説明

生体分子の検出方法

【課題】表面プラズモン共鳴励起蛍光を利用した、高感度かつ定量精度の高い生体分子の検出方法を提供する。
【解決手段】表面プラズモン共鳴励起蛍光を用いた生体分子の検出方法であって、色素分子含有シリカ粒子の表面プラズモン共鳴励起蛍光を検出することを特徴とする生体分子の検出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面プラズモン共鳴励起蛍光を用いた、高感度かつ定量精度の高い生体分子の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体分子の相互作用を調べる方法、またそれによって特定の生体分子を検出する方法として、表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance、以下「SPR」とも記す。)を使用した分光分析法が知られている。例えば、特許文献1には、表面プラズモン共鳴測定及び蛍光測定によって得られた信号を個別に分析することによって、被検体の固相への結合を判定する装置及びその方法が開示されている。
【0003】
また、下記特許文献2、3、及び5には、表面プラズモン共鳴を用いた2次元イメージング装置が開示され、特許文献4には、表面プラズモン共鳴測定、及び発生した蛍光が生じる第2のプラズモン共鳴を用いた表面プラズモン蛍光顕微鏡が開示され、特許文献6にはプラズモン共鳴蛍光を用いた生体分子相互作用検出装置及び検出方法が開示されている。
【0004】
これら表面プラズモン共鳴励起蛍光法では、金属基板上に担体や生体分子捕捉物質等を介して固定された蛍光物質に対し、表面プラズモン共鳴によって生じた増強励起光が照射され、発する蛍光を検出する。この方法は伝播励起光を用いた一般的な蛍光分析法に比べ、局所的に強い励起エネルギーを与えることができる優れた方法であるが、それがゆえに得られる蛍光量のばらつきが大きくなり、定量精度が低下するという問題を孕んでいた。
【0005】
また強いエネルギーを与えることによる色素の褪色が、感度および定量精度の低下を引き起こすという問題があり、これについても改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−307141号公報
【特許文献2】特開2001−255267号公報
【特許文献3】特開2002−116149号公報
【特許文献4】特開2004−156911号公報
【特許文献5】特開2004−271337号公報
【特許文献6】特開2006−208069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、表面プラズモン共鳴励起蛍光を利用した、高感度かつ定量精度の高い生体分子の検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る上記課題は、以下の手段によって解決される。
【0009】
1.表面プラズモン共鳴励起蛍光を用いた生体分子の検出方法であって、色素分子含有シリカ粒子の表面プラズモン共鳴励起蛍光を検出することを特徴とする生体分子の検出方法。
【0010】
2.前記色素分子含有シリカ粒子の表面に、生体分子捕捉物質が結合していることを特徴とする前記1に記載の生体分子の検出方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の上記手段により、表面プラズモン共鳴励起蛍光を利用した、高感度かつ定量精度の高い生体分子の検出方法生体分子の検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の生体分子検出方法に用いる装置の概略構成を示すブロック図
【図2】本実施の生体分子検出方法に用いる装置で使用される検出部の構成の一例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の生体分子の検出方法は、表面プラズモン共鳴励起蛍光を用いた生体分子の検出方法であって、色素分子含有シリカ粒子の表面プラズモン共鳴励起蛍光を検出することを特徴とする。この特徴は、請求項1及び2に共通する技術的特徴である。
【0014】
本発明の実施態様としては、前記色素分子含有シリカ粒子の表面に、生体分子捕捉物質が結合している態様であることが好ましい。
【0015】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための最良の形態・態様について詳細な説明をする。
【0016】
〔生体分子の検出方法〕
本発明の生体分子の検出方法を詳細に説明する。
【0017】
本発明では、表面プラズモン共鳴励起蛍光法(Surface Plasmon Fluorescence Spectroscopy、以下「SPFS」とも記す。)を利用して生体分子(以下「被検体」とも記す。)の検出を行うことを特徴とする。
【0018】
表面プラズモン共鳴励起蛍光法の一般的なプロトコルを以下に示す。この方法は、プリズム(A)と、プリズム表面の金属薄膜及び被検体検出層を有する被検体検出手段(B)と、レーザー発生手段(C)と、第1及び第2光検出手段(D、E)とを備えた装置を用い、レーザー発生手段(C)から薄膜に入射されたレーザー光の反射強度を第1光検出手段(D)で検出し、レーザー発生手段(C)から薄膜に入射されたレーザー光によって薄膜裏面に生じるプラズモン光によって励起された蛍光分子が出力する蛍光を、第2光検出手段(E)で検出する、という手順で行われる。
【0019】
次にプラズモン光の特性について以下に説明する。
【0020】
プラズモン光は、レーザー光が金属薄膜に対し全反射条件で照射されたときに、第1光検出手段(D)によって検出される反射光の強度が減衰する入射角領域で薄膜裏面に発生し、その強度はレーザー光の入射角度に依存して変動する。反射光強度の減衰が最大となるときのレーザー光入射角度を第1の入射角度とすると、その近傍でプラズモン光の強度が最大となるが、厳密にはプラズモン光の強度が最大となるときのレーザー光の入射角度(第2の入射角度)は、第1の入射角度よりわずかに低角度となる。この理論値の算出にあたっては、文献:T.Liebermann,W.Knoll,Surface−plasmon field−enhanced fluorescence spectroscopy,Colloids and Surfaces A:Physicochemical and Engineering Aspects 171(2000)115−130やその引用文献等を参考にして算出することができる。
【0021】
また、プラズモン光は近接場光であり、その電場強度は金属薄膜からの距離が離れるほど減衰するという特性を有している。プラズモン光によって蛍光分子を励起するときは、この近接場光が届く範囲に蛍光分子が存在する必要がある。それに加え、蛍光分子が金属薄膜のごく近傍に位置する場合、金属薄膜へと励起エネルギーの遷移が起きてしまう。
【0022】
