈曲部の1つの頂点2bもしくはその付近に始端22を有し、他端側屈曲部の頂点2bと一端側屈曲部の頂点2a間に終端23を有する共有線状部21を有し、共有線状部21により、隣り合う波状環状体が一体化している。
本発明のステントは、部分的共有部を有することにより、隣り合う波線状環状体が一体化した複数の環状体からなるものであり、いわゆる接続部としてのみ設けられた部分を備えず、すべてが、拡張力を発揮する部分のみにより構成されている。
【0013】
また、この実施例のステントは、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には縮径され、生体内留置時には縮径前の形状に復元可能なステント、いわゆる自己拡張型ステントである 図1は、ステント1の拡張時の外観形状を示している。
ステント1を形成する波線状環状体2の数としては、図1に示すものでは、11となっている。波線状環状体2の数としては、ステントの長さによって相違するが、2〜150が好ましく、特に、5〜100が好ましい。
そして、各波線状環状体2は、ステント1の軸方向の一端側に頂点を有する複数の一端側屈曲部およびステント1の軸方向の他端側に頂点を有する複数の他端側屈曲部を有するとともに、環状に連続した無端の波線状体により構成されている。環状体2における一端側屈曲部と他端側屈曲部は、交互に形成されており、かつそれぞれの数は同じとなっている。1つの波線状環状体2における一端側屈曲部(他端側屈曲部)の数としては、図1に示すものでは、9つとなっている。一端側屈曲部(他端側屈曲部)の数としては、4〜20が好ましく、特に、6〜12が好ましい。そして、この実施例1のステントにおける波線状環状体2を形成する線状体は、常に湾曲しており、直線状部分が極めて少ないものとなっている。このため、環状体2を形成する線状体は十分な長さを有するため、拡張時における高い拡張力を発揮する。また、波線状環状体2の軸方向の長さとしては、1〜10mmが好ましく、特に、1.5〜5mmが好ましい。
【0014】
そして、この実施例のステント1では、図1、図2、図3および図4に示すように、各波線状環状体2は、他の一端側屈曲部の頂点2aより一端側に突出する突出一端側頂点2a1および他の他端側屈曲部の頂点より他端側突出する突出他端側頂点(この実施例では、始点と一致する)22を形成する大波部を有している。さらに、この実施例では、波線状環状体は、複数の大波部を備えている。このステントでは、1つの環状体が、9つの一端側屈曲部を備えており、大波部は、1つの環状体内に、3つ設けられている。そして、3つの大波部は、ステント1の中心軸に対して、ほぼ等角度となるように形成されている。
そして、ステント1の軸方向基端側に隣り合う波線状環状体2は、ステント1の軸方向一端側の波線状環状体2における他端側屈曲部の1つの頂点2bもしくはその付近に始端22を有し、他端側屈曲部の頂点2aと一端側屈曲部の頂点2b間に終端23を有する共有線状部21を有し、共有線状部21により、隣り合う波状環状体が一体化している。
【0015】
具体的には、共有線状部21は、ステント1の軸方向一端側の波線状環状体2における他端側屈曲部の1つの頂点2bを始端22とするものであり、始端22と頂点2bは同じものとなっている。また、共有線状部21は、上記の頂点2b(始端22でもある)と連続する一端側屈曲部の頂点2a間に終端23を有する。特に、この実施例では、共有線状部21は、上記の頂点2b(始端22でもある)と連続する一端側屈曲部の頂点2a間のほぼ中点付近に終端を有するものとなっている。なお、この終端23の位置としては、中点に位置することが好ましいが、上記の頂点2b(始端22でもある)と連続する一端側屈曲部の頂点2a間の全長の1/100〜49/100程度いずれかの頂点側となる位置であってもよい。なお、この場合、この終端23の位置としては、中点より、頂点2a側にずれることが好ましい。
ステント1は、上記のような構成を有するため、共有線状部21の始端部位が形成する始端分岐部と、共有線状部21の終端部位が形成する終端分岐部とを有する。具体的には、始端分岐部は、始端22を分岐点として、一端側に向かって二股に分岐する形態となっており、終端分岐部は、終端23を分岐点として、他端側に向かって二股に分岐する形態となっている。
【0016】
さらに、この実施例のステント1では、大波部における突出一端側頂点2a1と突出他端側頂点(始端22と一致)間が、他の各頂点間を接続する線状部より長い長線状部となっている。そして、この長線状部の他端側端が、上記のように共有線状部の始端となっている。そして、この実施例では、大波部の一部に、共有線状部21が形成されている。
また、この実施例のステント1では、図2に示すように、各波線状環状体2は、共有線状部21の終端23と一端側屈曲部の頂点2a間を連結する短線状部26を有している。また、上記の短線状部26を有する環状体2と共有線状部21により一体化した環状体2は、図2に示すように、共有線状部21の始端22と他端側屈曲部の頂点2b間を連結する短線状部25と、共有線状部21の終端23と他端側屈曲部の他の頂点2b間を連結する長線状部24とを有している。
よって、大波部における突出一端側頂点(終端23と一致)と突出他端側頂点(他端側に隣り合う環状体と共有線状部の始端22と一致)間が、長線状部を構成している。つまり、ステント1では、軸方向に隣り合う共有線状部21は、軸方向一端側から見て、共有線状部21の終端23と隣り合う共有線状部21の始端22とが、長線状部24により接続された形態となっている。このため、図2に示すように、このステント1では、長線状部24と共有線状部21が繰り返されることにより構成されたジグザグ形態が、ステントの一端から他端側に向かって螺旋を形成するものとなっている。
【0017】
そして、このステントでは、いわゆる接続部がなく、接続部に起因する湾曲障害および拡張力低下といったことがなく、ステント全体として、均質な拡張保持力を発揮する。
そして、この実施例のステント1では、隣り合う波線状環状体間には、複数の共有線状部21を備えている。具体的には、隣り合う波線状環状体間には、3つの共有線状部21が設けられている。そして、3つの共有線状部21は、ステント1の中心軸に対して、ほぼ等角度となるように形成されている。
そして、ステント1では、共有線状部21の始端22と他端側屈曲部の頂点2b間を連結する短線状部25は、ステント1の軸方向に連続せず、かつ複数の短線状部25が、ほぼ直線状となるように形成されている。また、このステント1では、上述した短線状部25、26を除く線状部(長線状部およびその他線状部)は、図4に示すように、中間部付近に線状体の進行方向をほぼ平行にかつ若干変更する偏曲部32を備えている。この偏曲部32を有することにより、線状部長さも長くなるととともに、拡張力も高くなる。
【0018】
さらに、このステント1では、長線状部24の長さ(すなわち、共有線状部21の終端23と共有線状部21の始端22間の長さ)と、共有線状部21と短線状部25を合わせた長さ(すなわち、共有線状部21の終端23から始端21を越えて頂点2bまでの長さ)を比較すると、長線状部24の方が若干長いものとなっている。このようにすることにより、頂点2bを隣り合う環状体の線状部33(具体的には、頂点2aと頂点2bを繋ぎ、線状共有部、分岐部のない通常の線状部)との過剰な近接を防止することができ、線状体が形成する閉鎖空間(図2に示すように、この実施例では、V字とM字を接続した閉鎖空間が形成されている)における幅のかたよりを少ないものとすることができ、高い拡張維持力を発揮する。
また、図2に示すように、波線状環状体2の一端側屈曲部の頂点2aは、隣り合う一方の波線状環状体の他端側屈曲部の頂点2b間に形成される空間に侵入しており、波線状環状体2の他端側屈曲部の頂点2bは、隣り合う他方の波線状環状体の一端側屈曲部の頂点2a間に形成される空間に侵入している。このようにすることにより、ステントを構成する線状体の長さを長くでき、かつ、線状体が形成する閉鎖空間(図2に示すように、この実施例では、V字とM字を接続した閉鎖空間が形成されている)の面積を小さいものとすることができ、高い拡張維持力を発揮する。
【0019】
さらに、この実施例のステント1では、図3に示す収縮状態では、周方向における隙間が殆どなく、各要素が並んでいる。このため、高いカバレッジを持つ。
また、図5に示すステント10のように、造影用マーカー11を設けることが好ましい。造影用マーカー11は、ステントの端部側に設けることが好ましい。特に、両端部側にそれぞれ設けることが好ましい。具体的には、図5に示すように、両端側にそれぞれ複数のマーカー11を設けることが好ましい。
この実施例のステント10では、ステントの一端部に位置する頂点部に形成された開口部27を有し、この開口部27を閉塞するようにマーカー11が固定されている。
このようなマーカーは、例えば、ステントに形成された小開口に、この小開口より若干小さい部分と大きい部分を有するX線造影用物質の円盤状部材を配置し両面より押圧して、リベット状に、かしめることにより取り付けられることが好ましい。
なお、造影用マーカーとしては、X線造影用、超音波造影用などどのようなものであってもよい。マーカーとしては、X線造影性物質、超音波造影性物質などの造影性物質により形成される。マーカーの形成材料としては、例えば、金、白金、タングステン、タンタル、イリジウム、パラジウムあるいはそれらの合金、あるいは金−パラジウム合金、白金−イリジウム、NiTiPd、NiTiAu等が好適である。
【0020】
また、ステントとしては、図6に示すようなパターンのステント20であってもよい。図6は、本発明のステントの他の実施例のパターンを説明するための説明図である。
