説明

生体吸収性外科手術用組成物

【課題】可撓性であり、生体適合性であり、かつ特性が高度に一貫した、完全に合成物である生物学的接着剤または封止剤を提供すること。
【解決手段】組成物を含有する、硬化した非多孔性フィルム;および
該硬化した層の表面に塗布された該組成物の未硬化層、
を備える、パッチ。1つの実施形態において、
この脂肪族ポリエステルマクロマーは、式
HO−(R−A)−R−OH
の化合物であり、該式において、Aは、脂肪族二酸から誘導される基であり;Rは、各存在において同じであっても異なっていてもよく、そして1,000未満の分子量を有するジヒドロキシ化合物から誘導される基であり;そしてnは2〜10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2009年7月8日に出願された米国特許出願番号12/499,146号(これは、2005年5月5日に出願された米国特許出願番号11/123,690号の一部継続出願である)の一部継続出願;2009年7月8日に出願された米国特許出願番号12/499,141号(これは、2005年5月5日に出願された米国特許出願番号11/123,690号の一部継続出願である)の一部継続出願;および2009年1月9日に出願された米国特許出願番号12/351,492号(これは、2005年5月5日に出願された米国特許出願番号11/123,690号の一部継続出願である)の一部継続出願である。上述の出願の各々の全体の開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
技術分野
本開示は、生体吸収性組成物を形成する際に使用するために適切な化合物に関し、これらの生体吸収性組成物は次に、外科手術用接着剤または封止剤として使用され得る。
【背景技術】
【0003】
関連技術
近年、縫合糸を接着による結合で置き換えること、または縫合糸を接着による結合で増強することが開発されており、興味が増大している。この興味の増大の理由としては、以下が挙げられる:(1)修復が達成され得る潜在的な速度;(2)結合物質が完全な閉鎖を行い、これにより流体の浸出を防止する能力;および(3)組織の過度の変形なしで結合を形成する可能性。
【0004】
しかし、当該分野における研究は、外科手術用接着剤が外科医により認容されるためには、これらの接着剤が多数の特性を有するべきであることを明らかにしている。これらの接着剤は、高い初期粘着、および生存組織に迅速に結合する能力を示さなければならず;結合強度は、結合の欠損より前に組織の欠損を引き起こすように充分に強いべきであり;この接着剤は、橋架け(代表的には、透過性の可撓性の橋架け)を形成するべきであり;そしてこの接着剤の橋架けおよび/またはその代謝産物は、局部的な組織毒性の影響も発癌性の影響も引き起こさないべきである。
【0005】
組織接着剤または組織封止剤として有用な数種の材料が、現在利用可能である。現在入手可能な1つの型の接着剤は、シアノアクリレート接着剤である。しかし、シアノアクリレート接着剤は、これらの接着剤の有用性を制限し得る高い曲げ率を有し得る。現在利用可能な別の型の組織封止剤は、ウシ供給源および/またはヒト供給源から誘導された成分を利用する。例えば、フィブリン封止剤が利用可能である。しかし、あらゆる天然物質の場合と同様に、この材料の変動性が観察され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
可撓性であり、生体適合性であり、かつ特性が高度に一貫した、完全に合成物である生物学的接着剤または封止剤を提供することが望ましい。この接着剤または封止剤が、所望の領域に塗布されるために充分に低い粘度を有する場合もまた望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
組成物を含有する、硬化した非多孔性フィルム;および
該硬化した層の表面に塗布された該組成物の未硬化層、
を備える、パッチ。
(項目2)
前記組成物が脂肪族ポリエステルマクロマーを含有する、上記項目に記載のパッチ。
(項目3)
前記脂肪族ポリエステルマクロマーが、式
HO−(R−A)−R−OH
の化合物であり、該式において、Aは、脂肪族二酸から誘導される基であり;Rは、各存在において同じであっても異なっていてもよく、そして1,000未満の分子量を有するジヒドロキシ化合物から誘導される基であり;そしてnは2〜10である、上記項目のうちのいずれかに記載のパッチ。
(項目4)
前記脂肪族ポリエステルマクロマーが、反応性末端基で末端キャップされている、上記項目のうちのいずれかに記載のパッチ。
(項目5)
前記組成物が、式:
OCN−X−HNCOO−(R−A)−R−OOCNH−X−NCO
の化合物を含有し、該式において、Xは、脂肪族基または芳香族基であり;Aは、脂肪族二酸から誘導される基であり;Rは、各存在において同じであっても異なっていてもよく、そしてジヒドロキシ化合物から誘導される基であり;そしてnは1〜10である、上記項目のうちのいずれかに記載のパッチ。
(項目6)
前記脂肪族ポリエステルマクロマーが、分岐試薬で官能基化されている、上記項目のうちのいずれかに記載のパッチ。
(項目7)
前記組成物が、式:
Z−(OCNH−X−HNCOO−(R−A)−R−OOCNH−X−NCO)
の化合物を含有し、該式において、Zは、多官能性化合物から誘導される基であり;Xは、脂肪族基または芳香族基であり;Aは、脂肪族二酸から誘導される基であり;Rは、各存在において同じであっても異なっていてもよく、そしてジヒドロキシ化合物から誘導される基であり;nは1〜10であり;そしてmは2〜6である、上記項目のうちのいずれかに記載のパッチ。
(項目8)
前記組成物が架橋剤を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載のパッチ。
(項目9)
前記組成物が触媒を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載のパッチ。
(項目10)
前記組成物が親水性溶媒を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載のパッチ。
(項目11)
前記組成物が生物活性薬剤を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載のパッチ。
(項目12)
前記硬化層が約0.01mm〜約1mmの厚さである、上記項目のうちのいずれかに記載のパッチ。
(項目13)
前記組成物の未硬化層が、前記硬化した層の表面の約20%〜約100%を覆っている、上記項目のうちのいずれかに記載のパッチ。
(項目14)
組成物を硬化させて非多孔性フィルムを形成する工程;および
未硬化である該組成物の層を該非多孔性フィルムの表面に塗布する工程、
を包含する、方法。
(項目15)
組成物を硬化させて非多孔性フィルムを形成する工程;
未硬化である該組成物の層を該非多孔性フィルムの表面に塗布する工程;および
該フィルムを組織に貼付する工程、
を包含する、方法。
(項目16)
式:
HO−(R−A)−R−OH
の少なくとも1つの脂肪族ポリエステルマクロマーを少なくとも1つのジイソシアネートと反応させて、少なくとも1つのジイソシアネートで末端キャップされたマクロマーを提供する工程であって、該式において、Aは、脂肪族二酸から誘導される基であり;Rは、各存在において同じであっても異なっていてもよく、そして1,000未満の分子量を有するジヒドロキシ化合物から誘導される基であり;そしてnは1〜10である、工程;および
該少なくとも1つのジイソシアネートで末端キャップされたマクロマーを、少なくとも1つの多官能性化合物と反応させて、前記組成物を提供する工程、
をさらに包含する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目17)
2つの異なる脂肪族ポリエステルマクロマーが、少なくとも1つのジイソシアネートと1回の反応で反応して、ジイソシアネートで末端キャップされたマクロマーの混合物を提供し、そして該ジイソシアネートで末端キャップされたマクロマーの混合物が多官能性化合物と1回の反応で反応して、前記組成物を提供する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0008】
(摘要)
医療用途/外科手術用途のための接着剤および/または封止剤として有用な生体吸収性組成物を形成し得る化合物が提供される。
【0009】
(要旨)
医療用途/外科手術用途のための接着剤および/または封止剤として有用な生体吸収性組成物を形成し得る化合物が提供される。ある実施形態において、このような組成物は、組織修復のための移植物(パッチが挙げられる)として利用され得る。このような組成物を使用する方法もまた提供される。
【0010】
ある実施形態において、本開示のパッチは、本開示の組成物から形成された、硬化した非多孔性フィルム、およびこの硬化した層の表面に塗布された、本開示の組成物の未硬化層を備え得る。
【0011】
本開示の方法は、ある実施形態において、本開示の組成物を硬化させて非多孔性フィルムを形成する工程;未硬化であるこの組成物の層をこの非多孔性フィルムの表面に塗布する工程;およびこのフィルムを組織に貼付する工程を包含し得る。
【発明の効果】
【0012】
可撓性であり、生体適合性であり、かつ特性が高度に一貫した、完全に合成物である生物学的接着剤または封止剤を提供すること。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、接着(0日目)から接着後4週間までの、本開示の接着剤の強度損失プロフィールを図示するグラフである。
【図2】図2は、二重注射器アプリケータと組み合わせた2成分生体吸収性組成物の1つの実施形態を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、組織接着剤または封止剤として使用され得る生体吸収性組成物を形成するために適切な化合物に関する。
【0015】
本開示の組成物は、2つのジヒドロキシ化合物を連結する脂肪族二酸を含む成分(本明細書中で時々、「脂肪族ポリエステルマクロマー」と称される)を含有する。脂肪族ポリエステルマクロマーの10までの反復が存在し得る。本発明の化合物は、使用中に遭遇する温度において固体ではなく、むしろ、流動性である。流動性材料は、測定可能な粘度を有する。例えば、本発明の化合物は、約0℃〜約40℃の温度において、約1,000センチポアズ(「Cp」)〜約300,000Cpの粘度を有し得る。
【0016】
これらの化合物を形成する際に利用され得る適切な脂肪族二酸としては、例えば、約2個〜約8個の炭素原子を有する脂肪族二酸が挙げられ、適切な二酸としては、セバシン酸、アゼライン酸、スベリン酸、ピメリン酸、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、マロン酸、シュウ酸、テレフタル酸、シクロヘキシルジカルボン酸、フマル酸、これらのコポリマーおよび組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
利用され得る適切なジヒドロキシ化合物としては、例えば、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコールなどが挙げられる、ポリオールが挙げられる。いくつかの実施形態において、ジヒドロキシ化合物は、ポリエチレンオキシド(「PEO」)、ポリプロピレンオキシド(「PPO」)、ポリエチレンオキシド(PEO)とポリプロピレンオキシド(PPO)とのブロックコポリマーまたはランダムコポリマーなどのポリアルキレンオキシドであり得る。