従って、プラズモン光によって蛍光分子を効率的に励起するためには、蛍光分子の金属基板からの距離を制御する必要があることが分かる。
【0023】
〔色素分子含有シリカ粒子を結合した生体分子捕捉物質〕
表面プラズモン共鳴励起蛍光法によって生体分子(被検体とも表現する)を検出するためには、一般に生体分子を特異的に認識して吸着する物質(F)(「生体分子捕捉物質」あるいは「被検体捕捉物質」ともいう。例えば抗原に対する抗体等が挙げられる。)を利用する。生体分子捕捉物質(F)に蛍光色素分子を結合することで、蛍光を測定することによって被検体の検出が可能となる。本発明では、蛍光色素分子がシリカ粒子中に含有されてなる色素分子含有シリカ粒子(G)を生体分子捕捉物質(F)に結合して用いることが好ましい。
【0024】
生体分子としては、例えばDNA、RNA、タンパク質、糖鎖あるいはこれらの分解物等が挙げられる。「生体分子捕捉物質」とは、これらを特異的に認識し捕捉することのできる相補的なDNAやRNA、抗体、レクチン、あるいはインプリントポリマー等が挙げられる。
【0025】
生体分子を捕捉する方法としては、従来公知のアッセイに従えばよく、文献:バイオ検査薬の開発(株式会社シーエムシー出版)、バイオ診断薬の開発・評価と企業(株式会社シーエムシー出版)やその引用文献、イムノアッセイ講義(WEB情報、http://www.shibayagi.co.jp/IA−LECTURE/Contents.htm)等が参考になる。本発明においては、イムノアッセイが好ましい。
【0026】
例えば、検出層に用いるセンサー基板として金基板を選び、サンドイッチイムノアッセイを行う場合には、金基板にカルボキシル基やアミノ基等の反応性基(または反応性基に変換可能な官能基)を有するアルカンチオールを作用させてSAM膜(Self−Assembled Monolayer:「自己組織化単分子膜」ともいう。)を形成し、これに適宜ポリマー等を介し、一次抗体を作用させ固定化する。また、一次抗体に対する反応性基(または反応性基に変換可能な官能基)を備えたポリマーを直接金基板上に固定化し、その上に一次抗体を固定化してもよい。各種反応性基を利用して抗体やポリマーを結合させる際には、スクシンイミジル化を経たアミド化縮合反応や、マレイミド化を経た付加反応等が一般的である。このようにして構成した検出層に抗原を含む溶液を流すことで、固定化した一次抗体によって抗原を捕捉することが可能である。これに対し、さらに標識した二次抗体を含む溶液を作用させることで捕捉された抗原を標識することができる。なお予め抗原と二次抗体とを反応させておいてから一次抗体を作用させてもよい。
【0027】
[色素分子含有シリカ粒子]
色素分子含有シリカ粒子としては、従来公知の方法で作られる色素分子含有シリカ粒子でよい。公知の該粒子の製法としては、例えばA.Imhof,et al.,“Spectroscopy of Fluorescein(FITC) Dyed Colloidal Silica Spheres”,J.Phys.Chem.B 1999,103,1408−1415にあるように、予め3−(アミノプロピル)トリエトキシシラン〔APS:3−(aminopropyl)triethoxysilane〕に直接Alexa Fluor 647イソチオシアネート〔FITC:fluorescein isothiocyanate〕を結合させたAPS−FITC〔N−1−(3−triethoxysilylpropyl)−N′−fluoresceyl thiourea〕を、アンモニアを含むエタノール水溶液中でN−tris(hydroxylmethyl)methyl−2−aminoethane sulfonic acid(TES)と反応させる方法などである。
【0028】
本発明として好ましいのは、下式で示される色素分子含有アルコキシ珪素化合物を用いて調製される色素分子含有シリカ粒子である。
【0029】
R−CO−NH−(CH−Si−(CO)
(式中、R−CO−は、色素分子(R−COOH)からOH基が脱離した基を示す。)
ここで、色素分子(R−COOH)としては、例えば、5−カルボキシ−Alexa Fluor 647、6−カルボキシ−Alexa Fluor 647、5,6−ジカルボキシ−Alexa Fluor 647、6−カルボキシ−2′,4,4′,5′,7,7′−ヘキサクロロAlexa Fluor 647、6−カルボキシ−2′,4,7,7′−テトラクロロAlexa Fluor 647、6−カルボキシ−4′,5′−ジクロロ−2′,7′−ジメトキシAlexa Fluor 647、ナフトAlexa Fluor 647等のAlexa Fluor 647系色素分子;5−カルボキシ−ローダミン、6−カルボキシ−ローダミン、5,6−ジカルボキシ−ローダミン、Rhodamine 6G、Rhodamine 6Gカルボン酸、Rhodamine Green dye(カルボン酸型)、Rhodamine Red dye(カルボン酸型)、Tetramethyl−rhodamine、Tetramethyl−rhodamineカルボン酸、X−rhodamine、X−rhodamineカルボン酸等のローダミン系色素分子;ビオチン等の色素;Alexa Fluor 350、Alexa Fluor 405、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 500、Alexa Fluor 514、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 555、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 610、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 635、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680、Alexa Fluor 700、Alexa Fluor 750、Alexa Fluor 350 カルボン酸、Alexa Fluor 405 カルボン酸、Alexa Fluor 430 カルボン酸、Alexa Fluor 488 カルボン酸、Alexa Fluor 500カルボン酸、Alexa Fluor 514カルボン酸、Alexa Fluor 532 カルボン酸、Alexa Fluor 546カルボン酸、Alexa Fluor 555カルボン酸、Alexa Fluor 568 カルボン酸、Alexa Fluor 594 カルボン酸、Alexa Fluor 610 カルボン酸、Alexa Fluor 633カルボン酸、Alexa Fluor 635カルボン酸、3Alexa Fluor 647カルボン酸、Alexa Fluor 660カルボン酸、Alexa Fluor 680 カルボン酸、Alexa Fluor 700 カルボン酸、Alexa Fluor 750 カルボン酸等のAlexa Fluor系色素分子;AMCA、AMCAカルボン酸等のAMCA系色素分子;Bimane、Bimaneカルボン酸等のBimane系色素分子;BODIPY 