このステント20と上述したステント1との相違は、各波線状環状体2において、いわゆる大波部が形成されておらず、各波がほぼ同じ大きさとなっている点である。また、図6の圧縮状体において、共有線状部21となっている部分の側面に空隙部が形成されている。
【0021】
また、ステントとしては、図7に示すようなパターンのステント30であってもよい。図7は、本発明のステントの他の実施例のパターンを説明するための説明図である。
このステント30と上述したステント1との相違は、1つの波線状環状体2における一端側屈曲部および他端側屈曲部の数、隣り合う環状体を一体化する共有線状部21の数のみである。このステント30では、1つの環状体2における一端側屈曲部および他端側屈曲部の数もステント1より少ない(具体的には、それぞれ8)ものとなっている。そして、1つの環状体2は、2つの大波部を有しており、2つの大波部は、ステントの中心軸に対して、向かい合う位置に設けられている。さらに、隣り合う2つの環状体2は、2つの共有線状部21により一体化されている。そして、2つの共有線状部21は、ステントの中心軸に対して、向かい合う位置に設けられている。
【0022】
また、ステントとしては、図8に示すようなパターンのステント40であってもよい。図8は、本発明のステントの他の実施例のパターンを説明するための説明図である。
このステント40と上述したステント1との相違は、1つの波線状環状体2における一端側屈曲部および他端側屈曲部の数、隣り合う環状体を一体化する共有線状部21の数のみである。このステント40では、1つの環状体2における一端側屈曲部および他端側屈曲部の数もステント1より少ない(具体的には、それぞれ8)ものとなっている。そして、1つの環状体2は、4つの大波部を有しており、4つの大波部は、ステントの中心軸に対して、ほぼ等角度となるように設けられている。さらに、隣り合う2つの環状体2は、4つの共有線状部21により一体化されている。そして、4つの共有線状部21は、ステントの中心軸に対して、ほぼ等角度となるように設けられている。
そして、上述した全ての実施例のステントは、ステントの側面全体よりステントの中心方向に負荷をかけると縮径する。
【0023】
また、ステントとしては、図9ないし11に示すような、パターンのステント50であってもよい。図9は、本発明のステントの他の実施例の正面図である。図10は、図9に示したステントの展開図である。図11は、図9に示したステントを縮径させた状態のステントの展開図である。
このステント50と上述したステント1との相違は、1つの波線状環状体2における一端側屈曲部および他端側屈曲部の数、隣り合う環状体を一体化する共有線状部21の数、共有線状部の配置形態およびその向きなどである。
このステント50では、1つの環状体2における一端側屈曲部および他端側屈曲部の数はステント1より少ない(具体的には、それぞれ8)ものとなっており、軸方向には、11の環状体が配置されたものとなっており、隣り合う2つの環状体2、2つの共有線状部21(第1パターン共有線状部)もしくは2つの共有線状部41(第2パターン共有線状部)により一体化されている。そして、2つの共有線状部21は、ステントの中心軸に対して、向かい合う位置に設けられている。同様に、2つの共有線状部41も、ステントの中心軸に対して、向かい合う位置に設けられている。
【0024】
このステント50では、第1パターン共有線状部21と第2パターン共有線状部41が、ステントの軸方向に対して交互となるように配置されており、かつ、第1パターン共有線状部21と第2パターン共有線状部41が、軸方向に連続しないように配置されている。具体的には、第2パターン共有線状部41は、第1パターン共有線状部21の配置位置に対して、ステントの外周方向にずれた位置に配置されている。
また、ステント50では、第1パターン共有線状部21と第2パターン共有線状部41は、ステントの軸方向に対して斜めに延びるととともに、両者の向きが異なるものとなっている。
具体的に説明すると、このステント50では、1つの環状体2は、2つの大波部を有しており、2つの大波部は、ステントの中心軸に対して、向かい合う位置に設けられている。さらに、隣り合う2つの環状体2は、2つの共有線状部により一体化されている。さらに、このステント50では、第1パターン共有線状部21の終端は、線状部24により、他端側屈曲部と連結する形態となっており、同様に、第2のパターン共有線状部41の終端も、線状部24により、他端側屈曲部と連結する形態となっている。つまり、上述したステント1では、長線状部24は、軸方向に隣り合う2つの共有線状部(正確には、一方の共有線状部の終端と他方の線状共有部の始端)を連結していたのに対し、ステント50では、共有線状部同士を連結する形態とはなっていない。なお、共有線状部と連結する線状部24は、上述したステント1に比べて明確な長線状部となっていない。なお、この線状部24は、他の線状部より若干長い程度である。なお、この線状部24は、長線状部であってもよい。
【0025】
また、このステント50では、第1パターン共有線状部21に対して、ステントの軸方向に隣り合う第2パターン共有線状部41は、1つの一端側屈曲部と1つの他端側屈曲部分ずれた位置に設けられている。そして、ステントの軸方向に隣り合う2つの第1パターン共有線状部21および2つの第2パターン共有線状部41は、ステント50の中心軸に対してほぼ等角度に配置された状態となっている。このため、ステントは、全体においてほぼ均一の拡張力を発現可能である。
また、このステント50では、図10に示すように、第1パターン共有線状部21は、ステントの軸方向に対して、螺旋状となるように配置されたものとなっており、同様に、第2パターン共有線状部41も、ステントの軸方向に対して、螺旋状となるように配置されたものとなっている。
また、このステント50では、図10に示すように、ステントの軸方向に配置された11の波線状環状体を備えている。そして、第1パターン共有線状部21は、ステントの軸方向に対して、螺旋状となるように配置されたものとなっており、同様に、第2パターン共有線状部41も、ステントの軸方向に対して、螺旋状となるように配置されたものとなっている。具体的には、一つおきに隣り合う波線状環状体は、2つの第1パターン共有線状部21より連結されており、それぞれの第1パターン共有線状部21は、ステントの軸方向に螺旋状となるように配置されている。このため、第1パターン共有線状部21による2つの螺旋が形成されている。そして、一つの螺旋は、5つの第1パターン共有線状部21により構成される。また、同様に、一つおきに隣り合う波線状環状体(第1パターン共有線状部21により連結されていない)は、2つの第2パターン共有線状部41により連結されており、それぞれの第2パターン共有線状部41は、ステントの軸方向に螺旋状となるように配置されている。このため、第2パターン共有線状部41による2つの螺旋が形成されている。そして、一つの螺旋は、5つの第2パターン共有線状部41により構成されている。
【0026】
また、上述したように、第1パターン共有線状部21と第2パターン共有線状部41は、ステントの軸方向に対して斜めに延びるとともに、両者の向きが異なるものとなっており、特に、両者の向きは、ステントの中心軸に対して、ほぼ対称であることが好ましい。このようにすることにより、ステントは、全体においてほぼ均一の拡張力を発現可能である。
なお、この実施例のステント50では、図10に示すように、波線状環状体2は、第1パターン共有線状部21の終端23と一端側屈曲部の頂点2a間を連結する短線状部26を有している。そして、この波線状環状体と隣り合う波線状環状体は、第1パターン共有線状部21の始端22と他端側屈曲部の頂点2b間を連結する短線状部25と、第2パターン共有線状部41の終端42と一端側屈曲部の頂点間を連結する短線状部47を有している。
そして、この実施例のステント50は、上述したステント1と構造が異なることにより、軸方向の伸び縮みに対する抵抗力を小さいものとすることができ、血管の変形に対する追従性が良好なものとなる。
【0027】
また、ステントとしては、図12ないし14に示すようなパターンのステント60であってもよい。図12は、本発明のステントの他の実施例の正面図である
。図13は、図12に示したステントの展開図である。図14は、図12に示したステントを縮径させた状態のステントの展開図である。
このステント60と上述したステント1との相違は、共有線状部の配置形態およびその向きなどである。このステント60では、共有線状部21(第1パターン共有線状部)および共有線状部41(第2パターン共有線状部)は、ステントの軸方向に対してほぼ直線上に配置されている。
このステント60では、1つの環状体2における一端側屈曲部および他端側屈曲部の数はステント1と同じ(具体的には、それぞれ9)であり、軸方向には、13の環状体が配置されたものとなっている。隣り合う2つの環状体2は、3つの共有線状部21(第1パターン共有線状部)もしくは3つの共有線状部41(第2パターン共有線状部)により一体化されている。そして、3つの共有線状部21は、ステントの中心軸に対して、ほぼ等角度に設けられている。同様に、3つの共有線状部41も、ステントの中心軸に対して、ほぼ等角度に設けられている。
【0028】
また、ステント60では、共有線状部21(第1パターン共有線状部)と共有線状部41(第2パターン共有線状部)は、ステントの軸方向に対して斜めに延びるとともに、両者の向きが異なるものとなっている。