【0018】
1つの実施形態において、ポリエチレングリコール(「PEG」)が、ジヒドロキシ化合物として利用され得る。約200〜約1000、代表的には、約400〜約900の範囲の分子量を有するPEGを利用することが望ましくあり得る。適切なPEGは、種々の供給源から、PEG200、PEG400、PEG600およびPEG900の指定で市販されている。
【0019】
任意の方法を使用して、脂肪族ポリエステルマクロマーを形成し得る。いくつかの実施形態において、脂肪族ポリエステルマクロマーは、塩化アジポイルをPEG(例えば、PEG600)およびピリジンと、適切な溶媒(例えば、テトラヒドロフラン(THF))中で化合させることによって形成され得る。この溶液は、適切な温度(約−70℃〜約25℃)で、約4時間〜約18時間の範囲の期間保持され得、その後、この反応混合物が濾過されて、沈殿したピリジン塩酸塩副生成物が除去され、そして生じた脂肪族ポリエステルマクロマー(ここではPEG/アジペート化合物)を、エーテルまたは石油エーテルの添加によりこの溶液から沈殿させ得、そして適切な手段(濾過が挙げられ得る)によって収集され得る。本発明の化合物を作製するために適切な他の方法は、当業者に明らかである。
【0020】
代表的に、生じる脂肪族ポリエステルマクロマーは、以下の式:
HO−(R−A)−R−OH
のものであり、ここでAは、脂肪族二酸から誘導される基であり;Rは、各存在において同じであっても異なっていてもよく、そしてジヒドロキシ化合物から誘導される基であり;そしてnは、1〜10である。いくつかの有用な実施形態において、A基は、アジピン酸から誘導され得、そしてRは、1,000未満の分子量を有するポリエチレングリコールから誘導され得る。これらの化合物の分子量および粘度は、多数の要因(例えば、使用される特定の二酸、使用される特定のジヒドロキシ化合物、および存在する反復単位の数)に依存する。一般に、これらの化合物の粘度は、25℃および20.25s−1の剪断率において約300Cp〜約10,000Cpであり得る。
【0021】
これらの化合物は、多数の用途のために有用である。例えば、これらの化合物は、架橋して、優れた組織接着剤または封止剤として働くゲルマトリックスを形成し得る化合物を生成するために使用され得る。
【0022】
接着剤または封止剤の用途のために、上記脂肪族ポリエステルマクロマーを末端キャップして、反応性末端基を提供することが望ましくあり得る。適切な反応性末端基としては、アミン反応性末端基(例えば、イソシアネート基)、イソチオシアネート、ジイミダゾール、イミドエステル、ヒドロキシスクシンイミドエステルおよびアルデヒドが挙げられる。特に興味深いものは、イソシアネート基である。脂肪族ポリエステルマクロマーを末端キャップして反応性末端基を提供する方法は、当業者の知識の範囲内である。
【0023】
例えば、脂肪族ポリエステルマクロマーは、脂肪族ジイソシアネートまたは芳香族ジイソシアネートと反応して、ジイソシアネート官能性化合物を生成し得る。脂肪族ポリエステルマクロマーを末端キャップするために適切なイソシアネートとしては、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネートおよび脂環式イソシアネートが挙げられる。例としては、芳香族ジイソシアネート(例えば、ジイソシアン酸2,4−トルエン、ジイソシアン酸2,6−トルエン、ジイソシアン酸2,2’−ジフェニルメタン、ジイソシアン酸2,4’−ジフェニルメタン、ジイソシアン酸4,4’−ジフェニルメタン、ジイソシアン酸ジフェニルジメチルメタン、ジイソシアン酸ジベンジル、ジイソシアン酸ナフチレン、ジイソシアン酸フェニレン、ジイソシアン酸キシリレン、4,4’−オキシビス(イソシアン酸フェニル)、ジイソシアン酸テトラメチルキシリレン、トリレンジイソシアネート、ジイソシアン酸ベンゾイル、およびm−テトラメチルキシレンジイソシアネート);脂肪族ジイソシアネート(例えば、ジイソシアン酸テトラメチレン、ジイソシアン酸ヘキサメチレン(HMDI)、ジイソシアン酸ジメチル、ジイソシアン酸リジン、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、ジイソシアン酸2,2,4−トリメチルヘキサメチレン、およびジイソシアン酸ブタン);ならびに脂環式ジイソシアネート(例えば、ジイソシアン酸イソホロン、ジイソシアン酸シクロヘキサン、ジイソシアン酸水素化キシリレン、ジイソシアン酸水素化ジフェニルメタン、ジイソシアン酸水素化トリメチルキシリレン、ジイソシアン酸2,4,6−トリメチル1,3−フェニレン、またはBayer Material Scienceから市販されているDESMODURS(登録商標))が挙げられるが、これらに限定されない。他の適切なイソシアネートとしては、例えば、ジイソシアン酸パラ−フェニレン、p−フェニルアセチルイソシアネート、m−フェニルアセチルイソシアネート、m−フェノキシアセチルイソシアネート、p−フェノキシアセチルイソシアネート、およびm−ヒドロシンナミルイソシアネートが挙げられる。
【0024】
脂肪族ポリエステルマクロマーをジイソシアネートで末端キャップする方法は、当業者の知識の範囲内である。例えば、脂肪族ポリエステルマクロマーは、適切なジイソシアネート(例えば、ジイソシアン酸トルエン)と合わせられ得、そして適切な温度(約55℃〜約75℃の範囲、代表的には約65℃)まで加熱され得る。次いで、得られるジイソシアネート官能性化合物は、石油エーテルでの熱時抽出により精製され得る。
【0025】
本開示のジイソシアネート官能性化合物は、以下の式:
OCN−X−HNCOO−(R−A)−R−OOCNH−X−NCO
のものであり得、ここでXは、脂肪族基または芳香族基であり;Aは、脂肪族二酸から誘導される基であり;Rは、各存在において同じであっても異なっていてもよく、そしてジヒドロキシ化合物から誘導される基であり;そしてnは、1〜10である。いくつかの実施形態において、Xは、トルエン、ヘキサメチレン、テトラメチレン、リジン、エチル化リジンイソホロン、キシレン、ジフェニルメタン、ジフェニルジメチルメタン、ジイソシアン酸ジベンジル、オキシビス(フェニルイソシアネート)、テトラメチルキシレンまたは必要に応じてこれらの混合物もしくは組み合わせから誘導され得る。ジイソシアネート官能性化合物のNCO含有量は、約3〜約6%、代表的には、約3.5%〜約5%で変動し得る。これらのジイソシアネート官能性化合物の粘度は、多数の要因(例えば、使用される特定のジイソシアネート、使用される特定の二酸、使用される特定のジヒドロキシ化合物および存在する反復単位の数)に依存する。一般に、これらの化合物の粘度は、約1,500Cp〜約50,000Cpであり得る。
【0026】
1つより多くの異なる脂肪族ポリエステルマクロマーが、1回の反応で末端キャップされ得ることが理解されるべきである。例えば、nが3である上記式の脂肪族ポリエステルマクロマーが調製され得、そしてnが5である上記式の脂肪族ポリエステルマクロマーと合わせられ得、これらの脂肪族ポリエステルマクロマーは、別々に調製される。次いで、1回の反応で、脂肪族ポリエステルマクロマーの混合物が末端キャップされて、反応性基を提供し得る。得られる生成物は、上に示される式のジイソシアネート官能性化合物の混合物である。
【0027】
本開示の別の局面において、官能基化されたポリエステルマクロマーは、多官能性化合物(これは、分岐試薬として働く)とさらに反応させられ得る。適切な分岐試薬としては、例えば、多官能性の酸、無水物、アルコール、およびこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態において、多官能性化合物は、3個〜6個のヒドロキシル基を有するポリオール、3個〜6個のカルボキシル基を有するポリカルボン酸、または合計3個〜6個のヒドロキシル基およびカルボキシル基を有するヒドロキシ酸であり得る。
【0028】
多官能性化合物として利用され得る代表的なポリオールとしては、グリセロール、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリトリトール、1,2,6−ヘキサントリオール、ソルビトール、1,1,4,4−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ポリカプロラクトントリオール、ポリラクチドトリオール、ポリグリコール酸トリオール、ポリジオキサノントリオール、ジペンタエリトリトールまたは必要に応じてこれらの混合物が挙げられる。利用され得る他の多官能性化合物としては、2個〜3個の炭素を有するアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシド)を、ポリオール開始剤と縮合させることにより誘導された、トリオールが挙げられる。このような多官能性化合物は、代表的に、約400〜約3000の範囲の高い分子量を有する。
【0029】
多官能性化合物として使用され得る代表的なポリカルボン酸としては、ヘミメリト酸、トリメリト酸、トリメシン酸、ピロメリト酸、ベンゼンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、1,1,2,2−エタンテトラカルボン酸、1,1,2−エタントリカルボン酸、1,3,5−ペンタントリカルボン酸、および1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸が挙げられる。
【0030】
多官能性化合物として適切な代表的なヒドロキシ酸としては、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、3−ヒドロキシグルタル酸、粘液酸、トリヒドロキシグルタル酸、および4−(β−ヒドロキシエチル)フタル酸が挙げられる。このようなヒドロキシ酸は、3個以上のヒドロキシル基およびカルボキシル基の組み合わせを含む。
【0031】
使用のために適切な他の分岐試薬としては、例えば、シクロデキストリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ポリカプロラクトントリオール、エトキシ化ペンタエリトリトール、およびこれらのエステルが挙げられる。
【0032】
いくつかの実施形態において、多官能性化合物は、得られる分岐官能基化化合物の分解プロフィールを変更するために、少なくとも1つの生体吸収性基を含み得る。多官能性化合物と組み合わせられ得る生体吸収性基としては、例えば、グリコリド、グリコール酸、ラクチド、乳酸、カプロラクトン、ジオキサノン、トリメチレンカーボネートから誘導される基、およびこれらの組み合わせが挙げられる。例えば、1つの実施形態において、多官能性化合物は、ジオキサノンおよびグリコリドと組み合わせられた、トリメチロールプロパンを含み得る。生体吸収性基を多官能性化合物に付加する方法は、公知である。多官能性化合物が生体吸収性基を含むように修飾される場合、これらの生体吸収性基は、多官能性化合物と生体吸収性基との合わせた重量の約50%〜約95%の範囲の量、代表的には、多官能性化合物と生体吸収性基との合わせた重量の約7%〜約90%の範囲の量で存在し得る。
【0033】