493/503、BODIPY FL、BODIPY R6G、BODIPY 530/550、BODIPY TMR、BODIPY 558/568、BODIPY 564/570、BODIPY 576/589、BODIPY 581/591、BODIPY TR、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665、BODIPY 493/503カルボン酸、BODIPY FLカルボン酸、BODIPY R6Gカルボン酸、BODIPY 530/550カルボン酸、BODIPY TMRカルボン酸、BODIPY 558/568カルボン酸、BODIPY 564/570カルボン酸、BODIPY 576/589カルボン酸、BODIPY 581/591カルボン酸、BODIPY TRカルボン酸、BODIPY 630/650カルボン酸、BODIPY 650/665カルボン酸等のBODIPY系色素分子;Cascade Blue dye (カルボン酸型)、Cascade Yellow dye(カルボン酸型)等のCascade系色素分子;Dansyl、Dansylカルボン酸、Dansyl dye (カルボン酸型)等のDansyl系色素分子;Hydroxycoumarin、Hydroxycoumarinカルボン酸、Dialkylaminocoumarin、Dialkylaminocoumarinカルボン酸、Methoxycoumarin、Methoxycoumarinカルボン酸等のcoumarin系色素分子;Eosin、Eosinカルボン酸等のEosin系色素分子;Erythrosin、Erythrosinカルボン酸等のErythrosin系色素分子
Malachite green(カルボン酸型);Marina Blue Dye(カルボン酸型);NBD、NBDカルボン酸等のNBD系色素分子;Oregon Green 488、Oregon Green 488カルボン酸、Oregon Green 514、Oregon Green 514カルボン酸等のOregon Green系色素分子;Pacific Blue dye(カルボン酸型);PyMPO、PyMPOカルボン酸等のPyMPO系色素分子;Pyrene、Pyreneカルボン酸等のPyrene系色素分子;QSY7、QSY9、QSY21、QSY35、QSY7カルボン酸、QSY9カルボン酸、QSY21カルボン酸、QSY35カルボン酸等のQSY系色素分子;Texas Red dye(カルボン酸型)、ECD(Phycoerythrin−Texas Red−x)(カルボン酸型)などのTexas Red系色素分子(カルボン酸型)(以上、例えばhttp://www.probes.com/handbook/print/0101.htmlの「Molecular probes’amine−reactive dyes」の欄参照)
PE−Cy5(PE−Cyanin5)、PE−Cy5.5(PE−Cyanin5.5)、PE−Cy5(PE−Cyanin7)、APC−Cy7(APC−Cyanin 7、PharRed)、及びPerCP−Cy5.5(Per−CP−Cyanin5.5)等のシアニン系色素分子;3−carboxy TEMPO(4−carboxy−2,2,6,6−tetramethylpiperidine 1−oxy)、3−carboxy PROXYL[3−(carboxy)−2,2,5,5−tetramethyl−1−piperidinyloxy]等のフリーラジカル;ethylenediaminetetraacetic acid, iron(III)sodium salt hydrate、ethylenediaminetetraacetic acid,iron(II)acetate等を挙げることができる。
【0030】
また、上記色素分子として、Alexa Fluor 647系の色素分子、ローダミン系の色素分子、テキサスレッド系の色素分子、及びシアニン系の色素分子などのイオン性蛍光色素を使用することもできる。なお、かかるイオン性蛍光色素として、例えばフナコシ(株)製のDY−495(Fluorescein系色素、[FITC or FAM])、DY−550(Cy3、tetramethylrhodamine系色素、[TRITC or TAMRA])、DY−555(Cy3、tetramethylrhodamine系色素、[TRITC or TAMRA])、DY−610(Texas Red系色素)、DY−635〜DY−651(Cy5系色素)、DY−675〜DY−681(Cy5.5系色素)等の市販のイオン性蛍光色素を使用することもできる。
【0031】
色素分子含有シリカ粒子は、例えば、下記(i)及び(ii)の工程を経由することにより製造される。
【0032】
(i)エステル結合(−CO−O−)を介して色素分子とスクシンイミドとが結合してなるスクシンイミジルエステル化合物とアミノ基を有するアルコキシ珪素化合物とを反応させて、色素分子含有アルコキシ珪素化合物を生成する工程、及び
(ii)上記(i)で得られた色素分子含有アルコキシ珪素化合物を、アルコキシ珪素化合物と反応させて色素分子含有シリカ粒子を形成する工程。
【0033】
上記(i)の工程において使用されるスクシンイミジルエステル化合物(1)としては、下記の一般式で示される化合物を例示することができる。
【0034】
【化1】

【0035】
上記式中、R−CO−は、上述するように色素分子(R−COOH)からOH基が脱離した基を示す。より詳細には、Rは、下式に示すように、エステル結合(−CO−O−)を介してスクシンイミドと結合することができるものである。
【0036】
【化2】

【0037】
(式中、R−CO−は前記に同じ。R′は水素原子または任意の基を意味する。)
なお、上記の工程(i)で用いるスクシンイミジルエステル化合物(1)は、上記式に示すように、色素分子〔化合物(0)〕とN−ヒドロキシスクシンイミドとを定法に従ってエステル化反応することによって調製することができる。但し、簡便には商業的に入手することも可能である。
【0038】