具体的に説明すると、このステント60では、第1パターン共有線状部21の終端は、線状部24により、他端側屈曲部と連結する形態となっており、同様に、第2のパターン共有線状部41の終端も、線状部24により、他端側屈曲部と連結する形態となっている。つまり、上述したステント1では、線状部24は、軸方向に隣り合う2つの共有線状部(正確には、一方の共有線状部の終端と他方の線状共有部の始端)を連結していたのに対し、ステント60では、共有線状部同士を連結する形態とはなっていない。なお、共有線状部と連結する線状部24は、上述したステント1に比べて明確な長線状部となっていない。なお、この線状部24は、他の線状部より若干長い程度である。なお、この線状部24は、長線状部であってもよい。
【0029】
また、このステント60では、第1パターン共有線状部21に対して、ステントの軸方向に隣り合う第2パターン共有線状部41は、1つの一端側屈曲部と1つの他端側屈曲部分ずれた位置に設けられている。そして、ステントの軸方向に隣り合う2つの第1パターン共有線状部21および2つの第2パターン共有線状部41は、ステント60の中心軸に対してほぼ等角度に配置された状態となっている。このため、ステントは、全体においてほぼ均一の拡張力を発現可能である。
また、このステント60では、図13に示すように、ステントの軸方向に配置された13の波線状環状体を備えている。そして、第1パターン共有線状部21は、ステントの軸方向に対して、螺旋状となるように配置されたものとなっており、同様に、第2パターン共有線状部41も、ステントの軸方向に対して、螺旋状となるように配置されたものとなっている。具体的には、一つおきに隣り合う波線状環状体は、3つの第1パターン共有線状部21により連結されており、それぞれの第1パターン共有線状部21は、ステントの軸方向に螺旋状となるように配置されている。このため、第1パターン共有線状部21による3つの螺旋が形成されている。そして、一つの螺旋は、6つの第1パターン共有線状部21により構成される。同様に、一つおきに隣り合う波線状環状体(第1パターン共有線状部21により連結されていない)は、3つの第2パターン共有線状部41により連結されており、それぞれの第2パターン共有線状部41は、ステントの軸方向に螺旋状となるように配置されている。このため、第2パターン共有線状部41による3つの螺旋が形成されている。そして、一つの螺旋は、6つの第2パターン共有線状部21により構成されている。
【0030】
また、上述したように、第1パターン共有線状部21と第2パターン共有線状部41は、ステントの軸方向に対して斜めに延びるととともに、両者の向きが異なるものとなっており、特に、両者の向きは、ステントの中心軸に対して、ほぼ対称であることが好ましい。このようにすることにより、ステントは、全体においてほぼ均一の拡張力を発現可能である。
ステントの軸方向での並びで言うと、まず第1パターン共有線状部21が3つ円周方向に均等に存在し、次のステント軸方向では、第2パターン共有線状部41が3つ円周方向に均等に存在する。次のステント軸方向では、第2パターン共有線状部41が3つ円周方向に均等に存在する。
次のステント軸方向では、第1パターン共有線状部21が3つ円周方向に均等に存在する。繰り返すと、21、41,41,21、21、41,41・・・・・・という並び方をしているのが特徴である。
そして、この実施例のステント60は、上述したステント1と構造が異なることにより、軸方向の伸び縮みに対する抵抗力を小さいものとすることができ、血管の変形に対する追従性が良好なものとなる。
【0031】
また、ステントとしては、図15ないし17に示すようなパターンのステント70であってもよい。図15は、本発明のステントの他の実施例の正面図である
。図16は、図15に示したステントの展開図である。図17は、図15に示したステントを縮径させた状態のステントの展開図である。
このステント70と上述したステント1との相違は、共有線状部の配置形態およびその向きなどである。
このステント70では、1つの環状体2における一端側屈曲部および他端側屈曲部の数はステント1と同じ(具体的には、それぞれ9)であり、軸方向には、10の環状体が配置されたものとなっている。隣り合う2つの環状体2は、3つの共有線状部21(第1パターン共有線状部)もしくは3つの共有線状部41(第2パターン共有線状部)により一体化されている。そして、3つの共有線状部21は、ステントの中心軸に対して、ほぼ等角度に設けられている。同様に、3つの共有線状部41も、ステントの中心軸に対して、ほぼ等角度に設けられている。
【0032】
このステント70では、共有線状部21(第1パターン共有線状部)と共有線状部41(第2パターン共有線状部)が、ステントの軸方向に対して交互となるように配置されており、かつ、共有線状部21(第1パターン共有線状部)と共有線状部41(第2パターン共有線状部)が、軸方向に連続しないように配置されている。具体的には、共有線状部41(第2パターン共有線状部)は、共有線状部21(第1パターン共有線状部)の配置位置に対して、ステントの外周方向にずれた位置に配置されている。また、共有線状部21(第1パターン共有線状部)同士は、ステントの軸方向に対してほぼ直線上に配置されている。同様に、共有線状部41(第2パターン共有線状部)同士も、ステントの軸方向に対してほぼ直線上に配置されている。
【0033】
また、ステント70では、共有線状部21(第1パターン共有線状部)と共有線状部41(第2パターン共有線状部)は、ステントの軸方向に対して斜めに延びるととともに、両者の向きが異なるものとなっている。
具体的に説明すると、このステント70では、第1パターン共有線状部21の終端は、線状部24により、他端側屈曲部と連結する形態となっており、同様に、第2のパターン共有線状部41の終端も、線状部24により、他端側屈曲部と連結する形態となっている。つまり、上述したステント1では、長線状部24は、軸方向に隣り合う2つの共有線状部(正確には、一方の共有線状部の終端と他方の線状共有部の始端)を連結していたのに対し、ステント70では、共有線状部同士を連結する形態とはなっていない。なお、共有線状部と連結する線状部24は、上述したステント1に比べて明確な長線状部となっていない。なお、この線状部24は、他の線状部より若干長い程度である。なお、この線状部24は、長線状部であってもよい。
【0034】
また、このステント70では、第1パターン共有線状部21に対して、ステントの軸方向に隣り合う第2パターン共有線状部41は、1つの一端側屈曲部と1つの他端側屈曲部分ずれた位置に設けられている。そして、ステントの軸方向に隣り合う2つの第1パターン共有線状部21および2つの第2パターン共有線状部41は、ステント70の中心軸に対してほぼ等角度に配置された状態となっている。このため、ステントは、全体においてほぼ均一の拡張力を発現可能である。
また、上述したように、第1パターン共有線状部21と第2パターン共有線状部41は、ステントの軸方向に対して斜めに延びるとともに、両者の向きが異なるものとなっており、特に、両者の向きは、ステントの中心軸に対して、ほぼ対称であることが好ましい。このようにすることにより、ステントは、全体においてほぼ、均一の拡張力を発現可能である。ステントの軸方向での並びで言うと、まず、1パターン共有線状部21が3つ円周方向に均等に存在し、次のステント軸方向では、第2パターン共有線状部41が3つ円周方向に均等に存在する。次のステント軸方向では、第1パターン共有線状部21が3つ円周方向に均等に存在する。
次のステント軸方向では、第2パターン共有線状部41が3つ円周方向に均等に存在する。繰り返すと、21、41,21,41、21、41,21・・・・・・という並び方をしているのが特徴である。
【0035】
そして、この実施例のステント70は、上述したステント1と構造が異なることにより、軸方向の伸び縮みに対する抵抗力を小さいものとすることができ、血管の変形に対する追従性が良好なものとなる。
なお、この実施例のステント70では、図16に示すように、波線状環状体2は、第1パターン共有線状部21の終端23と一端側屈曲部の頂点2a間を連結する短線状部26を有している。そして、この波線状環状体と隣り合う波線状環状体は、第1パターン共有線状部21の始端22と他端側屈曲部の頂点間を連結する短線状部25と、第2パターン共有線状部41の終端42と一端側屈曲部の頂点間を連結する短線状部47を有している。
【0036】
また、ステントとしては、図18および図19に示すような、パターンのステント80であってもよい。図18は、本発明のステントの他の実施例の展開図である。図19は、図18に示したステントを縮径させた状態のステントの展開図である。
このステント80と上述したステント1との相違は、1つの波線状環状体2における一端側屈曲部および他端側屈曲部の数、隣り合う環状体を一体化する共有線状部の数、共有線状部の配置形態およびその向き、両端部に設けられたマーカー、両端部に位置する波状線体に設けられた連結部などである。
このステント80の形態は、上述したステント50と基本構成は同じである。
このステント80では、1つの環状体2における一端側屈曲部および他端側屈曲部の数はステント1より少ない(具体的には、それぞれ8)ものとなっており、軸方向には、11の環状体が配置されたものとなっており、隣り合う2つの環状体2、2つの共有線状部21(第1パターン共有線状部)もしくは2つの共有線状部41(第2パターン共有線状部)により一体化されている。そして、2つの共有線状部21は、ステントの中心軸に対して、向かい合う位置に設けられている。同様に、2つの共有線状部41も、ステントの中心軸に対して、向かい合う位置に設けられている。
【0037】
このステント80では、第1パターン共有線状部21と第2パターン共有線状部41が、ステントの軸方向に対して交互となるように配置されており、かつ、第1パターン共有線状部21と第2パターン共有線状部41が、軸方向に連続しないように配置されている。具体的には、第2パターン共有線状部41は、第1パターン共有線状部21の配置位置に対して、ステントの外周方向にずれた位置に配置されている。