多官能性化合物は、約50〜約5000、代表的には、約100〜約3000の範囲の重量平均分子量を有し得、そして代表的に、約2〜約6の範囲の官能性を有する。
【0034】
多官能性化合物と官能基化二酸化合物とを反応させる方法は、当業者の知識の範囲内である。いくつかの実施形態において、多官能性化合物は、必要に応じて、ジイソシアネート官能性化合物と、触媒(例えば、オクタン酸スズ)の存在下で、約50℃〜約80℃、代表的には、約60℃〜約70℃の範囲の温度で、約24時間〜約96時間、代表的には、約48時間〜約72時間の範囲の時間にわたって、化合され得る。
【0035】
従って、得られる分岐官能基化化合物は、以下の式:
Z−(OCN−X−HNCOO−(R−A)−R−OOCNH−X−NCO)
のものであり得、ここでZは、生体吸収性基を必要に応じて含む多官能性化合物から誘導される基であり;Xは、脂肪族基または芳香族基であり;Aは、脂肪族二酸から誘導される基であり;Rは、各存在において同じであっても異なっていてもよく、そしてジヒドロキシ化合物から誘導される基であり;nは、1〜10であり;そしてmは、2〜6である。これらの分岐ジイソシアネート官能性化合物の粘度は、多数の要因(例えば、使用される特定の分岐試薬、使用される特定のジイソシアネート、使用される特定の二酸、使用される特定のジヒドロキシ化合物、および存在する反復単位の数)に依存する。一般に、これらの化合物の粘度は、25℃および9.98s−1の剪断率において約3,000Cp〜約300,000Cp、いくつかの実施形態においては、25℃および9.98s−1の剪断率において約15,000Cp〜約100,000Cp、そしてなお他の実施形態においては、25℃および9.98s−1の剪断率において約30,000Cp〜約70,000Cpであり得る。
【0036】
当業者が理解するように、種々の程度の官能性を有する化合物の混合物が、ジイソシアネート官能性化合物と多官能性化合物とを反応させることから生じる。例えば、1つのジイソシアネート官能性化合物が多官能性化合物と反応して、1つのイソシアネート官能性を有する化合物を提供し得る。または2つのジイソシアネート官能性化合物が1つの多官能性化合物と反応して、2つのイソシアネート官能性を有する化合物を提供し得る。または3つのジイソシアネート官能性化合物が1つの多官能性化合物と反応して、3つのイソシアネート官能性を有する化合物を提供し得る。または2つの多官能性化合物が1つのジイソシアネート官能性化合物と反応して、イソシアネート官能性を有さない化合物を提供し得る。当業者は、形成し得る他の可能な反応生成物を予測する。
【0037】
1つより多くのジイソシアネート官能性化合物が、多官能性化合物と、1つの反応で反応させられ得ることが理解されるべきである。例えば、nが3である上記式の脂肪族ポリエステルマクロマーが調製され得、そしてnが5である上記式の脂肪族ポリエステルマクロマーと合わせられ得、これらの脂肪族ポリエステルマクロマーは、別々に調製される。次いで、1回の反応で、脂肪族ポリエステルマクロマーの混合物が末端キャップされて、反応性基を提供し得る。次いで、得られるジイソシアネート官能性化合物の混合物は、多官能性化合物と反応させられ得る。別の例として、nが3である上記式の脂肪族ポリエステルマクロマーが調製されて末端キャップされ得、次いで、nが5である上記式の脂肪族ポリエステルマクロマーが、別に調製されて末端キャップされ得る。次いで、これらの2つのジイソシアネート官能性化合物が混合され得る。次いで、得られるジイソシアネート官能性化合物の混合物が、1回の反応で、多官能性化合物と反応させられ得る。
【0038】
組織へのインサイチュでの投与の際に、本明細書中で上に記載された官能基化化合物および分岐官能基化化合物は、架橋してゲルマトリックスを形成し、このゲルマトリクスは、優れた組織接着剤または封止剤として働く。通常、この架橋反応は、約20℃〜約40℃の範囲の温度で、約15秒〜約20分、またはより代表的には、1分〜10分の範囲の時間にわたって実施される。
【0039】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、封止剤または接着剤をインサイチュで架橋させるための架橋剤などの化合物と合わせられ得る。例えば、これらの架橋剤は、アミン官能基を含み得、これらのアミン官能基は、イソシアネートプレポリマー(ポリエステルマクロマー)と反応して、架橋ポリウレタンを生成し得る。適切な架橋剤としては、アミノ官能性架橋剤(例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、リジン、スペルミン、N−(3−アミノプロピル)−1,4−ブタンジアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,4−ブタンジアミン、ヘキサメチレンジアミンの異性体、ジエチレントリアミンの異性体、トリエチレンテトラミンの異性体、テトラエチレンペンタミンの異性体、ビス−ヘキサメチレントリアミンの異性体、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,2−エタンジアミン、N−3(アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン、N−(2−アミノエチル)−1,3プロパンジアミン、シクロヘキサンジアミン、シクロヘキサンジアミンの異性体、4,4’−メチレンビスシクロヘキサンアミン、4’4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキサンアミン)、トルエンジアミン、フェニレンジアミン、イソホロンジアミン、フェンアルキレンポリアミン、アミノ官能基化ポリアルキレンオキシド、ポリペプチド、およびこれらの組み合わせ)が挙げられるが、これらに限定されない。架橋組成物は、脂肪族ポリエステルマクロマーと同時に組織に塗布されて、架橋した封止剤または接着剤を生じ得る。他の実施形態において、架橋組成物は、組織表面を「前処理」するために使用され得、この場合、脂肪族マクロマーは、後で組織に塗布されて、この組成物をインサイチュで架橋させ得る。架橋組成物は、液相であっても固相であってもよい。架橋組成物はまた、種々の溶媒と、約0.001%w/w〜約10%w/w、ある実施形態においては、約0.05%w/w〜約5%w/wの濃度で合わせられ得る。ある実施形態において、架橋組成物は、生理食塩水中に約0.2%w/wの濃度で存在する。
【0040】
本明細書中で上に記載された化合物は、単独で使用され得るか、または組成物に処方され得る。組成物を形成するために利用される成分の濃度は、多数の要因(使用される特定の成分の型および分子量、ならびに生体適合性組成物の所望の最終用途(例えば、接着剤または封止剤)が挙げられる)に依存して変動する。一般に、この組成物は、約0.5%〜約100%の上記官能基化ポリエステルマクロマーを含有し得る。官能基化ポリエステルマクロマーが分岐試薬と反応している場合、この組成物は、重量基準で約0.5%〜約10%の分岐試薬を含有し得る。
【0041】
本開示の化合物の粘度が特定の用途のために高すぎるとみなされる場合、これらの化合物に加えて溶媒を含有する溶液またはエマルジョンが処方され得る。利用され得る適切な溶媒としては、例えば、極性溶媒(例えば、水、エタノール、トリエチレングリコール、グライム(例えば、ダイグライム、トリグライム、テトラグライムなど)、ポリエチレングリコール、メトキシ−ポリエチレングリコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、N−メチルプロピリドン、ケトン(例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、エチルアミルケトン、乳酸エチルなど)、およびこれらの混合物が挙げられる。他の実施形態において、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、これらの組み合わせなどの溶媒が利用され得る。
【0042】
使用される溶媒の量は、多数の要因(使用される特定の反応性化合物および組成物の意図される最終用途が挙げられる)に依存する。一般に、溶媒は、組成物全体の約1重量%〜約50重量%である。1種以上の溶媒の使用は、約100Cp〜約1500Cpの粘度を有するエマルジョンを生成し得る。このようなエマルジョンは、有利には、任意の適切な噴霧デバイスを使用して噴霧され得る。
【0043】
化合物がイソシアネート官能基を含み、そして溶媒がヒドロキシル基を含む場合、この溶媒は、有利には、この化合物と使用直前に混合されて、望ましくない事前ゲル化を回避する。
【0044】
本開示による組成物は、必要に応じて、1種以上の触媒を含有し得る。触媒の添加は、本開示の組成物の硬化時間を短縮し得る。利用され得る触媒としては、ルイス酸、第三級アミン触媒、第四級アミン触媒などが挙げられる。
【0045】
添加され得る適切な第三級アミン触媒としては、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、1−メチル−4−ジメチルアミノエチル−ピペラジン、3−メトキシ−N−ジメチル−プロピルアミン、N−エチルモルホリン、ジエチルエタノールアミン、N−ココモルホリン、N,N−ジメチル−N’,N’−ジメチルイソプロピル−プロピレンジアミン、N,N−ジエチル−3−ジエチルアミノプロピルアミンおよびジメチル−ベンジルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
適切な第四級アミン触媒としては、例えば、低級アルキルアンモニウムハロゲン化物およびこれらの誘導体(例えば、ヒドロキシ、クロルヒドリンおよびエポキシで置換された、低級アルキルトリメチルアンモニウムハロゲン化物(例えば、置換プロピルトリメチルアンモニウムクロリド))が挙げられる。利用され得る第四級アミンとしては、ジヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、クロロヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、およびエポキシプロピル−トリメチルアンモニウムクロリドが挙げられる。上記化合物の具体的な例としては、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、2,3−エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、および2,3−ジヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドが挙げられる。
【0047】
他の実施形態において、架橋反応において使用するための触媒としては、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、オクタン酸スズなどが挙げられる。
【0048】
使用される触媒の量は、架橋される化合物1キログラムあたり、約0.5グラム〜約50グラムの範囲であり得る。1つの実施形態において、触媒の量は、架橋される化合物1キログラムあたり、約0.5グラム〜約10グラムの範囲である。
【0049】
水もまた、硬化時間を短縮するために、組成物に添加され得る。添加される場合、水は、組成物の使用の時点またはその近くに導入されて、望ましくない架橋または尚早な架橋を回避するべきである。一般に、水の量は、組成物全体に基づいて、約1重量%〜約50重量%であり得る。さらに、他の親水性溶液(生理食塩水およびpH緩衝溶液が挙げられる)が、本開示の組成物と組み合わせられて、硬化時間を短縮し得る。