スクシンイミジルエステル化合物(1)としては、前述する各種の色素分子(R−COOH)とN−ヒドロキシスクシンイミドとがエステル化反応することによって得られるものを広く挙げることができる。その例として、5−スクシンイミジルエステル−Alexa Fluor 647、6−スクシンイミジルエステル−Alexa Fluor 647、5(6)−スクシンイミジルエステル−Alexa Fluor 647、6−スクシンイミジルエステル−2′,4,4′,5′,7,7′−ヘキサクロロAlexa Fluor 647、6−スクシンイミジルエステル−2′,4,7,7′−テトラクロロAlexa Fluor 647、6−スクシンイミジルエステル−4′,5′−ジクロロ−2′,7′−ジメトキシAlexa Fluor 647、5−スクシンイミジルエステル−ローダミン、6−スクシンイミジルエステル−ローダミン、5(6)−スクシンイミジルエステル−ローダミン、スクシンイミジルエステル−Alexa Fluor 350、スクシンイミジルエステル−Alexa Fluor 405、スクシンイミジルエステル−Alexa Fluor 430、スクシンイミジルエステル−Alexa Fluor 488、スクシンイミジルエステル−Alexa Fluor 500、スクシンイミジルエステル−Alexa Fluor 514、スクシンイミジルエステル−Alexa Fluor 532、スクシンイミジルエステル−Alexa Fluor 546、スクシンイミジルエステル−Alexa Fluor 555、スクシンイミジルエステル−Alexa Fluor 568、スクシンイミジルエステル−Alexa Fluor 594、スクシンイミジルエステル−Alexa Fluor 610、スクシンイミジルエステル−AlexaFluor 633、スクシンイミジルエステル−Alexa Fluor 647、スクシンイミジルエステル−Alexa Fluor 660、スクシンイミジルエステル−Alexa Fluor 680、スクシンイミジルエステル−Alexa Fluor 700、スクシンイミジルエステル−Alexa Fluor 750、スクシンイミジルエステル−ビオチン;3−スクシンイミジルエステル−TEMPO、3−スクシンイミジルエステル−PROXYL;N−succinimidyl ester−ethylenediaminetetraacetic acid,iron(III)sodium salt hydrate、N−succinimidyl ester−ethylenediaminetetraacetic acid,iron(II)acetate等を挙げることができる。
【0039】
アミノ基を有するアルコキシ珪素化合物(2)としては、特に制限されないが、例えば3−(アミノプロピル)トリエトキシシラン、3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピル−トリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。
【0040】
スクシンイミジルエステル化合物(1)とアミノ基を有するアルコキシ珪素化合物(2)との反応は、ジメチルスルホキシド(DMSO)や水等の溶媒に溶解した後、室温条件下で攪拌しながら反応することによって行うことができる。
【0041】
反応に使用するスクシンイミジルエステル化合物(1)とアルコキシ珪素化合物(2)との割合は特に制限されないが、好適にはスクシンイミジルエステル化合物(1):アルコキシ珪素化合物(2)=1:0.5〜4(モル比)の範囲、より好適には1:1〜2(モル比)の割合を挙げることができる。
【0042】
斯くして、スクシンイミジルエステル化合物(1)のカルボニル基と、アミノ基を有するアルコキシ珪素化合物(2)のアミノ基とが、アミド結合(−NH−CO−)して、色素分子含有アルコキシ珪素化合物(3)が生成する。すなわち当該色素分子含有アルコキシ珪素化合物(3)は、アミド結合を介して色素分子とアルコキシ珪素化合物が結合してなる態様を有している。
【0043】
次いで工程(ii)で、当該色素分子含有アルコキシ珪素化合物(3)をアルコキシ珪素化合物(4)と反応させる。ここで使用されるアルコキシ珪素化合物(4)としては、特に制限はされないが、テトラエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、3−チオシアナトプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、及び3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピル−トリエトキシシランを挙げることができる。
【0044】
色素分子含有アルコキシ珪素化合物(3)とアルコキシ珪素化合物(4)の割合は、特に制限されないが、色素分子含有アルコキシ珪素化合物(3)1モルに対するアルコキシ珪素化合物(4)のモル比として、100〜40000、好ましくは300〜20000、より好ましくは500〜10000、さらに好ましくは600〜7000を挙げることができる。
【0045】
この反応は、アルコール、水及びアンモニアの存在下で行われる。ここで、アルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜3の低級アルコールを挙げることができる。
【0046】
かかる反応系における水とアルコールの割合は、特に制限されないが、好ましくは水1容量部に対してアルコールを0.5〜8容量部、好ましくは1〜5容量部、より好ましくは1〜2容量部の範囲を挙げることができる。アンモニアの量も特に制限されないが、例えば、反応させる色素分子含有シラン化合物1モルに対して、モル比で、200〜250000、好ましくは400〜150000、より好ましくは2500〜25000の割合を挙げることができる。
【0047】
この反応は室温で行うことができ、また攪拌しながら行うことが好ましい。通常、数十分〜数十時間の反応で、目的の色素分子を含有するシリカ粒子(5)を調製することができる。
【0048】
なお、当該工程(ii)において、使用するアルコキシ珪素化合物(4)の濃度を調整したり、反応時間を調整することにより、調製するシリカ粒子の大きさ(直径)を適宜調節することができる。使用するアルコキシ珪素化合物(4)の濃度を多くしたり、また反応時間を長くすることにより、より大きいシリカ粒子を調製することができる(例えば、Blaaderenet al.,“Synthesis and Characyerization of Monodisperse Collidal Organo−silica Spheres”,J.Colloid and Interface Science 156,1−18.1993参照)。また工程(ii)を複数回、繰り返し行うことによっても、より大きなシリカ粒子を調製することができる。このように本発明の方法によれば、得られる色素分子含有シリカ粒子のサイズ(直径)を、所望の大きさに、例えばnmオーダーからμmオーダーへと自在に調整することができる。具体的には、本発明の方法によれば、後述の参考例1に示すように、数〜数十nmサイズ、具体的には3〜30nmといった微小な大きさを有する色素分子含有シリカ粒子を調製することも可能である。また必要に応じて、その後の処理により希望する粒子径分布となるように調整することもでき、斯くして所望の粒子径分布範囲にあるシリカ粒子を得ることもできる。
【0049】
このようにして得られる色素分子含有シリカ粒子は、必要に応じて、限界濾過膜などの慣用の方法を利用して共存イオンや共存する不要物を除いて精製してもよい。
【0050】
後述する参考例1に示すように、上記方法を用いて色素分子をシリカ粒子内に固定若しくは包含させると、フリーの色素分子よりも感度を上げることができる。また、上記の方法によると、蛍光色素分子が自己消光を起こすことなく、多くの蛍光色素分子をシリカ粒子内に固定もしくは包含させることができる。このため、上記の方法によると、微小な領域でも使用可能な、高発光の検出試薬を提供することが可能である。