また、ステント80では、第1パターン共有線状部21と第2パターン共有線状部41は、ステントの軸方向に対して斜めに延びるととともに、両者の向きが異なるものとなっている。
このステント80では、第1パターン共有線状部21に対して、ステントの軸方向に隣り合う第2パターン共有線状部41は、1つの一端側屈曲部と1つの他端側屈曲部分ずれた位置に設けられている。そして、ステントの軸方向に隣り合う2つの第1パターン共有線状部21および2つの第2パターン共有線状部41は、ステント80の中心軸に対してほぼ等角度に配置された状態となっている。このため、ステントは、全体においてほぼ均一の拡張力を発現可能である。
【0038】
また、このステント80では、図18に示すように、第1パターン共有線状部21は、ステントの軸方向に対して、螺旋状となるように配置されたものとなっており、同様に、第2パターン共有線状部41も、ステントの軸方向に対して、螺旋状となるように配置されたものとなっている。
また、このステント80では、図18に示すように、ステントの軸方向に配置された11の波線状環状体を備えている。そして、第1パターン共有線状部21は、ステントの軸方向に対して、螺旋状となるように配置されたものとなっており、同様に、第2パターン共有線状部41も、ステントの軸方向に対して、螺旋状となるように配置されたものとなっている。具体的には、一つおきに隣り合う波線状環状体は、2つの第1パターン共有線状部21より連結されており、それぞれの第1パターン共有線状部21は、ステントの軸方向に螺旋状となるように配置されている。このため、第1パターン共有線状部21による2つの螺旋が形成されている。そして、一つの螺旋は、5つの第1パターン共有線状部21により構成される。また、同様に、一つおきに隣り合う波線状環状体(第1パターン共有線状部21により連結されていない)は、2つの第2パターン共有線状部41により連結されており、それぞれの第2パターン共有線状部41は、ステントの軸方向に螺旋状となるように配置されている。このため、第2パターン共有線状部41による2つの螺旋が形成されている。そして、一つの螺旋は、5つの第2パターン共有線状部41により構成されている。
【0039】
また、上述したように、第1パターン共有線状部21と第2パターン共有線状部41は、ステントの軸方向に対して斜めに延びるとともに、両者の向きが異なるものとなっており、特に、両者の向きは、ステントの中心軸に対して、ほぼ対称であることが好ましい。このようにすることにより、ステントは、全体においてほぼ均一の拡張力を発現可能である。
なお、この実施例のステント80では、図18に示すように、波線状環状体2は、第1パターン共有線状部21の終端23と一端側屈曲部の頂点2a間を連結する短線状部26を有している。そして、この波線状環状体と隣り合う波線状環状体は、第1パターン共有線状部21の始端22と他端側屈曲部の頂点2b間を連結する短線状部25と、第2パターン共有線状部41の終端42と一端側屈曲部の頂点間を連結する短線状部47を有している。
【0040】
このステント80では、図18および図19に示すように、造影用マーカー11が設けられている。造影用マーカー11は、ステントの端部に設けることが好ましい。特に、両端部にそれぞれ設けることが好ましい。具体的には、図18および図19に示すように、両端部にそれぞれ複数のマーカー11を設けることが好ましい。この実施例のステント80では、ステントの端部に位置する頂点部に形成された開口部27を有し、この開口部27を閉塞するようにマーカー11が固定されている。造影マーカーとしては、ステント10において説明したものと同じである。
そして、開口部27の外側端は、図18および図19に示すように、ステントの端部に位置する他の頂点部の外側端と同じ位置となっている。つまり、このステント80では、マーカーが設けられる開口部27の外側端は、ステントの端部に位置する他の頂点部の外側端より突出していない。ステントの端部の位置を揃えることにより、ステントが曲がった状態でも確実に、ステントを押し出すことができる。
また、ステントは、マーカー配置部位より、ステントの中央方向に延びかつ離間する2本の脚部を有している。図19に示すように収縮状態(マウント時)において、これら2本の脚部は、離間しかつ近接する線状部とほぼ平行となっている。
具体的には、このステント80では、マーカーが配置される開口部27を有する屈曲部における開口部27より延びる2本の脚部は、開口部27のステントの内側部位でありかつ所定距離離間した2つの位置を始端として、ステントの内側方向に延びるものとなっている。開口部27より延びる2本の脚部は、離間したものとなっている。つまり、このステント80では、開口部27より延びる脚部は、図5に示したステント10のように近接していない。このように、開口部27より延びる2本の脚部を離間させることにより、マーカー形成部(開口部27)付近の形状が安定する。このため、マーカー形成部(開口部27)付近に強い力(ステント押出時)が負荷されても、ステントの変形がない。このため、ステントを確実に押し出すことができる。
【0041】
さらに、このステント80では、図18および図19に示すように、両端に位置する波線状環状体2には、この波状環状体2と隣り合う波線状環状体2とを連結する連結部81が設けられている。ステント80では、両端に位置する波線状環状体2とこれと隣り合う波線状環状体2間には、2本の連結部81が設けられている。なお、ステント80では、両端部に位置する2つの波線状環状体間にのみ連結部81が設けられている。そして、2本の連結部81は、ステントの中心軸に対して、向かい合う位置に設けられている。そして、図18および図19に示すように、ステント80の一端部(上端部)では、上述した2つの共有線状部21および上述した2本の連結部81が、ステントの中心軸に対して、ほぼ等角度となるように配置されている。同様に、ステント80の他端部(下端部)では、上述した2つの共有線状部41および上述した2本の連結部81が、ステントの中心軸に対して、ほぼ等角度となるように配置されている。
このようにステント80では、ステントの両端部に共有線状部とともに連結部を有するため、ステントの拡張後における両端部の形態安定性が良好なものとなる。なお、上述した実施例のステント80では、ステントの両端部に2つの連結部を有するが、これに限定されるものではなく、1つもしくは3つであってもよい。
そして、この実施例のステント80は、上述したステント1と構造が異なることにより、軸方向の伸び縮みに対する抵抗力を小さいものとすることができ、血管の変形に対する追従性が良好なものとなる。
【0042】
また、ステントとしては、図20および図21に示すような、パターンのステント90であってもよい。図20は、本発明のステントの他の実施例の展開図である。図21は、図20に示したステントを縮径させた状態のステントの展開図である。
このステント90と上述したステント1との相違は、1つの波線状環状体2における一端側屈曲部および他端側屈曲部の数、隣り合う環状体を一体化する共有線状部の数、共有線状部の配置形態およびその向き、両端部に設けられたマーカーなどである。
このステント90の形態は、上述したステント50と似ている。
このステント90では、1つの環状体2における一端側屈曲部および他端側屈曲部の数はステント1より少ない(具体的には、それぞれ8)ものとなっており、軸方向には、21個の環状体が配置されたものとなっている。ステント90では、隣り合う2つの環状体2、共有線状部91(第1パターン共有線状部)もしくは共有線状部92(第2パターン共有線状部)により一体化されている。そして、ステント90では、隣り合う2つの環状体2は、少なくとも2つの共有線状部により一体化されている。そして、2つの共有線状部91は、ステントの中心軸に対して、向かい合う位置に設けられている。同様に、2つの共有線状部92も、ステントの中心軸に対して、向かい合う位置に設けられている。
【0043】
なお、このステント90では、図20および図21に示すように、両端に位置する波線状環状体2と隣り合う波線状環状体2とは、4つの共有線状部により一体化されている。そして、ステント90の一端部(上端部)では、上述した4つの共有線状部91が、ステントの中心軸に対して、ほぼ等角度となるように配置されている。同様に、ステント90の他端部(下端部)では、上述した4つの共有線状部92が、ステントの中心軸に対して、ほぼ等角度となるように配置されている。
このようにステント90では、ステントの両端部にのみ、他の部分より多くの共有線状部を有するため、ステントの拡張後における両端部の形態安定性が良好なものとなる。
そして、このステント90では、第1パターン共有線状部91と第2パターン共有線状部92が、ステントの軸方向に対して交互となるように配置されており、かつ、第1パターン共有線状部91と第2パターン共有線状部92が、軸方向に連続しないように配置されている。具体的には、第2パターン共有線状部92は、第1パターン共有線状部91の配置位置に対して、ステントの外周方向にずれた位置に配置されている。
【0044】
また、ステント90では、第1パターン共有線状部91と第2パターン共有線状部92は、ステントの軸方向に対して斜めに延びるととともに、両者の向きが異なるものとなっている。
また、このステント90では、ステント90の両端部を除き、第1パターン共有線状部91に対して、ステントの軸方向に隣り合う第2パターン共有線状部92は、1つの一端側屈曲部と1つの他端側屈曲部分ずれた位置に設けられている。そして、ステントの軸方向に隣り合う2つの第1パターン共有線状部91および2つの第2パターン共有線状部92は、ステント90の中心軸に対してほぼ等角度に配置された状態となっている。このため、ステントは、全体においてほぼ均一の拡張力を発現可能である。