【0050】
特定の実施形態において、水は、種々の触媒、架橋剤または他の添加剤(例えば、増粘剤)と合わせられ得る。例えば、2成分生体吸収性組成物は、親水性溶媒(例えば、生理食塩水)を1つの成分として含有し得、そして第二の成分は、脂肪族ポリエステルマクロマーを含有し得る。親水性溶媒は、生体吸収性組成物の硬化時間を延長し得る。これらの2つの成分を同時に噴霧または塗布する場合、これらの2つの成分の粘度を類似にすることが有用であり得る。このことを達成するための1つの方法は、親水性溶媒成分に増粘剤を添加することであり得る。適切な増粘剤としては、ポリアクリル酸、ポリ(アクリル酸ナトリウム)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、アルギン酸ナトリウム、グアーガム、カルボキシメチルグアーナトリウム、セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、コンニャクグルコマンナン、オーツデンプン、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、キサンタンガム、カードラン(curdlan)、種々の他の多糖類、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。増粘剤は、親水性溶媒に、約0.01%w/w〜約5.0%w/w、いくつかの実施形態においては、約1.0%w/w〜約3.0%w/w、そしてさらなる実施形態においては、約1.2%w/w〜約2.0%w/wの濃度で添加され得る。1つの実施形態において、増粘剤は、約1.5%w/wである。逆に、ずり減粘剤などの添加剤が第二のポリマー成分に添加されて、第二の成分の粘度を低下させ得る。架橋剤はまた、水相と合わせられ得る(NCO官能性マクロマーの尚早なゲル化を防止するため)。適切な架橋剤としては、上で議論されたものが挙げられる。
【0051】
種々の任意の成分もまた、本開示の生体吸収性組成物に添加され得る。これらの任意の成分としては、界面活性剤、抗菌剤、着色剤、防腐剤、画像化剤(例えば、ヨウ素、硫酸バリウム、もしくはフッ素)、または医療薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、必要に応じて、1種以上の生物活性薬剤を含有し得る。用語「生物活性薬剤」とは、本明細書中で使用される場合、その最も広い意味で使用され、そして臨床用途を有する任意の物質または物質混合物を包含する。その結果、生物活性薬剤は、それ自体が薬理活性を有しても有さなくてもよい(例えば、色素)。あるいは、生物活性薬剤は、治療効果または予防効果を提供する任意の薬剤、組織成長、細胞増殖、細胞分化に影響を与えるかまたは関与する化合物、生物学的作用(例えば、免疫応答)を惹起することが可能であり得る化合物、あるいは1つ以上の生物学的プロセスにおいて他の任意の役割を果たし得る化合物であり得る。
【0052】
本開示により利用され得る生物活性薬剤のクラスの例としては、抗菌薬、鎮痛薬、解熱薬、麻酔薬、鎮痙薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、心臓血管薬剤、診断剤、交感神経様作用薬、コリン様作用薬、抗ムスカリン薬、鎮痙薬、ホルモン、増殖因子、成長因子、筋弛緩薬、アドレナリン作用性ニューロン遮断薬、抗腫瘍薬、免疫原性薬剤、免疫抑制薬、胃腸薬、利尿薬、ステロイド、脂質、リポ多糖類、多糖類、および酵素が挙げられる。生物活性薬剤の組み合わせが使用され得ることもまた意図される。
【0053】
本発明の組成物中に生物活性薬剤として含有され得る適切な抗菌剤としては、トリクロサン(triclosan)(2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテルとしてもまた公知)、クロルヘキシジンおよびその塩(酢酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、および硫酸クロルヘキシジンが挙げられる)、銀およびその塩(酢酸銀、安息香酸銀、炭酸銀、クエン酸銀、ヨウ素酸銀、ヨウ化銀、乳酸銀、ラウリン酸銀、硝酸銀、酸化銀、パルミチン酸銀、銀タンパク、および銀スルファジアジンが挙げられる)、ポリミキシン、テトラサイクリン、アミノグリコシド(例えば、トブラマイシンおよびゲンタマイシン)、リファンピシン、バシトラシン、ネオマイシン、クロラムフェニコール、ミコナゾール、キノロン(例えば、オキソリン酸、ノルフロキサシン、ナリジクス酸、ペフロキサシン(pefloxacin)、エノキサシンおよびシプロフロキサシン)、ペニシリン(例えば、オキサシリンおよびピプラシル(pipracil))、ノンオキシノール9、フシジン酸、セファロスポリン、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。さらに、抗菌タンパク質およびペプチド(例えば、ウシまたは組換えヒト(rh−)ラクトフェリンおよびラクトフェリシン(lactoferricin)B)が、生物活性薬剤として含有され得る。
【0054】
本発明の組成物中に生物活性薬剤として含有され得る他の生物活性薬剤としては、局所麻酔薬;非ステロイド性避妊薬;副交感神経様作用剤;精神療法剤;トランキライザ;うっ血除去薬;鎮静催眠薬;ステロイド;スルホンアミド;交感神経様作用剤;ワクチン;ビタミン;抗マラリア薬;抗片頭痛薬;抗パーキンソン剤(例えば、L−ドパ);鎮痙薬;抗コリン作用性剤(例えば、オキシブチニン);鎮咳薬;気管支拡張薬;心臓血管薬剤(例えば、冠状血管拡張薬およびニトログリセリン);アルカロイド;鎮痛薬;麻酔薬(例えば、コデイン、ジヒドロコデイノン、メペリジン、モルヒネなど);非麻酔薬(例えば、サリチレート、アスピリン、アセトアミノフェン、d−プロポキシフェンなど);オピオイドレセプターアンタゴニスト(例えば、ナルトレキソンおよびナロキソン);抗癌剤;鎮痙薬;制吐薬;抗ヒスタミン薬;抗炎症剤(例えば、ホルモン剤、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、非ホルモン剤、アロプリノール、インドメタシン、フェニルブタゾンなど);プロスタグランジンおよび細胞傷害性薬剤;エストロゲン;抗菌剤;抗生物質;抗真菌剤;抗ウイルス剤;抗凝固薬;鎮痙薬;抗うつ薬;抗ヒスタミン薬;ならびに免疫学的薬剤が挙げられる。
【0055】
本発明の組成物に含有され得る適切な生物活性薬剤の他の例としては、ウイルスおよび細胞;ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質、ならびにアナログ、ムテイン、およびその活性フラグメント;免疫グロブリン;抗体;サイトカイン(例えば、リンホカイン、モノカイン、ケモカイン);血液凝固因子;造血因子;インターロイキン(IL−2、IL−3、IL−4、IL−6);インターフェロン(β−IFN、α−IFNおよびγ−IFN);エリスロポイエチン;ヌクレアーゼ;腫瘍壊死因子;コロニー刺激因子(例えば、GCSF、GM−CSF、MCSF);インスリン;抗腫瘍剤および癌抑制因子;血液タンパク質;性腺刺激ホルモン(例えば、FSH、LH、CGなど);ホルモンおよびホルモンアナログ(例えば、成長ホルモン);ワクチン(例えば、腫瘍抗原、細菌抗原およびウイルス抗原);ソマトスタチン;抗原;血液凝固因子;増殖因子または成長因子(例えば、神経発育因子、およびインスリン様成長因子);タンパク質インヒビター、タンパク質アンタゴニストおよびタンパク質アゴニスト;核酸(例えば、アンチセンス分子、DNA、およびRNA);オリゴヌクレオチド;ならびにリボザイムが挙げられる。
【0056】
天然に存在するポリマー(コラーゲンなどのタンパク質、およびグリコサミノグリカンなどの種々の天然に存在する多糖類の誘導体が挙げられる)が、必要に応じて、この組成物に、本開示の生物活性薬剤として組み込まれ得る。
【0057】
1つの生物活性薬剤が、本発明の組成物を形成するために利用され得るか、または代替の実施形態において、生物活性薬剤の任意の組み合わせが、本発明の組成物を形成するために利用され得る。
【0058】
本明細書中で上に記載された、官能基化化合物および分岐官能基化化合物の存在に起因して、本発明の組成物は、架橋して、優れた組織接着剤または封止剤として働くゲルマトリックスを形成する。通常、この架橋反応は、約20℃〜約40℃の範囲の温度で、約15秒〜約20分、またはより代表的には、約30秒〜約10分の範囲の時間にわたって、実施される。本開示の組成物の架橋を達成するための正確な反応条件は、種々の要因(化合物の官能基、末端キャップの程度、官能基化の程度、触媒の存在、存在する特定の溶媒(存在する場合)などが挙げられる)に依存する。
【0059】
これらの架橋組成物は、縫合糸、ステープル、クランプなどの代わりに、またはこれらと組み合わせて、医療能力/外科手術能力で使用され得る。1つの実施形態において、本発明の組成物は、繊細な組織(例えば、肺組織)を一緒に封止または接着するために、機械的応力を引き起こし得る従来の道具の代わりに使用され得る。本発明の組成物はまた、組織における空気および/または流体の漏出部を封止するため、ならびに術後癒着を防止するため、および組織の完全な空隙および/または欠損部を充填するために、使用され得る。
【0060】
生体吸収性組成物が薬物またはタンパク質の送達を意図される場合、本開示の化合物の量は、生体吸収性組成物中の薬物またはポリマーの初期の保持、および引き続く放出を促進するように、調節され得る。このような調節を行うための方法および手段は、当業者に容易に明らかになる。
【0061】
本開示の組成物は、ヒトおよび動物の多数の異なる医療用途(創傷閉鎖(外科手術用切開部および他の創傷が挙げられる)が挙げられるが、これに限定されない)のために使用され得る。接着剤は、縫合糸、ステープル、テープおよび/または包帯の代用品として、あるいはこれらの補足物としてのいずれかで、組織を一緒に結合させるために使用され得る。本発明の組成物の使用は、現行の実施中に通常必要とされる縫合を排除し得るか、または縫合の数をかなり減少させ得、そしてその後にステープルおよび特定の型の縫合糸を除去する必要性を排除し得る。従って、本明細書中に記載される組成物は、縫合糸、クランプまたは他の従来の組織閉鎖機構がさらなる組織損傷を引き起こし得る場合に、繊細な組織において使用するために特に適切であり得る。
【0062】
2つの組織縁部の接合を行うために、これらの組織縁部が近接され、そして本開示の組成物がこれらの近接された2つの縁部に塗布される。この組成物は、迅速に架橋する(一般に、1分かからない)。従って、本開示の組成物は、創傷に塗布され得、そして硬化させられ得、これによって、創傷を閉鎖する。
【0063】
科学社会において、特定の区別が、用語「肉」と「組織」との使用の間になされ得るが、これらの用語は、本明細書中では交換可能に使用される。なぜなら、本発明の生体吸収性組成物が患者の処置のために医療分野において利用されることを当業者が理解する、一般的な下層をいうからである。本明細書中で使用される場合、「組織」としては、皮膚、骨、ニューロン、軸索、軟骨、血管、角膜、筋肉、筋膜、脳、前立腺、胸部、子宮内膜、肺、膵臓、小腸、血液、肝臓、精巣、卵巣、頸部、結腸、胃、食道、脾臓、リンパ節、骨髄、腎臓、末梢血液、胚組織および/または腹水組織が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0064】