【0051】
[色素分子含有シリカ粒子の表面修飾]
シリカは、一般に、化学的に不活性であると共に、その修飾が容易であることが知られている。上記で説明した色素分子含有シリカ粒子もまた、容易に所望の分子を表面に結合させることが可能である。本発明では色素分子含有シリカ粒子として、こうした所望の分子を表面に結合させてなる色素分子含有シリカ粒子(表面修飾−色素分子含有シリカ粒子)を用いることが好ましい。
【0052】
表面修飾−色素分子含有シリカ粒子は、上記工程(ii)で使用するアルコキシ珪素化合物(4)の種類を適宜選択して用いることによって、所望の分子と結合可能なアクセプター基を表面に有する形態で調製することができる。反応に使用するアルコキシ珪素化合物(4)と、それによって得られる色素分子含有シリカ粒子の表面に形成されたアクセプター基との関係を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
なお、上記の方法によって得られる色素分子含有シリカ粒子(5)について、反応に使用したアルコキシ珪素化合物(4)によって表面に導入されるアクセプター基とは異なるアクセプター基を導入したい場合には、当該色素分子含有シリカ粒子(5)を、さらに工程(ii)で使用したアルコキシ珪素化合物(4)とは異なるアルコキシ珪素化合物で処理する。この処理は、工程(ii)で使用したアルコキシ珪素化合物(4)とは異なるアルコキシ珪素化合物を用いて、上記工程(ii)と同様な操作を行うことにより実施することができる。
【0055】
また、色素分子含有シリカ粒子として、色素分子の強度を高めるように工夫された色素分子含有シリカ粒子の多重結合物を用いることもできる。当該色素分子含有シリカ粒子の多重結合物は、上記の方法で得られた色素分子含有シリカ粒子に、色素分子含有シリカ粒子のアクセプター基に応じたカップリング剤を用いて、さらに色素分子含有シリカ粒子を結合させることによって調製することができる(工程(iv))。また、色素分子含有シリカ粒子のアクセプター基を、当初のアクセプター基とは異なる所望のものに変更する場合には、工程(iv)の前に、前述する工程(ii)で用いたアルコキシ珪素化合物(4)とは異なる、所望のアクセプター基を有するアルコキシ珪素化合物(4)での処理を実施してもよい〔工程(iii)〕。
【0056】
ここで使用できるカップリング剤としては、色素分子含有シリカ粒子が表面に有するアクセプター基に応じて、表2に記載するものを挙げることができる。
【0057】
【表2】

【0058】
カップリング剤との反応は、カップリング剤の存在下で、本発明に係る色素分子含有シリカ粒子を反応することによって行うことができる。通常、室温下で数十分〜数十時間攪拌反応する方法を用いることができる。使用するカップリング剤の割合は、色素分子含有シリカ粒子1モルに対して、モル比で300〜6000倍、好ましくは600〜5400倍、より好ましくは2100〜3000倍である。
【0059】
斯くして色素分子含有シリカ粒子がカップリング剤を介して多重的に結合し、色素分子含有シリカ粒子の多重結合物を得ることができる。かかる多重結合物の調製は、色素分子含有シリカ粒子に由来する色素分子(例えば、蛍光色素など)の強度を高める手段として有効に利用することができる。なお、多重結合によって形成される粒状物は、特に制限されないが、粒径60〜150nmの範囲の大きさを有することができる。
【0060】
本発明に係る色素分子含有シリカ粒子の表面修飾法としてはさらに交互吸着法を用いることが出来る(参考文献:
(A)S.S.Shiratori,T.Ito,and T.Yamada:“Automatic film formation system for ultra−thin organic/inorganic heterostructure by mass−controlled layer−by−layer sequential adsorption method with‘nm’scale accuracy”,Colloids and Surfaces A:Physicochemical and Engineering Aspects,198−200(2002),415.
(B)Z.Li,D.Lee,M.F.Rubner,and R.E.Cohen: “Layer−bylayer Assembled Janus Microcapsules,”Macromolecules,38(2005),7876.
(C)D.Lee,M.F.Rubner,andR.E.Cohen:“Formation of Nanoparticle−Loaded Muicrocapsules Based on Hydrogen−Bonded Multilayers,”Chem.Mater.17(2005),1099.)。
【0061】
例えば負の電位を持っている色素分子含有シリカ粒子に対し、1層目にカチオン性高分子であるポリアリルアミン塩酸塩(PAH)、2層目にアニオン性高分子であるポリアクリル酸ナトリウム(PAA)を積層することにより、粒子表面に静電的引力を利用した交互吸着処理を行うことができる。さらにPAHは高分子鎖の側鎖にアミノ基を、PAAはカルボキシル基を持つので、これらを縮合しアミド結合で結合すれば、高分子の網に覆われた構造を形成し、強固な修飾が可能となる。具体的にはEDC(1−ethyl−3−(3−dimethylaminopropyl)carbodiimide)などの縮合剤を用いて高分子の縮合処理を行いシリカ粒子上に網構造を形成させれば、塩の添加等による表面修飾層の脱離を抑制することができる。またこれは表面にカルボキシル基を有していることから、このカルボキシル基を利用して、抗体、アミノ基末端を持つオリゴヌクレオチドあるいは酵素などを結合することが可能である。
【0062】
本発明に係る色素分子含有シリカ粒子の調製に際しては、水溶性カチオニックポリマー又は水溶性水酸基含有ポリマーを分散剤として使用することができる。水溶性カチオニックポリマーとしては、公知のものを広く使用できる。例えば、ポリエチレンアミン、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルピリジン、ジアリルアミンアクリルアミドの単独共重合体、ジアリルアミンアクリルアミドとこれを共重合可能なモノマーとの共重合体、及びカチオン性ポリアクリルアミド等の1〜3級アミン基を有するカチオニックポリマー:ポリジアリルジメチルアンモニウム塩〔ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)(PDADMAC)〕、ポリスチレン系樹脂のスルホン酸塩〔例えば、ポリ(ソディウム4−スチレンスルホネート)〕、アクリル系樹脂の四級アンモニウム塩、ジメチルアミノエチルメタクリレートの単独共重合体〔例えば、ポリ(2−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEMA)〕、ジメチルアミノエチルメタクリレートとこれと共重合可能なモノマーとの共重合体、下式で示されるポリマー:
【0063】
【化3】

【0064】
(式中、Zは一価または二価の対イオンである。)
または、下式で示されるポリマー:
【0065】
【化4】

【0066】
(式中、Zは一価または二価の対イオンである。)
等の第四級アンモニウム基を有するカチオン性のポリマーを例示することができる。好ましくはポリ(2−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEMA)である。
【0067】
水溶性水酸基含有ポリマーとしては、公知のものを広く使用できる。水溶性水酸基含有ポリマーの具体例を示せば、ポリビニルアルコール樹脂、水酸基含有アクリル系樹脂、セルロース系樹脂がある。好ましくはポリビニルアルコール樹脂である。
【0068】
これら水溶性カチオニックポリマー及び水溶性水酸基含有ポリマーは、1種単独で使用するのが望ましいが、これらを2種以上組み合わせて使用しても何ら差し支えない。
【0069】
〔生体分子検出装置〕
以下、本発明に係る生体分子検出装置の構成例を示すが、本発明はこれに限定されない。
【0070】
図1は、本発明の実施の形態に係る生体分子検出装置の概略構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る生体分子検出装置は、プリズム1、プリズム1の上に形成された、検出対象の生体分子(以下「被検体」と記す。)を含む試料を保持する被検体検出部(以下「検出部」と記す。)2と、レーザー発生装置3と、レーザー発生装置3から出力されるレーザー光Lの光路上に配置された偏光板41、絞り42、シャッタ43、回転ミラー44及びレンズ45で構成される光制御部4と光検出手段である第1及び第2CCDカメラ5、6と、第1及び第2フィルター7、8とを備えている。
【0071】
図2は、プリズム1の上に形成される検出部2の構成の一例を示す断面図である。プリズム1には、高屈折率の45度直角プリズムを用いることができる。検出部2は、プリズム1の表面にスパッター法あるいは蒸着法により30〜60nm(望ましくは40〜60nm、より望ましくは43〜53nm)の厚さに形成された金薄膜21と、金薄膜21表面上にスペーサ23によって周囲を囲まれて形成された、抗原と反応させる抗体を含む被検体検出層(以下「検出層」ともいう。)24と、石英基板25と、これらを固定する固定具22とを備えている。ここで、スペーサ23、検出層24及び石英基板25によって、バッファ空間27が形成されており、石英基板25には貫通孔によって流路26a、26bが形成されている。流路26a、26bは、試料溶液をバッファ空間27に注入するために使用され、例えば、試料溶液を、流路26aからチューブ(図示せず。)を介してバッファ空間27に注入し、流路26bから別のチューブ(図示せず。)を介してバッファ空間27から排出させる。検出層24には、抗体を結合させたSAM膜や高分子材料を用いることができる。抗体はSAM膜や高分子材料の一方の端部に結合されており、SAM膜や高分子材料の他方の端部は、直接若しくは間接に金薄膜21表面に固定されている。高分子材料は複数種類が介在していてもよい。SAM膜としては例えばHOOC−(CH11−SHなどの置換脂肪族チオールで形成された膜、高分子材料としては例えばポリエチレングリコール(polyethylene glycol、以下「PEG」と記す。)やMPCポリマー等が挙げられる。これは用時に調製しても、予めこれらを結合させた基板を用いてもよい。
【0072】
第1CCDカメラ5は、金薄膜による反射レーザー光を観測するためのものであり、第1フィルター7を介して反射レーザー光を受光可能な位置に配置されている。一方、第2CCDカメラ6は、検出層24に含まれている蛍光分子からの蛍光を検出するためのものであり、観測波長に適した蛍光用高感度CCDカメラと第2フィルター8とが、検出部2の上方に設置されている。ここで、第1CCDカメラ5は、少なくとも反射光強度を測定することができればよく、2次元撮像ができなくてもよく、フォトダイオードであってもよい。
【0073】
レーザー発生装置3には、例えば、He−Neレーザーを使用することができる。また、回転ミラー44は、ミラーの角度を変更することが可能であり、レーザー光Lの金薄膜21への入射角θを、例えば、θ=28〜62度の範囲で変化させることができる。なお、図1において、レーザー光Lが通過するプリズム表面での光路の屈曲は省略している。
【0074】
レーザー発生装置3から出力されるレーザー光Lは、偏光板41によってP偏光され、絞り42を通過し、シャッタ43が開いている間、回転ミラー44、レンズ45及びプリズム1を介して検出部2の金薄膜21に入射され、その反射光が、レンズ45及びフィルター7を介して第1CCDカメラ5で測定される。また、検出層24内の蛍光分子からの蛍光は、第2CCDカメラ6で測定される。
【0075】
〔生体分子の検出方法の詳細な説明〕
次に、本生体分子の検出装置を用いた生体分子の検出方法を、具体例を挙げて説明するが本発明はこれに限定されない。
【0076】
まず検出部2のバッファ空間27に、PBS(あるいはその他の緩衝液)溶液を注入する。
【0077】
レーザー発生装置3から出力されるレーザー光Lを、回転ミラー44のミラー表面の角度を固定し、上記のようにプリズム1を介して検出部2の金薄膜21に入射させ、その反射光を第1CCDカメラ5で測定し、反射強度を記録する。周知のように、偏光板41を介してP偏光されたレーザー光Lは、金薄膜21中の電子振動とカップリングしてSPR現象を生じた場合、反射光の強度が減少する。この反射光の強度が最低値になるように回転ミラーの角度を調整する(ここからプラズモン光が最大となる入射角となるようにミラー角度を変更しても構わない。)。
【0078】
バッファ空間27中の検出層24には予め抗体を固定しておき、これに対する抗原を含む溶液を流した後、色素分子含有シリカ粒子を結合させた二次抗体を含む溶液を流す。
【0079】
これによって、SPRによるプラズモン光によって、検出層24内の蛍光分子が励起され、蛍光を発生する。
【0080】
発生した蛍光を、検出部2の上方に位置する第2CCDカメラ6で測定、即ち2次元撮像する。得られた2次元画像における各画素の輝度が、検出層上の各場所での蛍光強度に対応する。
【0081】
以上のように、第2CCDカメラ6による蛍光強度の測定によって、検出層24に注入した溶液中の抗原を検出することができる。
【0082】
なおこの測定においてシリカ粒子に含有させる色素分子としては、レーザー光の波長等を考慮して適切な色素分子を使用すればよい。例えば、光源として波長632.8nmのHe−Neレーザーを使用する場合、色素分子としてはCy5、Alexa Fluor647等を使用することができる。
【0083】
なお、プリズム表面に形成される薄膜は、金薄膜に限定されず、その他の金属(銀等)や、金属酸化物(SiO、TiO、Al、AgO等)の薄膜であってもよい。