また、このステント90では、図20に示すように、第1パターン共有線状部91は、ステントの軸方向に対して、螺旋状となるように配置されたものとなっており、同様に、第2パターン共有線状部92も、ステントの軸方向に対して、螺旋状となるように配置されたものとなっている。
【0045】
また、このステント90では、図20に示すように、ステントの軸方向に配置された21個の波線状環状体を備えている。そして、第1パターン共有線状部91は、ステントの軸方向に対して、螺旋状となるように配置されたものとなっており、同様に、第2パターン共有線状部92も、ステントの軸方向に対して、螺旋状となるように配置されたものとなっている。具体的には、一つおきに隣り合う波線状環状体は、2つの第1パターン共有線状部91より連結されており、それぞれの第1パターン共有線状部91は、ステントの軸方向に螺旋状となるように配置されている。このため、第1パターン共有線状部91による2つの螺旋が形成されている。また、同様に、一つおきに隣り合う波線状環状体(第1パターン共有線状部91により連結されていない)は、2つの第2パターン共有線状部92により連結されており、それぞれの第2パターン共有線状部92は、ステントの軸方向に螺旋状となるように配置されている。このため、第2パターン共有線状部92による2つの螺旋が形成されている。
また、上述したように、第1パターン共有線状部91と第2パターン共有線状部92は、ステントの軸方向に対して斜めに延びるとともに、両者の向きが異なるものとなっており、特に、両者の向きは、ステントの中心軸に対して、ほぼ対称であることが好ましい。このようにすることにより、ステントは、全体においてほぼ均一の拡張力を発現可能である。
【0046】
なお、この実施例のステント90では、図20に示すように、波線状環状体2は、第1パターン共有線状部91の終端23と一端側屈曲部の頂点2a間を連結する短線状部26を有している。そして、この波線状環状体と隣り合う波線状環状体は、第1パターン共有線状部91の始端22と他端側屈曲部の頂点2b間を連結する短線状部25と、第2パターン共有線状部92の終端42と一端側屈曲部の頂点間を連結する短線状部を有している。
このステント90では、図20および図21に示すように、造影用マーカー11が設けられている。造影用マーカー11は、ステントの端部に設けることが好ましい。特に、両端部にそれぞれ設けることが好ましい。具体的には、図20および図21に示すように、両端部にそれぞれ複数のマーカー11を設けることが好ましい。この実施例のステント90では、ステントの端部に位置する頂点部に形成された開口部27を有し、この開口部27を閉塞するようにマーカー11が固定されている。造影マーカーとしては、ステント10において説明したものと同じである。
【0047】
そして、開口部27の外側端は、図20および図21に示すように、ステントの端部に位置する他の頂点部の外側端と同じ位置となっている。つまり、このステント90では、マーカーが設けられる開口部27の外側端は、ステントの端部に位置する他の頂点部の外側端より突出していない。ステントの端部の位置を揃えることにより、ステントが曲がった状態でも確実に、ステントを押し出すことができる。さらに、このステント90では、開口部27を有する屈曲部における開口部27より延びる2本の脚部は、開口部27のステントの内側部位でありかつ所定距離離間した2つの位置を始端として、ステントの内側方向に延びるものとなっている。開口部27より延びる2本の脚部は、離間したものとなっている。つまり、このステント90では、開口部27より延びる脚部は、図5に示したステント10のように近接していない。このように、開口部27より延びる2本の脚部を離間させることにより、マーカー形成部(開口部27)付近の形状が安定する。このため、マーカー形成部(開口部27)付近に強い力(ステント押出時)が負荷されても、ステントの変形がない。このため、ステントを確実に押し出すことができる。
【0048】
そして、ステントは、留置対象部位により異なるが、一般的に、拡張時(非縮径時、復元時)の外径が2.0〜30mm、好ましくは2.5〜20mm、肉厚が0.04〜1.0mm、好ましくは0.06〜0.5mmのものであり、長さは、10〜150mm、より好ましくは15〜100mmである。特に、血管内留置用ステントの場合には、外径が2.0〜14mm、好ましくは2.5〜12mm、肉厚が0.04〜0.3mm、好ましくは0.06〜0.22mmのものであり、長さは5〜100mm、より好ましくは10〜80mmである。
そして、ステントは、生体内挿入前および生体内挿入後のいずれにおいても超弾性を示す超弾性金属により略円筒形状に一体に形成されている。
【0049】
超弾性金属としては、超弾性合金が好適に使用される。ここでいう超弾性合金とは一般に形状記憶合金といわれ、少なくとも生体温度(37℃付近)で超弾性を示すものである。特に好ましくは、49〜54原子%NiのTiNi合金、38.5〜41.5重量%ZnのCu−Zn合金、1〜10重量%XのCu−Zn−X合金(X=Be,Si,Sn,Al,Ga)、36〜38原子%AlのNi−Al合金等の超弾性金属体が好適に使用される。特に好ましくは、上記のTiNi合金である。また、Ti−Ni合金の一部を0.01〜10.0%Xで置換したTi−Ni−X合金(X=Co,Fe,Mn,Cr,V,Al,Nb,W,B、Au,Pdなど)とすること、またはTi−Ni合金の一部を0.01〜30.0%原子で置換したTi−Ni−X合金(X=Cu,Pb,Zr)とすること、また、冷間加工率または/および最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。
【0050】
また、上記のTi−Ni−X合金を用いて冷間加工率および/または最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。そして、使用される超弾性合金の座屈強度(負荷時の降伏応力)は、5〜200kg/mm2(22℃)、より好ましくは、8〜150kg/mm2、復元応力(除荷時の降伏応力)は、3〜180kg/mm2(22℃)、より好ましくは、5〜130kg/mm2である。ここでいう超弾性とは、使用温度において通常の金属が塑性変形する領域まで変形(曲げ、引張り、圧縮)させても、荷重の解放後、加熱を必要とせずにほぼ元の形状に回復することを意味する。
そして、ステントは、例えば、超弾性金属パイプを用いて、ステント非構成部分を除去(例えば、切削、溶解)することに作製され、これにより、一体形成物となっている。なお、本発明のステントの形成に用いられる超弾性金属パイプは、不活性ガスまたは真空雰囲気にて溶解しTi−Ni合金などの超弾性合金のインゴットを形成し、このインゴットを機械的に研磨し、続いて、熱間プレスおよび押し出しにより、太径パイプを形成し、その後順次ダイス引き抜き工程および熱処理工程を繰り返すことにより、所定の肉厚、外径のパイプに細径化し、最終的に表面を化学的または物理的に研磨することにより製造することができる。そして、この超弾性金属パイプによるステント基材の形成は、切削加工(例えば、機械研磨、レーザー切削加工)、放電加工、化学エッチングなどにより行うことができ、さらにそれらの併用により行ってもよい。
【0051】
また、本発明のステントは、内面または外面、さらには両面に生体適合性材料を被覆してもよい。生体適合性材料としては、生体適合性を有する合成樹脂または金属が考えられる。ステントの表面を不活性な金属で被覆する方法としては、電気メッキ法を用いた金メッキ、蒸着法を用いたステンレスメッキ、スパッタ法を用いたシリコンカーバイド、ダイヤモンドライクカーボン、窒化チタンメッキ、金メッキなどが考えられる。また、合成樹脂としては、熱可塑系または熱硬化系の樹脂から選択できるが、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体など)、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリエステル、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等が使用でき、好ましくは、ポリオレフィン、ポリアミドエラストマー、ポリエステルあるいはポリウレタン、シリコーン樹脂、また、生体内分解性樹脂(例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、両者のコポリマー)である。合成樹脂被膜は、ステントを構成するフレームの湾曲の妨げにならない程度に柔軟であることが好ましい。合成樹脂被膜の肉厚は、3〜300μm、好ましくは、5〜100μmである。
【0052】
ステントの表面に合成樹脂を薄く被覆する方法としては、例えば、溶融状態または溶液状態の合成樹脂の中に、ステントを挿入して被覆する方法、モノマーを超弾性金属パイプの表面で重合させながら被覆する化学蒸着などがある。極薄な樹脂被覆が要求される場合は、希薄溶液を用いた被覆、または化学蒸着が好適である。さらに、より生体適合性材料を向上させるために、上記樹脂被膜に抗血栓性材料を被覆または固定してもよい。抗血栓性材料として、公知の各種の樹脂を単独または混合して使用することができるが、例えば、ポリヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートとスチレンの共重合体(例えば、HEMA−St−HEMAブロック共重合体)などが好適に使用できる。
【0053】
また、上述したすべての実施例におけるステントは、略管状体に形成され、生体内管腔への挿入のための直径を有し、該管状体の内部より半径方向に広がる力が付加されたときに拡張可能なステント、いわゆるバルーン拡張型ステントであってもよい。