本明細書中に記載される組成物はまた、封止剤として使用され得る。封止剤として使用される場合、本開示の化合物は、外科手術手順中と外科手術手順後との両方に、生体吸収性組成物を形成して出血または流体漏出を防止または抑止するために、外科手術において使用され得る。本開示の化合物はまた、肺手術に付随する空気の漏出を防止するために塗布され得る。本明細書中の化合物は、組織の任意の欠陥を封止し、そして少なくとも、任意の流体または空気の移動を止めるために充分な量で、所望の領域に直接塗布され得る。これらの組成物はまた、縫合線またはステープル線において、血液または他の流体の漏出を防止または制御するために使用され得る。
【0065】
本発明の組成物はまた、再構成外科手術中に、皮膚移植片を付着させるため、および組織フラップを位置決めするために使用され得る。あるいは、本発明の組成物は、歯周手術において、組織フラップを閉鎖するために使用され得る。
【0066】
本開示の組成物の塗布は、任意の従来の手段によってなされ得る。これらとしては、浸漬、ブラッシング、または組織表面での組成物の直接の操作、あるいは表面への組成物の噴霧が挙げられる。観血外科手術において、手、鉗子などによる塗布が想定される。内視鏡外科手術において、組成物は、トロカールのカニューレを通して送達され得、そして当該分野において公知である任意のデバイスによって、その部位に広げられ得る。
【0067】
ある実施形態において、2成分生体吸収性組成物は、二重注射器と組み合わせた静的ミキサーを使用して、組織に塗布され得る。例えば、図2は、二重注射器10を示し、この二重注射器内で、架橋溶液、親水性溶媒および増粘剤が、この注射器の一方のチャンバ12内に存在し、そして脂肪族ポリエステルマクロマーを含有する第二の成分が、第二のチャンバ14内に存在する。プランジャー16が手で展開され得、これによって、組成物が二重注射器10を出、そして静的ミキサー17に入る。一旦、静的ミキサー17に入ると、これらの2つの成分が接触し、そして混合される。一旦接触すると、2つのチャンバからのこれらの2つの成分は、約30秒〜約10分以内で、架橋して組織封止剤または接着剤18を形成し得る。この接着剤または封止剤は、これらの2つの成分が完全に架橋した系を形成する前に、組織「t」に塗布されるべきである。例えば、架橋は、静的ミキサーを出る際に開始し得、そして組織「t」への塗布の際に完了し得る。図示においては、二重成分注射器10は手で押されるが、他の機械的手段(空気および気体により補助される噴霧器が挙げられる)が使用され得ることが想定される。他の型の機械的混合システム(例えば、動的ミキサーが挙げられる)が使用されることもまた想定される。
【0068】
他の実施形態において、特に、本開示の組成物が、動物の身体内の欠損部を充填するための空隙充填剤または封止剤として利用されるべきである場合、架橋の条件および程度をより正確に制御することが有利であり得る。例えば、動物組織における間隙を充填するために使用する前に、組成物を部分的に架橋させることが望ましくあり得る。このような場合、本開示の組成物は、空隙または欠損部に塗布され得、そして硬化させられ得、これによって、この空隙または欠損部を充填する。
【0069】
なお他の実施形態において、本開示の組成物は、ポリマーフィルムとして、接着剤と組み合わせて、封止剤またはパッチとしてインビボで利用され得る。このフィルムおよび接着剤は、同じ組成物から形成されても異なる組成物から形成されてもよい。ある実施形態において、このフィルムは、本開示の組成物から形成された、硬化した接着剤である。このフィルムは、空気中の水分によってか、熱によってか、または当業者の知識の範囲内である他の方法によって、硬化され得る。このフィルムは、気泡が生成されない薄膜にキャスティングされて、血液または流体の漏出を防止または抑止する、細孔および欠陥を含まない非多孔性層を形成し得る。ある実施形態において、このフィルムは、約0.1mm〜約2mm、他の実施形態においては、約0.5mm〜約1mmの厚さを有する。このフィルムの片面は、封止されるべき組織に塗布されるべきである、未硬化または部分的に硬化した接着剤でコーティングされる。ある実施形態において、この接着剤は、このフィルムの面の表面積の約20%〜約100%、ある実施形態においては、この表面積の約25%〜約90%、そしてなお他の実施形態においては、この表面積の約40%〜約80%に塗布される。この接着剤は、任意の従来の手段(例えば、上に記載されたもの)によって、このフィルムに塗布され得る。
【0070】
パッチは、このフィルムを組織の領域を封止するために必要とされるような任意の所望の形状またはサイズに切断することによって、部位特異的にされ得る。このフィルムは、いずれの液体封止剤も接着剤も流動させることなく、組織を支持するための強度を提供し、そして弾性を有する。従って、このパッチは、種々の用途(肺における空気の漏出の封止、フィステルの修復、吻合の封止、もろい組織を縫合するためのバットレスとしてなどが挙げられる)で使用され得る。
【0071】
別の実施形態において、本開示は、医療デバイスを組織に接着させるために、本開示の化合物を使用する方法に関する。この医療デバイスとしては、移植物が挙げられる。他の医療デバイスとしては、ペースメーカー、ステント、短絡などが挙げられるが、これらに限定されない。一般に、デバイスを動物組織の表面に接着させるためには、本開示の組成物は、このデバイスに塗布されても、組織表面に塗布されても、これらの両方に塗布されてもよい。次いで、デバイスおよび組織表面が、本発明の組成物を間にして接触させられる。一旦、この組成物が架橋して硬化すると、このデバイスと組織表面とは、互いに効果的に接着する。
【0072】
本発明の組成物はまた、術後癒着を防止するために使用され得る。このような用途において、本開示の組成物は塗布され、そして硬化させられて、治癒プロセス中に外科手術部位における癒着の形成を防止する目的で、内部組織の表面上に層を形成する。
【0073】
得られる生体吸収性組成物は、多数の有利な特性を有する。本開示の生体吸収性組成物は、安全であり、組織に対する増強された接着性を有し、生分解性であり、増強された止血能力を有し、費用が低く、そして調製および使用が容易である。生体吸収性組成物を形成するために利用される化合物の選択を変化させることによって、ゲル化時間が制御され得るので、生体吸収性組成物の強度および弾性が制御され得る。
【0074】
本明細書中の化合物は、生体吸収性組成物としての柔軟なゲルマトリックスを迅速に形成する。このことは、組織縁部または移植された医療デバイスの、所望の位置での静止した位置決めを保証し、そして必要とされる全体的な外科手術時間/塗布時間を短縮する。得られる生体吸収性組成物は、ゲルマトリックス形成の際に膨潤をほとんどまたは全く示さず、従って、整列した組織縁部の位置の一体性および/または医療デバイスの位置を保持する。この生体吸収性組成物は、強い粘着結合を形成する。この結合は、優れた機械的性能および強度を示し、一方で、生存組織を接着するために必要な適応性を保持する。この強度および適応性は、外科手術組織縁部を移動させることなく、組織のある程度の運動を可能にする。
【0075】
当業者が本明細書中に記載される本開示の特徴をよりよく実施し得るように、以下の実施例は、本開示の特徴を説明するために提供されるが、本開示の特徴を限定しない。
【実施例】
【0076】
(実施例1)
91.28グラムのPEG600(Sigma Aldrich,St.Louis,MO)を、オーブンで乾燥させ窒素で冷却した(本明細書中で「乾燥した」)きれいな0.5リットルの一つ口フラスコに入れた。175グラム(196ml)のテトラヒドロフラン(THF)(JT Baker,Phillipsburg,NJ)をこのフラスコに添加してPEG600を溶解し、次いで、13.6グラムの無水ピリジン(EMD Sciences,Gibbstown,NJ)をこのフラスコに添加した。一旦、溶解したら、この溶液を乾燥した目盛り付き添加漏斗に入れた。これとは別に、19.042グラムの蒸留塩化アジポイル(AdCl)(98%,Sigma Aldrich,St.Louis,MO)を、乾燥させた1リットルの二つ口フラスコに入れ、次いでこれに、188グラム(211ml)のTHFを、静止窒素下で添加した。
【0077】
THF中のAdClを含むフラスコを氷中で5分間冷却し、その後、PEG/ピリジン/THF溶液を、500rpmに設定して撹拌しながら滴下した。このPEG/ピリジン/THF溶液の添加は、90滴/分の速度で進行し、この添加は、約2時間後に完了した。混合を一晩、約16時間〜約20時間続けた。この可溶性画分をインサイチュで、ReactIR 4000分光計(Mettler−Toledo AutoChem,Columbia,MD)を使用して赤外線分光光度法により、測定した。ReactIRプローブを、この二つ口フラスコの一方の口に挿入した。利用したバックグラウンドは、空気であった。得られた分光計走査は、3:2の比のPEG/AdClの存在を確認した。
【0078】
得られた材料を濾紙(Scheicher & Schuell #1573,1/2)で重力濾過して、ピリジン塩酸塩副生成物を除去した。この塩副生成物を少量のTHFで室温で洗浄し、次いで再度濾過した。その濾液をROTAVAPOR(登録商標)ロータリーエバポレーター(BUECHI Labortechnik AG,Flawil,Switzerland)で濃縮した。約3/4のTHFが除去され、その後、得られた材料を、400rpmで撹拌する800mlの無水エチルエーテル(試薬等級、ACS,99.0%、VWR International)で沈殿させた。この混合物を30分間撹拌した。この撹拌を止め、そしてこの混合物を分離させ、その後、その上清を除去し、そしてその沈殿物を瓶に移した。生成物である3:2の比のPEG/アジペート(本明細書中で時々、dPEGと称される)を一晩減圧乾燥させた。
【0079】
さらなるPEG/アジペートを、上に記載された方法を使用して、ただし、2:1の比(PEG/アジペート)で生成した。
【0080】
(実施例2)
PEGアジペートのイソシアネート末端キャップ。乾燥させた500mlの三つ口フラスコに、機械撹拌アセンブリおよび乾式冷却器を取り付けた。この装置を、相対湿度2%の乾燥室で組み立てた。上記実施例1において生成された57.0グラムのPEG/アジペートを、このフラスコに移した。39グラムのジイソシアン酸トルエン(TDI)(技術等級80%、Sigma Aldrich,St.Louis,MO)をこのフラスコに添加し、そして得られた混合物を、静止窒素下で一晩(16時間〜20時間)、110rpmで撹拌し、そして65℃まで加熱した。翌日、その温度を60℃まで低下させた。約150mlの石油エーテル(ACS Reagent,Sigma Aldrich,St.Louis,MO)を添加し、そして250rpmで20分〜30分間混合した。次いで、このフラスコを熱源から除き、そしてその上清をデカンテーションした。上記プロセスを3回繰り返した。このプロセスの4回目の繰り返しにおいて、溶媒を添加し、そして約30秒間撹拌した。この時点で、その上清をデカンテーションし、そしてその沈殿物を瓶に移した(合計約60グラム)。次いで、この材料を室温で減圧乾燥させた。