【0084】
また、上記では、流路を有する石英基板及びスペーサを備えた検出部を説明したが、これに限定されない。金薄膜表面上に被検体検出層が形成され、被検体の生体分子を保持することができる構造であればよい。
【0085】
また、上記では1つの検出層を備える場合を説明したが、金薄膜上に、異なる抗体を含む複数の検出層をアレイ状に配列して検出部を形成してもよい。
【0086】
また、上記においては、1種類の蛍光分子を用いる場合を説明したが、これに限定されず、複数種類の抗体と、抗体の種類毎に、蛍光波長の異なる蛍光分子を結合させて検出部を形成してもよい。この場合、SPR測定及びSPFS測定は、蛍光分子の種類に応じた波長の異なる複数のレーザー光あるいは各種フィルターを挿入したランプを用いて行う。
【0087】
また、第一光検出手段はCCDカメラに限定されず、所定の波長のレーザー光を測定可能なものであればよい。例えばフォトダイオード等を用いることができる。同様に第2光検出手段も、上記したCCDカメラに限定されず、所定の波長の蛍光を測定可能なものであればよい。例えば光電子増倍管等を用いてもよい。
【0088】
照射する光源としては直進性のある形で光線を取り出せる光源であればよく、半導体レーザーでもLEDでもランプでも構わない。
【0089】
照射光を走査する方法としては、回転ミラーに限定されず、光源そのものをステージコントローラー等で走査させてもかまわない。
【0090】
プリズムの形状としては、90度の三角プリズムに限定されず、60度の三角プリズムや半円柱のプリズムを用いてもよい。
【実施例】
【0091】
本発明を、具体例を挙げて説明するが、本発明はこれに限定されない。
(1)DyLight Fluor 649(色素分子)含有アルコキシ珪素化合物の調製
下式に従って、色素分子としてDyLight Fluor 649(PIERCE社製)を含有するアルコキシ珪素化合物を調製した。
【0092】
【化5】

【0093】
〔式中、RはDyLight Fluor 649(色素分子)を意味する。またR中、*はエステル基との結合部を意味する。〕
具体的には、まずスクシンイミジルエステル化合物として、エステル結合を介して通じてDyLight Fluor 649(色素分子:式中、Rで示す。)とスクシンイミドとが結合してなる、DyLight Fluor 649スクシンイミジルエステル(1)(約3mg)を1mlのDMSO溶液に溶解した後、アミノ基を有するアルコキシ珪素化合物として3−(アミノプロピル)トリエトキシシラン〔3−(aminopropyl)triethoxysilane:以下、「APS」ともいう。〕(2)を上記DyLightFluor649スクシンイミジルエステルと等モルになるように加え、約1時間スターラーピースを用いて攪拌して反応させて、スクシンイミジルエステル化合物のカルボニル基とアルコキシ珪素化合物〔APS(2)〕のアミノ基がアミド結合してなるDyLight Fluor 649(色素分子)含有アルコキシ珪素化合物(3)を調製した。
【0094】
(2)色素分子含有シリカ球の調製
次いで、下式に従って、DyLight Fluor 649(色素分子)含有アルコキシ珪素化合物(3)からDyLight Fluor 649(色素分子)含有シリカ球(5)を調製した。
【0095】
DyLight Fluor 649(色素分子)含有アルコキシ珪素化合物の調製、及びこれを用いたシリカ球(DyLight Fluor 649含有シリカ球)の調製
【0096】
【化6】

【0097】
具体的には、上記で得られたDyLight Fluor 649(色素分子)含有アルコキシ珪素化合物(3)を含む反応溶液から80μlを採取し、エタノール3.92mlに加えた。これに、さらにアルコキシ珪素化合物としてテトラエトキシシラン(4)(Tetraethylorthosilicate:以下、「TEOS」ともいう。)50μl、蒸留水1ml、及び27質量%のアンモニア水溶液を約100μl加えて、スターラーピースを用いて室温で約24時間撹拌して反応した。このとき、反応液中のエタノールと蒸留水の容量比が4:1となるようにした。
【0098】
得られた反応終了液を、限外ろ過装置〔アミコン(登録商標)攪拌式セル〕(フィルター;UFディスクYM100ウルトラセルRC100KNMWL)(販売会社:MILLIPORE)〔Nominal Molecular We ight Limit(NMWL):100kDa〕を使用してろ過し、蒸留水を使用したろ過洗浄を数回繰り返して、2mlのサンプル分散液Aを得た(DyLight Fluor649(色素分子)含有シリカ球(5)を含む。このシリカ球を「シリカ球A」という)。
【0099】
サンプル分散液A中のシリカ球Aの、TEM,SEMでの観察から、シリカ球Aの直径は約20nmであると判断された。
【0100】
なお、粒子カウンターによる粒子数測定と蛍光光度計による蛍光強度測定からシリカ球A1粒子あたりの蛍光強度はDyLight Fluor 649 1色素当たりの蛍光強度の約10倍であった。
【0101】
また、上記の反応により形成されたDyLight Fluor 649(色素分子)含有シリカ球の表面は、反応に用いたアルコキシ珪素化合物(テトラエトキシシラン)(4)に基づいて、アクセプター基としてOH基を有していた(OH基表層修飾シリカ球)。
(3)表面に生体分子捕捉物質を有する色素分子含有シリカ球の作製
参考例1で調製したDyLight Fluor 649(色素分子)含有シリカ球A(粒径20nm)の水分散液0.5mlを、4.5mlの4mM 3−(メルカプトプロピル)トリエトキシシラン〔APS〕とともに、室温下で一晩反応させた。これにより、シリカ球にAPSを付着させて表面にアクセプター基としてSH基を有するシリカ球(SH基表層修飾シリカ球)を作製することができた。
<抗体修飾>
下記、SMCC、0.1mM PBS緩衝液10μlを抗ヒトAFPマウスモノクローナル抗体(6D2)(日本臨床医学検査研究所販売)2.5mg/mlを8μlと、1M重曹水溶液を10μlと、サンプル分散液Aの0.5μM希釈液を60μlとを混和し、3時間攪拌し、本発明の標識抗体溶液Aを得た。
【0102】
【化7】

【0103】
吸光光度計による測定で、抗体と色素の吸光度(Abs)を比較することにより、1抗体当たりの色素数は約12個と算出できた。
【0104】
また、サンプル分散液Aの0.5μM希釈液を60μlの代わりに、0.2μM希釈液を60μl加えて、同様の反応を行い、本発明の標識抗体溶液Bを得た。この溶液の1抗体あたりの色素数は約4個と算出できた。
(4)色素単体標識抗体溶液の調製(比較例)
また、DyLight Fluor 649のスクシンイミジルエステルのDMF溶液0.1μg/mlを3μlと抗ヒトAFPマウスモノクローナル抗体(6D2)(日本臨床医学検査研究所販売)2.5mg/mlを8μlと1M重曹水溶液を10μlとPBS緩衝液を79μlとを混和し、時々攪拌しながら1時間静置した。その後、サイズ排除クロマトグラフィにより低分子色素成分を除き、DyLight Fluor 649色素で標識された抗体溶液を得た。(比較標識抗体溶液A)