バルーン拡張型ステントの形成材料としては、ある程度の生体適合性を有するものが好ましく、例えば、ステンレス鋼、タンタルもしくはタンタル合金、プラチナもしくはプラチナ合金、金もしくは金合金、コバルトベース合金、コバルトクロム合金、チタン合金、ニオブ合金等が考えられる。
またステント形状を作製した後に貴金属メッキ(金、プラチナ)をしてもよい。ステンレス鋼としては、最も耐腐食性のあるSUS316Lが好適である。
【0054】
さらに、ステントの最終形状を作製したのち、焼なましすることが好ましい。焼きなましを行うことにより、ステント全体の柔軟性および可塑性が向上し、屈曲した血管内での留置性が良好となる。焼きなましを行わない場合に比べて、ステントを拡張した後の拡張前形状に復元しようとする力、特に、屈曲した血管部位で拡張したときに発現する直線状に復帰しようとする力が減少し、屈曲した血管内壁に与える物理的な刺激が減少し、再狭窄の要因を減少させることができる。焼きなましは、ステント表面に酸化被膜が形成されないように、不活性ガス雰囲気下(例えば、窒素と水素の混合ガス)にて、900〜1200℃に加熱したのち、ゆっくりと冷却することにより行うことが好ましい。
また、ステントの非拡張時の直径は、0.8〜1.8mm程度が好適であり、特に、0.9〜1.6mmがより好ましい。また、ステントの非拡張時の長さは、8〜40mm程度が好適である。また、一つの波線状環状体2の長さは、8〜25mm程度が好適である。
そして、ステントの成形は、管状体(具体的には、金属パイプ)よりフレーム構造体となる部分以外を除去することにより行われる。具体的には、金属パイプを、例えば、フォトファブリケーションと呼ばれるマスキングと化学薬品を使用したエッチング方法、切削加工(例えば、機械研磨、レーザー切削加工)、放電加工などにより行うことができ、さらにそれらの併用により行ってもよい。
【0055】
また、上述したすべての実施例において、図5に示すステント10のように、造影用マーカー11を設けることが好ましい。造影用マーカー11は、ステントの端部側に設けることが好ましい。特に、両端部側にそれぞれ設けることが好ましい。具体的には、図5に示すように、両端側にそれぞれ複数のマーカー11を設けることが好ましい。マーカーについては、上述した通りである。
【実施例】
【0056】
次に、本発明のステントの具体的実施例について述べる。
(実施例1)
TiNi合金(51原子%Ni)の合金パイプを冷間加工して、外径約1.9mm、肉厚0.25mm、長さ約100mmの超弾性金属パイプを作製した。そして、金属パイプを軸がぶれないようにファスナー機構の付いた回転モーター付治具にセットし、さらにこれを数値制御可能なXテーブル上にセットした。そして、Xテーブルおよび回転モーターをパーソナルコンピュータに接続し、パーソナルコンピュータの出力が、Xテーブルの数値制御コントローラーおよび回転モーターに入力されるものとした。パーソナルコンピュータ内には図面ソフトが記憶されており、ここに図3に示すような構図のステントの展開図面を入力した。このような構成により、パーソナルコンピュータより出力される図面データに基づいて、Xテーブルおよび回転モーターが駆動する。
このようにして金属パイプにレーザーを照射することにより、図3のような展開図を有する形状のステント基材を作製した。
上記金属パイプのレーザー加工条件としては、平均出力5.5W、駆動スピード180mm/分にて行った。そして、上記のステント基材に内面研削加工を行った。
【0057】
次に、ステント基材内腔に、ステント基材内腔よりやや太い直径の芯金を挿入することによりステント基材を拡径し、芯金を挿入したままステント基材を熱処理して拡径した形状を記憶させた。この拡径熱処理工程により、ステント基材は元の直径よりやや太い(元の直径+1mm前後)形状に成形される。なお、芯金の材質は例えばステンレス等の金属が適当であり、熱処理温度は450℃〜550℃、時間は2分〜30分程度が好適である。続いて、さらにやや太い(拡径後の直径+2mm前後)芯金をステント基材内腔に挿入して拡径し、熱処理を施す。このようにして、ステント基材が目的とする外径に達するまで拡径熱処理を繰り返すことにより、図1に示すようなステント基材を作製する。なお、一つの熱処理工程を経る毎に、必要に応じて化学研磨工程を施しても良い。
目的とする形状に成形したステント基材は、このあと適宜、ブラスト処理、化学研磨工程と電解研磨工程を経て、表面を平滑にし、かつ金属光沢を付与する工程を施した。
このようにして作製したステントは、外径約8mm、全長約45mm、肉厚約0.2mm、各環状体における線状部の幅約0.11mm、環状体の軸方向の長さ約3mm、共有線状部の長さ約1.6mm、長線状部の長さ約3.4mmであった。
このステントは、十分な拡張力を有するとともに、接続部に歪みの集中が生じにくいものであった。
【0058】
(実施例2)
TiNi合金(51原子%Ni)の合金パイプを冷間加工して、外径約1.9mm、肉厚0.25mm、長さ約100mmの超弾性金属パイプを作製した。そして、金属パイプを軸がぶれないようにファスナー機構の付いた回転モーター付治具にセットし、さらにこれを数値制御可能なXテーブル上にセットした。そして、Xテーブルおよび回転モーターをパーソナルコンピュータに接続し、パーソナルコンピュータの出力が、Xテーブルの数値制御コントローラーおよび回転モーターに入力されるものとした。パーソナルコンピュータ内には図面ソフトが記憶されており、ここに図11に示すような構図のステントの展開図面を入力した。このような構成により、パーソナルコンピュータより出力される図面データに基づいて、Xテーブルおよび回転モーターが駆動する。
このようにして金属パイプにレーザーを照射することにより、図11のような展開図を有する形状のステント基材を作製した。
上記金属パイプのレーザー加工条件としては、平均出力5.5W、駆動スピード180mm/分にて行った。そして、上記のステント基材に内面研削加工を行った。
【0059】
次に、ステント基材内腔に、ステント基材内腔よりやや太い直径の芯金を挿入することによりステント基材を拡径し、芯金を挿入したままステント基材を熱処理して拡径した形状を記憶させた。この拡径熱処理工程により、ステント基材は元の直径よりやや太い(元の直径+1mm前後)形状に成形される。なお、芯金の材質は例えばステンレス等の金属が適当であり、熱処理温度は450℃〜550℃、時間は2分〜30分程度が好適である。続いて、さらにやや太い(拡径後の直径+2mm前後)芯金をステント基材内腔に挿入して拡径し、熱処理を施す。このようにして、ステント基材が目的とする外径に達するまで拡径熱処理を繰り返すことにより、図9に示すようなステント基材を作製する。なお、一つの熱処理工程を経る毎に、必要に応じて化学研磨工程を施しても良い。
目的とする形状に成形したステント基材は、このあと適宜、ブラスト処理、化学研磨工程と電解研磨工程を経て、表面を平滑にし、かつ金属光沢を付与する工程を施した。
このようにして作製したステントは、外径約8mm、全長約45mm、肉厚約0.2mm、各環状体における線状部の幅約0.11mm、環状体の軸方向の長さ約3mm、共有線状部の長さ約1.6mmであった。
このステントは、十分な拡張力を有するとともに、接続部に歪みの集中が生じにくいものであった。
【0060】
(実施例3)
TiNi合金(51原子%Ni)の合金パイプを冷間加工して、外径約1.9mm、肉厚0.25mm、長さ約100mmの超弾性金属パイプを作製した。そして、金属パイプを軸がぶれないようにファスナー機構の付いた回転モーター付治具にセットし、さらにこれを数値制御可能なXテーブル上にセットした。そして、Xテーブルおよび回転モーターをパーソナルコンピュータに接続し、パーソナルコンピュータの出力が、Xテーブルの数値制御コントローラーおよび回転モーターに入力されるものとした。パーソナルコンピュータ内には図面ソフトが記憶されており、ここに図14に示すような構図のステントの展開図面を入力した。このような構成により、パーソナルコンピュータより出力される図面データに基づいて、Xテーブルおよび回転モーターが駆動する。
このようにして金属パイプにレーザーを照射することにより、図14のような展開図を有する形状のステント基材を作製した。
上記金属パイプのレーザー加工条件としては、平均出力5.5W、駆動スピード180mm/分にて行った。そして、上記のステント基材に内面研削加工を行った。
【0061】
次に、ステント基材内腔に、ステント基材内腔よりやや太い直径の芯金を挿入することによりステント基材を拡径し、芯金を挿入したままステント基材を熱処理して拡径した形状を記憶させた。この拡径熱処理工程により、ステント基材は元の直径よりやや太い(元の直径+1mm前後)形状に成形される。なお、芯金の材質は例えばステンレス等の金属が適当であり、熱処理温度は450℃〜550℃、時間は2分〜30分程度が好適である。続いて、さらにやや太い(拡径後の直径+2mm前後)芯金をステント基材内腔に挿入して拡径し、熱処理を施す。このようにして、ステント基材が目的とする外径に達するまで拡径熱処理を繰り返すことにより、図12に示すようなステント基材を作製する。なお、一つの熱処理工程を経る毎に、必要に応じて化学研磨工程を施しても良い。
目的とする形状に成形したステント基材は、このあと適宜、ブラスト処理、化学研磨工程と電解研磨工程を経て、表面を平滑にし、かつ金属光沢を付与する工程を施した。
このようにして作製したステントは、外径約8mm、全長約45mm、肉厚約0.2mm、各環状体における線状部の幅約0.11mm、環状体の軸方向の長さ約3mm、共有線状部の長さ約1.6mmであった。
このステントは、十分な拡張力を有するとともに、接続部に歪みの集中が生じにくいものであった。