【0081】
粘度を、Brookfield Engineering Labs,Middleboro,MA製のBrookfield DV IIIコーンアンドプレート粘度計およびRheocalc V2.5ソフトウェアを使用して計算した。NCO含有量を、Schott Geraete GmbH,Mainz,Germanyにより製造されたTitroLine Alpha Autotitratorでの滴定により、ASTM D 2572−91の改変版を使用して決定した。抽出前の材料の平均NCO含有量は、約17.9%であり、そして抽出後の材料の平均NCO含有量は、約4.2%であった。NCOで末端キャップされたPEG/アジペートの存在を、FTIRおよびNMRにより確認した。
【0082】
(実施例3)
分解性分岐試薬を調製した。機械撹拌アセンブリを取り付けたきれいな乾燥させた250mlの三つ口フラスコに、0.011グラムのオクタン酸スズ(Brand Nu Labs,Meriden CT)、8.0グラムのトリメチロールプロパン(TMP)(97% Sigma Aldrich,St.Louis,MO)、および30.66グラムのp−ジオキサノン(US Surgical,Norwalk,CT)を入れた。この混合物を50rpmで混合し、そして静止窒素下に一晩置いた。翌朝、この反応混合物は、24℃で液体であった。この反応混合物を約110℃で約6時間加熱し、その後、7.0グラムのグリコリド(US Surgical,Norwalk,CT)を添加し、そして温度を次第に160℃まで上昇させた。160℃で1時間後、その温度を約1時間15分にわたって125℃まで低下させ、この時間の後に、この反応混合物を瓶に移し、そして一晩(約15時間)静置した。
【0083】
次いで、40グラムの反応混合物を、200mlの一つ口フラスコに入れ、このフラスコを次に、減圧下75℃で24時間加熱し、そして250rpmの速度で撹拌した。約26時間後、この反応混合物を200mlの一つ口フラスコに移し、そして200rpmで撹拌しながら20分間、エチルエーテル中で還流した。その上清をデカンテーションし、そして還流手順を2回繰り返して、残留オクタン酸スズを除去した。得られた材料であるTMP/ジオキサノン/グリコリド分岐試薬を瓶に移し、そして乾燥させた。
【0084】
(実施例4)
実施例2のNCOで末端キャップされたPEG/アジペートを、実施例3の分岐試薬と合わせた。16.59グラムの実施例2のNCOで末端キャップされたPEG/アジペート(4.2%のNCO含有量および約3900の分子量を有する)を、機械撹拌アセンブリを備える250mlの三つ口フラスコに入れた。実施例3で生成した0.857グラムのTMP/ジオキサノン/グリコリド分岐試薬をこのフラスコに添加し、これを50rpmで撹拌しながら静止窒素下65℃で加熱した。この反応を約65時間進行させ、この時点で、この材料をビーカーに移した。このビーカーを1時間減圧乾燥させ、次いで、その材料をそのイソシアネート含有量について滴定により試験した。約2.6%のNCO含有量を有することがわかった。
【0085】
(実施例5)
実施例2において上に記載された手順に従って調製されたNCOで末端キャップされたPEG/アジペート、および実施例3において上に記載された手順に従って調製されたTMP/ジオキサノン/グリコリド分岐試薬を利用する接着剤を、実施例4において上に記載される手順に従って得た。さらなる接着剤を、実施例3の分岐試薬の代わりにTMPを分岐試薬として使用して調製した。調製した接着剤およびその成分を、以下の表1に要約する。粘度を、上記実施例2に記載される手順に従って得、そしてNCO含有量を、上記実施例4に記載される手順に従って決定した。
【0086】
【表1】

接着剤A〜Eについてのベース材料であるdPEGは、3:2の比(PEG600:塩化アジポイル)の塩化アジポイルおよびTDIで鎖長延長したPEG600であった。接着剤Fは、2:1の比(PEG600:塩化アジポイル)の塩化アジポイルおよびTDIで鎖長延長したPEG600であった。TMP=トリメチロールプロパン(Aldrichロット番号10628CA)。dTMP=TMPおよびジオキサノンおよびグリコリド。0.15グラムのビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(BmhP)を、接着剤Aの調製において、分岐工程中に添加した。
【0087】
(実施例6)
(バースト試験)
ステープル、実施例5で上で生成した接着剤、およびこれらの組み合わせを、バースト試験に供した。このバースト試験は、25mmの端端吻合デバイス(U.S.Surgical,Norwalk,CT製)および新鮮なイヌ結腸の試験サンプルを利用して、実施例5の接着剤が端端吻合デバイスを用いて挿入されたステープルを補足する能力、またはこれらのステープルに置き換わる能力を試験した。
【0088】
手短に言えば、バースト試験のための手順は、以下のとおりであった。目的の吻合部位を最初に隔離し、そしてサンプルを切除した。このサンプルが止血クランプで適切に固定されるために充分な組織を、ステープル線の近位および遠位に維持した(両側に約4cm)。皮下針を、圧力変換器をインラインで取り付けたシリンジポンプから、サンプルの遠位端に挿入し、そしてこの針がクランプのハンドルの方に向いてステープル線が中心合わせされるように、この針をクランプ内で配置した。次いで、このサンプルを三角形の試験タンクに入れ、そしてフルオレセインナトリウム流体ラインをこの皮下針に取り付けた。フルオレセインナトリウム溶液をこのサンプルに5cc/分の速度で、破損が観察されるまで注入し、そしてピーク圧力を記録した。
【0089】
ステープル単独。吻合を、Steichenら(「Mechanical Sutures in Operations on the Small & Large Intestine & Rectum」,Woodbury,CT:Cine´−Med,Inc.(2004):72−76)に従って、25mmのPPCEEAステープラーを使用して実施した。バースト圧力試験を上記のように実施した。ステープル単独で封止された吻合についてのバースト圧力は、0.7psi〜1.3psi(n=10)であった。
【0090】
ステープルおよび接着剤C。アンビルを連結させた後であってステープルを発射する前に、接着剤Cのビーズ(約0.2mL)を器具側の組織に、ステープルの2つの列のおよそ間に塗布したことを除いてはSteichenらに従って、25mmのPPCEEAステープラーを使用して、吻合を実施した。発射後、この器具を取り除き、そして接着剤を5分間硬化させ、その後、バースト試験を実施した。ステープルおよび接着剤Cでシールした吻合についてのバースト圧力は、1.49psi〜2.1psi(n=2)であった。
【0091】
損なわれた吻合。3つのステープル(材料の縁部に隣接する2つ、およびこれらのステープルに隣接するが材料の中心に近い方の3つ目)を25mmのPPCEEAステープラーから取り除いた。吻合をSteichenらに従って25mmのPPCEEAステープラーを使用して実施し、吻合の損なわれた部分が腸の対腸間膜側にくることを確実にした。損なわれた吻合についてのバースト圧力は、0.3psi(n=10)であった。
【0092】
損なわれた吻合および接着剤Cまたは接着剤E。3つのステープル(材料の縁部に隣接する2つ、およびこれらのステープルに隣接するが材料の中心に近い方の3つ目)を25mmのPPCEEAステープラーから取り除いた。アンビルを連結させた後であってステープルを発射する前に、接着剤Cのビーズ(約0.2mL)を器具側の組織に、ステープルの2つの列のおよそ間に塗布したことを除いてはSteichenらに従って、25mmのPPCEEAステープラーを使用して、吻合を実施した。上記のように、吻合の損なわれた部分は、腸の対腸間膜側であった。この器具を取り除き、そして接着剤を5分間硬化させ、その後、バースト試験を実施した。ステープルの全てではなく一部と組み合わせた接着剤Cのバースト圧力は、2.1psi〜5.9psi(n=2)であった。
【0093】
接着剤Eを接着剤Cの代わりに利用したこと以外は同じ手順を実施して、損なわれた吻合を形成した。接着剤Eのバースト圧力は、1.12psi(n=1)であった。
【0094】
接着剤E単独でステープルなし。全てのステープルを、25mmのPPCEEAから取り除いた。次いで、吻合をSteichenらに従って実施したが、器具を発射させる前に、接着剤Eのビーズ(約0.2mL)を器具側の組織に、ステープルの2つの列が存在するはずの位置のおよそ間に塗布した。一旦、この器具を発射させて、この器具をわずかに開き、組織に対する圧縮を低下させたが、完全には開かなかった。これにより、接着剤の5分間の硬化時間中に、吻合の端部を一緒に維持した。5分間の硬化後、この吻合をバースト試験を使用して試験した。接着剤Eのバースト圧力は、1.48psi(n=1)であった。
【0095】
(実施例7)
(メッシュ引き剥がし試験)
この実施例の目的は、接着剤を含むポリプロピレンメッシュを使用するヘルニア修復を模倣することであった。約0.1mlの接着剤を、縫合糸ループが通った直径16mmの円形メッシュに載せた。次いで、このメッシュを腹に載せ、そして即座に、1滴の生理食塩水で処理した。数分後、このメッシュをこの組織から引き剥がし、そしてこのメッシュを除去するために必要とされる引張り力を、Mark−10,Copiague,NYにより製造されたModel BG10プレミアムシリーズ力ゲージを使用して測定し、次いで、記録した。利用した接着剤、硬化時間、引張り力(グラム)、およびこれらの試験に関する所見を、以下の表2に記載する。
【0096】
【表2】

(実施例8)
(腹大動脈移植片)
端側吻合を、腹大動脈に、発泡PTFE管状移植片を使用して作製した。この移植片を6針の結節縫合で縫った。0.2mLの接着剤Eを、16ゲージのカニューレを介して、ビーズとして、この吻合の周囲に塗布した。この接着剤を生理食塩水で洗い、そして6分間硬化させ、その後、大動脈のクランプを外し、そして漏出について確認した。
【0097】
一旦、接着剤を6分間硬化させたら、大動脈のクランプを除去してこの吻合を通る完全な血流を可能にした。クランプを除去した直後には目に見える漏出は存在せず、そして10分後および移植片を操作した後にさえ、漏出は依然として存在しなかった。いずれの時点においても、この吻合を通る出血は全く観察されなかった。
【0098】
(実施例9)
(インビトロ強度損失試験)
2つの硬い発泡体試験ブロックを水に浸漬し、その後、試験のために接着剤を塗布した。0.05mlの接着剤Bを1つの試験ブロックに注射器を使用して塗布し、二番目の試験ブロックを、この第一の試験ブロックの接着剤が塗布された箇所に嵌め、そして20グラムの分銅をこの構築物の上に置いて、5分間釣り合いを取らせた。1時間後、サンプルを、水で満たしたガラス瓶に24時間入れた。これらのサンプルを、MTS Sintech 1/G器具を使用して、引張り特性について試験した。第一のサンプルを、Sintech 1/Gにねじ作用グリップを使用して設置することにより試験し、次いで、2インチ/分で破断するまで付加を与えて、時刻0のデータを得た。残りのサンプルをSorrenson緩衝液に浸漬し、そして37℃の浴に、1週間、2週間、および4週間の様々な期間にわたって入れ、その後、試験した。インビトロ浴中1週間後、2週間後、および4週間後の引張りデータの結果を、MTS Sintech 1/G器具を用いて上に記載されたように得、そして時刻0のデータと比較して、強度損失を評価した。