吸光光度計による測定で、抗体と色素の吸光度(Abs)を比較することにより、1抗体当たりの色素数は約9個と算出できた。
【0105】
また、DyLight Fluor 649のスクシンイミジルエステルのDMF溶液0.1μg/mlを3μl添加する代わりに、DyLight Fluor 649のスクシンイミジルエステルのDMF溶液0.1μg/mlを1μlとPBS緩衝液を2μlとを添加し、同様の反応を行うことで比較標識抗体溶液Bを得た。1抗体あたりの色素数は約3個であった。
(5)表面プラズモン共鳴蛍光を利用した免疫測定
(検出部の作製)
図2に示したように、プリズム1として、高屈折率の45度直角プリズムであるSCHOTT GLASS社製のLaSFN9(屈折率n=1.85)を用い、その底面にスパッター法により膜厚約48nmの金薄膜21を形成し、流路26a、26bが形成された石英基板25を、厚さ2mmのシリコンゴムのスペーサ23で挟んで金薄膜21の上に設置した。これに、ポンプを用いて、PBS緩衝液(りん酸緩衝液、pH=7.2)を注入した。このときのセル容積はおよそ160μlであった。
【0106】
次にHS−(CH10−COOHの0.5mM PBS緩衝液を調製し、このPBS緩衝液をポンプにより、石英基板25を形成した段階の検出部に注入して1夜放置し、金薄膜21の表面に自己組織化膜を形成させた。
【0107】
(実施例1)
サンプルの測定について説明する。なおレーザーは633nmのHeNeレーザーを用いた。
【0108】
前述のとおりに検出部の作製を行った後に、第1CCDに照射される反射光強度が最小となるようにレーザー入射光角度を調整して、第2CCDを用いて上方から検出部のレーザー照射範囲中心部の0.2mm角を観察し、このときの第2CCDのカウント値を0点として調整した。
【0109】
その後、検出部にN−ヒドロキシスクシンイミドが25mM、WSCが50mMとなるように調製したPBS緩衝液を注入し30分作用させた後、抗ヒトAFPマウスモノクローナル抗体(1D5)(日本臨床医学検査研究所販売)5μg/mlを注入し、30分作用させた。その後1%BSA−PBS緩衝液を40分作用させ、ブロッキングを行ったのち、PBS緩衝液を注入し30分洗浄した。
【0110】
次に、AFP(α−フェトプロテイン)100ng/ml、2.5mlを循環させながら30分間反応させて、0.05質量%Tween−PBS緩衝液で5分洗浄したのち、本発明の標識抗体溶液A、8.5μg/ml、2.5mlを循環させながら20分作用させた。その後PBS緩衝液にて洗浄し、10分後第2CCDから観察したときのカウント値を計測した。このときのカウント値(アッセイシグナル)は213000au(任意単位)であった。(なお、第2CCDは500000auまでは光強度とカウント値が正比例となることを事前に確認した。)またこの時点から5分間のカウント値の最大値と最小値の差を算出したところ1000auであった。これはアッセイシグナルに対して0.5%のばらつきである。
【0111】
次にアッセイシグナルを観測した時点から30分後の第2CCDのカウント値を観測したところ208000auであった。これにより30分露光し続けた時の有効な色素の残存率が98%と算出できる。
【0112】
(実施例2)
本発明の標識抗体溶液Aの代わりに本発明の標識抗体溶液Bを用いた以外は実施例1と同様の実験を行ったところ、第2CCDのカウント値(アッセイシグナル)は75000auを示した。またこの時点から5分間のカウント値の最大値と最小値の差を算出したところ800auであった。これはアッセイシグナルに対して1%のばらつきである。
【0113】
次にアッセイシグナルを観測した時点から30分後の第2CCDのカウント値を観測したところ73500auであった。これにより30分露光し続けた時の有効な色素の残存率が98%と算出できる。
【0114】
(比較例1)
本発明の標識抗体溶液Aの代わりに比較の標識抗体溶液Aを用いた以外は実施例1と同様の手法で計測を行った。
【0115】
このときのカウント値(アッセイシグナル)は156000auであった。またこの時点から5分間のカウント値の最大値と最小値の差を算出したところ4600auであった。これはアッセイシグナルに対して3%のばらつきである。
【0116】
次にアッセイシグナルを観測した時点から30分後の第2CCDのカウント値を観測したところ138000auであった。これにより30分露光し続けた時の有効な色素の残存率が88%と算出できる。
【0117】
(比較例2)
本発明の標識抗体溶液Aの代わりに比較の標識抗体溶液Bを用いた以外は実施例1と同様の手法で計測を行った。
【0118】
このときのカウント値は55000au(アッセイシグナル)であった。またこの時点から5分間のカウント値の最大値と最小値の差を算出したところ1800auであった。これはアッセイシグナルに対して3%のばらつきである。
【0119】
次にアッセイシグナルを観測した時点から30分後の第2CCDのカウント値を観測したところ50000auであった。これにより30分露光し続けた時の有効な色素の残存率が90%と算出できる。
【0120】
以上のように、本発明を用いることで1つの生体分子当たりの蛍光強度を大幅に上げることができ、色素単体で蛍光強度増大をはかるよりも、そのばらつきを抑えることができる。つまり従来のSPFS法に比べて高感度、高精度に生体分子の検出を行うことが可能となった。また本発明を用いることでプラズモン光による励起条件下でも、色素単体での標識に比べ、有効な色素の残存率を向上させることが出来た。
【符号の説明】
【0121】
1 プリズム
2 被検体検出部
3 レーザー発生装置
4 光制御部
5 第1CCDカメラ
6 第2CCDカメラ
7 第1フィルター
8 第2フィルター
21 金薄膜
22 固定具
23 スペーサ
24 被検体検出層
25 石英基板
26a、26b 流路
27 バッファ空間
41 偏光板
42 絞り
43 シャッタ
44 回転ミラー
45 レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面プラズモン共鳴励起蛍光を用いた生体分子の検出方法であって、色素分子含有シリカ粒子の表面プラズモン共鳴励起蛍光を検出することを特徴とする生体分子の検出方法。
【請求項2】
前記色素分子含有シリカ粒子の表面に、生体分子捕捉物質が結合していることを特徴とする請求項1に記載の生体分子の検出方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−91553(P2010−91553A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185596(P2009−185596)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】