【0062】
(実施例4)
TiNi合金(51原子%Ni)の合金パイプを冷間加工して、外径約1.9mm、肉厚0.25mm、長さ約100mmの超弾性金属パイプを作製した。そして、金属パイプを軸がぶれないようにファスナー機構の付いた回転モーター付治具にセットし、さらにこれを数値制御可能なXテーブル上にセットした。そして、Xテーブルおよび回転モーターをパーソナルコンピュータに接続し、パーソナルコンピュータの出力が、Xテーブルの数値制御コントローラーおよび回転モーターに入力されるものとした。パーソナルコンピュータ内には図面ソフトが記憶されており、ここに図17に示すような構図のステントの展開図面を入力した。このような構成により、パーソナルコンピュータより出力される図面データに基づいて、Xテーブルおよび回転モーターが駆動する。
このようにして金属パイプにレーザーを照射することにより、図17のような展開図を有する形状のステント基材を作製した。
上記金属パイプのレーザー加工条件としては、平均出力5.5W、駆動スピード180mm/分にて行った。そして、上記のステント基材に内面研削加工を行った。
【0063】
次に、ステント基材内腔に、ステント基材内腔よりやや太い直径の芯金を挿入することによりステント基材を拡径し、芯金を挿入したままステント基材を熱処理して拡径した形状を記憶させた。この拡径熱処理工程により、ステント基材は元の直径よりやや太い(元の直径+1mm前後)形状に成形される。なお、芯金の材質は例えばステンレス等の金属が適当であり、熱処理温度は450℃〜550℃、時間は2分〜30分程度が好適である。続いて、さらにやや太い(拡径後の直径+2mm前後)芯金をステント基材内腔に挿入して拡径し、熱処理を施す。このようにして、ステント基材が目的とする外径に達するまで拡径熱処理を繰り返すことにより、図15に示すようなステント基材を作製する。なお、一つの熱処理工程を経る毎に、必要に応じて化学研磨工程を施しても良い。
目的とする形状に成形したステント基材は、このあと適宜、ブラスト処理、化学研磨工程と電解研磨工程を経て、表面を平滑にし、かつ金属光沢を付与する工程を施した。
このようにして作製したステントは、外径約8mm、全長約45mm、肉厚約0.2mm、各環状体における線状部の幅約0.11mm、環状体の軸方向の長さ約3mm、共有線状部の長さ約1.6mmであった。
このステントは、十分な拡張力を有するとともに、接続部に歪みの集中が生じにくいものであった。
【0064】
(実験)
ステントは、体内管腔の様々な部位に植え込まれるが、その場所によって求められる機能が異なる場合がある。例えば頚動脈や腎動脈等の場合は、ステントの軸方向の伸びや圧縮に対しては比較的抵抗力があって強い方が良い。その理由は、これらの血管は生体の動きによって伸び縮みが少なく、ステントも伸び縮みの少ない、且つしっかり血管をホールドするタイプが良い。
一方、浅大腿動脈や膝禍動脈は、生体の動きによって、血管が大きく伸び縮みし、且つ多くの場合病変が長いため長いステントを植え込む必要がある。求められるステントの機能としては、ステントの軸方向の伸び縮みに対しては比較的抵抗力がなく、軸方向に柔軟な方が良い。そこで、鋭意研究した結果、ほぼ同じステント構造であっても、軸方向の伸び縮みに対する抵抗性(柔軟性)の異なるステントを開発した。
実施例1のステント、実施例2のステント、実施例3のステント、実施例4のステントについて、軸方向の伸び縮みに対する抵抗力を測定した。具体的には、外径8mm、長さ45の各ステントの両端部7.5mmを把持し、残りの30mmの20%、即ち6mm縮めた時の抵抗力を測定した。その結果は、表1に示す通りであった。
【0065】
(表1)
┌──────┬─────┬─────┬─────┬─────┐
│ ステント │実施例1 │実施例2 │実施例3 │実施例4 │
├──────┼─────┼─────┼─────┼─────┤
│ 抵抗力 │ 43.5gf │ 11.5gf │ 18.3gf │ 17.2gf │
└──────┴─────┴─────┴─────┴─────┘
【0066】
この結果から、実施例1に示すステントは、軸方向の伸び縮みに対する抵抗力は比較的強く、しっかり血管をホールドできることから、頚動脈、腎動脈などへの埋込用に適していることがわかった。なお、抵抗力が比較的強い理由は、長線状部24が2回の屈曲即ち始点22と終点23を結ぶ線状体を介してらせん状に連続しているためと思われる。
また、実施例2ないし4の3種類のステントの軸方向の伸び縮みに対する抵抗力は、実施例1のステントの半分以下であった。従って、これらのステントは、伸び縮みの激しい浅大腿動脈や、膝禍動脈等の下肢動脈への埋込に適していることがわかった。これらのステントの軸方向の伸び縮みに対する抵抗力が比較的弱い理由は、実施例1のステントのような明確な長線状部がなく、また、共有線状部が連続していないからである。特に、実施例2のステントは、共有線状部が2個ずつしかなく、且つそれらが180度離れているため、最も低い抵抗力を示した。
【符号の説明】
【0067】
1 ステント
2 環状体
21 共有線状部
24 長線状部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に複数の波線状環状体を備えるステントであって、前記波線状環状体は、前記ステントの軸方向の一端側に頂点を有する複数の一端側屈曲部および前記ステントの軸方向の他端側に頂点を有する複数の他端側屈曲部を有し、かつ、ステントの軸方向基端側に隣り合う波線状環状体は、前記ステントの軸方向一端側の波線状環状体における前記他端側屈曲部の1つの頂点もしくはその付近に始端を有し、該他端側屈曲部の前記頂点と前記一端側屈曲部の頂点間に終端を有する共有線状部を有し、該共有線状部により、隣り合う波状環状体が一体化していることを特徴とする生体内留置用ステント。
【請求項2】
前記ステントは、前記共有線状部の前記始端部位が形成する始端分岐部と、前記共有線状部の前記終端部位が形成する終端分岐部とを有するものである請求項1に記載の生体内留置用ステント。
【請求項3】
前記波線状環状体は、前記共有線状部の始端と他端側屈曲部の頂点間を連結する短線状部を有している請求項1または2に記載の生体内留置用ステント。
【請求項4】
前記波線状環状体は、前記共有線状部の終端と一端側屈曲部の頂点間を連結する短線状部を有している請求項1ないし3のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項5】
前記波線状環状体は、他の一端側屈曲部の頂点より一端側に突出する突出一端側頂点および他の他端側屈曲部の頂点より他端側に突出する突出他端側頂点を形成する大波部を有している請求項1ないし4のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項6】
前記大波部における前記突出一端側頂点と前記突出他端側頂点間が、前記長線状部を構成している請求項5に記載の生体内留置用ステント。
【請求項7】
前記波線状環状体は、前記共有線状部の終端と他端側屈曲部の頂点間を連結する長線状部を有している請求項1ないし6のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項8】
前記隣り合う波線状環状体間には、複数の共有線状部を備えている請求項1ないし7のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項9】
前記隣り合う波線状環状体間には、複数の共有線状部を備えており、該複数の共有線状部は、前記ステントの中心軸に対して、向かい合うようにもしくはほぼ等角度となるように形成されている請求項1ないし7のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項10】
前記波線状環状体は、複数の大波部を備えている請求項1ないし9のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項11】
前記波線状環状体は、複数の大波部を備えており、該複数の大波部は、前記ステントの中心軸に対して、向かい合うようにもしくはほぼ等角度となるように形成されている請求項1ないし9のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項12】
前記共有線状部の始端と他端側屈曲部の頂点間を連結する短線状部は、前記ステントの軸方向に連続せず、かつ複数の該短線状部は、ほぼ直線状となるように形成されている請求項1ないし11のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項13】
前記波線状環状体の前記一端側屈曲部の頂点は、隣り合う一方の波線状環状体の他端側屈曲部間に形成される空間に侵入し、前記波線状環状体の他端側屈曲部の頂点は、隣り合う他方の波線状環状体の一端側屈曲部間に形成される空間に侵入している請求項1ないし12のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項14】
前記ステントは、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には縮径され、生体内留置時には縮径前の形状に復元可能な自己拡張型である請求項1ないし13のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項15】
前記ステントは、略管状体に形成され、生体内管腔への挿入のための直径を有し、該管状体の内部より半径方向に広がる力が付加されたときに拡張可能なステントである請求項1ないし13のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項16】