【0099】
破断時のピーク負荷を各サンプルについて記録した。強度損失プロフィールを、以下の表3および添付の図1に記載する。
【0100】
【表3】

材料は、各期間後に強度損失を示し、最も大きい損失は、1週間目の後に起こった。初期強度は1.79kgであり、4週間後に86%の強度損失があった。図1は、接着(0日目)から接着後4週間までの、接着剤の強度損失プロフィールを図示するグラフである。強度損失が4週間にわたり観察された同じ傾向に沿って続く場合(図1を参照のこと)、強度の全損失は、接着の約5.24週間後であると予測され得る。
【0101】
(実施例10)
(細胞傷害性試験)
接着剤Aおよび接着剤Fの細胞傷害性を試験した。それぞれ1.5mLの接着剤を20mLのMEM溶液(改変イーグル培地、Invitrogen Corporation製)に直接注入した。細胞傷害性を、ISO 10993−5指針に従って試験した。手短に言えば、試験の結果を、5スケールの等級付けシステムで提供する。このシステムにおいて、0、1、2、3、または4のスコアが得られる。0のスコアは、毒性反応が観察されなかったことを示し、そして4のスコアは、強い毒性反応が観察されたことを示す。0、1、2のスコアは非毒性スコアとみなされ、3のスコアは弱い毒性〜中程度の毒性とみなされ、そして4のスコアは強い毒性とみなされる。0、1、2のスコアは合格スコアとみなされる。すなわち、それらのサンプルは、細胞傷害性応答を生じない。
【0102】
接着剤Fは、細胞傷害性等級2を有し、一方で、BmhPと組み合わせた接着剤Aは、細胞傷害性等級0を有した。
【0103】
(実施例11)
(重ね剪断試験)
接着剤C、接着剤D、および接着剤Eをそれぞれ、重ね剪断試験に供した。手短に言えば、室温のブタ胃組織を、パンチを使用して15×45mm片に切断した。この組織を生理食塩水ですすぎ、そして吸い取って、過剰な水分を除去した。次いで、0.1mLの接着剤をこれらの組織片のうちの1つの端部に塗布した。この接着剤を、この組織片の端部の15×15mmの領域を覆うように広げた。別の組織片を、この接着剤で覆われた領域の上に置いた。20グラムの重りをこの接着領域の上に30秒間置いた。この重りを取り除き、そして接着剤をさらに4.5分間硬化させた(合計5分間の硬化時間)。3つの別々の組織構築物(接着剤C、接着剤D、および接着剤Eのそれぞれについて1つずつ)を調製した。
【0104】
各組織構築物について、これらの組織片のうちの一方の自由端を接地クランプに配置し、一方で、他方の組織片の自由端を、向かい合わせに設置した第二のクランプに配置した。Model BG10プレミアムシリーズ力ゲージをこの接地クランプに取り付け、そしてこれらの片を引き離すために必要とされる力を記録した。
【0105】
接着剤Cは、1100グラムの重ね剪断を示した。接着剤Dは、1262グラムの重ね剪断を示した。そして接着剤Eは、1322グラムの重ね剪断を示した。
【0106】
(実施例12)
2:1のモル比のPEG600:塩化アジポイル(MW183.03)を調製した。PEG600(1000.7グラム)を窒素で65℃で5時間乾燥させ、そしてさらに16時間にわたって、35℃まで温度を低下させた。次いで、このPEG600を、機械撹拌アセンブリを取り付けた3リットルのジャケット付き反応フラスコに、窒素下20℃で入れ、少なくとも10分間、400RPMで撹拌した。塩化アジポイル(152.6グラム)を60滴〜80滴/分の速度で滴下した。この反応を20℃で4時間続け、次いで、窒素を吹き込みながら少なくとも16時間にわたって35℃まで温度を上昇させ、その後、反応温度を25℃まで低下させた。約750グラムの材料を2リットルのTHFに溶解し、そして4リットルの三角フラスコに移した。酸化アルミニウム(650グラム)を添加し、そして1時間撹拌し、その後、デカンテーションし、そして加圧濾過した(0.45μmの細孔を有する濾紙を使用した)。次いで、このPEGアジペートをROTOVAPOR(登録商標)に取り付け、次いで、エチルエーテルを添加した(過剰なTHFを除去するため)。次いで、濃縮したTHF溶液を混合しながらエーテル中で沈殿させ、そして約30分後にこのエーテルをデカンテーションし、そして1リットルの新しいエチルエーテルを添加した。この材料を再度混合し、そしてエーテルをデカンテーションした。次いで、この材料(PEGアジペート)をさらに30分間撹拌し、デカンテーションし、そして減圧下でガラス瓶に移した。このPEGアジペートを、上記実施例2に記載される方法と類似の方法(主要な違いは、112グラムのPEGアジペートを43グラムのTDIに添加したことであった)を使用して、イソシアネートで末端キャップした。この反応物を静止窒素下で6時間まで撹拌した。一旦、石油エーテルと反応したら、その上清を10回デカンテーションした。抽出後の材料のNCO含有量は、約4.1%であった。この材料を、TMPを分岐試薬として使用して分岐させた。
【0107】
(実施例13)
(重ね剪断試験)
10個の二重注射器(静止ミキサーを備える)に、約1.5mlの実施例12の材料(本明細書中で、接着剤Hと称される)を一方の注射器バレルに入れ、そして1.5mlの生理食塩水中0.2%のビス(3−アミノプロピル)アミンを他方の注射器バレルに入れた。別の10個の二重注射器に、約1.5mlの接着剤Hを一方のバレルに入れ、そして1.5mlの生理食塩水中1.5%のカルボキシメチルセルロース溶液中0.2%のビス(3−アミノプロピル)アミンを他方の注射器バレルに入れた。サンプルを、2.5インチ(約6.35cm)の16要素静止ミキサーを使用して手で分配した。これらの注射器からのサンプルの各々を、実施例11の重ね剪断試験に供した。結果を以下の表4に要約する。
【0108】
【表4】

(実施例14)
実施例2において上に記載される手順に従って調製した、約4.411%〜約4.406%のNCO含有量を有する、55.01グラムのNCOで末端キャップされたPEG/アジペート、および実施例5において上に記載される手順に従って調製した0.640グラムのTMP分岐試薬を利用する接着剤を、実施例5において上に記載される手順に従って合わせた。これらの接着剤は、8.75モル%のTMP、および約33,566.40cP〜約34,809.60cPの範囲の粘度を有した。
【0109】
これらの接着剤を4×10ccの注射器に詰め、そして実施例11の重ね剪断試験に供した。約5分における1060グラムの重ね剪断が、1回目の試験試行中に観察された。2回目の試行は、5.75分において1654グラムの重ね剪断を示し、そして3回目の試行は、4分において970グラムの重ね剪断を示した。
【0110】
(実施例15)
きれいな1リットルの二つ口フラスコおよび12インチ(約30.48cm)の還流冷却器(内側コイルおよび内壁を有する)を脱イオン水ですすぎ、そしてオーブンに入れて乾燥させた。オーブンから取り出してすぐに、これらの器具を組み立て、そして火炎乾燥させた。双方接続ホースアダプタをこの冷却器の頂部に取り付けて、加熱および冷却のプロセスが窒素下で完了するようにした。窒素を、DRIERITE気体乾燥ユニット(W.A.Hammond Drierite Co.LTD.,ストック番号26800)に通して流した。
【0111】
第一の反応段階において、ポリカプロラクトントリオールを、オーブンで乾燥させ窒素で冷却した100mlの丸底フラスコに入れた。約70mlの温THFを添加した。この100mlの丸底フラスコを振盪し、透明さについて確認し、そして1リットルのフラスコに入れた。
【0112】
約130mlの温THFを、オーブンで乾燥させ窒素で冷却した200mlの丸底フラスコに入れた。HMDIをこのTHFに添加した。次いで、この200mlの丸底フラスコを振盪し、透明さについて確認し、そして1リットルのフラスコに入れた。
【0113】
合計200mlのTHFを、1リットルのフラスコに添加して、成分対溶媒比5%を得た。この溶液を冷却しながら、静止窒素下で一晩すばやく撹拌した。
【0114】
モレキュラーシーブで乾燥させたトリエチルアミンをピペットで添加し、そして約4.5時間の還流を開始した。
【0115】
第二の反応段階において、PEG600を、オーブンで乾燥させ窒素で冷却した200mlの丸底フラスコに入れた。約160mlの温THFを添加し、そしてこの200mlの丸底フラスコを振盪し、透明さについて確認し、そして1リットルのフラスコに入れた。
【0116】
60mlの温THFを、オーブンで乾燥させ窒素で冷却した100mlの丸底フラスコに入れた。HMDIをこのTHFに添加した。この100mlの丸底フラスコを振盪し、透明さについて確認し、そして1リットルのフラスコに入れた。次いで、この100mlの丸底フラスコを、さらに40mlのTHFですすぎ、そして1リットルのフラスコに添加した。約4.75時間の還流を開始した。
【0117】
合計460mlのTHF(ステージ1から添加された200mlのTHFおよびステージ2から添加された260mlのTHF)は、約9%の溶液を与えた。この溶液を、混合しながら静止窒素下で一晩冷却して、冷却時に透明な溶液を形成した。
【0118】
利用した成分を以下の表5に要約する。
【0119】
【表5】

(実施例16)
実施例15の組成物の成分を調製し、そして利用したTHFの量が異なること以外は実施例15において上に記載された手順に従って合わせた。それぞれ40mlおよび50mlの温THFを段階1において利用して、合計90mlのTHFを添加し、成分対溶媒比6%を生じた。段階2において、75mlおよび100mlの温THFを利用して、全体で265mlのTHFにし、約7%の溶液を形成した。利用した成分を以下の表に提供する:
【0120】
【表6】

(実施例17)
NCOを末端とするPEG/アジペートを、実施例1において上に記載された手順に従って、4:3の比で調製し、そしてペンタエリトリトール分岐試薬をこのPEG−アジペートと合わせて、実施例5において上に記載された手順を利用して接着剤を調製した。4.7%のNCO含有量を有する15.41グラムのdPEG(4:3)を0.1376グラムのペンタエリトリトールと合わせて、約51,513.10cPの粘度および3.1%のNCO含有量を有する接着剤を生成した。
【0121】
(実施例18)
NCOを末端とするPEG/アジペートを、実施例1において上に記載された手順に従って、2:1の比で調製した。以下の表に示されるように、種々の分岐試薬をこのPEG−アジペートと合わせて、実施例5において上に記載された手順を利用して接着剤を調製した:
【0122】
【表7】

(実施例19)
実施例2において上に記載された手順に従って調製した、85.51グラムのNCOを末端とするPEG/アジペートを利用する接着剤を減圧から取り出し、そしてきれいな乾燥させた250mlの三つ口フラスコに入れた。約0.01051グラムの4−ジメチルアミノピリジンフレークをこのPEG/アジペートに添加し、続いて38.45グラムのHMDIを添加した。その内容物を静止窒素下に置き、そして約65℃で約5.5時間混合した。その温度を約60℃まで低下させ、そして約100ml〜約150mlの石油エーテルで、約3分〜約5分、複数回洗浄した。最後の洗浄後、得られたポリマー材料をデカンテーションし、そして減圧乾燥させた。このポリマー生成物中のイソシアネートの百分率は、滴定により、約4.39%であることがわかった。
【0123】