前記ステントは、前記ステントの中心軸に対して所定角度斜めに延びる第1パターン共有線状部と、前記ステントの中心軸に対して所定角度斜めにかつ前記第1パターン共有線状部と異なる方向に延びる第2パターン共有線状部を備えている請求項1ないし15のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項17】
前記第1パターン共有線状部と前記第2パターン共有線状部は、前記ステントの軸方向に対して交互となるように配置されている請求項16に記載の生体内留置用ステント。
【請求項18】
前記第2パターン共有線状部は、前記第1パターン共有線状部の配置位置に対して、ステントの外周方向にずれた位置に配置されている請求項16または17に記載の生体内留置用ステント。
【請求項19】
前記ステントは、両端に位置する波線状環状体と隣り合う波線状環状体とを接続する連結部を備えている請求項1ないし18のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項20】
前記ステントは、両端に位置する波線状環状体と隣り合う波線状環状体間には、他の部分の波線状環状体間より多い前記共有線状部が設けられている請求項1ないし18のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項21】
前記ステントは、該ステントの端部に設けられた造影性マーカーを備え、該造影性マーカー配置部位の端部は、前記ステントの端部より突出していない請求項1ないし20のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項22】
前記ステントは、該ステントの端部に設けられた造影性マーカーを備え、さらに、前記マーカー配置部位より、前記ステントの中央方向に延びかつ離間する2本の脚部を有しており、収縮状態において、該2本の脚部は、離間しかつ近接する線状部とほぼ平行となっている請求項1ないし20のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項1】
軸方向に複数の波線状環状体を備えるステントであって、前記波線状環状体は、前記ステントの軸方向の一端側に頂点を有する複数の一端側屈曲部および前記ステントの軸方向の他端側に頂点を有する複数の他端側屈曲部を有し、かつ、ステントの軸方向基端側に隣り合う波線状環状体は、前記ステントの軸方向一端側の波線状環状体における前記他端側屈曲部の1つの頂点もしくはその付近に始端を有し、該他端側屈曲部の前記頂点と前記一端側屈曲部の頂点間に終端を有する共有線状部を有し、該共有線状部により、隣り合う波状環状体が一体化していることを特徴とする生体内留置用ステント。
【請求項2】
前記ステントは、前記共有線状部の前記始端部位が形成する始端分岐部と、前記共有線状部の前記終端部位が形成する終端分岐部とを有するものである請求項1に記載の生体内留置用ステント。
【請求項3】
前記波線状環状体は、前記共有線状部の始端と他端側屈曲部の頂点間を連結する短線状部を有している請求項1または2に記載の生体内留置用ステント。
【請求項4】
前記波線状環状体は、前記共有線状部の終端と一端側屈曲部の頂点間を連結する短線状部を有している請求項1ないし3のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項5】
前記波線状環状体は、他の一端側屈曲部の頂点より一端側に突出する突出一端側頂点および他の他端側屈曲部の頂点より他端側に突出する突出他端側頂点を形成する大波部を有している請求項1ないし4のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項6】
前記大波部における前記突出一端側頂点と前記突出他端側頂点間が、前記長線状部を構成している請求項5に記載の生体内留置用ステント。
【請求項7】
前記波線状環状体は、前記共有線状部の終端と他端側屈曲部の頂点間を連結する長線状部を有している請求項1ないし6のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項8】
前記隣り合う波線状環状体間には、複数の共有線状部を備えている請求項1ないし7のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項9】
前記隣り合う波線状環状体間には、複数の共有線状部を備えており、該複数の共有線状部は、前記ステントの中心軸に対して、向かい合うようにもしくはほぼ等角度となるように形成されている請求項1ないし7のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項10】
前記波線状環状体は、複数の大波部を備えている請求項1ないし9のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項11】
前記波線状環状体は、複数の大波部を備えており、該複数の大波部は、前記ステントの中心軸に対して、向かい合うようにもしくはほぼ等角度となるように形成されている請求項1ないし9のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項12】
前記共有線状部の始端と他端側屈曲部の頂点間を連結する短線状部は、前記ステントの軸方向に連続せず、かつ複数の該短線状部は、ほぼ直線状となるように形成されている請求項1ないし11のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項13】
前記波線状環状体の前記一端側屈曲部の頂点は、隣り合う一方の波線状環状体の他端側屈曲部間に形成される空間に侵入し、前記波線状環状体の他端側屈曲部の頂点は、隣り合う他方の波線状環状体の一端側屈曲部間に形成される空間に侵入している請求項1ないし12のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項14】
前記ステントは、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には縮径され、生体内留置時には縮径前の形状に復元可能な自己拡張型である請求項1ないし13のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項15】
前記ステントは、略管状体に形成され、生体内管腔への挿入のための直径を有し、該管状体の内部より半径方向に広がる力が付加されたときに拡張可能なステントである請求項1ないし13のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項16】
前記ステントは、前記ステントの中心軸に対して所定角度斜めに延びる第1パターン共有線状部と、前記ステントの中心軸に対して所定角度斜めにかつ前記第1パターン共有線状部と異なる方向に延びる第2パターン共有線状部を備えている請求項1ないし15のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項17】
前記第1パターン共有線状部と前記第2パターン共有線状部は、前記ステントの軸方向に対して交互となるように配置されている請求項16に記載の生体内留置用ステント。
【請求項18】
前記第2パターン共有線状部は、前記第1パターン共有線状部の配置位置に対して、ステントの外周方向にずれた位置に配置されている請求項16または17に記載の生体内留置用ステント。
【請求項19】
前記ステントは、両端に位置する波線状環状体と隣り合う波線状環状体とを接続する連結部を備えている請求項1ないし18のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項20】
前記ステントは、両端に位置する波線状環状体と隣り合う波線状環状体間には、他の部分の波線状環状体間より多い前記共有線状部が設けられている請求項1ないし18のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項21】
前記ステントは、該ステントの端部に設けられた造影性マーカーを備え、該造影性マーカー配置部位の端部は、前記ステントの端部より突出していない請求項1ないし20のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項22】
前記ステントは、該ステントの端部に設けられた造影性マーカーを備え、さらに、前記マーカー配置部位より、前記ステントの中央方向に延びかつ離間する2本の脚部を有しており、収縮状態において、該2本の脚部は、離間しかつ近接する線状部とほぼ平行となっている請求項1ないし20のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2011−200705(P2011−200705A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152670(P2011−152670)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【分割の表示】特願2006−89529(P2006−89529)の分割
【原出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【分割の表示】特願2006−89529(P2006−89529)の分割
【原出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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