約1.29グラムのTMPを約97.5グラムの減圧乾燥させたポリマーに添加した。このTMP中のポリマーを、約65℃で、1分間あたり約50回転(rpm)で約23時間混合した。次いで、この混合物を3mlの注射器に入れ、そして個々の箔袋に包装した。約0.37グラムのビタミンEを、残りの35.2グラムのTMP分岐ポリマーに添加し、そして静止窒素下約65℃で、50rpmで約80分間混合した。この混合物を3mlの注射器に入れ、そして個々の箔袋に包装した。
【0124】
(実施例20)
128グラムのグリコリド、103グラムのε−カプロラクトン、および7.6グラムのプロピレングリコールを、きれいな乾燥させた1リットルの反応器フラスコに入れ、そして窒素で一晩乾燥させた。このフラスコを150℃まで加熱し、そして撹拌器を120RPMに設定した。この混合物が150℃に達したら、0.16グラムのSn(Oct)を添加した。この混合物を150℃で24時間、撹拌器を必要に応じて調節ながら反応させた。
【0125】
次いで、この混合物を130℃まで冷却した。600グラムのPEG600および0.28グラムのSn(Oct)をこの混合物に添加した。撹拌器の速度を120RPMに設定し、そしてこの混合物を5時間反応させた。完了したら、この混合物をガラス瓶に注いだ。
【0126】
(実施例21)
49.67グラムのPEG900を含み、窒素ブランケットを備える250mlの丸底フラスコに、実施例20において生成した、50.33グラムのポリマーを添加した。油浴を155℃に設定し、そして0.04グラムのオクタン酸スズを添加した。この反応を155℃で4時間進行させた。
【0127】
この混合物を120℃まで冷却し、そして100グラムのHMDIを添加した。この混合物を120℃で24時間撹拌した。
【0128】
次いで、この混合物を石油エーテルで洗浄し、そして減圧下で乾燥させた。
【0129】
(実施例22)
NCO末端を有するPEG/アジペートを、以下に記載される材料から調製した:
【0130】
【表8】

一般合成は、以下のとおりであった。ジャケット付きの、機械撹拌アセンブリ(撹拌刃およびPTFEタービン)、窒素ブランケット、および温度制御のためにこのジャケットに取り付けた65℃のJULABO循環浴を備えるきれいな乾燥させた3リットルの四つ口反応フラスコに、PEGを減圧アダプタを介して添加し、そして400RPMで撹拌しながら約65℃で平衡化させた。このPEGを、テフロン(登録商標)管またはピペットを使用してこの材料に窒素を一晩吹き込むことにより、乾燥させた。
【0131】
ジャケットの温度を20℃まで低下させ、そして塩化アジポイルを秤量して、きれいな乾燥させた250mlの添加漏斗に入れた。この塩化アジポイルの漏斗を偏りアダプタを介してこの反応器に取り付け、そして全ての塩化アジポイルが添加されるまで、約60滴〜80滴/分の速度で添加した。このジャケットの温度を20℃に2.5時間維持し、次いで、この材料に窒素を吹き込みながら45℃まで一晩上昇させた。
【0132】
このジャケットの温度を20℃まで低下させ、そして1.5リットルのTHFをこの反応器に添加し、そして溶解するまで少なくとも10分間撹拌した。この溶液をきれいな4リットルの三角フラスコに移し、そしてさらに0.5リットルのTHFを添加した。
【0133】
アルミナを満たしたカラム(1,235グラムの質量を有する中性アルミナおよびTHFで満たした)を含む精製システムを組み立てた。溶液をこのカラムに通して60ml/分〜70ml/分の速度でポンプで送った。全ての溶液がこのカラムに入った後に、1リットルの新しいTHFをこのカラムにポンプで送った。ROTOVAPOR(登録商標)を利用して、この溶液を合計約1リットルまで濃縮した。約600mlのジエチルエーテルをこの溶液に添加し、そして激しく振盪した。このエーテルをデカンテーションし、繰り返し、そして再度デカンテーションした。次いで、この溶液をROTOVAPOR(登録商標)に戻して残留エーテルを除去し、その後、この生成物をガラス瓶に移して減圧下で乾燥させた。
【0134】
ジイソシアン酸1,4−フェニレンを、以下のように精製した。33.3グラムのジイソシアン酸1,4−フェニレンを500mlの一つ口フラスコに入れた。255グラムのトルエンを、磁気撹拌棒と一緒にこのフラスコに入れた。きれいなヴィグロウカラムをこのフラスコに取り付け、そして静止窒素ラインをこのカラムの頂部に取り付けた。このフラスコを50℃の浴内に3時間入れ、次いで、濾紙でろ過した。次いで、この溶液を35トルのROTOVAPOR(登録商標)に戻し、約45℃〜約50℃の浴温で乾燥させた。その生成物を約150mlの石油エーテルで3回洗浄した。得られた白色固体を瓶に移し、そして減圧下で一晩乾燥させた。
【0135】
250mlの三つ口フラスコに、15.362グラムの精製したジイソシアン酸1,4−フェニレンを入れ、続いて80.067グラムのPEG/アジペートを入れた。これらの成分を静止窒素下に置き、そして湯浴中で70℃に設定した。これらの成分を70℃で100〜150RPMで2時間混合した。この温度をさらに2時間、75℃まで上昇させた。次いで、このフラスコを浴から取り出し、混合を続けた。この組成物のNCO含有量は、4.303%であった。
【0136】
このフラスコの首に昇華したあらゆるNCOを、エタノールダンパー付きワイプで除去し、そして天秤に載せた。88.695グラムがフラスコ内に残った。この88.695グラムに、0.5544グラムのTMPを添加し、これを乾燥させ、そして乾燥室に貯蔵した。次いで、この組成物を静止窒素下で密封し、そして65℃の浴に一晩入れた。この温度を40℃まで低下させ、そしてこの油浴が45℃に達したら乾燥室に移した。次いで、この組成物を3×30cc注射器に移した。
【0137】
(実施例23)
実施例20の組成物の薄膜をガラス表面にキャスティングし(約0.05mm)、そして一晩硬化させてフィルムを形成した。このフィルムの小さい片を切り出し、そして片面をこの組成物の薄膜でコーティングし、このフィルムをテフロン(登録商標)シートに押し付けることによって、過剰な組成物を除去した。コーティングされたフィルムをブタの胃に貼付し、そして5分間静置して硬化させた。
【0138】
(実施例24)
実施例23のコーティングされたフィルムを予め膨潤させ、その後、ブタの胃に配置した。
【0139】
種々の改変が、本明細書中に開示された実施形態に対してなされ得ることが理解される。例えば、ジイソシアネート官能基化脂肪族ポリエステルマクロマーを使用してポリウレタンを調製し得、そして接着剤または封止剤以外の用途のために使用され得る。別の例として、分岐ジイソシアネート官能基化脂肪族ポリエステルマクロマーを架橋させて、種々の用途において有用な固体物品(固体の生分解性移植物が挙げられるが、これに限定されない)に成形し得る。従って、上記説明は限定であると解釈されるべきではなく、単に、好ましい実施形態の例示であると解釈されるべきである。当業者は、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内で、他の改変を予測する。
【符号の説明】
【0140】
10 二重注射器
12 チャンバ
14 第二のチャンバ
16 プランジャー
17 静的ミキサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物を含有する、硬化した非多孔性フィルム;および
該硬化した層の表面に塗布された該組成物の未硬化層、
を備える、パッチ。
【請求項2】
前記組成物が脂肪族ポリエステルマクロマーを含有する、請求項1に記載のパッチ。
【請求項3】
前記脂肪族ポリエステルマクロマーが、式
HO−(R−A)−R−OH
の化合物であり、該式において、Aは、脂肪族二酸から誘導される基であり;Rは、各存在において同じであっても異なっていてもよく、そして1,000未満の分子量を有するジヒドロキシ化合物から誘導される基であり;そしてnは2〜10である、請求項2に記載のパッチ。
【請求項4】
前記脂肪族ポリエステルマクロマーが、反応性末端基で末端キャップされている、請求項2に記載のパッチ。
【請求項5】
前記組成物が、式:
OCN−X−HNCOO−(R−A)−R−OOCNH−X−NCO
の化合物を含有し、該式において、Xは、脂肪族基または芳香族基であり;Aは、脂肪族二酸から誘導される基であり;Rは、各存在において同じであっても異なっていてもよく、そしてジヒドロキシ化合物から誘導される基であり;そしてnは1〜10である、請求項4に記載のパッチ。
【請求項6】
前記脂肪族ポリエステルマクロマーが、分岐試薬で官能基化されている、請求項2に記載のパッチ。
【請求項7】
前記組成物が、式:
Z−(OCNH−X−HNCOO−(R−A)−R−OOCNH−X−NCO)
の化合物を含有し、該式において、Zは、多官能性化合物から誘導される基であり;Xは、脂肪族基または芳香族基であり;Aは、脂肪族二酸から誘導される基であり;Rは、各存在において同じであっても異なっていてもよく、そしてジヒドロキシ化合物から誘導される基であり;nは1〜10であり;そしてmは2〜6である、請求項6に記載のパッチ。
【請求項8】
前記組成物が架橋剤を含有する、請求項1に記載のパッチ。
【請求項9】
前記組成物が触媒を含有する、請求項1に記載のパッチ。
【請求項10】
前記組成物が親水性溶媒を含有する、請求項1に記載のパッチ。
【請求項11】
前記組成物が生物活性薬剤を含有する、請求項1に記載のパッチ。
【請求項12】
前記硬化層が約0.01mm〜約1mmの厚さである、請求項1に記載のパッチ。
【請求項13】
前記組成物の未硬化層が、前記硬化した層の表面の約20%〜約100%を覆っている、請求項1に記載のパッチ。
【請求項14】
組成物を硬化させて非多孔性フィルムを形成する工程;および
未硬化である該組成物の層を該非多孔性フィルムの表面に塗布する工程;
を包含する、方法。
【請求項15】
式:
HO−(R−A)−R−OH
の少なくとも1つの脂肪族ポリエステルマクロマーを少なくとも1つのジイソシアネートと反応させて、少なくとも1つのジイソシアネートで末端キャップされたマクロマーを提供する工程であって、該式において、Aは、脂肪族二酸から誘導される基であり;Rは、各存在において同じであっても異なっていてもよく、そして1,000未満の分子量を有するジヒドロキシ化合物から誘導される基であり;そしてnは1〜10である、工程;および
該少なくとも1つのジイソシアネートで末端キャップされたマクロマーを、少なくとも1つの多官能性化合物と反応させて、前記組成物を提供する工程、
をさらに包含する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
2つの異なる脂肪族ポリエステルマクロマーが、少なくとも1つのジイソシアネートと1回の反応で反応して、ジイソシアネートで末端キャップされたマクロマーの混合物を提供し、そして該ジイソシアネートで末端キャップされたマクロマーの混合物が多官能性化合物と1回の反応で反応して、前記組成物を提供する、請求項15に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−87931(P2011−87931A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234992(P2010−234992)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【Fターム(参考)】